【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、重量物を短距離かつ低速で輸送するように設計された運搬車両のための装着組立体のタイヤに施すことが容易な充填成分を提示し、充填成分の剛性を調整することでタイヤの垂直方向の剛性を簡単に調整可能にすることである。
【0015】
この目的は、重量物を短距離かつ低速で輸送するように設計された運搬車両のための装着組立体であって、
リムに装着されるタイヤを備え、
タイヤは、地面と接触するように設計されたトレッドと、トレッドの端部から半径方向内向きに延びる2つの側壁と、側壁を半径方向内向きに延びてリムと接触する2つのビードとを含み、
トレッド、2つの側壁、2つのビード、及びリムは、内部キャビティを定め、
内部キャビティは、少なくとも1つの非圧縮性固体要素から構成される充填成分を含み、
充填成分は、少なくとも1つのガスを含む隙間によって少なくとも部分的に相互に離間する粒体から構成される粒状充填成分であり、粒体の全体積すなわち粒体の総基本体積と、内部キャビティの体積との比率である充填率は、少なくとも0.8に等しい装着組立体によって達成される。
【0016】
本質的に、充填成分は、タイヤの内部キャビティを少なくとも部分的に充填するように設計される。粒状充填成分は、小さな粒子であって非圧縮性材料から構成されて相互に移動可能な粒体から構成される。小さな粒子は、タイヤの内部キャビティの体積よりも非常に小さい基本体積を有し、最大で内部キャビティの体積の10
-4倍に等しく、少なくとも内部キャビティの体積の10
-7倍に等しい。例えば、体積が40.10
-3m
3に等しい内部キャビティに関して、1cm
3の粒体の基本体積は、内部キャビティの体積の0.25.10
-4倍に等しく、1mm
3の粒体の基本体積は、内部キャビティの体積の0.25.10
-7倍に等しい。本質的に、圧力が大きくなっても縮小しない体積を有する非圧縮性材料は、ゴム等の弾性があるもの、又は砂等の硬いものとすることができる。
【0017】
粒体は、少なくともガスを含む隙間によって少なくとも部分的に互いに離間される。この形状により、粒体は、隣接する粒体と一部の表面でのみ接触するので、粒体の間に隙間が存在する。タイヤの内部キャビティが粒体で充填される場合、大気中空気は粒体の間の隙間に捕捉される。更に、タイヤの内部キャビティを粒体で充填した後にタイヤを膨張させることを想定でき、従って、膨張ガスは、隙間に分配され、例えば、ETRTO(欧州タイヤ及びリム技術機関)規格で推奨されるようなタイヤの使用圧力である、大気圧よりも高い圧力を有する。
【0018】
タイヤの内部キャビティの体積は実質的に一定なので、タイヤの使用条件において、本発明者らは、粒体の全体積、すなわち粒体の総基本体積と、内部キャビティの体積との比率で定義される充填率が少なくとも0.8に等しい場合には、粒状充填成分を有するタイヤの垂直方向の剛性が、粒状充填成分が無く所定の運転荷重に対するタイヤの使用圧力で膨張した同じタイヤの垂直方向の剛性に確実に等しくなることを明らかにした。
【0019】
0.8以下の充填率では、十分に膨張していないタイヤと同様に垂直方向の剛性が低下して、タイヤが最適に作動しない。
【0020】
充填率は、タイヤの内部キャビティの粒体を圧縮することで得られる。圧縮は、粒体の間の隙間の体積を低減するように粒状充填成分に圧力を加えることを含む。粒体の基本体積が小さくなると、粒体の間の隙間の体積が小さくなり、目的とする充填率を達成するために粒状充填成分を圧縮する必要性が低くなる。
【0021】
内部キャビティが粒状充填成分で充填され、機械的な運転応力を受けるタイヤは、中実タイヤ又は内部キャビティが固体充填成分で充填されたタイヤ、並びに従来の膨張式タイヤとは異なる機械的挙動を示す。
【0022】
中実タイヤ又は固体充填成分を含むタイヤの場合、タイヤに加わる垂直方向の荷重は、中実タイヤ又は固体充填成分の固体圧縮によって吸収される。タイヤの柔軟性の関数としてタイヤに加わる荷重の変化は実質的に直線である。
【0023】
従来の膨張式タイヤの場合、タイヤに加わる垂直方向の荷重は、タイヤの構造体及び膨張ガスによって吸収される。従って、タイヤの垂直方向の剛性は、タイヤの構造的剛性及び膨張ガスによる空気的剛性によって生じる。タイヤの柔軟性の関数としてタイヤに加わる荷重の変化は実質的に直線であるが、多くの場合、より硬い中実タイヤの場合よりも傾斜が緩やかである。
【0024】
粒状充填成分を含むタイヤの場合、タイヤに加わる垂直方向の荷重は、タイヤの内部キャビティの充填率の関数である、粒状充填成分の圧縮によって吸収される。充填率が大きいほど粒状充填成分の体積の圧縮性が低下する。タイヤの柔軟性の関数としてタイヤに加わる荷重の変化は著しく非線形である。荷重が小さい場合、走行時の粒状充填成分の圧縮により柔軟性は急激に大きくなり、粒体の基本体積と充填率の関数である。荷重が大きい場合、高度に圧縮された粒状充填成分の粒体を構成する材料の非圧縮性により柔軟性の変化は急激に小さくなり、タイヤの機械的挙動は中実タイヤの挙動となる。
【0025】
粒状充填成分を含むタイヤの挙動は、排他的ではないが、特に粒体の非圧縮性の特性、粒状充填成分の低い剪断強度、及び各粒子の間の摩擦又は合体といった、粒状の環境の種々の特定の複雑な現象に起因する。
【0026】
粒状充填成分は一様であることが好都合であり、換言すると、同じ材料で同じサイズの粒体で構成される。「同じサイズ」は、粒体の基本体積が、最小基本体積と最大基本体積との間で変わることを意味し、例えば、最大基本体積は最小基本体積の最大1.2倍に等しい。
【0027】
粒状充填成分の粒体は、安価な材料で構成されることが好ましい。安価な弾性材料から作られる粒体は、例えば、タイヤのゴムトレッドを細断及び破砕したものをリサイクルしたものである。安価な硬質材料から作られる粒体は、例えば砂粒である。
【0028】
充填率は、少なくとも0.95に等しいことが好都合である。この大きな充填率は、内部キャビティが完全に充填されたタイヤを特徴付ける。完全に充填すると、低荷重でも粒状充填成分の剛性が確保される。他方で、タイヤが完全に充填されていない場合、垂直方向の剛性は、膨張していないタイヤと同様にそもそも非常に低い。
【0029】
第1の実施形態によれば、粒状充填成分の粒体は、弾性があることが好都合である。荷重がもはやタイヤに加えられない場合、結果的に、粒状充填成分は、元の形状に戻り、これによりタイヤ形状の経時的な安定性が確保される。
【0030】
第1の実施形態の第1の変形例では、粒状充填成分の粒体を形成する弾性材料は、10%の延び率において最大で100MPaに等しい弾性係数を有することが好都合であり、例えば、エラストマーベースの高分子材料といった高度に変形可能な材料の特性である。本質的に、10%の延び率での弾性係数は、当該材料の試験片の10%の延び率に関して測定した引張応力である。エラストマーベースの高分子材料の場合、硬化後の当該材料の引張変形の関数としての応力特性は、当業者には公知の方法による、例えば、国際規格ISO37で規定される国際規格ISO471標準温度(23±2度)及び標準湿度状態(50±5%相対湿度)での試験片の引張試験によって求められる。
【0031】
第1の実施形態の好ましい第2の変形例では、弾性材料の中で、高分子材料、好ましくはエラストマーベースの高分子材料で構成される粒体を選択することが好都合である。特に、経済的及び環境的な観点から、材料として、再生粉体若しくは部分的又は全体的に粉砕したタイヤ等の、エラストマーベースの高分子材料であるタイヤからリサイクルされたゴムを使用することは価値がある。再生粉体は、タイヤトレッドを粉砕して再生することで得られる。必要であれば、例えば、粒体として使用するために、粒体の熱消散を制限するために可能な限り最小のヒステリシスレベルで特別に設計されたラストマーベースの高分子材料を用いることが可能である。
【0032】
第1の実施形態の第3の変形例では、粒体の間の隙間は、好ましくは少なくとも50W/m.Kに等しい熱伝導率の熱伝導粉体を含む。熱伝道粉体により、粒状充填成分内で消散された熱を分散することが可能になる。特に、粒体の間及び内部キャビティの壁との間の摩擦接触により、粒体は、熱を消散するか又は熱エネルギを生じる。更に、粒体の変形によっても熱が発生する。従って、このことは、粒体、結果的に粒状充填成分の剛性にダメージを与える可能性があるホットスポットの生成を阻止する。
【0033】
第1の実施形態の第4の変形例では、粒体の間の隙間は、粒体の相対的な相互移動性を制限することを可能にする化学結合を生じさせるために、粒体と相互作用する粉体を含むことが好都合である。この化学結合は、粒状充填成分の内部の温度を高めることで引き起こされ、走行中にタイヤに作用する機械的応力によってもたらされる。
【0034】
最後に、第1の実施形態の第5の変形例では、粒体の隙間が粘性の高い粘性成品を含むことが好都合である。成品の粘性は、装着組立体のリムバルブを経由した粒状充填成分への挿入時、その後に液体相になる程度に十分に低いことが必要である。しかし、この粘性は、密封されていなリムの場合、挿入後に成品がリムの外側に流出しない程度に高いことが必要である。この粘性成品は、タイヤの内部キャビティに粒状充填物を配置した後にタイヤの剛性を調整するために使用される。更に、粒状充填成分内で固化して粒体の少なくとも局所的な集塊をもたらす粘性成品を使用することを想定することができ、これはタイヤの剛性を高めることにも貢献する。
【0035】
第2の実施形態において、粒状充填成分の粒体は、非変形材料から構成される。この非変形性により、変形しない又は硬い粒体は本質的に熱を発生しない。更に、変形しない粒体から構成される粒状充填成分は、粒体の圧縮おける安定化段階の後で、好都合に使用中に一定の体積を維持し、これによりタイヤの寿命期間中に内部キャビティを追加的に充填する必要がなくなる。例示的であり限定するものではないが砂又はガラス等の鉱物といった、様々な種類の非変形材料を想定することができる。
【0036】
第2の実施形態の好ましい変形例は、粒体として砂粒を選択することである。安価な材料である砂は、種々の粒子サイズの形態で存在し、種々の粒度である。適切な粒子サイズを選択することで、目的とするタイヤの垂直方向の剛性の関数として充填率を簡単に調整することが可能になる。
【0037】
タイヤの内部キャビティを充填する間に、大気中空気は、自然に粒体の間に隙間に捕捉される。本発明の第3の実施形態によれば、特定の密封リムの場合、粒体の隙間が大気圧よりも高い圧力のガスで満たされるように、空気又は窒素といった膨張ガスでタイヤを膨張させることは好都合である。実際には2種類のリムがあり、装着組立体を密封するためにタイヤ内にチューブを必要とするチューブ式リムと、内部にチューブを必要とすることなく確実に密封するチューブレスリムである。設計上、チューブ式リムは結果的に密封されないが、チューブレスリムは密封される。運搬車両のための装着組立体の場合、充填成分を選択するために、チューブが無いことが常に2つの種類のリムの区別につながる。結果的に、チューブの無い装着組立体は、チューブレスリムの場合でのみ膨張させることができる。
【0038】
更に、本発明者は、内部キャビティが粒状充填成分で満たされ、膨張ガスを用いて所定圧力に膨張されたタイヤは、所定の荷重以下では、充填成分を含まないが、この同じ圧力に膨張されたタイヤと同じ垂直方向の剛性を有すること、及びこの荷重以上では、中実タイヤと同じ垂直方向の剛性を有することを見出した。換言すると。このようなタイヤは、軽荷重では従来の膨張式タイヤ、重荷重では中実タイヤと同様に機能する。
【0039】
剛性のこのような変化点は、動的走行荷重と、クレーン、一般的にはリフト機の場合のような静的操作荷重とを区別するために利用する特定の値とすることができる。従って、粒状充填成分を含むタイヤの垂直方向の剛性は、充填率及び膨張圧力を用いて調整され、タイヤは、荷を下ろした走行フェーズでは従来の膨張式タイヤ、荷重持ち上げ操作フェーズでは中実タイヤのように機能する。
【0040】
本発明の第4の実施形態では、粒体の間の隙間は液体を含み、使用時に粒体をかき回すことによって粒状充填成分で消散された熱を分散させることが可能になる。液体の使用は、密封リムの場合だけ想定することができる。隙間に含まれる液体は、粒体の間の接触圧に応じて、粒間接触ゾーンの粒体の間に入れることもできる。粒体の間の隙間では気相と液相とが共存できる。
【0041】
この液体には2つの機能がある。液体の第1の機能は、使用時に粒体がかき回される場合、換言するとタイヤ回転時の粒子の相対移動の間に、粒状充填成分の熱を分散させる機能である。液体の第2の機能は、粒子間の潤滑をもたらして粒間摩擦、従って摩擦によって発生する熱を低減する機能である。
【0042】
液体の選択は、機能の一方又は他方を促進することができる。タイヤの使用温度範囲全域で液相とすることができる水、又は一般的には水溶液は、熱分散に対する有効な冷却剤の例である。オイル等の潤滑液は、粒間の滑りを促進するので摩擦によるエネルギ発散を制限する。
【0043】
また、本発明は、内部キャビティが粒状充填成分で充填されたタイヤ及びリムで構成される装着組立体を製造するための方法に関する。
【0044】
このような装着組立体を製作する方法は、
a)タイヤの内部キャビティを閉鎖するように、リムの直径と同じ直径の円筒形シュラウドを挿入し、充填手段を用いてタイヤの内部キャビティを粒状充填成分で充填し、目的とする充填率となるように粒体を圧縮して、粒状充填成分で充填されたタイヤ及びシュラウドを備える中間組立体を形成する段階と、
b)中間組立体を、移送手段及び粒状充填成分が充填されたタイヤが装着されることになるリムを含む移送フレームに組み込む段階と、
c)装着組立体を形成するために、移送手段によってタイヤの回転軸に平行に力を加えることで、粒状充填成分が充填されたタイヤをシュラウドからリム上に移送する段階と、
を含む。
【0045】
第1の段階において、リムの直径と同じ直径の円筒形シュラウドは、タイヤの内部キャビティを閉鎖するように配置される。リムの直径はシート部での直径であり、換言すると、タイヤの半径方向の内側部に接触するリム部分の直径である。リムの直径と同じ直径の円筒形シュラウドを使用すると、目的とする充填率を得ることが可能になる。
【0046】
例えばポンプ式の適切な充填手段を用いて、円筒形シュラウドを経由してタイヤの内部キャビティを粒状充填成分で充填する。
【0047】
例えばピストンである、粒状充填成分に圧力を加える適切な手段を用いて粒体の圧縮を行う。粒体の種類及びサイズと関連するこの圧縮により、目的とする充填率を得ることが可能になる。
【0048】
充填及び圧縮の後、結果として得られたものは粒状充填成分で充填されたタイヤ及びシュラウドから成る中間組立体である。
【0049】
第2の段階は、中間組立体を、移送手段及びリムを含む移送フレームに配置する。中間組立体は、円筒形シュラウドが、粒状充填成分が充填されたタイヤが装着されることになるリムと同軸になるように位置決めされる。移送手段の1つは、例えば、タイヤの回転軸に平行な力を加えて、タイヤをシュラウドからリムに移送させる環状構造体である。
【0050】
第3の及び最後の段階は、装着組立体を形成するために、移送手段によってタイヤの回転軸に平行に力を加えることで、粒状充填成分が充填されたタイヤをシュラウドからリム上に移送する。
【0051】
円筒形シュラウドに装着されたタイヤで構成される中間組立体を製作する利点は、充填手段とリムに移送するための手段とを切り離すことである。これにより、本発明による装着組立体の製造の自由度が与えられ、タイヤをリムに装着するために移送手段に搬送する前に、複数の中間組立体を同時に製造して貯蔵することができる。
【0052】
本方法は、前述の粉体、膨張ガス、液体といった補助的な成分を含まなくても簡単な粒状充填成分を含む装着組立体の製造に関する。
【0053】
本発明の特徴は、添付図面1から3Cの説明を参照して良好に理解できるはずである。