特許第6129819号(P6129819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129819
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】運搬車両用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20170508BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20170508BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20170508BHJP
   B29D 30/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B60C7/00 D
   B60C5/00 D
   B60C19/00 K
   B29D30/00
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-504316(P2014-504316)
(86)(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公表番号】特表2014-511797(P2014-511797A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】EP2012056650
(87)【国際公開番号】WO2012140121
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年2月9日
(31)【優先権主張番号】1153247
(32)【優先日】2011年4月14日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】フェリン オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ボール ジェラルド
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03230999(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第00013532(GB,A)
【文献】 特開2002−144808(JP,A)
【文献】 特開平05−162504(JP,A)
【文献】 特開昭61−1504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C5/00
B60C7/00
B60C19/00
B29D30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を輸送するように設計された運搬車両のための装着組立体(1、5、7)であって、
リム(5)に装着されるタイヤ(1)を備え、
前記タイヤは、地面と接触するように設計されたトレッド(2)と、前記トレッド(2)の端部から半径方向内向きに延びる2つの側壁(3)と、前記側壁(2)を半径方向内向きに延びて前記リム(5)と接触する2つのビード(4)とを含み、
前記トレッド(2)、前記2つの側壁(3)、前記2つのビード(4)、及び前記リム(5)は、内部キャビティ(6)を定め、
前記内部キャビティ(6)は複数の非圧縮性固体要素から構成される充填成分(7)を含み、
前記充填成分(7)は、ガスを含む隙間(72)によって少なくとも部分的に相互に離間する粒体(71)から構成される粒状充填成分であり、前記粒体(71)の全体積すなわち前記粒体(71)の総基本体積と、内部キャビティ(6)の体積との比率である充填率は、少なくとも0.8に等しく、
前記粒状充填成分の前記粒体(71)は、非変形材料から構成され
前記粒体(71)の間の前記隙間(72)は、粒状充填成分(7)内で消散された熱の分散を可能にする、少なくとも50W/m.Kに等しい熱伝導率の熱伝導粉体を含む、
ことを特徴とする装着組立体(1、5、7)。
【請求項2】
前記充填率は、少なくとも0.95に等しい、請求項1に記載の装着組立体(1、5、7)。
【請求項3】
前記粒体(71)は、砂で構成される、請求項1又は2に記載の装着組立体(1、5、7)。
【請求項4】
前記粒体(71)の間の前記隙間(72)は、前記粒体(71)の相対的な相互移動性の制限を可能にする化学結合を生じさせるために、前記粒体(71)と相互作用する粉体を含む、請求項1から3のいずれかに記載の装着組立体(1、5、7)。
【請求項5】
前記粒体(71)の間の前記隙間(72)は、粘性成品を含む、請求項1から3のいずれかに記載の装着組立体(1、5、7)。
【請求項6】
前記リム(5)は密封リムであり、前記粒体(71)の間の前記隙間(72)は、大気圧よりも高い圧力のガスを含む、請求項1からのいずれかに記載の装着組立体(1、5、7)。
【請求項7】
前記リム(5)は密封リムであり、前記粒体(71)の間の前記隙間(72)は、使用時に前記粒体(71)をかき混ぜることで粒状充填成分(7)内に消散された熱の分散を可能にする液体を含む、請求項1からのいずれかに記載の装着組立体(1、5、7)。
【請求項8】
a)前記タイヤ(1)の内部キャビティ(6)を閉鎖するように、前記リムの直径と同じ直径の円筒形シュラウド(8)を挿入し、充填手段(9)を用いてタイヤ(1)の内部キャビティ(6)を粒状充填成分(7)で充填し、目的とする充填率となるように前記粒体(71)を圧縮して、前記粒状充填成分(7)で充填された前記タイヤ(1)及び前記シュラウド(8)を備える中間組立体(1、7、8)を形成する段階と、
b)前記中間組立体(1、7、8)を、移送手段(10)及び前記粒状充填成分(7)が充填された前記タイヤ(1)が装着されることになる前記リムを含む移送フレームに組み込む段階と、
c)装着組立体(1、5、7)を形成するために、前記移送手段(10)によってタイヤの回転軸に平行に力を加えることで、前記粒状充填成分(7)が充填された前記タイヤ(1)を前記シュラウド(8)から前記リム(5)上に移送する段階と、
を含む、前記請求項1からのいずれかに記載の装着組立体(1、5、7)を製作する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下鉱山で使用される材料運搬車両といった、重量物を短距離かつ低速で輸送するように設計された運搬車両用タイヤに関する。
本発明の別の主題は、このような搭載組立体を製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
運搬車両は、膨張式タイヤの代わりに中実タイヤを備える場合が多い。中実タイヤはドーナッツ形状の物体であり、多くの場合ゴム製であり、ホイールに取り付けるように設計されるが、膨張ガスで膨張するように設計された内部キャビティを備えていない。中実タイヤに加わる荷重は、中実タイヤの構造体で支持される。
【0003】
中実タイヤは、膨張式タイヤに対していくつかの利点をもつ。第1の利点は、膨張ガスが存在しないので、空気が抜けること又はパンクすることがなく信頼性及び安全性を確保できる点にある。次に、膨張式タイヤよりも大きい減衰能力によって、中実タイヤは、車両の前軸と後軸との間の動的荷重伝達を引き起こす荷積み作業及び荷下し作業の間の運搬車両の良好な動的安定性に貢献する。更に、中実タイヤは、垂直方向の剛性が高いので積載量がかなり大きく、同じ積載量の膨張式タイヤに比べて所要の空間が小さい。最後に、中実タイヤは、膨張ガスが存在せず圧力のチェックが必要ないので保守管理の手間が少なくなる。
【0004】
一方で、中実タイヤは、同じ積載量の膨張式タイヤに対していくつかの欠点をもつ。第1の欠点は、中実タイヤは中実構造なので重量が重い。更に、中実構造は、機械的応力の作用の下での使用時に大量の熱を放散し、これは積載量、速度、及び使用期間を制限する。摩耗に対する耐用期間は、中実タイヤのトレッドの地面との接触面において、地面上の圧力分散が最適化されていないので、膨張式タイヤよりも短い。材料量が多いので製造コストが高い。寿命となった摩耗した中実タイヤは、リサイクルが難しい重くて嵩張る廃棄物なので、環境への影響は相当である。最後に、中実タイヤをリムに取り付けるには、リム上への十分なタイトネスを保証して有効なトルク伝達をもたらすことが不可欠である、特殊な取り付け装置を必要とする場合がある。
【0005】
従来のタイヤは地面と接触するように設計されたトレッドと、トレッドから半径方向内向きに延びる2つの側壁と、側壁を半径方向内向きに延びてリムに接触する2つのビードを備える。リムに取り付けて取り付け組立体を形成する場合、トレッド、2つの側壁、2つのビード、及びリムは内部キャビティを定める。
【0006】
内部キャビティが少なくとも部分的に固体充填成分で満たされる従来のタイヤは、中実タイヤの代替物として価値がある。この形式の種々の技術的解決法が提案されている。
【0007】
技術的解決法の第1の種類は、タイヤの内部キャビティを高分子材料の同心円層で充填すること基づいている。国際公開第9703850号及び米国特許第6578613号公報には、高分子材料の同心円層から成り、随意的に伸縮継ぎ手を備える固体充填で充填された内部キャビティを有するタイヤが記載されている。米国特許第7678216号公報には、弾性発泡体に包み込まれた固体材料で作られたコアを含む内部キャビティを備えるタイヤが提案されている。
【0008】
技術的解決法の第2の種類は、タイヤの内部キャビティを、空洞又はセルを含む形式の高分子発泡体の材料で充填することに基づいている。米国特許第3022810号、米国特許第3381735号、米国特許第3866652号、米国特許第3907018号、及び米国特許第4060578号には、各セルが随意的に加圧ガスを含む多孔質の弾性発泡体で充填されている内部キャビティを備えるタイヤが記載されている。
【0009】
技術的解決法の第3の種類は、タイヤの内部キャビティを架橋剤と混合したゴム粒子で充填することに基づいており、混合物はタイヤに組み入れる前に、特に一体の固体充填成分を形成するように硬化処理によって硬化される。米国特許第1097824号には、内部キャビティが硫ゴム接着剤といった連結剤で恒久的に連結された加硫ゴム粒子等の、弾性固体粒子で充填されるタイヤが記載される。特開昭57−058501号公報には、ゴム粉体及び液体ポリウレタンの加硫混合物が充填されたタイヤで作られた中実タイヤが記載されている。特開2001−252989公報及び特開平04−088168公報には、従来のタイヤに後で、タイヤに組み入れる前にポリウレタン又はフェノール樹脂等の架橋剤と混合される再生ゴム粉体を充填することで中実タイヤを製造する方法が記載されており、混合物はタイヤ内で硬化して一体の充填成分を形成するようになっている。
【0010】
前述の全ての技術的解決法は、多孔質高分子発泡体又はゴム粒子の加硫混合物といった一体要素、又は高分子材料の同心円層といった限られた数の要素のいずれかから成る、タイヤの内部キャビティの固体充填成分を説明する。しかしながら、かかる固体充填成分のデザイン及び製造にはある程度の複雑性が伴う。
【0011】
更に、固体充填成分は機械的剛性を有し、この剛性はタイヤ自体の構造的剛性と共に、充填成分が充填されたタイヤの垂直方向の剛性に貢献する。固体充填成分の剛性を選択すると、固体充填成分が充填されたタイヤの垂直方向の剛性、つまり所定のタイヤに加わる垂直荷重に対するタイヤの相対的な柔軟性を所望のレベルに調整することが可能になる。タイヤの相対的な柔軟性は、タイヤの外径と端部で測定したリムの最大径との間の差の半分に対する半径方向のタイヤの高さの変化率によって規定されるが、タイヤの外径は、荷を下ろした静的状態で測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際特許公開第9703850号公報
【特許文献2】米国特許第6578613号公報
【特許文献3】米国特許第7678216号
【特許文献4】米国特許第3022810号
【特許文献5】米国特許第3381735号公報
【特許文献6】米国特許第3866652号公報
【特許文献7】米国特許第3907018号公報
【特許文献8】米国特許第4060578号公報
【特許文献9】米国特許第1097824号公報
【特許文献10】特開昭57−058501号公報
【特許文献11】特開2001−252989号公報
【特許文献12】特開平04−088168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
タイヤの垂直方向の所望の剛性を得るために固体充填成分の剛性を調整した後、例えば、タイヤに加わる垂直方向の荷重の大幅な変動があった場合に、固体充填成分を全体的に変更することなく剛性を変更することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、重量物を短距離かつ低速で輸送するように設計された運搬車両のための装着組立体のタイヤに施すことが容易な充填成分を提示し、充填成分の剛性を調整することでタイヤの垂直方向の剛性を簡単に調整可能にすることである。
【0015】
この目的は、重量物を短距離かつ低速で輸送するように設計された運搬車両のための装着組立体であって、
リムに装着されるタイヤを備え、
タイヤは、地面と接触するように設計されたトレッドと、トレッドの端部から半径方向内向きに延びる2つの側壁と、側壁を半径方向内向きに延びてリムと接触する2つのビードとを含み、
トレッド、2つの側壁、2つのビード、及びリムは、内部キャビティを定め、
内部キャビティは、少なくとも1つの非圧縮性固体要素から構成される充填成分を含み、
充填成分は、少なくとも1つのガスを含む隙間によって少なくとも部分的に相互に離間する粒体から構成される粒状充填成分であり、粒体の全体積すなわち粒体の総基本体積と、内部キャビティの体積との比率である充填率は、少なくとも0.8に等しい装着組立体によって達成される。
【0016】
本質的に、充填成分は、タイヤの内部キャビティを少なくとも部分的に充填するように設計される。粒状充填成分は、小さな粒子であって非圧縮性材料から構成されて相互に移動可能な粒体から構成される。小さな粒子は、タイヤの内部キャビティの体積よりも非常に小さい基本体積を有し、最大で内部キャビティの体積の10-4倍に等しく、少なくとも内部キャビティの体積の10-7倍に等しい。例えば、体積が40.10-33に等しい内部キャビティに関して、1cm3の粒体の基本体積は、内部キャビティの体積の0.25.10-4倍に等しく、1mm3の粒体の基本体積は、内部キャビティの体積の0.25.10-7倍に等しい。本質的に、圧力が大きくなっても縮小しない体積を有する非圧縮性材料は、ゴム等の弾性があるもの、又は砂等の硬いものとすることができる。
【0017】
粒体は、少なくともガスを含む隙間によって少なくとも部分的に互いに離間される。この形状により、粒体は、隣接する粒体と一部の表面でのみ接触するので、粒体の間に隙間が存在する。タイヤの内部キャビティが粒体で充填される場合、大気中空気は粒体の間の隙間に捕捉される。更に、タイヤの内部キャビティを粒体で充填した後にタイヤを膨張させることを想定でき、従って、膨張ガスは、隙間に分配され、例えば、ETRTO(欧州タイヤ及びリム技術機関)規格で推奨されるようなタイヤの使用圧力である、大気圧よりも高い圧力を有する。
【0018】
タイヤの内部キャビティの体積は実質的に一定なので、タイヤの使用条件において、本発明者らは、粒体の全体積、すなわち粒体の総基本体積と、内部キャビティの体積との比率で定義される充填率が少なくとも0.8に等しい場合には、粒状充填成分を有するタイヤの垂直方向の剛性が、粒状充填成分が無く所定の運転荷重に対するタイヤの使用圧力で膨張した同じタイヤの垂直方向の剛性に確実に等しくなることを明らかにした。
【0019】
0.8以下の充填率では、十分に膨張していないタイヤと同様に垂直方向の剛性が低下して、タイヤが最適に作動しない。
【0020】
充填率は、タイヤの内部キャビティの粒体を圧縮することで得られる。圧縮は、粒体の間の隙間の体積を低減するように粒状充填成分に圧力を加えることを含む。粒体の基本体積が小さくなると、粒体の間の隙間の体積が小さくなり、目的とする充填率を達成するために粒状充填成分を圧縮する必要性が低くなる。
【0021】
内部キャビティが粒状充填成分で充填され、機械的な運転応力を受けるタイヤは、中実タイヤ又は内部キャビティが固体充填成分で充填されたタイヤ、並びに従来の膨張式タイヤとは異なる機械的挙動を示す。
【0022】
中実タイヤ又は固体充填成分を含むタイヤの場合、タイヤに加わる垂直方向の荷重は、中実タイヤ又は固体充填成分の固体圧縮によって吸収される。タイヤの柔軟性の関数としてタイヤに加わる荷重の変化は実質的に直線である。
【0023】
従来の膨張式タイヤの場合、タイヤに加わる垂直方向の荷重は、タイヤの構造体及び膨張ガスによって吸収される。従って、タイヤの垂直方向の剛性は、タイヤの構造的剛性及び膨張ガスによる空気的剛性によって生じる。タイヤの柔軟性の関数としてタイヤに加わる荷重の変化は実質的に直線であるが、多くの場合、より硬い中実タイヤの場合よりも傾斜が緩やかである。
【0024】
粒状充填成分を含むタイヤの場合、タイヤに加わる垂直方向の荷重は、タイヤの内部キャビティの充填率の関数である、粒状充填成分の圧縮によって吸収される。充填率が大きいほど粒状充填成分の体積の圧縮性が低下する。タイヤの柔軟性の関数としてタイヤに加わる荷重の変化は著しく非線形である。荷重が小さい場合、走行時の粒状充填成分の圧縮により柔軟性は急激に大きくなり、粒体の基本体積と充填率の関数である。荷重が大きい場合、高度に圧縮された粒状充填成分の粒体を構成する材料の非圧縮性により柔軟性の変化は急激に小さくなり、タイヤの機械的挙動は中実タイヤの挙動となる。
【0025】
粒状充填成分を含むタイヤの挙動は、排他的ではないが、特に粒体の非圧縮性の特性、粒状充填成分の低い剪断強度、及び各粒子の間の摩擦又は合体といった、粒状の環境の種々の特定の複雑な現象に起因する。
【0026】
粒状充填成分は一様であることが好都合であり、換言すると、同じ材料で同じサイズの粒体で構成される。「同じサイズ」は、粒体の基本体積が、最小基本体積と最大基本体積との間で変わることを意味し、例えば、最大基本体積は最小基本体積の最大1.2倍に等しい。
【0027】
粒状充填成分の粒体は、安価な材料で構成されることが好ましい。安価な弾性材料から作られる粒体は、例えば、タイヤのゴムトレッドを細断及び破砕したものをリサイクルしたものである。安価な硬質材料から作られる粒体は、例えば砂粒である。
【0028】
充填率は、少なくとも0.95に等しいことが好都合である。この大きな充填率は、内部キャビティが完全に充填されたタイヤを特徴付ける。完全に充填すると、低荷重でも粒状充填成分の剛性が確保される。他方で、タイヤが完全に充填されていない場合、垂直方向の剛性は、膨張していないタイヤと同様にそもそも非常に低い。
【0029】
第1の実施形態によれば、粒状充填成分の粒体は、弾性があることが好都合である。荷重がもはやタイヤに加えられない場合、結果的に、粒状充填成分は、元の形状に戻り、これによりタイヤ形状の経時的な安定性が確保される。
【0030】
第1の実施形態の第1の変形例では、粒状充填成分の粒体を形成する弾性材料は、10%の延び率において最大で100MPaに等しい弾性係数を有することが好都合であり、例えば、エラストマーベースの高分子材料といった高度に変形可能な材料の特性である。本質的に、10%の延び率での弾性係数は、当該材料の試験片の10%の延び率に関して測定した引張応力である。エラストマーベースの高分子材料の場合、硬化後の当該材料の引張変形の関数としての応力特性は、当業者には公知の方法による、例えば、国際規格ISO37で規定される国際規格ISO471標準温度(23±2度)及び標準湿度状態(50±5%相対湿度)での試験片の引張試験によって求められる。
【0031】
第1の実施形態の好ましい第2の変形例では、弾性材料の中で、高分子材料、好ましくはエラストマーベースの高分子材料で構成される粒体を選択することが好都合である。特に、経済的及び環境的な観点から、材料として、再生粉体若しくは部分的又は全体的に粉砕したタイヤ等の、エラストマーベースの高分子材料であるタイヤからリサイクルされたゴムを使用することは価値がある。再生粉体は、タイヤトレッドを粉砕して再生することで得られる。必要であれば、例えば、粒体として使用するために、粒体の熱消散を制限するために可能な限り最小のヒステリシスレベルで特別に設計されたラストマーベースの高分子材料を用いることが可能である。
【0032】
第1の実施形態の第3の変形例では、粒体の間の隙間は、好ましくは少なくとも50W/m.Kに等しい熱伝導率の熱伝導粉体を含む。熱伝道粉体により、粒状充填成分内で消散された熱を分散することが可能になる。特に、粒体の間及び内部キャビティの壁との間の摩擦接触により、粒体は、熱を消散するか又は熱エネルギを生じる。更に、粒体の変形によっても熱が発生する。従って、このことは、粒体、結果的に粒状充填成分の剛性にダメージを与える可能性があるホットスポットの生成を阻止する。
【0033】
第1の実施形態の第4の変形例では、粒体の間の隙間は、粒体の相対的な相互移動性を制限することを可能にする化学結合を生じさせるために、粒体と相互作用する粉体を含むことが好都合である。この化学結合は、粒状充填成分の内部の温度を高めることで引き起こされ、走行中にタイヤに作用する機械的応力によってもたらされる。
【0034】
最後に、第1の実施形態の第5の変形例では、粒体の隙間が粘性の高い粘性成品を含むことが好都合である。成品の粘性は、装着組立体のリムバルブを経由した粒状充填成分への挿入時、その後に液体相になる程度に十分に低いことが必要である。しかし、この粘性は、密封されていなリムの場合、挿入後に成品がリムの外側に流出しない程度に高いことが必要である。この粘性成品は、タイヤの内部キャビティに粒状充填物を配置した後にタイヤの剛性を調整するために使用される。更に、粒状充填成分内で固化して粒体の少なくとも局所的な集塊をもたらす粘性成品を使用することを想定することができ、これはタイヤの剛性を高めることにも貢献する。
【0035】
第2の実施形態において、粒状充填成分の粒体は、非変形材料から構成される。この非変形性により、変形しない又は硬い粒体は本質的に熱を発生しない。更に、変形しない粒体から構成される粒状充填成分は、粒体の圧縮おける安定化段階の後で、好都合に使用中に一定の体積を維持し、これによりタイヤの寿命期間中に内部キャビティを追加的に充填する必要がなくなる。例示的であり限定するものではないが砂又はガラス等の鉱物といった、様々な種類の非変形材料を想定することができる。
【0036】
第2の実施形態の好ましい変形例は、粒体として砂粒を選択することである。安価な材料である砂は、種々の粒子サイズの形態で存在し、種々の粒度である。適切な粒子サイズを選択することで、目的とするタイヤの垂直方向の剛性の関数として充填率を簡単に調整することが可能になる。
【0037】
タイヤの内部キャビティを充填する間に、大気中空気は、自然に粒体の間に隙間に捕捉される。本発明の第3の実施形態によれば、特定の密封リムの場合、粒体の隙間が大気圧よりも高い圧力のガスで満たされるように、空気又は窒素といった膨張ガスでタイヤを膨張させることは好都合である。実際には2種類のリムがあり、装着組立体を密封するためにタイヤ内にチューブを必要とするチューブ式リムと、内部にチューブを必要とすることなく確実に密封するチューブレスリムである。設計上、チューブ式リムは結果的に密封されないが、チューブレスリムは密封される。運搬車両のための装着組立体の場合、充填成分を選択するために、チューブが無いことが常に2つの種類のリムの区別につながる。結果的に、チューブの無い装着組立体は、チューブレスリムの場合でのみ膨張させることができる。
【0038】
更に、本発明者は、内部キャビティが粒状充填成分で満たされ、膨張ガスを用いて所定圧力に膨張されたタイヤは、所定の荷重以下では、充填成分を含まないが、この同じ圧力に膨張されたタイヤと同じ垂直方向の剛性を有すること、及びこの荷重以上では、中実タイヤと同じ垂直方向の剛性を有することを見出した。換言すると。このようなタイヤは、軽荷重では従来の膨張式タイヤ、重荷重では中実タイヤと同様に機能する。
【0039】
剛性のこのような変化点は、動的走行荷重と、クレーン、一般的にはリフト機の場合のような静的操作荷重とを区別するために利用する特定の値とすることができる。従って、粒状充填成分を含むタイヤの垂直方向の剛性は、充填率及び膨張圧力を用いて調整され、タイヤは、荷を下ろした走行フェーズでは従来の膨張式タイヤ、荷重持ち上げ操作フェーズでは中実タイヤのように機能する。
【0040】
本発明の第4の実施形態では、粒体の間の隙間は液体を含み、使用時に粒体をかき回すことによって粒状充填成分で消散された熱を分散させることが可能になる。液体の使用は、密封リムの場合だけ想定することができる。隙間に含まれる液体は、粒体の間の接触圧に応じて、粒間接触ゾーンの粒体の間に入れることもできる。粒体の間の隙間では気相と液相とが共存できる。
【0041】
この液体には2つの機能がある。液体の第1の機能は、使用時に粒体がかき回される場合、換言するとタイヤ回転時の粒子の相対移動の間に、粒状充填成分の熱を分散させる機能である。液体の第2の機能は、粒子間の潤滑をもたらして粒間摩擦、従って摩擦によって発生する熱を低減する機能である。
【0042】
液体の選択は、機能の一方又は他方を促進することができる。タイヤの使用温度範囲全域で液相とすることができる水、又は一般的には水溶液は、熱分散に対する有効な冷却剤の例である。オイル等の潤滑液は、粒間の滑りを促進するので摩擦によるエネルギ発散を制限する。
【0043】
また、本発明は、内部キャビティが粒状充填成分で充填されたタイヤ及びリムで構成される装着組立体を製造するための方法に関する。
【0044】
このような装着組立体を製作する方法は、
a)タイヤの内部キャビティを閉鎖するように、リムの直径と同じ直径の円筒形シュラウドを挿入し、充填手段を用いてタイヤの内部キャビティを粒状充填成分で充填し、目的とする充填率となるように粒体を圧縮して、粒状充填成分で充填されたタイヤ及びシュラウドを備える中間組立体を形成する段階と、
b)中間組立体を、移送手段及び粒状充填成分が充填されたタイヤが装着されることになるリムを含む移送フレームに組み込む段階と、
c)装着組立体を形成するために、移送手段によってタイヤの回転軸に平行に力を加えることで、粒状充填成分が充填されたタイヤをシュラウドからリム上に移送する段階と、
を含む。
【0045】
第1の段階において、リムの直径と同じ直径の円筒形シュラウドは、タイヤの内部キャビティを閉鎖するように配置される。リムの直径はシート部での直径であり、換言すると、タイヤの半径方向の内側部に接触するリム部分の直径である。リムの直径と同じ直径の円筒形シュラウドを使用すると、目的とする充填率を得ることが可能になる。
【0046】
例えばポンプ式の適切な充填手段を用いて、円筒形シュラウドを経由してタイヤの内部キャビティを粒状充填成分で充填する。
【0047】
例えばピストンである、粒状充填成分に圧力を加える適切な手段を用いて粒体の圧縮を行う。粒体の種類及びサイズと関連するこの圧縮により、目的とする充填率を得ることが可能になる。
【0048】
充填及び圧縮の後、結果として得られたものは粒状充填成分で充填されたタイヤ及びシュラウドから成る中間組立体である。
【0049】
第2の段階は、中間組立体を、移送手段及びリムを含む移送フレームに配置する。中間組立体は、円筒形シュラウドが、粒状充填成分が充填されたタイヤが装着されることになるリムと同軸になるように位置決めされる。移送手段の1つは、例えば、タイヤの回転軸に平行な力を加えて、タイヤをシュラウドからリムに移送させる環状構造体である。
【0050】
第3の及び最後の段階は、装着組立体を形成するために、移送手段によってタイヤの回転軸に平行に力を加えることで、粒状充填成分が充填されたタイヤをシュラウドからリム上に移送する。
【0051】
円筒形シュラウドに装着されたタイヤで構成される中間組立体を製作する利点は、充填手段とリムに移送するための手段とを切り離すことである。これにより、本発明による装着組立体の製造の自由度が与えられ、タイヤをリムに装着するために移送手段に搬送する前に、複数の中間組立体を同時に製造して貯蔵することができる。
【0052】
本方法は、前述の粉体、膨張ガス、液体といった補助的な成分を含まなくても簡単な粒状充填成分を含む装着組立体の製造に関する。
【0053】
本発明の特徴は、添付図面1から3Cの説明を参照して良好に理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1A】内部キャビティが粒状充填成分で充填され、リムに装着されるタイヤを構成する、装着組立体の子午面の断面図を示す。
図1B】粒状充填成分の拡大図を示す。
図2】タイヤの柔軟性の関数としての荷重の変化曲線を示す。
図3A】本発明による取り付けアッセンブリを製作するステップを示す。
図3B】本発明による取り付けアッセンブリを製作するステップを示す。
図3C】本発明による取り付けアッセンブリを製作するステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1Aから3Cは、理解を容易にするために縮尺通りに示されていない。
【0056】
図1Aは、リム5に装着されたタイヤ1の回転軸を通る平面に沿った子午断面を示す。タイヤ1は、地面と接触するように設計されたトレッド2と、トレッド2の端部から半径方向内向きに延びる2つの側壁3と、側壁3を半径方向内向きに延びてリム5と接触する2つのビード4とを備える。トレッド2、2つの側壁3、2つのビード4、及びリム5は内部キャビティ6を定める。内部キャビティ6は、粒体から構成される粒状充填成分7を含む。
【0057】
図1Bは、粒状充填成分の拡大図である。粒体71は、少なくとも1つのガスが入っている隙間72で分離される
【0058】
図2は、3つの曲線C1、C2、及びC3は、タイヤの柔軟性fの関数としてタイヤに加わる荷重Zの変化を示す。点(Z、f)での曲線Cの接線方向の直線の傾きは、この点でのタイヤの垂直方向の剛性を定める。曲線C1は、粒状充填成分が存在せず圧力Pで膨張した状態での、タイヤに関する柔軟性fの関数として荷重Zの変化を示す。曲線C2は、粒状充填成分が存在するが膨張されていない状態での、タイヤに関する柔軟性fの関数として荷重Zの変化を示す。曲線C3は、粒状充填成分が存在してC1と同じ圧力Pで膨張した状態での、タイヤに関する柔軟性fの関数として荷重Zの変化を示す。曲線C3は、移行値を下回る荷重値に対して従来の膨張式タイヤの特性である曲線C1と区別できず、移行領域の後では中実タイヤの特性である曲線C2と区別できない。
【0059】
図3Aから3Cは、本発明による装着組立体の製作方法のステップを概略的に示す。
【0060】
図3Aは、第1の方法ステップを示す。タイヤ1の内部キャビティ6を閉鎖するように、リムと同径の円筒形シュラウド8を設置する。次に、円筒形シュラウド8を貫通する充填手段9を用いて、円筒形シュラウド8で閉鎖されたタイヤ1の内部キャビティ6を粒状充填成分7で充填する。粒体は、目的とする充填率になるように適切な手段(図示せず)を用いて圧縮される。第1のステップにより中間組立体1、7、8が形成される。
【0061】
図3Bは、第2の方法ステップを示し、中間組立体1、7、8を移送手段10及びタイヤ1が装着されることになるリム5を備える移送フレーム上に配置する段階を含む。
【0062】
最後に、図3Cは、第3の方法ステップを示し、装着組立体1、7、5を形成するために移送手段10でタイヤの回転軸に平行な力を加えることによって、粒状充填成分7で充填されたタイヤ1をシュラウド8からリム5へ移送する。
【0063】
本発明者は、運搬車両に本発明を使用して記載した充填方法によって装着組立体を製作した。使用する粒状充填成分は、タイヤ再生時のトレッドのリサイクルで生じる再生粉体の粒体から構成される。粉体の間の隙間は、大気中空気で満たされる。得られた充填率は、約0.85である。また、記載した種々の実施形態、つまりタイヤの使用圧力での膨張空気、水等の液体、及びカーボンブラックベースの粉体に照らして試験を行った。
【符号の説明】
【0064】
1 タイヤ
2 トレッド
3 側壁
4 ビード
5 リム
6 内部キャビティ
7 粒状充填成分
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C