特許第6129870号(P6129870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6129870-非剛体の被試験物の漏れを検出する方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129870
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】非剛体の被試験物の漏れを検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20170515BHJP
   G01M 3/38 20060101ALI20170515BHJP
   G01M 3/40 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G01M3/26 Z
   G01M3/38 Z
   G01M3/40 Z
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-549497(P2014-549497)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公表番号】特表2015-506472(P2015-506472A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2012077079
(87)【国際公開番号】WO2013102610
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】102012200063.1
(32)【優先日】2012年1月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ヴェツィヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴィオ・デッカー
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−508536(JP,A)
【文献】 特表2003−505690(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00741288(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 − 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非剛体の被試験物の漏れを検出する方法であって、
前記被試験物(12)をフィルムチャンバ(10)の中に導入するステップと、
前記被試験物(12)の外側の前記フィルムチャンバ(10)の中の圧力を低下させるステップと、
前記フィルムチャンバ(10)のフィルム(14,16)の空間的な変化に基づいて前記被試験物(12)の漏れを検出するステップと
を備える、方法。
【請求項2】
前記フィルム(14,16)の空間的な変化はフィルム表面の位置のレーザー光の測定によって測定される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザー光の測定は、前記フィルム表面に向けられたレーザーの偏向の変化を測定することによって実行される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルムの空間的な変化は、金属化されたフィルム表面のキャパシタンスの変化を測定することによって検出される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルムの空間的な変化は、フィルム表面との接触の有無を示す装置によって検出される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記被試験物(12)の漏れ口を通して漏れるガスの漏れ速度は、測定された前記フィルム(14,16)の空間的変化に応じて計算される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記フィルムチャンバ(10)の圧力は、前記被試験物(12)の圧力よりも少なくとも500ミリバール低い圧力に減少させる、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記フィルムチャンバ(10)の圧力の減少は、前記被試験物(12)の大気圧を維持しつつ実行される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非剛体の被試験物の漏れを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非剛体の被試験物は、圧力変化によってへこむ柔軟な構造を有する。前記被試験物は、例えば、食べ物のパッケージである。被試験物の内部圧力と周囲圧力の差が大きすぎると、被試験物は破裂するか、または少なくとも損傷するおそれがある。
【0003】
従来、非剛体の被試験物はテストガスで満たされ、テストガスは、必要とされる圧力差を作り出すために使用されるポンプシステムの排出ガスの流れの中で測定される。代替手段としては、センサが被試験物の内部の充填ガスに適合されている場合、特定のテストガスの使用を除外することができる。この測定方法では、測定結果は周囲ガスの影響によって妥協することがある。
【0004】
米国特許第4862732号明細書は、柔軟な容器の内部圧力を増加させることによって加圧された柔軟な容器の漏れ口の漏れ速度を測定することを開示する。これは、圧力が高すぎる場合、被試験物が破裂するか、または損傷するリスクを生み出す。
【0005】
米国特許第5767392号明細書は、外側から加えた力によって容器を圧迫し、外部圧力を取り除いた後、容器の壁の挙動を観察することによる柔軟な容器の漏れの検出を開示する。この方法では、加えることができる圧力が限定され、圧力が高すぎる場合、容器は損傷するか、または破裂することがある。
【0006】
米国特許第6955076号明細書は、テストガスを用いた、フィルムチャンバの中の被試験物の漏れの検出を開示する。テストチャンバと無関係である、フィルムチャンバの縁領域の容積を空にすることによって、フィルムチャンバの閉塞能力と気密性を向上させることが記載されている。これによって、測定結果を妥協する(compromise)ために、ガスが、フィルムチャンバの周囲からチャンバの閉じた領域の漏れ口を通して、テストチャンバの中に入らないことが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4862732号明細書
【特許文献2】米国特許第5767392号明細書
【特許文献3】米国特許第6955076号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、非剛体の被試験物の漏れ検出の単純化された方法を提供することである。
【0009】
本発明の方法は、請求項1に規定されている。
【0010】
初めに、剛体の被試験物は、閉じた状態のフィルムチャンバの中に挿入されている。フィルムチャンバは、フィルムチャンバの内部の圧力とその周囲の圧力の差に応じて形を変化させる柔軟な壁部分を有するテストチャンバである。被試験物がフィルムチャンバの中に挿入された後、フィルムチャンバは閉じられ、フィルムチャンバの内部の圧力は、被試験物の外側の領域で減少される。このプロセスでは、フィルムチャンバの柔軟な壁は被試験物に密着する。フィルムチャンバのフィルムは、外側からテストチャンバに接触する。その後、被試験物に密着するフィルムの空間的な変化が漏れの表れとして解釈される漏れの検出が、フィルムチャンバのフィルムを観察することによって実行される。フィルムチャンバの内部の圧力が下げられたときに被試験物に密着するフィルムは、外側から非剛体の被試験物を支持し、被試験物の破裂を阻止する。
【0011】
フィルムの位置の変化、またはフィルムチャンバの容積の変化の測定において、フィルムチャンバの気密性に関して特別に要求されるものが何もない点は、本発明にかかる方法の特別な利点である。フィルムチャンバ内部の圧力増加を測定する従来の方法、またはフィルムチャンバのテストガスを使用した気密性テストのための従来の方法では、フィルムチャンバの気密性は測定結果に大きく影響するが、本発明の方法では、フィルムチャンバの気密性はあまり重要ではない。ただ、望んだ通りにフィルムチャンバの圧力を低下させることができるように、前記フィルムチャンバの気密性が実現されるべきである。漏れがあるフィルムチャンバの中の圧力を低下させることは、相応の高い吸引能力を有するポンプを使用して実現することができる。特に、テスト下の被試験物の気密性に等しいか、またはそれより低いフィルムチャンバの気密性を単に実現するだけで十分である。フィルムチャンバの漏れ速度は、被試験物の漏れ速度と同じであるか、または被試験物の漏れ速度の少なくとも2倍である。
【0012】
空間の変化の測定は、フィルム表面の位置のレーザー光測定を用いて、例えば、フィルム表面に向けられたレーザーの様々な偏向によって実行してもよい。金属化されたフィルム表面の場合、測定は、キャパシタンスの変化を測定することによって実行できる。代案として、フィルム表面との接触の有無を示す装置を使用することもできる。例えば、接触ピン(contact pin)、または接触ゲージ(contact gauge)は、フィルム表面の位置的な変化を機械的に検出できる。
【0013】
本発明によれば、漏れの検出を実行するだけでなく、漏れ口を通して漏れるガスの漏れ速度も測定することが望ましい。ここでは、漏れ速度は、測定されたフィルムの空間的変化に応じて計算される。これに関して、フィルムの位置の変化が大きくなればなるほど、漏れが多くなるという原理が適用される。
【0014】
望ましくは、本発明の方法を実行する際、フィルムチャンバの圧力は、被試験物の圧力よりも少なくとも500ミリバール、望ましくは少なくとも950ミリバール低い圧力に減少させる。結果として、これにより、被試験物の外側のフィルムチャンバの圧力と、被試験物の内部の圧力との間に、少なくとも500ミリバール、望ましくは少なくとも950ミリバールの圧力差を生じる。フィルムチャンバのフィルムを被試験物に密着させ、フィルムチャンバのフィルムに被試験物を支持させることにより、被試験物を破壊する、または損傷することなく大きな圧力差を発生させることができる。フィルムチャンバの圧力が下げられたとき、被試験物の大気圧は維持できる。
【0015】
本発明の実施形態は、図を参照して、以下で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】図は本発明の方法を実行する測定の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
測定の構成は、食べ物のパッケージの形の非剛体の被試験物12が中に配置されたフィルムチャンバ10によって形成されている。被試験物12がフィルムチャンバ10の中に配置された後、フィルムチャンバは、2つのフィルム14,16の一方を他方の上に置き、被試験物12を2つのフィルム14,16の間に位置させ、クランプ装置18によって縁領域で気密にする形で互いに対してフィルムをプレスすることによって閉じられる。
【0018】
その後、フィルムチャンバは、弁22を介してフィルムチャンバの内部と接続された真空ポンプ20によって真空にされる。ここでは、弁22は開かれ、フィルムチャンバ10の内部と接続された通気弁24は大気に対して閉じられている。被試験物12の中は大気圧となっているが、被試験物12を包囲するフィルムチャンバ内部の圧力は、少なくとも1000ミリバール下げられる。フィルムチャンバの圧力が下げられた後、弁22は閉じられ、ポンプ20を停止させる。
【0019】
距離センサ26は、フィルム14の位置を距離センサ26とフィルムチャンバ10のフィルムとの間の距離のレーザー光の測定によって監視するために使用される。フィルム14の空間的な位置の変化は、距離センサ26からの減少した距離として検出され、漏れのインジケータとして使用される。
【0020】
例えば、10−2ミリバール・リットル/秒の漏れ速度で、1000ミリバールでガスが充填された1リットルの容積のパッケージで10−2立方センチメートル/秒の容積変化を生じる。1リットルの立方体状のパッケージの容積(断面領域100cm)に対して、これは、1マイクロメータ毎秒の厚さの減少を意味する。1マイクロメータ毎秒の相対的な距離の変化速度は、特に光学的方法によって検出できる。パッケージの容積の変化は、フィルムのテストチャンバのフィルム表面に伝達される。
【0021】
本発明の方法は、被試験物、及びフィルムチャンバのガスの種類と無関係である。フィルムチャンバの漏れは、テスト方法に影響するが無視できる。大きな漏れは、フィルム表面の極めて顕著であり素早い位置的な変化によって、素早く検出される。ごく少数の弁のみが、例えばポンプの接続や通気の目的で必要とされる。
【符号の説明】
【0022】
10 フィルムチャンバ
12 被試験物
14 フィルム
16 フィルム
18 クランプ装置
20 真空ポンプ
22 弁
24 通気弁
26 距離センサ
図1