特許第6129900号(P6129900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6129900ナノファイバ製造用スピナレット及びそれを備えた静電紡糸装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129900
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ナノファイバ製造用スピナレット及びそれを備えた静電紡糸装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 4/02 20060101AFI20170508BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20170508BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20170508BHJP
【FI】
   D01D4/02
   D01D5/04
   D04H1/728
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-116791(P2015-116791)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-2425(P2017-2425A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591202122
【氏名又は名称】株式会社メック
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】井上 高志
(72)【発明者】
【氏名】江頭 幹朗
(72)【発明者】
【氏名】柳原 敏雄
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−038312(JP,A)
【文献】 特開2013−124426(JP,A)
【文献】 特開2009−097113(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0013141(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00−13/02
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に原料液体充填空間を有する導電性のスピナレットパイプと、
前記スピナレットパイプの長手方向の複数箇所に設けられ、前記スピナレットパイプの前記原料液体充填空間と通じる液体流路および吐出口を有する導電性のスピナレットリングと
を備え、
前記スピナレットリングは、前記スピナレットパイプの長手方向と直交する方向に半径方向を向けて設けられ、
隣り合う前記各スピナレットリングの吐出口が、前記スピナレットパイプの中心軸からコレクタに向かう方向を中心に、交互に、前記スピナレットリングの半径方向の異なった方向を指向することを特徴とする
ナノファイバ製造用スピナレット。
【請求項2】
前記各スピナレットリングは、前記スピナレットパイプの中心軸に対して吐出口の方向を調整可能である請求項1記載のナノファイバ製造用スピナレット。
【請求項3】
原料液体供給部と前記スピナレットパイプの前記原料液体充填空間とを接続する原料供給チューブは、前記スピナレットパイプの中途部に設けられた継手により結合されている請求項1または2記載のナノファイバ製造用スピナレット。
【請求項4】
導電性のコレクタと、前記コレクタに対して離隔して配置された請求項1から3のいずれかの項に記載のナノファイバ製造用スピナレットと、前記コレクタと前記ナノファイバ製造用スピナレットの間に高電圧を印加する高電圧電源とを備えた静電紡糸装置。
【請求項5】
前記ナノファイバ製造用スピナレットを複数、前記スピナレットパイプが平行になるように配置した請求項4記載の静電紡糸装置。
【請求項6】
前記各スピナレットパイプは、隣接するスピナレットパイプに対してスピナレットリングの吐出口の位置がずれるように配置されている請求項4または5記載の静電紡糸装置。
【請求項7】
前記コレクタは、ナノファイバを連続的に巻き取るベルト式コレクタである請求項4から6のいずれかの項に記載の静電紡糸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ型の溶液供給部とリング型の溶液吐出部を持つ静電紡糸方式のナノファイバ製造用スピナレットに関し、さらに詳しくは、ナノファイバを高効率で量産化するに適したスピナレット及びそれを備えた静電紡糸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療工学、創傷材料、ドラッグデリバリ等のヘルスケアの分野、生体分子の精製や汚染水質の浄化を目的としたアフィニティ膜、センサ等のバイオテクノロジー・環境工学の分野、ポリマーバッテリ、色素増感太陽電池、高分子膜燃料電池等のエネルギ分野、あるいは、複合材料の強化材、対バイオテロ攻撃、ガス攻撃を想定した防護服等の防護・セキュリティの分野等の広い分野において、ミクロン(μm)未満のナノオーダの径(例えば数nm〜数百nm)を有する繊維(ナノファイバ)が注目されている。
【0003】
このようなナノファイバを製造する技術の一つに、エレクトロスピニング法(静電紡糸法)がある。
このエレクトロスピニング法は、繊維の素材となるポリマーと揮発性の溶媒とのポリマー溶液を噴射する紡糸口を有するノズルと、平板状のコレクタと、ノズルとコレクタとの間に高電圧を印加する高圧電源とを備えたエレクトロスピニング装置を用いる。高電圧が印加されていない状態では、ポリマー溶液は、ノズルの先端の紡糸口の先端部において、表面張力で留まっている。紡糸口とコレクタとの間に、数kV〜100kVの電圧を印加すると、紡糸口先端のポリマー溶液の液滴は+(または−)に帯電し、異極に帯電(アース)しているコレクタに向かう電気力線に沿って作用する静電力(クーロン力)により吸引される。静電力が表面張力よりも越えると、ポリマー溶液の紡糸ジェットがコレクタに向かって連続的に噴射される。このとき、ポリマー溶液中の溶媒は揮発し、コレクタに到達する際には、ポリマーの繊維のみとなり、ナノレベルの細さのナノファイバとなる。なお、ナノファイバの原料としては、有機物のポリマーのみならず、金属酸化物、セラミック等の無機物をゾル−ゲル法によって、ナノファイバ形状に紡糸することも可能である。
ところで、ナノファイバの製造も、試験的段階から量産的段階に入ろうとしている。
【0004】
このような量産型スピナレットとして、特許文献1には、ポリマー溶液を吐出する複数のノズルが2次元的に配置されたノズルブロックを備え、所定の搬送方向に搬送されて行く長尺シートにポリマー溶液を吐出することによってナノ繊維を堆積させる電界紡糸装置であって、ノズルブロックは、一方の端部が閉塞端で他方の端部がポリマー溶液供給口となっている管体を有し、各管体には、ノズルが各管体の長手方向に沿って所定数ずつ取り付けられており、かつ、各管体の各ポリマー溶液供給口には、ポリマー溶液を流通させるためのポリマー溶液流通パイプが接続されている電界紡糸装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、複数のノズルが2次元的に配置されたノズルブロックと、ポリマー溶液供給装置を備え、長尺シートにポリマー溶液を吐出することによってナノ繊維を堆積させる電界紡糸装置であって、ポリマー溶液供給装置は、成分の異なる複数種類のポリマー溶液を貯留するポリマー溶液タンクと、ポリマー溶液を種類ごとに流通させるポリマー溶液流通パイプとを有し、ノズルブロックは、一方の端部が閉塞端で他方の端部がポリマー溶液供給口となっている管体を有し、各管体には、ノズルが長手方向に沿って所定数ずつ取り付けられており、かつ、各管体の各ポリマー溶液供給口には、ポリマー溶液を流通させるためのポリマー溶液流通パイプが接続された電解紡糸装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、原料液体充填空間部を内部に有し、原料液体離脱用開口と所定の距離を隔てて設置されたコレクタ側から見て円弧状の輪郭を持つ原料液体離脱用開口形成嘴部を先端部に有する導電性の材質からなる液体供給ケーシングに、原料液体離脱用開口形成嘴部の前記円弧状の輪郭に沿って配列された複数の原料液体離脱用開口を備え、原料液体離脱用開口の個々の深さが、原料液体離脱用開口形成嘴部の幅方向の中央から両端部に行くにつれて短くなるように形成されているナノファイバ製造用スピナレットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−167408号公報
【特許文献2】特開2012−167409号公報
【特許文献3】特開2013−124426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前掲の特許文献1及び2には、上述したように、平面状のコレクタに対向する位置に設けられたノズルブロックに、繊維の原料を溶かしたポリマー溶液をコレクタに対して垂直な方向に吐出する複数のノズルを2次元的に配置した電界紡糸装置が記載されている。
しかし、複数のノズルの向きが同じ方向であり、ノズルから吐出される繊維も互いに平行で密接するので、繊維間の電界干渉が避けられず、ノズルによってはポリマー溶液が吐出されないということもあり、一定以上ノズルの間隔を近づけることができないという問題があった。
【0009】
前掲の特許文献3に開示されたスピナレットでは、コレクタ側から見て円弧状の輪郭を持つ原料液体離脱用開口形成嘴部を先端部に有する導電性の材質からなる液体供給ケーシングを有しており、嘴部から吐出される溶液の方向が互いに放射状であるため、繊維間の電界干渉が低減するという効果を有するが、このスピナレット1組ではナノファイバを製造できる面積に限りがあり、幅の長いサンプル作製時は複数組のスピナレットを使用し、さらにスピナレットを左右に稼動させる必要があった。
【0010】
そこで本発明は、ノズルから吐出される繊維間の電界干渉を緩和させ、さらに、紡糸量を上げて、より生産性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明のナノファイバ製造用スピナレットは、内部に原料液体充填空間を有する導電性のスピナレットパイプと、前記スピナレットパイプの長手方向の複数箇所に設けられ、前記スピナレットパイプの前記原料液体充填空間と通じる液体流路および吐出口を有する導電性のスピナレットリングとを備え、前記各スピナレットリングの吐出口が、前記スピナレットパイプの中心軸からコレクタに向かう方向に対して異なった方向を指向することを特徴とする。
【0012】
前記各スピナレットリングは、前記スピナレットパイプの中心軸に対して吐出口の方向を調整可能とすることができる。
原料液体供給部と前記スピナレットパイプの前記原料液体充填空間とを接続する原料供給チューブは、前記スピナレットパイプの中途部に設けられた継手により結合されている構成とすることができる。
【0013】
本発明の静電紡糸装置は、導電性のコレクタと、前記コレクタに対して離隔して配置されたナノファイバ製造用スピナレットと、前記コレクタと前記ナノファイバ製造用スピナレットの間に高電圧を印加する高電圧電源とを備えたことを特徴とする。
前記ナノファイバ製造用スピナレットを複数、前記スピナレットパイプが平行になるように配置した構成とすることができる。
前記各スピナレットパイプは、隣接するスピナレットパイプに対してスピナレットリングの吐出口の位置がずれるように配置されている構成とすることができる。
前記コレクタは、ナノファイバを連続的に巻き取るベルト式コレクタとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のナノファイバ製造用スピナレットによれば、内部に原料液体充填空間を有する導電性のスピナレットパイプと、スピナレットパイプの長手方向の複数箇所に設けられ、スピナレットパイプの原料液体充填空間と通じる液体流路および吐出口を有する導電性のスピナレットリングとを備え、各スピナレットリングの吐出口が、スピナレットパイプの中心軸からコレクタに向かう方向に対して異なった方向を指向する構成としたことにより、次の効果を奏する。
(1)隣り合うスピナレットリング(ノズル)の吐出口の噴射角度が異なるため、紡糸繊維間の電界干渉を緩和することができる。結果として、ノズル同士を近い距離に配置することができる。ノズルから吐出される繊維間の電界干渉を緩和させることができる。
(2)ノズル間隔を近付けることができるため、紡糸量を上げて、より生産性向上を図ることができる。
(3)スピナレットパイプへの溶液の供給を端部ではなく中途部から行うことにより、吐出量の差が抑えられ、ノズル毎の吐出量を均一に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る静電紡糸装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るナノファイバ製造用スピナレットの構成を示すものであり、(a)は斜視図、(b)はスピナレットリングAの断面図、(c)はスピナレットリングBの断面図である。
図3】スピナレットパイプへの溶液供給方法を示す説明図であり、(a)は比較例の場合、(b)は本発明の実施の形態の場合を示す。
図4】本発明の実施の形態による紡糸状態を示すものであり、(a)は紡糸開始時のコレクタ状の繊維、(b)は連続運転による不織布の生成状態を示す図である。
図5】ノズルからの紡糸ジェット間の電界干渉緩和の状況の説明図であり、(a−1)は従来のシリンジを複数並べた状態の斜視図、(a−2)はそのときの繊維生成状態、(b)は本発明による繊維生成状態を示すものである。
図6】生産性の状態を示す説明図であり、(a)は従来の左右稼動なしでのサンプル作成状態、(b)は本発明によるサンプル作成状態を示す。
図7】スピナレットパイプへの溶液の供給の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
本発明の実施の形態に係る静電紡糸装置は、図1に示すように、複数のスピナレット10と、コレクタとしての基材20と、スピナレット10と基材20間に高電圧を印加する高電圧電源30と、スピナレット10に繊維となる原料を溶解した溶液を供給する溶液供給装置40とを備えている。スピナレット10と溶液供給装置40とは、溶液供給チューブ41で接続されている。基材20は、供給ロール21と巻取りロール22の間に巻き付けられ、スピナレット10による紡糸領域では平面となるように支持ロール23,24で支持されている。
【0017】
スピナレット10は、図2(a)に示すように、中空の金属製(導電性)のスピナレットパイプ11と、このスピナレットパイプ11の内部の原料液体充填空間と通じる液体流路および吐出口12を有する導電性のスピナレットリングAと、スピナレットリングBを交互に複数備えている。各スピナレットリングA,Bの吐出口12は、図2(b),(c)に示すように、スピナレットパイプの中心軸から基材20に向かう方向に対して異なった方向θ1,θ2を指向する。このθ1,θ2は、図1に示すように、スピナレット10を複数、所定間隔で配置する際に、基材20上に吐出された繊維ができるだけ均等になる角度に選ばれる。また、隣接するスピナレット10を、基材の搬送方向と直交する方向にずらして、基材20上に吐出された繊維ができるだけ均等になるようにすることが好ましい。
スピナレット10における吐出口12の角度θ1,θ2は、例えば10〜50°、スピナレット10の間隔は200〜400mm、スピナレットリングA,Bの間隔は10〜60mmが好適範囲として挙げられるが、この範囲に限定されない。
【0018】
このように、隣り合うリングのノズル穴の噴射角度の向きが異なるため、紡糸繊維間の電界干渉を緩和させて、ノズル同士をパイプ長手方向の近い位置に配置することができる。
【0019】
図3はパイプ型スピナレットへの溶液供給方法を示すものである。前掲の特許文献1,2に記載された複数の管体には、端部にポリマー溶液流通パイプが接続されており、その供給方法を適用すると図3(a)のようになるが、溶液の供給が端からのため、ノズルA,Bの位置による溶液の流路の長さの違いが大きいので、配管抵抗による吐出圧力の違いが大きく、吐出量の差も多くなる。
これに対して、本発明の実施の形態の場合は、図3(b)に示すように、溶液の供給がスピナレットパイプ11の中央部からであるため、流路の長さが図3(a)の約1/2になるため吐出圧力の差も少なくなり、吐出量の差も少なくなる。
【0020】
本実施の形態のナノファイバ製造用スピナレットを用いて不織布のサンプルを製造した実施例を図4に示す。
【0021】
溶液:PVDF(ポリフッ化ビニリデン)溶液にて紡糸確認。
条件:高さ 150mm 吐出量 1.5ml/hr(穴当り)
印加電圧 30kV
【0022】
図4(a)のようなリング型ノズルを持つパイプ型スピナレット10を基材20の上方150mmの位置に配置し、スピナレットパイプ11の中央部から溶液を供給し、静電紡糸を実施した。リング型ノズルA,Bの紡糸ジェットの指向方向は交互に前後方向とした。このような特殊形状のリング型ノズルにより、紡糸ジェットを2方向へ飛ばし、基材を搬送することで、図4(b)に示すような一様な厚さの不織布サンプルが得られた。
【0023】
図5は、従来のシリンジ型(注射針型)のノズルを複数並べた状態の斜視図(a−1)とそれによる不織布サンプルの生成状態(a−2)、および本発明の実施の形態による紡糸ジェット間の電界緩和による不織布の生成状態(b)を示すものである。
図5(a−1),(a−2)に示す、従来の針を並べたスピナレットに比べ、(b)ではノズルの配置数を容易に増やすことができる。
【0024】
本発明の実施の形態では、ジェットを2方向へ飛ばすことで、電界干渉緩和の効果があると考えられる。
この結果より1本のパイプ型スピナレットで針を1列に並べたスピナレット2列分以上の溶液を紡糸することができ、より準備操作を簡略化し、生産性の向上が期待できる。
【0025】
図6は、従来の、例えば前掲の特許文献3に記載されたスピナレットを、左右稼動をせずにサンプル作成した場合(a)と、本発明の実施例によってサンプル作成した場合(b)を示している。
従来のスピナレットは吐出範囲が狭いので、左右稼動しない場合、図6(a)に示すように隣接するノズル間に繊維が形成されない部分が生じるが、本発明の実施の形態では、隣接するノズルの吐出方向を交互に違えているので、図6(b)に示すように左右稼動しなくても一様な厚みの不織布が得られる。このため、生産性の向上を図ることができる。
【0026】
以上の実施の形態では、図3(b)に示すように、スピナレットパイプ11の中央部に溶液供給チューブ41を接続し、溶液の供給をスピナレットパイプ11の中央部から行うことにより、各ノズルからの溶液の吐出圧にムラが出にくいようにした例を示したが、図7に示すように、スピナレットパイプ11の複数箇所(スピナレットパイプ11の両端からも含む)から供給することによっても、各ノズルからの吐出圧力の差を抑えることができ、吐出量の差も小さくなる。このことより繊維膜の厚みの均一性の向上につながる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ノズルから吐出される繊維間の電界干渉を緩和させ、さらに、紡糸量を上げて、より生産性向上を図ることのできるナノファイバ製造用スピナレット及びそれを備えた静電紡糸装置として、ナノファイバの高速量産化技術に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 スピナレット
11 スピナレットパイプ
12 吐出口
A,B スピナレットリング
20 基材(コレクタ)
21 供給ロール
22 巻取りロール
23,24 支持ロール
30 高電圧電源
40 溶液供給装置
41 溶液供給チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7