(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1に従って説明する。
図1は、正極合剤及び負極合剤及び電解液を扁平形のケース内に収容した扁平形アルカリ一次電池の概略断面図である。
図1において、扁平形アルカリ一次電池1はボタン形の一次電池であって、正極缶2及び負極缶3を有している。正極缶2は、ステンレススチール(SUS)にニッケルメッキを施した材質からなり、カップ状に成型されている。この正極缶2は、正極合剤5を収容するとともに、正極端子として機能する。
【0019】
負極缶3は、ニッケルよりなる外表面層と、ステンレススチール(SUS)よりなる金属層と、銅よりなる集電体層とを有する3層構造のクラッド材からなり、カップ状に成型されている。また、負極缶3は、その円形の開口部3aが折り返し形成されており、その開口部3aには、例えば、ナイロン製のリング状のガスケット4が装着されている。
【0020】
そして、正極缶2の円形の開口部2aに、負極缶3を、ガスケット4を装着した開口部3a側から嵌合させ、該正極缶2の開口部2aを該ガスケット4に向かってかしめて封口することによって、円盤状(ボタン形又はコイン形)のケース8が形成される。該ケース8の内部には、密閉空間Sが形成される。
この密閉空間Sには、正極合剤5、セパレータ6、負極合剤7が収容され、セパレータ6を挟んで正極缶2側に正極合剤5、負極缶3側に負極合剤7がそれぞれ配置されている。
【0021】
この扁平形アルカリ一次電池1を組み立てる際には、ペレット状に成型された正極合剤5を正極缶2に充填する。そして、セパレータ6の上に、ゲル状の負極合剤7を載置し、この上に負極缶3を被せる。さらに、正極缶2の開口縁部をかしめて、ケース8を密閉する。
【0022】
正極合剤5は、正極活物質、導電剤、電解液、結着剤等を含んでいる。正極活物質としては、亜鉛又は亜鉛合金を負極活物質とした場合に正極活物質として使用可能であるものであれば特に限定されない。例えば、正極活物質を、酸化銀顆粒又は二酸化マンガン粉末又はそれらの混合物にしてもよい。又は、正極活物質を、オキシ水酸化ニッケル単独、又はコバルト等を固溶したオキシ水酸化ニッケル等にしてもよい。
負極合剤7は、負極活物質、伝導度安定剤、ゲル化剤、電解液及び粘弾性調整材を含んでいる。
【0023】
負極活物質としては、亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末11を用いている。伝導度安定剤としては、酸化亜鉛(ZnO)等を用いることができる。また、ゲル化剤としては、カルボキシメチルセルロース、又はポリアクリル酸、又はカルボキシメチルセルロースとポリアクリル酸との混合物が好ましい。カルボキシメチルセルロース又はポリアクリル酸を用いることによって、負極合剤7の電解液に対する親液性及び保液性を向上することができる。
電解液は、水酸化カリウム水溶液、又は水酸化ナトリウム水溶液、又はそれらの混合液を用いることができる。
【0024】
粘弾性調整材は、負極合剤7の粘弾性を、良好なハンドリング性が得られる粘弾性とし、且つ生産性を向上するために配合される。この粘弾性調整材としては、強アルカリ性である電解液と反応しない非金属の絶縁性粉末10が用いられる。ここでは、電解液と化学反応せず、且つ電解液を吸収しない状態を、電解液と反応しない状態とする。
【0025】
例えば、必要とする電池の電気容量が低く、負極活物質の比率を小さく設計する場合、亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末11の比率が小さくなるため、その分、粘性の高いゲル化剤や電解液の比率が高くなるが、上記絶縁性粉末10を加えることで、固形分(亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末と絶縁性粉末)と電解液を含んだゲル化剤の体積比が良好に調整されることにより、負極合剤7の粘弾性を良好な範囲に調整することができる。
【0026】
例えば、所定量の負極合剤7をセパレータ上に載置する際、所定容積の丸穴が形成された組立装置に、圧力を付与しながら負極合剤7を充填し、その丸穴の上下を擦り切り用の工具等を用いて擦り切る。さらに、供給ピン13を用いて、成型された負極合剤7を丸穴から抜き出す。上記絶縁性粉末を含有した負極合剤7の場合、負極合剤7の切れが向上されるので、負極合剤7が、丸穴の内周面や、供給ピン13から容易に剥がれ落ち、負極合剤7の取り扱いが容易となり、ハンドリング性を向上できる。また、負極合剤7を、一定量擦り切った際のばらつき、セパレータ上に載置する際の載置ばらつき、秤量ばらつきが抑制され、生産性が向上する。
【0027】
この絶縁性粉末10の平均粒径は、亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末11の平均粒径の60%〜140%であることが好ましい。尚、平均粒径とは、粒度分布曲線において積算値が50%にあたる粒径(D50)をいう。絶縁性粉末10の平均粒径が亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末11の平均粒径の60%を下回ると、粘弾性調整材としての効果を得ることができなくなり、十分なハンドリング性が得られない。また、140%を上回ると、負極活物質、伝導度安定剤、ゲル化剤、電解液及び粘弾性調整材を混合し、負極合剤7を作製する際に、負極活物質である亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末が均一に分散せず、擦り切った負極合剤7に含有する負極活物質の量のばらつきが大きくなり、電気容量のばらつきが大きくなる。
【0028】
図2は、絶縁性粉末10の平均粒径が110μm以下の場合に生産性に及ぼす影響を示す模式図である。
図2(a)は、平均粒径が110μm以上の絶縁性粉末10と、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末11と、ゲル化剤と電解液の混合物12とを含む負極合剤を円柱状に成型し丸穴から押し出す図である。供給ピン13が矢印方向に移動し負極合剤に接触する際に、絶縁性粉末10と亜鉛粉末または亜鉛合金粉末11の周りに付着しているゲル化剤と電解液の混合物12が供給ピン13に接触する。
【0029】
図2(b)は、この供給ピン13が矢印方向に移動し、供給ピン13から負極合剤が剥がれるところを示す図である。
図2(b)では、負極合剤は、供給ピン13から剥がれている。ここで、
図2は、ゲル化剤としてカルボキシメチルセルロース、電解液として水酸化ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液を用いて検証を行った結果に基づく。
【0030】
図2(c)は、平均粒径が110μm以下の絶縁性粉末10と、亜鉛粉末または亜鉛合金粉末11と、ゲル化剤と電解液の混合物12とを含む負極合剤を円柱状に成型し丸穴から押し出す図である。
図2(a)と同様に、供給ピン13が矢印方向に移動し負極合剤に接触する際に、絶縁性粉末10と亜鉛粉末または亜鉛合金粉末11の周りに付着しているゲル化剤と電解液の混合物12が供給ピン13に接触する。
【0031】
図2(d)は、供給ピン13が矢印方向に移動し、供給ピン13から負極合剤が剥がれるところを示す図である。
ここで、負極合剤と負極合剤と供給ピン13とが接触する点に着目すると、
図2(a)ではこの接触点が4箇所(丸印の箇所)であるところ、
図2(c)ではこの接触点は8箇所となっており、
図2(a)の接触点よりも
図2(c)の接触点の方が多いことがわかる。また、絶縁性粉末10の粒子径は、
図2(a)、(b)の場合よりも
図2(c)、(d)の場合の方が小さい。このため、負極合剤を供給ピンから剥がす際に、絶縁性粉末10の平均粒径が110μm以下の場合には、
図2(d)に示すように、供給ピン13に絶縁性粉末10が付着したままとなる。このため、負極合剤を繰り返し押し出すと供給ピン13に付着した負極合剤を取り除かなければならなくなり、生産性が低下する。絶縁性粉末10の平均粒径が110μm以上であれば、
図2(b)のように、負極合剤は供給ピン13に付着しにくいため、供給ピンから負極合剤を取り除く必要はないか、あってもその頻度は絶縁性粉末10の平均粒径が110μm以下の場合より極めて少ない。また、この絶縁性粉末の平均粒径は、350μm以下であることが好ましい。
【0032】
また、この絶縁性粉末は、撥水性を有することが好ましい。撥水性を有する絶縁性粉末を用いると、電解液及びゲル化剤と絶縁性粉末との間の粘着力が、より低減され、負極合剤7を秤量する際の切れが向上する。
また、絶縁性粉末は、撥水性、純度、価格、粉砕化のし易さ(加工性)、耐アルカリ性等の点から、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン及びアクリル樹脂のうちいずれか一つ、又は複数からなる樹脂粉末を用いることが好ましい。
【0033】
さらに、絶縁性粉末は、負極合剤7に対して、配合率が1体積%〜25体積%であることが好ましい。配合率が1体積%を下回ると、粘弾性調整材としての効果を得ることができなくなり、十分なハンドリング性が得られない。また、25体積%を上回ると、負極合剤7の粘弾性が過度に低くなり、負極合剤7の強度が低下してしまう。負極合剤7の強度が低下すると、負極合剤7がセパレータ上に載置される際に形状が崩れ、載置不良が発生しやすくなる。
さらに、絶縁性粉末は、球形であることが好ましい。球形の絶縁性粉末を用いると、電解液を含んだゲル化剤等との摩擦力が小さくなり、負極合剤7の切れが、より向上される。
【0034】
次に、負極合剤7の組成を変更した実施例を行い、当該発明の効果を検証した。
(実施例1)
本実施例では、SR626SW型(外径6.8mm、高さ2.6mm、公称容量30mAh)の扁平形アルカリ一次電池の公称容量を、粘弾性調整材を用いて、10%容量を減らした電池(公称容量27mAh)を作製した。
【0035】
負極合剤7に配合する粘弾性調整材は、ポリエチレン粉末とし、その平均粒径を150μmとした。さらに、負極合剤7を構成する各組成物の配合率を、亜鉛合金粉末25.1体積%、酸化亜鉛(ZnO)1.3体積%、カルボキシメチルセルロース4.9体積%、濃度28質量%の水酸化ナトリウム水溶液53.8体積%、濃度45質量%水酸化カリウム水溶液12.1体積%、ポリエチレン2.8体積%とした。また、亜鉛合金粉末の平均粒径は、150μmとし、亜鉛合金粉末平均粒径に対するポリエチレン粉末平均粒径を100%とした。これらの組成物を混合し、ゲル状の負極合剤7を作製した。
【0036】
正極合材5を構成する各組成物の配合率は、酸化銀(Ag
2O)92質量%、二酸化マ
ンガン5質量%、グラファイト2質量%、ランタンニッケル(LaNi
5)1質量%とし
た。尚、酸化銀の平均粒径は10μm、二酸化マンガンの平均粒径は30μm、グラファ
イトの平均粒径は15μm、ランタンニッケルの平均粒径は35μmとした。
【0037】
そして、これらの組成物を混合し、ペレット状に圧縮成型することで、正極合剤5を作製した。このようにして作製された正極合剤5をニッケルメッキが施された鉄製の正極缶2に収容し、その上からセパレータ6を敷設した。また、その正極缶2に圧入となるリング状のガスケット4を挿入した。さらに、セパレータ上に負極合剤7を載置し、この上にガスケット4を介して負極缶3を被せた。そして、正極缶2の開口縁部をかしめることで前述した扁平形アルカリ一次電池1を作製した。
尚、セパレータ6は、ポリエチレンフィルム、セロファン及び不織布から構成され、ガスケット4は、ポリアミド製である。
【0038】
(実施例2)
実施例1に対し、亜鉛合金粉末の平均粒径を100μm、ポリエチレン粉末の平均粒径を110μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対するポリエチレン粉末の平均粒径を110%とした点のみが異なり、その他の構成は、実施例1と同様にした。
(実施例3)
実施例1に対し、ポリエチレン粉末の平均粒径を110μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対するポリエチレン粉末の平均粒径を73%とした点のみが異なり、その他の構成は、実施例1と同様にした。
(実施例4)
実施例1に対し、ポリエチレン粉末の平均粒径を210μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対するポリエチレン粉末の平均粒径を140%とした点のみが異なり、その他の構成は、実施例1と同様にした。
(実施例5)
実施例1に対し、亜鉛合金粉末の平均粒径を250μm、ポリエチレン粉末の平均粒径を150μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対するポリエチレン粉末の平均粒径を60%とした点のみが異なり、その他の構成は、実施例1と同様にした。
【0039】
(実施例6)
実施例1に対し、亜鉛合金粉末の平均粒径を250μm、ポリエチレン粉末の平均粒径を350μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対するポリエチレン粉末の平均粒径を140%とした点のみが異なり、その他の構成は、実施例1と同様にした。
(実施例7)
実施例1に対し、負極合剤7に添加する粘弾性調整材をポリプロピレンとした点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
(実施例8)
実施例1に対し、負極合剤7に添加する粘弾性調整材をポリアミドとした点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
(実施例9)
実施例1に対し、負極合剤7に添加する粘弾性調整材をポリテトラフルオロエチレンとした点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
【0040】
(実施例10)
実施例1に対し、負極合剤7に添加する粘弾性調整材をアクリル樹脂とした点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
(実施例11)
実施例1に対し、ポリエチレン粉末の配合率を1.0体積%とした点のみが異なり、その他の構成は、実施例1と同様にした。
(実施例12)
実施例1に対し、ポリエチレン粉末の配合率を25.0体積%とした点のみが異なり、
その他の構成は、実施例1と同様にした。
【0041】
(比較例1)
実施例1に対し、粘弾性調整材を添加しない点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
(比較例2)
実施例1に対し、亜鉛合金粉末の平均粒径を100μm、ポリエチレン粉末の平均粒径を60μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対する樹脂粉末の平均粒径を60%とした点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
(比較例3)
実施例1に対し、ポリエチレン粉末の平均粒径を30μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対する樹脂粉末の平均粒径を20%とした点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
(比較例4)
実施例1に対し、ポリエチレン粉末の平均粒径を270μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対する樹脂粉末平均粒径を180%とした点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
【0042】
(比較例5)
実施例1に対し、亜鉛合金粉末の平均粒径を250μm、ポリエチレン粉末の平均粒径を50μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対する樹脂粉末の平均粒径を20%とした点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
(比較例6)
実施例1に対し、亜鉛合金粉末の平均粒径を250μm、ポリエチレン粉末の平均粒径を450μmとし、亜鉛合金粉末の平均粒径に対する樹脂粉末の平均粒径を180%とした点のみが異なり、その他の構成は実施例1と同様にした。
(比較例7)
実施例1に対し、ポリエチレン粉末の配合率を0.5体積%とした点のみが異なり、その他の構成は、実施例1と同様にした。
(比較例8)
実施例1に対し、ポリエチレン粉末の配合率を27.0体積%とした点のみが異なり、その他の構成は、実施例1と同様にした。
【0043】
<検証>
そして、実施例1〜12、及び比較例1〜8の扁平形アルカリ一次電池1を作製し、負極合剤1を載置する際の形状変化、載置性、放電容量とその変動係数を調べるために、以下の検証を行った。
【0044】
<検証1>
所定の容積の丸穴に所定の圧力を加えて負極合剤7を充填後、丸穴の上下を擦り切りながら、丸穴に対し一回り小さい円柱状のピンを用いて、負極合剤7を丸穴から抜き出した。そして、その丸穴に対する負極合剤の形状変化を調査し、各実施例及び比較例の形状変化の有無について評価した。その結果を、
図3の表に示す。ここで、稼動時間(h)とは装置稼動からの経過時間をいい、表では、稼動開始から1時間までの結果、及びそれ以後一時間ごとの結果を4時間まで表している。「−」は、負極合剤が完全に崩れてしまい円柱形状を維持できないことを示している。
【0045】
<検証2>
電池組立機を1時間稼動して、実施例1〜12及び比較例1〜8の扁平形アルカリ一次電池1を作製した。そして、負極合剤7の載置ずれによる、扁平形アルカリ一次電池1の
不良個数を調査した。その結果を、
図3の表に示す。稼動時間については、検証1と同じである。「−」は、負極合剤が崩れてしまい、載置できない状態であることを示している。
【0046】
<検証3>
実施例1〜12及び比較例1〜8の各条件で作製した扁平形アルカリ一次電池1のうち、それぞれ5個を、負荷抵抗30kΩで連続放電させ、0.9Vを終止電圧とした際の放電容量[mAh]を調べ、その変動係数(標準偏差/平均値×100)を算出し、秤量ばらつきに起因する容量ばらつきを調べた。その結果を、
図3の表に示す。稼動時間については、検証1と同じである。放電容量変動係数での「−」は、負極合剤が崩れてしまい載置できないため、電池を作製できなかったことを示している。
【0047】
<検証結果の検討>
・比較例1と実施例1〜12を比較すると、比較例1では、形状は稼動開始から2〜3時間で崩れが発生した。また、載置不良および放電容量の変動は、稼動開始時から1時間以内に発生した。つまり、負極合剤7に、樹脂粉末を添加することによって、負極合剤7の載置ばらつきを低減できるため生産性を向上できることがわかる。これは、負極合剤7に樹脂粉末を適量添加することで、負極合剤7の粘弾性を好ましい状態にすることができるためである。また、検証3で得た放電容量の変動係数から、負極合剤7に樹脂粉末を添加することにより、電気容量のばらつきも低減できることがわかる。これは、負極合剤7に撥水性を有する樹脂粉末を添加することにより、負極合剤自身の切れを向上し秤量ばらつきを低減できるためである。
【0048】
・比較例2と実施例2を比較すると、載置不良については、比較例2では稼動開始時から載置不良が発生しているのに対し、実施例では4時間の稼動においても載置不良が発生していない。放電容量の変動係数も実施例2の方が低くなっていることがわかる。また、形状は、実施例2が4時間の稼動においても良好であるのに対し、比較例2では稼動開始時から3〜4時間で崩れが発生した。これらより、亜鉛合金粉末の平均粒径に対する樹脂粉末の粒径が60〜140%内にあっても、樹脂粉末の平均粒径を110μm以上に保つことによって、生産性が向上できることがわかる。
【0049】
・比較例3及び4と実施例3及び4を比較すると、形状では実施例3、4ともに4時間の稼動においても良好であるのに対し、比較例3では、2〜3時間で崩れが発生している。載置不良発生数では、実施例3では3〜4時間で1件、実施例4では4時間の稼動においても載置不良が発生していないのに対し、比較例3では稼動直後、比較例4では2〜3時間で載置不良が発生している。つまり、樹脂粉末の平均粒径が110μm以上であることを満たす範囲に樹脂粉末粒径を調節することにより、載置不良、秤量ばらつきを抑えることが出来ることがわかる。
【0050】
・比較例5及び6と実施例5及び6を比較すると、形状では実施例5、6ともに4時間の稼動においても良好であるのに対し、比較例5では、2〜3時間で崩れが発生している。載置不良発生数では、実施例5では3〜4時間で1件、実施例6では4時間の稼動においても載置不良が発生していないのに対し、比較例5では稼動直後、比較例6では2〜3時間で載置不良が発生している。つまり、亜鉛合金粉末平均粒径を250μmに変更した場合でも、樹脂粉末の平均粒径を、亜鉛合金粉末の平均粒径に対する樹脂粉末の粒径が60〜140%内に調節することにより、載置不良、秤量ばらつきを抑えることが出来ることがわかる。
【0051】
ここで、酸化銀電池を代表とする扁平形一次電池の負極に使用される亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末として、一般的には、平均粒径が50〜250μmのものが使われる。この平均
粒径が50μmを下回ると、亜鉛の表面積が増えるため、空気中で自然発火する恐れがあり、取り扱いが難しい。逆に250μmを上回ると、亜鉛の表面積が減るため、電池にしたときの放電特性が悪くなる。この亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末の平均粒径の最大値は、実施例6から250μmとなるので、樹脂粉末の最大値は、250μm×140%=350μmとなる。
【0052】
・比較例7、8と実施例11、12を比較すると、形状では実施例11、12ともに4時間の稼動においても良好であるのに対し、比較例7は2〜3時間、比較例8は1〜2時間で崩れが発生している。載置不良発生数では、実施例11が2〜3時間、実施例12が3〜4時間で載置不良が発生しているのに対し、比較例7では稼動直後、比較例8では1〜2時間で載置不良が発生している。つまり、樹脂粉末の配合率が1体積%を下回ると負極合剤の粘弾性が増大し、粘弾性調整材としての役割を果たさないことがわかる。また、樹脂粉末の配合率が25体積%を上回ると、負極合剤中の樹脂粉末が多すぎるために、僅かな応力でも形状を保てず形が崩れた。この場合も粘弾性調整材としての役割を果たさないことがわかる。
【0053】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることがわかる。
(1)上記実施形態によれば、負極合剤7は、亜鉛粉末又は亜鉛合金粉末を主負極活物質とし、ゲル化剤を含むとともに、粘弾性調整材として、平均粒径が110μm以上であって亜鉛又は亜鉛合金粉末平均粒径に対して60%〜140%の電解液と反応しない非金属の絶縁性粉末を含む。このため、ゲル化剤の比率が大きくなっても、絶縁性粉末を加えることにより、負極合剤7の粘弾性を調整することができる。従って、電池の電気容量を必要容量に維持しつつ、負極合剤7を秤量及び成型する際のハンドリング性を向上させることができる。また、載置ばらつき及び秤量ばらつきが抑制され、生産性を向上することができる。
【0054】
(2)上記実施形態によれば、粘弾性調整材として負極合剤7に配合する絶縁性粉末を、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン及びアクリル樹脂のいずれか1つ、又は複数からなる樹脂粉末とした。このため、撥水性、価格、加工性、耐アルカリ性等の条件を満たす粉末を用いて、負極合剤7の粘弾性を調整することができる。
【0055】
(3)上記実施形態によれば、負極合剤7は絶縁性粉末を1体積%〜25体積%含む。このため、電池の電気容量を必要容量に維持しつつ、良好なハンドリング性が得られる。
尚、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
・扁平形一次電池1としては、上記したように、正極活物質を二酸化マンガンとするアルカリボタン電池、酸化銀とする酸化銀電池、オキシ水酸化ニッケルとする電池の他、空気極を有する空気亜鉛電池でもよい。