(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6130016
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】塗装装置、塗装方法及び混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05B 7/26 20060101AFI20170508BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20170508BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20170508BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20170508BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
B05B7/26
B05D1/02 Z
B05D7/24 303B
B05D7/24 303E
C09D201/00
C09D7/12
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-84706(P2016-84706)
(22)【出願日】2016年4月20日
【審査請求日】2016年4月25日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000187149
【氏名又は名称】昭和電工ガスプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】那須 貴樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 康宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】森 亮太
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−228473(JP,A)
【文献】
特開平01−258770(JP,A)
【文献】
特開平06−218318(JP,A)
【文献】
特表平03−504828(JP,A)
【文献】
特表平03−504689(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/113489(WO,A1)
【文献】
特開2010−234348(JP,A)
【文献】
特開2010−234349(JP,A)
【文献】
特開2012−086150(JP,A)
【文献】
特開2012−086151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00〜 3/18
7/00〜 9/08
B05D 1/00〜 7/26
C09D 1/00〜 10/00
101/00〜201/10
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料用駆動ポンプと、この塗料用駆動ポンプと塗料供給源とを含み混合器に塗料を供給する塗料供給ラインと、二酸化炭素用駆動ポンプと、この二酸化炭素用駆動ポンプと二酸化炭素供給源と仕切弁とを含み前記混合器に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給ラインと、前記塗料供給ライン、前記二酸化炭素供給ライン又は前記混合器のいずれか1つ以上に、塗膜の光沢度及び平滑性を高める光沢度向上剤を添加する光沢度向上剤供給手段と、前記塗料、前記二酸化炭素及び光沢度向上剤の成分を混合して混合物を生成する前記混合器と、前記混合物の粘度を調節する粘度調節手段と、前記混合器に混合物ラインで接続し、かつ前記混合物を噴射する噴射手段とで構成され、前記塗料は、少なくとも塗膜を形成する主成分となる有機原材料と前記有機原材料を溶解する有機溶媒とを含み、前記光沢度向上剤は、前記塗料の有機原材料を溶解する有機溶媒のうち、最も重量比の高い第一有機溶媒成分と同成分の溶媒、該第一有機溶媒成分の次に重量比の高い第二有機溶媒成分と同成分の溶媒又はグリコールエーテル類のいずれか1つ以上で、かつ、少なくとも沸点が100℃以上、蒸発速度1.0以下又は溶解度パラメーターが8.5(cal/cm3)0.5乃至11.5(cal/cm3)0.5のいずれかであって、前記塗料の塗膜を形成する主成分となる有機原材料に対して1〜10%を添加するものであり、前記混合物の粘度は、少なくとも前記二酸化炭素供給ラインに設けられた二酸化炭素定量添加部により二酸化炭素の添加量を調節すること又は前記混合物ラインに設けられた温度調節器によって前記混合物の温度を調節することのいずれかからなる粘度調節手段により、100mPa・s以下の状態にすることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記光沢度向上剤である前記グリコールエーテル類は、ブチルセロソルブであることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記光沢度向上剤供給手段は、前記二酸化炭素供給ラインの二酸化炭素供給源、二酸化炭素供給源と二酸化炭素定量添加部の間、二酸化炭素定量添加部又は二酸化炭素定量添加部と混合器の間のいずれかに接続され、この接続部で光沢度向上剤と二酸化炭素を混合した後に、前記混合器で塗料と光沢度向上剤と二酸化炭素の混合物を混合することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項4】
前記光沢度向上剤供給手段は、前記混合器に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項5】
前記光沢度向上剤供給手段は、光沢度向上剤用ポンプと、光沢度向上剤供給源と、光沢度向上剤添加弁と、光沢度向上剤定量添加部とを含む光沢度向上剤供給ラインであり、かつ、前記光沢度向上剤添加弁の開閉が前記二酸化炭素供給ラインの仕切弁の開閉と連動していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項6】
前記混合器は、中心衝突型、多重管型、又は中心衝突型と多重管型を組み合わせたもののいずれかであることを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項7】
制御部及び該制御部に接続される検知手段を更に設け、該検知手段の検出信号に基づき前記仕切弁と光沢度向上剤添加弁の開閉を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項8】
前記塗料用駆動ポンプは、エアー供給ラインから供給されるエアーを駆動源とするとともに、検知手段として該エアー供給ラインに流れるエアーの流量を検知する流量センサーを設けたことを特徴とする請求項7に記載の塗装装置。
【請求項9】
検知手段として前記塗料供給ラインに流れる塗料の流量を検知する塗料流量計を設けたことを特徴とする請求項7に記載の塗装装置。
【請求項10】
検知手段として前記塗料供給ラインに流れる塗料の圧力又は混合物ラインに流れる混合物の圧力を検知する圧力センサーを設けたことを特徴とする請求項7に記載の塗装装置。
【請求項11】
塗料供給源から供給される塗料、二酸化炭素供給源から供給される二酸化炭素及び光沢度向上剤供給源から供給される塗膜の光沢度及び平滑性を高める光沢度向上剤を混合器により混合して混合物を生成する混合物生成工程と、該混合物生成工程で生成された混合物の粘度を二酸化炭素の添加量を調節すること又は前記混合物ラインに設けられた温度調節器のいずれか1つ以上の粘度調節手段によって100mPa・s以下の状態にする粘度調節工程と、該粘度調節工程で粘度が調節された混合物を噴射手段により塗装対象物に噴射する噴射工程とで構成され、前記塗料は、少なくとも塗膜を形成する主成分となる有機原材料と前記有機原材料を溶解する有機溶媒とを含み、前記光沢度向上剤は、前記塗料の有機原材料を溶解する有機溶媒のうち、最も重量比の高い第一有機溶媒成分と同成分の溶媒、該第一有機溶媒成分の次に重量比の高い第二有機溶媒成分と同成分の溶媒又はグリコールエーテル類のいずれか1つ以上で、かつ、少なくとも沸点が100℃以上、蒸発速度1.0以下又は溶解度パラメーターが8.5(cal/cm3)0.5乃至11.5(cal/cm3)0.5のいずれかであって、前記塗料の塗膜を形成する主成分となる有機原材料に対して1〜10%を添加するものであることを特徴とする塗装方法。
【請求項12】
塗料供給源から供給される塗料、二酸化炭素供給源から供給される二酸化炭素及び光沢度向上剤供給源から供給される塗膜の光沢度及び平滑性を高める光沢度向上剤を混合器により混合して混合物を生成し混合物ライン混合物生成工程と、該混合物生成工程で生成された混合物の粘度を二酸化炭素の添加量を調節すること又は前記混合物ラインに設けられた温度調節器のいずれか1つ以上の粘度調節手段によって100mPa・s以下の状態にする粘度調節工程とで構成され、前記塗料は、少なくとも塗膜を形成する主成分となる有機原材料と前記有機原材料を溶解する有機溶媒とを含み、前記光沢度向上剤は、前記塗料の有機原材料を溶解する有機溶媒のうち、最も重量比の高い第一有機溶媒成分と同成分の溶媒、該第一有機溶媒成分の次に重量比の高い第二有機溶媒成分と同成分の溶媒又はグリコールエーテル類のいずれか1つ以上で、かつ、少なくとも沸点が100℃以上、蒸発速度1.0以下又は溶解度パラメーターが8.5(cal/cm3)0.5乃至11.5(cal/cm3)0.5のいずれかであって、前記塗料の塗膜を形成する主成分となる有機原材料に対して1〜10%を添加するものであることを特徴とする混合物の製造方法。
【請求項13】
前記光沢度向上剤である前記グリコールエーテル類は、ブチルセロソルブであることを特徴とする請求項12に記載の混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動産又は不動産の如何を問わず、噴射手段(噴射ガン)を操作して物の表面に混合物を塗布する塗装装置、塗装方法及び混合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「有機溶剤系の噴霧塗装において用いられる希釈溶剤(シンナー)を、二酸化炭素で一部又は全部を代替する二酸化炭素塗装において、塗料供給ラインとして、塗料を貯蔵するタンク、該タンクから供給される塗料を所定の圧力まで加圧する塗料高圧ポンプ、該塗料高圧ポンプの吐出圧を調整し、余剰分を塗料タンクへ返送させる塗料1次圧調整弁を有し、二酸化炭素供給ラインとして、液体二酸化炭素を貯蔵するタンク、該液体二酸化炭素を所定温度まで冷却する冷却器、該冷却器から供給される液体二酸化炭素を所定の圧力まで加圧する液体二酸化炭素高圧ポンプ、該液体二酸化炭素高圧ポンプの吐出圧を調整し、余剰分を同ポンプのサクションに返送させる液体二酸化炭素1次圧調整弁を有し、塗料/二酸化炭素混合物ラインとして、上記塗料供給ラインから供給される加圧された塗料、上記二酸化炭素供給ラインから供給される加圧された二酸化炭素とを混合する混合器、及び該混合器から供給される混合後の塗料/二酸化炭素加圧混合物を大気圧下の塗装対象物へ噴霧する噴霧ガンを有することを特徴とする二酸化炭素を用いた塗装装置」が開示されている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1乃至4に記載されている公知発明は、希釈溶剤(シンナー)を、二酸化炭素で一部又は全部を代替するため、光沢度不足や平滑性不足等の塗膜不良を起こす可能性があるという問題があった。これらの問題点は、特許文献2〜特許文献4も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−234348号公報
【特許文献2】特開2010−234349号公報
【特許文献3】特開2012−86150号公報
【特許文献4】特開2012−86151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、希釈シンナーを削減でき、かつ、混合物の塗膜の光沢度不足や平滑性不足による塗膜不良が生じることを防止できる混合物の製造方法並びに塗装方法及び塗装装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の塗装装置は、塗料用駆動ポンプと、この塗料用駆動ポンプと塗料供給源とを含み混合器に塗料を供給する塗料供給ラインと、二酸化炭素用駆動ポンプと、この二酸化炭素用駆動ポンプと二酸化炭素供給源と仕切弁とを含み前記混合器に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給ラインと、前記塗料供給ライン、前記二酸化炭素供給ライン又は前記混合器のいずれか1つ以上に、塗膜の光沢度及び平滑性を高める光沢度向上剤を添加する光沢度向上剤供給手段と、前記塗料、前記二酸化炭素及び光沢度向上剤の成分を混合して混合物を生成する前記混合器と、前記混合物の粘度を調節する粘度調節手段と、前記混合器に混合物ラインで接続し、かつ前記混合物を噴射する噴射手段とで構成され、前記塗料は、少なくとも塗膜を形成する主成分となる有機原材料と前記有機原材料を溶解する有機溶媒とを含み、前記光沢度向上剤は、前記塗料の有機原材料を溶解する有機溶媒のうち、最も重量比の高い第一有機溶媒成分と同成分の溶媒、該第一有機溶媒成分の次に重量比の高い第二有機溶媒成分と同成分の溶媒又はグリコールエーテル類のいずれか1つ以上で、かつ、少なくとも沸点が100℃以上、蒸発速度1.0以下又は溶解度パラメーターが8.5(cal/cm
3)
0.5乃至11.5(cal/cm
3)
0.5のいずれかであり、前記混合物の粘度は、少なくとも前記二酸化炭素供給ラインに設けられた二酸化炭素定量添加部により二酸化炭素の添加量を調節すること又は前記混合物ラインに設けられた温度調節器によって前記混合物の温度を調節することのいずれかからなる粘度調節手段により、100mPa・s以下の状態にすることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の塗装方法は、塗料供給源から供給される塗料、二酸化炭素供給源から供給される二酸化炭素及び光沢度向上剤供給源から供給される塗膜の光沢度及び平滑性を高める光沢度向上剤を混合器により混合して混合物を生成する混合物生成工程と、該混合物生成工程で生成された混合物の粘度を二酸化炭素の添加量を調節すること又は前記混合物ラインに設けられた温度調節器のいずれか1つ以上の粘度調節手段によって100mPa・s以下の状態にする粘度調節工程と、該粘度調節工程で粘度が調節された混合物を噴射手段により塗装対象物に噴射する噴射工程とで構成され、前記塗料は、少なくとも塗膜を形成する主成分となる有機原材料と前記有機原材料を溶解する有機溶媒とを含み、前記光沢度向上剤は、前記塗料の有機原材料を溶解する有機溶媒のうち、最も重量比の高い第一有機溶媒成分と同成分の溶媒、該第一有機溶媒成分の次に重量比の高い第二有機溶媒成分と同成分の溶媒又はグリコールエーテル類のいずれか1つ以上で、かつ、少なくとも沸点が100℃以上、蒸発速度1.0以下又は溶解度パラメーターが8.5(cal/cm
3)
0.5乃至11.5(cal/cm
3)
0.5のいずれかであることを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の混合物の製造方法は、塗料供給源から供給される塗料、二酸化炭素供給源から供給される二酸化炭素及び光沢度向上剤供給源から供給される塗膜の光沢度及び平滑性を高める光沢度向上剤を混合器により混合して混合物を生成し混合物ライン混合物生成工程と、該混合物生成工程で生成された混合物の粘度を二酸化炭素の添加量を調節すること又は前記混合物ラインに設けられた温度調節器のいずれか1つ以上の粘度調節手段によって100mPa・s以下の状態にする粘度調節工程とで構成され、前記塗料は、少なくとも塗膜を形成する主成分となる有機原材料と前記有機原材料を溶解する有機溶媒とを含み、前記光沢度向上剤は、前記塗料の有機原材料を溶解する有機溶媒のうち、最も重量比の高い第一有機溶媒成分と同成分の溶媒、該第一有機溶媒成分の次に重量比の高い第二有機溶媒成分と同成分の溶媒又はグリコールエーテル類のいずれか1つ以上で、かつ、少なくとも沸点が100℃以上、蒸発速度1.0以下又は溶解度パラメーターが8.5(cal/cm
3)
0.5乃至11.5(cal/cm
3)
0.5のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、塗料供給ライン、二酸化炭素供給ライン又は混合器の1つ以上に光沢度向上剤を添加する光沢度向上剤供給手段を備えるので、希釈溶剤を二酸化炭素で一部又は全部を代替しても混合物の塗膜の光沢度不足や平滑性不足による塗膜不良が生じることを防止できる。
(2)混合物の粘度を100mPa・s以下にすることができるので、噴射手段で混合物
を噴射する際に、良好な霧状の噴霧パターンを得ることができる。
(3)前記光沢度向上剤が「少なくとも沸点100℃以上又は蒸発速度が1.0以下の溶媒」であるため、希釈シンナーを二酸化炭素で代替することによる乾燥促進を押さえる効果がある。
(4)前記光沢度向上剤が「溶解度パラメーターが8.5(cal/cm3)0.5乃至11.5(cal/cm3)0.5の溶媒」であるため、塗着塗料の樹脂溶解性を高める効果がある。
(5)請求項2に記載の発明も、前記(1)〜(4)と同様な効果が得られるとともに、前記光沢度向上剤であるグリコールエーテル類が「ブチルセロソルブ」であるため、希釈シンナーを二酸化炭素で代替することによる乾燥促進を押さえる効果と、塗着塗料の樹脂溶解性を高める効果がある。
(6)請求項3及び請求項4に記載の各発明も前記(1)〜(4)と同様な効果が得られるとともに、混合部における二酸化炭素の塗料への混合溶解性を高める効果がある。
(7)請求項5に記載の発明も前記(1)〜(5)と同様な効果が得られるとともに、光沢度向上剤と二酸化炭素の添加量を一定に保つ効果がある。
(8)請求項6に記載の発明も前記(1)〜(6)と同様な効果が得られるとともに、効率的に塗料、二酸化炭素、光沢度向上剤を混合する効果がある。
(9)請求項7乃至請求項10に記載の各発明も前記(1)〜(7)と同様な効果が得られるとともに、塗料の流量等に応じて自動で二酸化炭素や光沢度向上剤の添加をオン・オフすることができ、光沢度向上剤と二酸化炭素が塗料に対して一定の割合を保つ効果がある。
(10)請求項11乃至請求項13に記載の各発明も、前記(1)〜(4)と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1乃至
図5は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図6及び
図7は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図8及び
図9は本発明の第3の実施形態を示す説明図である。
図10は本発明の第4の実施形態を示す説明図である。
図11は本発明の第5の実施形態を示す説明図である。
図12は本発明の第6の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の塗装装置1は、噴射手段17から噴射する混合物15の粘度を100mPa・s以下の状態となるように、単数又は複数の粘度調節手段16を、二酸化炭素供給ライン10と混合器4に接続する混合物ライン31のいずれか一方又は両方に配設するものである。
【0012】
そこで以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至
図5に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は本発明の塗装装置で、この塗装装置1は、動産又は不動産の如何を問わず、また金属製・合成樹脂製・コンクリート製かを問わず、ロボット、各種の機械やその部品、電気器具やその部品、建物の壁面等の表面に混合物を塗布するものである。
【0013】
この塗装装置1は、
図1に示すように、塗料5、二酸化炭素9及び光沢度向上剤13をそれぞれ供給する複数のラインが、混合物15を生成する混合器4に接続している。すなわち、これらのラインは、塗料用駆動ポンプ2と塗料供給源3とを含み混合器4に塗料5を供給する塗料供給ライン6と、二酸化炭素用駆動ポンプ7と二酸化炭素供給源8とを含み前記混合器4に二酸化炭素9を供給する二酸化炭素供給ライン10と、光沢度向上剤用ポンプ11と光沢度向上剤供給源12とを含み前記二酸化炭素供給ライン10の二酸化炭素用駆動ポンプ7と混合器4との間に接続され、光沢度向上剤13を供給する光沢度向上剤供給手段14としての光沢度向上剤供給ライン14である。
【0014】
前記混合器4は、塗料5、二酸化炭素9及び光沢度向上剤13の成分を混合して混合物15を生成する。そして、前記混合物15の粘度を調節する粘度調節手段16が、前記二酸化炭素供給ライン10及び前記混合器4に接続する噴射手段17(例えば手動で噴射させる噴射ガン)に配設されている。
【0015】
前記塗料用駆動ポンプ2は、本実施の形態においては駆動用エアーで起動するものを採用しており、この塗料用駆動ポンプ2には塗料接続ライン(管)18を介して単数又は複数の塗料供給源3が接続している。この塗料用駆動ポンプ2を駆動するためのエアーを供給するエアー供給ライン19には、減圧弁20と検知手段21としての流量センサーが設けられている。
【0016】
塗料用駆動ポンプ2が駆動用エアーで起動すると、その吸引口から前記塗料供給源3の塗料5を吸い込む一方、その吐出口から塗料5を圧送する。それ故に、塗料用駆動ポンプ2は塗料5を吸引し、かつ吐出する塗料高圧ポンプが好ましい。
この塗料5は、本実施の形態においては、一般的に販売されている塗膜を形成する主成分となる有機原材料と、有機原材料を溶解する複数種類の有機溶媒からなる塗料に、希釈溶剤を添加して構成している。この希釈用剤については、二酸化炭素9が希釈溶剤の全部を代替する場合には、添加をせずに塗料5を構成してもよい。
【0017】
なお、本発明においては、この塗料5の複数種類の有機溶媒のうち、最も重量比の高いものを第一有機溶媒成分、次に重量比の高いものを第二有機溶媒成分としている。
また、塗料供給ライン6は、例えば、塗料供給源3と、塗料接続ライン18と、前記塗料用駆動ポンプ2と、塗料吐出ライン22とで構成されている。この塗料吐出ライン22は、塗料用駆動ポンプ2と混合器(混合部)4とを接続するもので、塗料用駆動ポンプ2から圧送される塗料を混合器4に供給する。
【0018】
ところで、塗装用駆動ポンプ2の一例としては、旭サナック株式会社製の空気圧式プランジャーポンプの、SP1021、SP1628、SP1636、SP1844、SP1854(Z)、SP1878、SP2544、SP2554(Z)、SP2578等を適宜に用いることができる。
【0019】
二酸化炭素用駆動ポンプ7には、逆止弁23を備えた二酸化炭素接続ライン(管)24を介して二酸化炭素供給源8が接続されている。二酸化炭素供給源8から提供される二酸化炭素9の性状は限定しないものである。
【0020】
二酸化炭素用駆動ポンプ7が起動すると、その吸引口から前記二酸化炭素供給源8から二酸化炭素9を吸い込む一方、その吐出口から二酸化炭素9を圧送する。
また二酸化炭素供給ライン10は、
図3に示すように、二酸化炭素供給源8と二酸化炭素接続ライン24と前記二酸化炭素用駆動ポンプ7と、二酸化炭素吐出ライン25とで構成されており、この二酸化炭素吐出ライン25は、二酸化炭素用駆動ポンプ7と混合器(混合部)4とを接続するもので、二酸化炭素用駆動ポンプ7から圧送される二酸化炭素9を混合器4に供給する。
【0021】
なお、二酸化炭素供給源としては、内容量3.4Lから47L程度のボンベ複数用いてもよいし、1m3以上の大型タンクから二酸化炭素を供給してもよい。
前記二酸化炭素供給ライン10の下流側(前記二酸化炭素用駆動ポンプ7の二次側)に位置する二酸化炭素吐出ライン25は、例えば
図3で示すように、二酸化炭素定量供給部26及び仕切弁27を備えている。
【0022】
この二酸化炭素定量供給部26は、例えば、流量計、流量調節弁、一次圧調節弁等(図示せず)で構成されている。これらを組み合わせて二酸化炭素定量供給部26を構成してもよいし、いずれか1つを用いてもよい。
【0023】
これらの機器を二酸化炭素用駆動ポンプ7の二次側に設けることにより、定量供給精度を向上させることができる。
【0024】
前記仕切弁27は二酸化炭素定量供給部26の下流側に設けられており、逆止弁23を介して混合器に接続されている。この仕切弁27は、本実施の形態においては、制御部28により開閉が制御されており、いわゆる自動仕切弁を用いている。制御部28は、前記エアー供給ライン19の検知手段21により、エアー供給ライン19に流れるエアーの流量から塗料用駆動ポンプ2の稼働状況を判別する。塗料用駆動ポンプ2が稼働している場合には仕切弁27を開状態として混合器4に二酸化炭素9を供給する。
一方、塗料5が塗料吐出ライン22を流れていない場合(混合物15の噴射を停止している場合)には、制御部28は、仕切弁27を閉状態として混合器4への二酸化炭素9の供給を停止する。
【0025】
前記光沢度向上剤供給ライン14は、
図4に示すように、光沢度向上剤用ポンプ11と、光沢度向上剤供給源12と光沢度向上剤定量添加部34と光沢度向上剤用添加弁29を備えており、本実施の形態においては、前記二酸化炭素供給ライン10の逆止弁23と混合器4との間に逆止弁30を介して接続されている。
【0026】
光沢度向上剤供給手段14としての光沢度向上剤供給ライン14は光沢度向上剤用ポンプ11、光沢度向上剤供給源12、光沢度向上剤添加弁29、光沢度向上剤定量添加部34等を適宜組み合わせて構成してもよい。
【0027】
光沢度向上剤13としては、前記塗料5の最も重量比の高い第一有機溶媒成分、次に重量比の高い第二有機溶媒成分又はグリコールエーテル類の1つ以上を用いている。この光沢度向上剤13は少なくとも沸点が100℃以上のもの又は蒸発速度が1.0以下のいずれかであって、前記塗料5の塗膜を形成する主成分となる有機原材料に対して1〜10%を添加することが望ましい。本実施の形態においては、光沢度向上剤13として沸点100℃以上かつ蒸発速度1.0以下のものを用いている。
なお、本発明において蒸発速度とは、酢酸ブチルの蒸発速度を1.0とする相対値を示している。
【0028】
この光沢度向上剤定量添加部34は、例えば、流量計、流量調節弁、一次圧調節弁等(図示せず)で構成されている。これらを組み合わせて光沢度向上剤定量添加部34を構成してもよいし、いずれか1つを用いてもよい。
【0029】
光沢度向上剤用添加弁29も本実施の形態においては、前記制御部28に接続され、制御部28により開閉が制御されている。制御部28は、前記エアー供給ライン19の検知手段21により、エアー供給ライン19に流れるエアーの流量から塗料用駆動ポンプ2の稼働状況を判別する。塗料用駆動ポンプ2が稼働している場合には光沢度向上剤用添加弁29を開状態として混合器4に光沢度向上剤13を供給する。
【0030】
一方、塗料5が塗料吐出ライン22を流れていない場合(混合物15の噴射を停止している場合)には、制御部28は、光沢度向上剤用添加弁29を閉状態として混合器5への光沢度向上剤13の供給を停止する。
【0031】
このように制御することにより、前記二酸化炭素供給ライン10の仕切弁27と光沢度向上剤用添加弁29の開閉が連動し、光沢度向上剤25の混合比率が高くなることを防止でき、最適化された一定比率で塗料4と二酸化炭素9と光沢度向上剤13を混合器4で混合することができる。
【0032】
前記混合器4は、
図5に示すように、中心衝突型のスワールミキサーを採用しており、中心部に二酸化炭素9及び光沢度向上剤13を流通させ、両枝部に塗料5を流通させて混合して混合物15を生成する。
【0033】
また前述した噴射手段17は、市販されている噴射ガン17が用いられ、該噴射ガン17は前記混合器4の二次側に設けられた混合物ライン31を介して接続し、かつ混合器4で生成するとともに、粘度調節手段16によって粘度を調節された混合物15を大気圧下の塗装対象物32に噴射する。
【0034】
本実施の形態においては、混合物ライン31には温度調節器33が設けられており、この温度調節器33による温度調節及び二酸化炭素9の供給量より前記混合物15の粘度を100mPa・s(イワタカップ30秒)以下になるように調節している。
【0035】
すなわち、本実施の形態における粘度調節手段16としては、温度調節器33及び二酸化炭素定量供給部26により供給量を調節された二酸化炭素9とで構成される。
本発明の塗装方法では、前述のように塗料供給源3から供給される塗料5、二酸化炭素供給源8から供給される二酸化炭素9及び光沢度向上剤供給源12から供給される塗膜の光沢度及び平滑性を高める光沢度向上剤13を混合器4により混合して混合物15を生成する混合物生成工程を構成している。
【0036】
この混合物生成工程を行った後に、粘度調節手段16によって粘度を100mPa・s以下の状態にする混合物15の粘度調節工程を行い、該粘度調節工程にて粘度調整された混合物15を大気圧下の塗装対象物32に噴射する噴射工程を行う。
なお、この塗装方法においても、検知手段21を用いて制御部28で仕切弁27及び光沢度向上剤用添加弁29の開閉を連動させて混合物生成工程を行うことが望ましい。
【0037】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図6乃至
図12に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
図6及び
図7に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、塗料供給ライン6の塗料吐出ライン22に検知手段21Aとしての塗料流量計を設けるとともに、中心衝突型と二重管型を組み合わせた混合器4Aにした点で、このような塗装装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0039】
図8及び
図9に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、塗料供給ライン6の塗料吐出ライン22に検知手段21Bとしての塗料の圧力を測定する圧力センサーを設けるとともに、多重管型混合器4Bにし、温度調節器33のみによって混合物15の粘度を調節する粘度調節手段16Aにした点で、このような塗装装置1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0040】
なお、圧力センサーの上流にしぼり部35を設けると、圧力変化をより精度よく検出することができる。
【0041】
図10に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、混合物ライン31に検知手段21Cとしての混合物15の圧力を測定する圧力センサーを設けるとともに、温度調節器33を用いず二酸化炭素の供給量のみによって混合物15の粘度を調節する粘度調節手段16Bにした点で、このような塗装装置1Cにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0042】
図11に示す本発明を実施するための第5の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、制御部28及び検知手段21を用いないとともに、塗料供給ライン6の塗料供給源3の塗料5に光沢度向上剤13を直接添加する光沢度向上剤供給手段14Aに構成した点で、このような塗装装置1Dにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0043】
本実施の形態の光沢度向上剤供給手段14Aは、光沢度向上剤供給源12のみで構成されており、この光沢度向上剤供給源12から供給される光沢度向上剤13が塗料供給源3の塗料5に添加される。この光沢度向上剤供給手段14Aでは物理的なライン(管)を介して塗料供給源3の塗料5に光沢度向上剤13を添加するのでなくてもよく、例えば光沢度向上剤13を直接塗料供給源3の塗料5に添加してもよい。
【0044】
なお、本実施の形態においては、塗装装置1自体に制御部28及び検知手段21を用いないため、仕切弁27の切り替えに関しては、その他上位の制御機器(生産ラインの制御コンピューター等)によって切り替える、ラインの作業者が切り替える等が考えられる。ところで、光沢度向上剤供給手段14Aを塗料供給源3ではなく、塗料用駆動ポンプ2、塗料接続ライン18、塗料吐出ライン22等の塗料供給ライン6の他の部位に接続し、光沢度向上剤13を添加しても同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、他の実施形態と同様に光沢度向上剤供給手段14Aを二酸化炭素供給ライン10の二酸化炭素供給源8、二酸化炭素供給源8と二酸化炭素定量添加部26の間、二酸化炭素定量添加部26又は二酸化炭素定量添加部26と混合器4の間に接続し、この接続部で光沢度向上剤13と二酸化炭素9を混合してもよく、混合器に直接接続してもよい。
【0046】
図12に示す本発明を実施するための第6の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、光沢度向上剤供給手段14を用いず、予め光沢度向上剤13を添加した本発明の塗料36を用い、この塗料36を混合器4にて二酸化炭素9と混合し、その混合物15を噴射手段17にて噴射するように構成した点である。
【0047】
本実施の形態においては、第1の形態と略同構成の塗装装置を用いているが、本願発明の塗料36を二酸化炭素9と混合し、その混合物15を塗装対象物32噴射できる構成であれば、どのような塗装装置を用いてもよい。
【0048】
本発明の塗料36は、本実施の形態においては、一般的に販売されている塗膜を形成する主成分となる有機原材料と、前記有機原材料を溶解する有機溶媒から成る塗料に、希釈溶剤をさらに添加し、これらの成分にさらに光沢度向上剤13として前記有機原材料を溶解する有機溶媒のうち、最も重量比の高い第一有機溶媒成分または次に重量比の高い第二有機溶媒成分またはグリコールエーテル類の1つ以上を前記塗膜を形成する主成分となる有機原材料に対して1〜10%を添加したものである。
なお、二酸化炭素9が前記希釈溶剤を100%代替する場合には、前記希釈溶剤を含まない状態で塗料36を構成してもよい。
【0049】
本実施の形態のように希釈溶剤を含むものであっても、その一部を二酸化炭素9により代替できるので、希釈溶剤(シンナー等)を削減できるものである。
本発明に用いられる制御部としては、制御プログラムを記憶部に記憶し、そのプログラムに基づいて仕切弁を制御する制御部であってもよいし、リレー回路等を用いた(記憶部等を有しない)制御部としてもよい。
【0050】
また、光沢度向上剤を塗料供給ライン、二酸化炭素供給ライン又は混合器のうち複数箇所に添加するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は塗装装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0052】
1、1A、1B、1C、1D:塗装装置、
2:塗料用駆動ポンプ、
3:塗料供給源、 4、4A、4B:混合器、
5、5A:塗料、 6:塗料供給ライン、
7:二酸化炭素用駆動ポンプ、 8:二酸化炭素供給源、
9:二酸化炭素、 10:二酸化炭素供給ライン、
11:光沢度向上剤用ポンプ、 12:光沢度向上剤供給源、
13:光沢度向上剤、 14、14A:光沢度向上剤供給手段、
15:混合物、 16、16A、16B:粘度調節手段、
17:噴射手段、 18:塗料接続ライン、
19:エアー供給ライン、 20:減圧弁、
21、21A、21B、21C:検知手段、
22:塗料吐出ライン、 23:逆止弁、
24:二酸化炭素接続ライン、 25:二酸化炭素吐出ライン、
26:二酸化炭素定量供給部、 27:仕切弁、
28:制御部、 29:光沢度向上剤用添加弁、
30:逆止弁、 31:混合物ライン、
32:塗装対象物、 33:温度調節器、
34:光沢度向上剤定量添加部、 35:しぼり部、
36:塗料。
【要約】 (修正有)
【課題】希釈シンナーを削減できる塗装装置、塗装方法及び塗料を提供する。
【解決手段】塗料供給ライン6と二酸化炭素供給ライン10と、塗膜の光沢度及び平滑性を高める光沢度向上剤を添加する光沢度向上剤供給手段14と、粘度調節手段と構成され、前記塗料は、少なくとも塗膜を形成する主成分となる有機原材料と前記有機原材料を溶解する有機溶媒とを含み、前記光沢度向上剤は、前記塗料の有機原材料を溶解する有機溶媒のうち、最も重量比の高い第一有機溶媒成分と同成分の溶媒、該第一有機溶媒成分の次に重量比の高い第二有機溶媒成分と同成分の溶媒又はグリコールエーテル類のいずれか1つ以上であり、前記混合物の粘度は、100mPa・s以下の状態にする塗装装置1。
【選択図】
図1