(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周長算出ステップが、前記仮想断面が前記筒状部材の外表面を切る切断線に沿って前記基準線と前記第1分割線上の終点との間の長さを周長として算出する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
前記周長算出ステップが、前記仮想断面と前記筒状部材が交わることにより前記筒状部材の外表面に形成される軸方向断面の外縁に沿って、前記基準線と前記第1分割線上の終点との間の長さを周長として算出する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
前記修正要否判定ステップは、前記仮想断面における両側の前記周長曲線で挟まれた挟み角が、隣接する他の前記仮想断面における両側の前記周長曲線で挟まれた挟み角より小さい場合、前記仮想断面近傍の前記第1分割線の修正が必要と判定する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
前記第1分割線修正ステップが、前記仮想断面の両側に隣接する他の前記仮想断面の位置で、前記周長曲線に内接する第1修正曲線を形成し、前記周長曲線を前記第1修正曲線に置換えて、前記第1分割線を修正する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
前記第1分割線修正ステップが、前記周長の長さを変えることにより前記第1分割線の周方向の位置を修正する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
前記分割線再現ステップが、前記筒状部材の前記基準線から前記外表面の周方向に沿って前記周長により定まる終点を前記外表面に設定し、前記終点を結んで形成される曲線を前記第2分割線に設定する請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
前記第2分割線修正ステップが、前記周長の長さを変えることにより前記第2分割線の周方向の位置を修正する請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の筒状部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0031】
本発明に係る三次元形状の筒状部材の製造方法及び製造支援装置について、本発明の複数の実施形態に共通する基本的な考え方を、
図1を参照して以下に説明する。本実施形態が対象とする三次元形状を有する筒状部材150は、軸方向Daの両端に開口を有する中空部材であり、両端の開口は互いに連通する開口である。筒状部材150は、少なくとも1つ以上の所定形状を有する部材(分割体152)を切断加工で、平板から平板形状を切り出し、平板形状をプレス成形後、面合わせをして溶接にて一体に形成される。一方、分割体152の分割位置の合わせ面は、プレス成形による残留歪や残留応力の影響を受け、面合わせが困難であり、多大な修正作業が発生する場合がある。そのため、事前にプレス成形のシミュレーションを行い、適正な分割線を選定することが重要である。しかし、筒状部材150は三次元形状モデルに表示されている。従って、プレス成形後の残留歪等の影響による溶接面の面合わせの困難性(溶接面の隙間、割れ、しわの発生等)を予測して、合わせ面を組み付け易いように分割線を修正することは、製造現場では容易ではない。特に、三次元筒状体で形状が異なる異形断面を有する部材の場合は、プレス成形後の部材表面の凹凸による合わせ面への影響を事前に予測することが困難である。そこで、本実施形態は、三次元形状モデルの分割線を平板形状に展開し、平板形状で周長を基準に分割線の位置を決定する。その分割線を更に三次元形状モデルに再現させて分割線の位置を調整して、簡易且つ容易に三次元形状体である分割体の分割位置における面合わせが可能な分割線設定手段を提供するものである。
【0032】
図1は、軸方向に分割線を有する筒状部材150の斜視図を示す。筒状部材150は、平板から切断加工で切り出された少なくとも1つ以上の分割体152からなり、分割体152をプレス成形後、分割線155で面合わせされ、溶接されて筒状部材150として一体に形成されている。
【0033】
なお、以下で説明する製造支援装置102(詳細は後述)の一部を構成する各種の修正手段(第1分割線修正手段ST10、第2分割線修正手段ST20、プレス限界予測修正手段ST30、分割体形状設定手段ST40等)は、別途準備された図形ソフトウェアから取得された筒状部材150の三次元形状データに基づき、製造支援装置102の制御部120に収納された各種プログラムを用いて処理される。
【0034】
まず、第1分割線修正手段ST10として、三次元形状モデルの分割線を平面形状に展開して、平面形状で分割線の位置を修正する方法を説明する。ここの説明では、三次元形状モデルとして筒状部材を採用したが、中空部材であれば、この実施態様に限定されない。
図1において、筒状部材150は、筒状部材150の入口221は略円形断面で、筒状部材150の出口222は略矩形断面であり、軸方向Daの中間位置で円形断面から矩形断面に徐々に断面形状が変化して、断面積が出口222に向かって拡大する中空部材である。また、筒状部材150は、
図1に示すように、断面形状が変化する中間位置から中心軸Sの方向が変化する。すなわち、入口側中心軸Sに対して出口側中心軸Sは一定の傾きを有する。つまり、本実施形態に示す筒状部材150は、入口221側から出口222側へ軸方向Daに進むと共に、徐々に断面形状が変化し、且つ中心軸Sが後方側の中心軸Sより傾く異形断面形状を有する筒状部材である。なお、筒状部材150の中心軸Sが、入口221中心から出口222中心に向かって断面中心を貫通する方向を軸方向Daとし、軸方向Daに垂直な方向を高さ方向Dhとする。つまり、高さ方向Dhは、各断面における軸方向Daに垂直な方向であり、軸方向Daの入口221からの位置によって高さ方向Dhが変化する。また、軸方向Da及び高さ方向Dhに直交する方向を周方向Dcとする。
【0035】
次に、筒状部材150の外表面153に分割線155を設定する方法の一例を説明する。まず、筒状部材150の設計に用いる別途準備した図形ソフトウェアにおいて、筒状部材150の三次元形状モデルの外側空間に、分割体152の分割位置の目標ラインである分割候補ライン154を設定し、分割候補ライン154を筒状部材150の三次元形状モデルに投影させて、筒状部材150の外表面153上に分割線155を形成する。本実施形態の製造システムは、筒状部材150の三次元形状データと共に、分割候補ライン154を筒状部材150に投影させた分割線155の三次元データを外部の図形ソフトウェアから取り込み、この分割線155の位置を組み付け易い合わせ面が形成できるように修正する。
【0036】
図1に示す実施形態は、筒状部材150の高さ方向Dhの上部外表面153aに形成された分割線155と高さ方向Dhの下部外表面153bに形成された分割線156の2本の分割線を備えた例である。つまり、分割線155、156を設けることにより、分割体152a、152bの2つの分割体152で形成される筒状部材150になる。分割線156は、図示しない分割候補ラインを高さ方向Dhの下部空間に設定し、同様に下部外表面153bに投影させて、分割線156を形成すればよい。なお、筒状部材150の外表面153に分割線155、156を設定する方法は、前述の投影方法に限る必要はなく、別途分割線の座標を入力して分割線155、156を設定してもよい。
【0037】
また、分割線155、156は、外表面153(153a、153b)に沿って形成されている限り、軸方向Daに延びる直線でもよいし、曲線であってもよい。なお、
図1には図示していないが、中心軸Sを含み、高さ方向Dhに延びる平面を想定し、この平面に対して、筒状部材150の外表面153の分割線155、156と対称の位置に、2つの分割線を設定してもよい。つまり、筒状部材150の高さ方向Dhの上部外表面153aに2本の分割線を設定し、高さ方向Dhの下部外表面153bに更に2本の分割線を設定して、筒状部材150の全体で4本の分割線を設定し、4面の分割体152a、152b、152c、152dから形成される筒状部材150としてもよい。
【0038】
次に、筒状部材150の中心軸Sに垂直で高さ方向Dhに広がる平面状の仮想断面158を設定する。仮想断面158と筒状部材150の外表面153が交わり、筒状部材150の外表面153に形成される断面を、軸方向断面158aとする。また、筒状部材150の上部外表面153a上に軸方向Daに延びる基準線157を設定する。
図1に示す基準線157は、筒状部材150の高さ方向Dhの上部外表面153aの周方向Dcの幅の中心に配置されているが、基準となる位置であれば、周方向Dcの中心である必要はない。各仮想断面158が筒状部材150の外表面153を切る線を切断線159とする。また、上部外表面153aにおいて、切断線159と基準線157とが交わる点を始点159aとし、切断線159と分割線155が交わる点を終点159bとすれば、始点159aと終点159bの間をつなぐ切断線159は、基準線157からの筒状部材150の周方向Dcの上部外表面153に沿った周長RL(周方向Dcの長さ)と一致する。すなわち、切断線159は、軸方向断面158aの外縁158aaに沿って形成され、切断線159の始点159a及び終点159bの位置は、軸方向断面158aの外縁158aa上に常に存在する。従って、仮想断面158の軸方向Daの位置Xと基準線157の筒状部材150の周方向Dcの位置を設定すれば、三次元形状データに基づき、各仮想断面158について、始点159aからの周長RLと軸方向断面158aの外縁158aa上の終点159bの位置情報(座標)の関係が設定される。つまり、単に周長RLを指定することにより、軸方向断面158aの外縁158aa上にある終点159bの位置も決定できる。
【0039】
軸方向Daに複数の仮想断面158を設定し、各仮想断面158について周長を算出し、仮想断面158の位置と周長の関係を周長曲線160として表示する。なお、周長の算出方法は、三次元形状モデルで、公知の周長の計測方法を用いて算出できる。また、始点159aは基準線157上に常に存在し、終点159bは分割線155上に存在する。
【0040】
上述した例は、上部外表面153a上に基準線157を設定し、上部外表面153a上に切断線159を形成する例を説明したが、基準線157を下部外表面153b上に設定し、切断線159を下部外表面153b上に形成してもよい。また、基準線157を高さ方向Dhに延びる側部外表面153c上に設定し、切断線159を側部外周面153c上の軸方向断面158aの外縁に沿って周方向Dcに延在させ、終点159bを上部外周面153a又は下部外周面153bに配置してもよい。
【0041】
図2Aには、仮想断面158の位置Xを横軸に、各仮想断面158における周長RLを縦軸にプロットして平面グラフに作成された周長曲線160を示す。仮想断面158の開始点は入口221(A点)であり、仮想断面158の終了点は出口222(B点)になる。
図2Aは、筒状部材150の入口221のA点から筒状部材150の出口222のB点までの間の各仮想断面158の周長の変化を周長曲線160として示している。軸方向Daの中間位置から出口222側に向かうと共に、周長RLが長くなる傾向を示している。外表面153上の分割線155が滑らかなラインで形成され、合わせ面が滑らかに形成されていれば、
図2A及び
図2Bに示す周長曲線160も滑らかになる。但し、分割線155が視覚的には滑らかな曲線で形成されているように見えていても、当初投影される分割候補ライン154が複雑な曲線である場合又は筒状部材150の断面形状又は断面積が軸方向Daの位置で変化する場合には、外表面153の僅かな凹凸面の影響を受けて、滑らかな曲線ではなく、不適正な周長曲線160が形成され、円滑で精度の良い合わせ面が形成されない場合がある。例えば、
図2Aに示す例は、仮想断面158の位置X1における周長曲線160上のP1点の近傍の周長曲線が適正でない場合の一例である。P1点の近傍では、周長曲線160の傾きが急激に変化している。このような急激な周長の変化を無視すると、分割体152のプレス成形時の形状のばらつき等のため、面合わせが容易でない場合がある。なお、仮想断面158(位置X1)上のP1点は、切断線159の終点159bに一致する。
【0042】
すなわち、
図2Aに示すように、仮想断面158(158A(位置X1))のP1点を境に周長曲線160の傾きが急激に変化する場合は、P1点で周長曲線160の鋭角な角(エッジ)が生じやすく、面合わせが容易でない。これを避けるためには、仮想断面158Aの位置X1の前後の周長曲線160が滑らかに繋がるように周長曲線160を修正することが望ましい。つまり、仮想断面158A(位置X1)を挟んで軸方向Daの入口221側の周長曲線160aと、出口222側の周長曲線160bとが滑らかに繋がるように、当初の周長曲線160を周長曲線160a及び周長曲線160bに滑らかに内接する第1修正曲線161に修正することが望ましい。つまり、第1修正曲線161は、P1点と同じ仮想断面158A(位置X1)上で、仮想断面158Aの周長RLを決定する切断線159の終点159bの位置を周方向Dcに延長して新たにQ1点を設定し、Q1点を通り周長曲線160aと周長曲線160bに内接する曲線とするのが望ましい。すなわち、
図2Aに示す例の場合、P1点の周長RLを周方向Dcに延長したQ1点を終点159bとする新たな周長RLを選定し、Q1点を通り周長曲線160aと周長曲線160bに内接する第1修正曲線161を設定することが望ましい。
【0043】
ここで、第1修正曲線161を設定する一例を以下に具体的に説明する。
図2Aは、第1修正曲線161(161a)が、Q1点を通り、仮想断面158A(位置X1)に隣接する軸方向Daの入口221側の仮想断面158B(位置X2)と出口222側で仮想断面158Aに隣接する仮想断面158C(位置X3)において、周長曲線160(160a、160b)に内接するように第1修正曲線161aが設定された例を示している。ここで、第1修正曲線161aが周長曲線160に内接するとは、第1修正曲線161aが、周方向Dcにおいて、周長曲線160を挟んで基準線157の反対側に位置する内接円163を設定し、内接円163の中心C1側から周長曲線160a、160bのそれぞれに対して内接円163が接することを言う。すなわち、
図2Aにおいて、内接円163と周長曲線160aの接点をP2点とし、内接円163と周長曲線160bの接点をP3点とすれば、内接円163の一部であるP2点とP3点を結び、Q1点を通る内接円163の円弧が第1修正曲線161aに相当する。なお、
図2Aに示す例の場合、仮想断面158Aを境にして、出口222側に向かうと共に周長RLが大きくなる。従って、内接円163の中心C1が配置される位置は、出口222側に向かうと共に周方向Dcで周長RLが大きくなる場合は、周長曲線160に対して周方向Dcで基準線157の反対側に配置される。また、出口222側に向かうと共に周方向Dcで周長RLが小さくなる場合は、周長曲線160に対して基準線157と同じ側に配置される。すなわち、
図2Aに示すように、仮想断面158A(位置X1)近傍に不適正な周長曲線160が形成される場合、仮想断面158A(位置X1)近傍の周長曲線160を、周長曲線160a、160bに内接する内接円163の円弧の一部(P2点とP3点を結ぶ円弧)からなる第1修正曲線161aに置換えて、全体として滑らかな周長曲線160に修正することが望ましい。周長曲線160を修正することにより、面合わせが容易な第1分割線155aが形成できる。
【0044】
なお、周長曲線160の傾きが急激に変化する場合の周長曲線160の修正の考え方の一例を、
図2Aを用いて以下に説明する。
図2Aに示す例では、周長曲線160の内、P1点とP2点の区間を周長曲線160cとし、P1点とP3点の区間を周長曲線160dとする。
図2Aに示す例では、仮想断面158Aと交点P1において交差する周長曲線160cは、仮想断面158Aより入口221側にあり、周長曲線160aの延長線上で、大略基準線157に平行に軸方向Daに延びている。一方、仮想断面158Aと交点P1で交差する周長曲線160dは、仮想断面158Aより出口222側寄りにあり、入口221側に隣接する周長曲線160cと、P1点において挟み角α1で交差している。また、隣接する仮想断面158Bにおける交点P2で交差する周長曲線160aと、隣接する周長曲線160cとが、P2点において交差する挟み角は、180度であり、P1点における挟み角より大きい。更に、仮想断面158Cより出口222側寄りにあり、実線で示す周長曲線160bは、周長曲線160dの出口222側に向かう延長線上にある例である。この場合、仮想断面158Cの交点P3において、互いに隣接する周長曲線160bと周長曲線160dとが交差する挟み角は、180度であり、P1点における挟み角より大きい。
【0045】
すなわち、
図2Aに示す実施形態の場合、仮想断面158Aの交点P1において、隣接する周長曲線160cと周長曲線160dで挟まれた挟み角α1が、他の隣接する仮想断面158Bの交点P2における周長曲線160b、160cで挟まれた挟み角より小さく、他の隣接する仮想断面158Cの交点P3における周長曲線160b、160dで挟まれた挟み角より小さい。つまり、仮想断面158Aの交点P1において、軸方向Daで隣接する両側の周長曲線160c、160dで挟まれた挟み角α1が、軸方向Daの両側の他の仮想断面158B、158Cの交点P2、P3における両側に隣接する周長曲線で挟まれた挟み角と比較して小さい場合、仮想断面158A近傍の周長曲線160を修正することが望ましい。
【0046】
具体的には、両側の周長曲線で挟まれた挟み角α1が最も小さい交点P1の仮想断面158Aを中心に周長曲線160を修正する際、まず、仮想断面158Aの両側に隣接して配置された他の仮想断面158B、158Cと周長曲線160c、160dとの交点P2、P3で接する内接円163を設定する。次に、内接円163が形成する円弧P2P3を第1修正曲線161aに選定する。前述のように、仮想断面158Aにおける切断線159の終点159bに相当するP1点を周方向Dcに延長し、修正曲線161aとの交点がQ1点に相当する。従って、周長曲線160の内のP2点とP3点の間の区間を第1修正曲線161aに置換えることにより、Q1点を通り、P2点とP3点で周長曲線160(160c、160d)に内接して、全体として滑らかな曲線を形成する周長曲線160に修正できる。ここで、挟み角とは、仮想断面の軸方向Daの前後に配置された2つの周長曲線で挟まれた角度(挟み角)であって、内接円163の中心C1側にある角度を言う。
【0047】
次に、周長曲線の変形例の一例について、
図2Bを参照しつつ説明する。
図2Bに示す変形例は、
図2Aに示す筒状部材150の構造とは異なり、仮想断面158A(位置X1)から出口222側に向かって筒状部材150の断面積が縮小し、周長RLが小さくなる構造を示している。このような構造であっても、軸方向Daの中間位置である仮想断面158A(位置X1)近傍において、筒状部材150の軸方向Daの断面形状が変化する場合は、P1点を境にして、周長曲線160の傾きが急激に変化する場合がある。このような周長曲線160の急激な変化を修正するためには、仮想断面158A(位置X1)近傍の周長曲線160を修正することが望ましい。
図2Bに示す例は、周長曲線160に内接する第1修正曲線161bを設定して、全体として滑らかな周長曲線160が形成されている。ここで、第1修正曲線161bが周長曲線160に内接するとは、周長曲線160に対して周方向Dcで、基準線157と同じ側に内接円(図示せず)を設定する。基準線157側に位置する内接円の中心側から仮想断面158Bにおける接点P2及び仮想断面158Cにおける接点P3において、内接円の円弧の一部である第1修正曲線161bが周長曲線160(160a、160b)に接することを言う。すなわち、第1修正曲線161bと仮想断面158A(位置X1)上の切断線159との交点をQ1とすれば、第1修正曲線161bは、位置X2における接点P2と、位置X3における接点P3点に接し、Q1点を通る内接円の一部を形成する円弧P2P3に相当する。P2点とP3点を結ぶ円弧P2P3を第1修正曲線161bとして、仮想断面158A(位置X1)近傍の周長曲線160を第1修正曲線161bに置換えて、全体として滑らかな周長曲線160を形成する考え方は、
図2Aの例と同様である。
【0048】
図2Bに示す例においても、仮想断面158Aの点P1における周長曲線160cと周長曲線160dとの挟み角α2が、軸方向Daの両側に隣接する仮想断面158Bの点P2における周長曲線160aと周長曲線160cとの挟み角及び仮想断面158Cの点P3における周長曲線160dと周長曲線160bとの挟み角と比較して最も小さい場合、仮想断面158A近傍の周長曲線160を修正することが望ましい。具体的には、最も小さい挟み角α2を有する周長曲線160が交差する仮想断面158Aを中心に、両側に隣接して配置された他の仮想断面158B、158Cと周長曲線160との交点P2、P3で接する内接円(図示せず)を設定し、内接円が形成する円弧P2P3を第1修正曲線161bに選定する考え方は、
図2Aの例と同様である。
【0049】
なお、
図2A及び
図2Bの具体例に示す第1修正曲線161は、想定する内接円の一部を形成する円弧を第1修正曲線に用いたが、滑らかな曲線が形成できれば、内接円の替りに楕円を形成する曲線の一部を適用してもよい。
【0050】
また、第1修正曲線161が周長曲線160に接する接点が、仮想断面158Aの位置X1に対して、隣接する仮想断面158B(位置X2)又は仮想断面158C(位置X3)より更に軸方向Daに離れる側(入口221側又は出口222側に近づく側)の場合は、他の仮想断面158B、158Cのそれぞれに隣接し、仮想断面158Aから更に離れる方向の仮想断面で接する第1修正曲線161を設定してもよい。
【0051】
すなわち、入口221側の周長曲線160aと出口222側の周長曲線160bとが交差して交点に角(エッジ)を有する不適正な周長曲線160が形成される場合、角(エッジ)が形成される仮想断面158A(位置X1)を挟んで、軸方向の入口221側に配置された入口寄り仮想断面及び出口222側に配置された出口寄り仮想断面を設定する。周長曲線160と入口寄り仮想断面及び出口寄り仮想断面との交点を接点に選択し、入口寄り仮想断面及び出口寄り仮想断面における各接点において、周長曲線160(160a、160b)に内接する曲線を第1修正曲線161に選定して、周長曲線160を修正してもよい。
【0052】
第1修正曲線161が決定したら、修正された第1修正曲線161に基づき、筒状部材150の三次元形状モデルに、修正後の第1分割線155aを再現させ、当初の第1分割線155aの位置を修正する。再現された第1分割線155aに基づき、再度仮想断面158の位置Xごとの周長RLを算出し、周長曲線160を平面グラフに表示して、周長曲線160が適正か否かを判定する。周長曲線160が適正でない場合は、第1修正曲線161を修正し、再度筒状部材150の三次元形状モデルに第1分割線155aを再現させる。適正な周長曲線160が形成できるまで、上記の手順を繰り返す。適正な周長曲線160が形成できたら、第1分割線修正手段ST10における第1分割線155aの位置が決定される。なお、第1修正曲線161に基づき第1分割線155aを再現するとは、修正後の第1修正曲線161の仮想断面158の位置X、周長RL又は周長RLを決定する終点159bの座標等のデータを入力して、後述する制御部120に収納された三次元形状モデルの作成プログラムに取り込み、三次元形状モデルにプロットして第1分割線155aを表示することを言う。
【0053】
次に、第2分割線修正手段ST20について、
図3A、
図3B及び
図3Cを参照しつつ説明する。第1分割線修正手段ST10で第1分割線155aの位置が決定したら、第1分割線155aを筒状部材150の三次元形状モデルに再現させる。この段階では、第1分割線155aの位置の決定に用いた各仮想断面158の位置X、周長RLの末端を示す終点159bを三次元形状モデルに再現させて、筒状部材150の三次元形状モデルに終点159bを通る分割線155を形成させる。再現された筒状部材150の分割線155(第2分割線155b)は、当初の分割候補ライン154を筒状部材150に投影させた第1分割線155aとは異なり、新たに第1分割線修正手段ST10で算出され、決定された周長RLを基準に引き直された第2分割線155bである。筒状部材150に再現された第2分割線155bが滑らかな曲線であれば、平板形状をプレス成形した後でも、高精度の合わせ面が形成される。しかし、
図3A及び
図3Bに一例として示す第2分割線155bの場合は、適正な第2分割線155bとは言えず、面合わせが困難になる場合がある。なお、
図3Aは、筒状部材150の三次元形状モデルに第2分割線155bを再現させ、その一部を示した部分図であり、
図3Bは、
図3Aの再現された第2分割線155bのA部の詳細を示す部分図である。
図3Cは、
図3Aの適正でない第2分割線155bの変形例を示す部分図である。なお、
図3Aから
図3Cに示す筒状部材150は、いずれも、仮想断面158A(位置X1)から軸方向Daの出口222側に向かって筒状部材150の断面積が拡大して、周長RLが大きくなる構造の例を示している。
【0054】
前述したように、複雑な形状の分割候補ライン154の場合や筒状部材150の外表面153に僅かな凹凸が存在する場合は、その影響を受けて、
図3Aに示すように、正常ではない第2分割線155bが作成される場合がある。すなわち、軸方向Daの位置X1にある仮想断面158Aを境にして、三次元形状モデルに再現された第2分割線155bの軸方向Daの入口221側の第2分割線155baと出口222側の第2分割線155bbとが、滑らかに接続することなく互いに交差して、R1点で交点が形成される。そのため、R1点で第2分割線155bの傾きが変化して、R1点で角(エッジ)が形成される。つまり、第1分割線修正手段ST10において滑らかな周長曲線160が得られた場合であっても、三次元形状モデルに第2分割線155bを再現させた場合、
図3AのR1点のような、角(エッジ)を備えた第2分割線155bが形成される場合がある。このような場合は、当初の再現された第2分割線155bの入口221側の第2分割線155baと出口222側の第2分割線155bbに対して、滑らかに内接する第2修正曲線162aを想定して、第2分割線155bを修正することが望ましい。
【0055】
なお、第2分割線修正手段ST20における第2分割線155bは、三次元形状モデルに立体的に表示された三次元曲線である。一方、第2修正曲線162aは、平面的に表示された二次元曲線である。従って、第2分割線修正手段ST20における第2分割線155bを修正する考え方は、便宜的に、第2分割線155bを平面図形上に投影させ、二次元曲線として平面図形上に表示させる。その後、平面図形上で第2分割線155ba及び第2分割線155bbに滑らかに接する第2修正曲線162aを選定し、各仮想断面158における周長RLを算出する。更に、修正後の周長RLを反映させた三次元形状データを作成し、三次元形状モデルに修正後の第2分割線155bを再現させ、修正後の第2分割線155bの形状が滑らかな曲線か否かを判断する。以下で説明する変形例を含めた修正曲線の設定の考え方は、便宜的に平面図形上で修正曲線162を設定する方法である。いずれの場合も、各仮想断面158について、修正曲線162に基づき修正後の周長RLを算出し、修正後の周長RLに基づき第2分割線155bを三次元形状モデルに再現させ、三次元形状モデルに表示された第2分割線155bの形状が適正か否かを判断する点で共通する。第2分割線155bが、滑らかな曲線で形成されていれば、プレス成形後の高精度の合わせ面が形成できる。
【0056】
以下、第2分割線155bの修正方法について説明する。
図3Aに示すように、周方向Dcに、第2分割線155bを間に挟んで基準線157の反対側に中心C2をもつ内接円164を想定する。内接円164を中心C2側から第2分割線155ba及び第2分割線155bbに接するように配置して、内接円164の円弧の一部を第2修正曲線162aに置換えるのが望ましい。ここで、第2修正曲線162aが第2分割線155bに内接するとは、第2修正曲線162aの一端が第2分割線155baに内接し、他端が軸方向Daで隣接する出口222側寄りの第2分割線155bbに内接している状態である。
【0057】
具体的には、
図3Bに示すように、仮想断面158A(位置X1)の軸方向Daの両側に隣接する他の仮想断面158B、158Cの位置X2、X3のそれぞれで、第2分割線155ba、155bbに接する第2修正曲線162aを作成し、それぞれの接点をR2点、R3点とする。また、切断線159をR1点から周方向Dcに延長して、第2修正曲線162aと交わる点をT1点とすれば、T1点、R2点及びR3点を繋ぐ第2修正曲線162aは、上述の内接円164の円弧の一部(円弧R2R3)を形成し、第2分割線155ba、155bbにおいて滑らかに接する曲線になる。すなわち、筒状部材150の三次元形状モデルに再現された第2分割線155bが、
図3Aに示すR1点のような角(エッジ)を有する場合、第2修正曲線162aは、T1点を通り、仮想断面158A(位置X1)に隣接する他の仮想断面158B、158Cの接点R2、R3において、第2分割線155ba、155bbに内接するように設定することが望ましい。
【0058】
次に、設定された第2修正曲線162aに基づき、仮想断面158A(位置X1)上の修正後の周長RLを設定する。修正後の周長RLを入力して、筒状部材150の三次元形状モデルに第2分割線155bを再現させる。すなわち、第2分割線155bを再現するとは、設定された第2修正曲線162aに基づき、仮想断面158Aの周長RLを算出し、三次元形状モデルに第2分割線155bを形成することにより、第2分割線155bを修正することを意味する。周長RLを修正して再現された第2分割線155bが滑らかな曲線で形成されていれば、平板形状をプレス成形した後でも、高精度な合わせ面が形成される。再現された第2分割線155bが、滑らかな曲線ではなく角(エッジ)を有する場合は、適正な分割線が再現できるまで、上記と同じ手順を繰り返すことが望ましい。
【0059】
次に、筒状部材150の三次元形状モデルに再現された第2分割線155bであって、正常ではない分割線の他の例(
図3AのA部の変形例)について、
図3Cを参照して説明する。
図3Cに示す変形例は、仮想断面158A(位置X1)におけるR1点を頂点に、基準線157から見てT1点を越えて周方向Dcに突出した第2分割線155bを示す。このような第2分割線155bは、筒状部材150の軸方向の断面形状の変化が大きく、外表面153の凹凸が大きい場合に形成される。このような第2分割線155bの場合は、仮想断面158A(位置X1)近傍の第2分割線155bを、R1点を通り、第2分割線155baと第2分割線155bbに滑らかに内接する第2修正曲線162bに置換えて、第2分割線155bを修正すればよい。
【0060】
すなわち、R1点のある仮想断面158A(位置X1)における終点159bの周方向Dcの位置は変えずに、第2修正曲線162bが第2分割線155baに接する位置を、仮想断面158B(位置X2)より更に入口221側寄りの仮想断面158D(位置X4)に設定し、接点をR4点とする。また、第2修正曲線162bが第2分割線155bbに接する位置を、仮想断面158C(位置X3)より更に出口222側寄りの仮想断面158E(位置X5)に設定し、接点をR5点とする。つまり、
図3Aに示す内接円164より径の大きい内接円(図示せず)を設定して、この内接円164が第2分割線155baと接する接点をR4点とし、第2分割線155bbと接する接点をR5点とする。T1点、R4点及びR5点を通る内接円の円弧の一部(円弧R4R5)を第2修正曲線162bに選定する。その後、仮想断面158B及び仮想断面158Cの切断線159の各終点159bを周方向Dcに延長して、第2修正曲線162bと交わる点をT2点及びT3点とする。終点159bをT2点及びT3点とする周長RLを算出し、仮想断面158Aの周長RLと共に、修正後の周長RLに基づく三次元形状データを作成し、三次元形状モデルに第2分割線155bを再現させる。なお、第2分割線155bを修正する際、周長RL基準ではなく、周長RLの終点159bを形成するT2点及びT3点の座標を算出し、第2修正曲線162bを形成する各点(T1、R4、R5、T2、T3)の各座標を入力して、修正後の第2分割線155bを三次元形状モデルに再現させてもよい。すなわち、本変形例も、各仮想断面158における終点159bの位置を変更し、周長RLを基準に第2分割線155bを三次元形状モデルに再現することにより、第2分割線155bを修正できる。再現された第2分割線155bが滑らかな曲線で形成されていれば、平板形状をプレス成形した後でも、高精度の合わせ面が形成される。
図3A、
図3Bの例と同様に、適正な第2分割線155bが再現できるまで、上記と同じ手順を繰り返すことが望ましい。
【0061】
すなわち、
図3A及び
図3Bに示す例から解るように、仮想断面158A(位置X1)を中心に正常でない第2分割線155bが再現される場合は、中心となる仮想断面158Aの軸方向Daの前後の第2分割線155ba及び第2分割線155bbに滑らかに内接する第2修正曲線162bを設定し、第2分割線155bの一部を第2修正曲線162bに置換える。修正された第2分割線155bに基づき修正後の周長RL又は終点159bの位置座標を算出し、三次元形状モデルに第2分割線155bを再現することにより第2分割線155bの位置を修正すればよい。なお、
図3Aから
図3Cに示す筒状部材150は、仮想断面158A(位置X1)から軸方向Daの出口222側に向かって筒状部材150の断面積が拡大して、周長RLが大きくなる構造の例を示したが、軸方向Daの出口222側に向かって筒状部材150の断面積が縮小して、周長RLが小さくなる場合であっても、内接円164の中心C2が基準線157と同じ側に配置される点を除き、その他の考え方は、
図3Aから
図3Cで説明した考え方と同様である。
【0062】
前述のように、第1分割線修正手段ST10において、平面グラフで周長に基づき滑らかな周長曲線160を選定して、第1分割線155aを選定する。次に、第1分割線修正手段ST10の結果に基づき、第2分割線修正手段ST20では、三次元形状モデルで、周長を基準に滑らかに形成された第2分割線155bを再現する。この2つのステップを適用する方法が、分割体152の滑らかな合わせ面を形成するために最も望ましい方法である。この方法により、製造現場における面合わせ作業が容易になる。なお、当初設定する分割候補ライン154が直線等の単純な場合や筒状部材150の軸方向の異形断面形状の変化が小さい場合は、第2分割線修正手段ST20を省略して、第1分割線修正手段ST10のみにより分割線155を修正して、最終分割線を設定してもよい。
【0063】
次に、第1分割線修正手段ST10及び第2分割線修正手段ST20により、分割体152の面合わせが容易な分割線の位置が決定出来たら、プレス限界予測修正手段ST30において、プレス成形後の加工歪等の影響による溶接面の面合わせの困難性(合わせ面の割れ、しわの発生等)を予測する。プレス限界予測修正手段ST30は、プレスシミュレーション(プレス成形のシミュレーション)を実行して面合わせの困難性を予測し、筒状部材150の分割線155の位置を修正する手段である。すなわち、プレスシミュレーションを実行するにあたって、筒状部材150の三次元形状データに基づき、金型形状及び分割体152の平板形状を設定する。設定された金型形状と平板形状に基づきプレスシミュレーション(第一シミュレーション)を実行し、各仮想断面158毎の歪量を算出する。歪量から仮想断面158における不具合(割れやしわ等)の発生の可能性を判定し、分割線155の位置の妥当性を判断する。
【0064】
図4は、分割体152のプレス成形時の成形限界を示す成形限界線
図170の一例である。横軸に最大歪ε1を示し、縦軸に最少歪ε2を示す。
図4において、成形限界線171より左側(成形限界線より最大歪ε1が小さい)領域の黒丸表示で一例として示す点であれば、合わせ面に不具合は発生せず、分割線155の位置の修正は不要と判断する。成形限界線より右側(成形限界線より最大歪ε1が大きい)領域であれば、合わせ面で不具合の発生の可能性があるとみなし、分割線の位置の修正が必要と判断する。分割線155の位置が妥当と判断されれば、精度の良い合わせ面が形成可能な最終分割線の位置が決定される。分割線155の修正が必要と判断される場合は、周方向Dcの歪量が小さくなる位置に分割線155の位置を修正すればよい。
【0065】
プレス限界予測修正手段ST30を適用すれば、従来は煩雑な作業のため確認が困難であったプレス成形後の加工歪等の影響による分割体152の面合わせの不具合(割れ、しわ等)の発生を事前に予測できる。その結果、分割体152の分割位置を修正して、不良個所の発生を防止し、作業工程の短縮及び製造コストの削減ができる。
【0066】
前述の説明により、プレス限界予測修正手段ST30において、プレス成形に伴う歪量から生ずる不具合を解消する手段を説明した。次に、分割体152の面合わせを更に容易にする手段として、分割体152の分割体形状設定手段ST40を適用することが望ましい。分割体152の分割体形状設定手段ST40には、分割体152の曲面形状設定手段ST41と平板形状設定手段ST42が含まれる。
【0067】
曲面形状設定手段ST41は、プレス成形後の分割体152の曲面形状誤差を最少にして、プレス成形後の曲面形状を分割体152の目標曲面形状に一致させる方法である。更に、平板形状設定手段ST42は、分割体152の曲面形状を合わせた後、分割体152の平板形状誤差を最少にして、プレス成形後の平板形状を目標形状に一致させる方法である。なお、曲面形状設定手段ST41に用いる平板形状は、プレス限界予測修正手段ST30で決定された平板形状が適用できる。
【0068】
曲面形状設定手段ST41における分割体152の曲面形状誤差は、主に金型形状に左右され、プレスシミュレーションにより、目標曲面形状に一致するように金型形状を修正する必要がある。具体的には、
図5A及び
図5Bに示すように、分割体152はプレス成形後においては、スプリングバック量だけ、金型形状から周方向Dcの外側に広がる傾向を示す。そのため、プレスシミュレーション(第二シミュレーション)を実行して、スプリングバック量を算出する。次に、プレス成形後の分割体152の曲面形状が目標曲面形状に一致するように、金型形状を反スプリングバック方向(スプリングバックにより形状が広がる方向とは逆方向)にスプリングバック量を考慮して金型形状の修正量を設定し、金型形状を修正する。曲面形状誤差が許容値内に納まれば、分割位置における合わせ面の段差等の不具合の発生が低減できる。ここで、曲面形状誤差とは、
図5Bに示すように、目標曲面形状とプレスシミュレーション後の曲面形状との分割体152の断面方向(周方向Dc)のずれ量を言い、金型形状の修正量と一致する。なお、
図5Bは、分割体152のプレスシミュレーション後の変形の方向が、分割体152の断面中心から右側のみを表示し、左側の変形の表示は省略している。
【0069】
次に、平板形状設定手段ST42を説明する。平板形状設定手段ST42は、プレスシミュレーション(第三シミュレーション)を用いて、分割体152のプレス成形後の平板形状誤差を最少とし、プレス成形後の分割体152を筒状部材150の目標形状に一致させる修正を行う。具体的な修正手段を以下に説明する。平板形状誤差を最小にする修正手段は、修正後の最終金型形状を用いて、分割体152ごとに行われる。
図6に示す例は、筒状部材150の側面パネルを形成する側部分割体片152bbのみを取り出し、目標形状となる筒状部材150の三次元形状モデルに隣接させて配置した図である。ここで、取り出された側部分割体片152bbは、プレス限界予測修正手段ST30において、最終金型形状に基づきプレスシミュレーション(第三シミュレーション)を実行した後の成形部材である。前述のように、最終金型形状を用いているため、側部分割体152bの曲面形状誤差は小さく、仮想断面158ごとの曲面形状は、目標曲面形状に一致している。この状態で、プレス成形後の側部分割体片152bbの端部形状について、三次元形状モデルの側部分割体152bとの平板形状誤差が最少となるように側部分割体片152bbの端部形状を修正する。ここで、平板形状誤差とは、プレス成形後部材である側部分割体片152bbを三次元形状体の一部である側部分割体152bに重ね合わせた場合において、各仮想断面158における周方向Dcの端部誤差(側部分割体片152bbの端面と三次元形状モデルの分割線155との周方向Dcのずれ量)を言う。
【0070】
図6に基づき、平板形状誤差の考え方を具体的に説明する。ここで、筒状部材150の三次元形状モデルの一部を形成する側部分割体152bの分割線155、156上にある入口221側の高さ方向Dhの上部側端部A11、下部側端部A12、出口222側の高さ方向Dhの上部側端部B11、下部側端部B12とし、入口221側から位置X1における仮想断面158上の上部側端部X11、下部側端部X12とする。また、側部分割体片152bbの周方向Dcの入口221側の上部側端部A21、下部側端部A22、出口222側の周方向Dcの上部側端部B21、下部側端部B22、入口221側から位置X1における周方向Dcの上部側端部X21、下部側端部X22とする。まず、側部分割体片152bbを筒状部材150の三次元形状モデルの一部を構成する側部分割体152bに重ね、入口221側及び出口222側の端部の位置を一致させる。すなわち、上部側端部A11とA21、上部側端部B11とB21、下部側端部A12とA22、下部側端部B12とB22の軸方向Da及び周方向Dcの位置を一致させる。入口221側及び出口222側のそれぞれの端部を一致させた状態で、各仮想断面158における上部側端部X11とX21との周方向Dcの平板形状誤差を算出する。平板形状誤差が所定値を超える場合は、誤差が零(ゼロ)となるように、最終金型形状設定時の平板形状を修正する。全ての仮想断面158において、平板形状誤差が許容値内に収まれば、側部分割体152bbの端部形状は、側部分割体152bの目標形状と一致する。
【0071】
上述のように、第1分割線修正手段ST10及び第2分割線修正手段ST20の方法に加えて、プレス限界予測修正手段ST30及び分割体形状設定手段ST40の方法を組み合わせれば、分割線の合わせ面は精度良く且つ滑らかな面合わせが可能になり、製造現場における面合わせ作業が容易になる。以下の実施形態の説明では、筒状部材の一例として燃焼器の尾筒を例に挙げ、各実施形態についての製造方法及び製造支援装置の内容を説明する。
【0072】
[第1実施形態]
本実施形態は、2つの分割体152で形成され、2面合わせで一体化された尾筒22に適用した例である。
図7から
図9を用いて、筒状部材150の一例である尾筒22を備えるガスタービンの一例について説明する。
図7は、本発明の実施形態に係るガスタービンの概略構成図、
図8は、ガスタービンにおける燃焼器の概略構成図、
図9は、燃焼器における尾筒の形状の概略図である。
【0073】
ガスタービンは、
図7に示すように、圧縮機1と燃焼器2とタービン3とを有する。また、圧縮機1、燃焼器2およびタービン3の中心部には、ロータ4が貫通して配置されている。圧縮機1、燃焼器2およびタービン3は、ロータ4の軸心Rに沿い、空気または燃焼ガスの流れの上流側から下流側に向かって順に並設されている。なお、以下の説明において、軸方向Daとは軸心Rに平行な方向をいい、周方向Dcとは軸心Rを中心とした回転する方向をいい、径方向Drとは軸心Rに直交する方向をいう。また、径方向内側とは軸心Rに対して接近する側であり、径方向外側とは軸心Rに対して離隔する側である。
【0074】
圧縮機1は、空気を圧縮して圧縮空気とするものである。圧縮機1は、空気を取り込む空気取入口11を有した圧縮機ケーシング12の内部の空気通路に、圧縮機静翼13および圧縮機動翼14が設けられている。圧縮機静翼13は、圧縮機ケーシング12側に取り付けられて周方向Dcに複数並設されている。また、圧縮機動翼14は、ロータ4側に取り付けられて周方向Dcに複数並設されている。これら圧縮機静翼13と圧縮機動翼14とは、軸方向Daで交互に複数設けられている。
【0075】
燃焼器2は、圧縮機1で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給することで、高温・高圧の燃焼ガスを生成するものである。燃焼器2は、圧縮空気と燃料を混合して燃焼させる内筒21と、内筒21から燃焼ガスをタービン3に導く尾筒22と、内筒21の外周を覆い、圧縮機1からの圧縮空気を内筒21に導く外筒23とを有している。この燃焼器2は、車室ケーシング24に対し周方向Dcに複数(例えば16個)並設されている。また、燃焼器2は、ガスタービンの車室内部の構造の制約から、燃焼器2の中心軸Sをロータ4の軸心Rに対して傾けて、径方向外側から径方向内側に斜めに燃焼ガスを噴出するように配置されている。
【0076】
また、燃焼器2には、
図8に示すように、主に燃料を供給する燃料ノズル251,252が設けられている。燃料ノズル251は、内筒21の中央に1本設けられたパイロットノズルである。また、燃料ノズル252は、内筒21内でパイロットノズル251の周囲で周方向に複数(例えば8個)隣接して設けられたメインノズルである。このメインノズル252の周囲には、メインノズル252を覆うバーナー筒252bが設けられている。
【0077】
この燃焼器2では、
図8に示すように、高温・高圧の圧縮空気の空気流が外筒23の内部に流れ込み、この圧縮空気が内筒21の内部に流れ込む。内筒21内では、圧縮空気がメインノズル252から噴射された燃料と混合され、バーナー筒252bにて予混合気の旋回流となって尾筒22内に流れ込む。また、圧縮空気は、パイロットノズル251から噴射された燃料と混合され、図示しない点火装置により点火されて燃焼し、燃焼ガスとなって尾筒22内に噴出する。このとき、パイロットノズル251から噴射した燃料による拡散火炎により、各メインノズル252のバーナー筒252bからの予混合気の燃焼を安定させるための保炎を行う。
【0078】
図7に示すように、タービン3は、燃焼器2で燃焼された燃焼ガスにより回転動力を生じるものである。タービン3は、燃焼ガスが送り込まれるタービンケーシング31の内部の排気通路にタービン静翼32およびタービン動翼33が設けられている。タービン静翼32は、タービンケーシング31側に取り付けられて周方向Dcに複数並設されている。また、タービン動翼33は、ロータ4の軸心Rを中心とした円盤状のディスクの外周に固定されて周方向Dcに複数並設されている。これらタービン静翼32とタービン動翼33とは、軸方向Daで交互に複数設けられている。また、タービンケーシング31の下流側には、タービン3に連続するディフューザ部34aを内部に有した排気室34が設けられている。
【0079】
ロータ4は、圧縮機1側の端部が軸受部41により支持され、排気室34側の端部が軸受部42により支持されて、軸心Rを中心として回転自在に設けられている。そして、ロータ4の排気室34側の端部には、発電機(図示せず)の駆動軸が連結されている。
【0080】
このようなガスタービンは、圧縮機1の空気取入口11から取り込まれた空気が、複数の圧縮機静翼13と圧縮機動翼14とを通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。この圧縮空気に対し、燃焼器2から燃料が供給されることで高温・高圧の燃焼ガスが生成される。そして、この燃焼ガスがタービン3のタービン静翼32とタービン動翼33とを通過することでロータ4が回転駆動され、このロータ4に連結された発電機に回転動力を付与することで発電を行う。そして、ロータ4を回転駆動した後の燃焼ガスは、排気室34内のディフューザ部34aで静圧に変換されてから大気に放出される。
【0081】
上述したガスタービンにおいて、
図8および
図9に示すように、燃焼器2の尾筒22は、筒状に形成され、一方の開口である尾筒22の入口221が内筒21に接続され、他方の開口である尾筒22の出口222がタービン3における排気通路の入口である第1段タービン静翼321に接続されている。尾筒22の入口221が接続される内筒21は、円筒形状に形成されている。このため、尾筒22の入口221は円形断面形状に形成されている(
図9参照)。上述したように燃焼器2は、周方向Dcに複数並設されている。このため、尾筒22の出口222は、第1段タービン静翼321に対応し、略四辺形断面形状に形成されている(
図9参照)。なお、尾筒の形状は、本実施形態に限定されない。
【0082】
燃焼器2の尾筒22は、内部を流れる高温の燃焼ガスから尾筒ケーシング223を保護するため、冷却溝を備えた二重壁で形成される。
図10に示すように、尾筒22の尾筒ケーシング223は、外側部材223aと冷却溝223cが形成された内側部材223bとからなり、外側部材223aと内側部材223bをろう付け等で貼りあわせて、内部に冷却溝223cを備え一体に形成された尾筒ケーシング223が作製される。冷却溝223cが軸方向Daに沿って形成され、複数の冷却溝223cが周方向Dcに平行に並ぶように配置される。尾筒ケーシング223をプレス成形する際は、板曲げの位置や曲面の程度によっては、冷却溝223cの近傍に割れやしわ等が発生する可能性がある。従って、そのような場合は、分割体152の分割位置(分割線)を周方向Dcに若干移動させることが望ましい。
【0083】
次に、
図11から
図13を用いて、尾筒22(筒状部材150)の製造方法について説明する。
図11は、筒状部材150の製造方法の全体フローチャートである。
図12は、製造方法の内の第1分割線修正手段ST10及び第2分割線修正手段ST20のフローチャートを示す。
図13は、製造方法の内のプレス限界予測修正手段ST30及び分割板形状設定手段ST40のフローチャートを示す。
【0084】
図11に示すように、尾筒22に代表される筒状部材150は、第1分割線修正手段ST10と第2分割線修正手段ST20とプレス限界予測修正手段ST30と分割体形状設定手段ST40と実加工の製作工程ST50を経て製造される。第1分割線修正手段ST10及び第2分割線修正手段ST20では、分割体152の分割位置における精度の良い面合わせが出来る分割線の位置を、周長を基準に決定する。プレス限界予測修正手段ST30では、プレスシミュレーションにより、合わせ面における不具合(割れやしわ等)の発生を予測し、分割線の位置を修正して、不具合の発生を回避できる分割線を決定する。分割体形状設定手段ST40では、プレスシミュレーションにより、分割体152の曲面形状誤差及び平板形状誤差の小さい曲面形状及び平板形状を決定して、面合わせを更に容易にすることができる。分割体形状設定手段ST40において、平板形状が最終的に決定したら、筒状部材150の実加工である製作工程ST50に進む。
【0085】
図11に示すように、製作工程ST50は、平板形状罫書き手段ST51と切断加工手段ST52とプレス成形加工手段ST53と面合わせ手段ST54及び溶接加工手段ST55と、から構成される。分割体形状設定手段ST40で設定された分割体152の最終平板形状を平板形状罫書き手段ST51に出力して、平板上に分割体152の平板形状が罫書きされる。平板上に罫書かれた分割体152を切断加工手段ST52で切断加工する。切断加工手段ST52では、機械加工の他に、レーザ切断加工等が適用できる。切断加工手段ST52で切り出された平板形状の分割体152は、プレス成形加工手段ST53で、プレス成形される。プレス成形加工手段ST53で成形された分割体152は、面合わせ手段ST54で分割体152の分割位置での面合わせ作業を行う。合わせ面である溶接面の段差や隙間量が許容値内であることを確認後、溶接加工手段ST55にて一体化された筒状部材150(尾筒22)が形成される。
【0086】
次に、
図12を参照しつつ、第1分割線修正手段ST10及び第2分割線修正手段ST20について、以下に詳細に説明する。第1分割線修正手段ST10では、以下に説明する方法により、第1分割線の位置を決定する。すなわち、詳細は後述する製造支援装置102のデータ取得部118(
図14参照)から筒状部材150及び分割線155の三次元形状データを取得する(ステップS11)。具体的には、筒状部材150の三次元形状データと、分割候補ライン154を筒状部材150に投影させた分割線155の三次元形状データを外部(別途の図形ソフトウェア)からデータ取得部118に取り込み、
図1に示すような筒状部材150の三次元形状モデルに分割線155(第1分割線155a)を表示する。なお、以下で説明する各ステップの工程は、後述する製造支援装置102の制御部120に収納されたプログラムを用いて実行される。各ステップの工程の考え方は前述した内容である。
【0087】
次に、筒状部材150の外表面153上に軸方向Daに延びる基準線157を設定する。また、筒状部材150の軸方向Daの中心軸Sに直交する複数の仮想断面158を設定する(ステップS12)。次に、三次元形状データに基づき、仮想断面158ごとの周長RLを算出する(ステップS13)。周長RLを算出する考え方は、前述した方法である。次に、
図2A及び
図2Bに示すように、仮想断面158の位置Xを横軸に、各仮想断面158における周長RLを縦軸にプロットして周長曲線160のグラフを作成する(ステップS14)。次に、
図2A及び
図2Bに示すように、仮想断面158ごとの周長RLに基づき作成した周長曲線160の修正の要否を判定する(ステップS15)。前述した方法により、周長曲線160(第1分割線155a)の修正の要否を、各仮想断面158について判定する。周長曲線160が滑らかな曲線で形成されず、例えば、
図2A又は
図2Bに示すように、P1点で角(エッジ)が形成され、P1点の前後で曲線の傾きが急激に変化するような場合は、第1分割線155aの位置は修正が必要と判定して、第1分割線155aの修正を指示する。修正指示が出された場合は、該当する仮想断面158、位置X、周長RL等を入力して、三次元形状モデルに第1分割線155aを再現して、第1分割線155aの位置を修正し(ステップS16)、ステップS13に戻る。第1分割線155aの修正は不要と判定した場合は、第2分割線修正手段ST20に進む。
【0088】
第2分割線修正手段ST20では、まず、第1分割線155aの筒状部材150の三次元形状モデルへの再現の要否を判定する(ステップS21)。分割候補ライン154が単純な形状の場合又は筒状部材150の軸方向Daの断面形状変化が小さい場合、或いは、第1分割線修正手段ST10で再現された第1分割線155aの形状を見て明らかに修正は不要と判断できる場合は、三次元形状モデルへの第1分割線155aの再現は不要と判定して、ステップS25へ移動する。三次元形状モデルへの第1分割線155aの再現が必要と判定した場合は、第1分割線155aを筒状部材150の三次元形状モデルに再現させ、再現された第1分割線155aを第2分割線155bとする(ステップS22)。再現された第2分割線155bについて、仮想断面158ごとに、適正で、滑らかな曲線であるか否かの判断基準に基づいて修正の要否を判定する(ステップS23)。
図3A及び
図3Bに示すように、R1点に角(エッジ)が形成される場合又はR1点の前後で第2分割線155bの曲線の傾きが急激に変化する場合、第2分割線155bの修正が必要と判定して、第2分割線155bの修正を指示する。或いは、
図3Cに示すように、第2分割線155bが仮想断面158(位置X1)で周方向に突出する頂点であるR1点を有する分割線を形成する場合も、同様に、第2分割線155bの修正が必要と判定して、修正を指示する。第2分割線155bの修正が不要と判定した場合は、第2分割線設定手段ST20の作業は終了する。第2分割線155bの修正指示がある場合は、該当する仮想断面158の位置X、周長RL又は周長RLを定める位置座標等を入力して、第2分割線155bの位置を修正し、ステップS22に戻る。なお、第2分割線155bを三次元形状モデルに再現する前に、第2分割線155bの修正が必要と判断される場合は、該当する仮想断面158の位置X、周長RL又は周長RLを定める位置座標等を入力して、第2分割線155bの位置を修正し(ステップS24)、ステップS22に戻る。第2分割線155bの修正指示がない場合、プレス限界予測修正手段ST30の適用の要否(プレス限界予測修正手段ST要否判定)を判定する(ステップS25)。分割候補ライン154が単純な形状の場合又は筒状部材150の軸方向daの断面形状変化が小さい場合又は既に類似の形状について蓄積データがあり、プレス限界の評価は不要と判断される場合、後述する第一シミュレーションは行わずにステップS37に移る。その他の場合は、次のプレス限界予測修正手段ST30に進む。
【0089】
図13に示すように、プレス限界予測修正手段ST30は、プレスシミュレーションを実行して、分割体152の分割位置における不良発生(しわや割れ等の発生)の可能性を予測する。まず、プレス成形前の平板形状及び金型形状を設定する(ステップS31)。プレスシミュレーション(第一シミュレーション)を実行し、仮想断面158ごとの歪量を算出する(ステップS32)。
図4に示すように、仮想断面158ごとに、算出された歪量をプロットした成形限界線
図170を作成し、シミュレーション結果として線図を画面(後述する表示部112)に表示する(ステップS33)。成形限界線
図170から不良個所(しわや割れ等)の発生の有無を判断し、第2分割線155bの修正の要否を判定する(ステップS34)。修正が不要と判定されたら、第2分割線155bが最終分割線として設定される(ステップS37)。第2分割線155bの修正が必要と判定された場合、該当する仮想断面158の位置X、周長RLを定める位置座標等を入力して、第2分割線155bの位置を修正する(ステップS35)。更に、修正後の第2分割線155b及び三次元形状データに基づき、分割体152の平板形状を算出し(ステップS36)、ステップS32に戻る。最終分割線が決定されたら、筒状部材150の三次元形状モデルの分割線の位置が決定され、次の分割体形状設定手段ST40に進む。
【0090】
次に、
図13を参照しつつ、分割体形状設定手段ST40を説明する。分割体形状設定手段ST40は、曲面形状設定手段ST41と平板形状設定手段ST42から構成される。曲面形状設定手段ST41は、プレスシミュレーションを実行して、分割体152の曲面形状を設定する。すなわち、プレスシミュレーション(第一シミュレーション)の実行過程で、最終分割線の決定に用いた平板形状及び金型形状を設定条件として、プレスシミュレーション(第二シミュレーション)を実行する(ステップS41)。仮想断面158ごとの分割体152の曲面形状誤差を算出し(ステップS42)、各仮想断面158に対する曲面形状誤差(金型形状の修正量)を画面(後述の表示部112)に表示する(ステップS43)。
図5Bを用いて説明したように、曲面形状誤差は、金型形状によって左右される。曲面形状誤差が許容値内か否かを判断して、金型形状の修正の要否を判定する(ステップS44)。金型形状の修正が必要と判定された場合、金型形状の修正指示を出す。曲面形状誤差が許容値内であれば、金型形状を最終金型形状として決定して(ステップS46)、分割体の曲面形状設定手段ST41を終了して、平板形状設定手段ST42に進む。曲面形状誤差が、許容値を超える場合は、金型形状を修正して(ステップS45)、ステップS41に戻る。
【0091】
平板形状設定手段ST42は、曲面形状設定手段ST41で決定された最終金型形状に基づき、プレスシミュレーション(第三シミュレーション)を実行して(ステップS47)、分割体152の平板形状誤差を算出し(ステップS48)、画面に表示する(ステップS49)。平板形状設定手段ST42は、
図6を用いて説明したように、曲面形状設定手段ST41において、分割体152の曲面形状を目標曲面形状に合わせた後、分割体152の平板形状誤差が許容値以内に入るように、分割体152のプレス成形後の端部形状を目標形状に一致させる方法である。平板形状誤差の算出方法は、前述した
図6に示す方法で行うことが出来る。次に、側部分割体片152bbの平板形状誤差が許容値内か否かを判断し、平板形状の修正の要否を判定する。修正が必要な場合は、平板形状の修正指示を出力する(ステップS50)。平板形状誤差が許容値内であれば、精度良く合わせ面が形成されていると判断され、最終平板形状が決定される(ステップS52)。平面形状の修正指示がある場合は、前述したように、該当する仮想断面158における側部分割体片152bbの平板形状を修正して(ステップS51)、ステップS47に戻る。最終平板形状が決定したら、分割体152の平板形状データが製作工程ST50の平板形状罫書き手段ST51に出力される。
【0092】
なお、
図10に尾筒ケーシング223の一例を示したように、尾筒ケーシング223は、外側部材223aと軸方向Daに延びる冷却溝223cが形成された内側部材223bとを貼りあわせた二重壁構造である。尾筒22に代表される筒状部材150の内部に冷却通路(フィン)が形成された構造とする場合、冷却通路と冷却通路との間に分割位置が配置されるように、分割線を形成することが好ましい。
【0093】
本実施形態では、筒状部材が尾筒の場合について説明したが、筒状部材は、尾筒以外の部材であってもよい。筒状部材は、筒状部材の周方向の少なくとも一面を溶接により接合する構造であればよい。
【0094】
次に、
図14を参照しながら、本実施形態に係る製造支援装置及び製造装置からなる製造システムについて説明する。
図14は、本実施形態に係る製造支援装置を有する製造システムの概略構成を示すブロック図である。
図14に示す製造システム100は、燃焼器2の尾筒22などの三次元形状を有する筒状部材150を製造する際に、筒状部材150の三次元形状データを外部(別途の図形ソフトウェア)から入手し、プレスシミュレーションを組み合わせて、製造部門が扱い易いデータに加工し、加工されたデータに基づいて筒状部材150を製造するシステムである。製造システム100は、製造支援装置102と、製造装置104と、を有する。
【0095】
製造支援装置102は、製造する筒状部材150の分割位置を製造部門が取り扱い易い方法で決定する。製造支援装置102は、表示部112と、操作部114と、記憶部116と、データ取得部118と、制御部120と、を有する。
【0096】
表示部112は、画面を表示するデバイスであり、液晶ディスプレイ、紙に画像を印刷するプリンタ等を有する。操作部114は、作業者が必要な操作を入力するデバイスであり、キーボード、マウス、タッチパネル等を有する。記憶部116は、処理を実行するプログラムや、各種データを記憶している。データ取得部118は、記録媒体からデータを読み取るデバイスや、通信によりデータを取得するデバイスを有する。
【0097】
制御部120は、記憶部116に記憶したプログラムを実行することで各種処理を実現する演算装置である。制御部120は、第1分割線修正部121と、第2分割線修正部122と、プレス限界予測修正部123と、分割体形状設定部124と、を有する。
【0098】
第1分割線修正部121は、基準設定部121A、周長算出部121B、周長曲線作成部121Cを備える。基準設定部121Aは、記憶部116又はデータ取得部118に収納された筒状部材150の三次元形状データ及び分割候補ライン154を筒状部材150の三次元形状モデルに投影させた三次元データ並びに仮想断面及び基準線等の入力データを取得する。更に、取得した三次元形状データ等に基づき三次元形状モデルに第1分割線155a及び基準線157並びに仮想断面158を設定する。周長算出部121Bは、設定された基準線157と第1分割線155aの位置情報に基づき筒状部材150の仮想断面158ごとの周長RLを算出する。周長曲線作成部121Cは、
図2A又は
図2Bに示す仮想断面158の位置Xと周長RLの関係を示す周長曲線160の平面グラフを作成し、表示部112に表示させる。作業者は、表示部112に表示された周長曲線160について、仮想断面158ごとに周長曲線160の形状が適正か否かを判断し、第1分割線155aの位置の修正の要否を判定する。第1分割線155aの修正が必要と判定されたら、作業者は、第1分割線155aの修正指示及び修正すべき仮想断面158の位置X並びに修正後の周長RL等の修正データを操作部114から入力する。修正データが入力されたら、周長算出部121Bにおいて修正データに基づき周長RLが算出される。周長曲線作成部121Cで修正後の周長曲線160の平面グラフが作成され、表示部112に表示される。第1分割線155aの修正は不要と判定されれば、第1分割線155aの関連データ(仮想断面158の位置Xと周長RLの関係等の情報)が第2分割線修正部122に送られる。なお、上述における第1分割線155aの修正は、作業者が判定し、修正データを入力する方法として説明したが、
図12に示す作業手順に従い、装置に自動的に判定させ、自動的に修正させてもよい。
【0099】
第2分割線修正部122は、第2分割線再現部122Aを有する。第2分割線再現部122Aは、
図3A、
図3B又は
図3Cに示すように、三次元形状データ及び第1分割線修正部121から送られた第1分割線155aの関連データに基づき、筒状部材150の三次元形状モデルに第1分割線155aを、周長RLを基準に表示して、第2分割線155bとして再現させる。更に、第2分割線155bを載せた三次元形状モデルを表示部112に表示する。作業者は、仮想断面158ごとに、第2分割線155bの修正の要否を判定する。第2分割線155bの修正が必要と判定した場合、修正指示及び修正すべき該当の仮想断面158の位置X並びに周長RL等の修正データを操作部114から入力する。修正データが入力されたら、修正データに基づき、修正後の第2分割線155bが三次元形状モデルに再現され、表示部112に表示される。第2分割線155bの修正指示がなければ、第2分割線155bの関連データがプレス限界予測修正部123に送られる。
【0100】
プレス限界予測修正部123は、条件設定部123A、第一シミュレーション実行部123B及び線図作成部123Cを有する。条件設定部123Aは、第2分割線修正部122から送られた第2分割線155bの関連データ及び入力された平板形状並びに金型形状に基づきプレスシミュレーションを実行するための条件を設定する。第一シミュレーション実行部123Bは、条件設定部123Aで設定された条件に基づき、プレスシミュレーション(第一シミュレーション)を実行する。線図作成部123Cは、第一シミュレーション実行部123Bでのプレスシミュレーションの結果に基づき、
図4に一例として示す成形限界線
図170を作成して、表示部112に表示する。作業者は、成形限界線
図170を参照して、仮想断面158ごとに不具合(割れやしわ等)の発生の可能性を判断し、第2分割線155bの修正の要否を判定する。第2分割線155bの修正が必要と判定された場合、作業者は、修正指示及び修正該当の仮想断面158の位置X並びに第2分割線155bの周方向Dcの修正後の位置の修正データを操作部114から入力する。修正データが入力されたら、修正データに基づき条件設定部123Aにおいて平板形状及び第2分割線155bの条件が修正され、再度第一シミュレーションが実行され、成形限界線
図170が作成される。第2分割線155bの修正指示がない場合、最終分割線の位置を決定して、分割体形状設定部124に関連データが送られる。
【0101】
分割体形状設定部124は、曲面形状設定部124Aと平板形状設定部124Bを有し、分割体152の曲面形状及び平板形状を決定する。曲面形状設定部124Aは、第二シミュレーション実行部124AA、曲面形状誤差算出部124AB、曲面形状誤差判定部124AC及び金型形状修正部124ADを有する。
【0102】
第二シミュレーション実行部124AAは、三次元形状データ及びプレス限界予測修正部123から送られた最終分割線の関連データ並びに第一シミュレーションの結果データに基づき、プレスシミュレーション(第二シミュレーション)を実行する。曲面形状誤差算出部124ABは、
図5Bに示すように、第二シミュレーションの結果データに基づき、仮想断面158ごとに、スプリングバック量から分割体152の曲面形状誤差を算出する。曲面形状誤差判定部124ACは、曲面形状誤差が許容値内か否かを判定する。曲面形状誤差が許容値を超える場合は、金型形状の修正指示が出される。金型形状修正部124ADは、修正指示に基づき、スプリングバック量を考慮して、シミュレーション後の曲面形状が、目標形状に一致するように金型形状を修正する。修正された金型形状は第二シミュレーション実行部124AAに送られ、再度第二シミュレーションが実行され、曲面形状誤差が算出される。曲面形状誤差が許容値内と判定されたら、第二シミュレーション実行時の金型形状を最終金型形状と設定し、次の平板形状設定部124Bに第二シミュレーション実行後の関連データ(最終金型形状等)が送られる。
【0103】
平板形状設定部124Bは、第三シミュレーション実行部124BA、平板形状誤差算出部124BB、平板形状誤差判定部124BC及び平板形状修正部124BDを有する。第三シミュレーション実行部124BAは、三次元形状データ及び曲面形状設定部124Aから送られた関連データ並びに第二シミュレーションの結果データに基づきプレスシミュレーション(第三シミュレーション)を実行し、側部分割体152bbのデータを取得する。平板形状誤差算出部124BBは、第三シミュレーションの結果データに基づき、仮想断面158ごとの分割体152の平板形状誤差を算出する。平板形状誤差判定部124BCは、平板形状誤差が許容値内か否かを判定する。平板形状誤差が許容値を超える場合は、平板形状の修正指示が出される。平板形状修正部124BDは、許容値を超えた仮想断面158ごとに、平板形状誤差が小さくなる方向に平板形状の端部の周方向Dcの位置を修正する。修正後の平板形状のデータは、第三シミュレーション実行部124BAに送られ、再度第三シミュレーションが実行されて、平板形状誤差が算出される。平板形状の修正は不要と判定された場合、第三シミュレーションの実行時の平板形状を最終平板形状に決定し、実加工用の平板形状罫書き用データを製造装置104に出力する。
【0104】
本実施形態によれば、三次元形状の筒状部材150の周長RLを基準に周長曲線160を平面グラフに表示して、分割線155の位置の妥当性を判定できるので、製造現場でも簡潔且つ容易に分割体152の分割位置を修正でき、作業効率が向上する。また、修正後の分割位置を筒状部材150の三次元形状モデルに再現して、分割位置を修正するので、分割位置の面合わせが容易になる。更に、プレスシミュレーションの結果も反映できるので、分割線155の分割位置における不具合の発生を事前に予測できる。従って、容易に分割位置の修正ができ、面合わせ作業が一層容易になる。また、製作不良の発生も抑制できる。
【0105】
[第2実施形態]
本実施形態は、
図15に示すように、4枚の分割体152a、152b、152c、152dで構成され、4面合わせで全体として一体化された尾筒22の製造に適用した例である。第1実施形態は、軸方向Daに延びる基準線157に対して、周方向Dcの一方側であって上部外表面153aと下部外表面153bの2箇所に分割線155、156を設けた実施形態である。なお、本実施形態は、基準線157に対して周方向Dcの反対側の上部外表面153a及び下部外表面153bの両側に更に分割線155を設けて、4本の分割線155を介して一体に形成された尾筒22である。すなわち、本実施形態の尾筒22は、4枚の分割体152による4面の面合わせが必要な尾筒22であり、第1実施形態と比較して、より高精度の面合わせが要求される。従って、本実施形態に本発明を適用すれば、製品品質が更に向上して、製造現場での作業効率が一層向上する。
【0106】
[第3実施形態]
本実施形態は、
図16に示すように、1枚の平板をプレス成形して、1つの筒状部材として形成された尾筒22の製造に適用した例である。本実施形態においても、軸方向Daに複数の仮想断面158を設定して、仮想断面158ごとに周長RLを算出して、平面グラフ上に周長曲線160を表示させ、周長曲線160が適正か否かを判断して、分割線155を修正し、滑らかな合わせ面を形成できる点では、他の実施形態と同じである。なお、筒状部材の分割数は、上述の実施形態に限定されず、いくつであってもよい。
【解決手段】筒状部材の外表面に投影させて作成された第1分割線及び筒状部材の三次元形状データを取得するステップと、筒状部材の外表面に沿って軸方向に延びる基準線を設定するステップと、筒状部材の軸方向の異なる位置で軸方向中心線に直交する面で切断する複数の仮想断面を設定するステップと、筒状部材の周方向の外表面に沿って、仮想断面における基準線から第1分割線までの周長を算出する周長算出ステップと、軸方向の仮想断面の位置と対応する周長の関係から周長曲線を作成するステップと、周長曲線の修正の要否を判定し、修正が必要と判定すれば修正指示を出す修正要否判定ステップと修正指示に基づき第1分割線を修正する第1分割線修正ステップと、を含む。