特許第6130063号(P6130063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新電元工業株式会社の特許一覧

特許6130063車両用電力供給システム、および車両用電力供給システムの制御方法
<>
  • 特許6130063-車両用電力供給システム、および車両用電力供給システムの制御方法 図000002
  • 特許6130063-車両用電力供給システム、および車両用電力供給システムの制御方法 図000003
  • 特許6130063-車両用電力供給システム、および車両用電力供給システムの制御方法 図000004
  • 特許6130063-車両用電力供給システム、および車両用電力供給システムの制御方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6130063
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】車両用電力供給システム、および車両用電力供給システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/08 20060101AFI20170508BHJP
   F02N 11/04 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   F02N11/08 L
   F02N11/08 V
   F02N11/04 A
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-522840(P2016-522840)
(86)(22)【出願日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】JP2015067540
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(72)【発明者】
【氏名】新井 達也
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/105238(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/017198(WO,A1)
【文献】 特開2015−68297(JP,A)
【文献】 特開2002−98032(JP,A)
【文献】 特許第5283784(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンに接続されたモータと、
オン又はオフに制御されるメインスイッチと、
オン又はオフに制御され、前記エンジンを始動させるためのスタータスイッチと、
正極が前記スタータスイッチの一端に接続され、負極が接地線に接続されたバッテリと、
オンすることにより、第1の接点と、前記正極に接続された第2の接点と、の間を導通し、一方、オフすることにより、前記第1の接点と、前記第2の接点と、の間を遮断するリレー回路と、
一端が出力端子に接続され、他端が前記バッテリの負極に接続された平滑化コンデンサと、
一端が前記第1の接点及び前記メインスイッチの一端に接続され、他端が前記接地線に接続され、前記モータから供給される交流電力を整流制御又は位相制御して一端と他端との間から直流電力を出力し、又は、前記バッテリの直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給することにより前記モータをモータ駆動する三相ブリッジ回路と、
一端が前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、他端が前記出力端子に接続された第1の制御用MOSトランジスタと、
カソードが前記第1の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが前記第1の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第1の制御用ボディダイオードと、
一端が前記出力端子に接続され、他端が前記バッテリの正極に接続された第2の制御用MOSトランジスタと、
カソードが前記第2の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが前記第2の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第2の制御用ボディダイオードと、
前記メインスイッチの他端と前記接地線との間に接続され、前記メインスイッチの他端から電力が供給され、前記三相ブリッジ回路、前記リレー回路、前記第1の制御用MOSトランジスタ、及び前記第2の制御用MOSトランジスタを制御する制御回路と、を備える
ことを特徴とする車両用電力供給システム。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記メインスイッチ及び前記スタータスイッチがオンしていると判定した場合には、前記リレー回路をオンし、
前記リレー回路をオンした後、前記三相ブリッジ回路を制御してモータ駆動し、
モータ駆動しているとき、前記モータの回転数が予め設定された切換回転数以上であるか否かを判定し、
前記モータの回転数が前記切換回転数以上である場合には、前記第1、第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記リレー回路をオフし、
前記第1、第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記リレー回路をオフした後、前記モータに接続された前記エンジンが始動完了しているか否かを判定し、
前記エンジンが始動完了していると判定した場合には、前記三相ブリッジ回路によるモータ駆動を停止させ、
前記モータ駆動を停止した後、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させ、
前記エンジンが駆動し且つ前記三相ブリッジ回路で整流制御している第1の状態において、前記バッテリの充電電圧が予め設定された目標電圧以上であるか否かを判定し、
前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧以上である場合には、前記リレー回路をオフし、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧に近づくように、前記第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第1の制御用MOSトランジスタのオンとオフとを切り換えるように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用電力供給システム。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記メインスイッチがオンしていると判定した場合には、前記第2の制御用ボディダイオードのカソードの検知電圧を取得し、
取得した前記検知電圧に基づいて、前記バッテリの電圧を検出し、又は、前記バッテリがオープン状態であるか否かを検出し、
前記バッテリの電圧が予め設定された下限値未満であることを検出し、又は、前記バッテリがオープン状態であることを検出した後、前記モータが回転している場合には、前記第1の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第2の制御用MOSトランジスタをオフし、
前記第1の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第2の制御用MOSトランジスタをオフした後、前記モータに接続された前記エンジンが始動完了しているか否かを判定し、
前記エンジンが始動完了していると判定した場合には、前記第1及び第2の制御用MOSトランジスタをオフし、
前記第1及び第2の制御用MOSトランジスタをオフした後、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用電力供給システム。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記メインスイッチがオンしていると判定した場合には、前記第2の制御用ボディダイオードのカソードの検知電圧を取得し、
取得した前記検知電圧に基づいて、前記バッテリの電圧を検出し、又は、前記バッテリがオープン状態であるか否かを検出し、
前記バッテリの電圧が予め設定された下限値以上であり且つ前記バッテリがオープン状態ではないことを検出した後、前記モータが回転している場合には、前記第1の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第2の制御用MOSトランジスタをオンし、
前記第1の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第2の制御用MOSトランジスタをオンした後、前記モータに接続された前記エンジンが始動完了しているか否かを判定し、
前記エンジンが始動完了していると判定した場合には、前記第1及び第2の制御用MOSトランジスタをオフし、
前記第1及び第2の制御用MOSトランジスタをオフした後、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用電力供給システム。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記第1の状態において、前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧未満である場合には、前記リレー回路をオンし、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を位相制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、前記第1の制御用MOSトランジスタをオフし且つ第2の制御用MOSトランジスタをオンする
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用電力供給システム。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記メインスイッチがオンしたか否かを判定し、前記メインスイッチがオンしている場合には、前記スタータスイッチがオンしたか否かを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用電力供給システム。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記モータの回転数を検出可能であり、前記モータの回転数が前記切換回転数よりも高い予め設定された始動回転数以上である場合には、前記モータに接続されたエンジンが始動完了していると判定し、
一方、前記モータの回転数が前記始動回転数未満である場合には、前記エンジンが始動途中であると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用電力供給システム。
【請求項8】
前記制御回路は、
前記平滑化コンデンサの一端の電圧を検出し、この検出した電圧に基づいて、前記バッテリの充電電圧を取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用電力供給システム。
【請求項9】
ベースが前記メインスイッチの他端に接続され、エミッタが前記接地線に接続された第1の検出用バイポーラトランジスタと、
ベースが前記第1の検出用バイポーラトランジスタのコレクタに接続され、エミッタが前記第2の制御用ボディダイオードのカソードに接続され、コレクタが前記制御回路に接続された第2の検出用バイポーラトランジスタと、をさらに備え、
前記制御回路は、前記第2の検出用バイポーラトランジスタのエミッタの電圧に基づいて、前記バッテリの電圧を検出し、又は、バッテリがオープン状態であるか否かを検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用電力供給システム。
【請求項10】
一端が前記バッテリの正極に接続されたリレー用コイルと、
一端が前記リレー用コイルの他端に接続され、他端が前記接地線に接続されたリレー用スイッチ素子をさらに備え、
前記制御回路は、
前記リレー用スイッチ素子をオンすることにより、前記リレー用コイルを通電させ、
一方、前記リレー用スイッチ素子をオフすることにより、前記リレー用コイルを通電させない
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用電力供給システム。
【請求項11】
前記スタータスイッチの他端は、前記制御回路に接続され、前記スタータスイッチの一端は、前記バッテリの正極に接続され、
前記制御回路は、
前記スタータスイッチがオンすることにより、前記バッテリの正極の電圧に応じた信号が前記スタータスイッチの他端から入力された場合に、前記スタータスイッチがオンしていると判定し、
一方、前記スタータスイッチがオフすることにより、前記バッテリの正極の電圧に応じた信号が前記スタータスイッチの他端から入力されない場合に、前記スタータスイッチがオフしていると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用電力供給システム。
【請求項12】
前記制御回路は、
前記メインスイッチの他端から電力が供給されることにより、前記メインスイッチがオンしていると判定し、
一方、前記メインスイッチの他端から電力が供給されないことにより、前記メインスイッチがオフしていると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用電力供給システム。
【請求項13】
前記出力端子と前記接地線との間に負荷が接続され、前記負荷は、前記エンジンのフュエルポンプ、前記エンジンのインジェクタ、または、前記エンジンのイグニッションコイルの何れかである
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用電力供給システム。
【請求項14】
前記三相ブリッジ回路は、
ドレインが前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、ソースが前記モータのU相コイルの一端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第1のMOSトランジスタと、
カソードが前記第1のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第1のMOSトランジスタのソースに接続された第1のダイオードと、
ドレインが前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、ソースが前記モータのV相コイルの一端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第2のMOSトランジスタと、
カソードが前記第2のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第2のMOSトランジスタのソースに接続された第2のダイオードと、
ドレインが前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、ソースが前記モータのW相コイルの一端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第3のMOSトランジスタと、
カソードが前記第3のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第3のMOSトランジスタのソースに接続された第3のダイオードと、
ドレインが前記モータのU相コイルの一端に接続され、ソースが前記三相ブリッジ回路の他端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第4のMOSトランジスタと、カソードが前記第4のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第4のMOSトランジスタのソースに接続された第4のダイオードと、
ドレインが前記モータのV相コイルの一端に接続され、ソースが前記三相ブリッジ回路の他端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第5のMOSトランジスタと、
カソードが前記第5のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第5のMOSトランジスタのソースに接続された第5のダイオードと、
ドレインが前記モータのW相コイルの一端に接続され、ソースが前記三相ブリッジ回路の他端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第6のMOSトランジスタと、
カソードが前記第6のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第6のMOSトランジスタのソースに接続された第6のダイオードと、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用電力供給システム。
【請求項15】
車両のエンジンに接続されたモータと、オン又はオフに制御されるメインスイッチと、オン又はオフに制御され、前記エンジンを始動させるためのスタータスイッチと、正極が前記スタータスイッチの一端に接続され、負極が接地線に接続されたバッテリと、オンすることにより、第1の接点と、前記正極に接続された第2の接点と、の間を導通し、一方、オフすることにより、前記第1の接点と、前記第2の接点と、の間を遮断するリレー回路と、一端が出力端子に接続され、他端が前記バッテリの負極に接続された平滑化コンデンサと、一端が前記第1の接点及び前記メインスイッチの一端に接続され、他端が前記接地線に接続され、前記モータから供給される交流電力を整流制御又は位相制御して一端と他端との間から直流電力を出力し、又は、前記バッテリの直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給することにより前記モータをモータ駆動する三相ブリッジ回路と、一端が前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、他端が前記出力端子に接続された第1の制御用MOSトランジスタと、カソードが前記第1の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが前記第1の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第1の制御用ボディダイオードと、一端が前記出力端子に接続され、他端が前記バッテリの正極に接続された第2の制御用MOSトランジスタと、カソードが前記第2の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが前記第2の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第2の制御用ボディダイオードと、前記メインスイッチの他端と前記接地線との間に接続され、前記メインスイッチの他端から電力が供給され、前記三相ブリッジ回路、前記リレー回路、前記第1の制御用MOSトランジスタ、及び前記第2の制御用MOSトランジスタを制御する制御回路と、を備えた車両用電力供給システムの制御方法であって、
前記制御回路により、
前記メインスイッチ及び前記スタータスイッチがオンしていると判定した場合には、前記リレー回路をオンし、
前記リレー回路をオンした後、前記三相ブリッジ回路を制御してモータ駆動し、
モータ駆動しているとき、前記モータの回転数が予め設定された切換回転数以上であるか否かを判定し、
前記モータの回転数が前記切換回転数以上である場合には、前記第1、第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記リレー回路をオフし、
前記第1、第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記リレー回路をオフした後、前記モータに接続された前記エンジンが始動完了しているか否かを判定し、
前記エンジンが始動完了していると判定した場合には、前記三相ブリッジ回路によるモータ駆動を停止させ、
前記モータ駆動を停止した後、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させ、
前記エンジンが駆動し且つ前記三相ブリッジ回路で整流制御している第1の状態において、前記バッテリの充電電圧が予め設定された目標電圧以上であるか否かを判定し、
前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧以上である場合には、前記リレー回路をオフし、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧に近づくように、前記第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第1の制御用MOSトランジスタのオンとオフとを切り換えるように制御する
ことを特徴とする車両用電力供給システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電力供給システム、および車両用電力供給システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動二輪車等のエンジンを始動し又はバッテリを充電する車両用電力供給システムが提案されている(例えば、特許第5283784号参照。)。
【0003】
この従来の車両用電力供給システムは、例えば、車両のエンジンに接続されたバッテリBと、2つのリレー回路RY1A、RY2Aと、2つのヒューズF1、F2と、三相ブリッジ回路Q1〜Q6及びモータ仕様と発電仕様のアンバランスによる発電損失を改善するために付加したトランジスタQ7A〜Q9Aを含む電力変換部と、この電力変換部とリレー回路RY1A、RY2Aを制御する制御回路CONAと、ユーザにより制御されるメインスイッチSW1A及びスタータスイッチSW2Aと、ダイオードD1A、D2Aと、平滑化コンデンサCと、を備える(図4)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車両用電力供給システム100Aにおいて、モータMをモータ駆動する場合、スイッチ回路を構成するトランジスタQ7A〜Q9Aによる電力損失を発生しエンジン始動時のトルクが低下する問題がある。
【0005】
また、バッテリ充電時にトランジスタQ7A〜Q9Aによる電力損失が発生し充電効率が悪化する問題がある。
【0006】
また、キック駆動時の始動性確保のために、劣化したバッテリBに発電電力を吸収されないように2つのリレー回路RY1A、RY2Aを用いて、個別に制御する必要がある。すなわち、これらのリレー回路RY1A、RY2Aの作動回路が2つ必要となり、また、リレー回路RY1Aは、発電時は常時オンする必要があり消費電力が増加する問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、バッテリの充電経路に配置されるスイッチ回路による電力損失を削減しつつ、リレー回路を1つに削減することが可能な車両用電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る実施形態に従った車両用電力供給システムは、
車両のエンジンに接続されたモータと、
オン又はオフに制御されるメインスイッチと、
オン又はオフに制御され、前記エンジンを始動させるためのスタータスイッチと、
正極が前記スタータスイッチの一端に接続され、負極が接地線に接続されたバッテリと、
オンすることにより、第1の接点と、前記正極に接続された第2の接点と、の間を導通し、一方、オフすることにより、前記第1の接点と、前記第2の接点と、の間を遮断するリレー回路と、
一端が出力端子に接続され、他端が前記バッテリの負極に接続された平滑化コンデンサと、
一端が前記第1の接点及び前記メインスイッチの一端に接続され、他端が前記接地線に接続され、前記モータから供給される交流電力を整流制御又は位相制御して一端と他端との間から直流電力を出力し、又は、前記バッテリの直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給することにより前記モータをモータ駆動する三相ブリッジ回路と、
一端が前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、他端が前記出力端子に接続された第1の制御用MOSトランジスタと、
カソードが前記第1の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが前記第1の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第1の制御用ボディダイオードと、
一端が前記出力端子に接続され、他端が前記バッテリの正極に接続された第2の制御用MOSトランジスタと、
カソードが前記第2の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが前記第2の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第2の制御用ボディダイオードと、
前記メインスイッチの他端と前記接地線との間に接続され、前記メインスイッチの他端から電力が供給され、前記三相ブリッジ回路、前記リレー回路、前記第1の制御用MOSトランジスタ、及び前記第2の制御用MOSトランジスタを制御する制御回路と、を備える
ことを特徴とする。
【0009】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記制御回路は、
前記メインスイッチ及び前記スタータスイッチがオンしていると判定した場合には、前記リレー回路をオンし、
前記リレー回路をオンした後、前記三相ブリッジ回路を制御してモータ駆動し、
モータ駆動しているとき、前記モータの回転数が予め設定された切換回転数以上であるか否かを判定し、
前記モータの回転数が前記切換回転数以上である場合には、前記第1、第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記リレー回路をオフし、
前記第1、第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記リレー回路をオフした後、前記モータに接続された前記エンジンが始動完了しているか否かを判定し、
前記エンジンが始動完了していると判定した場合には、前記三相ブリッジ回路によるモータ駆動を停止させ、
前記モータ駆動を停止した後、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させ、
前記エンジンが駆動し且つ前記三相ブリッジ回路で整流制御している第1の状態において、前記バッテリの充電電圧が予め設定された目標電圧以上であるか否かを判定し、
前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧以上である場合には、前記リレー回路をオフし、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧に近づくように、前記第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第1の制御用MOSトランジスタのオンとオフとを切り換えるように制御する
ことを特徴とする。
【0010】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記制御回路は、
前記メインスイッチがオンしていると判定した場合には、前記第2の制御用ボディダイオードのカソードの検知電圧を取得し、
取得した前記検知電圧に基づいて、前記バッテリの電圧を検出し、又は、前記バッテリがオープン状態であるか否かを検出し、
前記バッテリの電圧が予め設定された下限値未満であることを検出し、又は、前記バッテリがオープン状態であることを検出した後、前記モータが回転している場合には、前記第1の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第2の制御用MOSトランジスタをオフし、
前記第1の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第2の制御用MOSトランジスタをオフした後、前記モータに接続された前記エンジンが始動完了しているか否かを判定し、
前記エンジンが始動完了していると判定した場合には、前記第1及び第2の制御用MOSトランジスタをオフし、
前記第1及び第2の制御用MOSトランジスタをオフした後、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させる
ことを特徴とする。
【0011】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記制御回路は、
前記メインスイッチがオンしていると判定した場合には、前記第2の制御用ボディダイオードのカソードの検知電圧を取得し、
取得した前記検知電圧に基づいて、前記バッテリの電圧を検出し、又は、前記バッテリがオープン状態であるか否かを検出し、
前記バッテリの電圧が予め設定された下限値以上であり且つ前記バッテリがオープン状態ではないことを検出した後、前記モータが回転している場合には、前記第1の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第2の制御用MOSトランジスタをオンし、
前記第1の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第2の制御用MOSトランジスタをオンした後、前記モータに接続された前記エンジンが始動完了しているか否かを判定し、
前記エンジンが始動完了していると判定した場合には、前記第1及び第2の制御用MOSトランジスタをオフし、
前記第1及び第2の制御用MOSトランジスタをオフした後、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させる
ことを特徴とする。
【0012】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記制御回路は、
前記第1の状態において、前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧未満である場合には、前記リレー回路をオンし、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を位相制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、前記第1の制御用MOSトランジスタをオフし且つ第2の制御用MOSトランジスタをオンする
ことを特徴とする。
【0013】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記制御回路は、
前記メインスイッチがオンしたか否かを判定し、前記メインスイッチがオンしている場合には、前記スタータスイッチがオンしたか否かを判定する
ことを特徴とする。
【0014】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記制御回路は、
前記モータの回転数を検出可能であり、前記モータの回転数が前記切換回転数よりも高い予め設定された始動回転数以上である場合には、前記モータに接続されたエンジンが始動完了していると判定し、
一方、前記モータの回転数が前記始動回転数未満である場合には、前記エンジンが始動途中であると判定する
ことを特徴とする。
【0015】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記制御回路は、
前記平滑化コンデンサの一端の電圧を検出し、この検出した電圧に基づいて、前記バッテリの充電電圧を取得する
ことを特徴とする。
【0016】
前記車両用電力供給システムにおいて、
ベースが前記メインスイッチの他端に接続され、エミッタが前記接地線に接続された 第1の検出用バイポーラトランジスタと、
ベースが前記第1の検出用バイポーラトランジスタのコレクタに接続され、エミッタが前記第2の制御用ボディダイオードのカソードに接続され、コレクタが前記制御回路に接続された第2の検出用バイポーラトランジスタと、をさらに備え、
前記制御回路は、前記第2の検出用バイポーラトランジスタのエミッタの電圧に基づいて、前記バッテリの電圧を検出し、又は、バッテリがオープン状態であるか否かを検出する
ことを特徴とする。
【0017】
前記車両用電力供給システムにおいて、
一端が前記バッテリの正極に接続されたリレー用コイルと、
一端が前記リレー用コイルの他端に接続され、他端が前記接地線に接続されたリレー用スイッチ素子をさらに備え、
前記制御回路は、
前記リレー用スイッチ素子をオンすることにより、前記リレー用コイルを通電させ、
一方、前記リレー用スイッチ素子をオフすることにより、前記リレー用コイルを通電させない
ことを特徴とする。
【0018】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記スタータスイッチの他端は、前記制御回路に接続され、前記スタータスイッチの一端は、前記バッテリの正極に接続され、
前記制御回路は、
前記スタータスイッチがオンすることにより、前記バッテリの正極の電圧に応じた信号が前記スタータスイッチの他端から入力された場合に、前記スタータスイッチがオンしていると判定し、
一方、前記スタータスイッチがオフすることにより、前記バッテリの正極の電圧に応じた信号が前記スタータスイッチの他端から入力されない場合に、前記スタータスイッチがオフしていると判定する
ことを特徴とする。
【0019】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記制御回路は、
前記メインスイッチの他端から電力が供給されることにより、前記メインスイッチがオンしていると判定し、
一方、前記メインスイッチの他端から電力が供給されないことにより、前記メインスイッチがオフしていると判定する
ことを特徴とする。
【0020】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記出力端子と前記接地線との間に負荷が接続され、前記負荷は、前記エンジンのフュエルポンプ、前記エンジンのインジェクタ、または、前記エンジンのイグニッションコイルの何れかである
ことを特徴とする。
【0021】
前記車両用電力供給システムにおいて、
前記三相ブリッジ回路は、
ドレインが前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、ソースが前記モータのU相コイルの一端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第1のMOSトランジスタと、
カソードが前記第1のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第1のMOSトランジスタのソースに接続された第1のダイオードと、
ドレインが前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、ソースが前記モータのV相コイルの一端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第2のMOSトランジスタと、
カソードが前記第2のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第2のMOSトランジスタのソースに接続された第2のダイオードと、
ドレインが前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、ソースが前記モータのW相コイルの一端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第3のMOSトランジスタと、
カソードが前記第3のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第3のMOSトランジスタのソースに接続された第3のダイオードと、
ドレインが前記モータのU相コイルの一端に接続され、ソースが前記三相ブリッジ回路の他端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第4のMOSトランジスタと、カソードが前記第4のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第4のMOSトランジスタのソースに接続された第4のダイオードと、
ドレインが前記モータのV相コイルの一端に接続され、ソースが前記三相ブリッジ回路の他端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第5のMOSトランジスタと、
カソードが前記第5のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第5のMOSトランジスタのソースに接続された第5のダイオードと、
ドレインが前記モータのW相コイルの一端に接続され、ソースが前記三相ブリッジ回路の他端に接続され、ゲート電圧が前記制御回路により制御される第6のMOSトランジスタと、
カソードが前記第6のMOSトランジスタのドレインに接続され、アノードが前記第6のMOSトランジスタのソースに接続された第6のダイオードと、を有する
ことを特徴とする。
【0022】
本発明の一態様に係る実施形態に従った車両用電力供給システムの制御方法は、車両のエンジンに接続されたモータと、オン又はオフに制御されるメインスイッチと、オン又はオフに制御され、前記エンジンを始動させるためのスタータスイッチと、正極が前記スタータスイッチの一端に接続され、負極が接地線に接続されたバッテリと、オンすることにより、第1の接点と、前記正極に接続された第2の接点と、の間を導通し、一方、オフすることにより、前記第1の接点と、前記第2の接点と、の間を遮断するリレー回路と、一端が出力端子に接続され、他端が前記バッテリの負極に接続された平滑化コンデンサと、一端が前記第1の接点及び前記メインスイッチの一端に接続され、他端が前記接地線に接続され、前記モータから供給される交流電力を整流制御又は位相制御して一端と他端との間から直流電力を出力し、又は、前記バッテリの直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給することにより前記モータをモータ駆動する三相ブリッジ回路と、一端が前記三相ブリッジ回路の一端に接続され、他端が前記出力端子に接続された第1の制御用MOSトランジスタと、カソードが前記第1の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが前記第1の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第1の制御用ボディダイオードと、一端が前記出力端子に接続され、他端が前記バッテリの正極に接続された第2の制御用MOSトランジスタと、カソードが前記第2の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが前記第2の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第2の制御用ボディダイオードと、前記メインスイッチの他端と前記接地線との間に接続され、前記メインスイッチの他端から電力が供給され、前記三相ブリッジ回路、前記リレー回路、前記第1の制御用MOSトランジスタ、及び前記第2の制御用MOSトランジスタを制御する制御回路と、を備えた車両用電力供給システムの制御方法であって、
前記制御回路により、
前記メインスイッチ及び前記スタータスイッチがオンしていると判定した場合には、前記リレー回路をオンし、
前記リレー回路をオンした後、前記三相ブリッジ回路を制御してモータ駆動し、
モータ駆動しているとき、前記モータの回転数が予め設定された切換回転数以上であるか否かを判定し、
前記モータの回転数が前記切換回転数以上である場合には、前記第1、第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記リレー回路をオフし、
前記第1、第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記リレー回路をオフした後、前記モータに接続された前記エンジンが始動完了しているか否かを判定し、
前記エンジンが始動完了していると判定した場合には、前記三相ブリッジ回路によるモータ駆動を停止させ、
前記モータ駆動を停止した後、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させ、
前記エンジンが駆動し且つ前記三相ブリッジ回路で整流制御している第1の状態において、前記バッテリの充電電圧が予め設定された目標電圧以上であるか否かを判定し、
前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧以上である場合には、前記リレー回路をオフし、前記三相ブリッジ回路を制御して、前記モータから供給される交流電力を整流制御して前記三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、前記バッテリの充電電圧が前記目標電圧に近づくように、前記第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ前記第1の制御用MOSトランジスタのオンとオフとを切り換えるように制御する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様に係る車両用電力供給システムは、車両のエンジンに接続されたモータと、オン又はオフに制御されるメインスイッチと、オン又はオフに制御され、エンジンを始動させるためのスタータスイッチと、正極がスタータスイッチの一端に接続され、負極が接地線に接続されたバッテリと、オンすることにより、第1の接点と、正極に接続された第2の接点と、の間を導通し、一方、オフすることにより、第1の接点と、第2の接点と、の間を遮断するリレー回路と、一端が出力端子に接続され、他端がバッテリの負極に接続された平滑化コンデンサと、一端が第1の接点及びメインスイッチの一端に接続され、他端が接地線に接続され、モータから供給される交流電力を整流制御又は位相制御して一端と他端との間から直流電力を出力し、又は、バッテリの直流電力を交流電力に変換してモータに供給することによりモータをモータ駆動する三相ブリッジ回路と、一端が三相ブリッジ回路の一端に接続され、他端が出力端子に接続された第1の制御用MOSトランジスタと、カソードが第1の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが第1の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第1の制御用ボディダイオードと、一端が出力端子に接続され、他端がバッテリの正極に接続された第2の制御用MOSトランジスタと、カソードが第2の制御用MOSトランジスタの他端に接続され、アノードが第2の制御用MOSトランジスタの一端に接続された第2の制御用ボディダイオードと、メインスイッチの他端と接地線との間に接続され、メインスイッチの他端から電力が供給され、三相ブリッジ回路、リレー回路、第1の制御用MOSトランジスタ、及び第2の制御用MOSトランジスタを制御する制御回路と、を備える。
【0024】
これにより、車両用電力供給システムでは、必要なリレー回路が、バッテリの正極と三相ブリッジ回路の一端との間に接続された1つのリレー回路だけになり、リレー回路を1つに削減することができる。
【0025】
さらに、整流制御時(同期整流又はオープン制御時)の充電経路にはスイッチ回路(第1、第2の制御用MOSトランジスタ)が配置され、三相ブリッジ回路の位相制御時の充電経路には1個のリレー回路が配置されている。これにより、位相制御時のバッテリ充電におけるスイッチ回路による電力損失を削減することができる。
【0026】
特に、制御回路は、バッテリの充電電圧が目標電圧未満である場合には、リレー回路をオンし、三相ブリッジ回路を制御して、モータから供給される交流電力を位相制御して三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、第1、第2の制御用MOSトランジスタをオフする。
【0027】
一方、制御回路は、バッテリの充電電圧が目標電圧以上である場合には、リレー回路をオフし、三相ブリッジ回路を制御して、モータから供給される交流電力を整流制御して三相ブリッジ回路の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、バッテリの充電電圧が目標電圧に近づくように、第2の制御用MOSトランジスタをオンし且つ第1の制御用MOSトランジスタのオンとオフとを切り換えるように制御する。
【0028】
このように、バッテリの充電電圧が目標電圧未満である場合には、三相ブリッジ回路を位相制御してリレー回路を介してバッテリを充電する。そして、充電電圧が目標電圧に達した後は、三相ブリッジ回路の位相制御を停止し、整流制御を開始してスイッチ回路で充電電圧を制御することができる。
【0029】
以上のように、本発明に係る車両用電力供給システムによれば、バッテリの充電経路に配置されるスイッチ回路による電力損失を削減しつつ、リレー回路を1つに削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の一態様である第1の実施形態に係る車両用電力供給システム100の構成の一例を示す図である。
図2図2は、図1に示す車両用電力供給システム100のセル駆動の場合の動作の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、図1に示す車両用電力供給システム100のキック駆動の場合の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、従来の車両用電力供給システム100Aの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る各実施形態について図面に基づいて説明する。
【第1の実施形態】
【0032】
図1は、本発明の一態様である第1の実施形態に係る車両用電力供給システム100の構成の一例を示す図である。
【0033】
図1に示すように、車両用電力供給システム100は、モータ(三相ブラシレスモータ)Mと、メインスイッチSW1と、スタータスイッチSW2と、バッテリBと、リレー回路RY1と、リレー用コイルLと、リレー用スイッチ素子Q9と、第1の検出用バイポーラトランジスタ(NPN型バイポーラトランジスタ)Q10と、第2の検出用バイポーラトランジスタ(PNP型バイポーラトランジスタ)Q11と、 平滑化コンデンサCと、三相ブリッジ回路10と、スイッチ回路20と、制御回路CONと、出力端子TOUTと、負荷端子TRと、ヒューズFと、接地線Gと、を備えている。
【0034】
この車両用電力供給システム100は、図示しない車両(例えば、二輪車)に搭載される。
【0035】
そして、モータMは、既述の車両のエンジン(図示せず)に接続されている。モータMは、該エンジンを始動する動力源であるスタータモータとして機能するとともに、該エンジンの始動後には、該エンジンの動力から発電する発電機として機能するようになっている。
【0036】
メインスイッチSW1の一端は、第1の接点C1及び三相ブリッジ回路の一端10aに接続され、メインスイッチSW1の他端は、制御回路CONに接続されている。
【0037】
このメインスイッチSW1は、ユーザによりオン又はオフに制御されるようになっている。このメインスイッチSW1は、オンすることにより、その一端と他端との間を導通し、一方、オフすることにより、その一端と他端との間を遮断する。
【0038】
スタータスイッチSW2の一端は、バッテリBの正極に接続され、スタータスイッチSW2の他端は、制御回路CONに接続されている。
【0039】
このスタータスイッチSW2は、ユーザによりオン又はオフに制御されるようになっている。このスタータスイッチSW2は、オンすることにより、その一端と他端との間を導通し、一方、オフすることにより、その一端と他端との間を遮断する。
【0040】
このスタータスイッチSW2がオンすることにより、該エンジンを始動させるようになっている。
【0041】
また、バッテリBは、正極がスタータスイッチSW2の一端に接続され、負極が接地線Gに接続されている。なお、接地線Gは、接地されている。
【0042】
また、ヒューズFは、出力端子TOUTと、負荷端子TRとの間に接続されている。
【0043】
なお、負荷端子TR(出力端子TOUT)と、接地線Gとの間に負荷(図示せず)が接続されている。この負荷は、例えば、該エンジンのフュエルポンプ、該エンジンのインジェクタ、または、該エンジンのイグニッションコイルの何れか、又は、ヘッドランプ、テールランプ、ストップランプ、又はウィンカランプ等である。
【0044】
なお、出力端子TOUTの出力電圧が、ヒューズF及び負荷端子TRを介して、該負荷に供給される。
【0045】
また、平滑化コンデンサCは、一端が出力端子TOUTに接続され、他端がバッテリBの負極(接地線G)に接続されている。
【0046】
制御回路CONは、メインスイッチSW1の他端と接地線Gとの間に接続されている。この制御回路CONは、メインスイッチSW1の他端から電力が供給される。この制御回路CONは、三相ブリッジ回路10、リレー回路RY1、スイッチ回路20、(第1の制御用MOSトランジスタQ7、及び第2の制御用MOSトランジスタQ8)第1の検出用バイポーラトランジスタQ10、及び第2の検出用バイポーラトランジスタ(PNP型バイポーラトランジスタ)Q11を制御するようになっている。
【0047】
また、制御回路CONは、モータMの回転数を検出可能になっている。
【0048】
そして、制御回路CONは、検出したモータMの回転数が予め設定された始動回転数(例えば、2000rpm)以上である場合には、モータMに接続されたエンジンが始動完了していると判定する。
【0049】
一方、制御回路CONは、検出したモータMの回転数が該始動回転数未満である場合には、エンジンが始動途中であると判定する。
【0050】
また、制御回路CONは、平滑化コンデンサCの一端の電圧を検出し、この検出した電圧に基づいて、バッテリBの充電電圧(バッテリBの正極の電圧)を取得するようになっている。
【0051】
また、制御回路CONは、メインスイッチSW1の他端から電力が供給されることにより、メインスイッチSW1がオンしていると判定する。
【0052】
一方、制御回路CONは、メインスイッチSW1の他端から電力が供給されないことにより、メインスイッチSW1がオフしていると判定する。
【0053】
また、制御回路CONは、スタータスイッチSW2がオンすることにより、バッテリBの正極の電圧に応じた信号がスタータスイッチSW2の他端から入力された場合に、スタータスイッチSW2がオンしていると判定する。
【0054】
一方、制御回路CONは、スタータスイッチSW2がオフすることにより、バッテリBの正極の電圧に応じた信号がスタータスイッチSW2の他端から入力されない場合に、スタータスイッチSW2がオフしていると判定する。
【0055】
また、図1に示すように、リレー回路RY1は、オンすることにより、第1の接点C1と、バッテリBの正極に接続された第2の接点C2と、の間を導通する。一方、リレー回路RY1は、オフすることにより、第1の接点C1と、第2の接点C2と、の間を遮断する。
【0056】
また、リレー用コイルLは、一端がバッテリBの正極に接続されている。
【0057】
そして、リレー用スイッチ素子Q9は、一端がリレー用コイルLの他端に接続され、他端が接地線Gに接続されている。このリレー用スイッチ素子Q9は、制御回路CONにより、オン/オフが制御される。
【0058】
例えば、このリレー用スイッチ素子Q9は、図1に示すように、コレクタが第1のリレー用コイルLの他端に接続され、エミッタが接地線Gに接続され、ベース電流が制御回路CONにより制御されるNPN型バイポーラトランジスタである。
【0059】
ここで、制御回路CONは、リレー用コイルLを通電させることにより、リレー回路RY1をオンする。この図1の例では、制御回路CONは、リレー用スイッチ素子Q9をオンすることにより、リレー用コイルLを通電させる。
【0060】
そして、リレー回路RY1は、リレー用コイルLが通電して、オンすることにより、三相ブリッジ回路の一端10aとバッテリBの正極との間を導通するようになっている。
【0061】
一方、制御回路CONは、リレー用コイルLを通電させないことにより、リレー回路RY1をオフする。この図1の例では、制御回路CONは、リレー用スイッチ素子Q9をオフすることにより、リレー用コイルLを通電させない。
【0062】
そして、リレー回路RY1は、リレー用コイルLが通電しないことで、オフすることにより、三相ブリッジ回路の一端10aとバッテリBの正極との間を遮断するようになっている。
【0063】
また、三相ブリッジ回路10は、一端が第1の接点C1及びメインスイッチSW1の一端に接続され、他端が接地線Gに接続されている。
【0064】
この三相ブリッジ回路10は、モータMから供給される交流電力を整流制御(同期整流又はオープン制御)又は位相制御(遅角制御)して一端と他端との間から直流電力を出力し、又は、バッテリBの直流電力を交流電力に変換してモータMに供給することにより、モータMをモータ駆動する。
【0065】
この三相ブリッジ回路10は、例えば、図1に示すように、第1のMOSトランジスタQ1と、第2のMOSトランジスタQ2と、第3のMOSトランジスタQ3と、第4のMOSトランジスタQ4と、第5のMOSトランジスタQ5と、第6のMOSトランジスタQ6と、第1のダイオード(寄生ダイオード)P1と、第2のダイオード(寄生ダイオード)P2と、第3のダイオード(寄生ダイオード)P3と、第4のダイオード(寄生ダイオード)P4と、第5のダイオード(寄生ダイオード)P5と、第6のダイオード(寄生ダイオード)P6と、を有する。
【0066】
第1のMOSトランジスタQ1は、ドレインが三相ブリッジ回路10の一端10aに接続され、ソースがモータMのU相コイルULの一端に接続されている。この第1のMOSトランジスタQ1は、ゲート電圧が制御回路CONにより制御されるようになっている。すなわち、第1のMOSトランジスタQ1は、制御回路CONにより、オン/オフが制御される。
【0067】
第1のダイオードP1は、カソードが第1のMOSトランジスタQ1のドレインに接続され、アノードが第1のMOSトランジスタQ1のソースに接続されている。
【0068】
また、第2のMOSトランジスタQ2は、ドレインが三相ブリッジ回路10の一端10aに接続され、ソースがモータMのV相コイルVLの一端に接続されている。この第2のMOSトランジスタQ2は、ゲート電圧が制御回路CONにより制御されるようになっている。すなわち、第2のMOSトランジスタQ2は、制御回路CONにより、オン/オフが制御される。
【0069】
第2のダイオードP2は、カソードが第2のMOSトランジスタQ2のドレインに接続され、アノードが第2のMOSトランジスタQ2のソースに接続されている。
【0070】
また、第3のMOSトランジスタQ3は、ドレインが三相ブリッジ回路10の一端10aに接続され、ソースがモータMのW相コイルWLの一端に接続されている。この第3のMOSトランジスタQ3は、ゲート電圧が制御回路CONにより制御されるようになっている。すなわち、第3のMOSトランジスタQ3は、制御回路CONにより、オン/オフが制御される。
【0071】
第3のダイオードP3は、カソードが第3のMOSトランジスタQ3のドレインに接続され、アノードが第3のMOSトランジスタQ3のソースに接続されている。
【0072】
また、第4のMOSトランジスタQ4は、ドレインがモータMのU相コイルULの一端に接続され、ソースが三相ブリッジ回路10の他端10bに接続されている。この第4のMOSトランジスタQ4は、ゲート電圧が制御回路CONにより制御されるようになっている。すなわち、第4のMOSトランジスタQ4は、制御回路CONにより、オン/オフが制御される。
【0073】
第4のダイオードP4は、カソードが第4のMOSトランジスタQ4のドレインに接続され、アノードが第4のMOSトランジスタQ4のソースに接続されている。
【0074】
また、第5のMOSトランジスタQ5は、ドレインがモータMのV相コイルVLの一端に接続され、ソースが三相ブリッジ回路10の他端10bに接続されている。この第5のMOSトランジスタQ5は、ゲート電圧が制御回路CONにより制御されるようになっている。すなわち、第5のMOSトランジスタQ5は、制御回路CONにより、オン/オフが制御される。
【0075】
第5のダイオードP5は、カソードが第5のMOSトランジスタQ5のドレインに接続され、アノードが第5のMOSトランジスタQ5のソースに接続されている。
【0076】
また、第6のMOSトランジスタQ6は、ドレインがモータMのW相コイルWLの一端に接続され、ソースが三相ブリッジ回路10の他端10bに接続されている。この第6のMOSトランジスタQ6は、ゲート電圧が制御回路CONにより制御される。すなわち、第6のMOSトランジスタQ6は、制御回路CONにより、オン/オフが制御される。
【0077】
第6のダイオードP6は、カソードが第6のMOSトランジスタQ6のドレインに接続され、アノードが第6のMOSトランジスタQ6のソースに接続されている。
【0078】
なお、図1に示すように、U相コイルULの他端は、V相コイルVL及びW相コイルWLの他端に接続されている。
【0079】
また、スイッチ回路20は、一端が三相ブリッジ回路10の一端10aに接続され、他端が出力端子TOUTに接続されている。このスイッチ回路20は、制御回路CONにより、制御されるようになっている。
【0080】
このスイッチ回路20は、例えば、図1に示すように、第1の制御用MOSトランジスタQ7と、第1の制御用ボディダイオード(寄生ダイオード)P7と、第2の制御用MOSトランジスタQ8と、第2の制御用ボディダイオード(寄生ダイオード)P8と、を備える。
【0081】
第1の制御用MOSトランジスタQ7は、一端(ドレイン)が三相ブリッジ回路10の一端10aに接続され、他端(ソース)が出力端子TOUTに接続されている。この第1の制御用MOSトランジスタQ7は、ゲート電圧が制御回路CONにより制御される。すなわち、この第1の制御用MOSトランジスタQ7は、制御回路CONにより、オン/オフが制御される。
【0082】
そして、第1の制御用ボディダイオードP7は、カソードが第1の制御用MOSトランジスタQ7の一端(ドレイン)に接続され、アノードが第1の制御用MOSトランジスタQ7の他端(ソース)に接続されている。
【0083】
また、第2の制御用MOSトランジスタQ8は、一端(ドレイン)が出力端子TOUT(第1の制御用MOSトランジスタQ7の他端(ソース))に接続され、他端(ソース)がバッテリBの正極(第2の接点C2)に接続されている。この第2の制御用MOSトランジスタQ8は、ゲート電圧が制御回路CONにより制御される。すなわち、この第2の制御用MOSトランジスタQ8は、制御回路CONにより、オン/オフが制御される。
【0084】
そして、第2の制御用ボディダイオードP8は、カソードが第2の制御用MOSトランジスタQ8の一端(ドレイン)に接続され、アノードが第2の制御用MOSトランジスタQ8の他端(ソース)に接続されている。
【0085】
また、第1の検出用バイポーラトランジスタ(NPN型バイポーラトランジスタ)Q10は、ベースがメインスイッチSW1の他端に接続され、エミッタが接地線Gに接続されている。
また、第2の検出用バイポーラトランジスタ(PNP型バイポーラトランジスタ)Q11は、ベースが第1の検出用バイポーラトランジスタQ10のコレクタに接続され、エミッタが第2の制御用ボディダイオードP8のカソード(出力端子TOUT)に接続され、コレクタが制御回路CONに接続されている。
【0086】
ここで、制御回路CONは、第2の検出用バイポーラトランジスタQ11のエミッタの電圧に基づいて、バッテリBの電圧を検出し、又は、バッテリがオープン状態であるか否かを検出する。
【0087】
例えば、メインスイッチSW1がオンすると、バッテリBから、第2、第1の制御用ボディダイオードP8、P7、メインスイッチSW1を介して、第1の検出用バイポーラトランジスタQ10のベースに電流が供給される。これにより、第1の検出用バイポーラトランジスタQ10がオンする。この第1の検出用バイポーラトランジスタQ10がオンすると、第2の検出用バイポーラトランジスタQ11は、ベースに電流が流れて、オンする。これにより、制御回路CONは、第2の検出用バイポーラトランジスタQ11を介して、第2の制御用ボディダイオードのカソードと電気的に導通する。
【0088】
このとき、制御回路CONは、第2の制御用ボディダイオードのカソードの検知電圧(第2の検出用バイポーラトランジスタQ11のエミッタの電圧)を検出することにより、バッテリBの電圧を検出することができる。
【0089】
なお、後述のキック駆動時において、制御回路CONは、メインスイッチSW1を介して、三相ブリッジ回路10から電力が供給される。この場合、制御回路CONは、第2の検出用バイポーラトランジスタQ11のコレクタの電圧が、バッテリがオープン状態である場合の電圧に対応する場合(電流が流れていない場合)は、バッテリがオープン状態であると判定する。
ここで、例えば、該エンジンのセル駆動の場合には、ユーザによりメインスイッチSW1がオンされると、バッテリBの電圧(電力)が、このバッテリBの正極から、第2の制御用ボディダイオードP8、第1の制御用ボディダイオードP7及びオンしたメインスイッチSW1を介して、制御回路CONに供給される。
【0090】
そして、スタータスイッチSW2がオンされると、制御回路CONは、リレー用スイッチ素子Q9をオンして、リレー回路RY1をオンする。これにより、バッテリBから、オンしたリレー回路RY1を介して、三相ブリッジ回路10に直流電力が入力される。
【0091】
そして、制御回路CONは、三相ブリッジ回路10の第1から第6のMOSトランジスタQ1からQ6を制御して、三相ブリッジ回路10に入力された直流電力を、交流電力に変換してモータMをモータ駆動する。これにより、モータMに接続された該エンジンが回転する。
【0092】
このモータ駆動で該エンジンが回転する状態で、バッテリBの電圧が、出力端子TOUT、ヒューズF、負荷端子TRを介して、該負荷に供給されることで、該エンジンが始動開始することとなる。
【0093】
また、例えば、ユーザによる該エンジンのキック駆動の場合には、メインスイッチSW1がオンされ、キックによりモータMが回転すると、三相ブリッジ回路10の第1から第6のダイオードP1からP6で整流された電圧(電力)が、オンしたメインスイッチSW1を介して、制御回路CONに供給される。
【0094】
このキック駆動でモータMが回転するとともに該エンジンが回転する状態で、第1の制御用MOSトランジスタQ7がオンされると、三相ブリッジ回路10で整流された電圧が、出力端子TOUT、ヒューズF、及び負荷端子TRを介して、該負荷に供給され、該エンジンが始動開始することとなる。
【0095】
なお、このキック駆動の例は、例えば、バッテリBの充電電圧が低い場合やバッテリBが劣化している場合を想定している。
【0096】
ここで、以上のような構成を有する車両用電力供給システム100の動作(車両用電力供給システム100の制御方法)の一例について説明する。
【0097】
先ず、車両用電力供給システム100のエンジンのセル駆動の場合の動作の一例について説明する。図2は、図1に示す車両用電力供給システム100のエンジンのセル駆動の場合の動作の一例を示すフローチャートである。
【0098】
先ず、制御回路CONは、メインスイッチSW1がオンしたか否かを判定する(ステップS1)。既述のように、制御回路CONは、メインスイッチSW1の他端から電力が供給されることにより、メインスイッチSW1がオンしていると判定する。
【0099】
次に、制御回路CONは、メインスイッチSW1がオンしていると判定した場合には、スタータスイッチSW2がオンしたか否かを判定する(ステップS2)。
【0100】
なお、既述のように、制御回路CONは、スタータスイッチSW2がオンすることにより、バッテリBの正極の電圧に応じた信号がスタータスイッチSW2の他端から入力された場合に、スタータスイッチSW2がオンしていると判定する。一方、制御回路CONは、スタータスイッチSW2がオフすることにより、バッテリBの正極の電圧に応じた信号がスタータスイッチSW2の他端から入力されない場合に、スタータスイッチSW2がオフしていると判定する。
【0101】
そして、制御回路CONは、ステップS1、S2の後、メインスイッチSW1及びスタータスイッチSW2がオンしていると判定した場合には、リレー回路RY1をオンする(ステップS3)。
【0102】
なお、ステップS1においてメインスイッチSW1がオンしていないと判定した場合及びステップS2においてスタータスイッチSW2がオンしていないと判定した場合は、ステップS1に戻る。
【0103】
そして、制御回路CONは、ステップS3においてリレー回路RY1をオンした後、三相ブリッジ回路10を制御してモータMをモータ駆動する(ステップS4)。
【0104】
そして、制御回路CONは、モータMをモータ駆動しているとき、モータMの回転数が予め設定された切換回転数(例えば、1500rpm)以上であるか否かを判定する(ステップSX)。
【0105】
そして、制御回路CONは、モータMの回転数が既述の切換回転数以上である場合には、第1、第2の制御用MOSトランジスタQ7、Q8をオンし且つリレー回路RY1をオフする(ステップSY)。
【0106】
そして、制御回路CONは、第1、第2の制御用MOSトランジスタQ7、Q8をオンし且つリレー回路RY1をオフした後、モータMに接続されたエンジンが始動完了しているか否かを判定する(ステップS5)。
【0107】
なお、既述のように、制御回路CONは、検出したモータMの回転数が切換回転数よりも高い該始動回転数(例えば、2000rpm)以上である場合には、モータMに接続されたエンジンが始動完了していると判定する。一方、制御回路CONは、検出したモータMの回転数が該始動回転数未満である場合には、エンジンが始動途中であると判定する。
【0108】
そして、制御回路CONは、ステップS5において該エンジンが始動完了していると判定した場合には、三相ブリッジ回路10によるモータ駆動を停止させる(ステップS6)。
【0109】
なお、制御回路CONは、ステップS5において該エンジンが始動完了していない(エンジンが始動途中である)と判定した場合には、ステップS4に戻り、モータMを継続してモータ駆動することとなる。
【0110】
そして、制御回路CONは、モータ駆動を停止した後、三相ブリッジ回路10を制御して、モータMから供給される交流電力を整流制御して三相ブリッジ回路10の一端10aと他端との間から直流電力を出力させることにより、モータMの発電を開始する(ステップS7)。
【0111】
そして、制御回路CONは、該エンジンが駆動し且つ三相ブリッジ回路10で整流制御している第1の状態において、バッテリBの充電電圧が予め設定された目標電圧以上であるか否かを判定する(ステップS8)。なお、既述のように、制御回路CONは、平滑化コンデンサCの一端の電圧を検出し、この検出した電圧に基づいて、バッテリBの充電電圧を間接的に取得する。
【0112】
そして、制御回路CONは、バッテリBの充電電圧が該目標電圧以上である場合には、リレー回路RY1をオフする。さらに、制御回路CONは、三相ブリッジ回路10を制御して、モータMから供給される交流電力を整流制御(同期整流又はオープン制御)して三相ブリッジ回路10の一端10aと他端との間から直流電力を出力させる。
【0113】
さらに、このステップS9において、制御回路CONは、バッテリBの充電電圧が該目標電圧に近づくように、第2の制御用MOSトランジスタQ8をオンし且つ第1の制御用MOSトランジスタQ7のオンとオフとを切り換えるように制御する(ステップS9)。これにより、バッテリBを充電する。例えば、制御回路CONは、バッテリBの充電電圧が該目標値よりも高くなると、第1の制御用MOSトランジスタQ7をオフする。一方、制御回路CONは、バッテリBの充電電圧が該目標値よりも低くなると、第1の制御用MOSトランジスタQ7をオンする。
【0114】
一方、制御回路CONは、ステップS8の第1の状態において、バッテリBの充電電圧が目標電圧未満である場合には、リレー回路RY1をオンし、三相ブリッジ回路10を制御して、モータMから供給される交流電力を位相制御して三相ブリッジ回路10の一端10aと他端との間から直流電力を出力させるとともに、第1の制御用MOSトランジスタQ7をオフし且つ第2の制御用MOSトランジスタQ8をオンする(ステップS10)。
【0115】
これにより、モータMの発電効率が高い状態で、リレー回路RY1を介して、バッテリBを充電することができる。
【0116】
これらのステップS1〜S10により、車両用電力供給システム100のエンジンのセル駆動の動作が実行される。
【0117】
次に、図1に示す車両用電力供給システム100のエンジンのキック駆動の場合の動作の一例について説明する。図3は、図1に示す車両用電力供給システム100のエンジンのキック駆動の場合の動作の一例を示すフローチャートである。
【0118】
先ず、制御回路CONは、メインスイッチSW1がオンしたか否かを判定する(ステップS1a)。このとき、リレー回路RY1はオフしている。
【0119】
そして、制御回路CONは、メインスイッチSW1がオンしていると判定した場合には、第2の制御用ボディダイオードP8のカソードの検知電圧(第2の検出用バイポーラトランジスタQ11のエミッタの電圧)を取得する(ステップS2a)。
【0120】
そして、制御回路CONは、取得した該検知電圧に基づいて、バッテリBの電圧を検出し、又は、バッテリBがオープン状態であるか否かを検出する(ステップS3a)。
【0121】
そして、制御回路CONは、ステップS3aにおいてバッテリBの電圧が予め設定された下限値未満である(バッテリBが劣化している)ことを検出し、又は、バッテリBがオープン状態であることを検出した後、キックによりエンジンが回転(モータMが回転)すると、制御回路CONは、モータMが回転していることを検出する(ステップS4a)。
【0122】
そして、制御回路CONは、このモータMが回転している場合には、第1の制御用MOSトランジスタQ7をオンし且つ第2の制御用MOSトランジスタをオフする(ステップS5a)。
【0123】
これにより、三相ブリッジ回路10を制御して、キックで回転するモータMから供給される交流電力を整流制御して三相ブリッジ回路10の一端10aと他端との間から出力された直流電力が、出力端子TOUT、ヒューズF、負荷端子TRを介して、該負荷に供給される(ステップS6a)。これにより、該エンジンが始動開始することとなる。
【0124】
このとき、第2の制御用MOSトランジスタQ8がオフしているため、三相ブリッジ回路10を制御して、モータMから供給される交流電力を整流制御して三相ブリッジ回路10の一端10aと他端との間から出力された直流電力は、該負荷のみに供給されるが、劣化したバッテリBには供給されない。すなわち、キックで生成された電力を効率良くエンジン始動のために用いることができる。
【0125】
その後、制御回路CONは、第1の制御用MOSトランジスタQ7をオンし且つ第2の制御用MOSトランジスタQ8をオフした後、モータMに接続された該エンジンが始動完了しているか否かを判定する(ステップS7a)。
【0126】
そして、制御回路CONは、ステップS7aにおいてエンジンが始動完了していると判定した場合には、第1及び第2の制御用MOSトランジスタQ7、Q8をオフする(ステップS8a)。
【0127】
そして、制御回路CONは、第1及び第2の制御用MOSトランジスタQ7、Q8をオフした後、三相ブリッジ回路10を制御して、モータMから供給される交流電力を整流制御して三相ブリッジ回路10の一端10aと他端10bとの間から直流電力を出力させることにより、モータMの発電を開始する(ステップS9a)。
【0128】
以降の動作は、図1のステップS8に進み、既述のステップS8以降の動作が実行される。
【0129】
一方、制御回路CONは、既述のステップS3aにおいて、バッテリBの電圧が予め設定された下限値以上であり且つバッテリBがオープン状態ではないことを検出した後、キックによりエンジンが回転(モータMが回転)すると、制御回路CONは、モータMが回転していることを検出する(ステップS4b)。
【0130】
そして、制御回路CONは、モータMが回転している場合には、第1の制御用MOSトランジスタQ7をオンし且つ第2の制御用MOSトランジスタQ8をオンする(ステップS5b)。
【0131】
これにより、三相ブリッジ回路10を制御して、キックで回転するモータMから供給される交流電力を整流制御して三相ブリッジ回路10の一端10aと他端との間から出力された直流電力が、出力端子TOUT、ヒューズF、負荷端子TRを介して、該負荷に供給される(ステップS6b)。これにより、該エンジンが始動開始することとなる。
【0132】
このとき、第2の制御用MOSトランジスタQ8がオンしているため、三相ブリッジ回路10を制御して、モータMから供給される交流電力を整流制御して三相ブリッジ回路10の一端10aと他端との間から出力された直流電力は、該負荷及びバッテリBに供給される。
【0133】
そして、制御回路CONは、第1の制御用MOSトランジスタQ7をオンし且つ第2の制御用MOSトランジスタQ8をオンした後、モータMに接続された該エンジンが始動完了しているか否かを判定する(ステップS7b)。
【0134】
そして、制御回路CONは、ステップS7bにおいて該エンジンが始動完了していると判定した場合には、第1及び第2の制御用MOSトランジスタQ7、Q8をオフする(ステップS8b)。
【0135】
そして、制御回路CONは、第1及び第2の制御用MOSトランジスタQ7、Q8をオフした後、三相ブリッジ回路10を制御して、モータMから供給される交流電力を整流制御して三相ブリッジ回路10の一端10aと他端10bとの間から直流電力を出力させることにより、モータMの発電を開始する(ステップS9a)。
【0136】
以降の動作は、図1のステップS8に進み、既述のステップS8以降の動作が実行される。
【0137】
これらのステップS1a〜S9a(バッテリBが劣化又はオープンしている場合)、S4b〜S8b(バッテリBが正常の場合)により、車両用電力供給システム100のエンジンのキック駆動の動作が実行される。
【0138】
以上の図2図3に示すステップにより、本発明の一態様に係る車両用電力供給システム100において、バッテリBの充電経路に配置されるスイッチ回路による電力損失を削減しつつ、リレー回路を1つに削減することができる。
【0139】
以上のように、本発明の一態様に係る車両用電力供給システム100は、車両のエンジンに接続されたモータMと、オン又はオフに制御されるメインスイッチSW1と、オン又はオフに制御され、エンジンを始動させるためのスタータスイッチSW2と、正極がスタータスイッチSW2の一端に接続され、負極が接地線Gに接続されたバッテリBと、オンすることにより、第1の接点C1と、正極に接続された第2の接点C2と、の間を導通し、一方、オフすることにより、第1の接点C1と、第2の接点C2と、の間を遮断するリレー回路RY1と、一端が出力端子TOUTに接続され、他端がバッテリBの負極に接続された平滑化コンデンサCと、一端が第1の接点C1及びメインスイッチSW1の一端に接続され、他端が接地線Gに接続され、モータMから供給される交流電力を整流制御又は位相制御して一端と他端との間から直流電力を出力し、又は、バッテリの直流電力を交流電力に変換してモータMに供給することによりモータMをモータ駆動する三相ブリッジ回路10と、一端が三相ブリッジ回路10の一端に接続され、他端が出力端子TOUTに接続された第1の制御用MOSトランジスタQ7と、カソードが第1の制御用MOSトランジスタQ7の一端に接続され、アノードが第1の制御用MOSトランジスタQ7の他端に接続された第1の制御用ボディダイオードP7と、一端が出力端子TOUTに接続され、他端がバッテリBの正極に接続された第2の制御用MOSトランジスタQ8と、カソードが第2の制御用MOSトランジスタQ8の他端に接続され、アノードが第2の制御用MOSトランジスタQ8の一端に接続された第2の制御用ボディダイオードP8と、メインスイッチSW1の他端と接地線Gとの間に接続され、メインスイッチSW1の他端から電力が供給され、三相ブリッジ回路10、リレー回路RY1、第1の制御用MOSトランジスタQ7、及び第2の制御用MOSトランジスタQ8を制御する制御回路CONと、を備える。
【0140】
これにより、車両用電力供給システム100では、必要なリレー回路が、バッテリの正極と三相ブリッジ回路10の一端10aとの間に接続された1つのリレー回路だけになり、リレー回路を1つに削減することができる。
【0141】
さらに、整流制御時(同期整流又はオープン制御時)の充電経路にはスイッチ回路20(第1、第2の制御用MOSトランジスタQ7、Q8)が配置され、三相ブリッジ回路10の位相制御時の充電経路には1個のリレー回路RY1が配置されている。これにより、位相制御時のバッテリ充電におけるスイッチ回路20による電力損失を削減することができる。
【0142】
特に、制御回路CONは、バッテリBの充電電圧が目標電圧未満である場合には、リレー回路RY1をオンし、三相ブリッジ回路10を制御して、モータMから供給される交流電力を位相制御して三相ブリッジ回路10の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、第1、第2の制御用MOSトランジスタQ7、Q8をオフする。
【0143】
一方、制御回路CONは、バッテリBの充電電圧が目標電圧以上である場合には、リレー回路RY1をオフし、三相ブリッジ回路10を制御して、モータMから供給される交流電力を整流制御して三相ブリッジ回路10の一端と他端との間から直流電力を出力させるとともに、バッテリの充電電圧が目標電圧に近づくように、第2の制御用MOSトランジスタQ8をオンし且つ第1の制御用MOSトランジスタQ7のオンとオフとを切り換えるように制御する。
【0144】
このように、バッテリBの充電電圧が目標電圧未満である場合には、三相ブリッジ回路10を位相制御してリレー回路RY1を介してバッテリBを充電する。そして、充電電圧が目標電圧に達した後は、三相ブリッジ回路10の位相制御を停止し、整流制御を開始してスイッチ回路20で充電電圧を制御することができる。
【0145】
以上のように、本発明に係る車両用電力供給システムによれば、バッテリの充電経路に配置されるスイッチ回路による電力損失を削減しつつ、リレー回路を1つに削減することができる。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【要約】
車両用電力供給システムは、一端が三相ブリッジ回路の一端に接続され、他端が出力端子に接続された第1の制御用MOSトランジスタと、カソードが第1の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが第1の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第1の制御用ボディダイオードと、一端が出力端子に接続され、他端がバッテリの正極に接続された第2の制御用MOSトランジスタと、カソードが第2の制御用MOSトランジスタの一端に接続され、アノードが第2の制御用MOSトランジスタの他端に接続された第2の制御用ボディダイオードと、を備える。
図1
図2
図3
図4