(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両ブレーキが締付け装置、摩耗調整装置(10)、前記締付け装置の操作ストローク(B)を検出するためのセンサ装置(15)および車両制御システム(21)を備えている車両ブレーキの空隙(xLS)を求めるための方法において、以下:
(S1)予め定めることができる時間ウインドウ(tSTART−tREC)内で、前記センサ装置(15)によって提供される前記操作ストローク(B)の測定信号を受け取りかつブレーキ過程の間この測定信号をデータ対の操作ストローク−時間として記憶するステップ、
(S2)前記測定信号の時間による微分値の最大値(B11)の際の時点(t2またはtK)を決定するために、適当なアルゴリズムで前記時間ウインドウ(tSTART−tREC)内の前記測定信号を時間で微分するステップ、及び
(S3)このようにして決定された時点(t2またはtK)に基づいて前記空隙(xLS)を求めかつこのようにして求められた空隙(xLS)の値を前記車両制御システム(21)に転送するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
前記センサ装置(15)によって提供される前記操作ストローク(B)の前記測定信号が、監視ユニット(22)からアナログ測定信号として評価ユニット(23)に伝送されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記部分ステップ(S1.4)の変換および前記部分ステップ(S1.5)の継続において、デジタル測定信号への前記操作ストローク(B)の伝送されたアナルグ測定信号の変換が高いサンプリングレートで行われることを特徴とする請求項3に記載の方法。
前記評価ユニット(23)が、A/D(アナログ/デジタル)変換器として前記評価ユニット(23)によって、前記操作ストローク(B)の伝送されたアナログ測定信号をデジタル測定信号に変換し、このデジタル測定信号をデータ対の操作ストローク−時間の形で記憶装置に記憶するように形成されていることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の車両ブレーキ。
前記評価ユニット(23)が、データ対の操作ストローク−時間の前記操作ストローク(B)の測定信号の記憶されたデータを時間によって微分し、求められた時間による微分の最大値(B11)のときの時点(t2またはtK)を決定するように形成されていることを特徴とする請求項14に記載の車両ブレーキ。
【背景技術】
【0002】
車両ブレーキは例えばディスクブレーキまたはドラムブレーキである。いろいろな操作方式、例えば空気圧式、液圧式、電気式およびこれらの組み合わせが用いられている。すべての方式において、空隙、すなわちブレーキパッドとブレーキディスク(ディスクブレーキ)またはドラム(ドラムブレーキ)との間の間隔は、ブレーキ構造に応じて狭い限度に設計されている。従って、商用車ディスクブレーキの場合のブレーキパッドとブレーキディスクの間の空隙は約0.6〜1.1mmの範囲である。一方では大きすぎる摩耗を、そして他方では多すぎる燃焼消費を回避するために、摩耗と他の影響によって変化するこの目標空隙を、設定された範囲内に保つことが望まれる。
【0003】
実際の空隙を決定するために、車両ブレーキの締付け装置の操作ストロークを検出するためのセンサ装置が設けられている。締付け装置は例えばブレーキレバーである。このブレーキレバーの揺動角度を操作ストロークとして検出することができる。さらに、ブレーキシリンダのピストンの移動変位を操作ストロークとして検出することができる。
【0004】
特に自動車用の車両ブレーキは一般的に、自動で働く機械式摩耗調整装置を備えている。この摩耗調整装置はきわめて確実に作用し、大きすぎる空隙を縮小する。摩耗調整装置は、例えば摩擦点を自動調節する機械式調整器のようないろいろな実施形態が知られている。その際、ブレーキ操作の度に、調整装置が例えば締付け装置の送り要素によって作動させられる。ディスクブレーキにおいてブレーキパッドとブレーキディスクが摩耗すると、摩耗調整装置による、例えば長さ変更可能なねじ付き管の調節運動によって、パッドの自動調整が行われる。
【0005】
調整装置の一例が特許文献1に記載されている。その際、例えば回転モーメント制限装置の駆動回転運動が例えばボール傾斜路によって、連続的に作用するクラッチ(スライドクラッチ)を経てねじ付き管の調節スピンドルに伝えられる。
【0006】
特許文献2はディスクブレーキのブレーキ摩耗センサを開示している。この場合、調整変位と操作ストロークの伝達は遊星歯車装置によって行われる。調整変位は回転運動として遊星歯車装置の太陽歯車に伝えられる。そのために、例えば調整スピンドルの回転運動を用いることができる。操作ストロークは他の回転運動として遊星歯車装置の遊星キャリアを経て伝えられる。遊星歯車の内歯歯車の回転は適当な
センサ、例えばホールセンサ、ポテンショメータ、誘導式、光学式または音響式発信器要素によって検出される。従って、2つの入力量の結果、検出された両量の変動の振幅が内歯歯車に発生し、必要な分解に適した測定範囲を有する
センサによって使用可能である。
【0007】
絶えず増大するコスト低減要求に基づいて、同時に品質と有用性を維持するだけでなく高めるべきであり、さらに保守整備コストを低減すべきであるので、これに応じて車両ブレーキの空隙を求めるための方法を改善するという要求が生じる。
【0008】
空隙は運転中いろいろな影響作用によって変化し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の課題は、車両ブレーキの空隙を求めるための改善された方法を提供することである。他の課題は、改良された車両ブレーキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。
【0012】
課題はさらに、請求項10の特徴を有する車両ブレーキによって解決される。
【0013】
操作ストロークの検出された測定値に基づいて、空隙を求めるために測定値を時間で微分する、空隙を求めるための方法が提供される。
【0014】
車両ブレーキが締付け装置、摩耗調整装置、締付け装置の操作ストロークを検出するためのセンサ装置および車両制御システムを備えている、特に自動車のための車両ブレーキの空隙を求めるための本発明に係る方法が提供される。この方法は、方法ステップ(S1)ブレーキ過程の間予め定めることができる時間ウインドウ内で、センサ装置によって提供される操作ストロークの測定信号を受け取ることおよびブレーキ過程の間測定信号をデータ対の操作ストローク−時間として記憶すること;(S2)最大値の際の時点を決定するために、適当なアルゴリズムによって時間ウインドウ内の測定信号を時間で微分すること;そして(S3)このようにして決定された時点に基づいて空隙を求めることおよびこのようにして求められた空隙の値を車両制御システムに転送することを有する。
【0015】
これにより、空隙の監視を行うことができ、この場合求められた空隙の表示は、偏差について迅速に運転者に知らせることができる。そして、場合によっては対策を講じることができ、それによって後の大きな修理コストが回避されるかまたは不要になる。
【0016】
空隙はできるだけ正確かつ確実に、すなわち外乱に影響を受けずに決定することができ
る。
【0017】
特に自動車のための本発明に係る車両ブレーキは、締付け装置、摩耗調整装置、締付け装置の操作ストロークを検出するためのセンサ装置、車両制御システムおよび空隙を求めるための装置を備えている。空隙を求めるための装置は、本発明に係る方法を実施するために形成されている。
【0018】
従って、例えば空気圧式ブレーキの応答圧力の影響やブレーキの強度のような欠点が、空隙を求めることに対して少ししか乃至無視できるほどしか影響を与えないようにすることができる。特にブレーキの強度はパッド摩耗とパッド温度によって大きく変化する。本発明による車両ブレーキの場合には、強度や応答圧力に関して十分に正確な仮定を必要としない。
【0019】
他の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0020】
実施形態では、センサ装置によって提供される操作ストロークの測定信号が、監視ユニットからアナログ測定信号として評価ユニットに伝送される。これが外乱の影響を小さくするためにできるだけ短い経路で行われるようにするために、監視ユニットはセンサ装置に統合可能であり、評価ユニットに対して短い接続部を有するかまたはこの評価ユニットと共に配置可能である。
【0021】
他の実施形態では、方法ステップ(S1)の受け取ることが次の部分ステップを有する:(S1.1)運転者がブレーキペダルを操作することによって始まるブレーキ過程の開始により、時間ウインドウの開始を定めること;(S1.2)車両制御システム内にあるブレーキ制御システムによって時間ウインドウの開始時に監視ユニットを作動させること;(S1.3)このようにして作動した監視ユニットによってアナログ測定信号を評価ユニットに伝送すること;(S1.4)評価ユニットによって、伝送され操作ストロークのアナログ測定信号をデジタル測定信号に変換することおよびブレーキ過程の間このデジタル測定信号をデータ対の操作ストローク−時間として記憶すること;および(S1.5)時間ウインドウの予め定められた時間の間、評価ユニットによって、部分ステップ(S1.4)における測定信号の変換およびデータ対の操作ストローク−時間としての記憶を継続すること。アナログ測定信号をデジタル測定信号に変換することにより、処理が容易になる。さらに、ブレーキ過程の間のデータ対の操作ストローク−時間としての測定信号の記憶により、他の処理を行うことができる。
【0022】
その際、部分ステップ(S1.4)の変換および部分ステップ(S1.5)の継続において、デジタル測定信号への操作ストロークの伝送されたアナログ測定信号の変換が高いサンプリングレートで行われると有利である。それによって、いわゆるより短い時間閾値を有する液圧操作式車両ブレーキの場合に、本発明に係る方法を使用することができる。それによって、使用範囲が広がる。
【0023】
さらに、部分ステップ(S1.5)の継続において、開始されたブレーキ過程がまだ終了していないときに、予め定めた時間ウインドウの終了時点で、ブレーキ過程中の測定信号の変換およびデータ対の操作ストローク−時間としての記憶が中断される。それによって、変換時間が制限され、迅速な評価が可能になる。
【0024】
より短いブレーキ過程の際、部分ステップ(S1.5)の継続において、開始されたブレーキ過程が予め定めた時間ウインドウ内で終了させられる時点で、ブレーキ過程中の測定信号の変換およびデータ対の操作ストローク−時間としての記憶が中断される。
【0025】
他の実施形態では、時間による微分を行う前記方法ステップ(S2)が次の部分ステップを有する:(S2.1)測定信号の記憶されたデータを平滑化およびろ波することにより、評価ユニットによってブレーキ過程の間データ対の操作ストローク−時間の測定信号の記憶されたデータを処理すること;(S2.2)評価ユニットにより、時間ウインドウ内で適当なアルゴリズムによって、測定信号の記憶されたデータの時間による微分を求めること;(S2.3)このようにして求めた時間による微分の最大値の時点を評価ユニットによって決定すること。時間による微分によって、操作速度の監視および分析が可能になる。これにより、最大値の簡単な評価によって、実際の空隙を求めることができる。そのためにはソフトウェアの計算アルゴリズムだけしか必要とせず、車両ブレーキのハードウェアの変更または拡張は不要である。
【0026】
実施形態では、空隙を求める方法ステップ(S3)が次の部分ステップを有する:(S3.1)評価ユニットにより、時点に基づいておよび記憶された操作ストロークのデータに基づいて、空隙の値を求めること;(S3.2)評価ユニットから車両制御システムへの転送のために、評価ユニットによって、このようにして求めた空隙の値を適合させること;(S3.3)求めて適合させた空隙の値を表示すること。操作ストローク値と割り当てられた時間のデータ対としての操作ストロークの測定信号の記憶されたデータが、選択された時点で呼出し可能であるので、最大値の時点に基づいて空隙を簡単に求めることができる。
【0027】
他の実施形態では、求めて適合させた空隙の値が、記憶や後の評価のために、車両制御システムから車両制御システムの中央制御装置に伝送される。それによって、実際の空隙を表示し、場合によってはそのときの対策を講じることができる。
【0028】
車両ブレーキの実施形態では、空隙を求めるための装置が、センサ装置、このセンサ装置に接続された監視ユニットおよび車両制御システムに接続された評価ユニットを含む。これはコンパクトな構造であり、車両ブレーキの組み込みスペースを実質的に増大しない。
【0029】
他の実施形態では、監視ユニットがセンサ装置の
センサに電気的に接続され、
センサの受け取った測定信号を評価ユニットにアナログ伝送するように形成されている。その際、監視ユニットがセンサ装置に統合されていると有利である。
【0030】
実施形態では、監視ユニットがセンサ装置の
センサに電気的に接続され、
センサの出力信号を監視または分析するように形成され、
センサが2つの異なる測定量を提供するときに、監視ユニットが操作ストロークの検出された測定量を、検出された他の測定量から分離し、
センサの受け取って分離された測定信号を評価ユニットにアナログ伝送するように形成されている。従って、使用範囲が拡張される。
【0031】
他の実施形態では、評価ユニットが、A/D(アナログ/デジタル)変換器として評価ユニットによって、操作ストロークの伝送されたアナログ測定信号をデジタル測定信号に変換し、このデジタル測定信号をデータ対の操作ストローク−時間として記憶装置に記憶するように形成されている。記憶装置は好ましくは評価ユニットの構成部品である。
【0032】
実施形態では、評価ユニットが、データ対の操作ストローク−時間の操作ストロークの測定信号の記憶されたデータを時間によって微分し、求められた時間による微分の最大値のときの時点を決定するように形成されている。これは例えばソフトウェアによって実現可能である。この場合、付加的な必要スペースは不要であるかまたは無視することができる。
【0033】
車両ブレーキは圧縮空気操作式ディスクブレーキであってもよい。
【0034】
勿論、本発明に係る方法は空気圧操作式ディスクブレーキに適用可能であるだけでなく、例えば空気圧式ドラムブレーキや液圧式ディスクブレーキおよび液圧式ドラムブレーキで使用可能である。
【0035】
添付の図を参照して、本発明を実施の形態に基づき詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、車両ブレーキの空隙を求めるための本発明に係る装置20を備えた本発明に係る車両ブレーキの実施の形態の概略的な斜視図である。
図2は
図1のII−II線に沿った実施の形態の概略的な断面図である。
【0038】
車両ブレーキは本例では、ブレーキディスク2を跨ぐブレーキキャリパ4を備えたダブルトランプ型ディスクブレーキ1である。ブレーキディスク2はブレーキディスク軸線2a回りに回転可能である。この場合、ブレーキディスク2の両側において、それぞれ1個のブレーキパッド3がブレーキパッド支持体3aに配置されている。ディスクブレーキ1はさらに、ここではブレーキ回転レバー9を有する締付け装置を備えている。ブレーキ回転レバー9は拡開機構とも呼ばれ、締付け装置の一部であり、レバー揺動軸線9aの回りに揺動可能であり、そして例えば圧縮空気ブレーキシリンダによって操作可能なレバーアーム9bを備えている。
【0039】
ブリッジ7はブレーキ回転レバー9に接触し、ディスクブレーキ1を締付けおよび締付け解除する際にこのブレーキ回転レバーによってブレーキディスク軸線2aの方向に沿ってブレーキディスク2の方へ往復操作可能である。ブリッジ7はその端部がそれぞれ、各々1個のねじ付き管6、6’を介してスピンドルユニット5、5’に連結されている。各スピンドルユニット5、5’は軸線5a、5’aを有する。スピンドルユニット5の軸線5aは調整軸線5aと呼ばれ、スピンドルユニット5’の軸線5’aは回転伝達軸線5’aと呼ばれる。
【0040】
図1の左側に位置しブレーキディスク2の方に向いた、スピンドルユニット5、5’の端部はそれぞれ、押圧部材6、6’aを備えている。この押圧部材6、6’aは締付け側のブレーキパッド3のブレーキパッド支持体3aに接触している。このブレーキパッド支持体はディスクブレーキ1のブレーキディスク2の一方の側に配置されている。ブレーキディスク2の他方の側には、他のブレーキパッド3がブレーキパッド支持体3aによってブレーキキャリパ4内に固定されている。このブレーキパッド3は反作用側のブレーキパッド3とも呼ばれる。ブレーキキャリパ4は例えばスライドキャリパである。
【0041】
ブレーキパッド3とディスクブレーキ2の間の間隔は空隙と呼ばれる。ブレーキ過程の際にディスクブレーキ1を操作するとき先ず、ブレーキパッド3がブレーキレバー9によって操作されるブリッジ7によってディスクブレーキ1のブレーキディスク2の方へ移動させられることにより、空隙が克服される。ブレーキパッド3とブレーキディスク2の摩耗に基づいて、空隙は大きくなる。
【0042】
用語摩擦点(
図3のB1)は、ブレーキパッド3がディスクブレーキ1のブレーキディスク2に接触する点である。摩擦点B1には締付けの際空隙を克服した後で達する。さらに締付けると、ブレーキパッド3をブレーキディスク2に押し付けることによって、制動作用が発生する。これは勿論、反作用側のブレーキパッド3にも当てはまる。締め付け装置を弛めると、上述の過程の逆戻りが生じる。
【0043】
図1に示した実施形態のディスクブレーキ1はさらに、摩耗調整装置10を備えている。この摩耗調整装置は、元の空隙を生じるために、ブレーキパッド3を摩耗時に調整し直す働きをする。
【0044】
摩耗調整装置10は調整軸11aを有する調整機構11と、回転伝達軸12aを有する回転伝達機構12と、調整機構11と回転伝達機構12を連結するための同期ユニット13を備えている。
【0045】
調整機構11はここでは詳しく説明しない。調整機構は例えば独国特許出願公開第102004037771号明細書に記載されているように形成され、スピンドルユニット5が所属のねじ付き管6に挿入され、このねじ付き管に連結されている。調整軸11aの縦軸線は調整軸線5aを形成する。
【0046】
調整機構11は同期ユニット13によって回転伝達機構12に次のように連結されている。すなわち、調整軸11a、ひいてはそれに相対回転しないように連結されたねじ付き管6の回転が回転伝達軸12a、従って回転伝達軸12aに相対回転しないように連結されたねじ付き管6’に同期して伝達されるように連結されている。
図1には同期ユニット13が略示されている。この場合、調整軸11aは同期ユニット13の同期車13a、ここではスプロケットに相対回転しないように連結されている。同期車13aは同期手段13b、ここではチェーンを介して他の同期車13’aに連結されている。この他の同期車は回転伝達軸12aに相対回転しないように直接的にまたは間接的に連結されている。同期ユニット13のこの構造は例示的なものとして理解すべきであり、当然、他の連結、例えばねじ付き管6、6’の相互の連結が可能である。
【0047】
ブレーキ回転レバー9の送り運動の際にブレーキ回転レバー9がそのレバー揺動軸線9a回りに反時計回り(
図2)に揺動させられ、このブレーキ回転レバーのその都度の送り運動によって調整機構11が駆動される。これは調整用駆動装置14を介して行われる。この調整用駆動装置はブレーキ回転レバー9に固定連結された操作部材14aと、調整機構11に連結された調整用駆動要素14bを備えている。操作部材14aと調整用駆動要素14bは互いに係合している。操作部材14aは例えばピンとして形成されている。調整用駆動要素14bは例えば操作部材14aと協働する切り換えフォークを備えている。
【0048】
ブレーキ回転レバー9の送り運動の際に摩耗が存在しないと、調整機構11の例えば安全クラッチに基づいて、調整軸11aへの駆動運動の伝達は行われない。しかし、摩耗が存在すると、ブレーキパッド3を調整し直すために、調整機構11の調整軸11aへ駆動運動が伝達される。それによって、空隙が基の値に調節される。調整軸11aのこの駆動運動は同期ユニット13によって回転伝達軸12aに伝達される。
【0049】
車両ブレーキの空隙を求めるための装置20はセンサ装置15と監視ユニット22と評価ユニット23を備えている。
図1に示した例では、評価ユニット23は車両制御システム21内に配置されている。
【0050】
センサ装置15は第1測定量、すなわちブレーキディスク2を含めたブレーキパッド3の摩耗を検出するようにおよび第2測定量、すなわち締付け装置の操作ストロークを検出するように形成されている。
【0051】
第1測定量、すなわち摩耗の検出は、例えば調整軸11aまたは回転伝達軸12aの調整運動の検出によって行われる。そのために、センサ装置15は図示していない
センサ、例えばホールセンサ、ポテンショメータ、誘導型および/または光学式および/または音響式
センサ要素を備えている。
センサは監視ユニット22に接続され、ここでは監視ユニットと共にブレーキ上の共通の1つのケーシング内に配置されている(
図4も参照)。接続導体15bは、車両ブレーキを付設した車両の車両制御システム21に電気的に(または光学的に)接続するために役立つ。
【0052】
図1に概略的に示した実施の形態において、センサ装置15のセンサ軸線15aは、回転伝達軸線5’aがセンサ軸線15aと合致するように配置されている。センサ装置15は回転伝達軸12aに連結されている。調整軸11aの調整運動が同期ユニット13によって回転伝達軸12aに伝達されるので、回転伝達軸12aの調整運動は摩耗を検出するために用いることが可能である。回転伝達軸12aとセンサ装置15の連結はいろいろな方法で行うことができるので、ここでは説明しない。
【0053】
本実施の形態ではさらに、センサ装置15が、第2測定量を検出することができるように形成されている。この第2測定量は、ここではブレーキ回転レバー9の運動である、ディスクブレーキ1の締付け装置の操作ストロークである。検出されたこの第2測定量は、例えば伝達用伝動装置として形成されかつそのために2個の入力部を有するセンサ伝動装置16によって、センサ装置15の
センサに伝達される。このようなセンサ装置15の一般的な機能については、文献独国特許出願公開第102010032515A1号明細書の説明が参照される。
【0054】
操作ストロークは(ブリッジ7の揺動運動を除いて)直線運動であり、ここではセンサ装置15のための第2測定量として検出するために回転運動または揺動運動に変換される。これはストロークセンサ駆動装置17によって行われる。このストロークセンサ駆動装置を介してセンサ装置15がブレーキ回転レバー9に連結されている。ストロークセンサ駆動装置17はブレーキ回転レバー9に連結されたストロークセンサ操作部材18と、センサ装置15に連結されたストロークセンサ駆動ユニット19を備えている。このストロークセンサ駆動ユニットについてはここではこれ以上説明しない。
【0055】
監視ユニット22はセンサ装置15の
センサに電気的に接続され、そして
センサの出力信号の監視または分析を次のように行う。すなわち、検出された第1測定量(摩耗)と検出された第2測定量(操作ストローク)を互いに別々に転送および評価することができるように行う。これと評価ユニット23については後で詳しく説明する。
【0056】
図3は操作ストロークBと操作速度B10を概略的に示すグラフである。
【0057】
操作ストロークB、ここでは上述したようにブレーキ回転レバーの揺動運動が、時間tに対して記入されている。その際、縦座標には移動変位xが示してある。この場合、空隙には記号x
LSが付けてある。
【0058】
操作速度B10は操作ストロークBと同一時間でその下に時間tに対して示してある。この場合、縦座標には、時間tによる移動変位xの一次導関数が記号dx/dtで記入されている。
【0059】
例えば圧縮空気で操作されるディスクブレーキ1を操作する際、運転者はブレーキペダルを操作する。これは時点t
STARTで行われる。そして、車両制御システム21によって作動圧力(圧縮空気)が圧力作動シリンダに供給される。圧力作動シリンダはブレーキ回転レバー9(
図2参照)のレバーアーム9bに連結されている。圧力作動シリンダ内のピストンは圧力を(ほぼ)直線的な運動に変え、ブレーキ回転レバー9のレバーアーム9bに作用し、そしてさらにディスクブレーキ1の操作機構に作用する。図示した実施の形態では、ブレーキ回転レバー9はブリッジ7と上述のようにブレーキパッド3に作用する。
【0060】
操作機構(すなわちブリッジ7)とピストンはばね要素(例えばブリッジ7に作用する戻しばね8、
図1)によって操作方向と反対方向に付勢されている。さらに、摩擦力が可動部分に作用する。圧力作動シリンダ内の作動圧力がこの付勢力と摩擦力に打ち勝つまでは、操作機構は移動しない。すなわち、移動変位xはゼロに等しい。
【0061】
操作機構が初期位置から移動する圧力レベルは、応答圧力と呼ばれる。これは時点t
1の場合である。操作機構は空隙x
LSを通過し、ブレーキパッド3をブレーキディスク2に押し付ける。第1のブレーキパッド3がブレーキディスク2に接触する圧力レベルは接触圧力と呼ばれる。それによって、時点t
2またはt
Kで摩擦点B1に達する。
【0062】
力と質量の比の結果、操作機構は空隙x
LSの範囲においてきわめて迅速に加速される。これは操作速度B10の曲線において大きな勾配で示してある。第1のブレーキパッド3がブレーキディスク2に当接することにより、操作機構は急激に制動される。これは摩擦点B1の場合である。操作速度B10の曲線はこの時点t
Kで最高値B11を有する。
【0063】
他の時点t3で、操作機構の運動、すなわち操作速度B10がゼロになる。その際、操作ストロークB1は一定の値をとる。これは時点t
RECの場合である。この時点t
RECについては後述する。
【0064】
空隙を求めるための本発明に係る装置20は、操作ストロークBと時間tのデータペアリングによって空隙を求めるための方法を実施するために役立つ。その際、第1ブレーキパッド3がブレーキディスク2に接触する時点t
2またはt
Kにおいて、例えば時間による移動変位xの一次または二次導関数が決定される。この時点t
2またはt
Kは例えば適切なアルゴリズムによって一次導関数の最大値B11に基づいて或る時間ウインドウ内で決定可能である。続いて、操作ストロークB−時間t−データペアリングと時点t
2またはt
Kによって、空隙x
LSを求めることができる。これについては後で詳しく説明する。
【0065】
図4には、本発明に係る装置20を備えた
図2の本発明に係る車両ブレーキの概略的なブロック図が示してある。
【0066】
装置20の監視ユニット22はディスクブレーキ1のブレーキキャリパ4上のセンサ装置15内に統合配置され、接続導体15bを介して評価ユニット23に接続されている。評価ユニット23は伝達導体23aを介して車両制御システム21に接続されている。
【0067】
図3から判るように、応答圧力に達する時点t
1と、接触圧力に達する時点t
2またはt
Kは互いに非常に近い位置にある。監視ユニット22によってセンサ装置15の
センサから供給される測定信号はアナログの測定信号である。このアナログの測定信号は転送や他の処理のために評価ユニット23によってデジタルの測定信号に変換される。時点t
1とt
2またはt
Kの短い時間間隔に基づいて、時点t
Kを十分な精度で検出するためには、非常に高い周波数を有するアナログ測定信号のアナログ/デジタル変換(A/D変換)が必要である。監視ユニット22と評価ユニット23の間の接続導体15bの影響(RC定数)を最小限に抑えるために、アナログ伝送の距離をできるだけ短くすべきである。従って、評価ユニット23を監視ユニット22のすぐ近くに配置するかまたは監視ユニット22の構成部品として形成することができる。
【0068】
評価ユニット23は監視ユニット22のアナログ測定信号のA/D変換を行い、測定信号をデジタルの形で伝送導体23aを経て車両制御システム21に伝送する。
【0069】
車両ブレーキまたはディスクブレーキ1の空隙を求めるための装置20は、空隙を求めるための方法を実施するために形成されている。
【0070】
図5と
図6には、本発明に係る方法の例示的なフローチャートが示してある。
図5は3つの方法ステップの例示的なフローチャートを示し、
図6は他の部分ステップを示す。
【0071】
第1方法ステップS1である検出では、ブレーキ過程の際に操作ストロークBが時間ウインドウt
START−t
RECで検出され、関連する時間と共にデータ対である操作ストロークB/時間tとして記憶される。本実施の形態では、検出はセンサ装置15によって行われる。監視ユニット22の検出されたこの測定信号は、ディスクブレーキ1の締付け装置の操作ストロークBのアナログ測定信号として、評価ユニット23に転送される。評価ユニット23はアナログ信号を高いサンプリングレートでデジタル測定信号に変換し、このデジタル測定信号を記憶する。時間ウインドウt
START−t
RECの終わりに、測定信号の記憶されたデータが他の処理のために供される。
【0072】
記憶された測定データの他の処理は、第2方法ステップS2で行われる。この場合、評価ユニット23により、時間ウインドウt
START−t
REC内で最高値B11(
図3参照)のときの時点t
2またはt
Kを決定するための適当なアルゴリズムによって、測定信号の時間による微分が行われる。
【0073】
第3方法ステップS3では、空隙x
LSが所定の時点t
2またはt
Kに基づいて、検出された操作ストローク(
図3参照)に従って求められる。これも評価ユニット23で行われる。このようにして求められた空隙x
LSの値は、例えば運転者に表示するために、車両制御システム21に転送される。
【0074】
操作ストロークBは上述のようにセンサ装置15によって検出可能である。勿論、操作ストロークを直接的または間接的に表す車両ブレーキの他のパラメータ、例えば圧力作動シリンダのピストンまたはブリッジ7の移動変位を測定することも可能である。言うまでもなく、そのための他の測定方法も可能である。
【0075】
図6は
図5の方法ステップS1〜S3を他の部分ステップと共に示している。
【0076】
方法ステップS1は5つの部分ステップS1.1〜S1.5を含む。
【0077】
第1部分ステップS1.1では、運転者がブレーキペダルを操作することによって開始されるブレーキ過程の際に、この時点が検知され、時間ウインドウt
START−t
RECの開始のための時点t
START(
図3参照)としてセットされる。
【0078】
時間ウインドウt
START−t
RECの開始の際、例えば車両制御システム21内にあるブレーキ制御システムが第2部分ステップS1.2で監視ユニット22に通電する。
【0079】
このようにして作動を開始した監視ユニット22は第3部分ステップS1.3で、センサ装置15の
センサの操作ストロークBの出力信号、ここでは測定信号を、評価ユニット23に伝送する。
【0080】
監視ユニット22の通電と同時に、評価ユニット23は第4部分ステップS1.4で、高いサンプリングレートの操作ストロークBのアナログ信号をデジタル測定信号に変換し、このデジタル測定信号をそのために設けた記憶装置に、時間tを割り当てて操作ストロークB/時間tのデータ対として記憶する。
【0081】
第5部分ステップS1.5において、測定信号の受け取り、変換および記憶が時間ウインドウt
START−t
RECの予めセットされた時間の間、予めセットされた時点t
RECまで続けられる。
【0082】
この最終時点t
RECまでブレーキ過程が終了しないと(これはブレーキペダル位置と操作ストロークBの問い合わせによって確認することができる)、すなわちブレーキペダル位置=0および操作ストロークB=0のとき、それ以上の受け取りと記憶が中断され、時点t
RECまで記憶されたデータ対の操作ストロークB/時間tがそれ以降の処理のために使用される。
【0083】
ブレーキ過程が時間ウインドウt
START−t
REC内で終了すると、すなわち時点t
START<t
4<−t
RECであると、受け取りと記憶がこの時点t
4で中断され、そして記憶されたデータ対の操作ストロークB/時間tがそれ以降の処理のために使用される。
【0084】
第1部分ステップS2.1では、記憶されたデータ対が評価ユニット23の平滑化とろ波によって処理される。その際、データ対の増幅を行うこともできる。
【0085】
第2部分ステップS2.2では評価ユニット23により、時間ウインドウt
START−t
REC内で適当なアルゴリズムによって測定信号が時間で微分される。
【0086】
そして、第3部分ステップにおいて最大値B11の際の時点t
2またはt
Kが評価ユニット23によって決定される。
【0087】
第3の方法ステップS3の第1部分ステップS3.1では、このようにして決定された時点t
2またはt
Kに基づいておよび受け取って記憶された、操作ストロークB(
図3参照)のデータ対の操作ストロークB/時間tに基づいて、空隙x
LSの値が評価ユニット23によって求められる。その際、時点t
2またはt
Kが時間tとして使用され、それに関連する記憶された操作ストロークBが読み出される。
【0088】
第2部分ステップS3.2では、評価ユニット23から車両制御システム21への転送のために空隙x
LSの求められた値の適合が行われる。
【0089】
第3部分ステップでは、このようにして求められて適合された空隙x
LSの値が、車両制御システム21によって運転者のために表示され、そして記憶や後の評価、例えば診断や保守のために、適当な形でデジタル伝送によって、車両内部のバス、例えばCAN/Bを経て車両制御システム21の中央制御装置に転送される。
【0090】
これにより、車両ブレーキ、例えば上述のディスクブレーキ1の空隙を、正確かつ確実に、すなわち外乱の影響を受けずに決定することができる。
【0091】
方法はディスクブレーキにもドラムブレーキにも適している。
【0092】
本発明は上述の実施の形態に制限されず、添付の特許請求の範囲内で変形可能である。
【0093】
伝送導体を介しての操作ストロークのデジタル測定信号の伝送は、光学的伝送であってもよい。
【0094】
評価ユニット23は監視ユニット22と共にセンサ装置15内に配置してもよい。
【0095】
評価ユニット23は車両制御システム21内に配置してもよい。この場合、アナログ測定信号を伝送するための接続導体15bは、きわめて故障しにくくかつ照射の影響を受けないように形成されている。その際、センサ装置15の
センサのアナログ測定信号のA/D変換器を監視ユニット22内に配置し、評価ユニット23がデジタル測定信号を受け取るようにすることができる。
【0096】
測定信号の無線伝送が同様に考えられる。この場合、例えば光学的伝送が可能である。