【実施例1】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明を適用した実施例1の構成について説明する。
【0013】
図1は本実施例における回転電機の斜視図、
図3はインバータ等を取り付ける前の回転電機本体の斜視図である。
図2は、回転電機の全体構成を示し、
図4は回転電機本体の全体構成を示す。なお、本実施例では、一例として永久磁石式回転電機の図を示しているが、異なる方式の回転電機であってももちろんかまわない。
【0014】
本実施例の回転電機本体は、
図4に示すように固定子10、回転子11、回転子の中心部を通り負荷側と、反負荷側とを貫通する回転軸12、軸受13、負荷側エンドブラケット14a、反負荷側エンドブラケット14b、反負荷側エンドブラケットの外側に設けられたファン15、ハウジング16及びハウジングに設けられた複数の冷却用のフィン17等で構成される。
【0015】
固定子10は、複数の巻線から構成され、略円筒状のハウジング16内部に固定される。さらに固定子の内部空間内に回転子(ロータ)11が挿入され、所定の隙間を介して回転自在に取り付けられる。固定子の巻線のそれぞれに対しては、インバータの駆動回路から駆動電流が供給される。本実施例では、巻線の数は6の倍数の数とした。これは、本実施例の回転電機は三相モータとしたため巻線はU,V,Wに対応し、かつ二つのインバータで異なるUVWのセットを制御するためである。以下、1セットの巻線(あるいは巻線のセット)と記載した場合には、U,V,Wの3つの巻線を指すものとする。巻線の巻き方については集中巻であっても分布巻であってもかまわない。一方のインバータによって駆動される巻線と、他方のインバータによって駆動される巻線があれば、本発明の効果を奏することができる。
【0016】
回転子11は、複数の永久磁石を円筒状に配置して構成される。本実施例では永久磁石式回転電機の例を示しているため、永久磁石を用いているが、異なる構成の回転子であってももちろんかまわない。
【0017】
回転軸12は、回転子(ロータ)11と一体に形成される回転軸であり、回転電機の回転駆動力を、負荷側に接続された被駆動機器(例えば、ポンプ等)へと伝達する。
【0018】
軸受13は回転軸12の負荷側と反負荷側の両方に設けられる。
【0019】
エンドブラケットは、負荷側エンドブラケット14aと反負荷側エンドブラケット14bの両方により、回転子11、回転軸12および軸受13をハウジング16の端部それぞれに固定する。回転子からエンドブラケットに至るまでの間に、シール部材やワッシャー等を回転軸12に通して固定してもかまわない。
【0020】
ファン15は、反負荷側エンドブラケット14bの外側に配置され、回転軸12に取り付けられる。回転子11の回転に伴ってファン15が回転することで、外部からの空気がハウジング周囲に導かれ、フィン17の間を通って熱交換を行う構成となり、回転電機本体を冷却することができる。
【0021】
ハウジング16は、内部空間に永久磁石式回転電機の固定子(ステータ)10を構成する電機子が挿入され、固定される。外観は
図4にも示すように、その外周表面に回転軸に沿って並列に延びた複数の冷却フィン17を有する。特に本実施例では、インバータ21a,21bを取り付けるための平面部161がエンドブラケット間にわたり形成されるため、その周囲に平面部と水平な方向に延びた冷却フィン17を形成した。ハウジング16と、冷却フィン17は金属ダイキャストによって一体成形されるようになっている。尚、冷却フィン17はカシメ加工等の別方式で形成することも可能である。さらに、本例では熱伝導性に優れるアルミを適用するものとするが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
この平面部161は、回転軸12を中心として径方向の対向する位置に、お互いが離間するよう設けられる。これにより、インバータ21で発生する熱が均等にハウジングに分散するため、効率的にフィンを経由して空気中へ熱を逃がすことができる。また、平面部161を設けていない部分については、冷却フィン17を複数枚設け、表面積を大きくすることで、固定子や回転子から発生する熱をより空気中へ放熱できる。さらに、平面部161には凹部162が設けられる。凹部の機能については後述する。
【0023】
次に
図1、
図2を用いて、ハウジング16に対し、インバータ21等を一体として設けた回転電機について説明する。当該回転電機は、
図3に示す回転電機本体に加え、インバータ21(インバータ基板22、インバータケース26、ケース用内蓋27等からなる)、端子箱40、I/F基板41、端子箱カバー43、カバー50、空気が通るようメッシュ状の孔を設けたファンカバー51等で構成される。
【0024】
回転電機は、そのハウジング16の外周表面上のそれぞれが対向する位置に平面部161が設けられ、平面部161には外形断面が略直方体状に形成されたインバータケース26が各々取り付けられる。また、ハウジング外周上であって、インバータケース26同士の間には、I/F基板41およびモータのUVWへ電源を供給するRST端子台が格納される端子箱が、フィン17よりも外側に取り付けられる。本実施例ではI/F基板41しか図示していないが、他に、ノイズフィルタ、リアクトル等や無線通信や上位制御等の機能拡張を実現するための回路基板等も端子箱40に格納してもよい。また、端子箱40に限定せず、インバータケース26、もしくは別な専用ケースに格納して外側に取り付けられる構成としてもよい。
【0025】
ハウジング16の平面部161には、インバータ21を構成するインバータ基板22が取り付けられる。基板22は例えばプリント基板であり、基板22に対してパワースイッチング素子(Power ModuleやIntelligent Power Moduleなど)23やダイオード、コンデンサ、MCU(Micro Control Unit)等が実装されている。基板22上に実装された電子デバイスにより、回転電機の各巻線のセットに駆動電流を供給する駆動回路25や、駆動回路に制御信号を入力する制御回路24が実現される。
【0026】
本実施例でインバータと呼んでいる電力変換手段は、
図8に示すように、MCUで実現される制御回路24と、パワースイッチング素子23等で実現される駆動回路25により構成される。制御回路24は、端子箱に格納されたI/F基板から、「巻線へ供給する電流の周波数の値」を受信し、それに基づいて駆動回路内のパワースイッチング素子内にある各トランジスタのONとOFFを切り替える。
【0027】
駆動回路25は、ダイオード、コンデンサ、パワースイッチング素子23等で構成される。端子箱内の端子を経由して供給された電流が、制御回路24によって制御されたスイッチング素子23を通過することにより、所望の周波数の電流となり、U,V,Wの各巻線へと供給される。この時、スイッチング素子の電流は一部制御回路にもフィードバックされ、フィードバックされた電流値に基づき、制御回路はスイッチング素子の制御を行う。
【0028】
本実施例では、二つのインバータ21a,21bが固定子巻線の1セットのそれぞれに駆動電流を供給するようになっている。このように、インバータ21を複数個所に分け、巻線それぞれに駆動電流を供給することで、一つのインバータ自体の出力を抑えつつ、複数のインバータの合計で必要な出力を確保できる。そのため、一つのインバータの発熱量は低減され、更に、互いのインバータは離間した位置に設けられているため、一方のインバータと他方のインバータとの熱干渉による熱集中を大幅に低減できる。その結果、インバータの温度上昇による信頼性低下を抑制できる。
【0029】
さらに、インバータを二つに分けることで、一方のインバータが故障した場合でも、他方のインバータが無事であれば、回転電機は半分の出力で動作し続けることができる。そのため、回転電機の故障により他の装置に影響が出る可能性を低減することもできる。この場合、特に、一方のインバータが制御する巻線と他方のインバータが制御する巻線とが周方向に交互に配置される構成とすると、半分の出力でもよりスムーズに回転子11を回転させることができる。
【0030】
また、インバータを二つに分けつつ、制御する回転電機は一つである場合、各インバータの制御回路同士の同期をとり、各巻線のセットが同じ回転速度で回転するように制御する必要がある。これに対し、本実施例では
図8のように二つのインバータの制御回路24を共通化し、二つの駆動回路25にパラレルで制御信号を送信する構成とすることにより、二つの制御回路の同期をとる必要が無くなり、簡便に制御することが可能となる。さらに、制御回路1つ分の消費電力を削減できるため、よりインバータからの発熱量を抑えることができる。この場合には、ハウジングの左右に設けられたインバータケースのうち、一方に格納される基板には駆動回路25bのみが実装され制御回路24は実装されない。駆動回路25bは他方のインバータケースに格納された制御回路24からの信号を受けて、スイッチング素子が制御される。この制御回路24からの信号は全く同じ信号がパラレルで駆動回路25a,25bのそれぞれに入力される。
【0031】
なお、駆動回路25内部に過電流保護等の保護回路を組み込み、例えば、回転電機が拘束されたり、駆動回路と巻線の間の短絡や地絡したり、あるいは急加減速したりして、大電流が流れた場合に駆動回路25を保護できるような構成としても良い。このとき、制御回路24は両方の保護回路からのエラー情報を受け取ることで、回路状態を把握することができる。
【0032】
さらに、この場合の変形例として、さらに制御回路を端子箱40に入れ、インバータケース26の内部には駆動回路のみ、とする構成としても良い。このように、制御回路24と駆動回路25とをそれぞれ異なる平面に設けてもよい。例えば、制御回路24は端子箱に格納され、駆動回路25はそれぞれ両脇のインバータケース26a,26bに格納される構成とすることができる。この場合でも、発熱量の多い駆動回路が分散して配置されているので、冷却効率を高めるという本発明の効果を得ることができる。さらに制御回路24を端子箱に設けると、インバータケースに格納する基板の大きさを、制御回路24の分だけ小さくすることができる。小さくなった基板を、負荷側あるいは反負荷側のどちらかに寄せて配置し、平面部161の面積を小さくし、その他の外周部にも冷却フィンを設ければ、さらに冷却効率を向上させることができる。
【0033】
インバータ基板22を取り付ける際は、制御回路24や、駆動回路25を備えたインバータ基板22を、インバータケース26に格納して、回転電機のハウジング16の一部に形成された平面部161に取り付ける。その後、その保護のための内蓋27とカバー50が外側から取り付けられる。この時、インバータ基板をインバータケースに格納して密閉することで、水、塵埃、直射日光等から保護し、耐環境性を図ることができ、屋外単独設置が可能となる。
【0034】
また、インバータ基板に実装された部品のうち最も発熱量の多いパワースイッチング素子23を、平面部161に設けられた凹部162に入れてインバータ基板を固定する。このような構成とすることで、熱伝導性に優れたハウジング16にパワースイッチング素子23で発生した熱が効率的に逃げるため、インバータの温度上昇による信頼性低下を抑制することができる。この凹部の深さは、スイッチング素子23の一部分程度の深さでもよく、スイッチング素子23がほぼ埋まるほどの深さでもかまわない。
【0035】
図5に、凹部162の深さを変えた例を示す。凹部162を設けた理由は、パワースイッチング素子23の上面(ハウジング16に対向する面)以外の面からも熱を逃がすためである。そのため、凹部162の深さはより深い方がスイッチング素子23の側面からも凹部162側面へ熱が伝わりやすいため冷却性能が向上する。放熱性を重視した設置の例としては
図5(d)のように、凹部底面(あるいは設置面とも呼ぶ)および凹部側面へパワースイッチング素子23が接触するようインバータ基板22の位置を決めればよい。さらに、凹部底面の平滑性を向上させるために液状やシート状のシリコン等の熱伝導性に優れた充填材を塗布してスイッチング素子23を設置してもよい。シリコンを塗布すると、凹部底面の微細な凹凸をシリコンが埋めるため、スイッチング素子と凹部底面との間に存在した空気が少なくなって密着し、さらに冷却効率を上げることができる。
【0036】
取り付け時の位置決めをより簡便に行うためには、
図5(c)のように、凹部の深さをスイッチング素子の中心部付近までの深さとして形成するのが好ましい。このとき、スイッチング素子23と凹部底面および凹部側壁とを接触させずに配置することで、ハウジング16の振動によりスイッチング素子と基板とを接続している端子部分に負荷がかかり、接触が悪くなることを防止できる。もちろん、放熱量や位置決めに費やすことのできる工程数に応じて、凹部の深さや、スイッチング素子と凹部底面あるいは凹部壁面への距離は随時変更可能である。
【0037】
なお、本実施例ではあくまで取り付けやすさの観点からインバータ基板と平行な平面部161と凹部162を設けたが、放熱性を向上する目的のためには、スイッチング素子23の放熱面と近接する設置面のみがハウジング16に形成されていればよい。例えば略円筒状のハウジング162のごく一部を切削し、底面が平滑な凹部162を形成し、凹部底面とスイッチング素子23が対向する位置に基板を配置し、基板の端部は、ピンのようなもので円弧状のハウジング表面に固定することも可能である。あるいは、ハウジング表面の一部に金属を盛って平滑な面を形成し、ここを設置面としてスイッチング素子23と近接させて設けることも可能である。
【0038】
回転電機本体の外周を覆うカバー50は、板状の共振抑制材料を、例えば、押圧加工等を行って、所定の形状に形成したものである。さらに、カバー50の内側には吸音材、防音材、制振材、防振材等を取り付けることにより、騒音や振動の抑制が可能となる。
【0039】
本実施例では永久磁石式回転電機を用いているため、誘導式回転電機を用いた場合より小型化することが可能である。さらに、小型化によって確保できた空間にインバータを配置することで、外形サイズを大きくすることなく一体に構成することができる。サイズ比較例として
図6に本実施例と同程度の出力の誘導モータの外形サイズを破線で示す。
図6から明らかなように、誘導式回転電機自体の外形サイズとほぼ同等の大きさで、本実施例の一体型回転電機組立体を提供することが可能となる。
【0040】
以上を踏まえると、本実施例に記載の回転電機は、ハウジング16と、ハウジング16の内側に位置する固定子10と、固定子10からの磁束を受けて回転軸12とともに回転する回転子11と、固定子10の各巻線に駆動電流を供給する電力変換装置21と、を備え、複数の電力変換装置21は、ハウジング16の外周に形成された異なる平面部161にそれぞれ位置し、第1電力変換装置21aが駆動電流を供給する巻線と、第2電力変換装置21bが駆動電流を供給する巻線とが異なることを特徴とする。
【0041】
あるいは、ハウジング16と、ハウジング16の内側に位置する固定子10と、固定子10からの磁束を受けて回転軸12とともに回転する回転子11と、固定子10の各巻線に駆動電流を供給し、スイッチング素子23を有する駆動回路24と、駆動回路24に制御信号を送信する制御回路25と、を備え、複数のスイッチング素子23は、ハウジング16の外周に形成された異なる設置面162にそれぞれ位置し、設置面162は、スイッチング素子23の外面のうちハウジング16と対向する第1面に沿った形状であり、第1駆動回路が駆動電流を供給する巻線と、第2駆動回路が駆動電流を供給する巻線とは異なることを特徴とする。
【0042】
このように、回転電機を構成する各巻線を制御するインバータ(あるいは駆動回路)を複数に分散させたことにより、インバータのパワースイッチング素子から発生する熱量を分散でき、より効率の良い回転電機を提供することができる。