(54)【発明の名称】17−ヒドロキシ−17−ペンタフルオロエチル−エストラ−4,9(10)−ジエン−11−アリール誘導体、その製造方法、その誘導体を利用した諸疾患の治療
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
諸疾患の治療と予防のための、請求項1または2に記載の化合物、或いは、その化合物の分離された立体異性体、その化合物の塩、その化合物の溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物(ただしその中に、これらの物のあらゆる結晶形態が含まれる)。
子宮類線維腫、子宮内膜症、重い月経出血、髄膜腫、ホルモン依存性乳がん、更年期に伴う愁訴の治療と予防のための、または、出生抑制と緊急避妊のための、請求項1または2に記載の化合物、或いは、その化合物の分離された立体異性体、その化合物の塩、その化合物の溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物(ただしその中に、これらの物のあらゆる結晶形態が含まれる)。
請求項1または2に記載の化合物、或いは、その化合物の分離された立体異性体、その化合物の塩、その化合物の溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物(ただしその中に、これらの物のあらゆる結晶形態が含まれる)を別の活性物質と組み合わせて含む医薬製品。
請求項1または2に記載の化合物、或いは、その化合物の分離された立体異性体、その化合物の塩、その化合物の溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物(ただしその中に、これらの物のあらゆる結晶形態が含まれる)を医薬に適した不活性な非毒性の賦形剤と組み合わせて含む医薬製品。
子宮類線維腫、子宮内膜症、重い月経出血、髄膜腫、ホルモン依存性乳がん、更年期に伴う愁訴の治療および/または予防のための、または出生抑制と緊急避妊のための、請求項5または6に記載の医薬製品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明で解決すべき問題は、利用可能な非常に強力な競合的プロゲステロン受容体拮抗薬を製造すること、つまり婦人科疾患を治療するための代替品を生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の化合物は、この問題を解決するのに特に適していることが見いだされた。特に、アルキルスルファニル基とアルキルスルホニル基を有する化合物群が、プロゲステロン受容体に対する非常に強力な拮抗活性を示す。すなわちこれらの化合物は、プロゲステロンがプロゲステロン受容体に及ぼす作用を抑制する。
【0010】
アルキルスルホニル基を有する化合物は、例えばアルカノイル基を有する化合物と比べて温度、光、酸化ストレスに対する代謝安定性と化学的安定性がはるかに大きいことも見いだされた。例えば化合物(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例4)は、熱負荷下、UV光の影響下で、アルカノイル基またはヒドロキシアルカノイル基を有する各対応物(11β-(4-アセチルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンまたは20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17β-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン)と比べて驚くほど大きな安定性を示すとともに、驚くほど小さい酸化感受性を示す。
【0011】
アルキルスルホンイミドイル基を11-フェニル環の4位に有する化合物は、試験管内活性が低いことがあるにもかかわらず、生体内で非常に強力な作用を有する。これらの化合物は、少なくとも一部が、対応するスルホンのプロドラッグであり、アルキルスルホンイミドイル基を有する化合物は、水への溶解が著しく優れている。
【0012】
アルキルスルホニル基を有する化合物とアルキルスルホンイミドイル基を有する化合物、特に、対応するメチル化合物は、両方とも、調べたCYP-アイソザイム、すなわちCYP1A2、CYP2C8、CYP2C9、CYP2D6、CYP3A4に対する抑制能が小さく、溶解する最大濃度まで、すなわちアッセイで使用した最大濃度(最小10μM、最大20μM)まで、調べたどのケースでも抑制率50%に達しなかったのも驚くべきことである。
【0013】
試験管内でのこれらの知見は、調べた物質では、CYPの抑制に関し、同時に投与する医薬製品と相互作用するリスクが特に小さいことを示唆している。
【0014】
さらに、(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンでは、囓歯類と非囓歯類での前臨床研究において(急性試験と慢性試験で)特に好ましい安全プロファイルが見いだされた。
【0015】
本発明は、一般式(I)を持つ17-ヒドロキシ-17-ペンタフルオロエチル-エストラ-4,9(10)-ジエン-11-アリール誘導体:
【化1】
と、その誘導体の塩、その誘導体の溶媒和物、前記塩の溶媒和物(その中に、あらゆる結晶形態が含まれる)に関する。ただし、
R
1は、残基Yを表わすか、残基Yで1回または2回置換されたフェニル環を表わし、
Yは、SR
2、S(O)R
3、S(O)
2R
3、S(O)(NH)R
3、S(O)(NR
4)R
3、S(O)
2NR
9R
10からなるグループの中から選択され、
R
2は、水素、C
1〜C
6-アルキル、C
7〜C
10-アラルキル、アリールのいずれかを表わし、
R
3は、C
1〜C
6-アルキルまたはアリールを表わし、
R
4は、S(O)
2R
6基を表わし、
R
6は、フェニルまたは4-メチルフェニルを表わし、
Xは、酸素原子、NOR
7、NNHSO
2R
7のいずれかを表わし、
R
7は、水素、C
1〜C
10-アルキル、アリールからなるグループの中から選択され、
R
9、R
10は、互いに独立に、水素、C
1〜C
10-アルキル、アリールからなるグループの中から選択されるか、窒素原子と合わさって3〜8員の飽和または不飽和の複素環を表わす。
【0016】
一般式(I)を持つ本発明の化合物は、その構造に応じ、立体異性体の形態(鏡像異性体、ジアステレオマー)で存在することができる。したがって本発明は、鏡像異性体またはジアステレオマーと、そのそれぞれの混合物(ラセミ混合物を含む)を包含する。立体異性体として一様な構成成分は、鏡像異性体および/またはジアステレオマーの混合物から公知の方法で分離できる。
【0017】
ステロイド骨格鎖上の上記の各置換基は、α位とβ位の両方に存在することができる。さらに、ステロイド骨格鎖上にあって、二重結合を含んでいて、各原子上のその二重結合が、水素でない少なくとも1個の置換基を有する置換基は、E立体配置とZ立体配置の両方が可能である。
【0018】
本発明の化合物が互変異性体の形態で存在できる場合には、すべての互変異性体の形態が本発明に含まれる。
【0019】
本発明による化合物の生理学的に無害な塩が、本発明の範囲に含まれる塩として好ましい。しかしそのままでは医薬として用いるのに適していないが例えば本発明による化合物の分離または精製に使用できる塩も、本発明の範囲に含まれる。
【0020】
本発明による化合物の生理学的に無害な塩が塩基性基を含んでいる場合には、その塩に、無機酸または有機酸との塩、特に鉱物酸、カルボン酸、スルホン酸との塩が含まれる。例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレン-ジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸の塩がある。
【0021】
本発明による化合物の生理学的に無害な塩が酸性基を含んでいる場合には、その塩に、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、例えば対応する無機塩基または有機塩基との反応によって得ることができる塩が含まれる。例えば好ましい塩として、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩)、アンモニアまたは炭素原子が1〜16個の有機アミンに由来するアンモニウム塩が挙げられる。有機アミンの例として、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ビシクロ-ヘキシルアミン、ジメチルアミノ-エタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N-メチルモルホリン、アルギニン、リシン、エチレンジアミン、N-メチルピペリジン、N-メチルグルカミン、D-メチルグルカミン、エチルグルカミン、1,6-ヘキサジアミン、グルコサミン、N-メチルグリシン、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、トリス-ヒドロキシメチル-アミノメタン、1-アミノ-2,3,4-ブタントリオールが好ましい。
【0022】
固体状態または液体状態で溶媒分子と付加物を形成する本発明によるこれらの形態の化合物は、本発明の範囲内で溶媒和物と表わされる。溶媒は、化学量論的割合で存在でき、非化学量論的割合で存在することさえできる。化学量論的溶媒和物の場合には、ヘミ溶媒和物、(セミ溶媒和物)、モノ溶媒和物、ジ溶媒和物、トリ溶媒和物、テトラ溶媒和物、ペンタ溶媒和物などとも呼ばれる。水和物は溶媒和物の特殊な形態であり、溶媒和物の中で水との配座が起こる。
【0023】
本発明にはさらに、本発明による化合物のプロドラッグが含まれる。“プロドラッグ”という用語には、体内にある間に例えば酵素プロセスまたは加水分解プロセスによって本発明の化合物に変換される化合物が含まれる。
【0024】
アルキルは、炭素原子が1〜6個の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表わし、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルがある。
【0025】
アリールは、置換された、または置換されていない単環〜三環の芳香族炭素環基を表わし、例えばフェニル、ナフチルがあり、これらはハロゲン(F、Cl、Br、I)基、OH基、O-アルキル基、CO
2H基、CO
2-アルキル基、NH
2基、NH(C
1〜C
10-アルキル)基、N(C
1〜C
10-アルキル)
2基(特にN(CH
3)
2基)、NO
2基、N
3基、CN基、C
1〜C
10-アルキル基、C
1〜C
10-ペルフルオロ-アルキル基、C
1〜C
10-アシル基、C
1〜C
10-アシルオキシ基で1回以上置換されていてもよい。
【0026】
ヘテロアリールは、環の原子が一般に5〜10個、好ましくは5〜6個であり、S、O、Nの中から選択した5個までの、好ましくは4個までのヘテロ原子を有する単環または二環の芳香族基を表わし、例えばベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、フリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、イソキノリニル、オキサゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チアゾリル、チエニル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、キノリル、テトラゾリルが好ましい。
【0027】
アラルキルは、環内に14個までの炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子と、アルキル鎖内に1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含むことのできるアラルキル基を表わす。考えられるアラルキル基は、例えばベンジル、フェニルエチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピリジルプロピルである。環は、ハロゲン基、OH基、O-アルキル基、CO
2H基、CO
2-アルキル基、NH
2基、NH(C
1〜C
10-アルキル)基、N(C
1〜C
10-アルキル)
2基、NO
2基、N
3基、CN基、C
1〜C
20-アルキル基、C
1〜C
10-ペルフルオロ-アルキル基、C
1〜C
20-アシル基、C
1〜C
20-アシルオキシ基で1回以上置換することができる。
【0028】
本発明による化合物の中の残基が置換される場合、特に断わらない限り、その残基は1回以上置換することができる。本発明の範囲では、2回以上現われるすべての残基について、その意味は互いに独立である。1個、2個、3個の同じ置換基または異なる置換基での置換が好ましい。1個の置換基による置換が特に好ましい。
【0029】
一般式(I)の化合物:
【化2】
と、その化合物の塩、その化合物の溶媒和物、前記塩の溶媒和物が好ましい。ただし一般式(I)において、
R
1は、残基Yを表わすか、残基Yで1回置換されたフェニル環を表わし、Yが、SR
2、S(O)R
3、S(O)
2R
3、S(O)(NH)R
3、S(O)(NR
4)R
3、S(O)
2NR
9R
10からなるグループの中から選択され、
R
2は、C
1〜C
6-アルキル、水素、C7〜C8-アラルキルのいずれかを表わし、特に水素、メチル、エチル、ベンジルのいずれかであることが好ましく、
R
3は、C
1〜C
6-アルキルを表わし、メチルまたはエチルであることが好ましく、
R
4は、S(O)
2R
6基を表わし、
Xは、酸素原子を表わし、
R
6は、フェニルまたは4-メチルフェニルを表わし、
R
9、R
10は、互いに独立に、水素、C
1〜C
10-アルキル、フェニルのいずれかを表わす。
【0030】
一般式(I)において、R
1がS(O)
2R
3であり、XがOであり、R
3がC
1〜C
6-アルキルである化合物、特にR
3がメチルを表わす化合物が好ましい。
【0031】
一般式(I)において、R
1がS(O)(NH)R
3であり、XがOであり、R
3がC
1〜C
6-アルキルである化合物、特にR
3がメチルを表わす化合物も好ましい。好ましい残基R
1は、R立体配座とS立体配座の両方が可能であり、任意の混合比が可能である。
【0032】
以下の化合物も好ましい:
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルファニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例1)、
(11β,17β)-11-[4-(エチルスルファニル)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例2)、
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-{4-[(RS)-メチルスルフィニル)フェニル}-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例3)、
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例4)、
(11β,17β)-11-[4-(エチルスルホニル)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例5)、
(11β,17β)-11-[4-(ベンジルスルファニル)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例6)、
N-[{4-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]フェニル}(RS)(メチル)オキシド-λ
6-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド(実施例7)、
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(RS-メチルスルホンイミドイル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例8)、
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(メチルスルファニル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例9)、
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(メチルスルホニル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例10)、
N-[{4'-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]ビフェニル-4-イル}(RS)(メチル)オキシド-λ
6-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド(実施例11)、
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(RS-メチルスルホンイミドイル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例12)、
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)-11-(4'-スルファニルビフェニル-4-イル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(実施例13)、
4'-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]-N,N-ジメチルビフェニル-4-スルホンアミド(実施例14)、
4-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]-N,N-ジメチルベンゼンスルホンアミド(実施例15)。
【0033】
残基のそれぞれの組み合わせ、または好ましい組み合わせに含まれる残基に関する上記の個々の定義は、残基の上記それぞれの組み合わせとは独立な他の何らかの組み合わせの残基のどの定義で置き換えてもよい。
【0034】
上記の好ましい範囲の2つ以上の組み合わせが特に好ましい。
【0035】
本発明の化合物および/または誘導体は、優れたプロゲステロン拮抗作用を示すことが見いだされた。いくつかの臨床試験では、プロゲステロン受容体拮抗薬(ミフェプリストン、アソプリスニル、プロエレックス)を用いた治療により、子宮線維腫の有意な縮小と、子宮線維腫に伴う症状の有意な減少につながる可能性があることが見いだされた。さらに、臨床試験では、上記のプロゲステロン受容体拮抗薬を用いた治療中に子宮内膜症によって起こる症状(特に痛み)もかなり減少する可能性のあることがわかった。
【0036】
【化3】
【0037】
一般式(I)の化合物を製造する方法の概略をスキーム1に示す。
【0038】
一般式(I)の化合物は、(5'R,8'S,10'R,13'S,14'S,17'S)-5,5,13'-トリメチル-1',2',7',8',12',13',14',15',16',17'-デカヒドロ-6'H-スピロ[1,3-ジオキサン-2,3'-[5,10]エポキシシクロペンタ[a]フェナントレン]-17'-オール(その製造に関しては、WO 98/34947およびWO 2008/058767に記載されている方法と似たTetrahedron Lett.、第26巻、2069〜2072ページ、1985年を参照のこと)から出発して調製される。ステロイド骨格の17位にあるヒドロキシル基を酸化した後、WO 98/34947およびWO 2008/058767に記載されている方法に従って対応する17-ケト化合物に17α-ペンタフルオロエチル側鎖を導入する。11β-フェニル置換基の導入は、銅触媒下でアリールグリニャール試薬またはアリールリチウム試薬の共役付加によって起こる。一般式(II)の化合物が得られる。その中のR
8はR
1に関してすでに述べたあらゆる意味を持つことができ、それに加えてヒドロキシ基、C
1〜C
10-アルコキシ基、ベンジルオキシ基、C
1〜C
10-アルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、シリルオキシル基、アルコキシアルキルオキシ基、Cl、Br、I、C
mF
m+1SO
3基(m=1〜4)であってもよく、Aおよび/またはBは、カルボニル基、または17β-OH/17α-H基、17β-OH/17α-C
2F
5基のいずれかを表わす。その後、一般式(II)の化合物から一般式(I)の化合物を得ることができる。そのためには、官能基を場合によってはさらに改変する。特に、当業者に知られている方法で硫化物を酸化してスルホキシドまたはスルホンにすることと、クロラミン-T-三水和物(登録商標)の付加によって硫化物からスルホキシミンを形成した後、酸化によって対応する保護されたスルホキシミンにし、次いで例えば酸を用いた開裂によってそのスルホキシミンを解放することが挙げられる。しかし別の方法として、対応するスルホキシドから出発する当業者に知られた方法を利用することもできる。ステロイド骨格の11β位にビフェニル残基が存在する化合物では、これは、銅触媒下でジアリールグリニャール試薬またはジアリールリチウム試薬の共役付加によって直接実行すること、または例えば対応する機能化された11β-フェニル誘導体(例えばトリフルオロ酢酸フェニル、ノナフルオロ酢酸フェニル)上のパラジウム触媒カップリング反応によって実現することができる。一般に、11β-フェニル残基と17β-ペンタフルオロエチル側鎖を最初に導入することができる。その間、官能基、特に3-ケト基は、例えばケタールとして場合によっては保護される。ケタール保護基として、例えばエチレンジオキシ基または2,2-ジメチルプロピレン-1,2-ジオキシ基が挙げられる。ヒドロキシル基は、例えばメトキシメチルエーテル、メトキシエチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、ベンジルエーテル、シリルエーテルの形態で保護される。
【0039】
適切な段階で保護基を当業者に知られた方法で分離させる。ステロイド骨格の3-ケタールを開裂させて3-ケト基にする間に場合によってはまだ存在している5α-ヒドロキシル基が除去されるため、一般式(I)の化合物が形成される。
【0040】
出発化合物の製造がこの明細書に記載されている場合を除き、その化合物は当業者に知られているものであるか、公知の化合物またはこの明細書に記載した方法と同様にして製造することができる。異性体の混合物は、通常の方法(例えば結晶化、クロマトグラフィ、塩形成)で個々の化合物に分離できる。
【0041】
塩の製造は、通常の方法で、一般式(I)の化合物の溶液に同量または過剰量の塩基または酸(場合によっては溶液の形態)を添加し、場合によっては沈殿物を分離するか、その溶液を通常の方法で処理することによってなされる。
【0042】
得られる一般式(I)の化合物は、場合によっては、対応する(i)溶媒、および/または(ii)塩基か酸を用いて、その化合物の溶媒和物、および/またはその化合物の塩、および/または前記塩の溶媒和物に変換される。
【0043】
上記の残基、または好ましい範囲の中で述べた残基の一般的な定義は、一般式(I)の最終生成物と、それぞれの場合に製造に必要な出発物質または中間体の両方に適用される。
【0044】
本発明の化合物は、予想できなかった貴重な薬理学的、薬理動態的、薬力学的な作用プロファイルを示す。
【0045】
したがって本発明の化合物は、ヒトおよび動物の諸疾患の治療用および/または予防用の医薬製品として用いるのに適している。
【0046】
本発明による化合物の医薬効果は、プロゲステロン受容体拮抗薬としての作用によって、つまりプロゲステロン受容体に対するその化合物の拮抗作用によって説明できる。
【0047】
本発明の別の目的は、本発明による化合物を利用した、ホルモン依存性過剰増殖プロセスに基づく諸疾患の治療および/または予防、好ましくは婦人科疾患、特に子宮線維腫、子宮内膜症、ホルモン依存性乳がんの治療および/または予防である。
【0048】
本発明の別の目的は、本発明による化合物を利用した諸疾患(特に上記の諸疾患)の治療および/または予防である。
【0049】
本発明の別の目的には、子宮線維腫、子宮内膜症、ホルモン依存性乳がんを治療および/または予防する方法で用いるための本発明の化合物が含まれる。
【0050】
本発明の別の目的は、本発明の化合物を利用して諸疾患(特に上記の諸疾患)の治療および/または予防のための医薬を製造することである。
【0051】
本発明の別の目的は、諸疾患(特に上記の諸疾患)を治療および/または予防する方法であり、子宮線維腫または子宮内膜症の治療と避妊用では本発明の化合物を患者一人に一日当たり0.1〜100mg使用し、腫瘍疾患(例えば髄膜腫、ホルモン依存性腫瘍(例えば乳がん))と緊急避妊用では本発明の化合物を患者一人に一日当たり0.1〜500mg使用する。
【0052】
本発明の別の目的には、特に上記の諸疾患の治療および/または予防のため、本発明による少なくとも1種類の化合物と、少なくとも1種類以上の他の活性物質とを含有する医薬製品が含まれる。
【0053】
腫瘍疾患の治療には、例えば以下の活性物質/活性物質のクラス、すなわちSERM、および/またはSERD、および/または抗エストロゲン、および/またはアロマターゼ阻害剤、および/またはキナーゼ阻害剤、および/または血管新生阻害剤、および/または細胞分裂抑制剤を同時に、または逐次的に投与することができる。
【0054】
子宮線維腫または子宮内膜症の治療には、本発明の化合物をゲスターゲンと組み合わせて、またはエストロゲンとゲスターゲンの組み合わせと組み合わせて同時に、または逐次的に投与することができる。
【0055】
プロゲステロン受容体拮抗薬/ゲスターゲン療法は、WO 96/15794(Spicer他、バランス・ファーム社)、WO 96/03130(Stockemann他、シェリング社)、PCT/EP2009/003249(Moller他、バイエル・シェリング・ファーマ社)に開示されている。プロゲステロン受容体拮抗薬を2〜4か月の期間にわたって投与した後に1〜4週間の期間にわたってゲスターゲンを投与する療法(場合によっては繰り返す)は、子宮線維腫と子宮内膜症の治療に非常に適している。プロゲステロン受容体拮抗薬を84日間にわたって投与した後にゲスターゲンを14日間にわたって投与すること(場合によっては繰り返す)が特に適切である。
【0056】
本発明の化合物を例えばSERM、SERD、エストロゲンと組み合わせて同時に、または逐次的に投与することが、更年期に伴う愁訴の治療として考えられる。SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレータ)は組織選択的な化合物であり、例えば子宮に対する抗エストロゲン作用またはエストロゲン作用を及ぼしてエストロゲンの作用を抑制するが、骨に対しては中性作用またはエストロゲン様作用を及ぼす。例として、クロミフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、トリミフェン、バゼドキシフェン、ラソフォキシフェン、オルメロキシフェンがある。
【0057】
選択的エストロゲン受容体不安定剤(SERD)は、エストロゲン受容体と完全に拮抗する医薬(エストロゲン活性成分なしの“純粋な抗エストロゲン”)であり、その受容体を下方調節する(例えばフルベストラント、ZK-703、ZK-253(Hoffmann J.他、J. Natl. Cancer Inst.、2004年、第96巻、210〜218ページ))とともに、WO 98/007740、WO 99/33855、WO 03/045972に記載されている化合物を下方調節する。
【0058】
抗エストロゲンは、エストロゲン受容体と完全に拮抗する化合物であり、例えばフルベストラントがある。
【0059】
アロマターゼ阻害剤は酵素であるアロマターゼを抑制するため、アンドロゲンが芳香族化によってエストロゲンになるのを抑制する。アロマターゼ阻害剤として、特に、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタンス、ファドロゾールがある。
【0060】
キナーゼ阻害剤は、リン酸残基をATPから他の基質に、その中でも特にそこにあるヒドロキシル基に転移させる酵素である。例として、ソラフェニブ(ネクサバール)、イマチニブ(グリベック)がある。
【0061】
血管新生阻害剤(例えばアバスチン)は、血管への供給を減らすか阻止するため、腫瘍への血液の供給が減るか阻止される。
【0062】
細胞分裂抑制剤(例えばシスプラチン、タキソール、タキソテール)は、細胞の増殖または分裂を抑制する天然または合成の物質である。
【0063】
ゲスターゲンは、本発明の意味では、天然のプロゲステロンそのものであるか、合成誘導体であり、プロゲステロンそのもののようにプロゲステロン受容体と結合し、排卵抑制用量を超える用量では排卵を抑制する。合成誘導体の例として、ドロスピレノン、ゲストデン、レボノルゲストレル、酢酸シプロテロン、デソゲストレル、3-ケトデソゲストレル、ノレチステロン、酢酸ノレチステロン、ジエノゲストが挙げられる。
【0064】
ゲスターゲンとエストロゲンの組み合わせは、公知の経口避妊薬(例えばヤスミン、フェモバン、トリキュラー、マルベロン、YAZなど)に含まれる活性物質の組み合わせである。
【0065】
本発明の化合物は、全身および/または局所的に作用することができる。その目的で本発明の化合物は、適切な経路で適用すること、またはインプラントかステントとして用いることができる。経路として、例えば経口、子宮内、膣内、非経口、肺、鼻腔、舌下、舌、口腔内、直腸、皮膚、経皮、結膜、耳がある。
【0066】
子宮内は、特にIUS(子宮内システム)またはIUD(子宮内危惧)によって適用することを意味する。膣内への適用は、特にIVR/VRS(膣内リング/膣リング・システム)によって実現できる。
【0067】
子宮内または膣内に適用するための形態(例えばWO 01/47490の特に1ページ、10〜5行、13行、7行、19〜58行、6行;膣リングに関しては、WO 06/010097の特に10ページ、22行〜14ページ、28行参照)は、本発明の化合物と、非シリコーンおよび/またはシリコーンのポリマーを含むことができ、特にシロキサンをベースとしたエラストマーも含むことができる(WO 01/47490、特に7ページ、19行〜15ページ、15行参照)。
【0068】
これらの投与経路を通じて本発明の化合物を適切な投与形態で投与することができる。
【0069】
結晶形態および/またはアモルファス形態および/または溶解形態になった本発明の化合物を含んでいて従来のように機能する迅速放出投与形態および/または改変放出投与形態が、経口投与に適している。形態として、例えば錠剤(非被覆錠剤または被覆錠剤、本発明による化合物の放出を制御する例えば腸溶性コーティング、遅延溶解コーティング、不溶性コーティングを有する錠剤)、口腔内で素早く崩壊する錠剤またはフィルム/ウエハ、フィルム/凍結乾燥物、カプセル(例えば硬質ゼラチン・カプセルまたは軟質ゼラチン・カプセル)、コーティングされた錠剤、顆粒、ペレット、粉末、エマルジョン、懸濁液、エーロゾル、溶液がある。
【0070】
非経口投与は、吸収ステップを回避しつつ(例えば静脈内、動脈内、心臓内、脊柱内、腰椎内)、または吸収を含めて(例えば筋肉内、皮下、皮内、経皮、腹腔内)実行することができる。特に溶液、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥物、殺菌粉末の形態になった注射用調製物と輸液用調製物が、非経口投与のための投与形態として適している。
【0071】
他の投与経路に関しては、例えば吸入用投与形態(粉末吸入器、噴霧器が含まれる)、点鼻液、溶液、スプレー;舌、舌下、口腔内に投与するための錠剤、フィルム/ウエハまたはカプセル、座薬、耳または目のための調製物、膣用カプセル、水性懸濁液(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁液、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えばパッチ)、ミルク、ペースト、泡、ダスト状粉末、インプラント、ステントが適している。
【0072】
本発明の化合物は、上記の投与形態に変換することができる。これは、医薬に適した不活性な非毒性の賦形剤と混合するという公知の方法で実行することができる。賦形剤として、特に、担体物質(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール)、乳化剤、分散剤、湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ポリオキシソルビタン)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成ポリマーと天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定剤(例えば酸化防止剤であるアスコルビン酸)、着色物質(例えば無機顔料である鉄酸化物)、味覚および/香り調節剤などがある。
【0073】
本発明の別の目的に、本発明による少なくとも1種類の化合物を、通常は、医薬に適した1種類以上の不活性な非毒性の賦形剤とともに含有する医薬製品と、上記の目的でのその医薬製品の利用が含まれる。
【0074】
それでも場合によっては、体重、投与経路、活性物質に対する個人の反応、調製物のタイプ、投与時刻、投与間隔に応じて上記の量を避けねばならない可能性がある。そのためある場合には、上記の最少量よりも少ない量で十分である可能性がある一方で、上記の上限を超過せねばならない場合もある。より多くの量を投与する場合には、一日を通じていくつかの個別用量に分けることが推奨されよう。
【0075】
特に断わらない限り、以下の試験と実施例の中の%は重量%であり、部は重量部である。液体/溶液に関する溶媒の割合、希釈率、濃度の数値は、常に体積を基準とする。
【0076】
以下の実施例は本発明を説明するのに役立つが、いかなる意味でも本発明がこれら実施例に限定されることはない。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0077】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルファニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0078】
【化4】
【0079】
a)(5'R,8'S,10'R,13'S,14'S,17'S)-5,5,13'-トリメチル-17'-(ペンタフルオロエチル)-1',2',7',8',12',13',14',15',16',17'-デカヒドロ-6'H-スピロ[1,3-ジオキサン-2,3'-[5,10]エポキシシクロペンタ[a]フェナントレン]-17'-オール
【0080】
【化5】
【0081】
50gの(5'R,8'S,10'R,13'S,14'S)-5,5,13'-トリメチル-1',2',6',7',8',12',13',14',15',16'-デカヒドロ-17'H-スピロ[1,3-ジオキサン-2,3'-[5,10]エポキシシクロペンタ[a]フェナントレン]-17'-オン(その調製に関しては、Tetrahedron Lett.、第26巻、2069〜2072ページ、1985年を参照のこと)を、-70℃で、116gの濃ペンタフルオロヨードエタンを含む500mlの無水トルエンに添加した。ジエチルエーテルにメチルリチウム-臭化リチウム複合体が含まれた290mlの1.5モル溶液をこの溶液に同じ温度で添加した後、0℃にて1時間にわたって撹拌した。次に、この反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に添加し、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物を200mlのアセトンに溶かし、450mlの水を添加した。沈殿した生成物を濾過して取り出し、真空中で乾燥させた。
【0082】
収量61.6g。
【0083】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=6.04 brd (1H);3.60 d (1H);3.35〜3.50 m (3H);2.51 dbr (1H);1.06 s (3H);0.93 s (3H);0.85 s (3H)。
【0084】
b)(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5',5',13-トリメチル-11-[4-(メチルスルファニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-5,17(4H)-ジオール
【0085】
【化6】
【0086】
1.23gのマグネシウムの削り屑を5mlのTHFの中に懸濁させて撹拌しながら50μlのジブロモエタンを添加した。60mlのTHFに10.31gの1-ブロモ-4-(メチルチオフェニル)ベンゼンが含まれた溶液を、反応温度が55℃を超えないようにしてこの懸濁液に添加した。次に、この懸濁液をさらに1時間にわたって撹拌した。次に、得られた溶液を0℃まで冷却した。151mgのCuClを添加して0℃にてさらに15分間にわたって撹拌した。次に、50mlのTHFに実施例1a)に記載した物質5gを含む溶液を添加した。次に、この反応混合物を撹拌しながら約3時間かけて23℃にした後、この温度でさらに10時間にわたって撹拌した。次に、外側を冷却しながら飽和NH
4Cl水溶液をこの反応混合物に添加した。撹拌を30分間にわたって続けた後、酢酸エチルで数回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した後、ジクロロメタンとジイソプロピルエーテルの混合物から結晶化させた。すると表題の化合物が5.72g得られた。
【0087】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.50 d (2H);7.30 d (2H);4.41 s (1H);4.28 dbr (1H);3.40〜3.60 m (4H);2.51 s (3H);1.05 s (3H);0.87 s (3H);0.53 s (3H)。
【0088】
c)(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルファニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0089】
【化7】
【0090】
1b)に記載した化合物500mgを15mlのメタノールに溶かした。360μlの半濃硫酸を添加し、23℃にて3時間にわたって撹拌を続けた。次に、この反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液の中に注ぎ、酢酸エチルで数回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した。すると表題の化合物が297mg得られた。
【0091】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.20 d (2H);7.13 d (2H);5.80 sbr (1H);4.45 dbr (1H);2.51 s (3H);0.68 s (3H)。
【実施例2】
【0092】
(11β,17β)-11-[4-(エチルスルファニル)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0093】
【化8】
【0094】
a)(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-11-[4-(エチルスルファニル)フェニル]-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-5,17(4H)-ジオール
【0095】
【化9】
【0096】
実施例1b)におけるようにして、1a)に記載した化合物3gと、888mgのマグネシウムの削り屑と、91mgのCuClと、7.94gの1-ブロモ-4-(メチルチオフェニル)ベンゼンとを含むTHFから表題の化合物を調製した。
【0097】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.50 d (2H);7.38 d (2H);4.43 s (1H);4.39 dbr (1H);3.40〜3.60 m (3H);2.95 q (2H);1.30 t (3H);1.07 s (3H);0.87 s (3H);0.53 s (3H)。
【0098】
b)(11β,17β)-11-[4-(エチルスルファニル)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0099】
【化10】
【0100】
実施例1c)におけるようにして、2a)で調製した化合物200mgから、メタノールの中で半濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を125mg調製した。
【0101】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.21 d (2H);7.08 d (2H);5.78 sbr (1H);4.43 dbr (1H);2.93 q (2H);1.29 t (3H);0.60 s (3H)。
【実施例3】
【0102】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-{4-[(RS)-メチルスルフィニル)フェニル}-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0103】
【化11】
【0104】
180μlの30%過酸化水素溶液を23℃で0.5mlのトリフルオロ酢酸に添加した。それを30分間にわたって撹拌した後、得られた混合物を、実施例1c)で調製した化合物533mgを1.8mlのトリフルオロ酢酸に懸濁させて10℃に冷却した懸濁液に添加した。それを10℃にてさらに2時間にわたって撹拌した。次に、この反応混合物を氷水の中に注いだ。それをさらに2時間にわたって撹拌した後、沈殿した生成物を濾過して取り出した。得られた粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した。すると表題の化合物が146mgと、実施例4に記載する化合物が123mg得られた。
【0105】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=7.58 d (2H);7.38 d (2H);5.80 sbr (1H);4.50 dbr (1H);2.71 s (3H);0.58 s (3H) + 0.56 s (3H)(ジアステレオマーの混合物)。
【実施例4】
【0106】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0107】
【化12】
【0108】
実施例1b)に記載した化合物5gを、140mlのTHFと140mlのメタノールの混合物の中に溶かした。20gのOxone(登録商標)を94mlの水に溶かした溶液を0℃にて一滴ずつゆっくりと添加した後、0℃にてさらに3.5時間にわたって撹拌した。次に、水とジクロロメタンの混合物をこの反応混合物に添加した。相が分離し、水相をジクロロメタンで数回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した。すると表題の化合物が3.8g得られた。
【0109】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.86 d (2H);7.40 d (2H);5.81 sbr (1H);4.50 dbr (1H);3.07 s (3H);0.51 s (3H)。
【実施例5】
【0110】
(11β,17β)-11-[4-(エチルスルホニル)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0111】
【化13】
【0112】
実施例4におけるようにして、シリカゲル・クロマトグラフィによる精製の後、10mlのTHFと10mlのメタノールの混合物の中で実施例2a)に記載した化合物400mgを1.56gのOxone(登録商標)と反応させることによって表題の化合物を183mg得た。
【0113】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=7.82 d (2H);7.40 d (2H);5.80 sbr (1H);4.52 dbr (1H);3.13 q (2H);1.28 t (3H);0.51 s (3H)。
【実施例6】
【0114】
(11β,17β)-11-[4-(ベンジルスルファニル)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0115】
【化14】
【0116】
a)(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-11-[4-(ベンジルスルファニル)フェニル]-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-5,17(4H)-ジオール
【0117】
【化15】
【0118】
実施例1b)におけるようにして、1a)に記載した化合物8.5gと、2.64gのマグネシウムの削り屑と、171mgのCuClと、30.36gの1-ベンジルスルファニル-4-ブロモベンゼンとを含むTHFから表題の化合物を6.65g調製した。
【0119】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.13〜7.30 m (7H);7.10 d (2H);4.44 s (1H);4.27 dbr (1H);4.05 s (2H);3.40〜3.60 m (4H);1.05 s (3H);0.87 s (3H);0.51 s (3H)。
【0120】
b)(11β,17β)-11-[4-(ベンジルスルファニル)フェニル]-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0121】
【化16】
【0122】
実施例1c)におけるようにして、実施例6a)に記載した化合物1.62gから、メタノールの中で半濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を1.02g調製した。
【0123】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.15〜7.40 m (7H);7.06 d (2H);5.78 sbr (1H);4.40 dbr (1H);4.08 s (2H);0.59 s (3H)。
【実施例7】
【0124】
N-[{4-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]フェニル}(RS)(メチル)オキシド-λ
6-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド
【0125】
【化17】
【0126】
a)N-[{4-[(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5,17-ジヒドロキシ-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,4,5,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-11-イル]フェニル}(RS)(メチル)-λ
4-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド
【0127】
【化18】
【0128】
実施例1b)に記載した物質3gを80mlのアセトニトリルに懸濁させた。1.64gのクロラミン-T-三水和物(登録商標)を添加し、23℃にて20時間にわたって撹拌を続けた。次に、この反応混合物を70mlのジクロロメタンで希釈した。沈殿した塩化ナトリウムを濾過して除去した後、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した。すると表題の化合物が3.16g得られた。
【0129】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.74 d (2H);7.49 d (2H);7.38 d (2H);7.18 d (2H);4.40 s (1H);4.33 dbr (1H);3.40〜3.70 m (4H);2.80 (3H);2.37 s (3H);1.05 s (3H);0.89 s (3H);0.45 s (3H)(ジアステレオマーの混合物)。
【0130】
b)N-[{4-[(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5,17-ジヒドロキシ-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,4,5,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-11-イル]フェニル}(RS)(メチル)オキシド-λ
6-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド
【0131】
【化19】
【0132】
7a)で得られた化合物3.16gを2.5mlのアセトニトリルと1.6mlのメタノールの中に溶かした。1.22gの炭酸ナトリウムと2.34mlの30%過酸化水素溶液を添加した後、23℃にて2.5時間にわたって撹拌した。次にこの反応混合物を水の中に注いだ。それをジクロロメタンで数回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した。すると表題の化合物が2.56g得られた。
【0133】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.78〜8.00 m (4H);7.51 d (2H);7.31 d (2H);4.50 s (1H);4.44 dbr (1H);3.45〜3.67 m (7H);2.46 s (3H);1.09 s (3H);0.91 s (3H);0.51 s (3H)(ジアステレオマーの混合物)。
【0134】
c)N-[{4-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]フェニル}(RS)(メチル)オキシド-λ
6-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド
【0135】
【化20】
【0136】
実施例1c)におけるようにして、7b)で調製した化合物2.72gから、メタノールの中で半濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を2.2g調製した。
【0137】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.95 d (2H);7.86 d (2H);7.45 d (2H);7.28 d (2H);5.81 sbr (1H);4.51 dbr (1H);3.41 s (3H);2.40 s (3H);0.51 s (3H)(ジアステレオマーの混合物)。
【実施例8】
【0138】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(RS-メチルスルホンイミドイル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0139】
【化21】
【0140】
実施例7c)で調製した化合物500mgを10mlのクロロホルムに溶かした。1.15mlの濃硫酸を0℃で添加し、それを0℃にて7時間にわたって撹拌した。次に、この反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の中に注いだ。次に、5%NaOHを添加することによってそれを塩基性にした。それをジクロロメタンで数回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した。すると表題の化合物が306mg得られた。
【0141】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.91 d (2H);7.39 d (2H);5.81 sbr (1H);4.50 dbr (1H);3.12 s (3H) + 3.10 s (3H);0.56 s (3H) + 0.40 s (3H)(ジアステレオマーの混合物)。
【実施例9】
【0142】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(メチルスルファニル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0143】
【化22】
【0144】
a)(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-11-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-5,17(4H)-ジオール
【0145】
【化23】
【0146】
2.47gのマグネシウムの削り屑を5mlのTHFに懸濁させ、撹拌しながら50μlのジブロモメタンを添加した。26.7gの1-ブロモ-4-(フェニルメトキシ)ベンゼンを115mlのTHFに溶かした溶液を65℃にてこの懸濁液にゆっくりと添加した。得られた溶液を0℃に冷却した。301mgのCuClをそれに添加した。それを0℃にて10分間にわたって撹拌した後、実施例1a)に記載した物質10gを70mlのTHFに溶かした溶液をゆっくりと添加した。この反応混合物を撹拌しながら約3時間かけて23℃まで温めた後、この温度でさらに10時間にわたって撹拌した。次に、外側を冷却しながら飽和NH
4Cl水溶液をこの反応混合物に添加した。撹拌を30分間にわたって続けた後、酢酸エチルで数回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した後、ジクロロメタンとジイソプロピルエーテルの混合物から結晶化させた。すると表題の化合物が9.7g得られた。
【0147】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=7.30〜7.50 m (5H);7.12 d (2H);6.88 d (2H);5.02 s (2H);4.43 s (1H);4.28 dbr (1H);3.50〜3.60 m (3H);3.42 d (1H);1.06 s (3H);0.87 s (3H);0.56 s (3H)。
【0148】
b)(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-11-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-5,17(4H)-ジオール
【0149】
【化24】
【0150】
ギ酸アンモニウム5.53gと活性炭上のパラジウム972mg(10%)を、9a)に記載した化合物9.72gを100mlのメタノールに溶かした溶液に添加した。それを23℃にて2時間にわたって撹拌した後、Celite(登録商標)上で濾過した。濾液を真空下で濃縮した、すると組成生物が8.5g得られた。それを精製せずに次の段階で使用した。
【0151】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.05 d (2H);6.70 d (2H);4.43 sbr (1H);4.27 dbr (1H);3.50〜3.58 m (3H);3.41 sbr (1H);1.94 s (3H);0.86 s (3H);0.54 s (3H)。
【0152】
c)4-[(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5,17-ジヒドロキシ-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,4,5,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-11-イル]フェニル-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン-1-スルホネート
【0153】
【化25】
【0154】
n-ブチルリチウムを含むヘキサンの1.6モル溶液14.64mlを、0℃で、9b)に記載した化合物9.16gを100mlの無水THFに溶かした溶液に添加した。それを0℃にて30分間にわたって撹拌した後、5.62mlのペルフルオロブタン-1-スルホニルフルオリドをゆっくりと添加した。次に、それを0℃にてさらに1.5時間にわたって撹拌した。次に、この反応混合物を、300mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液と90mlの2N水酸化ナトリウム溶液の混合物の中に注いだ。それを45分間にわたって撹拌した後、酢酸エチルで数回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。シリカゲル・クロマトグラフィによって精製して粗生成物を得た。すると表題の化合物が10.1g得られた。
【0155】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=7.28 d (2H);7.18 d (2H);4.42 s (1H);4.34 dbr (1H);3.50〜3.58 m (3H);3.42 d (1H);1.05 s (3H);0.86 s (3H);0.50 s (3H)。
【0156】
d)(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5',5',13-トリメチル-11-[4'-(メチルスルファニル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-5,17(4H)-ジオール
【0157】
【化26】
【0158】
2モルの炭酸ナトリウム水溶液2mlと、131mgの塩化リチウムと、240mgの4-(メチルチオ)フェニルボロン酸と、192mgのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを、12mlのトルエンと6mlのエタノールの混合物に9c)に記載した化合物1.2gを溶かした溶液に添加した。次に、それを還流下で2時間にわたって沸騰させた。次に、酢酸エチルと水の混合物をこの反応混合物に添加した。それを酢酸エチルで数回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した。すると表題の化合物が927mg得られた。
【0159】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.45〜7.55 m (4H);7.30 d (2H);7.27 d (2H);7.45 s (1H);4.35 dbr (1H);3.40〜3.60 m (4H);2.50 s (3H);1.07 s (3H);0.97 s (3H);0.58 s (3H)。
【0160】
e)(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(メチルスルファニル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0161】
【化27】
【0162】
実施例1c)におけるようにして、9d)で調製した化合物120mgを、メタノールの中で半濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を82mg調製した。
【0163】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=7.45〜7.58 m (4H);7.30 d (2H);7.24 d (2H);5.80 sbr (1H);4.50 dbr (1H);2.50 s (3H);0.62 s (3H)。
【実施例10】
【0164】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(メチルスルホニル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0165】
【化28】
【0166】
a)(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5',5',13-トリメチル-11-[4'-(メチルスルホニル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-5,17(4H)-ジオール
【0167】
【化29】
【0168】
実施例9d)におけるようにして、実施例9c)に記載した化合物500mgと(4-メチルスルホニルフェニル)ボロン酸から、トルエンとエタノールの混合物の中で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと、塩化リチウムと、2モルの炭酸ナトリウム水溶液の存在下にて、表題の化合物を256mg調製した。
【0169】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=8.03 d (2H);7.80 d (2H);7.58 d (2H);7.39 d (2H);4.48 s (1H);4.45 dbr (1H);3.45〜3.65 m (4H);3.12 s (3H);1.10 s (3H);0.91 s (3H);0.62 s (3H)。
【0170】
b)(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(メチルスルホニル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0171】
【化30】
【0172】
実施例1c)におけるようにして、10a)で調製した化合物110mgから、メタノールの中で半濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を62mg調製した。
【0173】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=8.00 d (2H);7.75 d (2H);7.55 d (2H);7.30 d (2H);5.80 sbr (1H);4.50 dbr (1H);3.09 s (3H);0.65 s (3H)。
【実施例11】
【0174】
N-[{4'-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]ビフェニル-4-イル}(RS)(メチル)オキシド-λ
6-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド
【0175】
【化31】
【0176】
a)N-[{4'-[(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5,17-ジヒドロキシ-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,4,5,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-11-イル]ビフェニル-4-イル}(RS)(メチル)-λ
4-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド
【0177】
【化32】
【0178】
実施例7a)におけるようにして、実施例9d)で調製した化合物800mgから、アセトニトリルの中でクロラミン-T-三水和物(登録商標)を用いて表題の化合物を715mg調製した。
【0179】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.65〜7.80 (6H);7.47 d (2H);7.30 d (2H);7.18 d (2H);4.45 s (1H);4.39 dbr (1H);3.40〜3.60 m (4H);2.87 (3H);2.35 s (3H);1.03 s (3H);0.87 s (3H);0.56 s (3H)(ジアステレオマーの混合物)。
【0180】
b)N-[{4'-[(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5,17-ジヒドロキシ-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,4,5,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-11-イル]ビフェニル-4-イル}(RS)(メチル)オキシド-λ
6-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド
【0181】
【化33】
【0182】
実施例7b)におけるようにして、実施例11a)で得られた化合物709mgから、アセトニトリルとメタノールの混合物の中で30%過酸化水素溶液および炭酸ナトリウムと反応させることによって表題の化合物を638mg調製した。
【0183】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=8.04 d (2H);7.87 d (2H);7.78 d (2H);7.50 d (2H);7.35 d (2H);7.27 d (2H);4.46 s (1H);4.40 dbr (1H);3.40〜3.60 m (4H);3.46 s (3H);2.39 s (3H);1.07 s (3H);0.87 s (3H);0.56 s (3H)(ジアステレオマーの混合物)。
【0184】
c)N-[{4'-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]ビフェニル-4-イル}(RS)(メチル)オキシド-λ
6-スルファニリデン]-4-メチルベンゼンスルホンアミド
【0185】
【化34】
【0186】
実施例1c)におけるようにして、11b)で調製した化合物633mgから、メタノールの中で半濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を523mg調製した。
【0187】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=8.06 d (2H);7.87 d (2H);7.78 d (2H);7.52 d (2H);7.20〜7.35 m (4H);5.80 sbr (1H);4.51 dbr (1H);3.45 s (3H);2.39 s (3H);0.62 s (3H)(ジアステレオマーの混合物)。
【実施例12】
【0188】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(RS-メチルスルホンイミドイル)ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0189】
【化35】
【0190】
実施例8におけるようにして、実施例11c)で調製した化合物500mgから、クロロホルムの中で半濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を325mg調製した。
【0191】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=8.07 d (2H);7.74 d (2H);7.55 d (2H);7.30 d (2H);5.80 sbr (1H);4.51 dbr (1H);3.15 s (3H);0.64 s (3H)(ジアステレオマーの混合物)。
【実施例13】
【0192】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)-11-(4'-スルファニルビフェニル-4-イル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0193】
【化36】
【0194】
a)(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-11-(4'-スルファニルビフェニル-4-イル)-1,2,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-ドデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-5,17(4H)-ジオール
【0195】
【化37】
【0196】
実施例9d)におけるようにして、実施例9c)に記載した化合物1gと(4-メルカプトフェニル)ボロン酸から、トルエンとエタノールの混合物の中で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと、塩化リチウムと、2モルの炭酸ナトリウム水溶液の存在下にて表題の化合物を478mg調製した。
【0197】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=7.14〜7.32 m (8H);4.42 s (1H);4.30 dbr (1H);3.40〜3.60 m (4H);1.05 s (3H);0.88 s (3H);0.54 s (3H)。
【0198】
b)(11β,17β)-17-ヒドロキシ-17-(ペンタフルオロエチル)-11-(4'-スルファニルビフェニル-4-イル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン
【0199】
【化38】
【0200】
実施例1c)におけるようにして、13a)で調製した化合物200mgから、メタノールの中で濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を103mg調製した。
【0201】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=7.20〜7.38 m (6H);7.11 d (2H);5.78 sbr (1H);4.42 dbr (1H);0.61 s (3H)。
【実施例14】
【0202】
4'-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]-N,N-ジメチルビフェニル-4-スルホンアミド
【0203】
【化39】
【0204】
a)4'-[(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5,17-ジヒドロキシ-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,4,5,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-11-イル]-N,N-ジメチルビフェニル-4-スルホンアミド
【0205】
【化40】
【0206】
実施例9d)におけるようにして、実施例9c)に記載した化合物300mgと[4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]フェニル]ボロン酸から、トルエンとエタノールの混合物の中で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムと、塩化リチウムと、2モルの炭酸ナトリウム水溶液の存在下にて表題の化合物を235mg調製した。
【0207】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.83 d (2H);7.73 d (2H);7.52 d (2H);7.33 d (2H);4.47 s (1H);4.39 dbr (1H);3.40〜3.60 m (4H);2.75 s (6H);1.06 s (3H);0.88 s (3H);0.57 s (3H)。
【0208】
b)4'-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]-N,N-ジメチルビフェニル-4-スルホンアミド
【0209】
【化41】
【0210】
実施例1c)におけるようにして、14a)で調製した化合物230mgから、メタノールの中で半濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を113mg調製した。
【0211】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=7.83 d (2H);7.72 d (2H);7.55 d (2H);7.30 d (2H);5.80 sbr (1H);4.52 dbr (1H);2.75 s (6H);0.64 s (3H)。
【実施例15】
【0212】
4-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]-N,N-ジメチルベンゼンスルホンアミド
【0213】
【化42】
【0214】
a)4-[(5R,8S,11R,13S,14S,17S)-5,17-ジヒドロキシ-5',5',13-トリメチル-17-(ペンタフルオロエチル)-1,2,4,5,6,7,8,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン-3,2'-[1,3]ジオキサン]-11-イル]-N,N-ジメチルベンゼンスルホンアミド
【0215】
【化43】
【0216】
塩化ジイソプロピルマグネシウムを含むジエチルエーテルの2モル溶液5.1mlを、冷却(-10℃)しながら10mlのTHFで希釈した。次に、n-ブチルリチウムを含むヘキサンの2.5モル溶液8.12mlを-10℃にて30分間かけて一滴ずつ添加した。それをさらに2時間にわたって撹拌した後、15.1mgのCuClを添加した。さらに5分間にわたって撹拌した後、実施例1a)に記載した物質500mgを5mlのTHFに溶かした溶液を添加した。それを-10℃にてさらに3時間にわたって撹拌した後、ゆっくりと23℃まで加熱した。それを23℃にてさらに12時間にわたって撹拌した。次に、外側を冷却しながら飽和NH
4Cl水溶液をこの反応混合物に添加した。それをさらに30分間にわたって撹拌した後、酢酸エチルで数回抽出した。1つにまとめた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。粗生成物をシリカゲル・クロマトグラフィによって精製した。すると表題の化合物が214mg得られた。
【0217】
1H-NMR (300MHz, CDCl
3):δ=7.65 d (2H);7.40 d (2H);4.45 s (1H);4.38 dbr (1H);3.40〜3.60 m (4H);2.69 s (6H);1.03 s (3H);0.89 s (3H);0.49 s (3H)。
【0218】
b)4-[(11β,17β)-17-ヒドロキシ-3-オキソ-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-11-イル]-N,N-ジメチルベンゼンスルホンアミド
【0219】
【化44】
【0220】
実施例1c)におけるようにして、15a)で調製した化合物100mgから、メタノールの中で半濃硫酸と反応させることによって表題の化合物を74mg調製した。
【0221】
1H-NMR (400MHz, CDCl
3):δ=7.69 d (2H);7.38 d (2H);5.80 sbr (1H);4.04 dbr (1H);2.68 s (6H);0.52 s (3H)。
【実施例16】
【0222】
ヒトのプロゲステロン受容体Aまたはプロゲステロン受容体BとMTV-LUC受容体コンストラクトとが安定にトランスフェクトされたヒト神経芽細胞腫細胞(SK-N-MC細胞)におけるプロゲステロン受容体拮抗作用
【0223】
アゴニスト効果率を決定するため、ヒトのプロゲステロン受容体Bを発現するプラスミド(pRChPR-B-neo)またはヒトのプロゲステロン受容体Aを発現するプラスミド(pRChPR-A-neo)とレポータ・コンストラクトを発現するプラスミド(pMMTV-LUC)とが安定にトランスフェクトされたSK-N-MC細胞(ヒト神経芽細胞腫細胞)を、増加していく量の各試験化合物(0.01ナノモル/リットル、0.1ナノモル/リットル、1ナノモル/リットル、10ナノモル/リットル、100ナノモル/リットル、1マイクロモル/リットル)の存在下で、または不在下で、24時間にわたってインキュベートした。レポータ遺伝子を誘導する正の対照として、細胞を合成ゲスターゲンであるプロメゲストン(0.01ナノモル/リットル、0.1ナノモル/リットル、1ナノモル/リットル、10ナノモル/リットル、100ナノモル/リットル、1マイクロモル/リットル)で処理した。拮抗活性を決定するため、細胞を0.11ナノモル/リットルのプロメゲストンで処理し、それに加えて増加していく量の各試験化合物(0.01ナノモル/リットル、0.1ナノモル/リットル、1ナノモル/リットル、10ナノモル/リットル、100ナノモル/リットル、1マイクロモル/リットル)で処理した。LUCレポータ遺伝子(LUC=ルシフェラーゼ)の活性を細胞ライセートの中で決定し、RLU(相対光単位)として測定した。全測定値を効果率(%)およびEC
50またはIC
50の濃度として与える。
【0224】
11β-(4-アセチルフェニル)-20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オンと20,20,21,21,21-ペンタフルオロ-17-ヒドロキシ-11β-[4-(ヒドロキシアセチル)フェニル]-19-ノル-17α-プレグナ-4,9-ジエン-3-オン(これらは、WO 98/34947とWO 2008/058767からの非常に強力であって好ましい例である)を比較用化合物として、試験化合物とともに試験した。
【0225】
a)アゴニスト活性:
【0226】
上記の試験化合物はどれもアゴニスト活性を示さなかった。
【0227】
b)拮抗活性:
【0228】
上記の試験化合物はすべて100%の拮抗効果率を示す。
【0229】
化合物の拮抗効果率を表1に示す。
【0230】
【表1】
【実施例17】
【0231】
メスのラットでの流産試験
【0232】
プロゲステロンとプロゲステロン受容体の作用は、哺乳動物で妊娠または懐胎がうまくいくための基本的な前提条件である。本発明による化合物のプロゲステロン拮抗作用を、妊娠したラット(1つの群に6匹)で、従来通りの居住条件と餌条件にて交接後5日目〜7日目に試験した。
【0233】
手作業でうまく交配させた後、妊娠したラット(妊娠1日目=d1 p.c.に膣スミアの中に精子が存在)をランダム化し、治療群と対照群に分けた。次に、各ラットに0.15、0.5、1.5、5mg/kgの試験化合物、または1.0mg/kgの賦形剤(安息香酸ベンジル/ヒマシ油:1+4 [v/v])を、皮下または経口で5日目〜7日目(d5〜d7 p.c.)に毎日与えた。
【0234】
9日目(d9 p.c.)に剖検を実施した。プロゲステロン受容体の拮抗作用の特徴として、子宮に着床部位が存在しているかどうかを調べた。9日目(d9 p.c.)に着床部位が完全に不在の場合や、病的な着床部位、出血した着床部位、それ以外の異常な着床部位が存在している場合には、流産と判断した。試験の結果を表3に示す。
【0235】
【表2】
【実施例18】
【0236】
ヒト肝臓ミクロソーム(HLM)における(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンと(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(メチルスルホニル)-ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンの代謝安定性
【0237】
分離したヒト肝臓ミクロソーム(HLM)を用いて一般式(I)の化合物の代謝安定性を評価した。
【0238】
2.4mlのHLM溶液(0.5mg/mlのタンパク質含有)と、30μlの試験化合物(最終濃度1μM)と、0.6mlの補因子混合物(=3IUのグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼと、14.6mgのグルコース-6-リン酸と、1.2mgのNADPとからなるNADPH生成系)を37℃にて100mMのリン酸緩衝液(pH7.4)の中で用いてインキュベーションを実施した。サンプルを6つの時点(2〜60分)で採取し、同量のメタノールを用いて沈殿させ、使用した試験物質が上清の中にどれだけ回収されたかをLC-MS/MS分析によって調べた。肝臓ミクロソーム調製物に含まれる物質の固有クリアランスは、その物質の分解に関する半減期から計算することができる。それと、よく撹拌したモデルに従うさまざまな生理学的特性とに基づき、段階Iの反応に関する(代謝)生体内クリアランスを予測することができる。試験化合物である(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンと(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4'-(メチルスルホニル)-ビフェニル-4-イル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンに関して予測されたヒトでの(代謝)生体内クリアランスは非常に低く、それぞれ0.1リットル/時/kgと0.01リットル/時/kg未満であった。
【実施例19】
【0239】
Caco-2細胞内への(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンの浸透
【0240】
浸透研究のため、1ml当たり300,000個のCaco-2細胞を、細胞培地(1.5ml)の中に入れた12ウエルの細胞培養プレート内のトランスウエル・クリア・フィルタ・インサート(ポリエステル;空孔のサイズ0.4μm)上で、37℃、5%CO
2、95%大気湿度にて、少なくとも14日間にわたって培養した。試験の前に細胞単層の“密集度”を確認するため、経上皮抵抗(TEER値)を測定した。その値は300Ωcm2よりも大きくなければならない。次に、細胞培地を熱い輸送緩衝液(0.5ml先端、1.5ml基底外側)と交換し、細胞をその中で5分間にわたって平衡させた。浸透試験は、物質の濃度を2μMにして2回実施した。実験開始時に先端区画から100μlを採取し(Ap0分)、100μlの氷冷停止溶液をただちに添加した。次にフィルタを軽く振盪しながら37℃にて90分間にわたってインキュベートした後、先端側から再び100μl(Ap90分)を、基底外側から400μl(Bas90分)を採取し、それぞれに同量の停止溶液を添加した。4倍の体積の停止溶液/輸送緩衝液(1+1)でサンプルをさらに希釈した後、-20℃にて一晩にわたって沈殿させ、上清をLCMS/MSによって分析した。物質のPapp値を以下の式から計算した。
【数1】
V
res:レセプター側のバッファの体積;A:フィルタの面積=1cm
2;C
t0,don:ドナー側の物質の濃度;ΔC
res/Δt:レセプター側の物質の濃度の時間変化
【0241】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンは、このエッセイにおいて101nm/秒という非常に高い浸透値を示した。
【実施例20】
【0242】
麻酔したビーグル犬の心臓血管系に対する作用(ECGを含む)の研究
【0243】
(11β,17β)-17-ヒドロキシ-11-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-17-(ペンタフルオロエチル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンをPEG 400とHP-β-CDの混合物(60%のPEG 400と40%のHP-β-CD:30%)に溶かし、麻酔したメスのビーグル犬に静脈内投与した。イヌの体重は9kg超であった。1つの群の3匹のイヌを処理し、それに加えて対照群の3匹のイヌを処理した。0.1、0.33、1mg/kgの物質を連続した3回の輸液で投与した。1回の輸液は30分間である。賦形剤の最大量は、30分間で0.4ml/kgであった。さまざまな時点で血液サンプルをイヌから採取した。最高血漿レベル(3匹のイヌ全部の平均値)は、3回目の輸液終了時の1650ng/mlであった。
【0244】
試験した投与範囲では、対照と比べて心臓血管系に対する生物学的な関連効果(肺動脈圧、全身動脈血圧、心拍数、ECG)は観察されなかった。
-アルキルではない)或いは、その化合物の分離された立体異性体、その化合物の塩、その化合物の溶媒和物、又は前記塩の溶媒和物(ただしその中に、これらの物のあらゆる結晶形態が含まれる)により、上記した課題を解決する。