特許第6130090号(P6130090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6130090
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ドラム缶風呂
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/06 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   A47K3/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-35292(P2017-35292)
(22)【出願日】2017年2月27日
【審査請求日】2017年2月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517069424
【氏名又は名称】中澤 章浩
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】中澤 章浩
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭5−5301(JP,Y1)
【文献】 実公昭2−3981(JP,Y1)
【文献】 特開2004−73487(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3203584(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02−4/00
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム缶を上下に二分割した一方側の底板又は固着天板を有する第1分割缶体と、他方側の第2分割缶体とからなり、
周面に焚口を開設した第2分割缶体を燃焼室として、その上に前記底板又は固着天板を下側にした第1分割缶体を湯船として積み重ね可能であり、
第1分割缶体の下端側と第2分割缶体の上端側の一方又は両方に、積み重ねた両分割缶体相互の横ずれを防止する係止部が突設され、
第1分割缶体内に収容した水を第2分割缶体内での燃料の燃焼熱で湯沸かしするように構成されてなるドラム缶風呂。
【請求項2】
第2分割缶体の周面上部に排煙口が設けられてなる請求項1に記載のドラム缶風呂。
【請求項3】
第1分割缶体の上端周縁に、ゴム又はプラスチック製の周縁カバーが装着されてなる請求項1又は2に記載のドラム缶風呂。
【請求項4】
第1分割缶体の下部に止水コック付きの排水口が設けられてなる請求項1〜3のいずれかに記載のドラム缶風呂。
【請求項5】
第1分割缶体内に装填する木製の落とし蓋を付属すると共に、該落し蓋に係合し得る浮上がり防止片が第1分割缶体の内周面下部に設けられてなる請求項1〜4のいずれかに記載のドラム缶風呂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に幼稚園児や保育園児の如き小児用に適する簡易な組立式のドラム缶風呂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、キャンプ地や災害被災地等の屋外で用いる簡易な風呂として、ドラム缶風呂が多用されている。このドラム缶風呂は、コンクリートブロックや煉瓦、岩石等を組んで造ったかまどの上に、使用済みのドラム缶を縦に載せ、該ドラム缶に収容した水をかまどに入れた薪や炭等の燃料の燃焼熱で加熱して湯沸かしするものであり、火傷防止のためにドラム缶内に装填した簀の子のような木製の落とし蓋に乗る形で入浴するのが一般的である(非特許文献1,2)。また、ドラム缶風呂のドラム缶や調理器具を載せて加熱するための専用の火鉢(かまど)も提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】インターネット・ウエブ・独立行政法人国立青少年教育振興機構・ドラム缶風呂いい湯だな!、検索日:2017年2月10日、http://www.niye.go.jp/navi/play/32905439451bla69ea994b20130607182342/
【非特許文献2】インターネット・ウエブ・公益財団法人ブルーシー・アンド・グリーンランド財団・大自然の中でドラム缶風呂を楽しもう!、検索日:2017年2月10日、http://www.bgf.or.jp/machirepo/18
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−237514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来汎用のドラム缶風呂では、ドラム缶の内高が概して800〜900mm程度であるため、幼稚園児や保育園児の如き小児には湯船として深過ぎるという問題があることに加え、かまどには入浴者を含む湯船の大きな重量が加わるから、コンクリートブロックや煉瓦、岩石等でしっかりと崩れないように組み上げるのに多大な労力を要する上、湯が溢れたり零れたりした際にかまどの火が消える懸念もあり、またドラム缶が嵩張って運搬や輸送をしにくいという難点もあった。一方、特許文献1のような専用の火鉢を用いる場合は、かまどを組む手間は省けても火鉢自体がコスト高になる。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、ドラム缶風呂として、幼稚園児や保育園児の如き小児用に適し、しかも従来のようにコンクリートブロックや煉瓦、岩石等でかまどを組む必要がない上、湯が溢れたり零れたりしても湯沸かしの火が消える懸念はなく、嵩張らず運搬や輸送が容易なものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係るドラム缶風呂は、ドラム缶Dを上下に二分割した一方側の底板12又は固着天板13を有する第1分割缶体D1と、他方側の第2分割缶体D2とからなり、周面に焚口20を開設した第2分割缶体D2を燃焼室2として、その上に底板12又は固着天板13を下側にした第1分割缶体D1を湯船1として積み重ね可能であり、第1分割缶体D1の下端側と第2分割缶体D1の上端側の一方又は両方に、積み重ねた両分割缶体D1,D2相互の横ずれを防止する係止部3が突設され、第1分割缶体D1内に収容した水Wを第2分割缶体D2内での燃料Fの燃焼熱で湯沸かしするように構成されてなる。
【0008】
請求項2の発明は、上記請求項1のドラム缶風呂において、第2分割缶体D2の周面上部に排煙口4が設けられてなる構成としている。
【0009】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2のドラム缶風呂において、第1分割缶体D1の上端周縁1aに、ゴム又はプラスチック製の縁カバー5が装着されてなる構成としている。
【0010】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのドラム缶風呂において、第1分割缶体D1の下部に止水コック6a付きの排水口6が設けられてなる構成としている。
【0011】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかのドラム缶風呂において、第1分割缶体D1内に装填する木製の落とし蓋7を付属すると共に、該落し蓋7に係合し得る浮上がり防止片8が第1分割缶体D1の内周下部に設けられてなる構成としている。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。請求項1の発明に係るドラム缶風呂では、ドラム缶Dを上下に二分割した一方側の第1分割缶体D1により、元のドラム缶Dの底板12又は固着天板13を浴底とした湯船1を構成するから、ドラム缶D全体を湯船とする場合に比較し、浴槽が浅くなって幼稚園児や保育園児の如き小児でも安全に入浴できる。そして、他方側の第2分割缶体D2は周面に焚口20を有する燃焼室2とし、その上に第1分割缶体D1からなる湯船を積み重ねて使用するから、元のドラム缶Dの全体を無駄なく再利用でき、しかも従来のようなコンクリートブロックや煉瓦、岩石等でかまどを組むのに費やす多大な労力及び時間を解消できる上、燃焼室2の周囲が第2分割缶体D2の周壁で囲まれていることで高い加熱効率が得られる。また、両分割缶体D1,D2が係止部3によって横ずれのない安定した積み重ね状態に維持されるから、入浴時に両分割缶体D1,D2がずれて倒壊するような事故を確実に防止できると共に、入浴時に湯が溢れたり零れたりしても燃焼室2内には入り込みにくく、燃焼室2内の燃焼中の燃料Fに湯がかかって不用意に消火してしまう懸念はないため、濡れた燃料Fの入替えや再着火のための火起こし等の手間が不要になる。更に、ドラム缶Dが上下に二分割されているから、嵩張らず、運搬や輸送が容易であり、乗用車内やトラック荷台に対する積み下ろしも楽に行える。
【0013】
請求項2の発明によれば、第2分割缶体D2の周面上部に排煙口4を備えるから、燃焼室2内で発生した燃焼ガス及び煙を効率よく外部へ排出できると共に、その排出によって焚口20からの空気流入が促進され、もって高い燃焼効率が得られる。
【0014】
請求項3の発明によれば、第1分割缶体D1の上端周縁にゴム又はプラスチック製の縁カバー5が装着されているから、該上端周縁1aに触れて怪我をする危険性がなく、入浴者が該上端周縁1aを掴むことで湯船1に出入りし易くなる。
【0015】
請求項4の発明によれば、第1分割缶体D1の下部に止水コック6a付きの排水口6を備えるから、使用中に湯船1の水量を減らしたり、使用後の湯を排出したりすることが容易になる。
【0016】
請求項5の発明によれば、湯船1の底に触れて火傷するのを防ぐために木製の落とし蓋7を用いるが、該落し蓋7を第1分割缶体D1の内周下部の浮上がり防止片8に係合して湯船1の底に定置できるから、出入浴の際に該落し蓋7が不用意に浮き上がって足裏を火傷するような事態を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るドラム缶風呂の斜視図である。
図2】同ドラム缶風呂の材料とするドラム缶の正面図である。
図3】同ドラム缶風呂の湯船を構成する第1分割缶体を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図4】同ドラム缶風呂の燃焼室を構成する第2分割缶体を示し、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図5】同ドラム缶風呂の組立操作を示す側面図である。
図6】同ドラム缶風呂に用いる落とし蓋を示し、(a)は一部破断平面図、(b)は側面図である。
図7】同ドラム缶風呂の湯沸かし状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るドラム缶風呂の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、ドラム缶には、抽出口付きの天板がドラム缶本体の上端開口部に周縁でカーリングして加締固着されたクローズドタイプと、天板がドラム缶本体の上端開口部に締結バンドを介して着脱可能に嵌装されたオープンタイプとがあるが、本実施形態ではクローズドタイプを用いたドラム缶風呂を例示している。
【0019】
このドラム缶風呂は、図1で示すように、燃焼室2を構成する円筒状の第2分割缶体D2上に、湯船1を構成する円筒状の第1分割缶体D1が同心状に積み重ねられており、焚口20から燃焼室2内へ投入した薪や炭等の燃料を燃やし、その燃焼熱によって湯船1に収容した水Wを加熱して湯沸かしするようになっている。
【0020】
ここで、両分割缶体D1,D2は、図2に示すドラム缶Dを胴部11の上下リブ11a,11aの間において水平カット線Cで分割したものから構成されている。すなわち、第1分割缶体D1が上下に分割したドラム缶Dの下側部分よりなり、第2分割缶体D2が同ドラム缶Dの上側部分よりなる。
【0021】
第1分割缶体D1は、図3(a)(b)で示すように、元のドラム缶Dの底板12を浴底としており、分割した端縁である上端周縁1aが外側へカーリング加工され、そのカーリング部分を包み込むように、ゴム又はプラスチック製の縁カバー5が接着又は嵌合によって装着される一方、下端側の周方向に等配する複数箇所(図では4箇所)に、外周面へのアングル材の溶接による係止部3が下向きに突設されている。また、この第1分割缶体D1の下部には、止水コック6a付きの排水口6が設けられると共に、L字状金具からなる一対の浮上がり防止片8が内周の径方向対向位置に溶接固着されている。なお、第1分割缶体D1の下端周縁1bは、元のドラム缶Dにおける底板12の加締固定で外側へカーリングされた状態になっている。
【0022】
第2分割缶体D2は、図4(a)(b)で示すように、元のドラム缶Dの固着天板13が底側になるように上下を逆にして用いており、分割した端縁である上端周縁2aが外側へカーリング加工されている。そして、この第2分割缶体D2の周面には、下部側の切欠による矩形の焚口20が形成されると共に、該焚口20とは径方向反対側の上部に位置して、外側へ突出する円筒状の排煙口4が複数個(図では3個)のL字金具41を介してねじ止め固着されている。なお、固着天板13には抽出口14及び通気口15の孔があるが、共にキャップ14a,15aにて封鎖されている。また、第2分割缶体D2の下端周縁2bは、元のドラム缶Dにおける該固着天板12の加締固定で外側へカーリングされた状態になっている。
【0023】
ドラム缶風呂を組み立てるには、図5に示すように、第2分割缶体D2上に第1分割缶体D1を積み重ねるだけでよい。この積み重ねにより、第1分割缶体D1の下端側から下方突出する各係止部3が第2分割缶体D2の上端側に外側から係合するから、両分割缶体D1,D2が同心状の積み重ね状態で相互に横ずれ不能に保持され、第1分割缶体D1のカーリングされた下端周縁1bと第2分割缶体D2の同じくカーリングされた上端周縁2aとが接合することになる。
【0024】
図6(a)(b)は、入浴者が湯船1の底に触れて火傷するのを防ぐために用いる木製の落とし蓋7を示す。この落とし蓋7は、六角形の各辺に対応する6本の角材71と、該六角形の対角線に沿う1本の角材72とで構成される下枠7b上に、複数枚(図では7枚)の帯板材73を並行配列でビス止めすることで、外郭円形の簀の子板7aを形成している。そして、下枠7bにおける六角形の対角線に沿う角材72の両端部と、その各片側に隣接する角材71の端部とにわたり、上面側一部を切除することにより、該下枠7bと簀の子板7aの下面との間で径方向両側一対の係止溝70を形成している。
【0025】
このような落とし蓋7は、図7の使用状態で示すように、湯船1内に落とし込むが、その各係止溝70に第1分割缶体D1の内側下部の浮き上がり防止片8を係合させることにより、水W(湯)が入った状態でも浮き上がることなく該湯船1の内底部に定置される。その定置操作は、係止溝70の側方で下枠7bの外縁と簀の子板7aの外縁との間隔が大きい位置、つまり簀の子板7aの上面に表示した三角マークの位置P1に、浮き上がり防止片8が配置する回転姿勢で落とし蓋7を湯船1内に落とし込んだのち、浮き上がり防止片8が係止溝70の位置、つまり簀の子板7aの上面に表示した長方形マークの位置P2に来るように、落とし蓋7を回動させればよい。
【0026】
上記構成のドラム缶風呂を使用するには、図7に示すように、第2分割缶体D2からなる燃焼室2内に薪や炭等の燃料Fを装填すると共に、この第2分割缶体D2上に積み重ねた第1分割缶体D1からなる湯船1の内底に落とし蓋7を定置した上で、該湯船1内に適量の水Wを収容し、燃焼室2内の燃料Fに着火することにより、その燃焼熱で湯船1内の水Wを加熱して湯沸かしし、湯が適温(一般に40℃前後)になった段階で燃料Fの火勢を弱め、順次に湯船1に漬かって入浴すればよく、入浴者が幼稚園児や保育園児の如き小児の場合には数人が一緒に入浴できる。そして、この入浴に際し、湯量が多過ぎて湯船1から溢れそうな場合は、排水口6の止水コック6aを開いて適正水位まで湯抜きすればよい。また、使用後の湯を湯船1から排出する際にも、該排水口6の止水コック6aを開いて簡単に湯抜きできる。なお、このドラム缶風呂にあっては、湯船1として湯と入浴者を含む第1分割缶体D1側の重量を第2分割缶体D2の上端周縁2aで支承するが、例示のように該上端周縁2aを外側へカーリングした形態とすることで、第2分割缶体D2側の支持強度を充分に確保できる。
【0027】
このようなドラム缶風呂では、湯船1がドラム缶Dを上下に二分割した一方側の第1分割缶体D1にて構成されて浅いため、幼稚園児や保育園児の如き小児でも安全に入浴できる。また、両分割缶体D1,D2が係止部3によって横ずれのない安定した積み重ね状態に維持されるから、入浴時に両分割缶体D1,D2がずれて倒壊するような事故を確実に防止できる。そして、ドラム缶Dを上下に二分割した他方側の第2分割缶体D2を燃焼室2とするため、元のドラム缶Dの全体を無駄なく再利用できる上、ドラム缶風呂の組み立てには第2分割缶体D2上に第1分割缶体D1を積み重ねるだけでよいから、従来のようなコンクリートブロックや煉瓦、岩石等でかまどを組むのに費やす多大な労力及び時間を解消できる。更に、燃焼室2の周囲が第2分割缶体D2の周壁で囲まれていることで高い加熱効率が得られると共に、実施形態のように第2分割缶体D2の周面上部に排煙口4を設けることで、燃焼室2内で発生した燃焼ガス及び煙を効率よく外部へ排出でき、その排出に伴って焚口20からの空気流入が促進され、高い燃焼効率が得られる。
【0028】
加えて、このドラム缶風呂では、湯船1の真下に燃焼室2が位置して、且つ該燃焼室2の周囲が湯船1の外周と同径の周壁で囲まれているから、入浴時に湯が溢れたり零れたりしても燃焼室2内には入り込みにくく、燃焼室2内の燃焼中の燃料Fに湯がかかって不用意に消火してしまう懸念はないので、従来のかまどのような濡れた燃料Fの入替えや再着火のための火起こし等の手間も不要となる。一方、このドラム缶風呂においては、ドラム缶Dが上下に二分割されているために嵩張らず、運搬や輸送が容易であり、乗用車内やトラック荷台に対する積み下ろしも楽に行える。
【0029】
なお、このようなドラム缶風呂では入浴者の足等が湯船の底に触れて火傷するのを防ぐために木製の落とし蓋を用いるのが一般的であるが、実施形態のように該落し蓋7を第1分割缶体D1の内周下部の浮上がり防止片8に係合して湯船1の底に定置させることで、出入浴の際に該落し蓋7が不用意に浮き上がって足裏を火傷するような事態を未然に防止できる。また、実施形態のように第1分割缶体D1の上端周縁にゴム又はプラスチック製の縁カバー5を装着する構成によれば、該上端周縁1aに触れて怪我をする危険性がないから、入浴者が該上端周縁1aを掴むことで湯船1に出入りし易くなる。
【0030】
上記実施形態のドラム缶風呂は原材としてクローズドタイプのドラム缶を利用したものであるが、本発明のドラム缶風呂にはオープンタイプのドラム缶も利用可能である。オープンタイプのドラム缶の場合、湯船1とする第1分割缶体D1には実施形態と同様に元のドラム缶Dの底板12を有する側を用いることになるが、他方側の燃焼室2とする第2分割缶体D2としては、天板を締結バンドで止着した状態で用いるよりも、該天板を外した状態つまり底のない形態で用いることが推奨される。一方、クローズドタイプのドラム缶Dのドラム缶を利用する場合、湯船1とする第1分割缶体D1として実施形態とは逆に固着天板13を有する側を用いることも可能である。しかして、固着天板13には抽出口14及び通気口15〔図4(b)参照〕が設けてあるため、湯船1の底にする上でこれら抽出口14及び通気口15をキャップ14a,15aで塞ぐ必要があるが、これらの一方に排水管を接続して外部へ引き出し、その引き出し部分を止水コック6a付きの排水口6とすることもできる。
【0031】
積み重ねた両分割缶体D1,D2相互の横ずれを防止する係止部3は、実施形態では第1分割缶体D1の下端側の外周面に対するアングル材の溶接による複数の突片状のもので構成しているが、例えば環状突縁や弧状突縁等の種々の形状を採用できると共に、実施形態とは逆に第2分割缶体D2の上端側に設けたり、両分割缶体D1,D2の両方に設けてもよい。また、第1分割缶体D1の下端側に設ける係止部3は、第2分割缶体D2の上端側の内外周のいずれに係合するものでもよい。
【0032】
落し蓋7は、例示した簀の子状のものに限らず、例えば複数の孔を有する円板状のものでもよい。しかして、実施形態では第1分割缶体D1に設けた浮き上がり防止片8が簀の子板7aと下枠7bとの間の係止溝70に係合する構造を例示したが、該浮き上がり防止片8が落し蓋7の上面側に係止する構造でもよい。後者の構造では、落し蓋7の板部の周辺に切欠部や非円弧部を設け、該落し蓋7を湯船1に落とし込む際に浮き上がり防止片8をこれら切欠部や非円弧部を通過させ、もって浮き上がり防止片8が落し蓋7の板部より上位になった状態で、落し蓋7を回動させて板部の縁の上面側に係止させればよい。
【0033】
その他、本発明のドラム缶風呂では、両分割缶体D1,D2の高さ比率、第2分割缶体D2における焚口20の開口形状と大きさ、排煙口4の径及び形状等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【符号の説明】
【0034】
D ドラム缶
D1 第1分割缶体
D2 第2分割缶体
F 燃料
W 水
1 湯船
1a 上端周縁
2 燃焼室
3 係止部
4 排煙口
5 縁カバー
6 排水口
6a 止水コック
7 落とし蓋
8 浮上がり防止片
12 底板
13 固着天板
【要約】
【課題】ドラム缶風呂として、小児用に適し、かまどを組む必要がなく、湯が溢れたり零れたりしても湯沸かしの火が消えず、嵩張らず運搬や輸送が容易なものを提供する。
【解決手段】ドラム缶Dを上下に二分割した一方側の湯船1とする第1分割缶体D1と、他方側の燃焼室2とする第2分割缶体D2とからなり、周面に焚口20を開設した第2分割缶体D2の上に第1分割缶体D1を積み重ね可能であり、積み重ねた両分割缶体D1,D2相互の横ずれを防止する係止部3を備え、第1分割缶体D1内に収容した水Wを第2分割缶体D2内での燃料Fの燃焼熱で湯沸かしするように構成されてなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7