特許第6130091号(P6130091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 半澤 薫和の特許一覧

<>
  • 特許6130091-木造建物土台のアンカーボルト貫通孔 図000003
  • 特許6130091-木造建物土台のアンカーボルト貫通孔 図000004
  • 特許6130091-木造建物土台のアンカーボルト貫通孔 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6130091
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】木造建物土台のアンカーボルト貫通孔
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   E02D27/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-41177(P2017-41177)
(22)【出願日】2017年3月4日
【審査請求日】2017年3月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504451690
【氏名又は名称】半澤 薫和
(74)【代理人】
【識別番号】100119275
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 信明
(72)【発明者】
【氏名】半澤 薫和
(72)【発明者】
【氏名】半澤 和夫
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6061359(JP,B1)
【文献】 特開2015−169067(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3194358(JP,U)
【文献】 特開2013−076243(JP,A)
【文献】 特開2004−263479(JP,A)
【文献】 特開2006−016959(JP,A)
【文献】 特開2005−090558(JP,A)
【文献】 特開2014−098268(JP,A)
【文献】 特開2004−036182(JP,A)
【文献】 特開2001−280328(JP,A)
【文献】 米国特許第5505033(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/34
E04B 1/41
E04B 1/48
E04H 9/02
F16B 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建物の基礎と土台との間に重ね合わされた複数枚の滑り平板からなる摩擦減震装置が介挿される摩擦減震システムにおいて、
前記基礎に立設されたアンカーボルトの前記土台を貫通するアンカーボルト貫通孔は上から順に該アンカーボルトに螺合する締付ナットを収容する座彫部、第1の貫通孔および第2の貫通孔からなり、
前記第1の貫通孔の直径は前記アンカーボルトの外径よりも大きく形成されて貫通後における該第1の貫通孔は該アンカーボルトに対して所定のクリヤランスを有し、
前記第2の貫通孔の直径は前記第1の貫通孔の直径よりも大きく形成され、
前記座彫部の直径は前記第2の貫通孔の直径よりも大きく形成されるとともに、前記締付ナットの下部に位置するワッシャーの外径よりも大きく形成されている、ことを特徴とする木造建物土台のアンカーボルト貫通孔。
【請求項2】
前記第1の貫通孔の直径は前記アンカーボルトの外径よりも略6mm大きく形成され、
前記第2の貫通孔の直径は前記アンカーボルトの外径よりも9mm以上大きく形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の木造建物土台のアンカーボルト貫通孔。
【請求項3】
前記第1の貫通孔は前記第2の貫通孔と同一径で削孔された貫通孔に鍔付きの鞘管が押入されて形成され、該鍔は前記座彫部および該貫通孔の境界部に形成される該座彫部の底面に当接し、該鞘管の外径は該第2の貫通孔の孔径に一致する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の木造建物土台のアンカーボルト貫通孔。
【請求項4】
前記第1の貫通孔の長さおよび前記第2の貫通孔の長さは略同一である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の木造建物土台のアンカーボルト貫通孔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物の基礎と土台との間に摩擦減震装置が介挿される摩擦減震システムにおける土台のアンカーボルト貫通孔に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的軽量な小規模の木造建物の基礎と土台との間に介挿される減震装置としては、例えば、特許文献1や特許文献2に関示の技術がある。
【0003】
特許文献1に開示の技術は、「住宅の基礎と木製土台との間に簡易に設置できて地震等の振動を抑制できる減振装置を提供すること。」を課題としていて、 その解決手段を「基礎上に合成樹脂製の介設板を固定しかつこの介設板上に換気部材を移動自在に載置するとともに、木製土台の貫通孔の上端部に大径部を設けてこの大径部の底部に転動部材を配置し、上記大径部の内径より小さい外径を有する押え金具を上記転動部材上に配置して押え金具の上部側でアンカーボルトにナットを接続した減振装置。」としている。
【0004】
特許文献2に開示の技術は、「簡単な構造で施工性に優れ、中規模や大規模地震に有効に機能する摩擦減震装置であって、滑り面が1つであっても2つの場合と同様の減震効果を得ることができる摩擦減震装置を提供する。」ことを課題としていて、その解決手段を「土台または基礎に接触する円盤状の第1の滑り平板と、基礎または杭頭に接触する円盤状の第2の滑り平板とからなり、前記第2の滑り平板の表面には略等脚台形を呈する1つ以上のリング状のリング突条が凸設される一方、該第1の滑り平板の底面には断面が下方向に広がる略等脚台形を呈し該リング突条に対置して該リング突条を跨るように被包する略等脚台形でリング状のリング被包溝が刻設され、前記第1の滑り平板はその厚さを調整する嵩上げ部を有する、構成」としている。
【0005】
ところで、上記減震装置等においては、地震等の横荷重をスムーズに減震装置に伝達して有効にその機能を発揮させる必要があるが、木造建物土台のアンカーボルト貫通孔の孔径については建築基準法上の制約がある。すなわち、建築基準法施行令第42条第2項では、「土台は、基礎に緊結しなければならない。」と規定されているため、アンカーボルト貫通孔の孔径はアンカーボルトに対して所定のクリアランスとしなければならないが、実務上、木造建物ではそのクリアランスを6mm(アンカーボルト貫通孔の孔径=アンカーボルト径+6mm)以下としている。ここで、アンカーボルト径とはアンカーボルトにおける最も大きな外径をいう。
【0006】
このような事情を背景にして、地震等の横荷重をスムーズに摩擦減震装置に伝達して有効にその機能を発揮させるための技術として特許文献3に開示の技術がある。この技術は「ボルトの緩みを防止するとともにボルト頭部の傾きをフリーとすることができるばね座金を提供し、併せてボルト頭部の首振り機構を提供する。」ことを課題としていて、その解決手段を「一体成形の薄鋼板製ばね座金であって、外観が円錐台形を呈し上面にはその中心部に締結用のボルトが貫通する貫通孔が貫設され前記ナットの非締め付け時には円錐台形の斜面は内側に中折れして前記被固定物または前記平座金側から順に勾配の異なる第1の斜面および第2の斜面が形成され、前記ボルトに所定軸力を与える前記ナットの締め付け時には前記第1の斜面が弾性変形して前記被固定物または前記平座金に略密着し、該所定軸力を超えるときは前記第2の斜面が弾性変形して該被固定物または該平座金に接近する、構成とし、この円錐台形ばね座金を基礎と土台を締め付けるアンカーボルト頭部に挿入した。」構成としている。なお、特許文献2および特許文献3に関示の技術の発明者は、本願出願人である。
【0007】
【特許文献1】特開2001−115681号公報
【特許文献2】特開2016−166518号公報
【特許文献3】特許第6061359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示の技術は、木造建物基礎から立設されるアンカーボルトが貫通する土台のアンカーボルト貫通孔については言及しておらず、それ故に、アンカーボルト貫通孔は建築基準法施行令第42条第2項の制約下における技術と考えられる。一方、特許文献3に開示の技術は、アンカーボルト頭部の首振りを許容するものであるが、アンカーボルト自体の曲がりは、建築基準法に規定されたアンカーボルト貫通孔の孔径の範囲内という制約がある。
【0009】
そこで、本願発明は、特許文献2および特許文献3に関示の技術にも応用することができ、かつ、建築基準法施行令第42条第2項にも適合する土台のアンカーボルト貫通孔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る木造建物土台のアンカーボルト貫通孔は、木造建物の基礎と土台との間に重ね合わされた複数枚の滑り平板からなる摩擦減震装置が介挿される摩擦減震システムにおいて、前記基礎に立設されたアンカーボルトの前記土台を貫通するアンカーボルト貫通孔は上から順に該アンカーボルトに螺合する締付ナットを収容する座彫部、第1の貫通孔および第2の貫通孔からなり、前記第1の貫通孔の直径は前記アンカーボルトの外径よりも大きく形成されて貫通後における該第1の貫通孔は該アンカーボルトに対して所定のクリヤランスを有し、前記第2の貫通孔の直径は前記第1の貫通孔の直径よりも大きく形成され、前記座彫部の直径は前記第2の貫通孔の直径よりも大きく形成されるとともに、前記締付ナットの下部に位置するワッシャーの外径よりも大きく形成される、ことを特徴としている。
また、本願請求項2に係る木造建物土台のアンカーボルト貫通孔は、請求項1に記載の木造建物土台のアンカーボルト貫通孔であって、前記第1の貫通孔の直径は前記アンカーボルトの外径よりも略6mm大きく形成され、前記第2の貫通孔の直径は前記アンカーボルトの外径よりも9mm以上大きく形成される、ことを特徴している。なお、前述したように、アンカーボルト外径とはアンカーボルトにおける最も大きな外径をいうが、木造建物に使用するアンカーボルトにおいては、ねじ部以外の外径がねじ部の外径よりも小さいことから、ねじ部の外径をいう。
そして、本願請求項3に係る木造建物土台のアンカーボルト貫通孔は、請求項1または請求項2に記載の木造建物土台のアンカーボルト貫通孔であって、前記第1の貫通孔は前記第2の貫通孔と同一径で削孔された貫通孔に鍔付きの鞘管が押入されて形成され、該鍔は前記座彫部および該貫通孔の境界部に形成される該座彫部の底面に当接し、該鞘管の外径は該第2の貫通孔の孔径に一致する、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項4に係る木造建物土台のアンカーボルト貫通孔は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の木造建物土台のアンカーボルト貫通孔であって、前記第1の貫通孔の長さおよび前記第2の貫通孔の長さは略同一である、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は以下の効果を奏する。
(1)建築基準法施行令第42条第2項では、「土台は、基礎に緊結しなければならない。」と規定されているため、第1の貫通孔の直径はアンカーボルトに対して所定のクリアランスとしなければならないが、実務上、木造建物ではそのクリアランスを6mmとしていることから、第1の貫通孔の直径をアンカーボルトの外径よりも略6mm大きく形成することによりその規定を満たすことになる。
(2)一方、「複数枚の滑り平板からなる摩擦減震装置」では、土台と基礎のズレを前提としていることから、アンカーボルト貫通孔の直径はアンカーボルトに対してそのズレを許容するクリアランスとすることが望ましい。そのため、第2の貫通孔の直径をアンカーボルトの外径よりも9mm以上大きく形成することにより、アンカーボルトに剪断力が働くことなく曲げのみが作用して滑り平板に働く摩擦力が大きくなり、その結果、摩擦減震装置の機能を十分に発揮させることができる。
(3)また、第1の貫通孔の直径よりも直接基礎に対面する第2の貫通孔の直径を大きくすることにより、施工精度によるアンカーボルトの平面的な位置のズレが許容され、基礎に対する土台の取付が容易になる。
(4)第2の貫通孔と同一径で削孔した貫通孔に鍔付きの鞘管を押入することにより第1の貫通孔を形成し、鞘管の鍔を座彫部の底面に当接するようにすれば、第1の貫通孔および第2の貫通孔の形成が容易になり、かつ、第1の貫通孔の孔面は鞘管で保護されるばかりでなく、第1の貫通孔の孔面にアンカーボルトの押圧による傷がついても、鞘管を交換することで容易に復旧することができる。
(5)第1の貫通孔の長さおよび第2の貫通孔の長さを略同一とすることで、建築基準法施行令第42条第2項の規定を満たすとともに、摩擦減震装置の機能を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は実施例1に係るアンカーボルト貫通孔およびこのアンカーボルト貫通孔を利用した摩擦減震システムを示す基礎・土台の部分断面図である。
図2図2は実施例2に係るアンカーボルト貫通孔の断面図である。
図3図3はアンカーボルトを片持ち梁に置き換えた力学的な概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態に係る実施例について、図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1および図2において、符号1は実施例1に係るアンカーボルト貫通孔、符号2は実施例2に係るアンカーボルト貫通孔、符号11は座彫部、符号13は第1の貫通孔、符号15は第2の貫通孔、符号17は鞘管、符号21はアンカーボルト、符号23は締付ナット、符号25は円錐台形ばね座金、符号27はワッシャー、符号30は摩擦減震装置、符号31は第1の滑り平板、符号33は第2の滑り平板、符号41は土台、符号43は基礎、である。
【実施例1】
【0014】
まず、実施例1では、図1を参照して実施例1に係るアンカーボルト貫通孔1を説明し、次いでアンカーボルト貫通孔1を利用した摩擦減震システムの例について図3を加えて説明する。
【0015】
アンカーボルト貫通孔1は上下方向に土台41に貫設されていて、アンカーボルト21に螺合する締付ナット23、円錐台形ばね座金25およびワッシャー27を収容する座彫部11と、座彫部11の下に位置する第1の貫通孔13と、第1の貫通孔13の下に位置する第2の貫通孔15と、から構成されている。そして、座彫部11、第1の貫通孔13および第2の貫通孔15は、いずれも平面形状が円形である。
【0016】
実施例では、土台41に105mm×105mmの角材を使用し、基礎43から立設されるアンカーボルト21にM12を使用している。M12のアンカーボルトは木造建物に多用されていて、ねじ部の径は12mmφ、ねじ部以外の径は10.6mmφとなっている。また、座彫部11は直径50mmφ〜65mmφ×長さ30mm、第1の貫通孔13は18mmφ×長さ35mm、および第2の貫通孔15は24mmφ×長さ40mm、となっている。そして、いずれの孔もその中心線は一致する。
【0017】
本実施例に係る摩擦減震システムは主に、基礎43から立設されるアンカーボルト21と、アンカーボルト21に挿入されて土台41および基礎43間に介挿される摩擦減震装置30と、座彫部11内に収容される下から順にアンカーボルト21に挿入されるワッシャー27および円錐台形ばね座金25と、アンカーボルト21に螺合して土台41を基礎43に締付固定する締付ナット23と、から構成されている。
【0018】
摩擦減震装置30は上段に位置し土台41に接触する第1の滑り平板31と、下段に位置し基礎43に接触する第2の滑り平板32と、から構成され、円錐台形ばね座金25は、締付ナット23の非締め付け時には円錐台形の斜面は内側に中折れしてワッシャー27側から順に勾配の異なる第1の斜面および第2の斜面が形成され、締付ナット23が所定軸力で締め付けられると第1の斜面が弾性変形してワッシャー27に略密着し、所定軸力を超えるときは第2の斜面が弾性変形してワッシャー27に接近するようになっている。
【0019】
ここで、摩擦減震装置30の作動を説明するとともに、摩擦減震装置30が作動するときのアンカーボルト貫通孔1の役割を説明する。
【0020】
建物に地震力等の横荷重が作用すると、基礎43に対して土台41にズレが生じ、このズレは土台41に密着する第1の滑り平板31と基礎43に密着する第2の滑り平板32のズレとなり、ここで生じる摩擦力により地震等のエネルギーが費消される。ところが、第1の滑り平板31と第2の滑り平板32のズレが生ずるためには、「遊び」等もあって経験上、基礎43と土台41のズレが5mm程度必要となる。すなわち、5mm程度ズレる前にアンカーボルト21がアンカーボルト貫通孔の孔壁に当接すると摩擦減震装置30が有効に働かず、地震等のエネルギーが有効に費消されないばかりかアンカーボルト貫通孔の孔壁を傷めることにもなる。
【0021】
基礎43と土台41のズレが5mmとなるときの基礎43表面より上部各点のアンカーボルト21の撓み(移動距離)を計算で求めた。
すなわち、アンカーボルト21の頭部には水平方向の集中荷重が作用して、基礎43に対して5mm移動すると仮定する。この場合、アンカーボルト21の頭部は円錐台形ばね座金25の働きによって締付ナット23の回転が拘束されることなく自由に回転可能であるから自由端(B)と見做すことができるとともに、基礎43の表面部は固定端(A)と見做せるので、アンカーボルト21を片持ち梁に単純に置き換えて、その撓み(移動距離)を近似的に計算で求めることができる。図3はアンカーボルトを片持ち梁に置き換えた力学的な概念図である。この図3を基に、以下の前提条件で計算し、その結果を表1に示す。
アンカーボルトの径(ねじ部以外の部分):10.8mm
固定端(A)から自由端(B)までの距離(L):95mm
自由端(B)の移動距離(σ):5mm
その他:摩擦減震装置の厚みを10mmとした。
【0022】
なお、表1において、
イ)基礎表面からのボルト位置(mm):基礎表面からのアンカーボルト上の垂直方向の位置である。
ロ)各点の移動距離(mm):基礎表面からのアンカーボルト上の位置に対応した横方向のアンカーボルトの移動距離、すなわち撓み量である。
ハ)アンカーボルトと孔壁との距離(mm):アンカーボルト径を12mmφ(ねじ部)とし、アンカーボルト貫通孔径を18mmφとしたときのアンカーボルトとアンカーボルト貫通孔の孔壁との間隙であり、マイナス値はアンカーボルトがアンカーボルト貫通孔の孔壁に食い込んだ状態を示している。
【表1】
【0023】
表1からアンカーボルトは基礎表面から60mmの位置でアンカーボルト貫通孔に当接し、基礎表面から20mmの位置でアンカーボルト貫通孔に1.78mm食い込むことになる。しかし、実際には基礎表面から50mm以下の位置では第2の貫通孔の区域となり、かつ、第2の貫通孔の区域ではアンカーボルト径はねじ部以外の10.8mmであるため、それらを加味した第2の貫通孔の孔壁とアンカーボルトの間隙を計算する。第2の貫通孔の直径は前記アンカーボルトの外径よりも9mm以上大きく形成されることから 12mm+9mm=21mm 以上となり、第2の貫通孔におけるアンカーボルト径は10.8mmであるので、(21mm−10.8mm)/2=5.1mm 以上となる。
したがって、第2の貫通孔の孔壁とアンカーボルトの間隙は第1の貫通孔の孔壁とアンカーボルトの間隙よりも 5.1mm−3mm=2.1mm 以上大きいことから、基礎表面から20mmの位置でアンカーボルトはアンカーボルト貫通孔に食い込むことにはならない。
【実施例2】
【0024】
つぎに、実施例2に係るアンカーボルト貫通孔2について、図2を基に説明するが、アンカーボルト貫通孔2を利用した摩擦減震システムの例については、アンカーボルト貫通孔1を利用した摩擦減震システムの例と同様であるので、その説明を省略する。
【0025】
アンカーボルト貫通孔2は上下方向に土台41に貫設されていて、座彫部11と、座彫部11の下に位置する第1の貫通孔13と、第1の貫通孔13の下に位置する第2の貫通孔15と、から構成されている。そして、第1の貫通孔13は第2の貫通孔15と同一径で削孔された貫通孔に鍔付きの鞘管17が押入されて形成されている。すなわち、鞘管17の内径が第1の貫通孔13の孔径であり、鞘管17の外径は第2の貫通孔15の孔径に一致する。そして、鞘管17の上部は鍔となっていて、座彫部11の底面に当接することで、鞘管17は所定の位置に確実に設置される。この鞘管17は合成樹脂製であり、基礎43に土台41を設置した後に容易に押入することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 実施例1に係るアンカーボルト貫通孔
2 実施例2に係るアンカーボルト貫通孔
11 座彫部
13 第1の貫通孔
15 第2の貫通孔
17 鞘管
21 アンカーボルト
23 締付ナット
27 ワッシャー
30 摩擦減震装置
41 土台
43 基礎
【要約】
【課題】従来の摩擦減震システムにも応用することができ、かつ、建築基準法施行令第42条第2項にも適合する土台のアンカーボルト貫通孔を提供する。
【解決手段】木造建物の基礎と土台との間に重ね合わされた複数枚の滑り平板からなる摩擦減震装置が介挿される摩擦減震システムにおいて、前記基礎に立設されたアンカーボルトの前記土台を貫通するアンカーボルト貫通孔は上から順に該アンカーボルトに螺合する締付ナットを収容する座彫部、第1の貫通孔および第2の貫通孔からなり、前記第2の貫通孔の直径は前記第1の貫通孔の直径よりも大きく形成され、前記座彫部の直径は前記第2の貫通孔の直径よりも大きく形成されるとともに、前記締付ナットの下部に位置するワッシャーの外径よりも大きく形成される、構成とした。
【選択図】図1
図1
図2
図3