【実施例1】
【0011】
<1>全体構成
本発明の第1実施例について
図1,2を参照しながら説明する。
本実施例では、衝撃吸収体としてポケット式防護網Aを想定している。
図1に示すように、本実施例に係るポケット式防護網Aは、斜面などの設置面の幅方向に間隔を空けて立設する支柱10と、前記支柱10から設置面の谷側に向かって吊設するネット20と、ネット20の両側縁間を一部材で配置する横ロープ30と、横ロープ30を前後から挟むようにネット20の上下縁間に配置する狭みロープ40と、横ロープ30の両端を直接または緩衝装置60を介して設置面に固定するアンカー50と、を少なくとも具備する。
【0012】
なお、
図1に示すポケット式防護網Aを構成する各構成要素の大きさや数、互いの比率や設置間隔等は、説明の便宜上簡易的に図示したものであり、本発明の権利範囲を限定するものではない。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0013】
<2>支柱
支柱10は、ネット20を吊設するための部材である。
支柱10は、所定間隔を設けながら複数本を設置面に立設する。
支柱10を設置面に取り付ける方法としては、設置面に設けたアンカーや基礎を介して固定する方法や、設置面に載置して別途控えをとりながら位置決めする方法など、その他公知の方法でもって設置面に立設するよう構成する。
【0014】
<2.1>支柱と山側アンカーとの連結
本実施例では、支柱10の頭部から控え材11を伸ばし、山側に設けたアンカー(山側アンカー12)と接続している。
【0015】
<3>ネット
ネット20は、設置面山側からの衝突物を受けとめるための部材である。
この衝突物には、落石・土砂・積雪・雪崩などが含まれる。
本実施例では、ネット20の上縁を、上縁ロープ21を介して前記支柱10に取付けて設置面谷側へと吊設することにより、ネット20と設置面との間に衝突物を受け入れて、該衝突物を設置面谷側へと誘導する、誘導空間を形成している。
上縁ロープ21は、設置面に設けた上縁アンカー22に、直接または緩衝装置60を介して接続する。
【0016】
<3.1>金網の種類
ネット20を構成する金網は、平織金網、菱形金網、亀甲金網、リングネット20など、防護網に用いる公知の金網から適宜選択することができる。
これらの金網は、金網の網目部分によって、該金網の厚み部分に略直線上に連通する連通空間を有するタイプと、その余のタイプとに区分けすることができる。本実施例では、ネット20に菱形金網を用いている。
【0017】
<4>横ロープ
横ロープ30は、ネット20の両側縁方向(横方向)を一部材で配置する部材である。
横ロープ30は、ネット20の上下縁方向(縦方向)に対して所定間隔毎に設け、一般的にネット20の上縁部分、単数又は複数の中間部分、下縁部分に設けるが、これらの配置位置、配置本数は適宜決定されるものであり、本発明において特段限定するものではない。
【0018】
<4.1>ネットとの取付態様
横ロープ30は、結合コイル(図示せず)によってネット20と取り付けることで、ネット20に対し横移動が可能な状態とする。
結合コイルは、ネット20と重なる箇所の全長にわたって配置してもよいし、部分的に配置してもよい。
ただし、コイル結合が部分的な場合、横ロープ30とネット20との一体化も部分的に留まるため、水平ロープ材と防護ネット20とが中途半端に干渉しあう状態となり、衝突物がネット20に衝突したときにその衝撃力が防護ネット20から横ロープ30に上手く伝達せず、ネット20が衝撃力に耐えられずに先行破壊してしまうおそれがあるため、ネット20が受ける衝撃力を、横ロープ30に対してロスなく直ちに伝達させる観点からは、ネット20と重なる箇所の全長にわたってコイル結合しておくことが好ましい。
【0019】
<4.2>緩衝装置の千鳥配置
本発明では、複数存在する横ロープ30の配置箇所において少なくとも以下の構造を呈する箇所を含むよう構成する。
横ロープ30の端部のうち一端は、直接アンカー50に接続し、かつ他端は、後述する緩衝装置60を介してアンカー50に接続するよう構成する。
この横ロープ30の左右を入れ換えて緩衝装置60を千鳥状に配列するような少なくとも二本の横ロープ30を、同じアンカー50に接続する。
本実施例では、一つのアンカー50に対し、横ロープ30とアンカー50との接続態様の左右を入れ換えた二本の横ロープ30を接続する構造を、全ての横ロープ30で適用している。
【0020】
<5>狭みロープ
狭みロープ40は、ネット20の上下縁方向(縦方向)に配置する部材である。
狭みロープ40は二本の縦ロープ41の組合せからなり、当該二本の縦ロープ41で、横ロープ30を前後から挟み込むように配置する。
縦ロープ41同士は、ワイヤークリップ42などの公知の連結具で連結しておく。
【0021】
<5.1>縦ロープ同士の連結箇所
狭みロープ40を構成する縦ロープ41同士の連結箇所は、横ロープ30の横移動を阻害しない範囲であれば何れの場所であっても良く、特段限定しない。
本実施例では、隣り合う横ロープ30間の中央付近にワイヤークリップ42を設けて、二本の縦ロープ41を連結している。本実施例によれば、横ロープ30を挟んでいる箇所の真上および真下を連結具で連結する場合と比較して連結具の点数を約半分に抑えることができる。
【0022】
<5.2>ネットとの取付態様
狭みロープ40は、結合コイルによってネット20と取り付けておく。
結合コイルによる取付態様は、前記<4.1>での説明内容と同様である。
よって、狭みロープ40は、従来の交点処理具のように横ロープ30と剛結合するものではないため、横ロープ30の横移動を阻害することはない。
【0023】
<5.3>狭みロープの強度確保
衝撃吸収体の設計に際し、一般的な配置間隔で縦ロープ41や横ロープ30を配置する場合、縦ロープ41に求められる強度が、横ロープ30に求められる強度よりも高い場合があり、この場合縦ロープ41の配置間隔を狭めるか、縦ロープ41をより強度の優れる部材とする必要がある。
本実施例では、縦ロープ41二本を強度の高い一つの縦ロープ41(狭みロープ40)として機能させることで、配置間隔の変更や部材の交換を行うことなく、縦ロープ41の強度補完を行っている。
【0024】
<5.4>縦ロープと横ロープの共通化
さらに、縦ロープ41および横ロープ30を、同一径のワイヤーロープを用いれば、縦ロープ41の強度補完を行いつつ、部材の共通化でもってコストの削減を図ることも可能である。
【0025】
<6>緩衝装置
緩衝装置60は、横ロープ30とアンカー50との間に介設する部材である。
図2に、横ロープ30とアンカー50との接続関係を示す概略図を示す。
緩衝装置60は、一端側には連結対象の一方と連結する連結部61を設け、他端側には他方の連結対象から伸びるワイヤーロープを把持する把持部62を設ける。
当該構成により、両者の間で所定値以上の引張力が生じたときに、前記把持部62でもって把持したワイヤーロープを緩衝装置60内で摩擦摺動させることで、衝撃吸収機能を発揮することができる。
【0026】
<7>受撃時の機能・作用
再度
図1を参照する。
本実施例に係る衝撃吸収体によれば、横ロープ30は、二本の縦ロープ41からなる挟みロープ40によって、ネット20に対し横方向に移動自在に結合されている。
よって、衝突物がネット20に受撃した際、ネット20は衝突物の衝撃エネルギーを吸収しつつ、結合コイルを介して横ロープ30に衝撃エネルギーがロス無く伝達される。
また、二本の縦ロープ41からなる挟みロープ40が、一本の縦ロープとして見かけ上機能するため、縦ロープの強度を補完することができる。
【0027】
また、本実施例に係る衝撃吸収体によれば、一つのアンカー50に対して接続されている横ロープ30のうち、少なくとも一つは緩衝装置60を介設した状態であるため、その余の横ロープ30がアンカー50に直接接続されている場合であっても、当該緩衝装置60による緩衝機能の発揮でもって、十分に衝撃吸収機能を発揮することができる。
【0028】
また、本実施例に係る衝撃吸収体によれば、衝突物のネット20での受撃箇所や衝突角度によって、横ロープ30の両端のうち、一方の端部側に緊張力が偏る場合がある場合であっても緩衝装置60を全ての横ロープ30に介設することなく同等の衝撃吸収機能を発揮することができる。
【0029】
また、本実施例では、横ロープ30の一端に設けた緩衝装置60がネット20の上下方向に対していわゆる千鳥状に配列された状態であるため、偏りの少ない均一な衝撃吸収機能を発揮することができる。
【0030】
<8>変形例
本実施例に係るポケット式防護網Aは、その他、以下の変形例を採用することができる。
[1]ネットの一部分について、緩衝装置を千鳥配置とした構成
図1では、横ロープ30とアンカー50との間に設ける緩衝装置60を、横ロープ30の両側で千鳥状を呈するように配置した箇所を、ネット20の全面に設けていたが、本実施例に係るポケット式防護網Aは、これらの千鳥状部分をネット20に対して部分的に設けた構成としてもよい。
[2]両側に緩衝装置を設けた構成
横ロープ30の両側に緩衝装置60を介在させた箇所を、ネット20の一部または全体に設けた構成としてもよい。
[3]両側に緩衝装置を設けない構成
横ロープ30の両側に緩衝装置60を設けず直接アンカー50に接続した箇所を、ネットの一部または全体に設けた構成としてもよい。
[4]アンカーと横ロープとの接続本数の変更
図1では、一つのアンカー50に対し、二本の横ロープ30を接続しているが、一本または三本以上の横ロープ30を接続してもよい。
【実施例2】
【0031】
<1>全体構成
図3を参照しながら、本発明の第2実施例について説明する。
本実施例では、衝撃吸収体として覆式防護網Bを想定しており、設置面に存する衝突物をネット20で覆うように構成してある。
各横ロープ30は、一端がアンカー50に直接接続され、他端はアンカー50を介してアンカー50に接続されており、隣り合う横ロープ30間でアンカー50との接続態様の左右をいれかえて配置されている。
これらの横ロープ30は、二本の縦ロープ41からなる挟みロープ40によってネット20に対し横移動自在な態様で連結されている。
【0032】
本実施例に係る覆式防護網Bにおいても、実施例1に記載のポケット式防護網Aと同様の効果を得ることができる。
【0033】
<2>変形例
本実施例に係る覆式防護網Bは、その他、以下の変形例を採用することができる。
[1]ネットの一部分について、緩衝装置を千鳥配置とした構成
図3では、横ロープ30とアンカー50との間に設ける緩衝装置60を、横ロープ30の両側で千鳥状を呈するように配置した箇所を、ネット20の全面に設けていたが、本実施例に係る覆式防護網Bは、これらの千鳥状部分をネットに対して部分的に設けた構成としてもよい。
[2]両側に緩衝装置を設けた構成
横ロープ30の両側に緩衝装置60を介在させた箇所を、ネット20の一部または全体に設けた構成としてもよい。
[3]両側に緩衝装置を設けない構成
横ロープ30の両側に緩衝装置60を設けず直接アンカー50に接続した箇所を、ネットの一部または全体に設けた構成としてもよい。
[4]アンカーと横ロープとの接続本数の変更
図3では、一つのアンカー50に対し、二本の横ロープ30を接続しているが、一本または三本以上の横ロープ30を接続してもよい。
[5]上縁ロープと山側控え材の追加
ネット20の上縁に上縁ロープ21を配置し、挟みロープ40に代えて控え材11を用意し、該控え材11を上縁ロープ21と山側アンカーの間に接続してもよい。
【実施例3】
【0034】
<1>全体構成
図4を参照しながら、本発明の第3実施例について説明する。
本実施例では、衝撃吸収体として防護柵Cを想定しており、ネット20の上縁および下縁を前記複数の支柱10にそれぞれ連結して、衝突物の捕捉面を有するように構成している。
各横ロープの両端は、端の支柱に設けた緩衝装置にそれぞれ接続されている。
最上部の横ロープ30と、最下部の横ロープ30に該横ロープ30を把持するように設けた緩衝装置60は、該緩衝装置60から伸びる控え材70を介してアンカー50と接続されている。
これらの横ロープ30は、二本の縦ロープ41からなる挟みロープ40によってネット20に対し横移動自在な態様で連結されている。
【0035】
本実施例に係る防護柵Cにおいても、実施例1または2に記載の防護網と同様の効果を得ることができる。
【0036】
<2>変形例
本実施例に係る防護柵Cは、その他、以下の変形例を採用することができる。
[1]緩衝装置を片側に配置した構成
図4では、横ロープ30の両端とも緩衝装置60を接続しているが、本実施例に係る防護柵Cは、一方の端部のみに緩衝装置60を設けた構成としてもよい。
[2]緩衝装置を千鳥配置とした構成
また、片側に緩衝装置を設けた横ロープ30の左右を入れ換えた少なくとも二本の横ロープ30を、同じアンカー50に接続した構成としてもよい。
さらにこれら緩衝装置60の千鳥配置を、ネット20の全面もしくは部分的な構成とすることができる。
[3]両側に緩衝装置を設けない構成
また、横ロープ30の両側に緩衝装置60を設けない箇所を、ネット20の一部または全体に設けた構成としてもよい。
[4]アンカーと横ロープとの接続本数の変更
また、
図4では、一つのアンカー50に対し、二本の横ロープ30を接続しているが、一本または三本以上の横ロープ30を接続してもよい。