(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130112
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
G05F1/56 310F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-197541(P2012-197541)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-52886(P2014-52886A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年7月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中下 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】黒蔵 忠
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−22455(JP,A)
【文献】
特開2003−330555(JP,A)
【文献】
特開2009−199501(JP,A)
【文献】
特開2006−301787(JP,A)
【文献】
特開2009−146130(JP,A)
【文献】
特開2009−176008(JP,A)
【文献】
特開2010−211788(JP,A)
【文献】
特開2004−234619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力トランジスタが出力する出力電圧を分圧した分圧電圧と基準電圧の差を増幅して出力し、前記出力トランジスタのゲートを制御する誤差増幅回路と、
前記出力電圧にオーバーシュートが発生したことを検出し、前記出力トランジスタの電流を制限するオーバーシュート制限回路と、
前記出力電圧と前記出力トランジスタに流れる電流に基づいて、ボルテージレギュレータが非レギュレート状態であることを検出する非レギュレート検出回路と、
を備え、
前記オーバーシュート制限回路は、前記非レギュレート検出回路から前記非レギュレート状態でない状態を示す検出信号を入力すると動作電流を少なくし、前記非レギュレート検出回路から前記非レギュレート状態を示す検出信号を入力すると動作電流を多くする
ことを特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
前記非レギュレート検出回路は、
第一の検出回路及び第二の検出回路と
前記第一の検出回路と前記第二の検出回路の出力を入力し、検出信号を出力する出力回路と、を備え、
通常状態では、前記第一の検出回路が前記第二の検出回路よりも多く電流を流し、
非レギュレート状態では、前記第二の検出回路が前記第一の検出回路よりも多く電流を流し、
前記出力回路は、前記第一の検出回路の電流と前記第二の検出回路の電流に応じて、検出信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項3】
前記第一の検出回路と前記第二の検出回路は、電流を電圧に変換する回路を備え、
前記出力回路は、前記第一の検出回路の電流を変換した電圧と前記第二の検出回路の電流を変換した電圧に応じて、検出信号を出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載のボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテージレギュレータのオーバーシュート抑制回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボルテージレギュレータについて説明する。
図4は、従来のボルテージレギュレータを示す回路図である。
【0003】
従来のボルテージレギュレータは、基準電圧回路101と、誤差増幅回路102と、誤差増幅回路102のバイアス回路103と、出力トランジスタであるPMOSトランジスタ104と、分圧抵抗回路105と、アンプ301と、アンプ301のバイアス回路302と、PMOSトランジスタ108を備えている。
【0004】
PMOSトランジスタ104は、電源端子と出力端子109の間に接続される。フィードバック電圧Vfbを出力する分圧抵抗回路105は、出力端子109と接地端子の間に接続される。誤差増幅回路102は、反転入力端子に基準電圧回路101が接続され、非反転入力端子にフィードバック電圧Vfbが入力され、出力端子はPMOSトランジスタ104のゲートに接続される。バイアス回路103は、誤差増幅回路102に動作電流を供給する。PMOSトランジスタ108は、電源端子とPMOSトランジスタ104のゲートの間に接続される。アンプ301は、非反転入力端子に基準電圧回路101が接続され、反転入力端子にフィードバック電圧Vfbが入力され、出力端子はPMOSトランジスタ108のゲートに接続される。バイアス回路302は、アンプ301に動作電流を供給する。
【0005】
アンプ301は、入力されたフィードバック電圧Vfbと基準電圧Vrefとを比較する。フィードバック電圧Vfbが基準電圧Vrefより低い場合、アンプ301はHi信号を出力してPMOSトランジスタ114をオフさせる。出力端子109の出力電圧Voutにオーバーシュートが発生し、フィードバック電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高くなると、アンプ301はLo信号を出力してPMOSトランジスタ108をオンさせる。
【0006】
従来のボルテージレギュレータは、このように動作して、出力端子109の出力電圧Voutのオーバーシュートが大きくなることを防ぐことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−301439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のボルテージレギュレータは、電源電圧が低く、出力端子109が所定の出力電圧Voutより低い電圧を出力している状態(以下、非レギュレート状態)において、電源電圧が高くなった時に出力端子109に過大なオーバーシュートが生じるという課題があった。また、過大なオーバーシュートを防止するためには、アンプ301のバイアス回路302が流す電流を多くする必要があるが、そのためボルテージレギュレータの消費電流が多くなると言う課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、低消費電流でありながら、非レギュレート状態において電源電圧が高くなった時に出力端子109に過大なオーバーシュートが発生することを抑制できるボルテージレギュレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来の課題を解決するために、本発明の過電流保護回路を備えたボルテージレギュレータは以下のような構成とした。
【0011】
出力電圧にオーバーシュートが発生したことを検出し、出力トランジスタの電流を制限するオーバーシュート制限回路と、出力端子の電圧と出力トランジスタに流れる電流に基づいて、ボルテージレギュレータが非レギュレート状態であることを検出する非レギュレート検出回路を備え、オーバーシュート制限回路は、非レギュレート検出回路の検出信号によって動作電流を制御される、ことを特徴とするボルテージレギュレータ。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオーバーシュート抑制回路を備えたボルテージレギュレータは、低消費電流で、非レギュレート状態で電源電圧が高くなった時に発生する出力電圧のオーバーシュートを抑制できる、と言う効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態のオーバーシュート抑制回路を備えたボルテージレギュレータの回路図である。
【
図2】第2の実施形態のオーバーシュート抑制回路を備えたボルテージレギュレータの回路図である。
【
図3】本実施形態のオーバーシュート制御回路の一例を示す回路図である。
【
図4】従来のオーバーシュート抑制回路を備えたボルテージレギュレータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態のオーバーシュート抑制回路を備えたボルテージレギュレータの回路図である。
【0015】
本実施形態のボルテージレギュレータは、基準電圧回路101と、誤差増幅回路102と、誤差増幅回路102のバイアス回路103と、出力トランジスタ104と、分圧抵抗回路105と、非レギュレート状態検出回路106と、オーバーシュート制御回路107と、PMOSトランジスタ108を備えている。非レギュレート状態検出回路106とオーバーシュート制御回路107は、オーバーシュート抑制回路を構成する。
【0016】
分圧抵抗回路105は、出力端子109と接地端子の間に接続される。誤差増幅回路102は、非反転入力端子にフィードバック電圧Vfbを入力し、反転入力端子に基準電圧Vrefを入力する。出力トランジスタ104は、ゲートに誤差増幅回路102の出力端子を接続し、ソースを電源端子に接続し、ドレインを出力端子109に接続する。非レギュレート状態検出回路106は、出力端子109の電圧と電源端子の電圧が入力され、出力端子がオーバーシュート制御回路107に接続されている。オーバーシュート制御回路107は、フィードバック電圧Vfbと基準電圧Vrefを入力し、出力端子がバイアス回路103とPMOSトランジスタ108のゲートに接続されている。
【0017】
分圧抵抗回路105は、出力端子109の出力電圧Voutを分圧し、フィードバック電圧Vfbを出力する。誤差増幅回路102は、基準電圧回路101の出力する基準電圧Vrefとフィードバック電圧Vfbを比較する。出力トランジスタ104は、誤差増幅回路102の出力電圧によって制御され、出力端子109の電圧を一定に保つ機能を有する。非レギュレート状態検出回路106は、出力トランジスタ104に流れる電流と出力端子109の出力電圧Voutに基づいて非レギュレート状態を検出する。オーバーシュート制御回路107は、基準電圧Vrefとフィードバック電圧Vfbに基づいて出力端子109のオーバーシュートを検出して、PMOSトランジスタ108とバイアス回路103を制御する。オーバーシュート制御回路107は、非レギュレート状態検出回路106の検出信号Vdetを受けて、オーバーシュート制御回路107の動作電流を制御する。
【0018】
オーバーシュート制御回路107は、一例として
図3に示すような回路で構成される。
図3に示すオーバーシュート制御回路107は、基準電圧Vrefとフィードバック電圧Vfbが入力されるアンプ301と、非レギュレート状態検出回路106の検出信号Vdetを入力してアンプ301の動作電流を制御するバイアス回路302を備えている。
【0019】
但し、オーバーシュート制御回路107は、出力端子109のオーバーシュートを検出する機能を実現するための回路であればよく、回路構成は特に限定されるものではない。また、バイアス回路103は、オーバーシュート制御回路107の信号を受けて電流を増加するような定電流回路であればよく、回路構成は特に限定されるものではない。
【0020】
非レギュレート状態検出回路106は、PMOSトランジスタ110、112、113、116、117、120、121と、NMOSトランジスタ114、115、118、119と、定電流源111を備えている。
【0021】
PMOSトランジスタ110は、ソースが出力端子109に接続され、ゲートとドレインが定電流源111に接続されている。PMOSトランジスタ112は、ソースがPMOSトランジスタ113のドレインに接続され、ゲートがPMOSトランジスタ110のゲートとドレインに接続され、ドレインがNMOSトランジスタ114のゲートとドレインに接続されている。PMOSトランジスタ113は、ソースが電源端子に接続され、ゲートが誤差増幅回路102の出力端子に接続されている。NMOSトランジスタ114は、ソースが接地端子に接続され、ゲートとドレインがNMOSトランジスタ115のゲートに接続されている。PMOSトランジスタ116は、ソースがPMOSトランジスタ117のドレインに接続され、ゲートがPMOSトランジスタ110のゲートとドレインに接続され、ドレインがNMOSトランジスタ118のゲートとドレインに接続されている。PMOSトランジスタ117は、ソースが電源端子に接続され、ゲートが誤差増幅回路102の出力端子に接続されている。NMOSトランジスタ118は、ソースが接地端子に接続され、ゲートとドレインがNMOSトランジスタ119のゲートに接続されている。NMOSトランジスタ119は、ソースが接地端子に接続され、ドレインがPMOSトランジスタ120のゲートとドレインに接続されている。PMOSトランジスタ120は、ソースが電源端子に接続され、ゲートとドレインがPMOSトランジスタ121のゲートに接続されている。PMOSトランジスタ121とNMOSトランジスタ115は、電源端子と接地端子の間に接続され、その接続ノードは非レギュレート状態検出回路106の出力端子になっている。
【0022】
PMOSトランジスタ110と定電流源111は、出力端子109の状態を検出する。PMOSトランジスタ112とPMOSトランジスタ113とNMOSトランジスタ114は、第一の検出回路を構成し、その検出結果をNMOSトランジスタ115のゲートに出力する。PMOSトランジスタ116とPMOSトランジスタ117とNMOSトランジスタ118、及びNMOSトランジスタ119とPMOSトランジスタ120は、第二の検出回路を構成し、その検出結果をPMOSトランジスタ121のゲートに出力する。PMOSトランジスタ121とNMOSトランジスタ115は、ゲートに入力される信号によって流す電流が変化し、そのバランスによって非レギュレート状態検出回路106の出力端子に信号Vdetが出力される。
【0023】
上述したようなオーバーシュート抑制回路は、以下のように動作して出力端子109のオーバーシュートを抑制する。
【0024】
電源電圧が十分高く、出力端子109の出力電圧Voutが所定の電圧に近い電圧を出力している状態を通常状態とする。電源電圧が低く、出力端子109が所定の出力電圧Voutより低い電圧を出力している状態を非レギュレート状態とする。
非レギュレート状態検出回路106の各トランジスタは、例えば以下のように設計される。
【0025】
出力トランジスタ104の電流をミラーするPMOSトランジスタ113とPMOSトランジスタ117は、PMOSトランジスタ113の方のミラー比を大きく設計する。PMOSトランジスタ110の電流をミラーするPMOSトランジスタ112とPMOSトランジスタ116は、PMOSトランジスタ116の方のミラー比を大きく設計する。通常状態では、PMOSトランジスタ112とPMOSトランジスタ116が流す電流は、PMOSトランジスタ113とPMOSトランジスタ117が流す電流より十分多くなるように設計する。
【0026】
通常動作状態において、PMOSトランジスタ113がPMOSトランジスタ117より多く電流を流す。それらの電流をミラーした結果、NMOSトランジスタ115がPMOSトランジスタ121より多く電流を流す。従って、非レギュレート状態検出回路106は、出力端子にLoの信号Vdetを出力し、出力トランジスタ104が飽和状態にあることを示す。
オーバーシュート制御回路107は、Loの信号Vdetを受けて、動作電流を少なくして、通常状態になる。
【0027】
ボルテージレギュレータが非レギュレート状態になると、電源電圧と出力電圧Voutの差が小さくなる。PMOSトランジスタ113とPMOSトランジスタ117は、出力電圧Voutが低くいので、ゲートにLoの電圧が入力されオンする。従って、PMOSトランジスタ113とPMOSトランジスタ117のドレイン電圧は、電源電圧になる。すなわち、PMOSトランジスタ113とPMOSトランジスタ117のドレイン電圧は、出力電圧Voutに近くなる。PMOSトランジスタ110は、出力電圧Voutが低くなるが、バイアス回路111の流す電流は十分少ないので、電流を流すことが出来る。従って、PMOSトランジスタ110のゲート電圧は、バイアス回路111とPMOSトランジスタ110のインピーダンスと出力電圧Voutに応じた電圧になる。そして、PMOSトランジスタ112とPMOSトランジスタ116のゲート電圧は、PMOSトランジスタ110のゲート電圧に等しい。また、PMOSトランジスタ112とPMOSトランジスタ116のソース電圧は、PMOSトランジスタ110のゲート電圧とPMOSトランジスタ112とPMOSトランジスタ116の閾値で決まる電圧になっている。
【0028】
このような状態では、PMOSトランジスタ112とPMOSトランジスタ116が流す電流は、PMOSトランジスタ113とPMOSトランジスタ117が流す電流より少なくなる。従って、PMOSトランジスタ116は、PMOSトランジスタ112よりもミラー比を大きいので、PMOSトランジスタ116がPMOSトランジスタ112より多く電流を流す。それらの電流をミラーした結果、PMOSトランジスタ121がNMOSトランジスタ115より多く電流を流す。従って、非レギュレート状態検出回路106は、出力端子にHiの信号Vdetを出力し、ボルテージレギュレータが非レギュレート状態にあることを示す。
【0029】
オーバーシュート制御回路107は、Hiの信号Vdetを受けて、動作電流を多くして、高速動作状態になる。従って、この状態から電源電圧が高くなって、出力端子109にオーバーシュートが発生しても、オーバーシュート制御回路107は素早くオーバーシュートを検出して、バイアス回路103とPMOSトランジスタ108を制御することが出来る。そして、出力端子109のオーバーシュートを抑制することが出来る。
【0030】
以上記載したように、本実施形態のボルテージレギュレータのオーバーシュート抑制回路は、通常状態ではオーバーシュート制御回路107の動作電流の少ない低消費状態になるため、消費電流を少なくすることが可能となった。また、非レギュレート状態検出回路106がボルテージレギュレータの非レギュレート状態を検出すると、オーバーシュート制御回路107の動作電流を多くするので、素早く出力端子109のオーバーシュートを抑制することが出来る。
【0031】
[第2の実施形態]
図2に、第2の実施形態のボルテージレギュレータの回路図を示す。第2の実施形態のボルテージレギュレータは、非レギュレート状態検出回路106を以下に示すように構成する。
【0032】
第一の検出回路は、PMOSトランジスタ112とPMOSトランジスタ113と抵抗202で構成する。第二の検出回路は、PMOSトランジスタ116とPMOSトランジスタ117と抵抗203で構成する。それぞれの検出結果が入力される比較回路201の出力端子が、非レギュレート状態検出回路106の出力端子Vdetを構成する。
このような回路構成としても、第1の実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0033】
以上に説明したように、本実施形態のボルテージレギュレータのオーバーシュートによれば、通常状態において、オーバーシュート抑制回路に不必要な電流が流れることがなくなり、消費電流を少なくすることが出来るという効果がある。
【0034】
なお本の実施形態のボルテージレギュレータは、オーバーシュートを検出したときに、オーバーシュート制御回路107の信号によって、出力トランジスタ104の電流を減少させ、バイアス回路103の電流を増加させる構成として説明した。しかし、オーバーシュート制御回路107の信号によって、どちらかのみを制御する構成であっても、オーバーシュートを抑制する効果を有するので、特にそれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
101 基準電圧回路
102 誤差増幅回路
103、111 バイアス回路
105 分圧抵抗回路
107 オーバーシュート制御回路
201 比較回路