(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように鋳造ドラムに蒸留セレンを連続的に滴下することで生成されるセレンショットには、粒形状のセレンショットの他、針状又は棒状のセレンも含まれる。このような針状又は棒状のセレンは長さが10mmを超えるものが多く、長いものは100〜300mmにもなっているのでセレンショット出荷規格よりも大きいためにセレンショットとして出荷することができない。また、粒形状であっても粒径が規格よりも大きいと、セレンショットとして出荷することができない。
【0006】
このため、生成されたセレンの中からセレンショットとして出荷可能なものを選別することが必要となる。この選別においては、歩留まり(セレンショットの収集効率)を向上することが好ましい。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、所定粒径以下のセレンショットの生成、収集を効率的に行うことが可能なセレンショットの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセレンショットの製造方法は、回転する冷却ドラムに液体状のセレンを滴下して急冷し、凝固させる工程と、凝固した
前記セレンに衝撃を与え
粉砕することで所定粒径以下のセレンショットを生成し、収集する工程と、を含んでいる。これによれば、回転する冷却ドラムを用いて凝固されたセレンには、針状、棒状のセレンや粒径が大きいセレンが含まれる場合があるが、セレンはアモルファス状で粉砕されやすいので、これらのセレンに衝撃を与えることで、針状、棒状のセレンや粒径の大きいセレンを粉砕することができ、出荷可能なセレンショットの生成及び収集が可能となる。この場合、単に篩にかけるなどして出荷可能な(所定粒径以下の)セレンショットと出荷不可能なセレンとを篩別する場合と比べて、所定粒径以下のセレンショットの生成、収集を歩留まりよく、効率的に行うことが可能となる。
【0009】
この場合において、前記生成し、収集する工程は、凝固した
前記セレンを網状部材の上に投入する工程と、凝固した
前記セレンが投入された網状部材
を振動
させ、凝固した
前記セレンに衝撃を与え
て破砕し、前記所定粒径以下のセレンショットを生成する工程と、前記網状部材の網目を通り抜けたセレンショットを収集する工程と、を含んでいてもよい。かかる場合には、網状部材に振動を与えることで、針状、棒状、粒径の大きいセレンを所定粒径以下のセレンショットにすることができ、これと同時に、網状部材の網目を用いて所定粒径以下のセレンショットの収集が可能となる。
【0010】
また、本発明のセレンショットの製造方法においては、前記網状部材が、非金属製であってもよい。かかる場合には、金属性の網状部材を用いる場合と比べて、収集されたセレンショットにセレン以外の金属が混入するのを抑制することができる。
【0011】
本発明のセレンショットの製造装置は、上方から凝固したセレンが投入される網状部材と、前記網状部材を振動させ、凝固した
前記セレンに衝撃を与え
粉砕する振動機構と、前記網状部材の網目を通過したセレンをセレンショットとして収集する収集機構と、を備えている。これによれば、網状部材の振動により凝固したセレンに衝撃を与えることで、粉砕設備を設けることなく、針状、棒状、粒径の大きいセレン等を粉砕することができるとともに、網状部材の網目を用いて所定粒径以下のセレンショットの収集が可能となる。この場合、単に篩にかけるなどして所定粒径以下で出荷可能なセレンショットを篩別する場合と比べて、所定粒径以下のセレンショットの生成、収集を歩留まりよく、効率的に行うことが可能となる。
【0012】
この場合において、前記網状部材は、非金属製であってもよい。かかる場合には、セレンショットにセレン以外の金属が混入するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のセレンショットの製造方法及び製造装置は、所定粒径以下のセレンショットの生成、収集を効率的に行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態に係るセレンショットの製造方法及び製造装置について、
図1〜
図7に基づいて、詳細に説明する。
図1は、セレンショットの製造工程を示すフロー図である。
【0016】
図1に示すように、セレンショットの製造工程は、まず、銅精錬工程(ステップS10)で発生したセレン原料を乾燥・溶解し(乾燥・溶解工程(ステップS12))、蒸留工程(ステップS14)において真空蒸留することで、不純物を除去する。そして、蒸留工程で生成された蒸留セレンを回転する鋳造ドラム(冷却されている)に連続的に滴下して急冷して凝固することで、凝固セレンが生成される(凝固工程(ステップS16))。なお、凝固工程(S16)において生成された凝固セレンには、鋳造ドラムの外周に沿って蒸留セレンが流れることで生成された針状、棒状のセレンが含まれたり、粒径が大きく、セレンショットの規格(粒径約1cm以下であり、下限は特に設定されていない)に合わないセレンが含まれることがあるため、そのまま全てをセレンショットとして出荷することはできない。したがって、凝固工程(S16)の次に行われるセレンショット生成・収集工程(ステップS18)においては、本実施形態のセレンショットの製造装置100(
図2参照)を用いて、凝固セレンからセレンショットを生成、選別し、収集を行う。このようにして収集されたセレンショットは出荷対象となり、出荷ラインに乗せられることになる。
【0017】
図2には、本実施形態のセレンショットの製造装置100が斜視図にて示されている。
【0018】
図2に示すように、本実施形態のセレンショットの製造装置100は、セレンショットの生成・選別部10と、セレンショットを収集する収集機構としての収集ボート12と、セレンショットとして出荷できない非出荷対象のセレンを回収する回収箱14と、を備える。
【0019】
生成・選別部10は、凝固工程(S16)で生成された凝固セレンのうち、所定粒径以下(規格に合った大きさ)のセレン(セレンショット)を篩別して収集するとともに、所定粒径よりも大きい凝固セレンに衝撃を与えて粉砕させ、所定粒径以下となったセレン(セレンショット)を篩別する機能を有する。
図3は、
図2の生成・選別部10を取り出して示しており、
図4は、
図3の一部を破断して示している。なお、
図2〜
図4では、生成・選別部10の長手方向をX軸方向、鉛直方向をZ軸方向とし、これらX,Z軸それぞれに垂直な方向をY軸方向としている。
【0020】
図3、
図4に示すように、生成・選別部10は、X軸方向に延びる本体部20と、本体部20を支持する脚部24A,24Bと、本体部20内部で振動する篩部30と、を備える。なお、脚部24Bと床面との間には、例えば高さが25mmの嵩上げ部材40が設けられている。これにより、元々XY平面に平行であった本体部20の上面が、XY平面に対してやや傾いた状態となっている。ただし、以下においては、説明の便宜上、生成・選別部10の長手方向がX軸方向であるとして説明するものとする。
【0021】
本体部20は、箱状の駆動系収納部22Aと、骨組み状の篩部収納部22Bと、を備える。駆動系収納部22Aの内部には、篩部30を振動させる振動機構としての駆動系50(
図6参照)が収納されている。なお、駆動系50の詳細な構成等については、後述する。
【0022】
篩部収納部22Bは、
図3に示すように、長短様々な長さの棒状部材を組み合わせて形成された直方体状の骨組み形状を有し、骨組み形状が区画する空間内には篩部30が配置されている。篩部収納部22Bの−Y側部分と+Y側部分には、
図2に示すように、例えば透明の塩化ビニルを材料とするシート状部材46が設けられている。また、篩部収納部22Bの+X端部上側にも、例えば透明の塩化ビニルを材料とするシート状部材48が設けられている。これらシート状部材46、48は、作業者の手が篩部30と篩部収納部22Bとの間に挟まれないようにするための部材である。なお、シート状部材46、48に注意喚起表示(「運転中に手を出さない」などの表示)を設けることとしてもよい。
【0023】
更に、篩部収納部22Bの−X端部下側には、
図2に示すように、非出荷セレン用シュート44が設けられている。この非出荷セレン用シュート44は、篩部30においてセレンショットとして篩別されなかったセレン(非出荷対象のセレン)を周囲に飛散させずに回収箱14に収容するための部材である。
【0024】
また、篩部収納部22Bを上方(+X側)から見た状態を示す
図5からわかるように、篩部収納部22Bの−Z側部分(
図3等において篩部30よりも下側に位置する部分)には、矩形枠状のセレンショット用シュート80が設けられている。なお、
図5では、図示の便宜上、セレンショット用シュート80にハッチングを付して示している。このセレンショット用シュート80の矩形開口80aは、収集ボート12の矩形開口部分と同一の大きさ又はやや小さめに設定されている。このセレンショット用シュート80は、篩部30において篩別された出荷対象のセレンショットを周囲に飛散させずに収集ボート12に収容するための部材である。
【0025】
図3に戻り、篩部収納部22Bの−Y側部分には、2本のチェーン42が設けられている。同様に、図示は省略されているが、篩部収納部22Bの+Y側部分には、2本のチェーン42が設けられている。これら4本のチェーン42の下端部は、
図2に示すように、収集ボート12に接続されるようになっている。
【0026】
篩部30は、
図4に示すように、本体部32と、網状部材34と、を有する。本体部32は、網状部材34を下側から支持する枠状部分32Aと、枠状部分32Aの−Y端部及び+Y端部において+Z方向に立ち上がった状態の飛散防止壁32Bと、を有する。また、網状部材34は、非金属(例えばテフロン(登録商標))を材料とし、出荷可能なセレンショットの最大粒径とほぼ同一の網目寸法を有している。すなわち、網状部材34は、出荷可能なセレンショットと出荷不可能なセレンとを篩別する機能を有している。
【0027】
篩部30の+X端部は、
図4に示すように、本体部20の駆動系収納部22A内に挿入され、
図6に示すように、駆動系50に接続された状態となっている。
【0028】
収集ボート12は、生成・選別部10で生成、選別(篩別)された出荷可能なセレンショットを収集する箱状部材である。この収集ボート12の材料は、網状部材34と同様、非金属であることが好ましい。なお、収集ボート12は、前述したように、チェーン42を介して、生成・選別部10と接続(連結)されているので、収集ボート12の重量により、生成・選別部10の安定度が向上し、生成・選別部10の転倒や移動の発生を抑制することができる。なお、生成・選別部10自体の安定度が高い場合には、生成・選別部10と収集ボート12とを接続(連結)しなくてもよい。
【0029】
回収箱14は、非出荷対象のセレンを収集するための箱であり、非出荷対象のセレンの周囲への飛散を抑制するため、そのY軸方向に関する寸法が、非出荷セレン用シュート44の下端部のY軸方向に関する寸法よりも大きく設定されている。
【0030】
ここで、
図6に基づいて、駆動系50の具体的構成等について詳細に説明する。
【0031】
駆動系50は、
図6に示すように、回転軸62を有するモータ60と、回転軸62から所定距離離れた位置に設けられた回転軸68と、回転軸68に固定された円盤状部材66と、回転軸62の回転力を円盤状部材66に伝達する伝達ベルト64と、を備える。なお、回転軸68には、偏心部材70が設けられており、篩部30の+X端部は、偏心部材70に対して位置Sにて接続されている。なお、位置Sは、回転軸68の中心軸Rから偏心した位置であるものとする。
【0032】
駆動系50では、モータ60への通電により回転軸62が矢印r1方向に回転すると、伝達ベルト64を介して、円盤状部材66が矢印r2方向に回転する。そして、円盤状部材66の回転により、回転軸68及び偏心部材70が矢印r2方向に回転することになる。
【0033】
ここで、篩部30の−X側端部近傍には、リンク部材72の一端が設けられている。このリンク部材72の他端は、本体部20の篩部収納部22Bの一部に接続されている。なお、リンク部材72は、実際には、篩部30の−Y側の飛散防止壁32Bのみならず、+Y側の飛散防止壁32Bにも設けられている。本実施形態では、これらリンク部材72の動きと、駆動系50の偏心部材70の回転とによるてこクランク機構により、篩部30に篩振動が付与されるようになっている。
【0034】
すなわち、
図7の矢印Aに示すように、凝固セレンが網状部材34上に投入されると、出荷可能な粒径を有するセレン(セレンショット)は、矢印Cに示すように、網状部材34を通り抜けて、収集ボート12内に収容される(篩別される)。一方、出荷不可能な粒径を有するセレンや棒状、針状のセレンは、アモルファス状で脆いため、篩部30の篩振動による衝撃を受けて、粉砕される。この粉砕により、網状部材34の網目よりも小さくなったセレン(セレンショット)は、網状部材34を通り抜けて、矢印Cに示すように、収集ボート12内に収容される(篩別される)ことになる。このように、収集ボート12内に収容されたセレン(セレンショット)は、出荷対象となる。
【0035】
これに対し、篩振動による衝撃を受けても網状部材34を通り抜けることができなかった凝固セレンは、篩振動により、矢印Bに示すように+X側から−X側に移動し(移送され)、矢印Dに示すように非出荷セレン用シュート44から回収箱14内に落下する。
【0036】
なお、本実施形態では、前述のように、脚部24Bと床面との間に嵩上げ部材40が設けられ、生成・選別部10全体(すなわち網状部材34)がやや傾いた状態(例えば、0.1°以上3.0°以下、より好ましくは0.5°以上1.0°以下傾斜した状態)となっている。これにより、嵩上げ部材40を用いない場合と比較して、網状部材34を通り抜けることができない凝固セレンの+X側から−X側への移動がしやすい状態となっている。
【0037】
なお、篩部30を篩振動させるモータ60の回転数は、一例として、300rpmであるものとする。ただし、これに限られるものではなく、本実施形態においては、種々の回転数を採用することができる。この場合、回転数は、セレンショットの収集効率(歩留まり)が最適になるように決定することができる。なお、モータ60の回転数を調整できるようにするために、モータ60に回転数の調整機(インバータ等)を設けることとしてもよい。これにより、凝固セレンの投入量等に応じた調整を適宜行うことが可能となる。
【0038】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、回転する冷却された鋳造ドラムに液体状の蒸留セレンを滴下して急冷し、凝固させる工程(S16)と、凝固セレンに衝撃を与えることで所定粒径以下のセレンショットを生成し、収集する工程(S18)と、が実行される。この場合、回転する鋳造ドラムを用いて冷却、凝固されたセレンには、針状、棒状のセレンや粒径が大きいセレンが含まれる場合があるが、これらのセレンに対して上記ステップS18を行うことで、針状、棒状、粒径の大きいセレンから出荷可能なセレンショットを生成、収集することが可能となる。この場合、単に篩にかけるなどして所定粒径以下のセレンショットを篩別する場合と比べて、所定粒径以下のセレンショットの生成、収集を歩留まりよく、効率的に行うことが可能となる。なお、本発明者が実際に
図2の装置(モータ60の回転数が300rpmで、網状部材34の網目の大きさをセレンショットの最大粒径と同一に設定)を用いてセレンショットを収集したところ、投入した凝固セレンのうちの95%をセレンショットとして収集することができ、1時間あたりの収集量として、1200kgのセレンショットを収集することができた。なお、従来の人手による篩別作業では、セレンショットとしての収集率が95%を下回っていたうえ、1時間当たりのセレンショットの収集量は約360kg程度であった。
【0039】
また、本実施形態では、上記ステップS18において、凝固セレンを網状部材34の上に投入し、網状部材34に振動を与えて凝固セレンに衝撃を与え、所定粒径以下のセレンショットを生成し、網状部材34の網目を通り抜けたセレンショットを収集する、という処理を実行するので、セレンショットの生成と収集をほぼ同時に行うことができ、非常に効率的であるという利点がある。
【0040】
また、本実施形態では、網状部材34が、テフロン(登録商標)などの非金属を材料とするため、出荷対象のセレンショットにセレン以外の金属が混入するのを抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、セレンショットの生成と収集を、機械(セレンショットの製造装置100)を用いて行うため、人手の介入を最小限に抑えることができる。具体的には、人手で篩別を行う場合には、作業者2名で、作業時間50分かかっていた作業が、製造装置100を用いることで、作業者1名で、作業時間10分にて完了することができた。これにより、人件費の削減が可能であるとともに、粉末状のセレンによる人体への影響や、重労働による作業者負担を軽減することが可能となる。
【0042】
なお、上記実施形態では、セレンショットの製造装置100が、
図2のような構成を有する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、凝固セレンに振動を与えて粉砕する部分と、セレンショットを篩別する部分とが構造的に分離されていてもよい。
【0043】
なお、上記実施形態では、作業者が製造装置100に対してセレンショットを投入する場合について説明したが、これに限らず、セレンショットの投入を自動化してもよい。また、収集ボート12に代えて、Y軸方向に沿った搬送が可能なベルトコンベアを配置することで、セレンショットの回収処理を自動化するようにしてもよい。
【0044】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。