特許第6130134号(P6130134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130134
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/28 20060101AFI20170508BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   A61B17/28
   A61B1/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-280646(P2012-280646)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-124200(P2014-124200A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】597089576
【氏名又は名称】株式会社リバーセイコー
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 誠
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−289593(JP,A)
【文献】 特開2000−175919(JP,A)
【文献】 特開2007−215787(JP,A)
【文献】 特開2005−261734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の処置具案内管内に通される可撓性のシースと、該シースに挿通される操作ワイ
ヤーと、支持軸により互いに軸支されて開放状態と閉止状態とに回動変位する一対の処置
片を備える処置部と、該処置部を回動可能に支持すると共に前記シースと連結する連結機
構と、前記操作ワイヤー後端及び前記シース後端に連結され、前記操作ワイヤーを進退操
作して前記処置片を前記開放状態と前記閉止状態とに変位させる操作部とを含む内視鏡用
処置具であって、
前記連結機構を、円環状の基端部から伸びて前記支持軸を先端に貫通する一対のアーム
を有し、基端部の円環状後端が内方に向かって折曲する鍵状部を設けた先端支持枠と、円
筒状の先端が前記先端支持枠の前記鍵状部に係合するように外周方向に突出すると共に後
端外周に前記シース先端を嵌合する形状の受け枠とにより構成し、
前記受け枠の突出部の後端側であって、前記先端支持枠の基端部の後端側の円筒状内壁
に円環部材が嵌合しており、該円環部材が前記先端支持枠に固着されていることを特徴と
する内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の処置具案内管(チャネル)に進退自在に挿通して使用される内視鏡用処置具に係り、特に内視鏡の処置具案内管内において操作部からの回転力をスムーズに処置部に伝えて回転むらが生じない内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に内視鏡用処置具は、内視鏡を構成するチューブ状の挿入部に開口される処置具案内管(チャネル)に挿入されて使用されるものであり、例えば、鉗子や鋏等の内視鏡用処置具は、先端に患部の切除等を行う為の鉗子カップ等の一対の処置片からなる処置部が連結される操作ワイヤーを円筒状のシース内に挿通し、この操作ワイヤーを進退操作することによって、シース先端において処置部を開閉駆動するのが一般的である。
【0003】
従来技術による内視鏡用処置具が記載された文献としては、下記の特許文献が挙げられる。特許文献1には、先端の処置部の開閉をするために一般的なリンク機構を用いており、シースの先端に設けられた先端本体のスリット(すり割り)内を横断する支持軸によって一対の鉗子カップ(処置片)の略中間部を回動自在に支持すると共に、鉗子カップのシース側端部を各リンク機構の一端と回動自在に連結し、操作ワイヤーを押し込み操作することにより、支持軸を中心として鉗子カップが回動して先端同士が離間すると開放状態となり、操作ワイヤーを牽引操作することにより先端同士が近接して閉止状態とする処置具において、可撓性軸状体に被嵌された金属製の環状の溶接用補助リングと被連結部材の受け孔の縁部との当接部が側方からのレーザ光照射により溶接されることにより、可撓性軸状体の端部が被連結部材に連結固定し、レーザ溶接が不完全に行われて適切な連結強度が得られないことを防止する技術が記載されている。また、特許文献2には、操作ワイヤーの一端を連結ロッドに対して回転自在に保持する保持部を有する連結ロッドを設け、シースの先端側が周方向に回転させられたときに生じるシースと操作ワイヤーとの回転力の差異を連結ロッドに伝えないことによって、操作ワイヤーの進退方向の操作を容易にして処置部の開閉動作を容易にする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−130421号公報
【特許文献2】特開2012−55367公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献に記載された内視鏡用処置具は、開閉する処置部のレーザ溶接を好適に行う技術や処置部の開閉動作を容易に行う技術が記載されているが、内視鏡に開口された処置具案内管(チャネル)に挿入されてシースが湾曲される際に、操作ワイヤー及び密着コイルが真っ直ぐに戻ろうとする復元力が作用し、内視鏡用処置具内の処置部の先端支持枠と受け枠との摺動抵抗並びに内視鏡のチャネル内壁と処置部との摺動抵抗が増加し、操作部からの回転力がスムーズに処置部に伝わらず、回転むらが生じやすいという課題があった。
【0006】
これを図面を用いて詳細に説明すると、従来の内視鏡用処置具は、図4に示すように、密着コイル2b及び外皮チューブ2aからなるシース2と、該シース2に挿通される操作ワイヤー3と、支持軸12により互いに軸支されて開放状態と閉止状態とに回動変位する一対の処置片を備える処置部6と、処置部6を回動可能に支持すると共に前記シースと連結する先端支持枠30及び受け枠31から成る連結機構と、前記操作ワイヤー3の後端及び前記シース2の他端に連結され、前記操作ワイヤー3を進退操作して前記処置片を開放状態と前記閉止状態とに変位させる操作部から成り、前記処置部6は、一対の鉗子カップ8(処置片)と、各鉗子カップ8を1軸支持する支持軸12と、各鉗子カップ8に一対のスライド軸10により回動自在に軸支されたプレート状の一対のリンク13と、該一対のリンクを1軸支持するリンク支持軸11とを有している。そして、前記受け枠31は、密着コイル2bと先端支持枠30の後端とが当接する位置に配置されると共に外皮チューブ2aの先端部分により覆って取り付けられる(先端支持枠30及び密着コイル2bと、外皮チューブの間に取り付けられる)ために寸法L2を長くする必要がある。また図5に示すように、シース2を湾曲させた際に操作ワイヤー3が真っ直ぐに戻ろうとする復元力fとシース2の密着コイル2bが真っ直ぐに戻ろうとする復元力Fとが発生する。
【0007】
このため従来技術による内視鏡用処置具は、図6に示すように、内視鏡100のチャネルに挿通されたとき、受け枠31から処置部6を開閉するための支持軸までの直線状の寸法L3が長く、この寸法L3だけ先端支持枠4と処置部6とが湾曲する内視鏡のチャネル内壁と接する摺動抵抗と、図4に示す受け枠31の先端支持枠30に対して回動可能に接する寸法L2において摺動面の摺動抵抗が増加し、操作部7からの回転力がスムーズに処置部6に伝わらずに回転むらが生じやすいという課題があった。また、寸法L3は直線状であり、このL3の距離が長い為に、内視鏡100に湾曲をかけた状態では内視鏡用処置具の挿通がしづらくなったり、内視鏡100内のファイバーやその他の内蔵物を破損する恐れもあった。
【0008】
このような課題に鑑みて、本発明は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、操作部からの回転力がスムーズに処置部に伝えることができる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために本発明は、内視鏡の処置具案内管内に通される可撓性のシースと、該シースに挿通される操作ワイヤーと、支持軸により互いに軸支されて開放状態と閉止状態とに回動変位する一対の処置片を備える処置部と、該処置部を回動可能に支持すると共に前記シースと連結する連結機構と、前記操作ワイヤー後端及び前記シース後端に連結され、前記操作ワイヤーを進退操作して前記処置片を前記開放状態と前記閉止状態とに変位させる操作部とを含む内視鏡用処置具であって、前記連結機構を、円環状の基端部から伸びて前記支持軸を先端に貫通する一対のアームを有し、基端部の円環状後端が内方に向かって折曲する鍵状部を設けた先端支持枠と、円筒状の先端が前記先端支持枠の前記鍵状部分に係合するように外周方向に突出すると共に後端外周に前記シース先端を嵌合する形状の受け枠とにより構成したことを第1の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、内視鏡の処置具案内管内に通される可撓性のシースと、該シースに挿通される操作ワイヤーと、支持軸により互いに軸支されて開放状態と閉止状態とに回動変位する一対の処置片を備える処置部と、該処置部を回動可能に支持すると共に前記シースと連結する連結機構と、前記操作ワイヤー後端及び前記シース後端に連結され、前記操作ワイヤーを進退操作して前記処置片を前記開放状態と前記閉止状態とに変位させる操作部とを含む内視鏡用処置具であって、前記連結機構を、円環状の先端が外周方向に向かって突出すると共に後端外周に前記シース先端を嵌合する形状の受け枠と、円環状の基端部から伸びて前記支持軸を先端に貫通する一対のアームを有し、基端部の円環状後端を前記受け枠の突出部に向かってカシメ加工した形状の先端支持枠とにより構成したことを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による内視鏡用処置具は、シースの先端と処置部の後端とを連結する連結機構を、円環状の基端部から伸びて処置部を回動支持する支持軸を先端に貫通する一対のアームを有し、基端部の円環状後端が内方に向かって折曲する鍵状部を設けた先端支持枠と、円筒状の先端が先端支持枠の前記鍵状部分に係合するように外周方向に突出すると共に後端外周にシース先端を嵌合する形状の受け枠とにより構成したこと、又は円環状の先端が外周方向に向かって突出すると共に後端外周にシース先端を嵌合する形状の受け枠と、円環状の基端部から伸びて処置部を回動支持するリンク支持軸を先端に貫通する一対のアームを有し、基端部の円環状後端を前記受け枠の突出部に向かってカシメ加工した形状の先端支持枠とにより構成したことによって、回転操作時の摺動抵抗を減少させて操作部からの回転力をスムーズに処置部に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態による処置部の構成を示す図。
図2】本発明の第2実施形態による処置部の構成を示す図。
図3】本発明の実施形態による処置部を内視鏡のチャネルに挿通した状態を説明するための図。
図4】従来技術による処置部の構成を示す図。
図5】従来技術による処置部の湾曲状態を示す図。
図6】従来技術による処置部を内視鏡のチャネルに挿通した状態を説明するための図。
図7】処置部を挿通した内視鏡用処置具の全体構成を示す図。
図8】第1実施形態による連結構造を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による内視鏡用処置具の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
本実施形態による内視鏡用処置具1の全体構造は、図7に示すように、密着コイル2b及び円筒状の外皮チューブ2a(図7では図示せず)からなる可撓性のシース2と、該シース2内に挿通される単線または撚り線からなるステンレス等の可撓性のある線材からなる操作ワイヤー3と、シース2の先端に連結される先端支持枠4と、該先端支持枠4に連結される処置部6と、シース2および操作ワイヤー3の基端側に設けられる操作部7とから構成される。
【0014】
前記密着コイル2bは、ステンレス線等の密着巻きのコイルパイプから形成されており、外周面に例えば四フッ化エチレン樹脂チューブ等のような電気絶縁性の可撓性チューブである外皮チューブ2aが被覆されている。なお、このシース2は、コイルパイプを用いずにPEEK・ポリエチレン・ポリイミド等の樹脂等の可撓性チューブのみで構成されてもよい。
【0015】
前記操作部7は、操作部本体7aと、操作部本体7aに対してスライド自在に取り付けられたスライダ7bとから構成される。操作部本体7aには、図示しないが所定の長さにわたって軸方向に溝が形成されており、その溝にスライダ7bが嵌合されることにより、軸方向にスライド自在となっている。また、操作部本体7aには、シース2の基端が固定されており、スライダ7bには、シース2および操作部本体7aの内部に挿通される操作ワイヤー3の基端が固定されているため、操作部本体7aに対してスライダ7bを軸方向に進退操作することにより、操作ワイヤー3を進退させることができる。なお、図示しないが、スライダ7bに高周波電源を接続することにより、操作ワイヤー3を経由して処置部6に高周波電流を通電することができる。
【0016】
前記処置部6は、図1及び図8に示すように、一対の鉗子カップ8(処置片)と、該一対の鉗子カップ8の後端側を後述する連結機構の一対のアーム部4aにより1軸支持する支持軸12と、前記鉗子カップ8に一対のスライド軸10により回動自在に軸支されたプレート状の一対のリンク13と、該一対のリンク13を1軸支持するリンク支持軸11とを備え、鉗子カップ8が支持軸12によって略中間部を回動自在に軸支され、操作ワイヤー3を押し出すことによりロッド18を介して支持軸12を中心に鉗子カップ8が回動して先端同士が離間して開放状態となり、操作ワイヤー3を牽引することによりロッド18を介して、支持軸12を中心に鉗子カップ8の先端同士が近接して閉止状態となるように構成されている。なお、本例においてはプレート状のリンク13を用いる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば、二股に分かれるようにリンクワイヤを連結し、各リンクワイヤの先端を鉗子カップ8に連結するようにしてもよい。
【0017】
さて、本実施形態による内視鏡用処置具は、処置部6とシース2との連結機構を、図1及び図8に示すように、円環状の基端部から伸びて処置部6を回動支持する支持軸12を先端に貫通する一対のアーム4aを有し、基端部の円環状後端を内方に向かって折曲させた鍵状部を設けた先端支持枠4と、円筒状の先端が先端支持枠4の前記鍵状部分に係合するように外周方向に突出すると共に後端外周にシース2を嵌合する形状の受け枠20とにより構成している。このように構成することにより、従来においては先端支持枠30の後端と密着コイル2bの先端とが当接する位置に配置されるため受け枠31の寸法L2(図4)を長くする必要があるのに対し、受け枠20の外周面に密着コイル2bを嵌合して接合することによって、操作ワイヤー3を回動させた際の受け枠20と先端支持枠4との摺動寸法L1を従来技術による摺動寸法L2(図4)に比べて約1/4に短くするように構成されている。
尚、本実施形態による先端支持枠4の鍵状部は、先端に一対のアーム4aを設けた円環状の基端部の後端側から受け枠20を挿入した後、受け枠20の後端側から先端支持枠4の円筒状内壁に嵌合する円環部材4bを挿入してレーザー溶接等で固着することにより形成される。
【0018】
このため本実施形態による内視鏡用処置具は、図4に示した先端支持枠4のシース側端部から処置部6を開閉するための支持軸12までの直線状の寸法L3に比べて寸法L4のように短くすることができ、操作ワイヤー3を回動させた際の受け枠20と先端支持枠4との摺動寸法(L1)と先端支持枠4のシース側端部から処置部6を開閉するための支持軸12までの直線状の寸法(L4)(硬直部)を減少させたことによって、操作部7からの回転力をスムーズに処置部6に伝えることができる。
また、硬直部の寸法L3は従来例に比べてはるかに短くできるので、内視鏡チャンネル内に容易に挿脱出来る。
【0019】
[第2実施形態]
前記実施形態においては処置部6とシース2及び密着コイル5との連結機構として、円環状後端を内方に向かって折曲させた鍵状部を設けた先端支持枠4と、先端が先端支持枠4の前記鍵状部分に係合するように外周方向に突出すると共に後端外周にシース2を嵌合する形状の受け枠20を使用する例を説明したが、本発明はこの連結機構に限られるものではなく、例えば図2に示すように、円環状の先端が外周方向に向かって突出すると共に後端外周にシース2を嵌合する形状の受け枠20と、円環状の基端部から伸びて処置部6を回動支持する支持軸12を先端に貫通する一対のアーム4aを有し、基端部の円環状後端を前記受け枠20の突出部に向かってカシメ加工した形状の先端支持枠4とにより構成しても良い。
【0020】
この第2の実施形態による内視鏡用処置具は、前述のカシメ構造によって操作ワイヤー3を回動させた際の受け枠20と先端支持枠4との摺動する部分を削除することによって、第1実施形態の構造に比べて更に操作部7からの回転力をスムーズに処置部6に伝えることができる。
【符号の説明】
【0021】
2 シース
2a 外皮チューブ
2b 密着コイル
3 操作ワイヤー
4、30 先端支持枠
4a アーム部
6 処置部
8 各鉗子カップ
12 支持軸
20、31 受け枠
30 先端支持枠
100 内視鏡


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8