(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130145
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】自動二輪車用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20170508BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20170508BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20170508BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
B60C9/18 J
B60C9/08 B
B60C9/22 A
B60C9/22 G
B60C11/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-1332(P2013-1332)
(22)【出願日】2013年1月8日
(65)【公開番号】特開2014-133439(P2014-133439A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】時任 泰史
(72)【発明者】
【氏名】若林 省次
(72)【発明者】
【氏名】梶本 勝彦
【審査官】
細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−247061(JP,A)
【文献】
特開2012−240574(JP,A)
【文献】
特開2005−193785(JP,A)
【文献】
特開2009−001080(JP,A)
【文献】
特開2009−173248(JP,A)
【文献】
特開2011−121408(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/037805(WO,A1)
【文献】
特開2008−162354(JP,A)
【文献】
特開2001−055010(JP,A)
【文献】
特開2001−301422(JP,A)
【文献】
特開平03−074205(JP,A)
【文献】
特開平07−144505(JP,A)
【文献】
特開平07−081311(JP,A)
【文献】
特開2000−038008(JP,A)
【文献】
特開2004−217127(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/041859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、該ビード部に連なる一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間にトロイド状をなして連なるトレッド部と、これら各部を前記ビード部相互間にわたり補強する1層のカーカスプライからなるカーカスと、を備えた自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部のタイヤ赤道を挟むタイヤ幅方向中央の領域をセンター部、該センター部のタイヤ幅方向両外側をショルダー部としたとき、JATMAで規定される正規内圧、無負荷の状態で、前記センター部の外輪郭の曲率半径Rc(mm)と、前記ショルダー部の外輪郭の曲率半径Rs(mm)と、が下記式(1)、
Rc>Rs・・・(1)
で表される関係を満足し、かつ、
前記カーカスのタイヤ半径方向外側に、ベルト層として、タイヤ周方向に対して傾斜する1層の傾斜ベルト層と、該傾斜ベルト層のタイヤ半径方向外側に、補強コードが周方向に螺旋状に巻回された1層のスパイラルベルト層と、のみを備えてなり、かつ、
前記カーカスプライが、前記一対のビード部にそれぞれ埋設されたビードコア間でトロイド状に延びるカーカスプライ本体と、前記一対の周りに内側から外側に巻き上げられた折り返し部からなり、該折り返し部が、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側で終端し、前記折り返し部が前記傾斜ベルト層と重ならないことを特徴とする自動二輪車用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記傾斜ベルト層のタイヤ周方向に対する角度が90±10°の範囲である請求項1記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
【請求項3】
JATMAで規定される正規内圧、無負荷の状態における前記センター部のタイヤ幅方向における外輪郭の長さLc(mm)が、前記トレッド部の両端部を結ぶ外輪郭の長さL(mm)の30〜45%である請求項1または2記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記Rcと前記Rsとが下記式(2)、
Rc/Rs<2.0・・・(2)
で表される関係を満足する請求項1〜3のうちいずれか一項記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車用空気入りタイヤ、特に高速走行用のタイヤにおいては、特許文献1に記載のタイヤのように、2層以上のカーカスプライからなるカーカスと、補強コードが周方向に螺旋状に巻回されてなるスパイラルベルト層からなるベルトと、を備えてなるものが主流であった。カーカスプライを2層配置する理由は、スパイラルベルト層は面内曲げ剛性が低いため、スパイラルベルト層だけでは旋回に必要な横力を確保することができないためである。すなわち、旋回時における操縦安定性を確保するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−162354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カーカスプライが2層の場合、タイヤの偏心剛性が高くなってしまうという問題がある。ここで、偏心剛性とは、サイドウォール部の剛性をいい、この偏心剛性が高くなると、トレッド部の歪エネルギーロスが高くなり、転がり抵抗が悪化してしまう懸念がある。このように、従来の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、操縦安定性と転がり抵抗の低減とを両立することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、操縦安定性を低下させることなく、従来よりも、転がり抵抗を低減した自動二輪車用空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、一対のビード部と、該ビード部に連なる一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間にトロイド状をなして連なるトレッド部と、これら各部を前記ビード部相互間にわたり補強する1層のカーカスプライからなるカーカスと、を備えた自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部のタイヤ赤道を挟むタイヤ幅方向中央の領域をセンター部、該センター部のタイヤ幅方向両外側をショルダー部としたとき、JATMAで規定される正規内圧、無負荷の状態で、前記センター部の外輪郭の曲率半径Rc(mm)と、前記ショルダー部の外輪郭の曲率半径Rs(mm)と、が下記式(1)、
Rc>Rs・・・(1)
で表される関係を満足し、かつ、
前記カーカスのタイヤ半径方向外側に、ベルト層として、タイヤ周方向に対して傾斜する1層の傾斜ベルト層と、該傾斜ベルト層のタイヤ半径方向外側に、補強コードが周方向に螺旋状に巻回された1層のスパイラルベルト層と、のみを備えてなり、かつ、
前記カーカスプライが、前記一対のビード部にそれぞれ埋設されたビードコア間でトロイド状に延びるカーカスプライ本体と、前記一対の周りに内側から外側に巻き上げられた折り返し部からなり、該折り返し部が、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側で終端し、前記折り返し部が前記傾斜ベルト層と重ならないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操縦安定性を低下させることなく、転がり抵抗を低減した自動二輪車用空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一好適な実施の形態に係る自動二輪車用空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。図示するように、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、一対のビード部1と、ビード部1に連なる一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2間にトロイド状をなして連なるトレッド部3と、これら各部をビード部1相互間にわたり補強する少なくとも1層のカーカスプライからなるカーカス4と、を備える。
【0010】
本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、トレッド部3のタイヤ赤道を挟むタイヤ幅方向中央の領域をセンター部3a、センター部3aのタイヤ幅方向両外側をショルダー部3b、としたとき、JATMAで規定される正規内圧、無負荷の状態で、センター部3aの外輪郭の曲率半径Rc(mm)とショルダー部3bの外輪郭の曲率半径Rs(mm)が次式(1)、Rc>Rs・・・(1)で表される関係を満足する。センター部3aの外輪郭の曲率半径Rcをショルダー部3bの外輪郭の曲率半径Rsよりも大きくすることで、トレッド部3の変形を少なくすることができる。これにより、トレッド部3の歪エネルギーロスが低下するため、転がり抵抗が低下する。かかる効果を良好に得るためには、Rc>1.5×Rsであることが好ましい。
【0011】
なお、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、センター部の曲率半径Rcが大きいため接地点移動量が増加し、傾けたタイヤが起きようとする力が増加することが懸念されるが、後述する傾斜ベルト層およびスパイラルベルト層を組み合わせると横力は大きくならないため、ハンドリングが重くなることはない。一方、ショルダー部の曲率半径Rsが小さいため、トレッド全体としての外輪郭を形成する曲率半径は大きくなりすぎず、旋回性能を低下させることがない。これはトレッド縁部からタイヤ赤道までのタイヤ半径方向の高さをTH、トレッド幅をTWとしたとき、TW/THの値を従来の形状と同等の値とすることができ、これにより適切な接地幅を確保することができるためである。
【0012】
また、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、カーカス4のタイヤ半径方向外側に、ベルト層として、タイヤ周方向に対して傾斜する1層の傾斜ベルト層5と、傾斜ベルト層5のタイヤ半径方向外側に、補強コードが周方向に螺旋状に巻回された1層のスパイラルベルト層6と、のみを備える。上述の通り、本発明のタイヤは、RcをRsよりも大きくすることで、トレッド部3の変形を抑制し、転がり抵抗の低減を実現している。しかしながら、トレッド部3の接地面積が増大するため、旋回時の倒しこみ初期の軽快性(旋回応答性)が低下し、旋回性能が低下してしまうという問題が生じる。そこで、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、カーカス4のタイヤ半径方向外側に傾斜ベルト層5を1層配置している。これにより、旋回性能(旋回安定性および旋回応答性)を低下させることなく転がり抵抗の低減を図っている。
【0013】
通常、傾斜ベルト層5が1層では、周方向面内曲げ剛性を十分に向上させることができず、横力が不足してしまう。しかしながら、本発明のタイヤにおいては、センター部3aの外輪郭の曲率半径Rcが大きいため、十分な接地面積が確保できているので、トレッド部3による横力を補い、旋回性能を維持しつつ、転がり抵抗の低減が可能となっている。なお、タイヤ周方向に対し所定の角度をなすコード層を層間で互いに交錯する交錯ベルトを配置すると、交錯ベルトは幅方向面外曲げ剛性が非常に高く、トレッド部の変形が妨げられるため、旋回性能が低下してしまう。
【0014】
さらに、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、傾斜ベルト層5のタイヤ半径方向外側に、補強コードが周方向に螺旋状に巻回された1層のスパイラルベルト層6を備えている。タイヤの補強材として、傾斜ベルト層5が1層のみであると、タイヤ形状保持性が不足し、走行時にショルダー部3bのせり出しが生じるおそれがある。そこで、本発明のタイヤにおいては、傾斜ベルト層5のタイヤ径方向外側に、スパイラルベルト層6を配置している。スパイラルベルト層6は、補強コードが周方向に延びているため、面内曲げ剛性を増加させることはない。一方、スパイラルベルト層6は、トレッド部3の接地面の剛性を向上させることができるため、転がり抵抗を低下させることができる。
【0015】
本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、カーカス4は1層のカーカスプライからなることが好ましい。カーカスプライを1層とすることで、偏心剛性を下げることができるため、転がり抵抗を効果的に低減させることができる。また、本発明のタイヤにおいては、カーカスプライは一対のビード部1にそれぞれ埋設されたビードコア7間でトロイド状に延びるカーカスプライ本体4aと、一対の周りに内側から外側に巻き上げられた折り返し部4bからなり、折り返し部4bは、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側で終端する。最大幅位置より径方向外側の場合、カーカスプライの折り返し部4aが、傾斜ベルト層5と重なる位置近くまで巻き上げられることになり、サイドウォール部2の剛性が大きくなってしまうため、偏心剛性を良好に低下させることができないからである。なお、カーカスプライを1層とすると、面内曲げ剛性が十分に確保できずに横力が小さいため、ハンドリング性が悪化する懸念があるが、本発明のタイヤにおいてはセンター部3aの曲率半径Rcを大きくとってあるため、接地面積が増加し、横力を確保することができるため、問題ない。
【0016】
また、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、傾斜ベルト層5のタイヤ周方向に対する傾斜角度は90±10°の範囲であることが好ましい。本発明のタイヤは、傾斜ベルト層5は1層のみであるため、この1層の傾斜ベルト層5のみで周方向面内曲げ剛性を良好に得ることが好ましい。周方向面内曲げ剛性を良好に向上させるためには、傾斜ベルト層5のコード角度はタイヤ幅方向に近いほうが好ましいため、傾斜ベルト層5の傾斜角度を上記範囲としている。これによりタイヤ幅方向における剛性を良好に得ることができるため、旋回安定性がさらに向上する。
【0017】
さらに、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、JATMAで規定される正規内圧、無負荷の状態におけるセンター部3aのタイヤ幅方向における外輪郭の長さLc(mm)は、トレッド部3の両端部を結ぶ外輪郭の長さL(mm)の30〜45%であることが好ましい。LcがLの30%未満であると、転がり抵抗を十分に低下させることができない場合があるからである。一方、LcがLの45%を超えると、旋回応答性が低下してしまう場合があるため好ましくない。
【0018】
さらにまた、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、センター部3aの外輪郭の曲率半径Rcと、ショルダー部3bの外輪郭の曲率半径Rsとが次式(2)、Rc/Rs<2.0・・・(2)で表される関係を満足することが好ましい。Rc/Rsが2.0以上になると、センター部3aとショルダー部3bの外輪郭の曲率半径の差が大きすぎるため、旋回時に曲率半径の変曲点(センター部3aとショルダー部3bの境目)で大きく挙動が変化してしまう。そのため、旋回性能が悪化してしまうおそれがある。
【0019】
また、本発明のタイヤ10においては、Rc(mm)は、70〜100の範囲であることが好ましい。Rc(mm)が70未満だと接地面積が有効に確保できない場合があるからである。一方、Rc(mm)が100を超えてしまうと旋回性能が低下する場合があるため好ましくない。そこで本発明のタイヤにおいては、好ましくはRc(mm)を70〜100として、良好に接地面積、および旋回性能を確保している。
【0020】
さらに、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤにおいては、カーカス4のタイヤ周方向に対する角度は、90±20°の範囲であることが好ましい。カーカス4の角度を上記範囲とすることで、トレッド部3の周方向面内曲げ剛性が向上し、旋回時の安定性が向上する。本発明のタイヤにおいては、カーカス4のタイヤ周方向に対する角度が上記範囲外になると、形状保持性が低下するおそれがあり、耐久性の面から好ましくない。
【0021】
本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、トレッド部3の外輪郭の曲率半径Rc、Rs、およびベルト層の構造が上記関係を満足することのみが重要であり、それ以外の構成については特に制限はなく、公知の構造および材料を適宜適用して構成することができる。
【0022】
例えば、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤの骨格をなすカーカス4は、比較的高弾性のテキスタイルコードを互いに平行に配列して形成される。カーカス4の両端部は、
図1に示すようにビードコア7の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止することが好ましいが、両側からビードワイヤで挟み込んで係止してもよく(図示せず)、いずれの固定方法を用いてもよい。本発明の自動二輪車用空気入りタイヤの傾斜ベルト層5のベルトコードについても特に制限はなく、既知の非伸張性高弾性コードを用いることができ、例えば、芳香族アラミドコードやスチールコードを好適に用いることができる。
【0023】
また、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤのスパイラルベルト層6は、1本のコードをゴムで被覆した長尺状のゴム被覆コードまたは複数本のコードをゴムで被覆した帯状プライを周方向に螺旋状に巻回して形成されたものであり、そのコードとしては、スチールコードの他、アラミド(例えば、デュポン社製 商品名:ケブラー)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、レーヨン、ナイロン等の有機繊維、さらにはグラスファイバーやカーボンファイバー等の材質のものを適宜選択して用いることができる。
【0024】
さらに、タイヤの最内層にはインナーライナーが配置され(図示せず)、トレッド部12の表面には、適宜トレッドパターンが形成されている(図示せず)。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例1〜9および比較例2>
図1に示すタイプの断面構造を有する自動二輪車用空気入りタイヤを、タイヤサイズ120/70R15M/Cにて作製した。JATMA規格で規定される正規内圧、無負荷の状態におけるトレッド部3のセンター部3aの外輪郭の曲率半径Rc(mm)、ショルダー部3bの外輪郭の曲率半径Rs(mm)、トレッド部3のタイヤ幅方向における外輪郭の長さL(mm)、タイヤ幅方向におけるセンター部3aの外輪郭の長さLc(mm)、カーカスプライの折り返し部3bの位置、傾斜ベルト層5の角度、カーカス4の角度は表1、2に示すとおりである。得られた各供試タイヤをJATMA規格(2012年度版)に定める標準リムに組み込み、上記規格に定める適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力に対応する空気圧を充填した。その後、下記の手順に従って、横力および転がり抵抗について評価した。
【0026】
なお、スパイラルベルト層は、直径0.18mmのスチールワイヤを1×5タイプで撚ったスチールコードを被覆ゴム中に埋設し、得られた帯状体を赤道方向に螺旋巻きして形成した。打ち込み数は50本/50mmとした。
【0027】
<従来例および比較例1>
従来例および比較例1のタイヤは、カーカスプライを2層とし、傾斜ベルト層を設けなかった以外は実施例1と同様にしてタイヤを作製した。得られたタイヤについて、実施例1と同様の評価を行った。
【0028】
<横力>
直径3mのスチール製のドラムに、#40番の紙やすりを貼り付けて路面に見立てて試験を行った。各供試タイヤを、キャンバー角0°および50°の2つの条件のもと、スリップ角1°でドラムに押し付けて、時速100km/hで回転させ、このときの横力を、タイヤの回転軸に取り付けた3分力計にて測定した。横力の測定は、タイヤが回転し始めて5分の時のものを計測した。このときのショルダー部のトレッド温度は十分に暖められ、約120℃になっていた。結果は、従来例の横力を100として指数で示した。指数が大きいほど横力が大きく、操縦安定性に優れていることを意味する。なお、横力は指数として90以上であれば、実用上問題のないレベルである。
【0029】
<転がり抵抗>
転がり抵抗試験機を用いて、スリップ角度0°、キャンバー角0°、時速80kmの条件で測定して評価した。結果は、従来例の転がり抵抗を100として指数で示した。指数が小さいほど抵抗が少ないことを意味し、転がり抵抗指数が90以下の場合を合格とした。
【0030】
<旋回応答性>
ライダーによるフィーリング試験により評価した。得られた結果を、従来例を100とした指数として、下記表1中に併記した。数値が大きいほど性能が良好であることを示す。
【0031】
【表1】
※1:タイヤ周方向に対する角度
※2:タイヤ最大幅よりタイヤ径方向内側
※3:タイヤ最大幅よりタイヤ径方向外側
【0032】
上記表1からわかるように、本発明の自動二輪車用空気入りタイヤは、操縦安定性を低下させることなく、転がり抵抗が低減できている。
【符号の説明】
【0033】
1 ビード部、 2 サイドウォール部、 3 トレッド部、 4 カーカス、 5 傾斜ベルト層、 6 スパイラルベルト層、 10 自動二輪車用空気入りタイヤ