特許第6130154号(P6130154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130154
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/00 20060101AFI20170508BHJP
   C09J 4/06 20060101ALI20170508BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170508BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20170508BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20170508BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C08F290/00
   C09J4/06
   C09J11/06
   C09J109/00
   B32B27/18 Z
   B32B27/30 A
【請求項の数】19
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-17967(P2013-17967)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-148606(P2014-148606A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】比舎 佑基
(72)【発明者】
【氏名】深尾 健司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
(72)【発明者】
【氏名】依田 公彦
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−144634(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/027041(WO,A1)
【文献】 特開2014−095080(JP,A)
【文献】 特開2001−316434(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/086930(WO,A1)
【文献】 特開2012−046658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00−290/14
C08F 299/00
C09J 4/06
C09J 11/06
C09J 109/00−109/10
B32B 27/18
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)を含有する硬化性樹脂組成物。
(A)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマー100質量部
(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマー400質量部を超え600質量部以下
(C)EO鎖−(CHCHO)n−を有するフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート100質量部を超え400質量部以下(但し、n=4以上)
(D)アルキルフェノン系光重合開始剤及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群のうちの1種以上の光重合開始剤
(E)フェノール系/硫黄系酸化防止剤
【請求項2】
更に、(F)成分として、シランカップリング剤を含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分のジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上の骨格である請求項1〜2のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分のジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上の骨格である請求項1〜2のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分の分子量が500〜70000である請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分の分子量が500〜70000である請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
(E)成分が、同一分子内にフェノール基と硫黄を有する酸化防止剤である請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(E)成分が、フェノール基を有する酸化防止剤と硫黄を有する酸化防止剤を併用する請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
硬化収縮率が2.0%以下である請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤組成物。
【請求項11】
請求項10記載の接着剤組成物の硬化体。
【請求項12】
請求項11記載の硬化体により被着体が被覆又は接合された複合体。
【請求項13】
前記被着体がトリアセチルセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ガラス、金属からなる群から選ばれる1種以上である請求項12に記載の複合体。
【請求項14】
請求項10に記載の接着剤組成物により被着体を貼り合わせたタッチパネル積層体。
【請求項15】
請求項10に記載の接着剤組成物により被着体を貼り合わせた液晶パネル積層体。
【請求項16】
請求項14に記載のタッチパネル積層体を用いたディスプレイ。
【請求項17】
請求項15に記載の液晶パネル積層体を用いたディスプレイ。
【請求項18】
硬化性樹脂組成物をダム剤とフィル剤として使用した場合、ダム剤とフィル剤の400nm透過率差が1%以下、屈折率差が0.01%以下である請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
1000mJ/cm以上の紫外線照射により、幅1mm以上の光非透過部を硬化できる請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD(液晶ディスプレイ)等の表示体の上に搭載するタッチパネルには、抵抗膜式、静電容量式、電磁誘導式、光学式等がある。これらのタッチパネルの表面に、見た目のデザイン性を良くする化粧板や、タッチする位置を指定するアイコンシートを貼り合わせる場合がある。静電容量式タッチパネルは、透明基板の上に透明電極を形成し、その上に透明板を貼り合わせた構造を有している。
【0003】
従来、化粧板とタッチパネルとの貼り合わせ、アイコンシートとタッチパネルとの貼り合わせ、透明基板と透明板の貼り合わせには、接着剤を用いていた。特許文献1は、(A)ポリイソプレン、ポリブタジエン又はポリウレタンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)柔軟化成分、並びに(C1)フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートから選択した(メタ)アクリレートモノマーを含む光硬化型樹脂組成物が記載されている。しかし、本発明は、(C)EO鎖を有するフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの使用量を、(A)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマー100質量部に対して、100質量部を超え400質量部以下にすることにより、タッチパネルとの貼り合わせ、アイコンシートとタッチパネルとの貼り合わせ、透明基板と透明板の貼り合わせに対して、好適であることを見出した。この使用量は、特許文献1の実施例と異なるものであり、特許文献1に記載がない。
【0004】
近年、LCD等の表示体のガラスが薄くなってきている。ガラスが薄くなると外部応力でLCDが変形しやすくなる。薄いガラスを用いたLCD等の表示体と、アクリル板やポリカーボネート板等の光学機能材料とを、貼り合わせた場合、ガラスとアクリル等の線膨張の違いや、アクリル板やポリカーボネート等のプラスチック成型材の成型時の歪みにより、耐熱試験や耐湿試験において成型歪みの緩和や吸湿/乾燥が起こり、寸法変化や反り等の面精度変化が起きる。
【0005】
従来の接着剤(例えば、特許文献2)でこの変形を抑えようとした場合、接着面が剥がれたり、LCDが割れたり、LCDが表示ムラになったりするという課題があった。特許文献2では、ウレタン系(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系(メタ)アクリレート、及びイソプレン系(メタ)アクリレートを成分とする硬化樹脂が記載されている。本発明は、(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマーの使用量を、(A)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマー100質量部に対して、400質量部を超え600質量部以下にすることにより、寸法変化や反り等の面精度変化が起きないことを見出した。この使用量は、特許文献2に記載がない。
【0006】
従来の接着剤として、特許文献3のようなUV硬化型樹脂が挙げられる。特許文献3はイソボルニル(メタ)アクリレートのような剛直な骨格モノマーをベースとした高弾性樹脂であるが故に、高温信頼性試験において被着体の膨張収縮に耐えることができず、剥がれを生じてしまう可能性があった。本発明は、(C)EO鎖を有するフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを使用することにより、高温信頼性試験において被着体の膨張収縮に耐える設計を見出した。本発明は、イソボルニル(メタ)アクリレートのような剛直な骨格のモノマーを使用しなくても良い。
【0007】
貼り合わせ面に印刷加工がしてあると、印刷加工の部分は光エネルギー線による接着が難しく、未硬化部の影響により接着性が低下するという課題があった。
【0008】
化粧板とタッチパネルとの貼り合わせ、アイコンシートとタッチパネルとの貼り合わせ、透明基板と透明板の貼り合わせ等といった用途では、使用環境を想定した加温雰囲気での被着体の変形に追随できる程度の柔軟性を有することが望ましいとされている。
【0009】
一方、使用環境を想定した加温雰囲気での被着体の変形に追随できる程度の柔軟性を有するが故に、耐熱試験後の着色、変色、耐湿試験後の強度低下といった課題があることも明らかとなっている。上記課題の解決策として、特許文献4は、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上のオリゴマーとヒンダードアミンとを含有する光硬化型接着組成物が記載されている。本発明は、(E)フェノール系/硫黄系酸化防止剤を用いることにより、耐熱試験後の着色、変色、耐湿試験後の強度低下といった問題が起こらないことを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2010/027041号
【特許文献2】特開2004−77887号公報
【特許文献3】特開昭64−85209号公報
【特許文献4】特開2012−46658公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、例えば、タッチパネル等の表示体に使用される化粧板やアイコンシートを貼り合わせる場合、透明基板と透明基板とを貼り合わせる場合、印刷加工された部分を貼り合わせる場合に、十分な接着性を付与することが困難であるという従来技術の課題、表示体と光学機能材料とを貼り合わせる場合に、接着面が剥がれたり、表示体のガラスが割れたりするという従来技術の課題、耐熱、耐湿試験後の変色、強度低下という従来技術の課題を解決する、硬化性樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明は、例えば、タッチパネル等の表示体に使用される化粧板やアイコンシートを貼り合わる場合に使用する硬化性樹脂組成物を提供する。本発明は、例えば、紫外線等の光が直接当たらない部分(例えば、印刷加工された下地部分)を硬化させることができないという従来技術の課題を解決する、硬化性樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明は、タッチパネル等の表示体に使用される化粧板やアイコンシートを貼り合わせる場合、透明基板と透明基板とを貼り合わせる場合、印刷加工された部分を貼り合わせる場合に、硬化性樹脂組成物のはみ出し防止を目的としたダム剤としての役割も担う、硬化性樹脂組成物を提供する。本発明は、ダム剤と、面内を充填するフィル剤との、境界が見えないという効果を有する、硬化性樹脂組成物を提供する。ダム剤とフィル剤の間で境界を無くすことにより、表示体の光学ムラを抑制することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)下記(A)〜(E)を含有する硬化性樹脂組成物。
(A)(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマー100質量部
(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマー400質量部を超え600質量部以下
(C)EO鎖−(CHCHO)n−を有するフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート100質量部を超え400質量部以下(但し、n=4以上)
(D)アルキルフェノン系光重合開始剤及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群のうちの1種以上の光重合開始剤
(E)フェノール系/硫黄系酸化防止剤
(2)更に、(F)成分として、シランカップリング剤を含有する硬化性樹脂組成物。
(3)(A)成分のジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上の骨格である硬化性樹脂組成物。
(4)(B)成分のジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上の骨格である硬化性樹脂組成物。
(5)(A)成分の分子量が500〜70000である硬化性樹脂組成物。
(6)(B)成分の分子量が500〜70000である硬化性樹脂組成物。
(7)(E)成分が、同一分子内にフェノール基と硫黄を有する酸化防止剤である硬化性樹脂組成物。
(8)(E)成分が、フェノール基を有する酸化防止剤と硫黄を有する酸化防止剤を併用する硬化性樹脂組成物。
(9)硬化収縮率が2.0%以下である請求項1〜8に記載の硬化性樹脂組成物。
(10)硬化性樹脂組成物からなる接着剤組成物。
(11)接着剤組成物の硬化体。
(12)硬化体により被着体が被覆又は接合された複合体。
(13)被着体がトリアセチルセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ガラス、金属からなる群から選ばれる1種以上である複合体。
(14)接着剤組成物により被着体を貼り合わせたタッチパネル積層体。
(15)接着剤組成物により被着体を貼り合わせた液晶パネル積層体。
(16)タッチパネル積層体を用いたディスプレイ。
(17)液晶パネル積層体を用いたディスプレイ。
(18)硬化性樹脂組成物をダム剤とフィル剤として使用した場合、ダム剤とフィル剤の400nm透過率差が1%以下、屈折率差が0.01%以下である硬化性樹脂組成物。
(19)1000mJ/cm以上の紫外線照射により、幅1mm以上の光非透過部を硬化できる硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、例えば、熱による着色や変色、耐湿試験後の強度低下をなくした硬化性樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)成分は、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマーである。
【0017】
本発明における該オリゴマーの主鎖骨格は、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格である。ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上の骨格が好ましい。これらの中では、接着耐久性が大きい点で、ポリブタジエン及びポリイソプレンからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ポリイソプレンがより好ましい。
【0018】
該オリゴマーは、上記主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。これらの中では、主鎖骨格の両末端に(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
【0019】
該オリゴマーの分子量は500〜70000が好ましく、1000〜60000がより好ましく、1000〜55000が最も好ましい。分子量がこの範囲であれば、本発明の硬化体の硬度が高いので接着剤層を形成しやすくなり、硬化性樹脂組成物の粘度が小さいので製造過程での混合等における作業性や実用用途において作業性が良好になる。
【0020】
本発明の分子量は、分子1個あたりの平均の分子量として算出される数平均分子量を指す。本発明の実施例では、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した、ポリスチレン換算の数平均分子量を使用した。具体的には、平均分子量は、下記の条件にて、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、GPCシステム(東ソ−社製SC−8010)を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求めた。
【0021】
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー社製「TSK guardcolumn MP(×L)」6.0mmID×4.0cm1本、及び東ソー社製「TSK−GELMULTIPOREHXL−M」7.8mmID×30.0cm(理論段数16,000段)2本、計3本(全体として理論段数32,000段)、
サンプル注入量:100μl(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm
検出器:RI検出器
【0022】
(A)成分のオリゴマーとしては、イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル化物オリゴマー(構造は下記式(1)参照、クラレ社製「UC−203」等)、日本曹達社製「TEAI−1000」(末端アクリル変性した水素添加1,2−ポリブタジエンオリゴマー)、日本曹達社製「TE−2000」(末端アクリル変性した1,2−ポリブタジエンオリゴマー)等が挙げられる。これらの中では、イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとのエステル化物オリゴマーが好ましい。
【0023】
【化1】




【0024】
(B)成分は、(メタ)アクリロイル基を有さず、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマーである。
【0025】
本発明における該オリゴマーの主鎖骨格は、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格である。ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上の骨格が好ましい。これらの中では、接着耐久性が大きい点で、ポリブタジエン及びポリイソプレンからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ポリブタジエンがより好ましい。
【0026】
該オリゴマーの分子量は500〜70000が好ましく、1000〜60000がより好ましく、1000〜55000が最も好ましい。分子量がこの範囲であれば、硬化体の硬度が高いので接着剤層を形成しやすくなり、硬化性樹脂組成物の粘度が小さいので製造過程での混合等における作業性や実用用途において作業性が良好になる。
【0027】
(B)成分のオリゴマーとしては、クラレ社製「LIR−50」(イソプレンオリゴマー)、クラレ社製「LBR−307」「LBR−305」(ブタジエンオリゴマー)、東洋紡社製「バイロン」(非晶質ポリエステル樹脂)等が挙げられる。これらの中では、イソプレンオリゴマー、1,2−ポリブタジエンオリゴマー、及び1,4−ポリブタジエンオリゴマーからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、1,2−ポリブタジエンオリゴマーと1,4−ポリブタジエンオリゴマーからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0028】
(C)成分は、EO(エチレンオキシド)鎖−(CHCHO)n−を有するフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。ここで、nは4以上である。フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの中では、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。(C)成分のエチレンオキシド鎖−(CHCHO)n−は、n=10以下が好ましく、n=8以下がより好ましい。これらの(メタ)アクリレートは1種類又は2種類以上を使用できる。
【0029】
(D)光重合開始剤としては、アルキルフェノン系光重合開始剤及びアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群のうちの1種以上が挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの1種以上が使用できる。
【0030】
(E)成分は、フェノール系/硫黄系酸化防止剤である。フェノール系/硫黄系酸化防止剤は、フェノール基と硫黄を有する酸化防止剤である。フェノール系/硫黄系酸化防止剤としては、同一分子内にフェノール基及び硫黄を有する酸化防止剤が挙げられる。フェノール系/硫黄系酸化防止剤としては、フェノール基を有する酸化防止剤と硫黄を有する酸化防止剤を併用するものが挙げられる。
【0031】
同一分子内にフェノール基及び硫黄を有する酸化防止剤としては、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−O−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−O−クレゾール、4,6−ビス(アルキルチオメチル)−O−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、ジオクタデシル3,3‘−チオジプロピオネート、ジドデシル3,3‘−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0032】
フェノール基を有する酸化防止剤と硫黄を有する酸化防止剤を併用する場合、フェノール系酸化防止剤としては、分子内にフェノール基を有する酸化防止剤であれば特に限定はなく、下記式(2)の構造を有する酸化防止剤が好ましい。
【0033】
【化2】



【0034】
フェノール基を有する酸化防止剤と硫黄を有する酸化防止剤を併用する場合、フェノール系酸化防止剤としては、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0035】
フェノール基を有する酸化防止剤と硫黄を有する酸化防止剤を併用する場合、硫黄系酸化防止剤としては、分子内に硫黄を有す酸化防止剤であれば特に限定は無く、下記式(3)の構造を有する酸化防止剤が好ましい。
【0036】
【化3】



【0037】
酸化防止機能を有する骨格としては、炭化水素基を有する骨格、カルボニル基を有する骨格、ケトン基を有する骨格、エーテル基を有する骨格等が挙げられる。これらの中では、アルキルプロピオネート基が好ましい。
【0038】
硫黄系酸化防止剤としては、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオクチル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0039】
本発明ではガラスへの密着力を向上させる目的で、(F)成分として、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中では、ガラス等への接着性の点で、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群のうちの1種以上が好ましく、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物は前記(A)〜(D)成分を含有することにより、硬化収縮率が2.0%以下を示す。硬化収縮率は体積比重法より算出する。小さい硬化収縮率により、例えば、タッチパネル等の表示体に使用される化粧板やアイコンシートを貼り合わる場合に、応力、熱、湿度等の外的因子による剥がれを抑制することが可能となる。
【0041】
本発明は、前記(A)〜(D)成分を含有することにより、光や紫外線で硬化させることが可能になる。本発明は、前記(A)〜(D)成分を含有することにより、例えば、タッチパネル等の表示体に使用される化粧板やアイコンシートを貼り合わる場合、特に紫外線などの光が直接当たらない部分(印刷加工された下地部分等)を硬化させることができる。本発明は、例えば、1000mJ/cm以上の紫外線により、印刷加工された下地部分を幅1mm以上硬化させることができる。
【0042】
(B)成分の使用量は、硬化性樹脂組成物の被着体に対するに対する接着性が特段に高くなり、且つ、硬化性が良好となる点で、(A)成分100質量部に対して、400質量部を超え600質量部以下が好ましく、401〜500質量部がより好ましく、401〜450質量部が最も好ましい。
【0043】
(C)成分の使用量は、硬化性樹脂組成物の被着体に対するに対する接着性が特段に高くなり、且つ、硬化性が良好となる点で、(A)成分100質量部に対して、100質量部を超え400質量部以下が好ましく、101〜400質量部がより好ましく、101〜350質量部が最も好ましい。
【0044】
(D)成分の使用量は、硬化性樹脂組成物の被着体に対するに対する接着性が特段に高くなり、且つ、硬化性が良好となる点で、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0045】
(E)成分の使用量は、硬化性樹脂組成物の熱による着色や変色が小さく、耐湿試験後の強度低下が小さい点で、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0046】
(F)成分の使用量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に各被着体に対する接着性を一層向上させることを目的に、(A)〜(C)成分以外の(メタ)アクリレートを含有することができる。
【0048】
これらの他にも所望により、エラストマー、各種パラフィン類、可塑剤、充填剤、着色剤、防錆剤等を使用できる。
【0049】
本発明の硬化性樹脂組成物は、接着剤組成物として使用できる。本発明では、接着剤組成物の硬化体によって、被着体を接合又は被覆して複合体を作製することができる。被着体の各種材料は、トリアセチルセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン、ガラス、及び金属からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエステル、ポリオレフィン、及びガラスからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0050】
更に本発明の硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として使用し、被着体を接合又は被覆して複合体を作製する場合、接着剤組成物のはみ出し防止を目的として、本発明の硬化性樹脂組成物は、ダム剤としての役割も担うことができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、被着体面内を充填するフィル剤としての役割も担うことができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、ダム剤及びフィル剤として使用することができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、ダム剤とフィル剤の400nm透過率差を1%以下、且つ、屈折率差を0.01以下にすることにより、その境界線を無くすことができる。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物にて接着した硬化体は、完全硬化させた後にリワーク(再利用)することが可能である。リワークの方法としては特に制限は無いが、貼り合わされた1種又は2種の被着体間に0.01〜100Nの荷重を負荷することにより被着体同士を解体し、解体後の被着体を再利用することが可能となる。
【実施例】
【0052】
以下に、実験例をあげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(実験例)
特記しない限り、23℃で、実験した。表1〜2に示す組成の硬化性樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表1〜3に示した。
【0054】
実験例に記載の硬化性樹脂組成物中の各成分としては、以下の化合物を選択した。
【0055】
(A)成分の、(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマーとして、以下の化合物を選択した。
(A−1)1,2−ポリブタジエンオリゴマー(日本曹達社製「TE−2000」、構造は下記式(4)参照)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量2000)
【化4】




(A−2)イソプレンオリゴマー(クラレ社製「UC−203」)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量36000、イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチル(メタクリレートとのエステル化物オリゴマー、式(1)にてYはエチレン基、Rはメチル基)
(A)成分の、(メタ)アクリロイル基を有さず、かつ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有するオリゴマーとして、以下の化合物を選択した。
(B−1)イソプレンオリゴマー(クラレ社製「LIR−30」)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量28000)
(B−2)ブタジエンオリゴマー(クラレ社製「LBR−307」)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量8000)
(B−3)ブタジエンオリゴマー(クラレ社製「LBR−305」)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量30000)
(C)成分の、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとして、以下の化合物を選択した。
(C−1)ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(n=4)(東亜合成社製「M−113」)
(C−2)ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(n=8)(日立化成工業社製「FA−318A」)
(C−3) ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(n=1)(東亜合成社製「M−111」)
(D)成分の光重合開始剤として、以下の化合物を選択した。
(D−1)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカル社製「Irgacure184」)
(D−2)2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(チバスペシャリティケミカル社製「DarocurTPO」)
(E)成分のフェノール系/硫黄系酸化防止剤として、以下の化合物を選択した。
同一分子内にフェノール基及び硫黄を有する酸化防止剤として、以下の化合物を選択した。
(E−1)4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−О−クレゾール(BASF社製「Irganox1726」)
フェノール系酸化防止剤として、以下の化合物を選択した。
(E−2)ベンゼンプロパン酸、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−9 側鎖アルキルエステル(BASF社製「Irganox1135」)
硫黄系酸化防止剤として、以下の化合物を選択した。
(E−3)ジドデシル3,3‘−チオジプロピオネート(BASF社製「InganoxPS800FD」
(F)成分のシランカップリング剤として、以下の化合物を選択した。
(F−1)γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ社製「シルクエストA−174」)
【0056】
各種物性は、次のように測定した。
【0057】
〔光硬化性〕温度23℃で測定した。光硬化性に関しては、テンパックスガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)の表面に硬化性樹脂組成物を厚み0.1mmになるように塗布した。その後、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置を用い、波長365nmのUV光を積算光量2000mJ/cmの条件にて照射し、硬化させた。その後、引張剪断接着強さを測定した。
【0058】
〔ポリエチレンテレフタレート(PET)接着性評価(ポリエチレンテレフタレート試験片間の剥離接着強さ)〕2軸延伸PETフィルム(ルミラーT60、平均厚さ190μm、東レ社製)の試験片(幅50mm×長さ10mm×厚さ0.05mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み30μmで接着面積を縦40mm×横10mmとして接着させた。光照射による硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。剥離接着強さ(単位:N/cm)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度50mm/分で測定した。
【0059】
〔ガラス接着性評価(耐熱ガラス試験片間の引張接着強さ)〕耐熱ガラス試験片(幅25mm×長さ25mm×厚さ2.0mm)同士を、厚み80μm×幅11.5mm×長さ25mmのテフロン(登録商標)テープをスペーサーとして用い、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着させた(接着面積3.125cm)。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。上記条件にて接着剤組成物を硬化させた後、更に、試験片の両面に電気化学工業社製接着剤組成物「G−55」を使用し、亜鉛メッキ鋼板(幅100mm×長さ25mm×厚さ2.0mm、エンジニアリングテストサービス社製)を接着させた。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片を用いて、亜鉛メッキ鋼板をチャックして、初期の引張剪断接着強さを測定した。引っ張り剪断接着強さ(単位:MPa)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定した。
【0060】
〔シクロオレフィンポリマー(COP)接着性評価(シクロオレフィンポリマー試験片間の剥離接着強さ)〕COPフィルム(ZEONOR、平均厚さ40μm、日本ゼオン社製)の試験片(幅50mm×長さ10mm×厚さ0.05mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み10μmで接着面積を縦40mm×横10mmとして接着させた。光照射による硬化後、接着剤で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。剥離接着強さ(単位:N/cm)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度50mm/分で測定した。
【0061】
〔トリアセチルセルロース接着性評価(トリアセチルセルロース試験片間の剥離接着強さ)〕トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(平均厚さ40μm、富士フィルム社製)の試験片(幅50mm×長さ10mm×厚さ0.04mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み10μmで接着面積を縦40mm×横10mmとして接着させた。接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射による硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。剥離接着強さ(単位:N/cm)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度50mm/分で測定した。
【0062】
〔フッ素系ポリマー接着性評価(フッ素ポリマー試験片間の剥離接着強さ)〕pvdf(Polyvinylidene fluoride)フィルム(平均厚さ40μm、電気化学工業社製「DXフィルム」)の試験片(幅50mm×長さ10mm×厚さ0.04mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み10μmで接着面積を縦40mm×横10mmとして接着させた。接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射による硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。剥離接着強さ(単位:N/cm)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度50mm/分で測定した。
【0063】
〔ポリカーボネート接着性評価(ポリカーボネート試験片間の引張接着強さ)〕ポリカーボネート(帝人社製「パンライト」)試験片(幅25mm×長さ25mm×厚さ2.0mm)同士を、厚み80μm×幅12.5mm×長さ25mmのテフロン(登録商標)テープをスペーサーとして用い、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着させた(接着面積3.125cm)。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。引っ張り剪断接着強さ(単位:MPa)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定した。引っ張り剪断接着強さ(単位:MPa)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定した。
【0064】
〔硬化収縮率〕比重瓶に硬化性樹脂組成物を充填し、大気中での質量及び純水中での質量を計測し、液比重を算出した。更に硬化性樹脂組成物を〔光硬化性〕に記載の方法で硬化し、幅25mm×長さ25mm×厚さ2mmの硬化物を作製し、大気中での質量及び純水中での質量を計測し、硬化物比重を算出した。液比重及び硬化物比重の比率より硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率=((硬化物比重−液比重)/硬化物比重)×100(%)
【0065】
〔耐湿熱性評価(高温高湿暴露後の耐熱ガラス試験片間の引張接着強さ)〕テンパックス(登録商標)ガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み100μmで接着面積を1.0mmとして接着させ、硬化させた。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片を、恒温恒湿槽を用いて、温度85℃、相対湿度85%の環境下に1000時間暴露した。暴露後の試験片を用いて、引張剪断接着強さを測定した。接着部位の外観を目視で観察し、黄変しているか否かを調べた。引っ張り剪断接着強さ(単位:MPa)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定した。
【0066】
〔耐湿熱性評価(黄変度)〕テンパックス(登録商標)ガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み100μmで接着面積を1.0mmとして接着させ、硬化させた。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片を、恒温恒湿槽を用いて、温度85℃、相対湿度85%の環境下に1000時間暴露した。暴露後、接着剤組成物で接着した該試験片のΔb値を、カラー測定装置(SHIMADZU社製「UV−VISIBLE SPECTROPOHOTOMETER」にて測定し、黄変度とした。
【0067】
〔耐湿熱性評価(透過率))〕
テンパックス(登録商標)ガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み100μmで接着面積を1.0mmとして接着させ、硬化させた。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。硬化後、初期の透過率(透過率 初期)を測定した。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片を、恒温恒湿槽を用いて、温度95℃、相対湿度85%の環境下に1000時間暴露した。暴露後、ヘーズメーター(スガ試験機社製)を使用し、JIS K736に準拠して透過率(透過率 95℃1000時間後)を測定した。
【0068】
〔境界観察(目視)〕テンパックス(登録商標)ガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)上に、表2に示す硬化性樹脂組成物をフィル剤として用いて、塗布層の厚み200μm、塗布面積1.0mmとして塗布した。更にその上から表2に示す硬化性樹脂組成物をダム剤として用いて、塗布層の厚み100μm、幅1mm×長さ15mmとなるようにライン塗布した。ラインと交差する部分を境界として、目視にて蛍光灯下での境界の有無を判定した。境界がない場合を○、境界がある場合を×とした。
【0069】
〔境界観察(透過率差)〕テンパックス(登録商標)ガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)上に、表2に示す硬化性樹脂組成物(フィル剤)を接着剤組成物として用いて、塗布層の厚み200μm、塗布面積1.0mmとして塗布した。更にその上から表2に示す硬化性樹脂組成物(ダム剤)を接着剤組成物として用いて、塗布層の厚み100μm、塗布面積1.0mmとして塗布し、もう一枚のテンパックス(登録商標)ガラスと貼り合わせ、接着し、硬化させた。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片を瞬間マルチ側光システム(大塚電子社製「瞬間マルチ側光システム」)を用いて、2点の厚み方向(50μm位置、150μm位置)に400nmの透過率を測定した。2点の透過率の差を透過率差とした。
【0070】
〔境界観察(屈折率差)〕テンパックス(登録商標)ガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)上に、表2に示す硬化性樹脂組成物(フィル剤)を接着剤組成物として用いて、塗布層の厚み200μm、塗布面積1.0mmとして塗布した。更にその上からダム剤としての硬化性樹脂組成物(ダム剤)を接着剤組成物として用いて、塗布層の厚み100μm、塗布面積1.0mmとして塗布し、もう一枚のテンパックス(登録商標)ガラスと貼り合わせ、接着し、硬化させた。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片を (島津デバイス製造社製「KPR−2000」)を用いて、2点の厚み方向(50μm位置、150μm位置)に屈折率を測定した。2点の屈折率の差を屈折率差とした。
【0071】
〔光非透過部硬化性〕テンパックス(登録商標)ガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)上に幅1〜5mmの黒色印刷を施し、光非透過部付き試験片を作製した。該試験片の黒色印刷側と偏光板(帝人社製「パンライト」、材料はポリカーボネート、幅25mm×長さ25mm×厚さ2.0mm)を接着層の厚み200μm、接着面積1.0mmとして接着させ、硬化させた。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片より偏光板を剥離し、黒色印刷下の硬化性をFT−IRを用いて、硬化率として算出した。
(硬化率)=[100−((硬化後の、炭素と炭素の二重結合の吸収スペクトルの強度)/(硬化前の、炭素と炭素の二重結合の吸収スペクトルの強度))]×100(%)
【0072】
【表1】



【0073】
【表2】



【0074】
【表3】



【0075】
比較例に相当する硬化性樹脂組成物の場合、本発明の効果を有しない。
【0076】
本発明は、柔軟性を保持しながら、熱による着色や変色、耐湿試験後の強度低下を小さくした硬化性樹脂組成物を提供する。本発明は、硬化性樹脂組成物を用いて貼り合わせた光学表示体又はタッチセンサーを提供する。本発明は、硬化性樹脂組成物をダム剤やフィル剤として使用できる。本発明は、光非透過部を硬化できる。
【0077】
本発明は、イソボルニル(メタ)アクリレートのような剛直な骨格のモノマーを使用しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば、柔軟性を保持しながら、熱による着色や変色、耐湿試験後の強度低下をなくした硬化性樹脂組成物を提供できる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、タッチパネル積層体用や液晶パネル積層体用の接着剤組成物に使用できる。本発明のタッチパネル積層体や液晶パネル積層体は、ディスプレイとして使用できる。本発明の硬化性樹脂組成物は、透明な部分や半透明な部分を貼り合わせる場合にも、硬化性を向上することができる。