(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(C)ジエン系コア・シェル型グラフト共重合体が、共重合体100質量%中、(メタ)アクリル酸エステル5〜30質量%、ブタジエン40〜80質量%、その他のビニル系単量体10〜40質量を含有する請求項1に記載のエネルギー線硬化性樹脂組成物。
(C)ジエン系コア・シェル型グラフト共重合体が、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン系共重合体である請求項1又は2に記載のエネルギー線硬化性樹脂組成物。
(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーの主鎖骨格が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエネルギー線硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<用語の説明>
本明細書において、エネルギー線硬化性樹脂組成物とは、エネルギー線を照射することによって硬化させることができる樹脂組成物を意味する。ここで、エネルギー線とは、紫外線、可視光線等に代表されるエネルギー線を意味する。
【0013】
本明細書において、分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
【0014】
本発明に用いられるエネルギー線硬化性樹脂組成物について説明する。
【0015】
本発明に用いられるエネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)単官能(メタ)アクリレート(以下(メタ)アクリル酸エステル単量体ということもある)を含有する。単官能(メタ)アクリレートは、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物をいう。(A)単官能(メタ)アクリレートは、(a−1)炭素数6〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート、(a−2)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート、(a−3)カルボキシル基又はリン酸エステル基を有する単官能(メタ)アクリレートを必須成分とする。
【0016】
本発明に用いられる(a−1)炭素数6〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートの中で、炭素数6〜20の炭化水素基としては、飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、二重結合や三重結合を有する不飽和炭化水素基、芳香族環等、特に制限はなく、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、アリル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。炭素数6〜20の炭化水素基をエステル結合を介して有する単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
炭素数6〜20の炭化水素基は、エステル基との間に、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基等のアルキレンオキサイド基を介しても良い。アルキレンオキサイド基を介した(メタ)アクリレートとしては、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
(a−1)炭素数6〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートの中では、耐冷熱サイクル性、接着性の点で、脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上がより好ましい。
【0019】
本発明に用いられる(a−2)水酸基含有単官能(メタ)アクリレートとは、分子内に水酸基を少なくとも1個以上有する単官能(メタ)アクリレートモノマーをいう。水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる(a−3)カルボキシル基又はリン酸エステル基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルポリエチレングリコールアシッドフォスフェート、(メタ)アクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸等が挙げられる。
【0021】
(A)成分の含有割合は、低硬化収縮性の点で、樹脂組成物の全量(好ましくは(A)成分と(B)成分の合量)100質量%中、15〜90質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。15質量%以上であれば、得られる樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、製造過程又は実用用途において作業性に問題が生じることもなく、90質量%以下であれば、優れた接着性と低硬化収縮性を得ることができる。
【0022】
(a−1)成分、(a−2)成分、(a−3)成分の含有割合は、(A)成分の全量(好ましくは(a−1)〜(a−3)成分の合量)100質量部%中、(a−1)成分30〜80質量%、(a−2)成分5〜65質量%、(a−3)成分1〜20質量%が好ましく、(a−1)成分45〜65質量%、(a−2)成分20〜50質量%、(a−3)成分5〜15質量%がより好ましい。この範囲にあれば硬化性が悪くなることもないし、接着性も低下しない。
【0023】
本発明に用いられるエネルギー線硬化性樹脂組成物は、(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを含有する。
【0024】
本発明に用いられる(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、ポリオレフィン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、シリコーン系(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。これらの中では、硬化性、相溶性に優れる点で、ポリオレフィン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。ポリオレフィン(メタ)アクリレートの中では、主鎖骨格が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種以上のオリゴマーが好ましい。これらの中では、一般式(A)の両末端(メタ)アクリレート変性ブタジエン系オリゴマーや一般式(B)の両末端(メタ)アクリレート変性水素添加ブタジエン系オリゴマーが好ましい。
【0027】
(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーの分子量は、500〜20,000が好ましくは、800〜10,000がより好ましく、1,000〜5,000が最も好ましい。分子量が500以上であれば本発明の樹脂組成物にエネルギー線を照射して得られる硬化体の硬度が低すぎて、接着剤層が形成し難くなることもなく、20,000以下であれば樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、製造過程あるいは実用用途において作業性に問題が生じることもない。
【0028】
(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、日本曹達社製NISSO−PB TEAI−1000(両末端アクリレート変性水素添加ブタジエン系オリゴマー)、日本曹達社製NISSO−PB TE−2000(両末端メタクリレート変性ブタジエン系オリゴマー)等が挙げられる。
【0029】
(B)分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーは、作業性、接着性、低硬化収縮性のバランスの点で、樹脂成分の全量(好ましくは(A)成分と(B)成分の合量)100質量%中、10〜85質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。10質量%以上であれば、優れた接着性と低硬化収縮性を得ることができ、85質量%以下であれば、得られる樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、製造過程又は実用用途において作業性に問題が生じることもない。
【0030】
本発明に用いられるエネルギー線硬化性樹脂組成物は、(C)コア・シェル型グラフト共重合体を必須成分とする。
【0031】
(C)ジエン系コア・シェル型グラフト共重合体は、(C1)コア成分となる架橋ゴムに(C2)シェル成分となる重合体がグラフトしたグラフト共重合体をいう。
【0032】
(C1)コア成分となる架橋ゴムの主成分としては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、イソブチレン重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。これらの中では、ブタジエンを主成分とする架橋ゴム、及び/又は、スチレン−ブタジエンを主成分とする架橋ゴムが好ましい。ブタジエンを主成分とする架橋ゴムとしては、既知のブタジエンゴムを用いることができる。スチレン−ブタジエンを主成分とする架橋ゴムとしては、既知のスチレン−ブタジエンゴムを用いることができる。これらのゴムは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。本発明の目的に反しない限り、該コア成分には、他の任意成分を含有してもよい。
【0033】
(C2)シェル成分としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル、二重結合を有するビニル系単量体からなる群のうちの1種以上のモノマーがグラフトした、単独重合体又は共重合体を主成分とすることが好ましい。
【0034】
(C2)シェル成分に用いられる(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、単官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリレートの中では、(メタ)アクリル酸アルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
(C2)シェル成分に用いられる二重結合を有するビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの二重結合を有するビニル系単量体トの中では、スチレンが好ましい。
【0035】
(C2)シェル成分の中では、(A)成分である単官能(メタ)アクリレートとの相容性等の点で、(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。
【0036】
(C)成分であるジエン系コア・シェル型グラフト共重合体としては、ブタジエンの架橋ゴム及び/又はスチレン−ブタジエンの架橋ゴムであるコア成分に、シェル成分として(メタ)アクリル酸エステル及び必要に応じてスチレンをグラフト共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下、MBS樹脂という)、ブタジエンの架橋ゴム及び/又はスチレン−ブタジエンの架橋ゴムであるコア成分に、シェル成分として(メタ)アクリル酸エステル並びに必要に応じてスチレン及び(メタ)アクリロニトリルをグラフト共重合させて得られる(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン−(メタ)アクリロニトリル−スチレン共重合体(以下、MBAS樹脂という)、ブタジエンの架橋ゴム及び/又はスチレン−ブタジエンの架橋ゴムであるコア成分に、シェル成分としてアクリロニトリル及びスチレンをグラフト共重合させて得られるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(以下、ABS樹脂という)等が挙げられる。これらの中では、(A)成分である単官能(メタ)アクリレートとの相溶性の点で、MBS樹脂及び/又はMBAS樹脂が好ましい。
【0037】
MBS樹脂としては、カネエースBシリーズ(鐘淵化学工業社製)、BTAシリーズ(ロームアンドハース社製)、メタブレンシリーズ(三菱レーヨン社製)等が挙げられる。MBAS樹脂としては、デンカBL−20(電気化学工業社製)等が挙げられる。ABS樹脂としては、デンカABS(電気化学工業社製)等が挙げられる。
【0038】
(C)ジエン系コア・シェル型グラフト共重合体中の各成分の含有割合は、共重合体100質量%中(好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエン、その他のビニル系単量体の合計100質量%中)、(メタ)アクリル酸エステル5〜30質量%、ブタジエン40〜80質量%、その他のビニル系単量体10〜40質量が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル10〜25質量%、ブタジエン40〜75質量%、その他のビニル系単量体10〜40質量%がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステル13〜25質量%、ブタジエン45〜75質量%、その他のビニル系単量体10〜30質量%が最も好ましい。その他のビニル系単量体とは、(メタ)アクリル酸エステル以外やブタジエン以外の単量体をいう。その他のビニル系単量体としては、アクリロニトリル、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中では、アクリロニトリル及び/又はスチレンが好ましい。(B)ジエン系コア・シェル型グラフト共重合体中、各成分の含有割合が本発明の範囲内であれば、本発明は、(A)成分である単官能(メタ)アクリレートとの相溶性が悪くならず、樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、製造過程又は実用用途において当該樹脂組成物を用いる際の作業性に問題が生じることがなく、当該樹脂組成物は優れた接着性と低硬化収縮性を示し、優れた耐冷熱サイクル性を得ることができる。
【0039】
(C)ジエン系コア・シェル型グラフト共重合体の製造方法は、特に限定されないが、水性分散媒と乳化剤を使用した乳化系重合等、既知の技術を用いることができる。
【0040】
(C1)コア成分の構成成分としてラジカル重合性単量体を使用する場合、通常の乳化重合を適用できる。ラジカル重合性に乏しい単量体を使用する場合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合等のイオン重合により得られるプレポリマーを水性分散媒に乳化分散させる方法が適用できる。同一粒子内に複数の重合体成分を含有する粒子型グラフト共重合体を製造する場合、予め各単量体成分を均一に混合してから乳化分散して反応を行う方法、単独の重合体成分からなるシード(種)粒子に他の成分を追加重合(シード重合)する方法、単独の重合体成分からなる粒子同士を混合し、酸(塩酸等)や塩(硫酸ナトリウム等)を加えて凝集肥大させる方法、等を用いてコア成分を製造することができる。このとき、得られる粒子内部の形態(相構造)は、製造方法、各成分の割合、反応の順序等によりコントロールすることが可能である。
【0041】
(C2)シェル成分の構成成分をグラフト重合する方法としては、(C1)コア成分の乳化分散液(ラテックス)に、一段又は多段で単量体を追加し、ラジカル重合技術によって重合させる方法が適用できる。
【0042】
前記製造方法により得られた(C)ジエン系コア・シェル型グラフト共重合体の乳化分散液(ラテックス)は塩析することにより分離、回収して使用することができる。
【0043】
(C)ジエン系コア・シェル型グラフト共重合体は、樹脂組成物の全量(好ましくは(A)成分と(B)成分の合量)100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、4〜20質量部が最も好ましい。この範囲であれば樹脂組成物粘度が高くなることもなく、高い伸びを示し、優れた接着性と耐冷熱サイクル性を得ることができる。
【0044】
本発明に用いられるエネルギー線硬化性樹脂組成物は、(D)光ラジカル重合開始剤を必須成分とする。(D)光ラジカル重合開始剤は、エネルギー線を照射することによりラジカルが発生する化合物であれば、特に制限されない。
【0045】
本発明に用いられる(D)光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1―プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル―1―(4−(メチルチオ)フェニル)―2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル―2−ジメチルアミノ−1―(4−モルフォリノフェニル)―1−ブタノン−1、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)―2,4,4―トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中では、硬化性に優れる点で、α−ヒドロキシアセトフェノン類が好ましい。α−ヒドロキシアセトフェノン類としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1―プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアセトフェノン類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
(D)光ラジカル重合開始剤は、樹脂組成物の全量(好ましくは(A)成分と(B)成分の合量)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜7質量部がより好ましく、1〜5質量部が最も好ましい。この範囲にあれば硬化性が悪くなることもないし、接着性が低下することはない。
【0047】
本発明では、剛性及び低硬化収縮性を更に付与することを目的に、(E)成分として、無機充填剤を含有することができる。
【0048】
(E)無機充填剤としては、石英、石英ガラス、ガラスフリット等のガラスフィラー、溶融シリカ、球状シリカ、ヒュームドシリカ、微粉シリカ等のシリカ粉等や、球状アルミナ、破砕アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類、炭化ケイ素等の炭化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物類、銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属類や合金類、ダイヤモンド、カーボン等の炭素系充填材等が挙げられる。無機充填剤は、1種又は2種以上を使用することができる。無機充填剤の中では、容易に入手可能であり、充填性、安定性に優れる点で、溶融シリカ、球状シリカ、ヒュームドシリカ、微粉シリカ、石英、石英ガラス、及びガラスフィラーからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0049】
(E)無機充填剤は、樹脂組成物の全量(好ましくは(A)成分と(B)成分の合量)100質量部に対して、1〜70質量部が好ましく、1.5〜50質量部がより好ましく、2〜10質量部が最も好ましい。この範囲にあれば接着性に優れ、かつ、粘度が高すぎて作業性が悪くなることもない。
【0050】
本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、シランカップリング剤、アクリルゴム、ウレタンゴム等の各種エラストマー、光増感剤、光安定剤、溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤及び界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。本発明の目的を損なわない範囲で、その他の多官能(メタ)アクリレートを含有させても良い。
【0051】
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、エネルギー線の照射により硬化させ、硬化体とすることができる。
【0052】
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は接着剤として用いることができる。この接着剤は、液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル、タッチパネル、プロジェクター、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルムービー、光ピックアップ、LED、太陽電池、リチウムイオン電池等のエレクトロニクス製品の部品の組み立てや、CCD、CMOS、フラッシュメモリー、DRAM、半導体レーザー等の半導体素子のパッケージ等の実装に好適に用いることができる。更には工芸ガラスの台座、皿の固定用途、2個以上のレンズやプリズム、カメラ、双眼鏡及び顕微鏡等に用いられる光学素子の接着においても好適な接着剤となる。
【0053】
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物の製造方法については、上記の材料を十分に混合できれば特に制限はない。材料の混合方法としては、特に限定されないが、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌法、自転公転による遊星式撹拌機等といった、通常の分散機を利用する方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行える点で、好ましい。
【0054】
上記の混合を行った後、下記の光源を用いたエネルギー線の照射により、エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化を行うことができる。
【0055】
本発明において、エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化、接着に用いられる光源としては、特に限定されないが、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、それぞれの光重合開始剤の反応波長に対応したエネルギー線の照射を効率よく行える点で、好ましい。
【0056】
上記光源は、各々放射波長、エネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は光重合開始剤の反応波長等により適宜選択される。又、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0057】
上記光源は、直接照射、反射鏡等による集光照射、ファイバー等による集光照射を行ってもよい。低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等も用いることもできる。
【0058】
本発明の樹脂組成物の硬化体は、JIS K 7113(プラスチックの引張試験方法)に準拠して引張試験測定を実施したとき、引張破壊伸びは、優れた耐冷熱サイクル性を示す点で、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0059】
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、エネルギー線を照射して得られる硬化物の硬化収縮性が低くなり、且つ、高い伸びを示すことから、接着剤として好ましく用いることができる。接着剤として用いる場合の被着体としては、ガラス、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミ等のセラミックス、鉄、銅、亜鉛、アルミ、マグネシウム等の金属、各種プラスチック等が挙げられる。本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、エンジニアリングプラスチックに対して特に優れた接着性を示す。
【0060】
エンジニアリングプラスチックとしては、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)等が挙げられる。本発明は、芳香環を有するエンジニアリングプラスチックであるポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)に対して、好適に用いることができる。
【0061】
本発明は、エネルギー線を照射して得られる硬化物の硬化収縮性が低くなり、且つ、高い伸びを示すことから、様々な被着体に対して一様に格段に高い接着性を有し、且つ、線膨張率の異なる異種被着体の接着においても耐冷熱サイクル性に優れるエネルギー線硬化性樹脂組成物を提供できる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
実施例及び比較例では、以下の化合物を使用した。
【0064】
(A)成分の単官能(メタ)アクリレートとしては下記を用いた。
(a−1)炭素数6〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートとして、
(A−1)イソボルニルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステル IB−X」)
(A−2)ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業社製「ファンクリル FA−512M」)
(a−2)水酸基含有単官能(メタ)アクリレートとして、
(A−3)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(日本触媒社製「メタクリル酸2ヒドロキシエチル」)
(a−3)カルボキシル基又はリン酸エステル基を有する単官能(メタ)アクリレートとして、
(A−4)2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学社製「ライトエステル P−1M」)
【0065】
(B)成分の分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては下記を用いた。
(B−1)末端メタクリル変性ポリブタジエン(日本曹達社製「NISSOポリブタジエンTE−2000」)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量2100、一般式(A)の構造であり、一般式(X)のR’は、CH
3)
(B−2)末端アクリル変性ポリブタジエン水素添加物(日本曹達社製「NISSOポリブタジエンTEAI−1000」)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量1200、一般式(B)の構造であり、一般式(X)のR’はH)
【0066】
(C)成分のジエン系コア・シェル型グラフト共重合体としては下記を用いた。
(C−1)MBS樹脂<1>(カネカ社製「カネエースB−12」)
(C−2)MBS樹脂<2>(カネカ社製「カネエースB−11A」)
(C−3)MBS樹脂<3>(カネカ社製「カネエースB−513」)
(C−4)MBS樹脂<4>(カネカ社製「カネエースB−521」)
(C−5)MBS樹脂<5>(カネカ社製「カネエースB−564」)
(C−6)MBS樹脂<6>(ロームアンドハース社製「BTA−717」)
(C−7)MBS樹脂<7>(三菱レーヨン社製「メタブレン C−223A」)
(C−8)MBAS樹脂<1>(電気化学工業社製「BL−20」)
【0067】
(D)成分の光重合開始剤としては下記を用いた。
(D−1)1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「イルガキュアー184」)
【0068】
(E)成分の無機充填材としては下記を用いた。
(E−1)ガラスフィラー(日本フリット社製「CF0023−05C」)
(E−2)球状シリカ(電気化学工業社製「FB−5D」)
(E−3)微粉シリカ(エボニック社製「アエロジルR−974」)
【0069】
(B)成分の分子量は次の条件で測定し、GPCによりポリスチレン換算の数平均分子量として得た。
[測定条件]
溶媒(移動相):THF
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー社製「TSK guardcolumn MP(×L)」6.0mmID×4.0cm1本、及び東ソー社製「TSK−GEL MULTIPOREHXL−M」 7.8mmID×30.0cm(理論段数16,000段)2本、計3本(全体として理論段数32,000段)、
サンプル注入量:100μl(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm
2
検出器:RI検出器
【0070】
(C)成分に用いた各樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル(メチルメタクリレート)、ブタジエン、その他のビニル系単量体の含有割合を表1に示した。各成分の含有割合は、下記条件下の熱分解ガスクロマトグラフィ−質量分析による各ピークの面積と、組成比が既知の樹脂(MBAS樹脂:電気化学工業社製「BL−20」)を基準として算出した各ピークのファクターの積との比により、算出した。(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエンの含有割合を熱分解ガスクロマトグラフィ−質量分析により算出した。(その他のビニル系単量体の含有割合(単位:質量%))=(100質量%)−((メタ)アクリル酸エステルの含有割合(単位:質量%))−(ブタジエンの含有割合(単位:質量%))として算出した。
[測定条件]
GC−MS装置:Q−1000GC k9 GC−MSシステム(日本電子社製)
熱分解装置:JCI−22(日本分析工業社製)
カラム:HP−5MS(30m×0.25mm×0.25μm、理論段数:138,900)(Agilent Technologies社製)
カラム温度:40℃×1min. → 10℃/min. → 280℃×15min.の順に調整
パイロホイル(熱分解)温度:590℃
流量:1ml/min.(定量モード)
Split:1/50
試料量:0.2mg
[ピーク面積計算範囲]
(メタ)アクリル酸エステル:2分33秒〜2分38秒(メタクリル酸メチル)
ブタジエン:1分14秒〜1分19秒
【0071】
【表1】
【0072】
(実施例1〜15、比較例1〜2)
表2に示す種類の原材料を、表2に示す組成割合(単位は質量部)で混合し、樹脂組成物を調製し、後述の評価を実施した。各種評価結果を表2に示す。特記しない限り、23℃、湿度50%の環境下で実施した。
【0073】
【表2】
【0074】
〔粘度〕
B型粘度計を用い、所定の回転数(rpm)における粘度を測定した。 チキソトロック係数(TI)=((2rpmでの粘度)/(20rpmでの粘度))として、算出した。
【0075】
〔光硬化条件〕
光硬化に際しては、超高圧水銀ランプ搭載装置(HOYA社製「UL−750」)にて、365nmの波長の照射強度200mW/cm
2、積算光量4,000mJ/cm
2の条件にて硬化させた。
【0076】
〔固着時間の評価〕
1枚目のガラス試験片(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、縦25mm×横25mm×厚2.0mm)上に、直径8mm、厚さ80μmになるように樹脂組成物を塗布した後、同形状の2枚目のガラス試験片を貼り合わせ、UV光を照射してから、2枚のガラス試験片が動かなくなる迄の時間を測定し、固着時間とした。測定時間は最大で120秒までとした。
【0077】
〔硬化収縮率〕
硬化前の樹脂組成物の比重dLはJIS Z 8804(液体比重測定方法−3.比重びんによる比重測定方法)に準拠し、硬化後の樹脂組成物の比重dSはJIS Z 8807(固体比重測定方法−4.液中でひょう量する測定方法)に準拠して、23℃で測定した。硬化収縮率r(%)をr(%)={1−(dL/dS)}×100に従って算出した。固体比重測定にあたっては、前記光照射条件にて硬化した、形状が縦25mm×横25mm×厚2mmである、試験片を用いた。
【0078】
〔引張破壊伸びの評価〕
JIS K 7113(プラスチックの引張試験方法)に準拠し、2(1/2)号ダンベル形状(標点間距離12mm)で1mm厚の試験片を上記の硬化条件で硬化して作製した。温度23℃、湿度50%の環境下で、引張速度50mm/minで測定した。引張破壊伸びの値については、JIS K 7113に準拠して求めた。
【0079】
〔引張接着強さの評価〕
引張接着強さは、縦12.5mm×横5.0mm×厚2.0mmである1枚目の試験片上に、接着剤5.0μlを間隔9mmで2点塗布した後、同形状の2枚目の試験片を貼り合わせた。2枚の試験片の間隙は1mmとした。その後、試験片の間隙にUV光を上記の条件にて照射して硬化させ、試験片を作製した。作製した試験片は、23℃、湿度50%RHの環境で、引張試験機を使用して、引張速度50mm/分で引張接着強さを測定した。
試験片は下記を用いた。例えば、表において、PPS/LCPとは、PPSの試験片とLCPの試験片を貼り合わせた試験片をいう。
略号PPS:ガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド(東ソー社製「サスティールGS−40、ガラス繊維40%含有品」)(線膨張係数:31ppm/℃)
略号LCP:ガラス繊維強化液晶ポリマー(ポリプラスチックス社製「ベクトラE−130i、ガラス繊維30%含有品」)(線膨張係数:50ppm/℃)
略号PC:ポリカーボネート(帝人化成社製「パンライトG−3430R、ガラス繊維30%含有品」)(線膨張係数:50ppm/℃、直角方向)
略号G:耐熱ガラス(SCHOTT社製「テンパックスフロート」)(線膨張係数:3ppm/℃)
略号Zn:亜鉛ダイカスト(栄和社製「ZnDC2」)(線膨張係数:27ppm/℃)
【0080】
〔冷熱サイクル評価〕
上記引張接着強さ評価と同様な試験片を作製後、−30℃×30分〜80℃×30分のサイクルを1サイクルとした、昇降温速度10℃/分の冷熱サイクルプログラムを組んだ恒温槽中にて300サイクルの試験を実施した。試験片を取り出した後、温度23℃、湿度50%RH雰囲気の室内にて、試験片を30分放置した後、前記の引張接着強さと同様の条件にて引張接着強さ(単位:MPa)を測定した。試験前の強度に対する試験後の強度の割合を強度保持率(%)として求めた。