特許第6130158号(P6130158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130158
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20170508BHJP
   B65D 1/32 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B65D1/02 250
   B65D1/02 221
   B65D1/32
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-22007(P2013-22007)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-151931(P2014-151931A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088052
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛太
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0090083(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0116778(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0000932(US,A1)
【文献】 実開昭56−150713(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップが打栓装着される容器口部と、該容器口部に連続する座屈補強部と、減圧吸収パネルが形成された減圧吸収部とを備える合成樹脂製容器において、
該座屈補強部と該減圧吸収部との間には、内容液を注出させる際に外力により弾性変形するスクイズ部(但し、減圧吸収パネルを兼ねているものを除く)が形成されており、
該減圧吸収パネルは、該合成樹脂製容器内の内圧が大気圧よりも低くなった際に該スクイズ部よりも先に変形する様になっており、それによって、該内圧と該大気圧との圧力差による該スクイズ部の変形を防止するためのものであることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記スクイズ部は、外面が外方に凸の曲面であることを特徴とする請求項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記合成樹脂製容器は、容量が500ml以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器に関し、より詳細には、スクイズ性を改善した合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャップが打栓装着される合成樹脂製容器において、当該打栓時に容器に掛かる力によって、当該容器に座屈等が生じないよう、当該打栓力を吸収する座屈補強部が形成された合成樹脂製容器がある。
【0003】
一方、調味料や飲料等の食料品の分野では、衛生管理等の観点から当該容器に内容液が高温充填されるが、その後、内容液が冷却され、大気圧と容器の内圧との間に差が生じることで、当該容器が変形する可能性がある。そのため、当該圧力差を吸収する減圧吸収パネルも併せて形成されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4878934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のような容器は、スクイズ性について十分考慮された設計ではなく、内容液の注出量を調節することが困難であった。又、使用時には容器を押圧することによって注ぎ出しを行うことも想定されるが、容器に十分なスクイズ性を持たせようとすれば、容器自体の強度を低下せざるを得ないため、打栓力や圧力差によって容器に座屈や変形が生じる可能性が高まってしまうことから、容器の強度の確保とスクイズ性という相反する性質を両立させることは困難であった。
【0006】
又、従来の容器は1000ml以上の容器が想定されており、それより小型な、例えば、500ml以下の容器については、その大きさの制約から座屈補強部と減圧吸収部の両方を形成することが困難であり、一般にこの様な小容量の容器では、容器全体に強度を持たせることにより、座屈や変形を防止していた。このため、この様な容器では、座屈や変形を防止しつつ、更にスクイズ性を確保することは益々困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、容器の打栓力や圧力差による座屈や変形を防止しつつ、スクイズ性に優れた合成樹脂製容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、キャップが打栓装着される容器口部と、該容器口部に連続する座屈補強部と、減圧吸収パネルが形成された減圧吸収部とを備える合成樹脂製容器において、該座屈補強部と該減圧吸収部との間には、内容液を注出させる際に外力により弾性変形するスクイズ部(但し、減圧吸収パネルを兼ねているものを除く)が形成されており、該減圧吸収パネルは、該合成樹脂製容器内の内圧が大気圧よりも低くなった際に該スクイズ部よりも先に変形する様になっており、それによって、該内圧と該大気圧との圧力差による該スクイズ部の変形を防止するためのものであることを特徴とする合成樹脂製容器である。
【0009】
本発明は、前記スクイズ部は、外面が外方に凸の曲面であることを特徴とする合成樹脂製容器である。又、本発明は、前記合成樹脂製容器は、容量が500ml以下であることを特徴とする合成樹脂製容器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、座屈補強部と減圧吸収部との間に、外力により弾性変形するスクイズ部を設け、減圧吸収パネルよりもスクイズ部の強度を高くしたため、容器の打栓力や圧力差による座屈や変形を防止しつつ優れたスクイズ性を実現することが可能である。
【0011】
特に、前記スクイズ部の強度を、30乃至70Nとすることで、500ml以下の小容量の容器についても、スクイズ性を確保しつつ座屈や変形を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態を示す平面図である。
図4図2のIV−IV線におけるスクイズ部の断面図である。
図5】強度測定の概念図であり、(A)がスクイズ部の、(B)が減圧吸収パネルの強度測定の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図1乃至図5を基づいて説明する。先ず、本実施形態の構成について説明する。合成樹脂製容器1(以下、単に容器1ともいう)はポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなり、容器口部2、容器口部2と連続する肩部3、肩部3と連続する胴部4及び胴部4と連続する底部5が形成されており、容器口部2にキャップ(図示せず)が打栓装着されることで使用される。本実施形態において、容器1は、特に500ml以下の容量に適した容器である。
【0014】
容器口部2は、合成樹脂製容器1の最も上端側に形成され、連通口6を有する。又、その側面には、前記キャップの嵌合突条と嵌合する嵌合凹部7が形成されている。尚、本実施形態において、容器口部2には、周方向に間欠的に並ぶラチェット8が形成されている。ラチェット8は、前記キャップを係止するためのものであり、必要に応じて適宜形成されるものである。
【0015】
胴部4の上部4aには、座屈補強部9が形成されている。座屈補強部9には、複数の周方向に連続する凹条10が形成されており、容器口部2に前記キャップが打栓装着する際に、その打栓力を吸収し、容器1の座屈等の変形を防止するために形成される。つまり、容器1の中で比較的強度の高い部分となっている。
【0016】
胴部4の下部4cには、減圧吸収部11が形成されている。減圧吸収部11は、周方向に間欠的に形成された複数の減圧吸収パネル12と各々の減圧吸収パネル12を区画するリブ13を有している。減圧吸収パネル12は、公知の種々の形状を採用することができるが、本実施形態では略矩形の隆起部12aを有し、隆起部12aには平面視略瓢箪型且つ断面視略双瘤形状の島部12bを有する凹面部12cが形成されている。
【0017】
又、その強度は、大気圧との圧力差を吸収し、容器1の変形を防止できる程度であれば良く、好ましくは、30乃至60Nである。尚、当該強度は、例えば、図5(B)に示す様に容器1を寝かせた状態で、T字型の治具Jを軸線Cに対して平行に当て、治具Jにより、垂直方向(図5(B)の矢印方向)に減圧吸収パネル12に負荷を掛けることにより測定される。
【0018】
胴部4の中央部4b、つまり、座屈補強部9及び減圧吸収部11との間には、スクイズ部14が形成されている。スクイズ部14は、外面14aが外方に凸の曲面である略半球形状の筒体であり、外力により弾性変形可能となっている。又、スクイズ部14は、グリップ部15を介して座屈補強部9と連続している。グリップ部15は、内容液を注出する際に使用者の指で把持する部分であり、把持し易い形状となっている。
【0019】
スクイズ部の外面14aは、容器1を使用者が把持した際に、手に納まり易い形状であれば良いが、例えば、容器1の胴径(胴部4の外径)Dが50乃至70mmである場合、その曲率半径Rが50乃至200mmとなる様に形成されることが好ましい。この様にすることで、スクイズ部の外面14aは、容器1を使用者が把持した際に、手に納まり易いと共に押圧し易くなる。
【0020】
スクイズ部14の強度は、前記使用者の指(手)の力により押圧によって弾性変形し内容液を注出させることができると共に打栓力や大気圧との圧力差によって変形が起こらない程度、つまり、減圧吸収パネル12の強度よりも高くなる様形成されている。
【0021】
スクイズ部14は、内容液の注出という観点から、好ましくはその強度が70N、より好ましくは50Nを超えない様に形成される。仮に、その強度が、70Nを超えるものであると、使用者が押圧することが困難となり、内容液を注出することができなくなる。又、その強度が50N以下であれば、より抵抗なく内容液を注出させることができる。
【0022】
そして、容器1の流通という観点から、スクイズ部14は、好ましくはその強度が30N未満とならない様に形成される。その強度が30Nより低いものであると、容器に変形が生じ易く、流通に耐えがたいものとなってしまう。尚、当該強度は、例えば、図5(A)に示す様に容器1を寝かせた状態で、T字型の治具Jを軸線Cに対して垂直に当て、治具Jにより、垂直方向(図5(A)の矢印方向)にスクイズ部14に負荷を掛けることにより測定される。
【0023】
次に、本実施形態の使用例について説明する。本実施形態の使用の一例では、先ず、内容液が連通口6より容器1内に高温のまま充填され、その後、キャップ、例えば、小径のノズル状の注出筒を有するトンガリキャップ、が容器口部1に打栓機によって打栓装着され、容器1は密閉される。その際、座屈補強部9が打栓力を受け止め、スクイズ部14等の変形を防止する。
【0024】
そして、内容液が冷却されていくにつれ、容器1の内圧は大気圧よりも低くなっていく。その際に、減圧吸収パネル12は容器1内方に向かって撓み、該内圧と大気圧との圧力差を吸収し、容器1の変形を防止する。ここで、減圧吸収パネル12の強度がスクイズ部14の強度よりも低くなる様に設計されていることが重要となる。仮に、減圧吸収パネル12の強度がスクイズ部14の強度よりも高くなる様に設計されているとすると、減圧吸収パネル12よりも先にスクイズ部14が変形することとなり、減圧吸収パネル12が正常に機能せず、容器1に予期しない変形が発生する可能性が高くなるからである。
【0025】
その後、前記使用者が、前記キャップを開封し、グリップ部15を指で把持してスクイズ部14を指等で押圧し、スクイズ部14を弾性変形させることで、該キャップの開口部から内容液を注出させることができる。又、その押圧する力を調整することで、内容液の注出量を加減することが可能である。
【0026】
以上、本発明を上記実施形態で説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更は可能である。例えば、PET樹脂に限らず、その他合成樹脂で容器を形成してもよく、また容器は多層構造を有するものであってもよい。又、当然に、本発明を500mlを超える容量の容器に応用することも可能であり、この場合においても座屈や変形を防止しつつ、スクイズ性を確保することができる。又、容器口部に装着されるキャップは、ノズル状の注出筒を有するトンガリキャップが注ぎ性の観点から好適に用いられる。
【符号の説明】
【0027】
1 合成樹脂製容器 2 容器口部 3 肩部
4 胴部 4a 上部 4b 中央部
4c 下部 5 底部 6 連通口
7 嵌合凹部 8 ラチェット 9 座屈補強部
10 凹条 11 減圧吸収部 12 減圧吸収パネル
12a 隆起部 12b 島部 12c 凹面部
13 リブ 14 スクイズ部 14a 外面
15 グリップ部 D 胴径 J 治具
R 曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5