【実施例1】
【0017】
図1のフィルムのシール検査装置10は、エアノズル12を備えた気体吹き付け手段14、気体の振動を検出するセンサ16、ガイド17、シールの不良の有無を判定する判定手段18を備える。なお、ガイド17について、
図1(a)では
図1(b)のB−B線の断面図になっており、
図1(b)では
図1(a)のA−A線の断面図になっている。
【0018】
図2などに示すフィルム20として、長尺フィルムが挙げられる。ロールに巻かれたフィルム20を送り出しながら、フィルム20の側部同士が重ね合わされ、接着剤22または溶剤で接合する。2枚のフィルム20の側部を接合しても良いし、1枚のフィルム20の両側部を重ね合わせるように折り畳み、重ね合わされた部分を接合しても良い。接着剤22などで接合した部分をシール24とする。フィルム20の側部に沿ってシール24が形成されるため、シール24は帯状になる。
【0019】
本発明の検査装置10は、フィルム20が移送される途中で、シール24を形成した後に検査する装置である。シール24も移送方向に延びるように形成される。ガイドローラによってフィルム20がばたつかないようにして、フィルム20が一定の位置を通過するようにする。
【0020】
フィルム20の材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)系の樹脂、PE(ポリエチレン)系の樹脂、PS(ポリスチレン)系の樹脂、PP(ポリプロピレン)系の樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)系の樹脂などが挙げられる。また、フィルム20は熱収縮フィルムなどであっても良い。
【0021】
接着剤22として、ポリエーテルウレタンポリオールやポリイソシアネートが挙げられる。溶剤として、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、メチルエチルケトン、ジオキソランまたはアセトンが挙げられる。接着剤22または溶剤をフィルム20に塗布した後、ニップロールに挟み込んで接合しても良い。
【0022】
気体吹き付け手段14は、コンプレッサ26とエアノズル12を有する。コンプレッサ26は、所定の圧力で気体を送出する。コンプレッサ26で所定圧力になった気体がチューブ28を通り、エアノズル12から吹き出される。エアノズル12は、シール24へ気体を吹き付ける方向、角度および位置を決定する。
【0023】
エアノズル12の吹き出し口の口径は約0.2〜0.5mmであり、シール24までの距離は約3〜20mm、コンプレッサ26の圧力は約0.1〜0.5MPaである。エアノズル12から気体Aが吹き出すとき、センサ16で検知される振動を発生しにくくし、不良部分のフィルム20を振動させるように構成している。
【0024】
図2に示すように、フィルム20は平面状になっており、シール24でフィルム20が重ねられている。シール24が正常であれば、フィルム20同士が接着剤22や溶剤で接合されている。シール24が不良であれば、フィルム20同士は接合されず、隙間30が生じる(
図3(a))。シール24の正常部分を符号24a、不良部分を符号24bで示し、符号24は符号24aと24bを包括的に示す。
【0025】
気体Aの方向は、シール24のフィルム20の接合がおこなわれていない場合に、その不良部分24bに気体Aが入り込む方向である。さらに、不良部分24bに気体Aを入れるために、シール24に対して斜め上方またはほぼ平行方向から気体Aを吹き付ける。
【0026】
(1)シール24が正常である場合、気体Aは下側のフィルム20から上側のフィルム20へ流れる。シール24の上方を気体Aが通過するだけであり、気体Aの振動が非常に小さい。(2)シール24が不良であって、フィルム20の端部同士が接合されていない場合、その不良部分24bに気体Aが入り込む(
図3)。気体Aによって上側のフィルム20が上方にめくれたりして変形する。そのときシール24のフィルム20が振動し、その影響で気体が振動する。上側のフィルム20が振動する以外に、上側のフィルム20がばたつき、下側のフィルム20に当たって両フィルム20が振動する場合もある。あるいはその不良部分24bによって気体Aの向きが変化する(
図3)。気体Aの振動がマイク16に到達する場合もある。
【0027】
上記(1)、(2)のように、シール24の正常部分24aと不良部分24bで気体Aを吹き付けたときの気体の振動が異なる。シール24の振動の違いを利用することで、シール24の良否を判定できる。物体の振動によって生じる気体の振動は音波を含むが、本発明における気体の振動は可聴域の振動に限定されない。
【0028】
エアノズル12を2本にして、2方向からシール24に気体Aを吹き付ける。フィルム20の上方から見て、たとえば、一方のエアノズル12がシール24の延びる方向に対して90°の角度から気体Aを吹き付ける。他方のエアノズル12がシール24の延びる方向に対して90°以外の角度(たとえば50°など)から気体Aを吹き付ける。エアノズル12ごとにコンプレッサ26を備えても良いし、1つのコンプレッサ26から2つのエアノズル12に分岐させて気体Aを吹き出させても良い。
【0029】
2方向から気体Aを吹き付けることによって、不良部分24bに確実に気体を入り込ませる。あるいは不良部分24bによって気体Aの向きを変化させる。たとえば、
図4の様な接着剤22の幅が狭い不良部分24bであっても、一方の気体Aでフィルム20の一部がめくれ、他方の気体Aでフィルム20を振動させる。あるいは気体Aの向きを変化させる。
図5のような接着剤22などが分散したり、気泡が生じたりして点接合になった場合、上側のフィルム20の一部がめくれて振動したり、両フィルム20が当たって振動する。あるいは気体Aの向きを変化させる。
【0030】
さらに、エアノズル12が2本であり、角度を異ならせる以外に、エアノズル12ごとにシール24に対する高さを変更したり、距離をずらしたりしても良い。エアノズル12ごとに、角度、高さ、距離、またはそれらの少なくとも1つを異ならせることによって、不良部分24bを確実に振動させるようにする。
【0031】
図3以降で気体Aの流れを1本で示しているが、2本の気体の流れの中で、
図3(c)に示すように、少なくとも1本の気体Aが不良部分24bを突き抜く方向になっている。不良部分24bを気体Aが突き抜ける方が、フィルム20を変形させて振動させやすい。
図4(c)や
図5(c)のように、不良部分24bを気体Aが突き抜けなくても、気体Aの方向は、不良部分24bを突き抜ける方向にする。
【0032】
また、フィルム20の剛性が非常に小さいと、1方向の気体Aでは、フィルム20を押し上げるだけの場合がある(
図6(a))。このとき、フィルム20の振動が小さく、センサ16で検出できない場合がある。2方向から気体Aを吹き付けることによって、一方の気体Aがフィルム20の動きを規制し、他方の気体Aが不良部分24bを突き抜ける(
図6(b))。フィルム20を振動させることができる。なお、
図6(b)では不良部分24bを突き抜ける気体Aのみを示している。
【0033】
センサ16は、フィルム20の振動あるいは気体Aの向きの変化によって空間中を伝わる気体の振動を検出する。たとえば、センサ16としてコンデンサマイクが挙げられる。コンデンサマイクは、振動によって2枚の電極の間隔が変化し、電極間の容量が変化する。このことによって、コンデンサマイクから出力される信号(出力電圧)が変化する。必要に応じて増幅器で信号を増幅しても良い。フィルム20の振動あるいは気体Aの向きの変化によって生じる気体の振動を検出するため、フィルム20の印刷に関係なく検査をおこなうことができる。
【0034】
図1の検査装置10は、2個のセンサ16を並べている。たとえば、フィルム20の移送される方向に約20mmの間隔で並べる。フィルム20の振動あるいは気体Aの向きの変化による振動以外の振動(ノイズ)をキャンセルするためである。
【0035】
気体Aがシール24以外の場所に拡散しないように、ガイド17を設ける。ガイド17は、エアノズル12の前方、側方および上方に適宜設ける。ガイド17が気体Aを内部に閉じこめることによって、センサ16が気体の振動を検出しやすくなる。シール24の位置や状況を確認するために、ガイド17は透明の板で構成しても良い。
【0036】
気体の振動を伝達するガイド17は、気体Aの向きの変化による気体の振動の変化を効率よくセンサ16に伝達する。エアノズル12から気体Aが吹き出すとき、不良部分がある場合に気体の振動がガイド17の表面で反射するなどして、ガイド17がない場合に比べ、センサ16に気体の振動がより多く伝達される。
【0037】
ガイド17を備えることによって、気体Aの向きの変化を確実にセンサ16に伝達する。たとえば、
図6(a)の様なフィルム20の剛性が非常に小さく、シール24の上方を気体Aが向きを変化して通過するだけであっても、気体Aの向きの変化による気体の振動の変化を効率よくセンサ16に伝達する。
【0038】
気体の振動を伝達するガイド17は、センサ16を覆う構成に限定されない。気体Aの向きの変化による気体の振動の変化を効率よくセンサ16に伝達するのであれば、シール24の上方に1枚のプレートを設置するだけでも良い。
【0039】
気体の振動が生じる要因として、シール24とそれ以外の外的要因(屋外からの騒音など)が挙げられる。なお、シール24は、気体Aが吹き付けられて振動の生じる部分であり、以下同じである。センサ16までの距離は、シール24が外的要因よりも非常に近い。そのため、外的要因から2個のセンサ16を見るとほぼ同位置である。外的要因からの振動を検出した際に、センサ16で出力された信号に差が出ない。一方、シール24から2個のセンサ16を見ると、各センサ16までの距離が異なる。シール24からの振動を検出した際に、センサ16から出力された信号に差が生じる。
【0040】
シール24が正常な場合の振動を必要以上に大きくならないように、エアノズル12の吹き出し口や気体圧を最適化し、正常部分24aと不良部分24bとの気体の振動の差を大きくすることができる。なお、シール24からの気体に差が出る位置に、センサ16を並べる。
【0041】
判定手段18は、センサ16の出力を受けてシール24の不良の有無を判定する手段である。また、判定手段18は、判定をおこなう前に、2個のセンサ16の出力の差分を取って、シール24以外の外的要因から発生した振動を除去するフィルタ手段を備える。差分が0になれば外的要因による振動であり、差分が0にならなければシール24の振動である。シール24の振動の場合に、不良の有無を判定する。たとえば、センサ16の出力が所定の範囲から外れた場合に不良と判定する。
【0042】
また、判定手段18は、不良の有無だけではなく、不良の位置を求める手段を含める。フィルム20が所定の移動速度で送出されており、フィルム20の速度と不良を判定した時間から、フィルム20のどの位置のシール24が不良になっているかを求める。あるいは、シール加工装置本体からの測長信号をもとに、フィルム20のどの位置のシール部分24が不良になっているかを求める。判定手段18は、コンピュータなどのハードウェア、ソフトウェア、またはその両方によって構成することができる。不良位置をコンピュータのモニタなどで表示しても良い。
【0043】
以上のように、シール24に気体Aを吹き付け、不良部分24bのフィルム20が上方にめくれたりして変形する。本発明は、この変形することによって生じる振動を利用するため、フィルム20の印刷に関係なくシール24の良否を判定することができる。
【実施例6】
【0051】
フィルム20が長尺のフィルム20である場合、一のローラから他のローラにフィルム20を巻き替えるなど、フィルム20を移送手段によってフィルム20を送る途中で検査をおこなう。この場合、フィルム20を送る経路(生産パス)の複数の位置でシール24に気体Aを吹き付け、センサ16で気体Aの振動を検出しても良い。
【0052】
図7のシール検査装置40は、フィルム20が送られている途中の複数の位置P1,P2にそれぞれ気体吹き付け手段14とセンサ16を配置する。各位置P1,P2の気体吹き付け手段14とセンサ16は、上記実施例と同様に複数である。各位置P1,P2のセンサ16で検出された気体Aの振動が判定手段18に入力される。判定手段18は、全てのセンサ16の出力を使用してシール不良の判定をおこなう。なお、一の位置のエアノズル12から噴き出した気体Aによる振動が、他の位置P2のセンサ16に影響しないように、各位置P1,P2の間隔を調節する。
【0053】
フィルム20が送られており、フィルム20の経路の複数の位置でエアノズル12から気体Aを吹き付け、シール24の不良によって起こる気体Aの振動をセンサ16で検出する。検査は上記実施例と同様に、判定手段18は、各位置P1,P2でのセンサ16の出力の差分を取り、各位置P1,P2での不良を判定する。さらに判定手段18は、表1に示すように全ての位置P1,P2で不良と判定した場合に、最終的に不良と判定する。
【0054】
【表1】
【0055】
判定手段18は、上述した各位置P1,P2での不良の判定が、シール24の同じ位置になるようにする。そのため、フィルム20の移動距離を測定する測距手段42を備える。例えば、フィルム20にローラを接触させ、ローラの回転による発生パルス数によってフィルム20の移動距離を求める。ローラの回転による発生パルス数はエンコーダなどで求める。その際、1パルスあたりの移動量はあらかじめ機械的な構成により決まる。測距手段42が、一の位置P1から他の位置P2までフィルム20のある部分が送られたことを測定することにより、全ての位置P1,P2でシール24の同じ部分に不良が有るか否かを検出することができる。
【0056】
P1とP2の距離は設計時に既知であり、例えばL1であるとする。シール24の有る位置がP1で不良と判定されたとする。この判定の後、測距手段42で求めた距離がL1になったときにP2での不良であるか否かを求める。シール24の検査された位置は、P1とP2で同じになる。全ての位置P1,P2でシール24が不良となれば、不良と判定する。
【0057】
また、測距手段42として計時手段を用いても良い。フィルム20を送る速度が一定であれば、P1からP2まで移動する時間は一定である。例えば、P1からP2までフィルム20の送られる時間がtであるとする。P1で不良を検出した時間がt1であれば、t1+tになったときにP2で不良と判定すれば不良とする。
【0058】
複数の位置P1,P2で気体Aの振動の検出をおこなうことにより、判定の精度を高めることができる。例えば、一箇所だけで気体Aの振動を検出しても他の位置で気体Aの振動を検出しなければ、何らかの外的要因が考えられるためであり、検出の精度が上がる。
【0059】
図7では気体吹き付け手段14やセンサ16を配置した位置P1,P2が2箇所であったが、さらに増えても良い。センサ16等を配置する位置の数が増えたとしても、全ての位置で不良と判定されたときに不良とし、任意の位置で不良と判定されなければ、一部の位置で不良と判定されても不良と判定しない。上記の実施例のように、各位置P1,P2において振動を伝達するガイド17を設けても良い。
【0060】
各位置P1,P2での不良の判定と総合的な不良の判定を1箇所の判定手段18でおこなったが、各判定を別々の判定手段18でおこなっても良い。各位置P1,P2での不良の判定は、各位置P1,P2に実施例1などの判定手段18を設けておこなう。総合的な不良の判定をおこなう判定手段18を別途設け、その判定手段18でおこなう。