(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記製氷装置の前記貯水部に溜められた海水を製氷する際の排熱を前記淡水生成装置での氷の解凍に用いることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の海水の塩分除去システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような蒸発法は、熱効率が悪く、多量のエネルギーを必要とする。また、特許文献2のような逆浸透法は、特許文献1のような蒸発法よりもエネルギー効率は優れているが、RO膜が海水中の微生物や析出物で目詰まりしないように前処理したり洗浄作業をしたりする手間が必要であり、また、RO膜等の設備費用が多くかかるという課題を有する。
【0007】
また、蒸留法にしても逆浸透法にしても、生成される水の塩分濃度は既定の特定の値のものとなり、これらの方法では任意の塩分濃度を有する水を容易に生成することはできない。
【0008】
以上の課題を解消する観点から、本発明は、海水の淡水化の運用コストを大幅に低減するとともに、任意の塩分濃度を有する水を容易に生成することができる塩分除去システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題に鑑み、本発明の海水の塩分除去システムは、
海水を溜める貯水部と、前記貯水部に溜められた海水を製氷する冷却部と備え、海水から製氷する製氷装置と、前記製氷装置の製氷の際の排熱を用いて前記製氷装置の製氷を解凍する淡水生成装置と
、太陽光の照射により加熱される高温部と、海水により冷却される低温部と、前記高温部と前記低温部との温度差により電力を発生する発電部とを備え、発生した前記電力を前記製氷装置に供給する電力供給装置と、前記電力供給装置の前記低温部に供給する海水を冷却するための冷却装置を備え、前記冷却装置が、前記低温部に海水を供給するための配管と、前記配管を覆うように配置された冷却管とを備え、前記冷却管および前記製氷装置に、前記淡水生成装置で氷を解凍する際の冷気が供給されることを特徴とする。
【0010】
このシステムにおいて、前記製氷装置が、海水を溜める貯水部と、前記貯水部に溜められた海水を製氷する冷却部と備え、前記冷却部が、前記貯水部に溜められた海水の全体が凍らない程度まで製氷を行うようにしてもよい。
【0011】
このシステムにおいて、前記製氷装置の前記貯水部に溜められた海水を製氷する際の排熱を前記淡水生成装置での氷の解凍に用いるようにしてもよい。
【0013】
このシステムにおいて、前記電力供給装置の前記発電部が、熱電素子を有し、前記熱電素子の一端が前記高温部に接触し、前記熱電素子の他端が前記低温部に接触するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明に係る海水の塩分除去方法は、海水を製氷する第1の製氷ステップと、前記第1の製氷ステップで生じる排熱を用いて、前記製氷ステップでの製氷を解凍して水を生成する第1の解凍ステップと、前記第1の解凍ステップで生成された水の塩分濃度を検査する検査ステップと、前記検査ステップで検査した水の塩分濃度が既定の濃度より高い場合に、前記第1の解凍ステップで生成された水を製氷する第2の製氷ステップと、前記第2の製氷ステップでの製氷を解凍して水を生成する第2の解凍ステップと、前記第2の製氷ステップおよび前記第2の解凍ステップを繰り返す反復ステップであって、前記反復ステップを実行するごとに、前記検査ステップを実行して、前記第2の解凍ステップで生成された水の塩分濃度が既定の濃度より低くなるまで、前記第2の製氷ステップおよび前記第2の解凍ステップを繰り返す反復ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、海水の淡水化の運用コストを大幅に低減するとともに、任意の塩分濃度を有する水を容易に生成することができる塩分除去システムおよび方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る塩分除去システム1について
図1から
図3を参照しながら説明する。なお、図面上、システムの各装置の構成の理解を容易にする観点から、各装置の構成部分を適宜拡大または縮小している。
【0019】
[塩分除去システムの概要]
塩分除去システム1は、発電装置10と、充電装置20と、製氷装置30と、淡水生成装置40とを備える。
【0020】
発電装置10は、後述するようにペルチェモジュールまたはゼーベックモジュール(総称して、「熱電素子」という)を備える。これにより、太陽光照射の加熱による温度と海水の冷却による温度との差によって発電を行い、発電により得た電気エネルギーを
図1において矢印Aで示すように充電装置20に出力する。以下の実施の形態では、説明の便宜上ペルチェモジュールを用いた例で説明する。
【0021】
充電装置20は、発電装置10によって発電された電気エネルギーを蓄積し、これにより出力を平均化して、必要な時に電気エネルギーを
図1において矢印Bで示すように製氷装置30に供給する。
【0022】
製氷装置30も、後述するように、発電装置10と同様のペルチェモジュールを備える。製氷装置30のペルチェモジュールは、充電装置20から矢印Bで示すように電気エネルギーの供給を受け、これにより、貯水槽31内を冷却して内部に溜めた海水35を氷にする。
【0023】
氷は、製氷装置30から取り出されて、
図1において破線の矢印で示すように移動されて淡水生成装置40に搬入される。
【0024】
淡水生成装置40は、氷を解凍して水にする。この際、解凍のための熱源として、淡水生成装置40は、製氷装置30の排熱部33から
図1において矢印CおよびDで示すように放出される排熱を利用する。
【0025】
海水には3.5%の塩分が含まれている。淡水には、0.01%から0.05%までの塩分を含むことが許容されている。このため、淡水生成装置40によって氷を解凍した水に、0.05%以下の塩分が含まれている場合には淡水化は達成されている。
【0026】
一方、より塩分含有率の低い淡水を生成する必要がある場合には、この解凍した水を製氷装置30に戻して再度製氷し、この氷を淡水生成装置40によって水に戻すという工程を2段、3段等必要な回数繰り返す。
【0027】
淡水生成装置40では氷を解凍する際に排冷気が得られる。海水1を淡水生成装置40内に通過させ、その際に、排冷気の一部によってその海水1を冷却して低温の海水2にする。海水2は発電装置10に供給され、発電装置10の発電効率が高められる。
【0028】
また、淡水生成装置40の排冷気の一部は、製氷装置30に供給されて製氷のための補助的な冷却のために活用される。
【0029】
淡水生成装置40の排冷気の一部を発電装置10に利用するために、他の方法として、例えば、淡水生成装置40から冷却装置50まで配管41を設け、排冷気を配管41を経由して矢印E1に示すように冷却装置50に供給して海水1を冷却して、発電装置10に供給する海水2を低温にするようにしてもよい。
【0030】
また、淡水生成装置40の排冷気の一部を製氷装置30に利用するために、他の方法として、例えば、淡水生成装置40から製氷装置30まで配管42を設け、排冷気を配管42を経由して矢印E2で示すように製氷装置30に供給して、排冷気を製氷のための補助的な冷却のために活用するようにしてもよい。
【0031】
[発電装置]
図2に示すように、発電装置10は、高温部12と低温部13と発電部11とからなる。高温部12は太陽光の照射によって加熱される部分である。低温部13は、海水によって冷却される部分で、海水2が取水口13inから流入して排出口13outから海水3として排出される。
【0032】
発電部11は、高温部12と低温部13との間に設けられていて、ペルチェモジュールを備える。ペルチェモジュールは、通電により熱を一方から他方へ移動する機能を有するもので、反対極性にしてその逆方向へ熱を伝えることもできる。また、ペルチェモジュールは、モジュールの一面と他面との間に温度差があればその両端の電極から電力を取り出せる機能も有する。発電部11では、モジュールの一面と他面との間の温度差から電力を取り出す機能を利用する。
【0033】
発電部11のペルチェモジュールの上端部および下端部は、それぞれ、高温部12および低温部13に接している。ペルチェモジュールに引出線14が接続されていて、引出線14からペルチェモジュールによって発電された電気的エネルギーが取り出される。
【0034】
なお、発電装置10を複数設け、これらを、電気的に、縦列接続して高電圧を得たり、並列接続して高電流を得たりするようにしてもよい。
【0035】
高温部12に、
図2に白抜きの矢印で示すように、太陽光が照射され、これにより高温部12が加熱されると、この熱が、発電部11のペルチェモジュールの上端部に伝達される。
【0036】
一方、低温部13の取水口13inから海水2が供給されて排出口13outから海水3として排出されると、低温部13から、海水3と海水2との温度差に相当する熱エネルギーが奪われて低温部13が冷却され、これにより、ペルチェモジュールの下端部が冷却される。
【0037】
上記のような太陽光の照射による高温部12の加熱および海水の循環による低温部13の冷却に伴い、ペルチェモジュールの上端とペルチェモジュールの下端部との間に温度差が生じる。例えば、温度差は100℃以上になる。
【0038】
その温度差によるゼーベック効果により、ペルチェモジュールから電気エネルギーが得られ、引出線14からその電気エネルギーを取り出すことができる。
【0039】
引出線14は、電気的に充電装置20に接続されていて、
図1において矢印Aで示すように、発電装置10から充電装置20に、発電した電気エネルギーを供給する。発電装置10から得られる電流は直流である。引出線14と充電装置20との間に、DCDCコンバータを設けてもよい。
【0040】
上記の一例の通り、
図1に示す冷却装置50に、淡水生成装置40で得られた排冷気を、配管41を経由して供給することができる。より詳しく述べると、冷却装置50は、低温部13の取水口13inに接続される配管51と、配管51の周囲を覆うように配置された冷却管52とを備えており、淡水生成装置40で得られた排冷気が冷却管52に供給される。
【0041】
周囲の海水1は、配管51に取り込まれて冷却管52で覆われた部分を通過すると、冷却管52の排冷気によって冷却されて低温の海水2になる。海水2は取水口13inから低温部13に供給される。
【0042】
これにより、海水1を低温部13に通過させた場合と比べて、海水2を低温部13に通過させると、低温部13の温度がより低くなり、高温部12と低温部13との間の温度差が大きくなる。このため、発電装置10における発電効率を高めることができる。
【0043】
[充電装置]
発電装置10において発電量に変動があることが想定される。このため、充電装置20は、発電量の変動を吸収して平均化した量を供給できるようにする。また、充電装置20は、発電で得た電気エネルギーを貯蔵して、必要とする時に
図1において矢印Bで示すように製氷装置30に供給できるようにする。
【0044】
充電装置20から製氷装置30までの間に、製氷装置30のコンプレッサの駆動用にDCACコンバータを設けてもよい。
【0045】
[製氷装置]
製氷装置30は、充電装置20から
図1の矢印Bで示すように電気エネルギーの供給を受けて、貯水槽31に溜められた海水35を、例えば、−5℃や−10℃に冷却して氷にするものである。
【0046】
図3に示すように、製氷装置30は、断熱材36から形成された貯水槽31と、貯水槽31の上部に配置された冷却部32と、冷却部32の上方に配置されていて冷却部32から排熱するための排熱部33とを備える。
【0047】
貯水槽31は、製氷するための海水35を溜めるための空間を有する。冷却部32は、ペルチェモジュールを備え、排熱部33は排気用のファンを備える。
【0048】
冷却部32のペルチェモジュールは、充電装置20から製氷装置30に、
図1の矢印Bで示すように電気エネルギーが供給されると、排熱部33に接するペルチェモジュールの端部が高温となる一方、貯水槽31に接するペルチェモジュールの端部が低温になるように配置されている。
【0049】
ペルチェモジュールの貯水槽31側の端部が低温になることにより、貯水槽31内の海水35を冷却して製氷することができる。
【0050】
ペルチェモジュールの高温になった端部は、排熱部33の排気ファンによって冷却される。このときの排熱は、
図1の矢印CおよびDに示すように、淡水生成装置40に供給される。
【0051】
ペルチェモジュールによる冷却および製氷の機能を補助するために、別機器として、排熱部33がコンプレッサおよび冷媒の凝縮器を備え、貯水槽31が冷却器を備えるようにしてもよい。
【0052】
貯水槽31に海水を注入したり、貯水槽31から製氷後の氷を取り出したりする方法はどのような方法であってもよい。例えば、貯水槽31に海水を供給するために配管を設け、貯水槽31の開口部を冷却部32によって開閉するようにしてもよい。
【0053】
このときは、冷却部32は、貯水槽31に海水を入れる場合および貯水槽31から氷を取り出す場合に、貯水槽31の上部の開口部を解放し、製氷する場合に貯水槽31を密閉するように機能する。
【0054】
このため、冷却部32は、貯水槽31の上部で水平方向に移動して貯水槽31の開口部を開閉する構造のものでもよく、または、貯水槽31に枢軸を介して冷却部32を設けて、枢軸を中心に冷却部32を回転することによって貯水槽31の開口部を開閉する構造のものでもよい。
【0055】
ペルチェモジュールの冷却および製氷の機能を補助するために、別機器として、冷却部32がコンプレッサおよび冷媒の凝縮器を備え、貯水槽31が冷却器を備えるようにしてもよい。
【0056】
製氷の際には、貯水槽31内を海水で満たし、冷却部32に電力を供給してペルチェモジュールを機能させ、これとともに、排熱部33の排気ファンを作動させる。
【0057】
海水35が氷になるときには、貯水槽31内では、氷の部分から塩分が除去され、液体の部分に、塩分が凝縮されることになる。製氷装置30が海水35の冷却を続けると、塩分が凝縮された部分も凍結することになる。
【0058】
このため、製氷装置30は、溜められた海水35の全体が凍らない程度まで製氷を行う。海水を溶液、水を溶質、塩を溶媒とすると、塩分濃度の3.5%の海水では、溶質の水は96.5%を占めるので、その溶質の値に近い割合まで、水分の凍結を行うことができる。
【0059】
製氷装置30から取り出された氷は、
図1において破線の矢印Fで示すように移動されて淡水生成装置40に搬入される。一方、貯水槽31に残った未凍結の海水は、貯水槽31から取り出されて図示していない別の貯水槽に一時的に溜められる。
【0060】
この一時的に溜められている海水の温度は低いため、次の新たな海水の製氷の際に、貯水槽31に溜めた新たな海水35を冷却するために補助的に用いることができる。例えば、貯水槽31内に蛇行する配管を設けて、その配管に、一時的に溜められている低温の海水を通すことにより、冷却部32のペルチェモジュールを機能させる前に、新たな海水を冷却するようにしてもよい。
【0061】
[淡水生成装置]
淡水生成装置40は、氷を解凍して水にする装置である。この解凍の際、製氷装置30の排気部33の排熱ファンによる排熱を
図1において矢印CおよびDで示すように利用する。この場合、製氷装置30の排気部33と淡水生成装置40とを金属で直接に連結して伝導させると、製氷装置30の排気部33の排熱を淡水生成装置40での淡水のために効率よく利用することができる。
【0062】
また、上記の通り、淡水生成装置40では氷を解凍する際に排冷気が得られる。この排冷気は、淡水生成装置40から冷却装置50および製氷装置30に供給されて、発電装置10の低温部13に供給される海水および製氷装置30の貯水槽31に溜められる海水の冷却に活用される。これにより、発電装置10における発電効率や製氷装置30における海水の冷却効率が高められる。
【0063】
上記の実施の態様の塩分除去システムによると、発電装置10の低温部13を冷却するための海水2が冷却されて、高温部12と低温部13との間の温度差を大きくすることができる。このため、ペルチェモジュールの発電効率を高めることができる。
【0064】
また、製氷装置30の製氷の際に淡水生成装置40からの排冷気を用いることができるため、製氷効率を高めることができる。
【0065】
従来の海水淡水化装置の造水コストは極めて高いのに対して、本実施の形態の塩分除去システムによる発電装置の運用コストは、太陽熱と海水の温度差を利用するので発生しない。
【0066】
また、本実施の形態の塩分除去システムによると、製氷・解凍工程での排熱と排冷気とを繰り返し再利用して発電効率を高めることができ、これにより製氷・解凍効率も高めることができるため、設置後の造水コストが極めて低くて済む。これらの結果、発電装置での余剰電力を他のシステムに活用したり電力会社に販売したりすることも可能になる。
【0067】
[他の実施の形態]
上記の実施の形態では、製氷装置30の駆動のために、太陽熱と海水との温度差を利用した発電装置10によって発電した電力を用いた。このような発電方式に代えて、他の自然エネルギーを利用した発電装置、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置等を用いてもよい。
【0068】
上記の実施の形態では、発電装置10および充電装置20の代わりに、製氷装置30は、商用電源から電力の供給を受けてもよい。この場合には、商用電源から製氷装置30までの間に、ACDCコンバータを設けてもよい。
【0069】
また、上記の実施の形態では、淡水生成装置40から冷却装置50まで配管41を配置して、淡水生成装置40の冷気を冷却装置50まで導くことによって発電装置10の低温部13に供給する海水を冷却した。
【0070】
これは、淡水生成装置40からの冷気を用いて低温部13に供給する海水を冷却するための構造をわかり易くする説明するための一例を示したにすぎず、この例に限定されるものではない。例えば、配管41を使用せずに、発電装置10の低温部13に海水を供給する配管51を淡水生成装置40内を通過させ、その際に淡水生成装置40内の冷気によって配管51内を通過する海水を冷却するようにしてもよい。