(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130177
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】槽内攪拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 5/02 20060101AFI20170508BHJP
F04D 7/04 20060101ALI20170508BHJP
F04D 13/08 20060101ALI20170508BHJP
B01F 5/04 20060101ALI20170508BHJP
B01F 3/04 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
B01F5/02 A
F04D7/04 T
F04D13/08 R
F04D13/08 X
B01F5/04
B01F3/04 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-56056(P2013-56056)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-180612(P2014-180612A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 久仁夫
【審査官】
河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−150595(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3043849(JP,U)
【文献】
特開平08−247081(JP,A)
【文献】
特開2007−029829(JP,A)
【文献】
実開昭58−025700(JP,U)
【文献】
実開昭56−134000(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00 − 5/26
F04D 1/00 − 13/16
F04D 17/00 − 19/02
F04D 21/00 − 25/16
F04D 29/00 − 35/00
C02F 3/14 − 3/26
A01K 61/00
A01K 61/02 − 61/06
E03F 1/00 − 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内に水を噴出することによって、当該水槽内の攪拌を行う槽内攪拌装置であって、
前記水槽内には、排出管が固定的に設置されると共に、当該排出管の一端部にはポンプ装置が接続され、当該ポンプ装置が吐出した水は、前記排出管を通じて前記水槽の外に排出され、
前記排出管の途中に接続され、前記排出管内を流れる水の一部が分岐して流れるよう構成された分岐管部と、
その一端部が気中に開口するよう構成された吸気管部と、
前記分岐管部及び前記吸気管部がそれぞれ接続されかつ、エゼクタ効果によって前記吸気管部を通じて吸引した空気を、前記分岐管部から供給される水に混入して、前記水槽内に噴出するよう構成されたエゼクタ部と、を備え、
前記エゼクタ部は、前記吸気管部と共に、前記水槽内に設置した状態と前記水槽内から引き揚げた状態との間で昇降可能に構成されており、
前記分岐管部は、可撓性を有していて、前記吸気管部及び前記エゼクタ部の昇降に伴い、撓むように構成され、
前記ポンプ装置は、前記水槽内に設置されたガイド部に案内されることで、前記水槽内に設置した状態と前記水槽内から引き揚げた状態との間で昇降可能に配設されており、
前記吸気管部は、前記水槽内で前記ガイド部に沿うように垂直方向に延びて配設されていると共に、前記ガイド部に沿って昇降するように、当該ガイド部に係合しており、
前記吸気管部及び前記エゼクタ部は、前記ポンプ装置とは独立して昇降可能に構成されている槽内攪拌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の槽内攪拌装置において、
前記排出管の途中には、前記ポンプ装置側への逆流を防止する逆止弁が介設しており、
前記逆止弁には、その内部に配設されている弁体よりも下方位置に、前記排出管に連通する空気抜き用の孔が開口しており、
前記分岐管部は、前記逆止弁の空気抜き用の孔に接続されている槽内攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、水槽内の攪拌を行う槽内攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜4には、水の浄化に用いられる曝気装置が記載されている。これらの文献に記載された曝気装置は、エゼクタ効果を利用して、ポンプ装置が吐出した水と共に、吸引した空気を水中に噴出するように構成されている。こうした曝気装置は、例えば消火用水池等の貯水池等に設置されることで、池の水質の悪化を抑制する。
【0003】
また、下水システムにおける中継ポンプ槽等には、排水用のポンプ装置が吐出する水の一部を水槽内に噴出することによって、水槽内に砂や汚泥が滞留又は堆積したり、浮遊油脂やスカムが槽壁等に固着したりすることを抑制する攪拌装置を配設することが知られている(例えば特許文献5、6参照)。こうした攪拌装置は、ポンプ装置のケーシングに対して取付固定したり、水槽内に固定された固定排出管に対してポンプ装置を着脱可能に接続するための着脱用接続管に対して取付固定したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−277483号公報
【特許文献2】特開平8−192182号公報
【特許文献3】特開平11−197688号公報
【特許文献4】特開2002−1386号公報
【特許文献5】特許第4919389号公報
【特許文献6】特許第3570861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、中継ポンプ槽等に設置される攪拌装置は、前述したように、ポンプ装置のケーシングに取付固定したり、着脱用接続管に取付固定したりするため、既存のポンプ設備に対し、後付けで設置することが困難である。
【0006】
また、ポンプ装置や着脱用接続管に対し攪拌装置を取付固定しているため、攪拌装置のメンテナンス等が必要になったときには、例えばポンプ装置毎、水槽から引き揚げなければならず、メンテナンス性に劣るという不都合もある。
【0007】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排水用のポンプ装置が設置された水槽内を攪拌する槽内攪拌装置を、簡易に設置可能でかつ、容易に引き揚げ可能に構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する技術は、水槽内に水を噴出することによって、当該水槽内の攪拌を行う槽内攪拌装置に関する。前記水槽内には、排出管が固定的に設置されると共に、当該排出管の一端部にはポンプ装置が接続され、当該ポンプ装置が吐出した水は、前記排出管を通じて前記水槽の外に排出される。槽内攪拌装置は、前記排出管の途中に接続され、前記排出管内を流れる水の一部が分岐して流れるよう構成された分岐管部と、その一端部が気中に開口するよう構成された吸気管部と、前記分岐管部及び前記吸気管部がそれぞれ接続されかつ、エゼクタ効果によって前記吸気管部を通じて吸引した空気を、前記分岐管部から供給される水に混入して、前記水槽内に噴出するよう構成されたエゼクタ部と、を備える。
【0009】
そして、前記エゼクタ部は、前記吸気管部と共に、前記水槽内に設置した状態と前記水槽内から引き揚げた状態との間で昇降可能に構成されており、前記分岐管部は、可撓性を有していて、前記吸気管部及び前記エゼクタ部の昇降に伴い、撓むように構成されている。
【0010】
この構成によると、槽内攪拌装置は、排出管とポンプ装置とが設置されている水槽内に設置され、ポンプ装置が吐出した水の一部を水槽内に噴出することによって、水槽内を攪拌する。
【0011】
具体的に、この槽内攪拌装置は、排出管の途中に接続される分岐管部と、一端部が気中に開口する吸気管と、分岐管部及び吸気管が接続されるエゼクタ部とを有している。ポンプ装置が作動して排出管内を水が流れているときには、その水の一部が、分岐管部を通じてエゼクタ部に供給される。エゼクタ部は、分岐管部から供給される水の流れを利用したエゼクタ効果により、吸気管を通じて空気を吸引し、吸引した空気を水に混入する。そうして、エゼクタ部は、空気が混入した水を水槽内に噴出する。これにより、水槽内が攪拌される。この槽内攪拌装置は、水槽内への噴流による攪拌効果だけでなく、水槽内に空気を供給することが可能になるから、曝気効果も得られる。
【0012】
前記の構成の槽内攪拌装置は、分岐管部が排出管の途中に接続されており、ポンプ装置に対して取付固定されていない。従って、既存のポンプ設備に対して、後付けで設置することを比較的容易に行うことができる。また、槽内攪拌装置とポンプ装置とは互いに独立していることから、槽内攪拌装置を引き揚げるときに、ポンプ装置を一緒に引き揚げる必要がない。このことは、槽内攪拌装置のメンテナンス性を高める。
【0013】
そして、この攪拌装置においては、水槽内に固定的に設置された排出管に接続される分岐管部が可撓性を有している。槽内攪拌装置を昇降させるとき、正確には、吸気管部及びエゼクタ部を昇降させるときには、分岐管部が撓むことによって、その分岐管部を排出管に接続した状態のままで、吸気管部及びエゼクタ部を水槽から容易に引き揚げることが可能になる。槽内攪拌装置では、例えば詰まり等が生じ易いエゼクタ部のメンテナンスが必要になる可能性が高いが、そのエゼクタ部を容易に引き揚げることが可能であるから、メンテナンス性が高まる。
【0014】
ここで、前記の構成の槽内攪拌装置は、分岐管部が排出管に接続されているだけであって、吸気管部やエゼクタ部は、水槽内のポンプ設備とは独立している。このため、槽内攪拌装置は、ポンプ設備とは独立した状態で、水槽内に設置することが可能であ
る。
【0015】
これに対し、前記ポンプ装置は、前記水槽内に設置されたガイド部に案内されることで、前記水槽内に設置した状態と前記水槽内から引き揚げた状態との間で昇降可能に配設されており、前記吸気管部は、前記水槽内で前記ガイド部に沿うように垂直方向に延びて配設されていると共に、前記ガイド部に沿って昇降するように、当該ガイド部に係合しており、前記吸気管部及び前記エゼクタ部は、前記ポンプ装置とは独立して昇降可能に構成されてい
る。
【0016】
こうすることで、ポンプ装置の昇降のために、水槽内に予め設置されているガイド部を利用して、槽内攪拌装置を水槽内に設置することができる。このことにより、槽内攪拌装置を、所定の位置に設置することが可能になるから、エゼクタ部からの噴出方向を、水槽内において適正な向きに規制することが可能になる。これは、水槽内の攪拌効果を高めると共に、空気を混入した噴流が、水槽内の設備に直接当たって、悪影響を及ぼすような事態を、未然に回避することが可能になる。
【0017】
また、前記の構成では、槽内攪拌装置を、ガイド部を利用して昇降させることが可能になり、槽内攪拌装置のみを水槽内から引き揚げたり、また、水槽内に降ろして設置したりすることを、容易に行い得る。
【0018】
前記排出管の途中には、前記ポンプ装置側への逆流を防止する逆止弁が介設しており、前記逆止弁には、その内部に配設されている弁体よりも下方位置に、前記排出管に連通する空気抜き用の孔が開口しており、前記分岐管部は、前記逆止弁の空気抜き用の孔に接続されている、としてもよい。
【0019】
こうすることで、槽内攪拌装置の分岐管部を、逆止弁に予め設けられている空気抜き用の孔を利用して、排出管に連通させることが可能になる。このことによって、水槽内に設置されている既存のポンプ設備に対し、槽内攪拌装置を後付けで設置することが、より一層容易になる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、前記の槽内攪拌装置によると、槽内攪拌装置の分岐管部を排出管の途中に接続することによって、ポンプ装置に対して独立した状態となり、攪拌装置を、既存のポンプ設備に対して後付けで設置しやすくなると共に、その分岐管部を、槽内攪拌装置の吸気管部及びエゼクタ部を昇降する時に、撓むように構成しているため、吸気管部及びエゼクタ部を、ポンプ装置とは独立した状態で、容易に水槽から引き揚げることが可能になり、メンテナンス性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】槽内攪拌装置が設置された下水ポンプ設備の全体構成を示す断面図である。
【
図3】逆止弁の構成を示す(a)A−A断面図、(b)側面図である。
【
図4】槽内攪拌装置の係合部と、水中ポンプの昇降用ガイドパイプとの係合状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、槽内攪拌装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は例示である。
図1は、実施形態に係る槽内攪拌装置8が設置された水槽の一例としての下水中継ポンプ槽1(以下、単にポンプ槽1ともいう)を示している。ポンプ槽1は、流入口5及びマンホール11を有すると共に、その内部にポンプ装置としての水中ポンプ3が設置されている。水中ポンプ3は、ポンプ槽1内に流入口5より流入した下水の水位が所定の運転レベル以上になったときには、所定の停止レベルに水位が低下するまで駆動して、下水を、固定排出管6を通じてポンプ槽1から排出する。この水中ポンプ3の運転制御のために、ポンプ槽1内には、運転用フロートスイッチ71、停止用フロートスイッチ72及び異常水位警報用フロートスイッチ73が設けられていると共に、ポンプ槽1の上方に制御盤10が設けられている。
【0023】
水中ポンプ3は、ポンプ槽1のマンホール11よりガイドパイプ12を伝って槽内底部に降ろされ、詳細な図示は省略するが、着脱装置によりポンプ槽1に着脱自在に設置される。水中ポンプ3を昇降しないとき,昇降用チェーン15は,槽内に落下しないようマンホール11の、例えば蓋14に掛着されている。着脱装置は、水中ポンプ3をポンプ槽1内に固定された固定排出管6に結合するものであり、この結合により水中ポンプ3が固定排出管6に接続される。
【0024】
ガイドパイプ12は、
図1、4に示すように、ポンプ槽1内を鉛直方向に延びて配設されていると共に、2本並んで配設されている。水中ポンプ3に設けられたガイドが、各ガイドパイプ12に係合することによって、水中ポンプ3は、ガイドパイプ12に案内されながらポンプ槽1内を昇降する。各ガイドパイプ12の下端部は、ポンプ槽1の底に固定されたコネクション60に固定されている一方、その上端部は、マンホール11に固定されたガイドホルダ2に支持されている。
【0025】
固定排出管6は、その下端部が、ポンプ槽1の底に固定されたコネクション60に接続されると共に、ポンプ槽1内を鉛直上方に向かって延びており、その上端部において水平方向に屈曲した後、ポンプ槽1の側壁を貫通してポンプ槽1の外まで延びている。固定排出管6の途中には、水中ポンプ3の停止中の逆流を防止するための逆止弁61が介設している。
【0026】
逆止弁61は、
図3に例示するように、固定排出管6に連通する主通路611と、主通路611上に設けられた弁座612と、弁座612に着座可能な球状の弁体613と、弁体613が主通路611上から退避可能な退避部614と、を備えて構成されている。逆止弁61は、
図3に一点鎖線の矢印で示すように、水中ポンプ3からポンプ槽1外に向かって水が流れるときには、同図に仮想的に示すように、弁体613が、その水の流れによって持ち上げられて退避部614へと退避することで、水の通過を許容する一方、
図3に実線の矢印で示すように、ポンプ槽1外から水中ポンプ3に向かう方向に水が流れようとしたときには、同図に実線で示すように、弁体613が弁座612に着座することで、水の通過を阻止するように構成されている。
【0027】
この逆止弁61における弁座612よりも下側の位置には、空気抜き用の孔615が、貫通形成されている。この孔615は、水中ポンプ3の停止中に、ポンプ槽1内の水位が上昇したときに、逆止弁61と水中ポンプ3の羽根車との間に溜まっている空気を抜いて、水中ポンプ3内に呼び水を入れるための孔である。こうすることで、水中ポンプ3の次の起動時に揚水が可能となる。
【0028】
このような構成のポンプ設備は、従来において一般的な構成である一方、このポンプ槽1には、前述したように、槽内攪拌装置8が設置されている。この槽内攪拌装置8は、
図1、2に示すように、固定排出管6の途中に接続される分岐管部81と、その一端が気中に開口する吸気管部82と、分岐管部81及び吸気管部82がそれぞれ接続されるエゼクタ部83と、を有して構成されている。
【0029】
分岐管部81は、
図2から明らかなように、可撓性を有するホースによって構成されており、その一端は、
図3(b)に示すように、逆止弁61の空気抜き孔615に接続されていると共に、その他端は、
図2に示すように、エゼクタ部83に接続されている。この分岐管部81は、後述の通り、逆止弁61に接続された状態のままで、吸気管部82及びエゼクタ部83が自由に昇降可能となるよう、十分に余裕のある長さに設定されている。また、分岐管部81の途中位置には、チェーン811の一端が固定されており、このチェーン811の他端は、吸気管部82の上端部に固定されている。これにより、可撓性を有しかつ、長尺の分岐管部81を、ポンプ槽1内における所定の位置に位置づけることが可能になると共に、後述するように、槽内攪拌装置8を昇降させる際には、この分岐管部81が、途中で引っ掛かったりすることを抑制して、槽内攪拌装置8をスムースに昇降させることが可能になる。
【0030】
吸気管部82は、ポンプ槽1内に設置されたガイドパイプ12に沿うように、上下方向に延びて配設される管状の部材であり、その上端部は、
図1に示すように、蓋14の付近で上向きに開口している。これにより、吸気管部82は、水面よりも上側で気中に開口することになる。一方、吸気管部82の下端部は、所定の角度に曲げられた後に、エゼクタ部83に接続されている。これにより、後述するように、エゼクタ部83の噴出口831の軸が斜め下向きとなるようにしている。また、吸気管部82の途中位置には、ガイドパイプ12に係合する係合部821が、上下方向に所定の間隔を空けて、2個、取り付けられている。各係合部821は、ガイドパイプ12を間に挟んで、吸気管部82とは逆側に配置されかつ、
図4に例示するように、2本のガイドパイプ12の間隔よりも径の大きい円盤状に構成されている。この各係合部821は、2本のガイドパイプ12の間を通る連結部822によって、吸気管部82に連結されている。この係合部821がガイドパイプ12に係合することによって、吸気管部82は、ガイドパイプ12に沿うように配設されると共に、このガイドパイプ12に沿って昇降することが可能になる。また、係合部821は、ガイドパイプ12の上端からその係合状態を外すことが可能である。吸気管部82の上端部には、吊り下げチェーン823の一端が固定されており、この吊り下げチェーン823は、水中ポンプ3の昇降用チェーン15と同様に、蓋14に掛着されている(
図1参照)。これによって、吸気管部82、ひいては槽内攪拌装置8の全体は、ポンプ槽1内で、ガイドパイプ12に係合した状態で、所定の高さ位置となるように、吊り下げられて配設されることになる。
【0031】
エゼクタ部83は、
図2に示すように、分岐管部81が接続される第1接続部832と、吸気管部82が接続される第2接続部833と、噴出口831が形成された噴出部834と、を有している。この内、第1接続部832は、噴出部834の噴出口831の軸と同軸となるように配置されている一方、第2接続部833は、噴出口831の軸に対して直交する方向に配置されている。
【0032】
第1接続部832の下流側には、ノズル835が配設されており、このノズル835によって第1接続部832を通じてエゼクタ部83内に流入する水の流速を高めかつ、その静圧を低下させるようにしている。エゼクタ部83は、この静圧の低下によって、吸気管部82の上端開口から空気を吸い込み(つまり、エゼクタ効果)、吸い込んだ空気を水に混入して、噴出口831を通じて、ポンプ槽1内に噴出する。エゼクタ部83の噴出部834は、
図1、2に例示するように、噴出口831の軸が、ポンプ槽1の底部付近において、斜め下向きとなるように配設されている。
【0033】
次に、この槽内攪拌装置8の動作について説明する。水中ポンプ3が起動をして、そこから吐出された水は、コネクション60及び固定排出管6を通じて、ポンプ槽1の外に排出される。固定排出管6内を流れる水の一部は、逆止弁61の空気抜き孔615を通じて、槽内攪拌装置8の分岐管部81に流入し、この分岐管部81を通ってエゼクタ部83へと流入する。エゼクタ部83では、前述したように、エゼクタ効果により、吸気管部82を通じて空気が吸い込まれると共に、水及び空気の混合流体は噴出部834の噴出口831を介して、ポンプ槽1内に噴出される。こうして、水中ポンプ3が作動している最中は、槽内攪拌装置8による噴流によって、ポンプ槽1内の砂、汚泥、浮遊油脂、スカム等が攪拌され、ポンプ槽1内の水と共に、水中ポンプ3に吸い込まれた後に固定排出管6から排出される。このため、ポンプ槽1内に砂や汚泥が滞留や堆積したり、浮遊油脂やスカムが槽壁等に固着したりすることが抑制される。また、この槽内攪拌装置8では、水が噴出されるだけでなく、空気が混入した水が噴出されることで、ポンプ槽1内の曝気を促進することが可能になる。
【0034】
このような構成の槽内攪拌装置8は、分岐管部81を、逆止弁61に接続するだけであるため、既設のポンプ設備に、後付けで、容易に設置することが可能になる。また、分岐管部81を、逆止弁61の空気抜き孔615に接続しているため、分岐管部81と固定排出管6との接続が、さらに容易になるという利点がある。
【0035】
また、槽内攪拌装置8は、固定排出管6に接続しているため、水中ポンプ3とは独立しており、この槽内攪拌装置8を単独で、ポンプ槽1内から引き揚げることが可能になる。つまり、槽内攪拌装置8をポンプ槽1内から引き揚げるときには、吸気管部82に接続された吊り下げチェーン823を引き揚げるようにすれば、吸気管部82が、ガイドパイプ12に案内されて引き揚げられ、吸気管部82及びエゼクタ部83を、ポンプ槽1内から引き揚げることが可能になる。このときに、固定排出管6に接続された分岐管部81を、可撓性を有するホースによって構成していることで、槽内攪拌装置8を引き揚げるときには、分岐管部81を固定排出管6に接続した状態のままで、分岐管部81が撓むことによって、吸気管部82及びエゼクタ部83が引き揚げられる。こうして、槽内攪拌装置8を、容易にポンプ槽1内から引き揚げることが可能になる。また、逆に、槽内攪拌装置8をポンプ槽1内に設置するときには吸気管部82を、ガイドパイプ12に係合した状態で、そのガイドパイプ12に沿って吸気管部82を降ろすと共に、吊り下げチェーン823を蓋14に掛着することで、槽内攪拌装置8をポンプ槽1内に容易に設置することが可能になる。こうして、槽内攪拌装置8のみを単独で、しかも容易に昇降することができる結果、槽内攪拌装置8のメンテナンス性が高まる。
【0036】
このような槽内攪拌装置8の吸気管部82やエゼクタ部83は、例えば塩ビパイプによって構成することも可能である。こうすることで、槽内攪拌装置8が軽量化し、槽内攪拌装置8の昇降を、より一層容易に行うことができる。
【0037】
また、槽内攪拌装置8は、ガイドパイプ12に係合した状態で設置されるため、その噴出口831を、ポンプ槽1内の所定の位置に位置づけることが可能になる。また、吊り下げチェーン823の、蓋14に掛着する箇所を変更することによって、槽内攪拌装置8の設置高さを、容易に変更することが可能になる。このことは、噴出口831を、ポンプ槽1内で適切に配置することを可能にし、ポンプ槽1内の攪拌効果を高めると共に、空気を混入した噴流が、ポンプ槽1内の設備に直接当たって、悪影響を及ぼすような事態を、未然に回避することが可能になる。
【0038】
尚、槽内攪拌装置は、ガイドパイプ12に係合する構成に限らず、ポンプ槽1内の他の設備(例えば、ポンプ槽内に設けられたステップや、バッフル板)に対して係合する構成を採用してもよい。
【0039】
また、前記の構成では、吊り下げチェーン823を利用して、槽内攪拌装置8を、吊り下げた状態でポンプ槽1内に設置しているが、例えばエゼクタ部83に、ポンプ槽1の底部に当接する脚を設けて、槽内攪拌装置8を、ポンプ槽1の底に設置するような構成を採用してもよい。
【0040】
さらに、前記の構成では、分岐管部81を、逆止弁61の空気抜き孔615に接続しているが、これ以外の構成によって、分岐管部81を固定排出管6に接続するようにしてもよい。このことは、特に逆止弁61の空気抜き孔615が別途利用されていて、槽内攪拌装置用に空気抜き孔を利用することができない場合に、有効となる。
【0041】
また、ここに開示する槽内攪拌装置は、下水中継ポンプ槽に設置する以外にも、排水用のポンプ装置が設置された各種の水槽に、広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ポンプ槽(水槽)
12 ガイドパイプ(ガイド部)
3 水中ポンプ(ポンプ装置)
6 固定排出管(排出管)
61 逆止弁
615 空気抜き用の孔
8 槽内攪拌装置
81 分岐管部
82 吸気管部
83 エゼクタ部