(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス濃度に応じてセンサ出力信号が変化する共に、固体電解質体及び一対の電極を有する第1セルを備えるセンサ素子を有するガスセンサを制御するセンサ制御装置であって、
前記第1セルのインピーダンスを検出するためのインピーダンス検出信号を発生する検出信号発生部と、
前記第1セルを通じて出力される信号のうち、前記ガス濃度に応じて変化する前記センサ出力信号、または前記インピーダンス検出信号に応答して前記第1セルに生じる応答信号を読み込み、前記センサ出力信号または前記応答信号をアナログ値からデジタル値に変換するアナログデジタル変換部と、
前記第1セルから前記アナログデジタル変換部までの信号経路に設けられるローパスフィルタであり、時定数を変更可能な時定数可変フィルタ部と、
を備えており、
前記時定数可変フィルタ部は、前記アナログデジタル変換部への前記センサ出力信号の入力時における時定数が、前記アナログデジタル変換部への前記応答信号の入力時における時定数よりも大きくなるように、前記時定数を変更し、
さらに、前記時定数可変フィルタ部は、
前記センサ出力信号の入力時に用いる第1ローパスフィルタと、
前記第1ローパスフィルタよりも時定数が小さいローパスフィルタであって、前記応答信号の入力時に用いる第2ローパスフィルタと、
前記アナログデジタル変換部への前記センサ出力信号の入力時には前記第1ローパスフィルタを前記第1セルと前記アナログデジタル変換部との間に接続し、前記アナログデジタル変換部への前記応答信号の入力時には前記第2ローパスフィルタを前記第1セルと前記アナログデジタル変換部との間に接続するフィルタ切替部と、
を備えており、
前記フィルタ切替部は、前記第1ローパスフィルタおよび前記第2ローパスフィルタから入力される信号のいずれか一方を前記アナログデジタル変換部に対して出力するマルチプレクサを用いて構成されること、
を特徴とするセンサ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0031】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
図1は、本発明が適用された実施形態としてのガス検知システム1の全体構成図である。
【0032】
ガス検知システム1は、例えば、内燃機関の排気ガス中の特定ガス(本実施形態では、酸素)を検出する用途に用いられる。
ガス検知システム1は、酸素を検出するガスセンサ8と、ガスセンサ8を制御するセンサ制御装置2と、を備えている。ガス検知システム1は、検出した酸素濃度をエンジン制御装置(図示省略)に通知する。
【0033】
エンジン制御装置は、内燃機関を制御するための各種制御処理を実行するマイクロコントローラであり、各種制御処理の1つとして、ガス検知システム1で検出した酸素濃度を用いて内燃機関の空燃比制御を行う。
【0034】
ガスセンサ8は、内燃機関(エンジン)の排気管に設けられて、排気ガス中の酸素濃度を広域にわたって検出するものであり、リニアラムダセンサとも呼ばれる。ガスセンサ8は、センサ素子9と、ヒータ26と、を備えて構成されている。
【0035】
センサ素子9は、ポンプセル14と、起電力セル24と、を備えて構成されている。
ポンプセル14は、部分安定化ジルコニア(ZrO
2)により形成された酸素イオン伝導性の固体電解質体15と、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された一対の多孔質電極16と、を有している。起電力セル24は、部分安定化ジルコニア(ZrO
2 )により形成された酸素イオン伝導性の固体電解質体25と、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された一対の多孔質電極28と、を有している。
【0036】
ヒータ26は、外部からの通電により発熱する発熱抵抗体を備えて構成されている。ヒータ26は、ポンプセル14および起電力セル24を加熱して、ポンプセル14および起電力セル24を活性化状態にするために備えられる。
【0037】
なお、ガスセンサ8は、ポンプセル14と起電力セル24との間に、多孔質拡散層(図示省略)を介してガスセンサ8の内部に設けられた測定室(図示省略)を備えている。測定室には、多孔質拡散層を介して測定対象ガス(本実施形態では、排気ガス)が導入される。
【0038】
ガスセンサ8は、起電力セル24を用いて、測定室の酸素濃度(換言すれば、多孔質拡散層を介して測定室内に導入された測定対象ガスの酸素濃度)に応じた起電力(検知電圧Vs)が発生する。具体的には、起電力セル24には、表面の多孔質電極28と裏面の多孔質電極28との酸素濃度差に応じた検知電圧Vsが発生する。つまり、起電力セル24の検知電圧Vsは、測定室の酸素濃度に応じて変化する。
【0039】
そして、起電力セル24の検知電圧Vsが所定の基準値(例えば、450mV程度)となるように、ポンプセル14を用いて、測定室の測定対象ガスに含まれる酸素の汲み入れおよび汲み出しを行う。具体的には、ポンプセル14の表面の多孔質電極16と裏面の多孔質電極16とにポンプ電流Ipを流して、測定室内の酸素の汲み入れおよび汲み出しを行い、測定室の酸素濃度の調整を行う。
【0040】
つまり、ガスセンサ8は、測定室の酸素濃度が所定の目標濃度(例えば、ストイキ)になるように、ポンプセル14に流したポンプ電流Ipに基づいて、測定対象ガスに含まれていた酸素濃度を検出する用途に用いられる。
【0041】
センサ制御装置2は、ガスセンサ8を駆動制御して排気ガス中の酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度をエンジン制御装置(図示省略)に通知する。
センサ制御装置2は、AD変換部31(アナログデジタル変換部31)、デジタル演算部33、電流DA変換部35(電流デジタルアナログ変換部35)、検出信号発生部42、バッファ44、第1ローパスフィルタ46(第1LPF46)、第2ローパスフィルタ48(第2LPF48)、マルチプレクサ50、Rpvs演算部51、ヒータ発熱量演算部53、PWM生成部55、ヒータドライバ57、を備えている。
【0042】
検出信号発生部42は、ガスセンサ8の起電力セル24の内部抵抗値を検出するためのインピーダンス検出信号Saを、ガスセンサ8の起電力セル24に対して入力する。具体的には、検出信号発生部42は、デジタル演算部33からの指令に基づいて、インピーダンス検出信号Saとしての定電流を起電力セル24に対して通電する。
【0043】
バッファ44は、起電力セル24の両端電圧をハイインピーダンスで検出し、第1ローパスフィルタ46または第2ローパスフィルタ48に対してローインピーダンスで出力する。なお、起電力セル24の両端電圧は、インピーダンス検出信号Saの未入力時には、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1(検知電圧Vs)となり、インピーダンス検出信号Saの入力時には、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2となる。
【0044】
第1ローパスフィルタ46は、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1に応じて時定数が設定されたローパスフィルタであり、バッファ44から受信した信号からセンサ出力信号Vs1を含む所定の周波数帯域の信号を通過させる。つまり、第1ローパスフィルタ46は、起電力セル24の両端電圧に応じて変化する信号の中から、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1を出力するフィルタである。
【0045】
第2ローパスフィルタ48は、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2と同じ周波数帯域の信号を通過させるフィルタである。つまり、第2ローパスフィルタ48は、起電力セル24の両端電圧に応じて変化する信号の中から、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2を出力するフィルタである。
【0046】
つまり、起電力セル24の両端に生じる両端電圧に応じて変化する信号のうち第1ローパスフィルタ46を通過する信号は、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1である。また、起電力セル24の両端に生じる両端電圧に応じて変化する信号のうち第2ローパスフィルタ48を通過する信号は、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2である。
【0047】
図2に、第1ローパスフィルタ46、第2ローパスフィルタ48、マルチプレクサ50の内部構成を表した説明図を示す。
第1ローパスフィルタ46、第2ローパスフィルタ48、マルチプレクサ50は、起電力セル24とAD変換部31との間の共通ライン間に接続される。
【0048】
第1ローパスフィルタ46は、第1抵抗素子61、第1コンデンサ63を備えるローパスフィルタ回路である。第1抵抗素子61は、抵抗値が50[kΩ]であり、バッファ44とマルチプレクサ50(詳細には、第1スイッチ71)との間に接続される。第1コンデンサ63は、静電容量が22[nF]であり、第1抵抗素子61とマルチプレクサ50との接続点62とグランドラインとの間に接続される。
【0049】
第1ローパスフィルタ46の時定数τ1は、τ1=1100[μSec](=50[kΩ]×22[nF])であり、第1ローパスフィルタ46の遮断周波数f1は、f1=0.14[kHz](=1/(2π・τ1))である。
【0050】
第2ローパスフィルタ48は、第2抵抗素子65、第2コンデンサ67を備えるローパスフィルタ回路である。第2抵抗素子65は、抵抗値が0.270[kΩ]であり、バッファ44とマルチプレクサ50(詳細には、第2スイッチ73)との間に接続される。第2コンデンサ67は、静電容量が22[nF]であり、第2抵抗素子65とマルチプレクサ50との接続点66とグランドラインとの間に接続される。
【0051】
第2ローパスフィルタ48の時定数τ2は、τ2=5.94[μSec](=0.270[kΩ]×22[nF])であり、第2ローパスフィルタ48の遮断周波数f2は、f2=26.8[kHz](=1/(2π・τ2))である。
【0052】
つまり、第1ローパスフィルタ46の時定数τ1は、第2ローパスフィルタ48の時定数τ2よりも大きい値である。また、第1ローパスフィルタ46の遮断周波数f1は、第2ローパスフィルタ48の遮断周波数f2よりも低周波数である。
【0053】
マルチプレクサ50(以下、MUX50ともいう)は、第1ローパスフィルタ46および第2ローパスフィルタ48から入力される信号のいずれか一方を、AD変換部31に対して出力する。マルチプレクサ50は、デジタル演算部33からの指令に基づいて、いずれの信号を出力するのかを決定する。
【0054】
マルチプレクサ50は、第1スイッチ71および第2スイッチ73を備えている。第1スイッチ71は、第1ローパスフィルタ46とAD変換部31との間に接続されており、第2スイッチ73は、第2ローパスフィルタ48とAD変換部31との間に接続されている。
【0055】
第1スイッチ71および第2スイッチ73の各状態(ON状態、OFF状態)は、デジタル演算部33からの指令に基づいて設定される。具体的には、センサ出力信号Vs1の検出時には、第1スイッチ71をON状態にするとともに、第2スイッチ73をOFF状態に設定する。応答信号Vs2の検出時には、第1スイッチ71をOFF状態にするとともに、第2スイッチ73をON状態に設定する。
【0056】
図1に戻り、AD変換部31は、ガスセンサ8の起電力セル24に生じる両端電圧のアナログ値であって、第1ローパスフィルタ46または第2ローパスフィルタ48を介して入力される両端電圧のアナログ値をデジタル値に変換し、両端電圧のデジタル値をデジタル演算部33またはRpvs演算部51に通知する。詳細には、AD変換部31は、センサ出力信号Vs1のデジタル値をデジタル演算部33に通知し、応答信号Vs2及びセンサ出力信号Vs1のデジタル値をRpvs演算部51に通知する。
【0057】
デジタル演算部33は、センサ制御処理、ポンプ電流制御処理などの演算制御処理、及び第1スイッチ71及び第2スイッチ73の各状態(ON状態、OFF状態)の切替などを実行する。センサ制御処理の処理内容は、後述する。
【0058】
なお、センサ制御装置2は、図示しないEEPROMおよびRAMを備えている。
EEPROMは、演算制御処理の内容や演算制御処理に用いる各種パラメータなどを記憶する記憶部である。また、EEPROMは、制御対象となるガスセンサ8の種類や特性に応じて定められる各種情報(ポンプセル14の許容最大電流など)を記憶している。これらの情報は、センサ制御装置2の製造段階でEEPROMに記憶される。
【0059】
RAMは、各種演算制御処理に用いられる制御データ等を一時的に記憶する記憶部である。
ポンプ電流制御処理は、起電力セル24の検知電圧Vsが目標制御電圧(本実施形態では、例えば450mV)となるように、ポンプセル14に通電するポンプ電流Ipを制御するための演算制御処理である。
【0060】
具体的には、ポンプ電流制御処理を実行するデジタル演算部33は、目標制御電圧(450mV)と起電力セル24の検知電圧Vsとの偏差ΔVsに基づいてPID演算し、偏差ΔVsが0に近づくように(換言すれば、検知電圧Vsが目標制御電圧に近づくように)電流DA変換部35によってポンプセル14に通電されるポンプ電流Ipを制御する。
【0061】
なお、デジタル演算部33は、ポンプ電流Ipに関する情報を含んだDAC制御信号S1を、電流DA変換部35に対して送信する。DAC制御信号S1は、ポンプ電流Ipの電流値および通電方向(正方向、逆方向)に関する情報を含んだデジタル信号である。
【0062】
電流DA変換部35は、デジタル演算部33で演算されたポンプ電流Ipの情報が含まれるDAC制御信号S1に基づいて、DA変換を行い、ポンプセル14に対してポンプ電流Ipを通電する。
【0063】
電流DA変換部35は、デジタル演算部33で演算されたポンプ電流Ipの情報(通電方向、電流値)が含まれるDAC制御信号S1を受信し、受信したデジタル情報についてDA変換を行い、DAC制御信号S1に基づき定められるポンプ電流をポンプセル14に対して通電する。
【0064】
Rpvs演算部51は、AD変換部31から通知された応答信号Vs2及びセンサ出力信号Vs1に基づいて、起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する。
ヒータ発熱量演算部53は、デジタル演算により、Rpvs演算部51で演算された内部抵抗値Rpvsに基づいてガスセンサ8の実際の温度を演算し、実際の温度をセンサ目標温度に近づけるために必要なヒータ発熱量を演算する。
【0065】
PWM生成部55は、ヒータ発熱量演算部53で演算されたヒータ発熱量に基づいて、ヒータ26に供給する電力のDUTY比率を演算して、そのDUTY比率に応じたPWM制御信号を生成する。
【0066】
ヒータドライバ57は、電源装置59から供給される電力を用いて、PWM生成部55からのPWM制御信号に基づいてヒータ26への通電制御を行う。これにより、ヒータ26の発熱量は、ガスセンサ8の実際の温度をセンサ目標温度に近づけるために必要な発熱量となる。
【0067】
[1−2.センサ制御処理]
次に、センサ制御装置2のデジタル演算部33で実行されるセンサ制御処理について説明する。
【0068】
図3および
図4に、センサ制御処理の処理内容を表したフローチャートを示す。
なお、センサ制御処理は、センサ制御装置2が起動されると開始される。
センサ制御処理が開始されると、まず、S110(Sはステップを表す)では、初期化処理(イニシャライズ処理)を実行する。具体的には、第1スイッチ71をON状態に設定し、第2スイッチ73をOFF状態に設定し、ポンプ電流制御処理を開始する。
【0069】
なお、ポンプ電流制御処理は、前述したように、起電力セル24の検知電圧Vsが目標制御電圧(本実施形態では、450mV)となるように、ポンプセル14に通電するポンプ電流Ipを制御するための演算制御処理である。このとき、ポンプ電流制御処理およびセンサ制御処理は、並行して実行される。
【0070】
次のS120では、第1タイマによる時間計測をスタートする。
次のS130では、第1タイマによる時間計測の開始から100[mSec]が経過したか否かを判定しており、肯定判定の場合にはS140に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行して100[mSec]が経過するまで待機する。
【0071】
S130で肯定判定されてS140に移行すると、S140では、第1タイマによる時間計測を再スタートする。
次のS150では、ヒータ26への通電状態がON状態からOFF状態に切り替えられたか否かを判定し、肯定判定の場合には160に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行して、ヒータ26への通電状態がON状態からOFF状態に切り替えられるまで待機する。
【0072】
なお、ヒータ26への通電制御処理は、ヒータ発熱量演算部53で実行されており、S150では、ヒータ26への通電状態(ON状態、OFF状態)をヒータ発熱量演算部53からの信号に基づいて判断している。
【0073】
S150で肯定判定されてS160に移行すると、S160では、第2タイマによる時間計測をスタートする。
次のS170では、第2タイマによる時間計測の開始から100[μSec]が経過したか否かを判定しており、肯定判定の場合にはS180に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行して100[μSec]が経過するまで待機する。
【0074】
なお、S170で計測する待機時間は、ヒータ26への通電電流の切替に伴いノイズが発生してからそのノイズが低減するまでの時間よりも長い時間が設定されている。
S170で肯定判定されてS180に移行すると、S180では、センサ出力信号Vs1の取得タイミングであるか否かを判定し、肯定判定の場合にはS190に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行してセンサ出力信号Vs1の取得タイミングまで待機する。
【0075】
S180では、AD変換部31のサンプリング周期信号がハイレベルからローレベルへ切り替わる時期のうち、S170で肯定判定された後、初めて到来する切替時期を、センサ出力信号Vs1の取得タイミングとして判定する。
【0076】
S180で肯定判定されてS190に移行すると、S190では、センサ出力信号Vs1を取得する。なお、センサ出力信号Vs1は、インピーダンス検出信号Saの入力前における起電力セル24の両端電圧であり、検知電圧Vsとして用いられる値であるほか、起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する処理(後述するS320)で利用される値である。
【0077】
次のS200では、ポンプ電流制御処理を停止するとともに、Ip出力更新処理を停止する。
なお、Ip出力更新処理とは、ポンプ電流Ipに基づいて検出した酸素濃度を、図示しない通信経路を介してエンジン制御装置(図示省略)に出力する処理である。これにより、センサ制御装置2は、ガスセンサ8を駆動制御して検出した酸素濃度をエンジン制御装置(図示省略)に通知する。
【0078】
次のS210では、第1スイッチ71をON状態からOFF状態に切り替え、第2スイッチ73をOFF状態からON状態に切り替える。
次のS220では、第3タイマによる時間計測をスタートする。
【0079】
次のS230では、第3タイマによる時間計測の開始から140[μSec]が経過したか否かを判定しており、肯定判定の場合にはS240に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行して140[μSec]が経過するまで待機する。
【0080】
S230で肯定判定されてS240に移行すると、S240では、検出信号発生部42に対して、インピーダンス検出信号Saの出力開始指令を行う。これにより、検出信号発生部42は、−1.22[mA]のパルス信号を起電力セル24に対して入力する。
【0081】
次のS250では、第3タイマによる時間計測の開始から200[μSec]が経過したか否かを判定しており、肯定判定の場合にはS260に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行して200[μSec]が経過するまで待機する。
【0082】
S250で肯定判定されてS260に移行すると、S260では、応答信号Vs2を取得する。このとき取得される応答信号Vs2は、インピーダンス検出信号Saの入力に応答して起電力セル24に発生する信号であり、インピーダンス検出信号Saの電流値(−1.22[mA])および起電力セル24の内部抵抗値Rpvsに応じた値を示す。
【0083】
次のS270では、検出信号発生部42に対して、インピーダンス検出信号Saの出力停止指令を行う。これにより、検出信号発生部42は、起電力セル24へのパルス信号の出力を停止する。
【0084】
次のS280では、第3タイマによる時間計測の開始から230[μSec]が経過したか否かを判定しており、肯定判定の場合にはS290に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行して230[μSec]が経過するまで待機する。
【0085】
S280で肯定判定されてS290に移行すると、S290では、検出信号発生部42に対して、逆極性信号の出力開始指令を行う。これにより、検出信号発生部42は、+1.22[mA]のパルス信号を起電力セル24に対して入力する。
【0086】
なお、逆極性信号Sbは、インピーダンス検出信号Saとは逆極性のパルス信号である。このように起電力セル24に逆極性信号を流すことにより、起電力セル24を構成する固体電解質体25の配向現象によって内部起電力が影響を受けて、本来の酸素濃度差に応じた内部起電力値を出力しない異常な状態から、正常な状態に復帰するまでの時間を短縮することができる。
【0087】
次のS300では、第3タイマによる時間計測の開始から290[μSec]が経過したか否かを判定しており、肯定判定の場合にはS310に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行して290[μSec]が経過するまで待機する。
【0088】
S300で肯定判定されてS310に移行すると、S310では、検出信号発生部42に対して、逆極性信号の出力停止指令を行う。これにより、検出信号発生部42は、起電力セル24へのパルス信号の出力を停止する。
【0089】
次のS320では、起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する。具体的には、センサ出力信号Vs1と応答信号Vs2との差分値である電圧変化量Vrpvs(=Vs1−Vs2)を、インピーダンス検出信号Saの電流値(1.22[mA])で除算することで、起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する。
【0090】
なお、内部抵抗値Rpvsの演算処理は、Rpvs演算部51で実行されており、演算結果である内部抵抗値Rpvsは、Rpvs演算部51からデジタル演算部33に通知される。
【0091】
次のS330では、スイッチ解除タイミングであるか否かを判定し、肯定判定の場合にはS340に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行してスイッチ解除タイミングとなるまで待機する。
【0092】
なお、ここでのスイッチ解除タイミングは、アナログデジタル変換部31のサンプリング周期信号がハイレベルからローレベルへ切り替わる時期のうち、S310を実行した後、初めて到来する切替時期である。
【0093】
S330で肯定判定されてS340に移行すると、S340では、第1スイッチ71をOFF状態からON状態に切り替え、第2スイッチ73をON状態からOFF状態に切り替える。
【0094】
次のS350では、第3タイマによる時間計測の開始から600[μSec]が経過したか否かを判定しており、肯定判定の場合にはS360に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行して600[μSec]が経過するまで待機する。
【0095】
S350で肯定判定されてS360に移行すると、S360では、ポンプ電流制御処理を開始する。
次のS370では、第3タイマによる時間計測の開始から1.0[mSec]が経過したか否かを判定しており、肯定判定の場合にはS380に移行し、否定判定の場合には同ステップを繰り返し実行して1.0[mSec]が経過するまで待機する。
【0096】
S370で肯定判定されてS380に移行すると、S380では、Ip出力更新処理を開始する。
次のS390では、第2タイマおよび第3タイマによる時間計測をそれぞれリセットする。
【0097】
S390での処理が終了すると、再びS130に移行する。
このあと、S130からS390までの処理を繰り返し実行する。
つまり、センサ制御処理では、第1スイッチ71および第2スイッチ73の状態を切り替えることで、アナログデジタル変換部31に入力される信号の周波数帯域を切り替える処理を実行している。
【0098】
[1−3.ガス検知システム1の動作]
図5に、本実施形態のガス検知システム1における各部の動作のタイミングを示すタイミングチャートを示す。
【0099】
図5では、AD変換部31のサンプリング周期信号の波形と、ヒータ26へ通電されるヒータ電流の波形と、起電力セル24に流れる電流Ivsの波形と、起電力セル24の検知電圧Vsの波形と、Ip出力更新処理における出力更新タイミングの波形と、ポンプ電流制御処理におけるポンプ電流Ipの更新タイミングの波形と、第1スイッチ71の状態と、第2スイッチ73の状態と、を表している。
【0100】
図5のうち、時刻t1は、第1タイマによる時間計測の再スタート時期であり、センサ制御処理でのS140の実行時期に相当する。
時刻t2は、ヒータ26への通電電流がON状態からOFF状態に切り替えられた時期であり、センサ制御処理でのS150での肯定判定時期に相当する。
【0101】
時刻t3は、ポンプ電流制御処理を停止した時期であり、Ip出力更新処理を停止した時期であり、第1スイッチ71をON状態からOFF状態に切り替えた時期であり、第2スイッチ73をOFF状態からON状態に切り替えた時期であり、センサ出力信号Vs1の検出時期である。
【0102】
時刻t3は、センサ制御処理でのS190,S200,S210の実行時期に相当する。S190,S200,S210のそれぞれの実行時期は、厳密には異なる時期ではあるが、S190,S200,S210の各ステップは、
図5のタイミングチャートでは同時期と近似できる程度に近接した時期に実行される。
【0103】
時刻t4は、検出信号発生部42から起電力セル24に対するインピーダンス検出信号Saの入力が開始された時期であり、センサ制御処理でのS240の実行時期に相当する。
【0104】
時刻t5は、応答信号Vs2の取得時期であり、かつ、検出信号発生部42から起電力セル24に対するインピーダンス検出信号Saの入力が停止された時期である。
時刻t5は、センサ制御処理でのS260およびS270の実行時期に相当する。S260,S270のそれぞれの実行時期は、厳密には異なる時期ではあるが、S260,S270の各ステップは、
図5のタイミングチャートでは同時期と近似できる程度に近接した時期に実行される。
【0105】
時刻t6は、検出信号発生部42から起電力セル24に対する逆極性信号の入力が開始された時期であり、センサ制御処理でのS290の実行時期に相当する。
時刻t7は、検出信号発生部42から起電力セル24に対する逆極性信号の入力が停止された時期であり、センサ制御処理でのS310の実行時期に相当する。
【0106】
時刻t8は、第1スイッチ71をOFF状態からON状態に切り替えた時期であり、第2スイッチ73をON状態からOFF状態に切り替えた時期であり、センサ制御処理でのS340の実行時期に相当する。
【0107】
時刻t9は、ポンプ電流制御処理を開始した時期であり、センサ制御処理でのS360の実行時期に相当する。
時刻t10は、Ip出力更新処理を開始した時期であり、センサ制御処理でのS380の実行時期に相当する。
【0108】
そして、時刻t101は、時刻t1から100[mSec]が経過した時期であり、時刻t1と同様の第1タイマによる時間計測の再スタート時期であり、センサ制御処理でのS140の実行時期に相当する。
【0109】
また、時刻t102は、時刻t2と同様のヒータ通電切替時期(ON状態からOFF状態への切替時期)であり、センサ制御処理でのS150での肯定判定時期に相当する。
そして、時刻t103,t104,t105,t106は、それぞれ時刻t3,t4,t5,t6と同様の時期である。
【0110】
このように、ガス検知システム1においては、センサ制御装置2が上述のセンサ制御処理を実行することで、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1を検出する場合と、起電力セル24の内部抵抗値Rpvsに応じて変化する応答信号Vs2を検出する場合とで、マルチプレクサ50における第1スイッチ71および第2スイッチ73を異なる状態に切り替えている。
【0111】
つまり、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1を検出して、ポンプ電流制御処理(ポンプセル14へのポンプ電流Ipのフィードバック制御処理)を行う場合には、第1スイッチ71がON状態となり、第2スイッチ73がOFF状態となるように、各スイッチの状態を切り替えている。また、応答信号Vs2を検出して、起電力セル24の内部抵抗値Rpvs(換言すれば、起電力セル24の温度)を演算する場合には、第1スイッチ71がOFF状態となり、第2スイッチ73がON状態となるように、各スイッチの状態を切り替えている。
【0112】
センサ制御装置2は、上述のように第1スイッチ71および第2スイッチ73の状態を切り替えることで、起電力セル24とアナログデジタル変換部31との間に設けられるローパスフィルタの時定数を切り替えると共に、起電力セル24からアナログデジタル変換部31に対して入力される信号の周波数帯域を切り替えている。
【0113】
第1ローパスフィルタ46および第2ローパスフィルタ48は、第1ローパスフィルタ46の時定数が第2ローパスフィルタ48の時定数よりも大きい値となるように、それぞれ構成されている。
【0114】
これにより、センサ出力信号Vs1(検知電圧Vs)を検出してポンプ電流制御処理を行う場合には、第1ローパスフィルタ46を通過した信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、測定室の酸素濃度に応じて変化する検知電圧Vsと同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力される。
【0115】
また、応答信号Vs2を検出して起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する場合には、第2ローパスフィルタ48を通過した信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2と同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力される。
【0116】
[1−4.効果]
以上説明したように、本実施形態のガス検知システム1においては、センサ制御装置2が、第1ローパスフィルタ46,第2ローパスフィルタ48,マルチプレクサ50を備えており、センサ出力信号Vs1の検出時における時定数と応答信号Vs2の検出時における時定数とをそれぞれ異なる値に切り替えることができる。
【0117】
つまり、このガス検知システム1は、時定数が常に一定値のローパスフィルタを備える構成ではなく、時定数の異なる2つのローパスフィルタを切り替えて、通過する信号の周波数帯域を変更することで、センサ出力信号Vs1または応答信号Vs2の各周波数帯域に応じて、AD変換部31に入力される信号の周波数帯域を変更することが可能となる。
【0118】
そして、第1ローパスフィルタ46の時定数は、第2ローパスフィルタ48の時定数よりも大きい値に設定されており、センサ出力信号Vs1および応答信号Vs2のそれぞれの検出精度を向上できる。
【0119】
つまり、センサ出力信号Vs1の検出時には、第1ローパスフィルタ46を通じて、センサ出力信号Vs1と同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、センサ出力信号Vs1の検出精度が向上する。また、応答信号Vs2の検出時には、第2ローパスフィルタ48を通じて、応答信号Vs2と同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、応答信号Vs2の検出精度が向上する。
【0120】
よって、本実施形態のガス検知システム1およびセンサ制御装置2によれば、センサ出力信号Vs1および応答信号Vs2を読み込む構成において、各信号の検出精度の低下を抑制できる。
【0121】
また、本実施形態においては、ヒータ26への通電電流の切替時期から待機時間(100[μSec])が経過した後に(S170で肯定判定)、検出信号発生部42によるインピーダンス検出信号Saの発生時期(S240)が設定されている。
【0122】
つまり、ヒータ26への通電電流の切り替え直後には、通電電流の切替に伴いノイズが発生するが、待機時間が経過した後であればノイズが低減した状態となるため、応答信号Vs2の検出にあたりノイズの影響を抑制できる。
【0123】
よって、本実施形態のガス検知システム1およびセンサ制御装置2によれば、応答信号Vs2の検出精度の低下を抑制できる。
[1−5.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
【0124】
ポンプセル14が第2セルの一例に相当し、一対の多孔質電極16が一対の電極の一例に相当し、起電力セル24が第1セルの一例に相当し、一対の多孔質電極28が一対の電極の一例に相当し、第1ローパスフィルタ46,第2ローパスフィルタ48,マルチプレクサ50が時定数可変フィルタ部の一例に相当し、マルチプレクサ50がフィルタ切替部の一例に相当し、DAC制御信号S1が制御信号の一例に相当する。
【0125】
[2.第2実施形態]
第2実施形態として、第1実施形態における「第1ローパスフィルタ46,第2ローパスフィルタ48,マルチプレクサ50」に代えて、可変ローパスフィルタ81が設けられた第2センサ制御装置102を備える第2ガス検知システム101について説明する。
【0126】
なお、以下の説明では、第2実施形態の構成のうち第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一を付して説明を省略し、第2実施形態の構成のうち第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0127】
図6は、第2実施形態の第2ガス検知システム101の全体構成図である。
第2実施形態の第2センサ制御装置102は、第1実施形態のセンサ制御装置2に対して、「第1ローパスフィルタ46,第2ローパスフィルタ48,マルチプレクサ50」に代えて、可変ローパスフィルタ81が設けられた構成である。
【0128】
図7に、可変ローパスフィルタ81の内部構成を表した説明図を示す。
可変ローパスフィルタ81は、抵抗値が50[kΩ]の第3抵抗素子83と、第3スイッチ84と、抵抗値が0.270[kΩ]の第4抵抗素子85と、第4スイッチ86と、静電容量が22[nF]の第2容量素子87と、を備える。
【0129】
可変ローパスフィルタ81においては、第3抵抗素子83および第3スイッチ84の直列回路と、第4抵抗素子85および第4スイッチ86の直列回路とが、並列接続されると共に、第3抵抗素子83および第4抵抗素子85の接続点88がバッファ44に接続され、第3スイッチ84および第4スイッチ86の接続点89がAD変換部31に接続されている。
【0130】
また、第2容量素子87は、第3スイッチ84および第4スイッチ86の接続点89とグランド電位との間に接続されている。
この可変ローパスフィルタ81は、第3スイッチ84がON状態であるとともに第4スイッチ86がOFF状態の場合に、第3抵抗素子83および第2容量素子87からなるローパスフィルタを構成する。このときの時定数は、第1実施形態の第1ローパスフィルタ46と同じであり、このときの可変ローパスフィルタ81は、起電力セル24の両端電圧に応じて変化する信号の中から、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1を抽出するフィルタである。
【0131】
また、可変ローパスフィルタ81は、第3スイッチ84がOFF状態であるとともに第4スイッチ86がON状態の場合に、第4抵抗素子85および第2容量素子87からなるローパスフィルタを構成する。このときの時定数は、第1実施形態の第2ローパスフィルタ48と同じであり、このときの可変ローパスフィルタ81は、起電力セル24の両端電圧に応じて変化する信号の中から、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2を抽出するフィルタである。
【0132】
つまり、可変ローパスフィルタ81は、第3スイッチ84および第4スイッチ86の各状態によって、第3抵抗素子83、第4抵抗素子85、第2容量素子87の接続状態を変更することで、ローパスフィルタとしての時定数を変更可能に構成されている。
【0133】
また、第2実施形態におけるセンサ制御処理では、第1スイッチ71に代えて第3スイッチ84の状態を制御し、第2スイッチ73に代えて第4スイッチ86の状態を制御することで、アナログデジタル変換部31に入力される信号の周波数帯域を切り替える処理を実行している。
【0134】
これにより、センサ出力信号Vs1を検出してポンプ電流制御処理を行う場合には、第3抵抗素子83および第2容量素子87からなるローパスフィルタを通過した信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1と同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力される。
【0135】
また、応答信号Vs2を検出して起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する場合には、第4抵抗素子85および第2容量素子87からなるローパスフィルタを通過した信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2と同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力される。
【0136】
以上説明したように、第2実施形態の第2ガス検知システム101においては、第2センサ制御装置102が、可変ローパスフィルタ81を備えており、センサ出力信号Vs1の検出時における時定数と応答信号Vs2の検出時における時定数とをそれぞれ異なる値に切り替えることができる。
【0137】
そして、センサ出力信号Vs1の検出時には、第1ローパスフィルタ46を通じて、センサ出力信号Vs1と同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、センサ出力信号Vs1の検出精度が向上する。また、応答信号Vs2の検出時には、第2ローパスフィルタ48を通じて、応答信号Vs2と同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、応答信号Vs2の検出精度が向上する。
【0138】
よって、第2実施形態の第2ガス検知システム101および第2センサ制御装置102によれば、第1実施形態と同様に、センサ出力信号Vs1および応答信号Vs2を読み込む構成において、各信号の検出精度の低下を抑制できる。
【0139】
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
可変ローパスフィルタ81が時定数可変フィルタ部の一例に相当し、第3スイッチ84および第4スイッチ86が接続状態切替部の一例に相当する。
【0140】
[3.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0141】
例えば、上記の第2実施形態では、可変ローパスフィルタ81が、2つの抵抗素子と2つのスイッチと1つの容量素子とを備えた構成であるが、2つの抵抗素子と1つのスイッチと1つの容量素子とを備えた構成の可変ローパスフィルタを用いても良い。
【0142】
図8に、第2可変ローパスフィルタ91の内部構成を表した説明図を示す。
第2可変ローパスフィルタ91は、抵抗値が0.270[kΩ]の第5抵抗素子93と、抵抗値が50[kΩ]の第6抵抗素子94と、第5スイッチ95と、静電容量が22[nF]の第3容量素子96と、を備える。
【0143】
第2可変ローパスフィルタ91においては、第5抵抗素子93および第6抵抗素子94が直列接続され、第6抵抗素子94と第5スイッチ95とが並列接続され、第5抵抗素子93の一端がバッファ44に接続され、第6抵抗素子94の一端がAD変換部31に接続されている。
【0144】
また、第3容量素子96は、第6抵抗素子94およびAD変換部31の接続点97とグランド電位との間に接続されている。
この第2可変ローパスフィルタ91は、第5スイッチ95がOFF状態である場合に、第5抵抗素子93および第6抵抗素子94の直列回路と第3容量素子96からなるローパスフィルタを構成する。このときの時定数は、第1実施形態の第1ローパスフィルタ46に近い値であり、このときの第2可変ローパスフィルタ91は、起電力セル24の両端電圧に応じて変化する信号の中から、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1を抽出するフィルタである。
【0145】
また、第2可変ローパスフィルタ91は、第5スイッチ95がON状態である場合に、第5抵抗素子93および第3容量素子96からなるローパスフィルタを構成する。このときの時定数は、第1実施形態の第2ローパスフィルタ48と同じであり、このときの第2可変ローパスフィルタ91は、起電力セル24の両端電圧に応じて変化する信号の中から、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2を抽出するフィルタである。
【0146】
つまり、第2可変ローパスフィルタ91は、第5スイッチ95の状態によって、第5抵抗素子93、第6抵抗素子94、第3容量素子96の接続状態を変更することで、ローパスフィルタとしての時定数を変更可能に構成されている。
【0147】
また、第2可変ローパスフィルタ91を備えるセンサ制御装置では、第1実施形態での第2スイッチ73に代えて第5スイッチ95の状態を制御することで、アナログデジタル変換部31に入力される信号の周波数帯域を切り替える処理を実行している。
【0148】
これにより、センサ出力信号Vs1を検出してポンプ電流制御処理を行う場合には、第5抵抗素子93および第6抵抗素子94の直列回路と第3容量素子96からなるローパスフィルタを通過した信号がアナログデジタル変換部31に対して入力される。このとき、測定室の酸素濃度に応じて変化するセンサ出力信号Vs1と同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、センサ出力信号Vs1の検出精度が向上する。
【0149】
また、応答信号Vs2を検出して起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する場合には、第5抵抗素子93および第3容量素子96からなるローパスフィルタを通過した信号がアナログデジタル変換部31に対して入力される。このとき、起電力セル24の内部抵抗値に応じて変化する応答信号Vs2と同じ周波数帯域の信号がアナログデジタル変換部31に対して入力されるため、応答信号Vs2の検出精度が向上する。
【0150】
以上説明したように、このような構成のガス検知システムにおいては、センサ制御装置が、第2可変ローパスフィルタ91を備えており、センサ出力信号Vs1の検出時における時定数と応答信号Vs2の検出時における時定数とをそれぞれ異なる値に切り替えることで、センサ出力信号Vs1の検出精度および応答信号Vs2の検出精度が向上する。
【0151】
よって、第2可変ローパスフィルタ91を備えるガス検知システムおよびセンサ制御装置によれば、第2実施形態と同様に、センサ出力信号Vs1および応答信号Vs2を読み込む構成において、各信号の検出精度の低下を抑制できる。
【0152】
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
第2可変ローパスフィルタ91が時定数可変フィルタ部の一例に相当し、第5スイッチ95が接続状態切替部の一例に相当する。
【0153】
また、上述の各実施形態における抵抗素子の抵抗値や容量素子の静電容量は、上記数値に限られることはなく、検出対象ガスの種類やガス検出の用途などに応じて任意の適切な値を設定することができる。
【0154】
また、上述の各実施形態におけるセンサ制御処理での待機時間や判定に用いる時間は、上記数値に限られることはなく、検出対象ガスの種類やガス検出の用途などに応じて任意の適切な値を設定することができる。
【0155】
また、上記実施形態では、起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する処理とポンプ電流制御処理とを並行して実行する構成について説明したが、本発明はこのような構成に限られることはない。例えば、ポンプ電流制御処理は実行せず、起電力セルから出力されるセンサ出力信号Vs1及び応答信号Vs2を取得し、起電力セル24の内部抵抗値Rpvsを演算する処理を定期的に実行する構成のセンサ制御装置にも、本発明を適用することができる。