(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0015】
1. 荷電粒子線装置の構成
まず、本実施形態に係る荷電粒子線装置の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る荷電粒子線装置1000の構成を説明するための模式図である。
【0016】
本実施形態に係る荷電粒子線装置1000は、本発明に係る試料導入装置を含んで構成されている。ここでは、荷電粒子線装置が、本実施形態に係る試料導入装置100を含んで構成されている場合について説明する。なお、
図1では、試料導入装置100を簡略化して図示している。
【0017】
荷電粒子線装置1000は、
図1に示すように、電子線源1001と、照射レンズ1002と、試料導入装置100と、対物レンズ1004と、中間レンズ1005と、投影レンズ1006と、撮像装置1008と、鏡筒1010と、を含んで構成されている。ここでは、荷電粒子線装置1000が、透過電子顕微鏡(TEM)である場合について説明する。なお、
図1では、試料ホルダー10が試料室1に挿入されている状態を図示している。
【0018】
電子線源1001、照射レンズ1002、対物レンズ1004、中間レンズ1005、投影レンズ1006は、鏡筒1010の内部に収容されている。鏡筒1010の内部は、排気装置(図示せず)によって減圧排気されている。
【0019】
電子線源1001は、電子線EBを発生させる。電子線源1001は、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線EBを放出する。電子線源1001として、公知の電子銃を用いることができる。
【0020】
照射レンズ1002は、電子線源1001の後段に配置されている。照射レンズ1002は、電子線源1001で発生した電子線EBを試料Sに照射するためのレンズである。照射レンズ1002は、例えば、複数の集束レンズ(図示せず)を含んで構成されている。
【0021】
試料室1には、試料ホルダー10によって試料が保持されている。試料室1は、鏡筒1010内の空間である。試料室1は、真空状態に維持される。ここで真空状態とは、大気よりも圧力の低い状態をいう。試料室1において、試料Sに荷電粒子線(電子線)が照射される。
【0022】
試料導入装置100は、試料Sを試料室1に導入するための装置である。試料導入装置100は、試料ホルダー10を移動させて、試料Sを保持する試料保持部12を予備排気室2から試料室1に移動させることができる。また、試料導入装置100は、試料ホルダー10を移動させて、試料保持部12を試料室1から予備排気室2に移動させることができる。
【0023】
試料導入装置100は、試料Sを試料室1に保持し、試料室1における試料Sの位置決めを行う試料ステージとしても機能する。図示の例では、試料導入装置100は、対物レンズ1004の横から試料ホルダー10(試料S)を挿入するサイドエントリーステージを構成している。
【0024】
試料導入装置100の制御部90は、後述する試料導入装置100の駆動部30およびゴニオメーター50(
図2参照)を制御する。具体的には、制御部90は、駆動部30およびゴニオメーター50を制御して、試料保持部12を予備排気室2から試料室1に移動させる処理を行う。また、制御部90は、駆動部30およびゴニオメーター50を制御して、試料保持部12を試料室1から予備排気室2に移動させる処理を行う。制御部90の処理の詳細については後述する。制御部90の機能は、例えば、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。
【0025】
対物レンズ1004は、照射レンズ1002の後段に配置されている。対物レンズ1004は、試料Sを透過した電子線EBで結像するための初段のレンズである。
【0026】
中間レンズ1005は、対物レンズ1004の後段に配置されている。投影レンズ10
06は、中間レンズ1005の後段に配置されている。中間レンズ1005および投影レンズ1006は、対物レンズ1004によって結像された像をさらに拡大し、撮像装置1008上に結像させる。
【0027】
撮像装置1008は、電子線EBを検出するための検出器を有している。検出器は、例えば、2次元的に配置された固体撮像素子を有するCCDカメラである。撮像装置1008は、電子顕微鏡像を撮像し、この電子顕微鏡像の情報を出力する。
【0028】
荷電粒子線装置1000は、図示の例では、除振機1011を介して架台1012上に設置されている。
【0029】
図2は、試料導入装置100を模式的に示す図である。
図2では、試料導入装置100を上方(電子線EBの進行方向)から見た模式図である。
【0030】
試料導入装置100は、
図2に示すように、予備排気室2と、試料ホルダー10と、支持部20と、駆動部30と、を含む。試料導入装置100は、さらに、ゴニオカバー40と、ゴニオメーター50と、試料ホルダー挿入管60と、仕切弁(バルブ)70と、レバー80と、制御部90(
図1参照)と、を含んで構成されている。
【0031】
予備排気室2は、試料ホルダー10を試料室1に導くために予備排気するための空間である。予備排気とは、試料Sを試料室1に導入する際に、予備排気室2を所与の圧力まで排気することをいう。予備排気を行うことで、試料室1の真空度の低下を抑制しつつ、試料Sを試料室1に導入することができる。予備排気室2は、大気圧から所与の圧力まで排気されることができる。例えば、予備排気室2は、バルブ(図示せず)を介して、真空排気装置に接続されており、このバルブを開くことにより、予備排気室2は排気される。予備排気は、例えば、ユーザーが、ゴニオカバー40に設けられている試料ホルダー交換スイッチ49を押すことで、開始される。
【0032】
予備排気室2は、試料ホルダー挿入管60内の空間である。予備排気室2と試料室1とは、仕切弁70を介して接続されている。予備排気室2は、仕切弁70を開くことにより、試料室1と連通する。仕切弁70は、試料室1と予備排気室2とを隔てるための真空隔壁として用いられる真空弁である。仕切弁70は、ゴニオメーター50に固定されたギヤ72に固定されており、試料ホルダー挿入管60を回転させることによりギヤ72が回転し、仕切弁70が開閉する。
【0033】
試料ホルダー10は、棒(ロッド)状の部材である。試料ホルダー10は、試料保持部12と、シャフト部13と、グリップ部14と、を含んで構成されている。
【0034】
シャフト部13の一方の端部には、試料保持部12が設けられている。また、シャフト部13の長手方向の他方の端部には、グリップ部14が設けられている。試料保持部12は、試料Sを保持することができる。試料保持部12は、図示はしないが、試料Sをネジの締め付けによって固定してもよいし、試料Sをばねにより試料保持部12に押し付けて固定してもよい。グリップ部14は、例えば、ユーザーが試料ホルダー10を把持するための部分である。グリップ部14の径は、シャフト部13の径よりも大きい。
【0035】
試料室1と外部(大気圧)との圧力差によって、試料ホルダー10には試料室1に引き込まれる力が作用している。試料ホルダー10は、この力によってレバー80に押しつけられている。レバー80は、軸82を回転中心とするてこ式のレバーである。レバー80は、例えば、モーター(図示せず)の駆動により動作することができる。レバー80によって、試料ホルダー10を試料ホルダー10の軸方向に移動させることができる。
【0036】
支持部20は、試料ホルダー10を支持することができる。支持部20は、試料ホルダー10の試料保持部12、シャフト部13を通すための貫通孔22が設けられた板状の部材である。支持部20は、駆動部30に接続されている。図示の例では、支持部20は、2つの駆動部30に接続されている。支持部20は、駆動部30のロッド31に固定されている。支持部20は、ロッド31の直線運動に伴って、直線的に移動する。図示の例では、支持部20は、初期位置P1に位置しているが、支持部20は、ロッド31の直線運動により、初期位置P1から、位置P2(
図4参照)、位置P3(
図6参照)、位置P4(
図5参照)に移動することができる。これにより、試料ホルダー10を移動させて、試料保持部12(試料S)を予備排気室2から試料室1に移動させたり、試料保持部12を試料室1から予備排気室2に移動させたりすることができる。
【0037】
駆動部30は、支持部20を移動させる。本実施形態では、駆動部30は、エアーシリンダーである。エアーシリンダーは、例えば、圧縮空気のエネルギーを直線運動に変換する機械要素である。駆動部(エアーシリンダー)30は、ロッド31を有しており、支持部20は、ロッド31に接続されている。駆動部(エアーシリンダー)30が伸縮することによってロッド31が直線運動し、支持部20を移動させることができる。図示の例では、試料導入装置100は、2つの駆動部(エアーシリンダー)30を有しており、この2つの駆動部(エアーシリンダー)30が支持部20を移動させる。
【0038】
駆動部(エアーシリンダー)30は、試料保持部12が予備排気室2から試料室1に移動するように、支持部20を移動させる。具体的には、駆動部(エアーシリンダー)30は、試料室1と外部(大気圧)との圧力差によって試料ホルダー10に加わる力F1とは反対方向の力であって、力F1より小さい力F2を、試料ホルダー10に作用させる(
図6参照)。これにより、試料ホルダー10が急激に試料室1に引き込まれることを防ぐことができ、試料ホルダー10を所望の速度で移動させて、試料保持部12を予備排気室2から試料室1に移動させることができる。
【0039】
また、駆動部(エアーシリンダー)30は、試料保持部12が試料室1から予備排気室2に移動するように、支持部20を移動させる。具体的には、駆動部(エアーシリンダー)30は、力F1とは反対方向の力であって、力F1より大きい力F3を、試料ホルダー10に作用させる(
図7参照)。これにより、試料ホルダー10が急激に試料室1に引き込まれることを防ぐことができ、試料ホルダー10を所望の速度で移動させて、試料保持部12を試料室1から予備排気室2に移動させることができる。
【0040】
駆動部(エアーシリンダー)30は、制御部90(
図1参照)によって制御される。センサー(前方オートセンサー)32は、駆動部(エアーシリンダー)30が伸びたときの長さを決めるためのセンサーであり、センサー(後方オートセンサー)34は、駆動部(エアーシリンダー)30が縮んだときの長さを決めるためのセンサーである。さらに、センサー35とセンサー36は、センサー32とセンサー34との間に配置され、駆動部30の長さを決めるためのセンサーである。すなわち、センサー32,34,35,36によって、駆動部(エアーシリンダー)30の長さの上限と下限を決めることができる。センサー32,34,35,36の検出位置を調整することで、支持部20の移動範囲を決めることができる。
【0041】
ゴニオメーター50は、試料ホルダー挿入管60に挿入された試料ホルダー10を回転(傾斜)させることができる。ゴニオメーター50が試料ホルダー10を回転(傾斜)させることにより、試料保持部12が回転(傾斜)し、試料Sを電子線EBに対して傾斜させることができる。ゴニオメーター50は、制御部90(
図1参照)によって制御される。また、ゴニオメーター50の回転角度(傾斜角度)の検出は、ポテンショメーター(図
示せず)によって行われる。なお、ゴニオメーター50の回転角度(傾斜角度)の検出は、エンコーダー等の回転を検出可能な検出器で行ってもよい。
【0042】
ゴニオメーター50には、予備排気可否センサー92が設けられている。予備排気可否センサー92は、予備排気を行うことが可能か否かを検出するためのセンサーである。
【0043】
ゴニオカバー40は、試料ホルダー10、支持部20、駆動部30、およびゴニオメーター50を収容する容器である。ゴニオカバー40は、蓋部42と筐体44とで構成されている。蓋部42は、開閉可能に設けられている。蓋部42には、蓋部42の開閉を検知するための開閉検知センサー46が設けられている。また、蓋部42および筐体44には、蓋部42を閉じた状態で固定するためのフック48が設けられている。また、ゴニオカバー40には、制御部90の処理を開始させるための試料ホルダー交換スイッチ49が設けられている。
【0044】
2. 試料導入装置の動作
次に、本実施形態に係る試料導入装置100の動作について図面を参照しながら説明する。
図3〜
図7は、試料導入装置100の動作を説明するための模式図である。
【0045】
(1)試料ホルダーの試料室への挿入手順
まず、試料ホルダー10を試料室1に挿入する際の試料導入装置100の動作について説明する。
【0046】
図3に示すように、ユーザーによって蓋部42が開かれると、開閉検知センサー46がONとなり、予備排気可否センサー92が有効になる。そして、ユーザーが、試料ホルダー10を支持部20の貫通孔22、および試料ホルダー挿入管60に挿入して、予備排気室2に試料ホルダー10(試料保持部12)を導入する。このとき、ゴニオメーター50は、右回りに90度回転している状態であり、試料ホルダー10は、0度の状態で、試料ホルダー挿入管60に挿入される。
【0047】
試料ホルダー10が試料ホルダー挿入管60に挿入されると、
図3に示すように、試料ホルダー10から突出しているピン16が予備排気可否センサー92を押し、予備排気可否センサー92をONにする。そして、ユーザーが試料ホルダー交換スイッチ49を押すことで、予備排気室2において、予備排気が開始される。また、試料ホルダー交換スイッチ49が押されることで、制御部90が以下に説明する処理を開始する。このとき、支持部20は、
図3に示すように、初期位置P1に位置している。
【0048】
図8は、試料ホルダー10を試料室1に挿入する際の試料導入装置100の制御部90の処理の一例を示すフローチャートである。以下に示す、制御部90の処理S10、S11、S12、S13は、自動シーケンスで行われる。
【0049】
まず、制御部90は、駆動部(エアーシリンダー)30を制御して、
図4に示すように、支持部20が試料ホルダー10を支持するように、支持部20を移動させる処理を行う(S10)。これにより、駆動部(エアーシリンダー)30が伸びて支持部20が位置P2に移動し、試料ホルダー10が支持部20で支持される。より具体的には、センサー32は、位置P2に調整されており、制御部90は、センサー32の出力信号に基づいて、駆動部(エアーシリンダー)30を位置P2に移動させる処理を行う。試料ホルダー10には、予備排気室2と外部(大気圧)との圧力差によって予備排気室2に引き込まれる力f1が加わっている。そのため、支持部20を位置P2まで移動させて、試料ホルダー10のグリップ部14に支持部20を押し当てることで、試料ホルダー10を支持することができる。
【0050】
ここで、支持部20の貫通孔22の形状は、試料ホルダー10に設けられた回転抑制部18が収まる形状となっており、この回転抑制部18が貫通孔22に収まることにより、試料ホルダー10の軸まわりの回転が抑制される。
【0051】
予備排気が完了すると、制御部90は、ゴニオメーター50を制御して、ゴニオメーター50を回転させ、
図5に示すように、試料室1と予備排気室2とを隔てる仕切弁70を開く処理を行う(S11)。
【0052】
具体的には、制御部90は、まず、ゴニオメーター50を制御して、ゴニオメーター50を左回り25度回転させる処理を行う。これにより、試料ホルダー10には、力f1が加わっているため、駆動部30では、力f1と反対方向で、力f1よりも小さい力f2を試料ホルダー10に作用させ、支持部20を位置P2から位置P4まで移動させることで、試料ホルダー10のピン16が試料ホルダー挿入管60の溝に移動し、試料ホルダー10と試料ホルダー挿入管60とが一体となり、試料ホルダー挿入管60の回転が規制される。より具体的には、センサー35は、位置P4に調整されており、制御部90は、センサー35の出力信号に基づいて、駆動部30を位置P4に移動させる処理を行う。次に、制御部90は、ゴニオメーター50を制御して、ゴニオメーター50を左回りに65度回転させる処理を行う。このとき、試料ホルダー挿入管60の回転が規制されているため、ギヤ72は、ゴニオメーター50の回転とともに試料ホルダー挿入管60との相対角度を変化させる。これにより、ギヤ72が回転し、仕切弁70が開き、予備排気室2と試料室1とが連通する。予備排気室2と試料室1とが連通すると、試料ホルダー10には、試料室1と外部(大気圧)との圧力差によって試料室1に引き込まれる力F1が加わる。
【0053】
次に、制御部90は、駆動部(エアーシリンダー)30を制御して、
図6に示すように、試料保持部12が予備排気室2から試料室1に移動するように、支持部20を移動させる処理を行う(S12)。ここで、駆動部(エアーシリンダー)30は、力F1とは反対方向の力であって、力F1より小さい力F2を、試料ホルダー10に作用させる。これにより、駆動部(エアーシリンダー)30が縮んで、支持部20を位置P4(
図5参照)から位置P3に移動させて、試料保持部12を予備排気室2から試料室1に移動させる。
図6の例では、試料ホルダー10がレバー80に突き当たるまで支持部20を移動させている。より具体的には、センサー36は、位置P3に調整されており、制御部90は、センサー36の出力信号に基づいて、駆動部30を位置P3に移動させる処理を行う。
【0054】
次に、制御部90は、駆動部(エアーシリンダー)30を制御して、
図2に示すように、支持部20が試料ホルダー10から離れるように、支持部20を移動させる処理を行う(S13)。これにより、駆動部(エアーシリンダー)30は、さらに縮み、支持部20は試料ホルダー10から切り離されて初期位置P1に戻る。より具体的には、センサー34は、初期位置P1に調整されており、制御部90は、センサー34の出力信号に基づいて、駆動部(エアーシリンダー)30を位置P1に移動させる処理を行う。
【0055】
図2に示すように、支持部20が試料ホルダー10から切り離されることにより、試料ホルダー10は、レバー80による移動、ゴニオメーター50による回転(傾斜)が可能になる。制御部90は、この処理(S13)の後、処理を終了する。そして、ユーザーが、ゴニオカバー40の蓋部42を閉じる。
【0056】
以上の工程により、試料ホルダー10を試料室1に挿入する、すなわち、試料Sを試料室1に導入することができる。
【0057】
なお、制御部90は、処理S10,S11,S12,S13であらかじめ設定していた時間が過ぎた場合には、処理を中断する。また、制御部90は、駆動部(エアーシリンダー)30への空気の供給量に大きな増減が発生した場合にも、処理を中断する。これにより、安全に試料Sを試料室1に導入することができる。
【0058】
(2)試料ホルダーの試料室からの取り出し手順
次に、試料ホルダー10を試料室1から取り出す際の試料導入装置100の動作について説明する。
【0059】
図2に示す試料ホルダー10が試料室1に挿入された状態において、ユーザーが蓋部42を開く。そして、ユーザーは、試料ホルダー交換スイッチ49を押す。試料ホルダー交換スイッチ49が押されることで、制御部90が以下に説明する処理を開始する。
【0060】
図9は、試料ホルダー10を試料室1から取り出す際の試料導入装置100の動作の一例を示すフローチャートである。以下に示す、制御部90の処理S20、S21、S22、S23は、自動シーケンスで行われる。
【0061】
制御部90は、駆動部(エアーシリンダー)30を制御して、
図7に示すように、試料保持部12が試料室1から予備排気室2に移動するように、支持部20を移動させる処理を行う(S20)。ここで、駆動部(エアーシリンダー)30は、試料室1と外部(大気圧)との圧力差によって試料ホルダー10に加わる力F1とは反対方向の力であって、力F1より大きい力F3を、試料ホルダー10に作用させる。これにより、駆動部(エアーシリンダー)30が伸びて、支持部20を位置P1(
図2参照)から位置P3を経由して位置P4に移動させて、試料保持部12を試料室1から予備排気室2に移動させる。より具体的には、センサー35は、位置P4に調整されており、制御部90は、センサー35の出力信号に基づいて、駆動部(エアーシリンダー)30を位置P4に移動させる処理を行う。
【0062】
次に、制御部90は、ゴニオメーター50を制御して、
図4に示すように、ゴニオメーター50を回転させて、試料室1と予備排気室2とを隔てる仕切弁70を開く処理を行う(S21)。具体的には、制御部90は、まず、ゴニオメーター50を制御して、ゴニオメーター50を右回り65度回転させる処理を行う。これにより、仕切弁70が閉じて、試料室1と予備排気室2とが隔てられる。次に、制御部90は、駆動部30を制御して、支持部20を位置P4から位置P2に移動させる処理を行う。さらに、ゴニオメーター50を制御して、ゴニオメーター50を右回りに25度回転させる。このとき、試料ホルダー10のピン16が予備排気可否センサー92を押し、予備排気可否センサー92をONにする。これにより、予備排気室2のリークが開始される(S22)。予備排気室2のリークは、例えば、予備排気室2に窒素ガス等の不活性ガスを供給することで行われる。
【0063】
リークの完了後、ユーザーは、試料ホルダー10を引き抜くことができる。試料ホルダー10を引き抜くとき、試料ホルダー10のピン16が予備排気可否センサー92をオフにする。制御部90は、駆動部(エアーシリンダー)30を制御して、図示はしないが、支持部20が初期位置P1に戻るように、支持部20を移動させる処理を行う(S23)。より具体的には、センサー34は、初期位置P1に調整されており、制御部90は、センサー34の出力信号に基づいて、駆動部(エアーシリンダー)30を初期位置P1に移動させる処理を行う。制御部90は、この処理(S23)の後、処理を終了する。
【0064】
以上の工程により、試料ホルダー10を試料室1から取り出す、すなわち、試料Sを試料室1から取り出すことができる。
【0065】
なお、制御部90は、処理S20,S21,S22,S23であらかじめ設定していた時間が過ぎた場合には、処理を中断する。また、制御部90は、駆動部(エアーシリンダー)30への空気の供給量に大きな増減が発生した場合にも、処理を中断する。これにより、安全に試料Sを試料室1から取り出すことができる。
【0066】
ここでは、制御部90が自動シーケンスで、試料保持部12の試料室1から予備排気室2への移動、および試料保持部12の予備排気室2から試料室1への移動を行う場合について説明したが、試料導入装置100では、自動シーケンスを行わず、ユーザーが試料ホルダー10を移動させることにより、手動で試料保持部12の予備排気室2から試料室1への移動、および試料保持部12の試料室1から予備排気室2への移動を行うこともできる。
【0067】
本実施形態に係る試料導入装置100および荷電粒子線装置1000は、例えば、以下の特徴を有する。
【0068】
試料導入装置100では、試料保持部12(試料S)が予備排気室2から試料室1に移動するように、試料ホルダー10を支持する支持部20を移動させる駆動部30を含んで構成されているため、容易に試料Sを試料室1に導入することができる。
【0069】
試料導入装置100によれば、駆動部30は、試料室1と外部(大気圧)との圧力差によって試料ホルダー10に加わる力F1とは反対方向の力であって、力F1より小さい力F2を、試料ホルダー10に作用させる。したがって、試料室1と外部(大気圧)との圧力差によって試料ホルダー10に加わる力F1により、試料ホルダー10が、試料室1に急激に引き込まれることを防ぐことができる。
【0070】
試料導入装置100では、駆動部30を制御する制御部90が、ゴニオメーター50を制御して、ゴニオメーター50を回転させて仕切弁70を開く処理と、駆動部30を制御して、試料保持部12が予備排気室2から試料室1に移動するように、支持部20を移動させる処理と、駆動部30を制御して、支持部20が試料ホルダー10から離れるように支持部20を移動させる処理と、を行う。これにより、自動シーケンスにより、試料保持部12を予備排気室2から試料室1に移動させることができる。したがって、試料導入装置100によれば、容易に試料Sを試料室1に導入することができる。
【0071】
試料導入装置100では、駆動部30が、試料保持部12が試料室1から予備排気室2に移動するように、支持部20を移動させるため、容易に、試料Sを試料室1から予備排気室2に移動させることができる。したがって、試料導入装置100によれば、容易に、試料Sを試料室1から取り出すことができる。
【0072】
荷電粒子線装置1000によれば、試料導入装置100を含んで構成されているため、上述のように、容易に試料Sを試料室1に導入することができる。
【0073】
なお、上述した実施形態は、一例であってこれらに限定されるわけではない。
【0074】
例えば、上述した試料導入装置100の例では、駆動部30が、
図2に示すように、エアーシリンダーである場合について説明したが、駆動部30はこれに限定されず、例えば、ロッド31を動作させる電動アクチュエーターであってもよい。
【0075】
また、例えば、上述した試料導入装置100の例では、駆動部30は、
図2に示すように、ゴニオカバー40内に収容されていたが、ゴニオカバー40の外に配置されていてもよい。
【0076】
また、例えば、上述した実施形態では、試料導入装置100を、透過電子顕微鏡に適用した場合について説明したが、試料導入装置100は、透過電子顕微鏡に限らず、その他の荷電粒子線装置に適用することができる。荷電粒子線装置としては、例えば、SEM、STEM等の電子顕微鏡、集束イオンビーム(FIB)装置、電子ビーム露光装置等が挙げられる。
【0077】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。