(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130186
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】電動車両給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20170508BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20170508BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20170508BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20170508BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/90
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L11/18 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-70285(P2013-70285)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-195350(P2014-195350A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】512135274
【氏名又は名称】株式会社リューテック
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】粟井 郁雄
【審査官】
安井 雅史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−106136(JP,A)
【文献】
特開2011−109903(JP,A)
【文献】
特開2013−051744(JP,A)
【文献】
特開2009−071909(JP,A)
【文献】
特開平07−170612(JP,A)
【文献】
特開2013−042616(JP,A)
【文献】
特開2011−223703(JP,A)
【文献】
特開平08−126106(JP,A)
【文献】
特表2012−519104(JP,A)
【文献】
特開2013−030688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00−50/90
B60L 1/00−13/00
15/00−15/42
B60M 1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面側の送電装置から電動車両に無線で電力を伝送し得る電動車両給電システムであって、
前記送電装置は、環状に形成されており地面表面に沿って直線状に延伸する直線延伸部分を少なくとも1つ有する送電線路と、該送電線路と直列に設けられた送電側コンデンサと、前記送電線路に電力を送出する交流電源と、を備えて前記送電線路と前記送電側コンデンサが送電側共振器を構成しており、
前記電動車両は、車輪の内部に収容されその回転軸のまわりを周回して巻かれており、前記直線延伸部分の直上近傍にあるときに前記送電側共振器から共振により電力が伝送される受電側共振器を構成する主コイルと、該主コイルに電磁誘導により結合する副コイルと、を備えて前記送電側共振器から前記受電側共振器に共振により伝送された電力を前記副コイルから蓄電池が含まれる負荷に送ることを特徴とする電動車両給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両給電システムにおいて、
前記主コイルと直列に受電側コンデンサが設けられており、前記主コイルと該受電側コンデンサが前記受電側共振器を構成していることを特徴とする電動車両給電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動車両給電システムにおいて、
前記送電装置の送電線路は、前記直線延伸部分を2つ有していることを特徴とする電動車両給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面側から電動車両に無線で電力を伝送する電動車両給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電池に蓄えられた電力を用いて車輪をモータにより駆動する電気自動車が普及しつつある。この電気自動車は、一般には、蓄電池に蓄えられた電力が少なくなると、所定の駐車スペースに駐車して、充電用ケーブルを充電設備に接続して充電する。
【0003】
これに対して、充電用ケーブルを用いないで、地面側から無線で電気自動車に電力を伝送しその蓄電池を充電する種々の提案がなされている。無線の電力伝送には、結合共振器方式、電磁誘導方式、放射電磁波方式などがある。例えば、特許文献1には、電動車両(電気自動車を含む。)側と地面側に共振コイルを設け、それらを共振させることで電力を伝送する結合共振器方式の電動車両給電システムが記載されている。電動車両側の共振コイルは、車体下部又は車輪に設けられている。また、地面側の共振コイルは中心軸を鉛直方向にして巻かれている。
【0004】
特許文献2には、電気自動車の車輪の中に複数の発電コイルをそれらの中心軸が車輪中心に向くように周回させて設け、地面側には道路の伸びる方向に互いに離間して複数の起磁部材を配置し、起磁部材から発電コイルに電磁誘導により電力を伝送する方式の電動車両給電システムが記載されている。この電動車両給電システムでは、電気自動車が走行していても起磁部材から発電コイルに電力を伝送することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−106136号公報
【特許文献2】特開2011−135772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような結合共振器方式の電動車両給電システムは、高い電力伝送効率を得ることができる。また、駐車スペースと充電時間を考慮すると、特許文献2のように電動車両が走行していても電力を伝送できるのが望ましい。しかし、特許文献1の電動車両給電システムを走行する電動車両に用いるには、地面側の共振コイルを複数設けることになると考えられるが、その場合の地面側の送電装置は大規模なものとなる。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動車両が停止していても、或いは走行していても、地面側の送電装置から電動車両に無線で共振により電力を伝送でき、しかも送電装置が大規模にならない電動車両給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の電動車両給電システムは、地面側の送電装置から電動車両に無線で電力を伝送し得る電動車両給電システムであって、前記送電装置は、環状に形成されており地面表面に沿って直線状に延伸する直線延伸部分を少なくとも1つ有する送電線路と、該送電線路と直列に設けられた送電側コンデンサと、前記送電線路に電力を送出する交流電源と、を備えて前記送電線路と前記送電側コンデンサが送電側共振器を構成しており、前記電動車両は、車輪の内部に収容されその回転軸のまわりを周回して巻かれており
、前記直線延伸部分の直上近傍にあるときに前記送電側共振器
から共振
により電力が伝送される受電側共振器を構成する主コイルと、該主コイルに電磁誘導により結合する副コイルと、を備えて前記送電側共振器から前記
受電側共振器に共振により伝送された電力を前記副コイルから蓄電池が含まれる負荷に送ることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の電動車両給電システムは、請求項
1に記載の電動車両給電システムにおいて、前記主コイルと直列に受電側コンデンサが設けられており、前記主コイルと該受電側コンデンサが前記受電側共振器を構成していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の電動車両給電システムは、請求項
1又は2に記載の電動車両給電システムにおいて、前記送電装置の送電線路は、前記直線延伸部分を2つ有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電動車両給電システムによれば、電動車両が停止していても、或いは走行していても、送電装置から電動車両に共振により電力を伝送でき、しかも送電装置が大規模にならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動車両給電システムの模式的な正面図である。
【
図2】同上の電動車両給電システムの等価回路図である。
【
図3】同上の電動車両給電システムの送電装置の模式的な平面図である。
【
図4】同上の電動車両給電システムの1つの実験構成を示す写真である。
【
図5】同上の電動車両給電システムのもう1つの実験構成を示す写真である。
【
図6】同上の電動車両給電システムの実験結果を示す特性図である。
【
図7】同上の電動車両給電システムの実験方法を説明するための模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る電動車両給電システム1は、
図1及び
図2に示すように、地面側の送電装置2から電動車両3に無線で電力を伝送し得る電動車両給電システムである。なお、
図1においては、後述する受電側コンデンサ32、32’の図示は省略している。
【0014】
送電装置2は、送電線路21と送電側コンデンサ22と交流電源23とを備えている。送電線路21は、
図3に示すように、環状に形成されており、地面表面に沿って直線状に延伸する2つの直線延伸部分21a、21a’を有している。送電線路21の直線延伸部分21a、21a’は、例えば、断面長方形の板状(
図1参照。)、又は断面円形のケーブル状などとすることができる。この送電線路21の直線延伸部分21a、21a’は、長く延伸することによってインダクタンス成分を有することになる。直線延伸部分21a、21a’は、電流が流れると、その延伸方向に対して周回する磁場を生成する。
【0015】
また、送電側コンデンサ22は、送電線路21と直列に設けられている。また、交流電源23は、送電線路21に電力を送出するものである。そして、送電線路21と送電側コンデンサ22が送電側共振器20を構成することになる。
【0016】
また、道路では、
図3に示すように、送電装置2を複数設け、隣接する送電装置2、2は、送電線路21、21の直線延伸部分21a、21a同士が一直線を成すように、また、直線延伸部分21a’、21a’同士が一直線を成すように、配置することができる。送電線路21の直線延伸部分21a、21a’の長さは、例えば、10m〜20mとすることができる。
【0017】
電動車両3の1個の車輪3aの内部には、車輪3aの回転軸のまわりを周回して巻かれた主コイル31が収容されている。また、受電側コンデンサ32が主コイル31と直列に設けられている。また、主コイル31に結合する副コイル33が設けられている。こうして、主コイル31と受電側コンデンサ32が受電側共振器30を構成している。
【0018】
また、電動車両3のもう1個の車輪3a’(上記車輪3aの左右の片方)の内部には、車輪3a’の回転軸のまわりを周回して巻かれた主コイル31’が収容されている。また、受電側コンデンサ32’が主コイル31’と直列に設けられている。また、主コイル31’に結合する副コイル33’が設けられている。こうして、主コイル31’と受電側コンデンサ32’が受電側共振器30’を構成している。
【0019】
車輪3a、3a’の中の主コイル31、31’は、電動車両3の左右の車輪3a、3a’が送電線路21の直線延伸部分21a、21a’の直上あたりにあるとき(
図1参照。)、直線延伸部分21a、21a’からの磁場をコイル31、31’のほぼ軸方向に受ける。また、車輪3a、3a’の中に主コイル31、31’を設けているのは、送電線路21の単位長さあたりのインダクタンス成分は比較的小さくなり易いので、電動車両3の主コイル31、31’を送電線路21の近くに有るようにして送電線21から受ける磁界をできるだけ大きくするためである。なお、車輪3a、3a’の近傍であって車輪3a、3a’でない部分に主コイル31、31’を設けることも、場合によっては可能である。
【0020】
また、受電側コンデンサ32、32’は、主コイル31、31’が有する寄生容量で代用して、特に設けないことが可能な場合も有る。その場合、主コイル31、31’のそれぞれの両端は開放状態とすることができる。
【0021】
送電側共振器20は、交流電源23により励振される。電動車両3の左右の車輪3a、3a’が送電線路21の直線延伸部分21a、21a’の直上あたりにあるとき、受電側共振器30と送電側共振器20は共振し、また、受電側共振器30’と送電側共振器20は共振する。それにより、送電装置2から電動車両3の受電側共振器30、30’に電力が伝送される。伝送された受電側共振器30、30’の電力は、電磁誘導により副コイル33、33’に送られ、そして、蓄電池が含まれる負荷34に送られる。
【0022】
このような電動車両給電システム1では、送電装置2の送電線路21の直線延伸部分21a、21a’の直上あたりに左右の車輪3a、3a’が有るようにすると、電動車両3が停止していても、或いは走行していても、送電装置2から電動車両3に共振により電力を伝送できる。また、送電装置2の送電側共振器20のインダクタンス成分は送電線路21で形成しているので、送電装置2は大規模な設備とはならない。なお、この電動車両給電システム1を駐車スペースで使用する場合は、環状の送電線路21を駐車スペースにおさめることも可能である。
【0023】
また、送電装置2の送電線路21は、直線延伸部分21aのみとし、直線延伸部分21a’を設けないことも可能である。また、片方の車輪3a’の主コイル31’、受電側コンデンサ32’、副コイル33’を省略することも可能である。これらの場合、車輪3aの主コイル31、受電側コンデンサ32、副コイル33のみを用いて電力の電送が行われることになる。また、主コイル31’、受電側コンデンサ32’、副コイル33’が設けられる車輪3a’を、車輪3aと同じ側の前後の残りの車輪とすることも可能である。また、電動車両3の車輪全部を同様の構成にして、伝送される電力を増大させることも可能である。
【0024】
次に、電動車両給電システム1の実験について述べる。
図4及び
図5に示すように、送電装置2の送電線路21としての線径1mmのワイヤを、長方形の約20cmの長辺と約8cmの短辺を成すように敷設した。この2個の長辺が直線延伸部分21a、21a’となっている。車輪3a、3a’の主コイル31、31’は、線径1mmのワイヤを直径約3cmの円形に約26回巻いて長さ(軸方向の長さ)Lを約2cmとした。副コイル33、33’は、線径1mmのワイヤを絶縁層を介して主コイル31、31’の周りに約1回巻いた。受電側コンデンサ32、32’は寄生容量で代用した。
図4は、車輪3a、3a’が左右に有るようにした場合の実験構成を示す。
図5は、車輪3a、3a’が送電線路21の直線延伸部分21a’の前後に有るようにした場合の実験構成を示す。
【0025】
図6に、実験結果の通過特性S
21を示す。曲線aは車輪3a、3a’が左右に有るようにした場合、曲線bは車輪3aのみしかない場合、曲線cは車輪3a、3a’が前後に有るようにした場合の最大の通過特性S
21の値を示している。
図6の横軸は、
図7に示すように、送電線路21の直線延伸部分21a(及び21a’)の位置を主コイル31、31’の軸方向の中央位置からずらして行ったときのずれの大きさd(単位は、主コイル31、31’の軸方向の長さL)である。なお、ずれの大きさdが0.5×Lよりも小さいと、送電線路21の直上には主コイル31、31’が存在し、ずれの大きさdが0.5×Lよりも大きいと、送電線路21の直上から主コイル31、31’ははずれることになる。
【0026】
曲線aによると、通過特性S
21の値は約−3dBになることができるので、送電装置2の送電線路21から主コイル31、31’に電力が実用的に伝送可能であることが分かる。
【0027】
以上、本発明の実施形態に係る無線電力伝送装置について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 電動車両給電システム
2 送電装置
21 送電装置2を構成する送電線路
21a、21a’ 送電線路21の直線延伸部分
22 送電装置2を構成する送電側コンデンサ
23 送電装置2を構成する交流電源
3 電動車両
3a、3a’ 電動車両3の車輪
31、31’ 電動車両3を構成する主コイル
32、32’ 電動車両3を構成する受電側コンデンサ
33、33’ 電動車両3を構成する副コイル