特許第6130198号(P6130198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130198
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】印刷機の紙情報読取方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20170508BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20170508BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B41J29/38 Z
   G06K7/10 148
   B41J11/42
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-89080(P2013-89080)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-211839(P2014-211839A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000214836
【氏名又は名称】長野日本無線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513100666
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】前川 啓
(72)【発明者】
【氏名】小井土 順一
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 武彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 知己
(72)【発明者】
【氏名】板倉 真次
(72)【発明者】
【氏名】埜下 敦平
【審査官】 甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−170049(JP,A)
【文献】 特開2002−356031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00−29/70
G06K 7/00− 7/14
B41J 11/00−11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機にセットした記録紙ロールに付したIDタグから所定のIDタグ読取手段により紙情報を読取る印刷機の紙情報読取方法であって、前記印刷機にセットした記録紙ロールをセット位置から記録紙を繰出す正方向に回転させ、かつ回転させた際に前記IDタグ読取手段によりIDタグの有無を検出するIDタグ検出処理を行い、IDタグを検出したなら、前記記録紙ロールの回転を停止させる停止制御処理を行うとともに、回転の停止後、前記IDタグ読取手段によりIDタグに記録された紙情報を読取る紙情報読取処理を行い、この後、前記記録紙ロールを逆方向に回転させることにより前記セット位置に戻す戻し制御処理を行うことを特徴とする印刷機の紙情報読取方法。
【請求項2】
前記IDタグは、前記記録紙ロールにおける芯管部の周面に取付けたIDタグであることを特徴とする請求項1記載の印刷機の紙情報読取方法。
【請求項3】
前記IDタグは、少なくともRFIDタグを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の印刷機の紙情報読取方法。
【請求項4】
前記IDタグ検出処理は、前記IDタグ読取手段によりポーリング方式を用いて前記IDタグの有無を検出することを特徴とする請求項1,2又は3記載の印刷機の紙情報読取方法。
【請求項5】
前記IDタグ検出処理を行うに際し、予め、前記IDタグが無いと判断できる前記記録紙ロールの回転量を最大設定値として設定し、前記回転量が最大設定値に達しても前記IDタグを検出しないときは所定のエラー処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷機の紙情報読取方法。
【請求項6】
前記停止制御処理は、前記IDタグを検出したならスローダウンにより回転を停止させる制御を行った後、予め設定した回転量だけ逆方向に回転させて再停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷機の紙情報読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機にセットした記録紙ロールに付したIDタグから所定のIDタグ読取手段により紙情報を読取る際に用いて好適な印刷機の紙情報読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、A4サイズ等の印刷用原稿をスキャニングして画像データを得るスキャナ部を一体に備えるとともに、得られた画像データを、A1サイズ等の大型サイズの記録紙に拡大して印刷を行う印刷機としては、特許文献1で開示される記録装置が知られている。この記録装置では、ロールタイプの記録紙(感熱紙)を使用し、複数の印字ヘッド(サーマルヘッド)により印刷が行われる。ところで、感熱紙を使用する場合、感熱紙の種類により発色状態等の印刷状態が左右されるため、印刷品質を確保(最適化)するには、少なくとも使用する感熱紙の種類を含む紙情報を予め取得するとともに、この紙情報にマッチングするように、印刷機側の動作特性を設定することが望ましい。
【0003】
従来、このような紙情報を利用するようにした印刷機も知られており、特許文献2には、プリント処理、記録紙ロールの残量予測、記録紙の品質劣化の解析等に利用される記録紙管理情報を、記録紙ロールに対して簡単に追記・更新することを目的としたロールプリンタであって、具体的構成として、記録紙ロールの巻芯に、記録紙の製造日時、感度情報等を含む記録紙管理情報が格納されるICタグが設けられるとともに、プリンタには、このICタグにアクセスして、その記録紙管理情報の読み取り及び書き込みを行うアクセス部が設けられ、また、コントローラは、アクセス部を通じて、ICタグ内に格納される記録紙管理情報を読み取ってプリント条件を適正化し、さらに、アクセス部は、ICタグ内に、記録紙ロールの使用開始日時、記録紙残量、環境情報(プリンタ内の温度や湿度)を追記・更新するようにしたロールプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−164725号公報
【特許文献2】特開2005−219406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献2で開示される従来のロールプリンタ(印刷機)は、次のような問題点があった。
【0006】
第一に、ICタグ(IDタグ)は記録紙ロールの巻芯の周面(内周面)に取付けられているため、記録紙ロールをプリンタにセットした際に、IDタグとこのIDタグの読取りを行うアクセス部間の距離及び角度がまちまちとなる。したがって、アクセス部の感度によっては読取りエラーを生じる可能性があり、記録紙管理情報を正確かつ確実に読取る観点からは必ずしも十分といえるものではなく、信頼性及び安定性に難がある。
【0007】
第二に、IDタグが最も離れた位置にあっても検出可能になることを考慮する必要があるため、アクセス部の感度はある程度高くする必要がある。したがって、アクセス部の大型化及びコストアップを招くとともに、省電力性を高める観点からも難がある。なお、記録紙管理情報を読取る観点からはアクセス部の感度をより高くするなどの対応策も考えられるが、外乱(ノイズ)を受けやすくなるなど、信頼性及び安定性を確保し、記録紙管理情報を正確かつ確実に読取る観点からは難があり採用できない。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した印刷機の紙情報読取方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る印刷機の紙情報読取方法は、上述した課題を解決するため、印刷機1にセットした記録紙ロールRpに付したIDタグ3から所定のIDタグ読取手段4により紙情報INpを読取るに際し、印刷機1にセットした記録紙ロールRpをセット位置から記録紙Prを繰出す正方向Ffに回転させ、かつ回転させた際にIDタグ読取手段4によりIDタグ3の有無を検出するIDタグ検出処理を行い、IDタグ3を検出したなら、記録紙ロールRpの回転を停止させる停止制御処理を行うとともに、回転の停止後、IDタグ読取手段4によりIDタグ3に記録された紙情報INpを読取る紙情報読取処理を行い、この後、記録紙ロールRpを逆方向Frに回転させることによりセット位置に戻す戻し制御処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、IDタグ3は、記録紙ロールRpにおける芯管部Rpsの周面に取付けることができるとともに、このIDタグ3には、少なくともRFIDタグ3rを含ませることができる。また、IDタグ検出処理では、IDタグ読取手段4によりポーリング方式を用いてIDタグ3の有無を検出することができる。さらに、IDタグ検出処理を行うに際しては、予め、IDタグ3が無いと判断できる記録紙ロールRpの回転量を最大設定値として設定し、回転量が最大設定値に達してもIDタグ3を検出しないときは所定のエラー処理を行わせることができる。一方、停止制御処理では、IDタグ3を検出したならスローダウンにより回転を停止させる制御を行った後、予め設定した回転量だけ逆方向に回転させて再停止させる制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
このような手法による本発明に係る印刷機の紙情報読取方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 記録紙ロールRpを印刷機1にセットした際に、IDタグ3とIDタグ読取手段4間の距離及び角度がまちまちとなる場合であっても、常にIDタグ3を最短となる正規位置で紙情報INpの読取りを行うことができる。したがって、読取りエラーを排除し、紙情報INpを正確かつ確実に読取ることができるとともに、十分な信頼性及び安定性を確保できる。
【0013】
(2) 常にIDタグ3に対して最短となる距離で検出可能になるため、IDタグ読取手段4の性能は最小感度で足りる。したがって、リーダライタユニット等を用いるIDタグ読取手段4の小型化及びコストダウンに寄与できるとともに、省電力性の向上にも寄与できる。
【0014】
(3) 好適な態様により、IDタグ3として、記録紙ロールRpにおける芯管部Rpsの周面に取付けたIDタグ3を適用すれば、記録紙ロールRpの装填時にIDタグ3の位置がランダムにバラつくという課題に対して、本発明に係る紙情報読取方法に基づく作用効果を有効に確保できるとともに、この観点から最大のパフォーマンスを得ることができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、IDタグ3に、少なくともRFIDタグ3rを含ませれば、非接触方式により一定の範囲内での検出が可能になるため、本発明に係る紙情報読取方法に基づく作用効果を有効に確保できるとともに、最も望ましい形態として実施することができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、IDタグ読取手段4によりポーリング方式を用いてIDタグ3の有無を検出するIDタグ検出処理を行うようにすれば、比較的簡易な制御によりIDタグ検出処理を確実に行うことができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、IDタグ検出処理を行うに際し、予め、IDタグ3が無いと判断できる記録紙ロールRpの回転量を最大設定値として設定し、回転量が最大設定値に達してもIDタグ3を検出しないときは所定のエラー処理を行うようにすれば、無用な記録紙ロールRpの回転を回避できるとともに、IDタグ3が存在しない等のエラー発生をオペレータ等に速やかに知らせることができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、停止制御処理として、IDタグ3を検出したならスローダウンにより回転を停止させる制御を行った後、予め設定した回転量だけ逆方向に回転させて再停止させる制御を行うようにすれば、大型の記録紙Prであっても記録紙Prの状態に悪影響を及ぼすことなく、IDタグ3を、正規の停止位置に確実かつ安定に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の好適実施形態に係る印刷機の紙情報読取方法を説明するためのフローチャート、
図2】同紙情報読取方法を含む全体の印刷処理手順を説明するためのフローチャート、
図3】同紙情報読取方法を実施できる印刷機の外観斜視図、
図4】同印刷機のキャビネットを開いた状態の内部構造における主要部のみを示す斜視図、
図5】同紙情報読取方法に用いる記録紙ロールの芯管部を示す斜視図、
図6】同芯管部に付したRFIDタグの記録情報の一例を示す一覧表、
図7】同印刷機の主要部の構造を模式的に示す原理構成図、
図8】同印刷機に備えるIDタグ読取手段の変更例を示す概略構成図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る紙情報読取方法を実施できる印刷機1の構成について、図3図7を参照して説明する。
【0022】
印刷機1は、図3及び図4に示すように、全体を覆うキャビネット21を備え、このキャビネット21は、下部の本体キャビネット部22と上部のカバーキャビネット部23からなる。カバーキャビネット部23は、本体キャビネット部22に対して図示を省略した後部のヒンジ部により開閉できる。図3はカバーキャビネット部23の閉状態を示すとともに、図4はカバーキャビネット部23を本体キャビネット部22に対して前部を略90〔゜〕上方へ回動変位させた開状態を示している。
【0023】
カバーキャビネット部23は、図3に示すように、上面23uのほぼ中央位置にスキャナ部2を一体に備える。スキャナ部2において、25は印刷用原稿Psをセットする原稿供給トレイ部、26はスキャニング後の印刷用原稿Psを受取る原稿排出トレイ部をそれぞれ示す。また、図3中、スキャナ部2の右側位置には操作部27を配設する。例示の操作部27は、タッチパネル方式のディスプレイ27tを備える。したがって、このディスプレイ27tは画面上に各種情報等の表示を行う表示部として機能するとともに、画面上に表示される入力キー等をタッチ操作することにより各種設定等を行う設定部(入力部)として機能する。
【0024】
スキャナ部2は公知のスキャナ機能を有している。したがって、印刷用原稿Psを原稿供給トレイ部25にセットし、操作部27に表示されるスタートキーをタッチ(ON)すれば、印刷用原稿Psは前方へ搬送され、イメージセンサによりスキャニングされるとともに、スキャニング後の印刷用原稿Psは原稿排出トレイ部26上に排出される。また、イメージセンサによるスキャニングにより画像データDvが得られ、この画像データDvはスキャナ部2から出力する。なお、図3中、仮想線で示すPsは、スキャナ部2によるスキャニング中の印刷用原稿を示す。
【0025】
他方、図4及び図7に示すように、本体キャビネット部22の内部における後部寄りには、図5に示す記録紙ロールRpを装填する記録紙装填機構31を備える。この場合、記録紙ロールRpは、中心に配した細長い円筒形の芯管部Rpsの外周面に、連続した長い記録紙Prを巻付けたロールタイプの記録紙である。記録紙Prとしては、例えば、通常感熱紙,コーティング感熱紙,フィルムベース感熱紙,転写紙,長期保存用感熱紙等を含む異なる複数種類のカラー感熱紙をはじめ、各種記録紙を適用できる。
【0026】
また、芯管部Rpsの外周面における一端寄りには、図5に示すように、シート状のIDタグ3を貼付ける。このIDタグ3には、ICチップとアンテナを内蔵したRFIDタグ3rを用いる。このRFIDタグ3rは、後述するリーダライタユニット51を用いれば、非接触方式により一定の範囲内での検出が可能になる。したがって、RFIDタグ3rに記録されている紙情報INpのみを容易かつ確実に読取れるなど、本実施形態に係る紙情報読取方法に基づく作用効果を有効に確保できるとともに、最も望ましい形態として実施できる。しかも、RFIDタグ3rを、記録紙ロールRpにおける芯管部Rpsの外周面に取付ければ、記録紙ロールRpの装填時にRFIDタグ3rの位置がランダムにバラつくという課題に対して、本実施形態に係る紙情報読取方法に基づく作用効果を有効に確保できるとともに、この観点から最大のパフォーマンスを得ることができる。例示のRFIDタグ3rには、図6に一覧表で示す各種の紙情報INpが記録されている。なお、使用帯域周波数としては、HF帯,UHF帯,その他の周波数帯を用いることができ、特に、HF帯は検出可能距離(通信距離)が10〔cm〕前後となるため、本実施形態に係る印刷機のレイアウト構造に用いて好適である。IDタグ3としては、汎用性の高いRFIDタグ3rの使用が望ましいが、他のIDタグを排除するものではない。例えば、露出した芯管部Rpsに貼付けたバーコード等であってもよい。バーコードの場合には、反射型光センサにより検出可能となる。
【0027】
一方、記録紙装填機構31は、左右にそれぞれ配し、かつ上端辺からU形に切欠いた芯管受部32s…を有する芯管支持部32…と、この芯管支持部32…に回動自在に支持された記録紙ロールRpの芯管部Rpsを正方向(紙繰出方向)Ff又は逆方向(紙巻戻方向)Frに回転させる芯管回転駆動機構33(図7参照)を備える。この芯管回転駆動機構33は、芯管部Rpsに対して同軸上に位置して当該芯管部Rpsの一端に係合(係止)する芯管係合ギア部34と、この芯管係合ギア部34を回転させる芯管回転伝達機構35と、この芯管回転伝達機構35に回転入力する回転駆動部36を備える。
【0028】
他方、本体キャビネット部22の内部における後面には、図4に示すように、リーダ機能及びライタ機能を有するリーダライタユニット51を取付ける。リーダライタユニット51は、芯管支持部32…に装填した記録紙ロールRpの芯管部Rpsに付したRFIDタグ3rから紙情報INpを非接触で読取る所定のIDタグ読取手段4を構成する。したがって、リーダライタユニット51の左右方向における取付位置は、芯管部Rpsに貼付けたRFIDタグ3rの左右方向の位置に一致させる。
【0029】
さらに、本体キャビネット部22の内部における前部寄りには、記録紙フィード機構38を備える。記録紙フィード機構38は、回転可能に支持されたフィードローラ39と、このフィードローラ39を正方向(紙繰出方向)又は逆方向(紙巻戻方向)に回転させるフィードローラ回転駆動機構40を備える。この場合、フィードローラ回転駆動機構40は、フィードローラ39を回転させる回転駆動部36を備える。したがって、この回転駆動部36は、芯管回転駆動機構33とフィードローラ回転駆動機構40の双方に共用させている。このため、各伝達系にはワンウェイクラッチ等を介在させることにより必要な伝達切換を行うことができる。なお、例示の回転駆動部36は、駆動モータ52,共用駆動ギア53及び駆動モータ52の回転を共用駆動ギア53に伝達する回転伝達機構54を備えている。
【0030】
また、カバーキャビネット部23の内面における前寄りの位置には、図4及び図7に示すように、サーマルヘッド11を配設する。例示のサーマルヘッド11は左右方向に沿った四つのヘッド部11a,11b,11c,11dの組合わせにより構成し、各ヘッド部11a…はライン方向の1/4領域の印刷をそれぞれ分担する。各ヘッド部11a…は、ライン方向に多数の発熱素子を配列させて構成したものであり、一つの発熱素子に印字されるドット(点)が一つの発色ドットとなる。例示の各ヘッド部11a…は、交互に前後方向位置を異ならせており、二つのヘッド部11a,11cは搬送方向後寄りに配するとともに、他の二つのヘッド部11b,11dは搬送方向前寄りに配している。
【0031】
その他、図7において、42は記録紙Prの搬送路に配して記録紙Prをガイドするガイドローラ、43は記録紙Prをカットするカッティングユニット、44は印刷された記録紙Prを外部に排出する排出口をそれぞれ示すとともに、55は記録紙Prの有無を検出する記録紙有無検出センサ、56は記録紙Prの先端を検出する記録紙先端検出センサをそれぞれ示す。
【0032】
一方、印刷機1は、図7に示す印刷機コントローラ61を内蔵する。印刷機コントローラ61は、CPU等を含むコンピュータ機能を備え、印刷機1全体の制御を司る機能を備える。また、印刷機コントローラ61は、内部メモリユニット61mを内蔵し、この内部メモリユニット61mには、各種制御及び各種処理等を実行するプログラムを格納したプログラムエリア61mp及び各種データ類を書込んだデータエリア61mdを有する。特に、プログラムには、本実施形態に係る紙情報読取方法を実行するためのシーケンスプログラムが含まれる。さらに、印刷機コントローラ61には、前述したスキャナ部2及び操作部27を接続するとともに、サーマルヘッド11,カッティングユニット43,記録紙有無検出センサ55及び記録紙先端検出センサ56をそれぞれ接続する。
【0033】
次に、本実施形態に係る紙情報読取方法を含む印刷機1全体の機能及び使用方法について、各図を参照しつつ図1及び図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0034】
印刷機1を使用するに際しては、図2に示すように、最初に、記録紙ロールRpのセッティング処理を行う。この場合、図4に示すように、カバーキャビネット部23を開き、本体キャビネット部22内部の記録紙装填機構31に記録紙ロールRpを装填する(ステップS1)。この際、記録紙ロールRpにおける芯管部Rpsの両端側を左右一対の芯管受部32s…に収容する。これにより、芯管部Rpsの両端が芯管受部32s…により回動自在に支持されるとともに、同時に、芯管部Rpsの一端は芯管係合ギア部34の軸上に係合(係止)する。そして、記録紙ロールRpにおける記録紙Prの先端側を引き出し、フィードローラ39の上に載せるとともに、さらに、先端側を排出口44に導いた後、カバーキャビネット部23を閉じれば、不図示のインターロックスイッチがONするとともに、記録紙有無検出センサ55がONし、本実施形態に係る紙情報読取方法基づく紙情報読取処理が行われる(ステップS2)。この紙情報読取処理は紙情報読取モードとして設定されており自動で実行される。
【0035】
次に、紙情報読取処理(ステップS2)について、主に、図1に示すフローチャートを参照して具体的に説明する。
【0036】
紙情報読取モードの開始により、RFIDタグ3rの検出処理が行われる。この場合、記録紙ロールRpを装填したのみでは、RFIDタグ3rの位置が不明であるとともに、リーダライタユニット51の読取可能範囲(感度)により、RFIDタグ3rを読取れない場合があるため、所定の回転動作を行わせることによりRFIDタグ3rの有無を検出する処理を行う。まず、駆動モータ52を駆動制御し、記録紙ロールRpをセット位置、即ち、装填時の位置から正方向(紙繰出方向)Ffへ回転させる(ステップS21)。これにより、RFIDタグ3rも芯管部Rpsの回転に従って旋回変位する。一方、リーダライタユニット51はポーリング処理によりRFIDタグ3rの有無を監視(検出)する(ステップS22,S23)。このように、ポーリング方式を用いてRFIDタグ3rの有無を検出するIDタグ検出処理を行うようにすれば、比較的簡易な制御によりIDタグ検出処理を確実に行うことができる。
【0037】
そして、リーダライタユニット51がRFIDタグ3rを検出したなら駆動モータ52に対して回転停止処理を行う(ステップS24)。回転停止処理では、以下の処理手順に従って停止させる。即ち、RFIDタグ3rを検出したなら、駆動モータ52の回転をスローダウンさせることにより停止させる。この結果、正規の停止位置から若干行き過ぎた位置で停止するため、停止したなら、駆動モータ52を低速による逆回転制御し、設定距離だけ逆戻しして再停止させる。この設定距離は、正規の停止位置まで逆戻しする距離を設定する。このように、停止制御処理として、RFIDタグ3rを検出したならスローダウンにより回転を停止させる制御を行った後、予め設定した回転量だけ逆方向に回転させて再停止させる制御を行うようにすれば、大型の記録紙Prであっても記録紙Prの状態に悪影響を及ぼすことなく、RFIDタグ3rを、正規の停止位置に確実かつ安定に停止させることができる。また、正規の位置で停止したなら、リーダライタユニット51によりRFIDタグ3rに記録された紙情報INpの読取処理を行う(ステップS25)。読取った紙情報INpに係わるデータは、印刷機コントローラ61における内部メモリユニット61mのデータエリア61mdに書込む。これにより紙情報読取処理が終了する。
【0038】
ところで、紙情報読取モードの実行時に、RFIDタグ3rを検出しない場合がある。例えば、記録紙ロールRpにRFIDタグ3rが付されていない場合,RFIDタグ3rが不良の場合,記録紙ロールRpの左右を反対にして装填した場合等においては、RFIDタグ3rを検出しない。したがって、印刷機コントローラ61には、予め、記録紙ロールRpをほぼ一回転させるに要する駆動モータ52の回転量(又は対応する記録紙Prの繰出長等の物理量)を最大設定値として設定し、紙情報読取モード時に、駆動モータ52の回転量等を監視する。そして、最大設定値に達してもRFIDタグ3rの存在を検出しない場合には、所定のエラー処理を行う(ステップS22,S26)。具体的には、紙情報読取モードの実行を停止し、アラームランプの点滅制御やエラーメッセージの表示処理等を行う。なお、例示の場合、最大設定値として記録紙Prの繰出長により設定するとともに、一例として300〔mm〕を設定した。このように、IDタグ検出処理を行うに際し、予め、RFIDタグ3rが無いと判断できる記録紙ロールRpの回転量を最大設定値として設定し、回転量が最大設定値に達してもRFIDタグ3rを検出しないときは所定のエラー処理を行うようにすれば、無用な記録紙ロールRpの回転を回避できるとともに、RFIDタグ3rが存在しない等のエラー発生をオペレータ等に速やかに知らせることができる。
【0039】
一方、紙情報読取処理が正常に終了したなら記録紙ロールRpに対して巻戻し処理を行う。即ち、紙情報読取処理では、RFIDタグ3rをリーダライタユニット51により読取可能となる位置まで、記録紙Prを回転させるため、紙情報読取処理が終了した段階では、記録紙Prの先端側が余分に繰出された状態になり、本体キャビネット部22の排出口44から露出した状態となる。そこで、紙情報読取処理が正常に終了したなら、記録紙Prの巻き戻し処理を行う。この場合、紙情報読取処理が終了したタイミングで駆動モータ52を低速で逆回転させ、記録紙Prを逆方向へ巻き戻す制御を行う(ステップS3,S27)。そして、記録紙Prを前方へ繰り出した分だけ巻き戻す。即ち、セット位置まで戻して駆動モータ52の回転を停止させる制御を行う(ステップS28,S29)。これにより、記録紙Prのセッティング処理が終了する。
【0040】
よって、このような本実施形態に係る紙情報読取方法によれば、記録紙ロールRpを印刷機1にセットした際に、RFIDタグ3rとIDタグ読取手段4間の距離及び角度がまちまちとなる場合であっても、常にRFIDタグ3rを最短となる正規位置で紙情報INpの読取りを行うことができる。したがって、読取りエラーを排除し、紙情報INpを正確かつ確実に読取ることができるとともに、十分な信頼性及び安定性を確保できる。また、常にRFIDタグ3rに対して最短となる距離で検出可能になるため、IDタグ読取手段4の性能は最小感度で足りる。したがって、リーダライタユニット等を用いるIDタグ読取手段4の小型化及びコストダウンに寄与できるとともに、省電力性の向上にも寄与できる。
【0041】
なお、紙情報読取処理が正常に終了したなら補正データ設定処理を行う(ステップS3,S4)。印刷機コントローラ61の内部メモリユニット61mには、予め、明暗調整パラメータがデータテーブルとして設定されるとともに、印刷パラメータがデータテーブルとして設定される。この場合、明暗調整パラメータは、スキャナ部2から得られる画像データを補正するためのパラメータであり、具体的には、紙情報INpに基づき単位面積当たりの発色ドットの数量を増減させることにより画像データの明暗を変更するパラメータである。また、印刷パラメータは、サーマルヘッド11に供給するプリントデータを補正するためのパラメータであり、具体的には、紙情報INpに基づきプリントデータの発色ドットの大きさを変更するパラメータである。
【0042】
したがって、明暗調整パラメータについては、前述した紙情報読取処理により読取った紙情報INpに基づき最適パラメータが選択される(ステップS30)。また、印刷パラメータについても、紙情報INpに基づき最適パラメータが選択される(ステップS31)。今、明暗調整パラメータから選択された最適パラメータがXn、印刷パラメータから選択された最適パラメータがYnであるとする。この選択されたパラメータXn,Ynは、紙情報INp、即ち、使用する記録紙Prの種類に対応した補正データとなる(ステップS32)。なお、パラメータXnについては、印刷用原稿Psが不明なため、この時点では、線画モードと写真モードに対応する二つのパラメータがパラメータXnに含まれる。よって、このような補正データ設定処理により、紙情報INpに基づき選択された明暗調整パラメータXnによって画像データが最適化されるとともに、選択された印刷パラメータYnによってプリントデータが最適化されることになる。
【0043】
次に、記録紙Prをセットした印刷機1を用いて、所定のプリント処理を行う場合について、主に、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0044】
最初に、操作部27によりプリントする枚数や印刷濃度等の初期設定を行う(ステップS10)。次いで、印刷用原稿Psをスキャナ部2の原稿供給トレイ部25にセットする(ステップS11)。この後、操作部27のスタートキーをタッチ(ON)すれば、印刷用原稿Psは前方へ搬送され、イメージセンサによりスキャニングされる(ステップS12)。そして、スキャニングされた印刷用原稿Psは原稿排出トレイ部26上に排出される。一方、イメージセンサによるスキャニングにより画像データが得られ、この画像データはスキャナ部2から出力し、印刷機コントローラ61に付与される(ステップS13)。また、この際、印刷用原稿Psが線画(2値データ)であるか又は写真(多値データ)であるかを判別し、対応するプリントモードを設定する。この設定は、操作部27を用いてオペレータが手動設定してもよいし、印刷機コントローラ61における判別機能により自動設定されるようにしてもよい。このプリントモードが設定されることにより最終的な明暗調整パラメータXnが設定される。即ち、前述したように、プリントモードが設定されていない段階では、暫定的に二つの明暗調整パラメータXnが設定されたが、プリントモードが設定されることにより対応する一つの明暗調整パラメータXnが設定される。
【0045】
他方、印刷機コントローラ61に付与された画像データに対しては、設定された明暗調整パラメータXnに基づいて画像データが補正処理される(ステップS14)。これにより、画像データが補正された補正画像データが得られる。例示の場合、紙情報INpに基づき単位面積当たりの発色ドットの数量を増減させることにより画像データの明暗を変更した補正画像データを得る処理が行われる。次いで、補正画像データからプリントデータが生成処理される(ステップS15)。この生成処理は、補正画像データから、サーマルヘッド11により印刷を行うためのプリントデータを得る汎用的な(公知の)プリントデータ生成ステップとなる。この後、得られたプリントデータは、設定された印刷パラメータYnに基づいて補正処理される(ステップS16)。これにより、プリントデータが補正された補正プリントデータが得られる。例示の場合、紙情報INpに基づきプリントデータの発色ドットの大きさを変更した補正プリントデータを得る処理が行われる。
【0046】
そして、得られた補正プリントデータは、サーマルヘッド11を構成する各ヘッド部11a,11b,11c,11dに供給される。この際、ライン単位として順次供給されるとともに、分割されることにより所定の印刷処理が行われる(ステップS17,S18)。なお、図7中、搬送中の記録紙Prを仮想線で示すとともに、図3中、排出口44から排出される記録紙Prを仮想線で示す。一方、以上の一連の印刷処理は、設定した印刷枚数に達するまで同様に行われる(ステップS19)。
【0047】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0048】
例えば、リーダライタユニット51は本体キャビネット部22の内部に固定状態に配設した場合を示したが、図8に示すように、左右方向の位置を変更できるように構成してもよい。例示の場合、本体キャビネット部22内部の後面に左右方向に沿った上下一対のガイドレール81a,81bを配設するとともに、このガイドレール81a,81bにスライダ82をスライド自在に装填し、このスライダ82にリーダライタユニット51を取付けた。さらに、無端のタイミングベルト及び一対のプーリを用いた移動機構83を配設し、このタイミングベルトにスライダ82を結合するとともに、駆動モータ84の回転を回転伝達機構85を介して一方のプーリに伝達可能に構成した。これにより、例えば、幅狭の記録紙Prをアタッチメントにより装填し、RFIDタグ3rの位置が左右方向に変位した場合や標準となる記録紙Pr以外の記録紙を使用することにより標準の位置とは異なる位置にRFIDタグ3rが付されている場合等において、リーダライタユニット51の位置を対応させることができる。即ち、切換用データ86を駆動モータ84に付与し、リーダライタユニット51を対応する検出可能位置へ移動させることができる。
【0049】
その他、本発明において、実施形態では、記録紙ロールRpの記録紙Prとして感熱紙を例示したが、普通紙を含む各種記録紙を適用することができる。また、IDタグ検出処理では、IDタグ読取手段4によりポーリング方式を用いてRFIDタグ3rの有無を検出するようにしたが、RFIDタグ3rの有無を検出することができるものであれば、他の手段を利用してもよい。さらに、停止制御処理では、RFIDタグ3rを検出したならスローダウンにより回転を停止させる制御を行った後、予め設定した回転量だけ逆方向に回転させて再停止させる制御を行うようにしたが、回転速度が低速であったり搬送路の構成等によっては回転を単純に停止させる手法でもよい。他方、スキャナ部2を一体に備える印刷機1とは、一体に使用するという意味であり、必ずしも機械的に一体であることを要しない。したがって、機械的に分離され、コード接続されている場合であってもよい。また、操作部27として、タッチパネル方式のディスプレイ27tを例示したが、押ボタン等の入力パネルと表示部を組合わせた操作部等、他の各種タイプの操作部を適用できる。さらに、紙情報INpは、例示した情報(項目)に限定されるものではなく、他の各種情報、特に、より詳細な情報を含ませることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る紙情報読取方法は、記録紙ロールを用いる各種印刷機に利用することができ、この印刷機は、独立した印刷機であってもよいし、他の装置に組込まれた印刷機能部であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:印刷機,3:IDタグ,3r:RFIDタグ,4:IDタグ読取手段,Rp:記録紙ロール,Rps:芯管部,INp:紙情報,Pr:記録紙,Ff:正方向,Fr:逆方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8