(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130219
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】病衣
(51)【国際特許分類】
A41D 13/12 20060101AFI20170508BHJP
A41B 9/02 20060101ALI20170508BHJP
A41D 10/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
A41D13/12
A41B9/02 D
A41D10/00 E
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-109460(P2013-109460)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-227630(P2014-227630A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】597128255
【氏名又は名称】有限会社 マツハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100071098
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 省躬
(74)【代理人】
【識別番号】100176360
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】松橋 守
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−256500(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3042632(JP,U)
【文献】
特開2000−033100(JP,A)
【文献】
実開平05−085812(JP,U)
【文献】
実開平07−024924(JP,U)
【文献】
特開2002−227014(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3022048(JP,U)
【文献】
特開2005−131062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/12
1/04
10/00
A41B 9/02
9/04
9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズボンの股部より上部がサイドで分割されて、前後の前身頃と後見頃に分かれており、前身頃(A)の上端ウエスト部の全幅に、面ファスナー(1)が付けられ、前身頃(A)の幅は後見頃(B)の幅よりかなり短く構成されていて、後見頃(B)のウエスト部の中央には、ゴム等の弾性体(6)が使用されて伸縮できるように形成されていて、その両端に付けられた面ファスナー(3,3)が、前身頃(A)の側に折り重ねられ、前身頃のウエスト部の面ファスナー(1)に両側から貼り付きウエスト回りが形成されるようになっていて、
後見頃(B)の面ファスナー(3,3)と前身頃(A)の面ファスナー(1)とが重ねられて貼り付けられた時には、ウエストより下の両サイドの前身頃(A)と後見頃(B)の分割された隙間が、ドレーンCの走行路として確保され、しかもこの隙間が、後見頃(B)の両サイドに分割された隙間と同一長さのカバー片(4,4)によりカバーされるようになっていることを特徴とする病衣。
【請求項2】
後見頃(B)の分割されたサイドに付設したカバー片(4,4)は、面ファスナー(3,3)と同一幅で下方に連続しており、内側の下端(4b)がスリット(2,2)の始点、すなわちズボン本体との分岐点まで前身頃の両サイドに連設されており、カバー片(4,4)の外側自由端(4a)は、後見頃の面ファスナー(3,3)を前身頃(A)の面ファスナー(1)に重ね合わせて貼り付けられると、後見頃(B)と前身頃(A)の分割された両サイドの隙間をカバーするように重ねられ、その重ねられた間がドレーン(C)の走行路となることを特徴とする請求項1に記載の病衣。
【請求項3】
前身頃(A)のウエスト部が伸縮しないようになっていて、下着の不意の露出およびドレーンの安定が保持されるようになっていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の病衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に手術後のドレーン使用に適した病衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、消化器手術後において外因性感染のリスクが少ない閉鎖式ドレーンが使用されることが多くなっている。ドレーン(チューブ状)の素材は柔らかいので圧迫されて内腔が容易に潰れ屈曲してしまう欠点を有する。ドレーンは、体内に貯留した消化液、膿、血液やリンパ液、浸出液などの身体に余分となった水分などを体外に排出するために使用されるもので、さらに、排出されたものを通して、術部の状態を観察、確認し、治癒を促し、感染を早期に発見することに寄与するものです。
【0003】
病衣としては、上下に分かれた甚平型あるいは浴衣式のものが多いが、ドレーンが下腹部に挿入された場合は、前者の甚平型はパンツのウエスト部分からドレーンを引き出す必要があるのでドレーンが屈曲することが多い。浴衣式の場合はドレーンの屈曲は避けられるものの、ドレーンの出し入れに際しはだけてしまい体裁が悪く、また保温性の問題が存した。
【0004】
ドレーンの屈曲を防ぐためには、排液バッグを装着しているときには、その位置に注意する必要があり、そして寝返りや体位交換を行う場合、ドレーンが引っ張られたり、ねじれ・折れ曲がったり、身体の下敷きになって閉塞や圧迫されることがないように、ドレーンルートに注意する必要がある。そのためドレーンを挿入された患者は、屈曲を防ぐために行動が制限され精神的負担を感じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−256498号公報
【特許文献2】特開2011−256499号公報
【特許文献3】特開2011−256500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、甚平型の病衣はパンツのウエスト部分でドレーンが屈曲することが多く、浴衣式の病衣はドレーンの出し入れの時に、はだけてしまい体裁が悪く、また保温性の問題が存した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、患者が寝返りや体位交換を行う場合にドレーンが屈曲しづらく、そしてドレーンルートに注意する精神的苦痛を軽減できる病衣を提供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の病衣は、ドレーンの設置及び取り外しの際に、ウエスト位置でなくサイドの隙間部分から作業が行え、しかも隙間を少なくしてあるので、はだけて下着が見えてしまうことがなく体裁が良い。また、後見頃が大きくそして前身頃を伸縮しないようにしてあるので、前身頃が屈曲しづらく体幹の動きに順応でき拘束感などの精神的苦痛が軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、サイドの係止部を開いた状態の病衣の前見頃を示す展開正面図。
【
図2】
図2は、サイドの係止部を閉じた状態の病衣の前身頃を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面に示す実施例に従って本発明を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1、
図2は、本発明の病衣の実施例の正面図である。
図1は、上部において、前部とおしり部とが分離したズボンの後部を少し上にずらして表してある病衣ズボンの展開正面図である。
ズボン前部の上部である前身頃Aの上端ウエスト部の全幅に、面ファスナー1が付けられており、その幅は後見頃Bの幅よりかなり短く構成されている。後見頃Bのウエスト部の中央には、後述するゴム等の弾性体が使用されて伸縮できるようになっていて、その両端に付けられた面ファスナー3,3が、前身頃Aのウエスト部の面ファスナー1に重なり貼り付くようになっている。
【0012】
後見頃Bの面ファスナー3,3と前身頃Aの面ファスナー1とが重なり貼り付いた時には、前身頃Aのウエストより下の両サイドのスリット2,2は、重なった後見頃Bとの間で隙間となっていて、ドレーンCの走行路が確保できるようになっている。
後見頃Bの両サイドには、上端に面ファスナー3,3を有し、前記スリット2,2と同一長さのカバー片4,4が、付設されており、面ファスナー同士を重ね合わされることでその隙間もカバーされるようになっている。
【0013】
詳しくは、カバー片4,4は、面ファスナー3,3と同一幅となっていて、内側の下端4bがスリット2,2の始点、すなわちズボン本体との分岐点まで達して接続している。このカバー片4,4は、面ファスナー(1と3,3)同士を重ね合わせて
図2に示すように貼り付けられると、カバー片の外側自由端4aが後見頃Bと前身頃Aの合わせ目の隙間をカバーするように重なり、これによって隙間より下着が見える不体裁がなくなる。
【0014】
病衣ズボンの足部の両側にポケット5,5を設けてあり、採液・採尿用のバッグを収納できるようにしてある。したがって、ドレーンCはサイドの隙間よりポケット5の採液バッグに無理なく導かれるようになっている。この構成により。ドレーンCを気にしないで精神的負担なく歩行できる。
【0015】
図3は、後見頃Bを示す。ウエスト位置の中央部に約5割伸長するゴム等の弾性体6を配置してあり、両端の面ファスナー3,3を前身頃Aのウエストの面ファスナー1に貼り付ける際に伸長できるようにしてある。この弾性部により患者のウエストにフィットするようにするとともに、面ファスナー1,1と面ファスナー3,3とが適度な緊張を持って強度ある貼り付けが実現される。
逆に前身頃の上部は、面ファスナーで伸縮しないようにしてある。伸縮しないようにしたことにより、後見頃の両端の面ファスナーの係合を外しても、前身頃は縮まないので、前身頃の両端より下着が露出するおそれがなく、またドレーンのずれを防ぐことができる。
【0016】
本発明の病衣ズボンは、以上のように構成されているので、着用する時は、後見頃Bの両端の面ファスナー3,3を弾性体6を適当に伸長させながら前側に回し、前身頃Aの面ファスナー1に貼り付ける。その際、面ファスナー3,3の下に連続しているカバー片4,4が、前身頃Aと後見頃Bとの両サイドの隙間を隠す。そしてこの隠れた隙間よりドレーンCが引き出せるようになっているので、隙間より下着が見えるようなことがない。
【0017】
ドレーンの設置及び取り外しの際に、ウエスト位置でなくサイドの隙間部分から作業が行えるので、はだけて下着が見えてしまうことがなく体裁が良い。そして前身頃のウエストを伸縮しないように構成してあるので、ドレーンを安定して保持でき、さらには患者が寝返りや体位交換を行う場合にも屈曲しずらく体幹の動きに順応できるようになっており、患者のドレーンの着用による拘束感などの精神的苦痛が軽減できるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、手術後にドレーンを使用する患者の病衣として最適である。
【符号の説明】
【0019】
A 病衣の前身頃
B 病衣の後見頃
C ドレーン
1 面ファスナー
2 サイドスリット
3 面ファスナー
4 カバー片
5 ポケット
6 弾性体(ゴム)