(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、シリカ粒子分散液、その製造方法、及び複合体の製造方法の実施形態について説明する。
<シリカ粒子分散液>
シリカ粒子分散液は、シリカ粒子と分散媒としてのジアセトンアルコールとを含有する。
【0011】
シリカ粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)は、100nm以下であることが好ましい。シリカ粒子の平均粒子径は、例えば10nm以上である。シリカ粒子としては、周知のゾル−ゲル法によって得られた単分散のシリカ粒子が好適に用いられる。シリカ粒子分散液中におけるシリカ粒子の含有量は、好ましくは0.01〜20質量%である。
【0012】
シリカ粒子は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アルキルトリエトキシシラン、アルキルトリメトキシシラン、ジアルキルジエトキシシラン、ジアルキルジメトキシシラン、アルキルトリメトキシシランが挙げられる。
【0013】
シランカップリング剤は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。シリカ粒子分散液に用いるシランカップリング剤は、フェニルトリメトキシシランを含むことが好ましい。
【0014】
シリカ粒子に対するシランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の最小被覆面積、シリカ粒子の平均粒子径、及びシリカ粒子の含有量に応じて決定することができる。シリカ粒子分散液中におけるシランカップリング剤の含有量は、例えば、0.01〜10質量%である。
【0015】
シリカ粒子分散液は、分散媒としてのジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)を含有する。シリカ粒子分散液は、ジアセトンアルコール以外の分散媒を含有してもよい。ジアセトンアルコール以外の分散媒としては、ジアセトンアルコールと相溶し、かつアクリル樹脂の溶媒となる分散媒が好適に用いられる。ジアセトンアルコール以外の分散媒としては、例えば、エチレングリコール−t−ブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0016】
分散媒中におけるジアセトンアルコールの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。なお、分散媒には微量の水が含まれていてもよい。
【0017】
シリカ粒子分散液には、必要に応じて、例えば、増粘剤、及び分散剤を含有させることもできる。
シリカ粒子分散液は、アクリル樹脂溶液と混合した後に乾燥して用いられる。
【0018】
アクリル樹脂溶液は、アクリル樹脂と溶媒とを含有する。アクリル樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル樹脂、及びアクリル酸メチル樹脂が挙げられる。アクリル樹脂としては、例えば、スチレンモノマーが共重合されたものであってもよい。アクリル樹脂は、一種又は二種以上を用いることができる。
【0019】
溶媒としては、アクリル樹脂が溶解し得る溶媒であり、かつジアセトンアルコールと相溶し得る溶媒の中から適宜選択して用いることができる。溶媒は、一種又は二種以上を用いることができる。溶媒としては、例えば、メチルイソブチルケトン、及びジアセトンアルコールが好適に用いられる。
【0020】
アクリル樹脂溶液には、必要に応じて、紫外線吸収剤、老化防止剤等の各種添加剤が含有されていてもよい。
シリカ粒子分散液とアクリル樹脂溶液との混合は、周知の混合装置を用いて行うことができる。
【0021】
シリカ粒子分散液とアクリル樹脂溶液とを混合した後の乾燥は、スプレードライ(噴霧乾燥)である。スプレードライには、市販のスプレードライヤー(噴霧乾燥装置)が用いられる。スプレードライヤーには、シリカ粒子分散液とアクリル樹脂溶液との混合液が供給される。供給された混合液は、微粒子化されるとともに熱風と接触されることで乾燥される。スプレードライヤーとしては、ノズル式、回転円盤式等のスプレードライヤーが挙げられる。
【0022】
<シリカ粒子分散液の製造方法>
シリカ粒子分散液の製造方法は、原料液を調製する原料液調製工程と、原料液から分散媒を揮発させる揮発工程とを備える。
【0023】
原料液調製工程では、分散媒として水を含むシリカ粒子水系分散液とジアセトンアルコールとを混合することで原料液が調製される。シリカ粒子水系分散液としては、周知のゾル−ゲル法によって得られたシリカ粒子スラリーを必要に応じて水系分散媒で希釈したものが好適に用いられる。ゾル−ゲル法は、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)等のアルコキシシランをアルカリ条件下で加水分解及び縮合させる方法である。具体的には、アルコキシシランをアルコール、水及びアンモニアを含有する溶液に添加する。その溶液を所定時間撹拌することで、球状のシリカ粒子が水系分散媒に分散したシリカ粒子スラリーが得られる。
【0024】
シリカ粒子水系分散液の分散媒としては、例えば、水、及び水とアルコールとの混合分散媒が挙げられる。
シリカ粒子を上記のシランカップリング剤で表面処理する場合は、原料液調製工程に供するシリカ粒子水系分散液にシランカップリング剤を配合した後、加熱及び撹拌される。この表面処理の工程において、シリカ粒子水系分散液の分散媒は、水とイソプロピルアルコールとの混合分散媒であることが好ましい。
【0025】
揮発工程では、原料液調製工程で得られた原料液からジアセトンアルコール以外の分散媒を揮発させる。揮発工程では、周知のエバポレーターを用いることが好適である。原料液調製工程で用いるシリカ粒子水系分散液の分散媒としては、ジアセトンアルコールよりも低沸点の分散媒が用いられる。これにより、揮発工程では、ジアセトンアルコール以外の分散媒を優先的に揮発させることができる。
【0026】
こうした原料液調製工程及び揮発工程により、シリカ粒子水系分散液中の水系分散媒の一部又は全体がジアセトンアルコールに置換されることで、上述したシリカ粒子分散液が得られる。
【0027】
<複合体の製造方法>
次に、シリカ粒子分散液を用いてシリカ粒子とアクリル樹脂との複合体を製造する複合体の製造方法について説明する。
【0028】
複合体の製造方法は、上述したシリカ粒子分散液とアクリル樹脂溶液とを混合した混合液を調製する混合液調製工程と、その混合液をスプレードライにより乾燥させる乾燥工程とを備える。
【0029】
混合液調製工程では、シリカ粒子がアクリル樹脂溶液に分散される。混合液調製工程は、周知の混合装置を用いて行うことができる。
混合液調製工程において、シリカ粒子分散液に対するアクリル樹脂溶液の混合割合は、複合体におけるシリカ粒子の含有量に応じて適宜設定することができる。混合液中におけるアクリル樹脂に対するシリカ粒子の質量比は、例えば、0.1〜10の範囲とされる。
【0030】
混合液中では、アクリル樹脂溶液に含まれていた溶媒に加えてシリカ粒子分散液に含まれていた分散媒がアクリル樹脂溶液の溶媒として含有される。このように混合液中に含まれる溶媒は、ジアセトンアルコールを50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましい。
【0031】
乾燥工程は、上述したスプレードライヤーを用いて行われる。スプレードライヤーにおける温風の温度は、ジアセトンアルコールの沸点より高い温度に設定される。温風の温度は、170〜200℃の範囲であることが好ましい。
【0032】
<複合体の使用方法及び作用>
次に、複合体の使用方法及び作用を説明する。
複合体は、アクリル樹脂と溶融混練した後に、成形して用いることができる。このように複合体を用いて成形体を得る場合、複合体に含まれるアクリル樹脂は、溶融温度以上に加熱される。このとき、シリカ粒子分散液に含有する分散媒の種類、及び複合体を得る際の乾燥方法を要因として成形体の色調が変化することがある。この点、本実施形態の複合体は、上記シリカ粒子分散液を用いて得られたものであり、かつ、スプレードライされたものである。こうした複合体によれば、アクリル樹脂の溶融温度以上に加熱された際に、アクリル樹脂の色調に対して、分散媒の影響が抑制される。
【0033】
複合体を用いて得られた成形体は、シリカ粒子がフィラーとなるため、例えば、機械的物性が高められる。こうした成形体は、例えば、電子部品及び光学部品として利用することができる。
【0034】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)シリカ粒子分散液は、アクリル樹脂溶液と混合した後に乾燥して用いられる。このシリカ粒子分散液は、分散媒としてジアセトンアルコールを含有し、アクリル樹脂溶液と混合した後の乾燥は、スプレードライである。このため、乾燥後に得られる複合体の成形の際に、アクリル樹脂の色調の変化を抑制することが容易となる。
【0035】
また、シリカ粒子の平均粒子径が100nm以下の場合には、シリカ粒子分散液を用いて得られる成形体の透明性が確保され易くなる。
(2)アクリル樹脂とシリカ粒子とを複合化する場合、アクリル樹脂の臨界表面張力(固体表面張力)とシリカ粒子の臨界表面張力とが異なるため、アクリル樹脂とシリカ粒子の界面に隙間(空間)が形成されることや加熱して混練する工程においてシリカ粒子の凝集体が形成されることがある。この隙間や凝集は、例えば、複合体の白濁の要因となり得る。この点、シリカ粒子分散液に含まれるシリカ粒子は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。この場合、シリカ粒子の臨界表面張力は、シランカップリング剤の表面処理によりアクリル樹脂の臨界表面張力に近づけることが可能であるため、アクリル樹脂とシリカ粒子の界面における隙間を減らすことができる。これにより、成形体の透明性を高めることが容易となる。特に、シランカップリング剤としてフェニルトリメトキシシランを用いた場合、成形体の透明性を高める効果がさらに得られ易くなる。
【0036】
(3)シリカ粒子分散液の製造方法は、分散媒として水を含むシリカ粒子水系分散液とジアセトンアルコールとを混合した原料液を調製する原料液調製工程と、原料液からジアセトンアルコール以外の分散媒を揮発させる揮発工程とを備えている。この製造方法によれば、ゾル−ゲル法で得られたシリカ粒子水系分散液を用いてシリカ粒子分散液を得ることができる。ゾル−ゲル法で得られたシリカ粒子水系分散液は、シリカ粒子の平均粒子径が比較的小さく、粒径分布も狭いため、得られる成形体の透明性が確保され易くなる。
【0037】
(4)ジアセトンアルコールは、水を含む分散媒に対して比較的沸点が高く、水を含む分散媒に対しての相溶性も良好である。このため、水を含む分散媒との沸点の差を利用した置換を容易に行うことができる。例えば、水を含む分散媒をメチルイソブチルケトンに置換しようとした場合、水を含む分散媒に対しての相溶性が低く、また、その分散媒の沸点とメチルイソブチルケトンの沸点とが比較的近いことから、置換が困難である。この場合、例えば、水を含む分散媒を低沸点のイソプロピルアルコールに置換した後にメチルイソブチルケトンに置換することになり、製造コスト等の観点から不利である。
【0038】
(5)複合体の製造方法は、シリカ粒子分散液とアクリル樹脂溶液とを混合した混合液を調製する混合液調製工程と、混合液をスプレードライにより乾燥させる乾燥工程とを備えている。こうして得られた複合体によれば、上記(1)で述べた効果が得られる。
【0039】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・前記シリカ粒子分散液は、分散媒として水を含むシリカ粒子水系分散液を原料として用いて製造されているが、分散媒として有機溶剤のみを含むシリカ粒子の分散液を用いて製造されてもよい。この場合の有機溶剤は、ジアセトンアルコールの沸点よりも低い沸点を有する有機溶剤を選択し、その有機溶剤とジアセトンアルコールとを置換することでシリカ粒子分散液を得ることが可能である。但し、ゾル−ゲル法で得られたシリカ粒子水系分散液を原料として用いる場合、シリカ粒子の分散安定性を確保するという観点から、前記実施形態の製造方法が好ましい。
【0040】
・前記複合体は、アクリル樹脂と溶融混練して用いられている。すなわち、前記複合体は、マスターバッチとして用いられているが、複合体中におけるシリカ粒子の含有量を調整し、その複合体をアクリル樹脂と溶融混練せずに成形体を得ることもできる。
【0041】
・前記複合体は、接着用の樹脂材料又はそのマスターバッチとして用いることもできる。
上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0042】
(イ)前記シリカ粒子分散液において、前記シリカ粒子の平均一次粒子径が100nm以下であるシリカ粒子分散液。
(ロ)前記シリカ粒子分散液において、前記シランカップリング剤は、フェニルトリメトキシシランを含むシリカ粒子分散液。
【0043】
(ハ)前記シリカ粒子分散液の製造方法において、前記シリカ粒子水系分散液は、ゾルゲル法で得られたものであるシリカ粒子分散液の製造方法。
【実施例】
【0044】
次に、実施例及び比較例を説明する。
<シリカ粒子水系分散液(A)>
ゾル−ゲル法で得られたシリカ粒子水分散スラリー(宇部日東化成株式会社製、商品名:ハイプレシカAS,平均粒子径38nm、粒子濃度13.9質量%)200gと、イソプロピルアルコール172gとを混合することで分散液を調製した。この分散液にシランカップリング剤としてのフェニルトリメトキシシラン(PhTMS)6.7gを添加した後、60℃で12時間撹拌することで、シリカ粒子の表面処理を行った。これにより、シリカ粒子水系分散液(A)を得た。
【0045】
<シリカ粒子水系分散液(B)>
シリカの表面処理に用いるシランカップリング剤をメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)8.4gに変更した以外は、シリカ粒子水系分散液(A)と同様にシリカ粒子水系分散液(B)を得た。
【0046】
<シリカ粒子水系分散液(C)>
シリカの表面処理に用いるシランカップリング剤をメチルトリメトキシシラン(MTMS)4.6gに変更した以外は、シリカ粒子水系分散液(A)と同様にシリカ粒子水系分散液(C)を得た。
【0047】
<シリカ粒子水系分散液(D)>
ゾル−ゲル法で得られたシリカ粒子水分散スラリー(宇部日東化成株式会社製、商品名:ハイプレシカAS,平均粒子径38nm、粒子濃度13.9質量%)184gとイソプロピルアルコール159gとを混合することでシリカ粒子水系分散液(D)を得た。
【0048】
<シリカ粒子分散液の製造>
(製造例A1)
シリカ粒子水系分散液(A)342gと、ジアセトンアルコール(DAA)170gとを混合することで原料液を調製した。この原料液に対してエバポレーターを用いて揮発工程を行った。これにより、シリカの含有量が14.5質量%のシリカ粒子分散液を得た。
【0049】
(製造例B1)
シリカ粒子水系分散液(B)342gと、ジアセトンアルコール(DAA)170gとを混合することで原料液を調製した。この原料液に対してエバポレーターを用いて揮発工程を行った。これにより、シリカの含有量が18.8質量%のシリカ粒子分散液を得た。
【0050】
(製造例C1)
シリカ粒子水系分散液(C)342gと、ジアセトンアルコール(DAA)170gとを混合することで原料液を調製した。この原料液に対してエバポレーターを用いて揮発工程を行った。これにより、シリカの含有量が22.5質量%のシリカ粒子分散液を得た。
【0051】
(製造例D1)
シリカ粒子水系分散液(D)343gと、ジアセトンアルコール(DAA)170gとを混合することで原料液を調製した。この原料液に対してエバポレーターを用いて揮発工程を行った。これにより、シリカの含有量が14.0質量%シリカ粒子分散液を得た。
【0052】
<複合体の製造>
複合体の製造では、アクリル樹脂溶液として、アクリル樹脂の含有量が20質量%であり、溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を含有するアクリル樹脂溶液を用いた。
【0053】
(実施例A2)
アクリル樹脂溶液30gと、製造例A1で得られたシリカ粒子分散液41gとを混合し、アクリル樹脂とシリカ粒子との固形分比率が質量比で1:1の混合液を調製した。この混合液をスプレードライヤー(藤崎電機株式会社製、MDL−050M)を用いて温風の温度190℃、窒素下の条件でスプレードライを行うことで複合体を得た。
【0054】
(比較例A2)
比較例A2では、実施例A2と同様にしてアクリル樹脂溶液と製造例A1で得られたシリカ粒子分散液を用いて調製した混合液をトレイに載置し、70℃のホットプレートで12時間加熱することで乾燥した。さらに、真空オーブンを用いて、50℃、24時間の条件で乾燥することで板状の複合体を得た。
【0055】
(比較例B2)
アクリル樹脂溶液30gと、製造例B1で得られたシリカ粒子分散液32gとを混合し、アクリル樹脂とシリカ粒子との固形分比率が質量比で1:1の混合液を調製した。この混合液をトレイに載置し、70℃のホットプレートで12時間加熱することで乾燥した。さらに、真空オーブンを用いて、50℃、24時間の条件で乾燥することで板状の複合体を得た。
【0056】
(比較例C2)
アクリル樹脂溶液30gと、製造例C1で得られたシリカ粒子分散液27gとを混合し、アクリル樹脂とシリカ粒子との固形分比率が質量比で1:1の混合液を調製した。この混合液をトレイに載置し、70℃のホットプレートで12時間加熱することで乾燥した。さらに、真空オーブンを用いて、50℃、24時間の条件で乾燥することで板状の複合体を得た。
【0057】
(比較例D2)
アクリル樹脂溶液30gと、製造例D1で得られたシリカ粒子分散液43gとを混合し、アクリル樹脂とシリカ粒子との固形分比率が質量比で1:1の混合液を調製した。この混合液をトレイに載置し、70℃のホットプレートで12時間加熱することで乾燥した。さらに、真空オーブンを用いて、50℃、24時間の条件で乾燥することで板状の複合体を得た。
【0058】
<複合体を用いた成形体の製造>
実施例A2で得られた複合体を用いて成形体用の原料を調製した。この調製では、実施例A2で得られた複合体10gとアクリル樹脂40gとを溶融混練機(商品名:ラボプラストミル MODEL30C150、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、230℃、70rpmで3分間混練した。なお、成形体の製造で用いたアクリル樹脂は、複合体の製造で用いてアクリル樹脂と同種のものである。得られた原料を粉砕した後に、230℃に加熱してプレスすることで、板状の成形体(縦寸法50mm、横寸法50mm、厚さ寸法2mm)を得た。得られた成形体中におけるシリカ粒子とアクリル樹脂との質量比は1:9である。
【0059】
各比較例で得られた複合体を用いた成形体の製造では、板状の複合体をフードミキサーで粉砕した後に用いた以外は、上記と同様にして板状の成形体(縦寸法50mm、横寸法50mm、厚さ寸法2mm)を得た。得られた成形体中におけるシリカ粒子とアクリル樹脂との質量比は1:9である。
【0060】
<YI値及びb
*値の測定>
各例の複合体から得られた成形体について、JIS Z7105:1981に準拠してイエローインデックス値(YI値)を測定した。この測定では、分光光度計(V−670、日本分光株式会社製)の積分球ユニット(ISN−723)を用いて測定した。測定の条件としては、波長範囲780nm〜380nm、測定速度200nm/min、測光モード%T、レスポンスSlow、バンド幅10nm、データ間隔5nm、及び視野2(deg)である。
【0061】
また、各例の複合体から得られた成形体について、CIE L
*a
*b
*におけるb
*値をJIS Z8701:1999に準拠して測定した。
<全光線透過率及びヘーズの測定>
各例の複合体から得られた成形体について、JIS K7361−1:1997に準拠して全光線透過率(以下、“Tt”で表す)を測定するとともに、JIS K7136:2000に準拠してヘーズ(以下、“Hz”で表す)を測定した。同測定では、ヘーズメータ(NDH2000、日本電色工業株式会社製)を用いた。
【0062】
<結果>
表1には実施例A2及び各比較例のシリカ粒子分散液から得られた成形体の物性(YI値、b
*値、Tt及びHz)を示している。
【0063】
【表1】
実施例A2のシリカ粒子分散液から得られた成形体のYI値及びb
*値は、各比較例よりも低い値を示している。なお、実施例A2のシリカ粒子分散液から得られた成形体のTtは、各比較例との対比において高い値を示している。また、実施例A2のHzは、比較例B2、C2及びD2よりも低い値を示すとともに、比較例A2と同等の値を示している。