特許第6130247号(P6130247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6130247砥粒電着液,固定砥粒型ソーワイヤの製造方法,及び固定砥粒型ソーワイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130247
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】砥粒電着液,固定砥粒型ソーワイヤの製造方法,及び固定砥粒型ソーワイヤ
(51)【国際特許分類】
   B24D 11/00 20060101AFI20170508BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20170508BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20170508BHJP
   B24D 3/02 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B24D11/00 G
   B24D3/00 340
   B24D3/06 B
   B24D3/02 310A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-138172(P2013-138172)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-9343(P2015-9343A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】513091386
【氏名又は名称】ワイヤーエンジプロ合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503398118
【氏名又は名称】双日株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100103414
【弁理士】
【氏名又は名称】戸村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】笹部 博史
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−301446(JP,A)
【文献】 特開2012−192469(JP,A)
【文献】 特開昭61−182773(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103031012(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 11/00
B24D 3/00
B24D 3/02
B24D 3/06
H01L 21/304
B28D 5/04
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンが除去された水10000質量部と,6〜40nmの酸化物粉末1〜50質量部,アクリル酸エステル0.5〜25質量部,及び,砥粒50〜700質量部を含み,電気伝導度が500μS/cm以下であることを特徴とする砥粒電着液。
【請求項2】
イオンが除去された水10000質量部に,6〜40nmの酸化物粉末1〜50質量部と,砥粒50〜700質量部を添加すると共に,電気伝導度が500μS/cm以下となるようにアクリル酸エステルを0.5〜25質量部の範囲で添加して電着液を得る工程と,
前記電着液を使用した電着により,ワイヤの表面に砥粒を付着させる砥粒付着工程と,
前記砥粒付着工程で砥粒が付着されたワイヤの表面に,電気めっきにより金属めっき層を形成する砥粒固定工程を含むことを特徴とする固定砥粒ソーワイヤの製造方法。
【請求項3】
ワイヤの外周面に砥粒が固定された固定砥粒ソーワイヤにおいて,
前記砥粒が,アクリル酸エステル,及びアクリル酸エステルで被覆された粒径6〜40nmの酸化物を表面に付着させた状態で,前記ワイヤの表面に形成された金属めっき層に一部露出した状態で埋設されることにより前記ワイヤの表面に固定されていることを特徴とする,固定砥粒型ソーワイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコン,水晶,サファイア,チタンカーバイト等の硬質脆性材料のインゴット等から,シリコンウェハーや水晶振動子,基板等の製品を切り出す際に使用するソーワイヤであって,ワイヤの表面に砥粒が固定されている固定砥粒型ソーワイヤの製造に適した砥粒電着液,前記砥粒電着液を使用した固定砥粒型ソーワイヤの製造方法,及び前記方法で製造された固定砥粒型ソーワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン,水晶,サファイア,チタンカーバイトのインゴット等の硬質脆性材料からシリコンウェハー,水晶振動子,基板等の製品を切り出すに際しては,従来から「ソーワイヤ」が使用されている。
【0003】
このようなソーワイヤとしては,表面に砥粒が固定されていないピアノ線等から成り,砥粒と水や油の懸濁液であるスラリーをかけながら使用される遊離砥粒型ソーワイヤと,ワイヤの表面に予めダイヤモンド等の砥粒を付着させてある固定砥粒型ソーワイヤがある。
【0004】
固定砥粒型のソーワイヤでは,遊離砥粒型ソーワイヤに比べて切り出し速度を向上させることができると共に,ソーワイヤの使用量を大幅に減少させることができ,しかも,砥粒を含むスラリーの使用を必要としないために廃棄物の発生を大幅に減少できる利点があることから,その利用が普及しつつあるが,その一方で,固定砥粒型ソーワイヤは,遊離砥粒型ソーワイヤに比較して製造コストが高いことから,低価格で,より切断能力が高く,しかも,長寿命である固定砥粒型ソーワイヤの開発が要望されている。
【0005】
固定砥粒型ソーワイヤを製造するためには,ワイヤの表面に砥粒を固着させることが必要で,このような固着方法の一例としてダイヤモンドやCBN等の硬質の砥粒を分散させためっき浴中でめっきを行うことにより,めっき層の形成と共に砥粒を付着させる「分散めっき法」と呼ばれる方法が提案されている。
【0006】
このような分散めっき法の一例として,Niめっき浴中に表面をNi等の金属被膜で覆ったダイヤモンド砥粒を投入しておき,このめっき浴中でワイヤに対しNiめっきを行うことにより,ワイヤの表面に形成されたNiめっき層中に前述の金属被覆ダイヤモンドを埋設することで,ワイヤの表面に砥粒を付着させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また,砥粒の付着量の多いソーワイヤを高速で製造することを目的とし,前述の分散めっき法とは別の方法として,砥粒を100質量部以上10000質量部以下,酸化チタンまたは酸化ジルコニウムの少なくとも一方のコロイド粒子を50質量部以上100質量部以下含有し,電気伝導度が10mS/cm未満のソーワイヤ電着液を使用してワイヤの表面に砥粒を付着させ,その後,Niめっき層を形成して砥粒を固定する,固定粒子型のソーワイヤの製造方法も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−050341号公報
【特許文献2】特開2012−192469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上で説明した従来の固定砥粒式ソーワイヤの製造方法中,特許文献1に記載の製造方法では,金属被覆された砥粒をめっき浴中に添加した状態でワイヤに対しめっきを行うことで,砥粒を埋設しためっき層を成長させることができ,これにより,めっき層によって砥粒をワイヤ表面に強固に固着できるものとなっている。
【0010】
しかし,めっき浴中に添加した砥粒は比較的短時間で沈降してしまうために,めっき浴中の砥粒の濃度を一定の状態に管理することが難しく,沈降と共にワイヤ表面に対する砥粒の析出量も減少してしまうために,砥粒の析出量を一定に維持することが難しい。
【0011】
このような砥粒の沈降によって生じる析出量変化を防止するためには,ワイヤに対し絶えず一定量の砥粒を供給できるようにする必要があり,前掲の特許文献1に記載の発明ではこのような方法として,めっき浴を行う電着槽内に砥粒沈降領域を設け,この砥粒沈降領域内にあるワイヤに向かって,上方から,砥粒を含むめっき液を供給する構成を採用しており,砥粒の析出量を一定量に維持するためには,このような特別な構造を備えた製造装置が必要となる。
【0012】
また,金属被覆された砥粒は,Niイオンに比較して大きな質量を持つことから,砥粒は,めっき浴中を自由に移動することができず,そのため,特許文献1に記載の方法では,沈降時にワイヤの近くを通過する僅かな量の砥粒のみがワイヤに付着し,その他の砥粒はワイヤに付着することなく余剰の砥粒として回収される(特許文献1[0046])。
【0013】
そのため,分散めっき法で砥粒の付着を行う場合,砥粒の析出速度が遅く,ワイヤに対する砥粒の固着量を増大させるためには,ワイヤの送り速度を低下させて砥粒沈降領域にワイヤを長く止めておくか,砥粒沈降領域を長い距離設ける等して,砥粒が分散されためっき浴に対するワイヤの浸漬時間を長くする必要があり,いずれの場合にも,ソーワイヤの製造速度が遅くなると共に,砥粒沈降領域を長距離設ける場合には,製造装置も大型化する。
【0014】
しかも,分散めっき法によって砥粒の析出とめっき層の成長を同時に行う場合,めっき層の成長初期でワイヤの表面に付着した砥粒と,めっき層の成長終期でワイヤ表面に付着した砥粒では,めっき層に対する埋没状態が異なり,砥粒の粒径をある程度揃えておいたとしてもワイヤ表面(めっき層の表面)より露出する砥粒の高さを均一化することが難しく,このようなソーワイヤを使用して切断を行う場合,露出の大きい砥粒は脱落し易くソーワイヤの寿命を縮めることとなると共にワークに対し必要以上のダメージを与えるおそれがある。
【0015】
以上で説明した課題を有する分散めっき法によるソーワイヤの製造に対し,特許文献2に記載のソーワイヤの製造方法では,砥粒と共に帯電したコロイド粒子を含有する電着液を使用することで,この電着液中にワイヤを浸漬させた状態でワイヤと,電着液を貯留する電着槽との間に電圧を印加すると,帯電したコロイド粒子がワイヤの表面に析出する際に,コロイド粒子が砥粒をワイヤに向かって押す等して砥粒をワイヤ表面に付着させることができるものとなっており(特許文献2[0030]),その結果,砥粒に対し金属等を被覆することなしに,砥粒の析出量の増大と,ソーワイヤの製造速度の向上を得ている。
【0016】
また,前述の電着液を使用して砥粒を付着させたワイヤは,更に,ワイヤの表面にNiめっきを施すことにより砥粒の固定を行うことでソーワイヤとして完成するものであり(特許文献2[0044],[0045]),このように砥粒の付着と,Niめっき層の形成を別工程として行うようにしたことで,砥粒の粒径を揃えておくことにより,Niめっき層より露出する砥粒の高さについても揃えることができるものとなっている。
【0017】
しかし,前掲の特許文献2に記載の発明では,コロイド粒子を帯電させるためにリン酸や縮合リン酸などの水溶性リン化合物を添加するだけでなく,アルカリ成分の添加によって電着液のpH調整を行う等の煩雑な作業が必要となる。
【0018】
また,このような電着液において電気伝導度が低い程,砥粒の電着速度を速めることができるが(特許文献2[0010]),特許文献2に記載の方法で製造された電着液には多くのイオンが存在しているため,その電気伝導度は0.5〜8mS/cm(500〜8000μS/cm)程度であり(特許文献2の[表1]),電気伝導度の低下,従って砥粒の電着速度の向上には一定の限界がある。
【0019】
このような電気伝導度を低下させるためには,電着液中のイオンを除去することも考えられるが,前述した複雑な工程を経て製造された特許文献2に記載の電着液に対し,更に,イオン除去のための工程を付与すれば,その製造方法は更に複雑となる。
【0020】
しかも,前述した特許文献2に記載のソーワイヤの製造方法では,電解液で砥粒の付着を行ったワイヤをそのままNiめっき浴中に浸漬すると,Niめっき浴中にコロイド粒子が溶出してめっき浴を劣化させることから,Niめっき層の形成前に乾燥炉による加熱乾燥によってコロイド粒子を脱水縮合することが必要であり(特許文献2[0044],[0045]),この点も生産性の向上に対する足枷となっている。
【0021】
このように,特許文献2に記載の発明は,前掲の特許文献1として紹介した方法で砥粒の析出を行う場合に比較して,種々の優れた点を有するものの,依然として改良の余地が認められる。
【0022】
そこで本発明は,上記従来技術の欠点を解消するために成されたものあり,砥粒とコロイドを共に含有するソーワイヤ製造用の電着液において,pH調整等の煩雑な作業を必要とせず,また,イオン除去等の追加の工程を必要とすることなしに,より一層の電気伝導度の低下,従って,砥粒の析出速度の向上が得られると共に,砥粒付着後の乾燥工程を経ることなしにNiめっき等の金属めっき層の形成による砥粒の固着工程を実施することができ,長寿命で,且つ,切断能力に優れた固定砥粒型ソーワイヤの製造に使用することができる砥粒電着液,前記砥粒電着液を使用した固定砥粒型ソーワイヤの製造方法,及び前記方法で製造された固定砥粒型ソーワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を達成するために,本発明の砥粒電着液は,脱イオン水,純水,超純水等のイオンが除去された水10000質量部と,酸化チタン,酸化ジルコニウム等の粒径6〜40nmの酸化物粉末1〜50質量部,アクリル酸エステル0.5〜25質量部,及び,砥粒50〜700質量部を含み,電気伝導度が500μS/cm以下であることを特徴とする(請求項1)。
【0024】
なお,本発明の砥粒電着液は,後述する固定砥粒型ソーワイヤの製造に適したものであるが,固定砥粒型ソーワイヤの製造に限定されず,ワイヤ以外の他の基材の表面に砥粒を付着させる作業,例えば砥石車の製造に際し金属製ディスクの表面に砥粒を付着させる際に使用することも可能である。
【0025】
また,本発明の固定砥粒型ソーワイヤの製造方法は,
脱イオン水,純水,超純水等のイオンが除去された水10000質量部に,酸化チタン,酸化ジルコニウム等の粒径6〜40nmの酸化物粉末1〜50質量部と,砥粒50〜700質量部を添加すると共に,電気伝導度が500μS/cm以下となるようにアクリル酸エステルを0.5〜25質量部の範囲で添加して電着液を得る工程と,
前記電着液を使用した電着により,ワイヤの表面に砥粒を付着させる砥粒付着工程と,
前記砥粒付着工程で砥粒が付着されたワイヤの表面に,電気めっきにより金属めっき層を形成する砥粒固定工程を含むことを特徴とする(請求項2)。
【0026】
更に,本発明の固定砥粒型ソーワイヤは,
ワイヤの外周面に砥粒が固定された固定砥粒ソーワイヤにおいて,
前記砥粒が,アクリル酸エステル,及びアクリル酸エステルで被覆された粒径6〜40nmの酸化物粉末を表面に付着させた状態で,前記ワイヤの表面に形成されたNiめっき等の金属めっき層に一部露出した状態で埋設されることにより前記ワイヤの表面に固定されていることを特徴とする(請求項3)。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した本発明の構成により,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0028】
溶媒として脱イオン水,純水,超純水等のイオンが除去された水を使用すると共に,砥粒の電着に使用する砥粒電着液にコロイド粒子として添加される酸化物粉末を帯電させるための分散剤としてアクリル酸エステルを使用したことで,コロイド粒子が完全分散された砥粒電着液が得られるだけでなく,pH調整等を行うことなしに,中性乃至は略中性である砥粒電着液を簡単に製造することができた。
【0029】
また,このようにして得られた砥粒電着液にあっては,イオンが除去された水に,酸化物粉末,砥粒及びアクリル酸エステルを添加するだけで容易に製造することができ,余分なイオンを含める必要が無いために,アクリル酸エステルの添加量を,0.5〜25質量部の範囲内で調整するだけで,30〜500μS/cmという極めて低い電気伝導度を実現することができた。
【0030】
従って,このような低い電気伝導度の実現により,本発明の砥粒電着液を使用することで,砥粒の析出速度を大幅に向上させることができ,その結果,固定砥粒型ソーワイヤの製造速度を向上させることができた。
【0031】
また,アクリル酸エステルは酸化物粉末と結合した際に,酸化物粉末の表面を覆うと共に,粘着性を有する物質であるアクリル酸エステルは,その粘着性によって砥粒表面に対する酸化物粉末の付着,砥粒とワイヤ間の付着,及びワイヤに対する酸化物粉末の付着を補助する役目を有する。その結果,ダイヤモンド等の高価な砥粒のロスが発生しない。
【0032】
更に,このアクリル酸エステルが持つ粘着性により,本発明の砥粒電着液で砥粒の付着を行った場合には,砥粒を付着させた後のワイヤに対し,加熱や乾燥による脱水縮合によるコロイド粒子の固定を行うことなしにめっき浴に浸漬して金属めっき層の成膜を行った場合であっても,コロイド粒子である酸化物粉末がめっき浴中に溶出することを防止でき,その結果,コロイド粒子によってワイヤに付着されていた砥粒の脱落も無く,前掲の特許文献2に記載の発明において必要としていた砥粒電着後の加熱,乾燥工程が省略可能であることから,固定砥粒型ソーワイヤの生産速度をより一層向上させることができた。
【0033】
なお,前述した砥粒電着液を使用して砥粒の電着を行う場合,後掲の実施例に記載の条件において,9μmの砥粒使用時において1秒の浸漬で最大1000個/mm2迄,砥粒の析出速度を向上させることができたことから,この電着液を使用して固定砥粒型ソーワイヤを製造することで,電圧の制御により1秒あたりの浸漬による砥粒の析出量を100〜1000個/mm2の範囲で自由に調整することが可能である。
【0034】
また,このような析出速度の向上が得られたことで,全長5m程度の短い製造ラインによっても,20m/minという速い生産速度で固定砥粒型ソーワイヤを製造することが可能である。
【0035】
なお,前述した本発明の砥粒電着液を使用して製造された固定砥粒型ソーワイヤでは,高密度で砥粒を付着させることが可能であること,めっき層より突出する砥粒の突出長さが揃っていることに加え,他の方法で製造された固定砥粒型ソーワイヤに比較して砥粒の固定強度を高めることができることから,長寿命であると共に,切断中,ワイヤ表面からの砥粒の露出状態,付着密度が大きく変化することが無く,また,めっき層から露出した部分の砥粒表面に付着している,アクリル酸エステルで被覆された酸化物粉末の存在が切断時に発生する切り粉の排出を促進する効果があると考えられ,その結果,切断速度が速く,被切断材に与えるダメージを小さくすることができ,単結晶シリコンは勿論,多結晶シリコンについてもダメージを与えることなく切断することができた。また,Niめっき後すなわち最終製品にもアクリル酸エステルは残り,それが砥粒の固着強度のアップにつながるとともに,砥粒と砥粒の隙間に析出したナノサイズの酸化チタンもアクリル酸エステルで固着され切断時の切粉の排出に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の固定砥粒型ソーワイヤの製造方法の説明図。
図2】ワイヤに対する砥粒の付着原理を説明した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に,本発明の実施形態につき以下説明する。
【0038】
〔本発明の概要〕
本発明の固定砥粒型ソーワイヤは,図1に示すように,所定の組成を有する砥粒電着液を使用してワイヤの表面に砥粒を付着させる砥粒付着工程と,この砥粒付着工程によって砥粒の付着が行われた後のワイヤ表面に対し,Niめっき等の金属めっきを行うことで,砥粒をワイヤの表面に固定する,砥粒固定工程の二工程を経て製造される。
【0039】
〔被処理対象〕(ワイヤ)
母材となるワイヤとしては,固定砥粒型ソーワイヤの芯線として一般的に使用されているピアノ線や硬鋼線等の鋼線を使用することができるが,砥粒の電着時,及び後述する電気めっきに際し,ワイヤは電極として機能するものであることから,少なくともその表面が導電性を有することが必要である。
【0040】
ワイヤは,一種類の金属あるいは合金で構成したものであっても良いが,例えば,表面に付着させる砥粒や,後述するめっき層との馴染みを良くするために,表面にめっきが施されたもの等についても使用可能である。
【0041】
使用可能なワイヤの線径等は特に限定されず,ソーワイヤとして使用可能な範囲であれば,如何なる太さのものであっても使用可能である。
【0042】
このようなワイヤは,必要に応じて脱脂等の処理が行われた後,後述の砥粒付着工程に付される。
【0043】
〔砥粒付着工程〕
脱脂等の処理により表面に付着した汚れが除去された前述のワイヤは,本発明の砥粒電着液に浸漬されて,砥粒の電着が行われる。
【0044】
(1)砥粒電着液
ここで使用する砥粒電着液は,脱イオン水,純水,超純水等のイオンが除去された水を溶媒とし,この水10000質量部に6〜40nmの酸化物粉末1〜50質量部と,砥粒50〜700質量部,及び,出来上がりの砥粒電着液の電気伝導度が30〜500μS/cmとなるようにアクリル酸エステルを0.5〜25質量部の範囲で添加したものであり,このような配合により,コロイド粒子である酸化物粉末が所定の極性に帯電して安定した分散状態を有すると共に,中性あるいは略中性である砥粒電着液が得られる。
【0045】
(1-1) 溶媒
本発明の砥粒電着液では,溶媒としてイオンが除去された水を使用する。このような水は,一例として不純物を濾過した水道水中のイオンを,更にイオン交換樹脂によって除去して得た脱イオン水,あるいは純水,脱イオン水や純水では除去対象としない有機物や微粒子,気体などについても更に除去して得た超純水等はいずれも使用可能であり,前述したように水道水より精製して得る他,市販されている脱イオン水,純水(精製水),超純水を購入して使用しても良い。本実施形態にあっては,水道水よりイオン交換樹脂を用いて生成した脱イオン水を使用した。
【0046】
なお,溶媒として使用する水は,イオンが除去された,イオンを殆ど含まないものであれば良く,pH7の中性であることが好ましいが,これに限定されず,弱酸性,弱アルカリ性等の,略中性,あるいは中性に近いものであっても使用可能である。
【0047】
(1-2) 酸化物粉末(コロイド粒子)
ナノレベルの粒径を有する酸化物粉末としては,酸化チタンや,酸化ジルコニウムの粉末を使用することができる。
【0048】
このうち酸化チタン(TiO2)としては,アナターゼ型,ルチル型,ブルッカイト型があるが,これらのいずれ共に使用可能であるが,析出速度の点でルチル型,他に対しより優れているアナターゼ型の使用が好ましい。
【0049】
使用する酸化物粉末の粒径は,6〜40nmの範囲で,酸化物粉末の粒径は小さすぎても大きすぎても完全分散が難しくなる。
【0050】
(1-3) 砥粒
砥粒電着液に添加する砥粒としては,ソーワイヤの用途に応じて各種の材質の砥粒を使用することができ,ダイヤモンド砥粒(Ni被覆,Ti被覆その他の金属被覆も含む),cBN(立方晶窒化硼素)砥粒等の超硬質砥粒の他,切断対象とするワークの材質に対応し,Al23,SiC等のセラミック系砥粒を使用することも可能であり,本実施形態にあっては,ダイヤモンド砥粒を使用している。
【0051】
使用する砥粒の粒径も,ソーワイヤの用途や切削対象とするワークとの関係で適宜決定可能であるが,粒径が過度に小さい砥粒を使用する場合,切断に時間がかかり切断性能が低下する一方,粒径の大きな砥粒では,砥粒電着液内で分散させることが難しくなることから,粒径8〜120μm程度の粒径の使用が好ましい。
【0052】
(1-4) アクリル酸エステル
アクリル酸エステルには,代表的なものとしてアクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸2-エチルヘキシル,アクリル酸2-ジメチルアミノエチル,アクリル酸2-ヒドロキシエチルがあるが,これらは全て,本発明における分散剤として使用可能であると共に,その他のアクリル酸エステルについても使用可能である。
【0053】
このアクリル酸エステルは分散剤として添加するもので,コロイド粒子である酸化物粉末(酸化チタン粉末)を負に帯電させる本実施形態にあっては,アニオン系のアクリル酸エステルを使用した。
【0054】
アクリル酸エステルは,最終的に得られる砥粒分散液の電気伝導度が30〜500μS/cmの範囲となるよう,0.5〜25質量部の範囲内で添加量を調整する。
【0055】
溶媒であるイオンが除去された水に,前述した酸化チタン粉末及び砥粒が添加されている状態で更に分散剤であるアクリル酸エステルを添加すると,添加されたアクリル酸エステルは,液体中の酸化物粉末及び砥粒に吸着し,これらの粒子の表面を覆うと共に,酸化チタン粉末を負に帯電させて酸化チタン粉末同士の反発によって粒子同士が凝集することを防ぐことで,分散剤として機能する。
【0056】
(2)砥粒の電着
以上のようにして得られた砥粒電着液を入れた電着層内にワイヤを浸漬すると共に,ワイヤと電着層内の電極間に電圧,一例として5〜50Vを印加することで,ワイヤの表面に対する砥粒の付着が行われる。
【0057】
前述したように,アニオン系のアクリル酸エステルの添加によって酸化チタン粉末を負に帯電させた本実施形態にあっては,ワイヤを正,電着層内の電極に負の電圧を印加すると,ワイヤの表面に酸化チタン粉末が引き寄せられる。
【0058】
この酸化チタン粉末は,図2中に拡大図で示すように吸着したアクリル酸エステルで覆われていると共に,砥粒も同様にアクリル酸エステルで覆われている。
【0059】
このように,酸化チタン粉末及び砥粒を覆うアクリル酸エステルは,粘接着剤等としても使用される高い粘着性を備えた材質であることから,コロイド液中ではアクリル酸エステルで覆われた砥粒表面に負に帯電した酸化チタン粉末が付着している。電圧をかけると負に帯電した酸化チタンとともに,負帯電の酸化チタンの付着した砥粒もワイヤに向かって引き寄せられ,ワイヤの表面に付着する結果,高い析出速度を実現することが可能となり,本発明の砥粒電着液を使用した砥粒の電着では,電極間に印加する電圧と,浸漬時間の調整により,ワイヤの表面に対する砥粒の析出量を100〜1000個/mm2の範囲で調整することができる。
【0060】
このようにして,ワイヤの表面に付着した砥粒や酸化チタン粉体は,単にワイヤの表面に堆積しているだけでなく,アクリル酸エステルが持つ粘着力によってもワイヤ表面に付着された状態となっている。
【0061】
その結果,このようにしてワイヤの表面に付着した酸化チタン粉末や砥粒は,その後のめっき浴に対する浸漬によっても溶出や脱落がなく,ワイヤの表面に付着した状態が維持される。
【0062】
〔砥粒固定工程〕
以上のようにしてワイヤ表面に付着した砥粒は,アクリル酸エステルの粘着力によってワイヤ表面に付着されているとは言え,大きな力を加えれば,ワイヤの表面より脱落してしまう。
【0063】
従って,前述した砥粒付着工程によって砥粒が表面に付着されたワイヤを固定砥粒型ソーワイヤとして完成させるためには,更に金属めっきを行い,前述した方法でワイヤ表面に付着させた砥粒を,金属めっき層の形成によってワイヤの表面に対し強力に固定する必要がある(砥粒固定工程)。
【0064】
但し,前述した砥粒付着工程で付着させた砥粒は,金属めっきによる砥粒固定工程中,砥粒をワイヤ表面に付着させておくに十分な付着力を有し,めっき浴に浸漬した場合であっても酸化チタン粉末の溶出や砥粒の脱落が生じないことから,加熱や乾燥などの他に別段の処理を行うことなく,これをそのまま砥粒固定工程に付すことが可能である。
【0065】
本工程(砥粒固定工程)で形成する金属めっき層は,前述した方法でワイヤの表面に付着させた砥粒を,ワイヤの表面に強固に固定することができるものであれば,各種の金属めっきを形成することができ,形成する金属めっき層の材質は特に限定されず,本実施形態では,一例としてNiめっき層を形成することにより,砥粒の固定を行っている。
【0066】
このニッケルめっき層の電着は,既知の各種の電気めっき法により行うことが可能である。もっとも,ニッケルめっきは,めっき浴の種類に応じて得られるニッケルめっき膜の硬さに違いが生じるが,本発明において得られるニッケルめっき膜は硬質である程好ましく,本実施形態にあっては,高硬度のめっき層を得ることができるスルファミン酸浴中でNiめっき層を形成した。
【0067】
めっき層の形成は,砥粒の全体がめっき層中に埋没するまで行うことなく,その一部が,めっき層の表面より露出する程度に行い,好ましくは,砥粒の直径に対し,めっき層の厚さが20〜80%程度となるように行う。
【0068】
このようにしてめっき層を形成することで,砥粒はワイヤの表面に強固に固着されて,本発明の固定砥粒型ソーワイヤが完成する。
【実施例】
【0069】
本発明の方法による固定砥粒型ソーワイヤの製造実施例,及び製造された固定砥粒型ソーワイヤの性能確認試験を行った結果を以下に示す。
【0070】
〔製造実施例〕
(1)前処理工程
ブラスめっきが施された直径0.12mmのワイヤを,市販の電解脱脂剤(株式会社ムラタ製「RCS−21」)に常温で6秒間浸漬した後,水洗して脱脂を行った。
【0071】
(2)砥粒の付着
脱脂後のワイヤを,砥粒を含んだ電着液がそれぞれ入った電着槽に浸漬し,砥粒の付着を行った。
【0072】
電着は,ワイヤを正,電着槽内に設けたSUS製の電極を負として,所定の電圧を印加した状態でワイヤを電着液内に所定時間浸漬することにより行った。
【0073】
各実施例及び比較例における砥粒付着の際の処理条件を下記の表1及び表2に示す。
【0074】

【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
(3)砥粒の固定
実施例1〜8,及び比較例1,2の方法で砥粒の付着を行ったワイヤに対し,スルファミン酸Niめっき浴により,実施例1〜5では5μm,実施例6〜7では10μm,実施例8では25μm厚のNiめっきを施すことにより,砥粒をワイヤの表面に固着して,固定砥粒型ソーワイヤを得た。
【0077】
実施例1〜8では,前工程で砥粒の付着を行ったワイヤの表面にそのままNiめっきを施した。
【0078】
一方,比較例1,2では,Niめっきを行う前に,前工程で砥粒が付着されたワイヤを150℃で10秒間,加熱,乾燥させてワイヤ表面に付着した酸化チタン粉末の脱水縮合を行った。
【0079】
なお,比較例3については,本工程を経ることなく,前掲の表1に示す条件でのスルファミン酸ニッケルめっき浴による分散めっきで,固定砥粒型ソーワイヤを完成させた。
【0080】
〔性能確認試験〕
以上のようにして得られた実施例1〜8及び比較例1〜3の固定砥粒型ソーワイヤについて,以下の点を評価した。評価結果を,表3に示す。
【0081】
(1)砥粒電着液の性能評価
砥粒電着液毎の砥粒の析出速度を評価するため,各ソーワイヤ毎の砥粒の付着密度(1mm2あたりの砥粒の付着数)を測定した。
【0082】
測定は,SEMによって得たソーワイヤの表面拡大像に基づいて目視で砥粒の付着数をカウントすることにより行い,1mm2あたりの砥粒の付着数が250個以上のものを「A」,250個未満のものを「B」と評価した。
【0083】
但し,砥粒の粒径が35μmのもの(実施例6,7)は20〜50個のものを「A」と,砥粒の粒径が100μmのもの(実施例8)は2〜10個のものを「A」と評価した。
【0084】
(2)ソーワイヤの性能試験
実施例1〜5及び比較例1〜3のソーワイヤ50cmを一定の張力を付与した状態で切断機に取り付けると共に単結晶シリコン及び多結晶シリコンのインゴットに押し当て,1往復/1秒のペースで30分間往復させて,各ソーワイヤにおける「砥粒の固着強度」と,「切断性能」を評価した。
【0085】
砥粒の固着強度は,使用前の砥粒量に対する使用後の砥粒残存率に基づいて評価し,使用後の砥粒残存率が95%以上のものを「○」,95%未満のものを「×」と評価した。
【0086】
切断性能は,前述のインゴットの切断深さと,切断面に対するダメージに基づいて評価し,切断深さは,2mm以上を「A」,1.5mm以上2mm未満を「B」,1.5mm未満を「C」と評価し,切断面に対するダメージは,目視によりダメージが無いものを「○」,ダメージがあったものを「×」と評価した。
【0087】
なお,砥粒の粒径を35μm以上とした実施例(実施例6〜8)のソーワイヤは,シリコン切断用では無いことから,切断性能試験は行っていない。
【0088】
【表3】
【0089】
〔試験結果の考察〕
(1)砥粒電着液の性能
本発明の砥粒電着液を使用した実施例1〜5では,いずれも,1秒以下という短い処理時間で250個/mm2以上という高い付着密度で砥粒を付着させることができた。
【0090】
これに対し,分散剤として,水溶性リン化合物(ヘキサメタリン酸ナトリウム)を使用した比較例1では,浸漬時間2秒でも250個/mm2以上という砥粒の付着密度を得ることができず,本発明の砥粒電着液に比較して,析出速度が遅いことが確認された。
【0091】
なお,比較例2では分散剤として水溶性リン化合物(ヘキサメタリン酸ナトリウム)を使用するものでありながら250個/mm2以上という砥粒の付着密度を達成しているが,この結果は,酸化チタン粉末の添加量を実施例1〜5の砥粒電着液に比較して増大させると共に,浸漬時間を実施例1〜5に比較して長い,2秒とした結果得られたもので,水溶性リン化合物を分散剤とした砥粒電着液において,本発明の砥粒電着液と同等の性能を得ようとした場合には,酸化チタンの添加量増加が必要なことと,浸漬時間の長大化と砥粒付着後の乾燥工程が必要なため生産速度が実施例のものと比べ遅く製造コストが上昇する。
【0092】
また,スルファミン酸ニッケルめっき浴によって砥粒の付着を行った比較例3においても,実施例同様,250個/mm2以上という砥粒の付着密度を達成されているが,この結果は,浸漬時間を100秒としたことで得られたものであり,砥粒の析出速度は,実施例の砥粒電着液に比較して遅いものとなっている。
【0093】
よって,本発明の砥粒電着液を使用することで,従来の方法に比較して砥粒の析出速度を向上させることができ,ソーワイヤの生産速度の向上,あるいは生産ラインの短縮化等に貢献し得るものであることが確認できた。
【0094】
なお,本発明の砥粒電着液を使用する場合には,印加電圧や浸漬時間を調整することで,粒径100μmの砥粒についても付着させることが可能であり(実施例8),使用可能な砥粒の最大粒径を60μmとしている特許文献2(特許文献2[0028]欄)に比較して大きな粒径の砥粒が使用可能で,ソーワイヤに付着させる砥粒の選択の幅を拡げることができた。
【0095】
(2)ソーワイヤの性能
比較例1〜3のソーワイヤでは,いずれも砥粒残存率95%以上を達成できたものが存在しなかった。
【0096】
一方,実施例1〜5のソーワイヤは,全てで砥粒残存率95%以上を実現しており,本発明の方法でソーワイヤを製造することで,砥粒の固定強度の高く,従って,長寿命のソーワイヤを提供できることが明らかとなっており,砥粒の表面に付着したアクリル酸エステルの存在が,砥粒の固定強度の向上に貢献しているものと考えられる。
【0097】
また,切断性能については,実施例1〜5のソーワイヤは,比較例1〜3のソーワイヤに比較して,全てで切断深さが深くなっていると共に,切断面に対するダメージも確認できなかった。
【0098】
すなわち,実施例1〜5のソーワイヤでは,高い付着密度で砥粒が固定されているために切断性能が良いだけでなく,砥粒の固定強度が高いために砥粒の脱落に伴う切断性能の低下が抑制されていることで,比較例のソーワイヤに比較してより大きな切断深さが得られたものと考えられる。
【0099】
また,実施例1〜5のソーワイヤでは,砥粒の付着密度が高いことに加え,砥粒電着液を使用して砥粒の付着を行った後,電気めっきによる金属めっき層を形成して砥粒を固定したことで,金属めっき層の表面より突出する砥粒の突出長さを揃えることができると共に,前述した砥粒の付着強度の向上によって,砥粒の突出長さが揃った状態が維持されることで,切断面に対し全体的に略均一な加工を行えることと,砥粒と砥粒の隙間に析出した酸化チタンの粒子が切断時の切り粉の排出を助けることで,部分的に過度の負荷が加わること等により生じるダメージの発生を防止することができたものと考えられる。
【0100】
しかも,単結晶シリコンインゴットに比較してより切断面にあれが生じ易い,多結晶シリコンインゴットの切断では,比較例1〜3のソーワイヤでは,いずれもダメージ無しで切断することはできなかったが,実施例1〜5のソーワイヤを使用した切断では,いずれも切断面に対するダメージは確認できず,この点においても,本発明の方法で製造された固定砥粒型ソーワイヤの高性能性が確認できた。
図1
図2