(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、グロープラグにおいては、従来から、保持部材をヒータ部及びハウジングに接合する接合部について、その接合性や、強度、シール性、外観性状などの品質が確保されることが要求されてきた。また、そうした接合部の品質を確保するためにも、当該接合部を形成するための接合工程の簡易化や容易化、低コスト化などが要求されてきた。
【0005】
特許文献1では、鋼製のダイアフラムによってロッド状のヒータエレメントが保持されている。しかし、特許文献1は、燃焼生成物の堆積に対するヒータエレメントの可動性の保護を課題としている。そのため、特許文献1では、ダイアフラムをヒータエレメント及びハウジングに接合する接合部の品質については十分な考慮がなされていない。また、特許文献2では、先端側起歪部および後端側起歪部を有する支持部材によってヒータ部として機能する中軸がハウジング内に保持されている。しかし、特許文献2においても、特許文献1と同様に、支持部材を中軸及びセンサ用ハウジングに接合する接合部の品質については十分な考慮がなされていない。このように、圧力センサ付きグロープラグにおいては、保持部材をヒータ部及びハウジングに接合する接合部の品質について依然として改良の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
[1]本発明の一形態によれば、圧力センサ付きグロープラグが提供される。この圧力センサ付きグロープラグは、軸線方向に延びる筒状のハウジングと;前記軸線方向に延び、後端部が前記ハウジング内に収容され、先端部が前記ハウジングの先端から延出されるヒータ部と;一方の端部が前記ハウジングに固定されるとともに、他方の端部が前記ヒータ部に固定されて前記ヒータ部を保持し、外力に応じて前記ヒータ部が前記軸線方向に変位するように弾性変形する保持部材と;前記ヒータ部の変位量に基づいて燃焼室内の圧力を測定する圧力センサと、を備える。前記保持部材は、複数の膜状部材が積層された多層構造を有しており;前記保持部材において、前記ヒータ部から見てn(nは自然数)+1層目に配置されている膜状部材は、前記n+1層目に配置されている膜状部材を厚み方向に貫通する接合部によって、n層目に配置されている膜状部材に接合されており;前記接合部は、前記n+1層目に配置されている膜状部材を厚み方向に貫通するとともに、前記n層目に配置されている膜状部材の厚み方向の途中まで形成されている。この形態の圧力センサ付きグロープラグによれば、接合部がn層目に配置されている膜状部材を厚み方向に貫通するように形成されない。そのため、各膜状部材間の接合が容易化され、接合部の良好な品質が確保される。
【0008】
[2]上記形態の圧力センサ付きグロープラグにおいて、前記n層目に配置されている膜状部材の前記ハウジング側の端部および前記ヒータ部側の端部のうちの少なくとも一方の端部は、前記n+1層目に配置されている膜状部材における前記ハウジング側の端部または前記ヒータ部側の端部から露出していても良い。この形態の圧力センサ付きグロープラグによれば、ヒータ部から見て下層に配置されている膜状部材におけるハウジング側の端部またはヒータ部側の端部の少なくとも一方が、上層に配置されている膜状部材から露出している保持部材において、接合部の良好な品質を確保することができる。
【0009】
[3]上記形態の圧力センサ付きグロープラグにおいて、前記n層目に配置されている膜状部材の前記ハウジング側の端部および前記ヒータ部側の端部はいずれも、前記n+1層目に配置されている膜状部材における前記ハウジング側の端部または前記ヒータ部側の端部から露出していても良い。この形態の圧力センサ付きグロープラグによれば、ヒータ部から見て下層に配置されている膜状部材におけるハウジング側の端部またはヒータ部側の端部のいずれもが、上層に配置されている膜状部材から露出している保持部材において、接合部の良好な品質を確保することができる。
【0010】
[4]上記形態の圧力センサ付きグロープラグにおいて、前記ヒータ部から見てN(Nは自然数)層目に配置されている膜状部材を貫通する前記接合部は、N+1層目に配置されている膜状部材の端部から露出していても良い。この形態の圧力センサ付きグロープラグによれば、N層目の膜状部材の接合が容易化されるため、接合部の良好な品質を極めて容易に確保することができる。
【0011】
[5]上記形態の圧力センサ付きグロープラグにおいて、前記保持部材は、前記軸線方向に伸びて前記ヒータ部に固定されるヒータ部側延伸部を備え、前記ヒータ部から見てm(mは2以上の自然数)層目に配置されている膜状部材は、前記ヒータ部側延伸部において、m層目より下層に配置されている膜状部材の端部から前記軸線方向に延出している第1の端部部位を有するとともに、前記第1の端部部位を貫通する接合部によって前記ヒータ部に接合されている。この形態の圧力センサ付きグロープラグによれば、m層目より下層の膜状部材の軸線方向先端側の端部を保護できるとともに、m層目の膜状部材のヒータ部に対する接合を容易化できる。
【0012】
[6]上記形態の圧力センサ付きグロープラグにおいて、前記保持部材は、前記軸線方向に伸びて前記ハウジングに固定されているハウジング側延伸部を備え、前記m層目に配置されている膜状部材は、前記ハウジング側延伸部において、前記m層目より下層に配置されている膜状部材の端部から前記軸線方向に延出している第2の端部部位を有するとともに、前記第2の端部部位を貫通する接合部によって前記ハウジングに固定されていても良い。この形態の圧力センサ付きグロープラグによれば、m層目より下層の膜状部材の軸線方向先端側の両端部を保護できるとともに、m層目の膜状部材のハウジングに対する接合を容易化できる。
【0013】
[7]上記形態の圧力センサ付きグロープラグにおいて、前記m層目に配置されている膜状部材は前記シール部材における最外層の膜状部材であっても良い。この形態の圧力センサ付きグロープラグによれば、m層目の膜状部材によって、下層の膜状部材を保護することができる。
【0014】
本発明は、圧力センサ付きグロープラグ以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、圧力センサ付きグロープラグの製造方法や圧力センサ付きグロープラグにおいてヒータ部を保持する保持部材、その保持部材の製造方法、その保持部材を構成する膜状部材の接合方法等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態としてのグロープラグ100の構成を示す概略図である。
図1では、便宜上、グロープラグ100の紙面上側の部位についてはその外部構成を概略正面図によって図示し、紙面下側の部位についてはその内部構成が概略断面図によって図示してある。また、
図1では、グロープラグ100の仮想中心軸CX(以下、単に「中心軸CX」とも呼ぶ)が一点鎖線によって図示してある。さらに、
図1では、中心軸CXに平行な方向(以後、「軸線方向AD」と呼ぶ)を双方向の矢印で図示してあり、中心軸CXに垂直な方向(以後、「径方向RD」)を双方向の矢印で図示してある。
【0017】
グロープラグ100は、圧力センサ付きグロープラグである。グロープラグ100は、内燃機関の燃焼室に一方の端部が挿入され、燃焼室内を予熱する補助熱源として機能するとともに、燃焼室内の燃焼圧を検出する燃焼圧センサとして機能する。以後、本明細書では、グロープラグ100において、燃焼室内に配置される端部側(
図1の紙面下側)を「先端側」と呼び、燃焼室の外部に配置される端部側(
図1の紙面上側)を「後端側」と呼ぶ。
【0018】
グロープラグ100は、ヒータ部101と、本体部102と、を備える。ヒータ部101は、本体部102の先端側に保持されている棒状の発熱体である。ヒータ部101は、その中心軸がグロープラグ100の中心軸CXと一致するように配置されている。ヒータ部101は、シース管111と、発熱コイル112と、絶縁粉末113と、シール部材114と、を備える。
【0019】
シース管111は、ヒータ部101のハウジングを構成する略円筒状の部材であり、先端部が半球状に閉塞しており、後端部が開口している。シース管111は、例えば、ステンレス鋼によって構成される。シース管111の先端側は本体部102の先端部であるキャップ部150から延出して外部に露出されており、その後端側は本体部102内に収容されている。
【0020】
発熱コイル112は、螺旋状に巻かれた電熱線であり、シース管111内に収容されている。発熱コイル112は、中心軸CX上においてヒータ部101のうち本体部102から露出される部位の全体にわたって配置されている。発熱コイル112は、シース管111内に挿入されている中軸部材131の先端部に巻き付けられて保持されている。発熱コイル112には、当該中軸部材131および配線(図示は省略)を介して外部から電力が供給される。
【0021】
絶縁粉末113は、熱伝導フィラーであり、シース管111の内壁と発熱コイル112および中軸部材131の間の隙間に充填される。絶縁粉末113は、例えば、酸化マグネシウム粉末によって構成される。シール部材114は、シース管111の後端側の開口部に取り付けられる円環状部材であり、シース管111内に挿入される中軸部材131を保持するとともに、絶縁粉末113をシース管111内に密封する。なお、シース管111には、絶縁粉末113が充填されている状態でスウェージング加工が施されることが好ましい。これにより、絶縁粉末113の緻密性が高められ、ヒータ部101における熱伝導効率を向上させることができる。
【0022】
本体部102は、主体金具120と、ヒータ保持部130と、圧力検出部140と、キャップ部150と、を備える。主体金具120は、本体部102のハウジングを構成する筒状部材であり、軸線方向ADに貫通する軸孔121を有する。主体金具120の軸孔121の中心軸はグロープラグ100の中心軸CXと一致する。主体金具120は、軸孔121内にヒータ保持部130および圧力検出部140を収容する。主体金具120は、例えば、炭素鋼やステンレス鋼など、任意の鋼部材によって構成される。
【0023】
主体金具120は、後端側の外表面にネジ部122を有している。ネジ部122には、グロープラグ100をシリンダヘッドに固定するためのネジ溝(図示は省略)が形成されている。主体金具120は、さらに、ネジ部122の後端側に、略多角形断面の工具取付部124を有している。工具取付部124は、グロープラグ100の内燃機関への取り付けの際にスパナなどの工具が系合される部位である。主体金具120の後端側の開口部には、外部からの電力供給や圧力検出部140の出力信号のための配線103が挿入される。
【0024】
ヒータ保持部130は、ヒータ部101を、燃焼室内の圧力変動に応じて軸線方向ADに変位可能なように保持する。ヒータ保持部130は、中軸部材131と、伝達スリーブ132と、固定部材133と、メンブレン部135と、を備える。中軸部材131は、金属製の軸状部材である。中軸部材131は、その中心軸がグロープラグ100の中心軸CXと一致するように配置され、キャップ部150の先端側開口部から主体金具120のネジ部122にわたって伸びている。上述したように、中軸部材131の先端部には、ヒータ部101の発熱コイル112が取り付けられる。
【0025】
伝達スリーブ132は、ヒータ部101と中軸部材131とを収容する筒状部材であり、ヒータ部101の変位量に応じた外力を、圧力検出部140における環状の圧力センサ部141に伝達する。伝達スリーブ132は、自身の先端側の内壁面においてヒータ部101のシース管111と接合されている。また、伝達スリーブ132の後端部は、圧力センサ部141の内周部に固定されている。伝達スリーブ132は、例えば、ステンレス鋼によって構成される。
【0026】
固定部材133は、伝達スリーブ132の全体を収容する筒状部材であり、主体金具120に固定されている。固定部材133の後端側開口部の端面には、圧力検出部140における圧力センサ部141の外周部が固定されている。固定部材133は、例えば、ステンレス鋼によって構成される。なお、固定部材133の内周壁面と、伝達スリーブ132の外周壁面との間には、伝達スリーブ132の軸線方向ADへの移動を確保するための隙間が確保されている。
【0027】
固定部材133の外周には、径方向RDに突起したフランジ部133fが設けられている。フランジ部133fは、主体金具120の先端側開口部とキャップ部150の後端側開口部とにそれぞれ溶接接合されている。これによって、固定部材133は、主体金具120に対して軸線方向ADへ位置ずれすることが抑制される。
【0028】
メンブレン部135は、ヒータ部101を保持する保持部材である。メンブレン部135は、略円環形状を有する膜状部材によって構成され、先端側の内周部がシース管111の外周面に固定され、後端側の内周部が固定部材133の先端側開口部の外周面に固定されている。メンブレン部135は、軸線方向ADに弾性変形し、外力に応じてヒータ部101を軸線方向ADに変位させる。なお、
図1では図示が省略されているが、メンブレン部135は、2つの膜状部材が積層された二層構造を有する。メンブレン部135の構成の詳細については後述する。
【0029】
圧力検出部140は、圧力センサ部141と、集積回路142と、を備え、ヒータ部101の軸線方向ADにおける変位量に基づいて燃焼室内の圧力変化を示す信号を出力する。圧力センサ部141は、上述したように、固定部材133の後端側開口部の端面に固定されるとともに、伝達スリーブ132の後端部に固定されている。圧力センサ部141は、環状の金属ダイアフラム部と、金属ダイアフラム部の上に配置されたピエゾ抵抗素子と、を備える。圧力センサ部141のピエゾ抵抗素子は、金属ダイアフラム部を介して伝達スリーブ132からヒータ部101の変位量に応じた外力の伝達を受けることによって、その抵抗値が変化する。集積回路142は、圧力センサ部141から出力される信号に基づいて燃焼室内の圧力変化を示す信号を配線103を介して外部に出力する。集積回路142は、主体金具120の軸孔121のうちネジ部122が形成されている位置に配置されている。
【0030】
キャップ部150は、固定部材133におけるフランジ部133fの先端に取り付けられ、本体部102の先端開口部を構成する環状部材である。キャップ部150は、主体金具120と同様に、炭素鋼やステンレス鋼など、任意の鋼部材によって構成される。キャップ部150は、先端側に、その径が先端側ほど縮小するテーパー部151を有し、後端側に、主体金具120の外径とほぼ同一外径の本体部152を有する。上述したように、キャップ部150の後端側開口部の周縁部は、固定部材133のフランジ部133fに溶接接合されている。
【0031】
図2は、第1実施形態のメンブレン部135の構成を示す概略図である。
図2には、メンブレン部135の近傍領域を抜き出して拡大した概略断面図を図示してある。なお、
図2には、
図1と同様に、軸線方向ADおよび径方向RDを示す双方向矢印を図示してある。メンブレン部135は、第1と第2の膜状部材11,12を備える。第1と第2の膜状部材11,12はそれぞれ円環状の部材であり、第2の膜状部材12が第1の膜状部材11の上に積層されている。第1と第2の膜状部材11,12は、例えば、ステンレス鋼によって構成される。また、第1の膜状部材11のバネ定数K1と第2の膜状部材12のバネ定数K2とは、K1>K2の関係を有している。
【0032】
第1と第2の膜状部材11,12はそれぞれ、先端側に、軸線方向ADに伸びる先端側延伸部11f,12fを有し、後端側に、軸線方向ADに伸びる後端側延伸部11r,12rを有する。先端側延伸部11f,12fはシース管111の外周を囲む径の小さい円環を形成し、後端側延伸部11r,12rは固定部材133の先端側開口部を囲む径の大きい円環を形成する。
【0033】
第1と第2の膜状部材11,12はそれぞれ、先端側延伸部11f,12fと後端側延伸部11r,12rとの間に、中間延伸部11m,12mを有している。中間延伸部11m,12mは、先端側延伸部11f,12fおよび後端側延伸部11r,12rのそれぞれから湾曲しつつ軸線方向ADに交わる方向に延伸している部位である。このように、第1と第2の膜状部材11,12はそれぞれ、略S字状に湾曲する断面形状を有する円環状の弾性部材として構成されている。
【0034】
第1の膜状部材11は、先端側延伸部11fがシース管111の外周表面に密着し、後端側延伸部11rが固定部材133のフランジ部133fより先端側において固定部材133の外周表面に密着するように配置されている。第2の膜状部材12は、先端側延伸部12fが第1の膜状部材11の先端側延伸部11fの外周表面に密着し、後端側延伸部12rが第1の膜状部材11の後端側延伸部11rに密着するように、第1の膜状部材11の上に積層配置されている。
【0035】
本実施形態のメンブレン部135では、第1の膜状部材11の先端側延伸部11fの端部は、第2の膜状部材12の先端側延伸部12fの端部より先端側に延出している。また、第1の膜状部材11の後端側延伸部11rの端部は、第2の膜状部材12の後端側延伸部12rの端部より後端側に延出している。さらに、第1と第2の膜状部材11,12の中間延伸部11m,12m同士の間には空隙14が形成されている。
【0036】
メンブレン部135は、キャップ部150が取り付けられる前に、第1と第2の膜状部材11,12の先端側延伸部11f,12fと後端側延伸部11r,12rのそれぞれの端部においてレーザー溶接が行われている。このレーザー溶接によって、メンブレン部135の各膜状部材11,12には、各膜状部材11,12を貫通する接合部15が形成される。接合部
15は、第1と第2の膜状部材11,12同士を接合するとともに、第1の膜状部材11をシース管111及び固定部材133に接合する。各接合部15は、メンブレン部135の外周全体にわたって周状に形成されており、メンブレン部135の固定性を確保するとともに、燃焼ガスに対するメンブレン部135によるシール性を確保する。
【0037】
第1の膜状部材11を貫通する接合部15は、先端側延伸部11fおよび後端側延伸部11rにおいて第2の膜状部材12から露出している部位に形成されており、第1の膜状部材11を貫通してシース管111または固定部材133に到達している。第2の膜状部材12を貫通する接合部15は、先端側延伸部12fおよび後端側延伸部12rの端部近傍に形成されており、第2の膜状部材12を貫通して第1の膜状部材11に到達している。ただし、第2の膜状部材12の接合部15は、下層の第1の膜状部材11を貫通していない。
【0038】
このように、メンブレン部135は、接合部15によって、先端側の端部がヒータ部101に固定され、後端側の端部が主体金具120に固定された固定部材133に固定されている。メンブレン部135は、軸線方向ADの外力が付与されたときに、先端側の端部と後端側の端部との間の距離が軸線方向ADに伸縮するように弾性変形する。そのため、メンブレン部135に保持されているヒータ部101は燃焼室内における燃焼圧に応じて、本体部102に対して軸線方向ADに変位することができる。
【0039】
ここで、本実施形態のメンブレン部135は、第1と第2の膜状部材11,12が積層された二層構造を有している。そのため、メンブレン部135を単層で構成した場合よりも、メンブレン部135の耐久性が向上されているとともに、メンブレン部135による燃焼ガスに対するシール性が向上されている。また、本実施形態のメンブレン部135では、第1と第2の膜状部材11,12が一体的に積層されているため、メンブレン部135の多層化によるグロープラグ100の大型化が抑制されている。さらに、本実施形態のメンブレン部135によれば、第1の膜状部材11の本体部位が第2の膜状部材12によって直接的に燃焼ガスに曝されることが抑制されているため、第1の膜状部材11が燃焼室からの受熱によって熱膨張してしまうことが抑制されている。
【0040】
ところで、上述したように、本実施形態のメンブレン部135では、第1の膜状部材11に形成された接合部15は、第1の膜状部材11を貫通して下層のシース管111または固定部材133に到達している。一方、第2の膜状部材12に形成された接合部15は、第2の膜状部材12を貫通して下層の第1の膜状部材11に到達するものの、第1の膜状部材11を貫通していない。このように、本実施形態のメンブレン部135では、各接合部15は1層分のみを貫通するように形成されているため、比較的低い出力のレーザーで形成することができる。従って、接合の容易性が向上し、安定的な接合が確保されるとともに、接合に要するコストが低減される。
【0041】
特に、本実施形態のメンブレン部135では、第1の膜状部材11の接合部15は、第2の膜状部材12の端部から延出して露出している端部に形成されている。そのため、第1と第2の膜状部材11,12が積層配置された状態であっても、第1の膜状部材11の接合を行うことが可能である。また、第1と第2の膜状部材11,12のそれぞれを貫通する接合部15同士の位置が重なり合ってしまうことが確実に抑制されるため、接合部15同士の重なりによって、その接合強度が低下してしまうことが抑制される。
【0042】
また、本実施形態のメンブレン部135では、第1と第2の膜状部材11,12の中間延伸部11m,12m同士の間に空隙14が形成されている。メンブレン部135では、この空隙14が断熱層として機能するため、メンブレン部135が燃焼ガスに曝されたときの第2の膜状部材12の温度上昇が抑制される。また、空隙14は、第1と第2の膜状部材11,12が弾性変形するときに、第1と第2の膜状部材11,12同士の干渉を緩和する緩衝部として機能するため、メンブレン部135における弾性変形の安定性が確保される。
【0043】
以上のように、本実施形態のグロープラグ100によれば、メンブレン部135が多層化されているため、第1の膜状部材が第2の膜状部材によって直接的に燃焼ガスに曝されることが抑制され、圧力の検出精度の低下を抑制することができる。また、メンブレン部135を構成する第1と第2の膜状部材11,12の接合が容易化されているため、接合の安定性を確保でき、メンブレン部135の固定性を確保することができる。
【0044】
B.第2実施形態:
図3は、本発明の第2実施形態としてのグロープラグ100Aが備えるメンブレン部135Aの構成を示す概略断面図である。第2実施形態のメンブレン部135Aは、第1の膜状部材11の両端部を貫通する接合部15が第2の膜状部材12の先端側延伸部12fまたは後端側延伸部12rの下に配置されている点以外は、第1実施形態のメンブレン部135(
図2)とほぼ同じである。なお、第2実施形態のグロープラグ100Aの他の構成は、第1実施形態のグロープラグ100(
図1)と同じである。
【0045】
第2実施形態のメンブレン部135Aでは、第1の膜状部材11の両端の接合部15が第2の膜状部材12によって被覆されており、当該接合部15が燃焼ガスに直接的に曝されることが抑制されている。従って、第1の膜状部材11の接合部15の劣化が抑制され、第1の膜状部材11の固定性が向上される。なお、第2実施形態のメンブレン部135Aは、第1の膜状部材11に対するレーザー溶接が行われた後に、第2の膜状部材12が第1の膜状部材11の上に積層配置されてレーザー溶接されることによって製造される。
【0046】
C.第3実施形態:
図4は、本発明の第3実施形態としてのグロープラグ100Bが備えるメンブレン部135Bの構成を示す概略断面図である。第3実施形態のメンブレン部135Bは、第1と第2の膜状部材11,12の両端部がそれぞれほぼ同じ位置にあり、第1の膜状部材11の全体が第2の膜状部材12によって被覆されている点以外は、第2実施形態のメンブレン部135A(
図3)とほぼ同じである。なお、第3実施形態のグロープラグ100Bの他の構成は、第2実施形態のグロープラグ100Aと同じである。
【0047】
第3実施形態のメンブレン部135Bでは、第1の膜状部材11の全体が第2の膜状部材12によって被覆されている。従って、第1の膜状部材11の表面全体が、第2の膜状部材12によって保護されるため、メンブレン部135Bの耐久性がさらに向上する。
【0048】
D.第4実施形態:
図5は、本発明の第4実施形態としてのグロープラグ100Cが備えるメンブレン部135Cの構成を示す概略断面図である。第4実施形態のメンブレン部135Cの構成は、以下の点以外は、第3実施形態のメンブレン部135B(
図4)とほぼ同じである。第4実施形態のメンブレン部135Cでは、第2の膜状部材12の先端側延伸部12fの端部が、第1の膜状部材11の先端側延伸部11fの先端部よりも先端側に延出しており、その延出している端部においてシース管111に接合されている。
【0049】
また、第4実施形態のメンブレン部135Cでは、第2の膜状部材12は、第1の膜状部材11よりも熱膨張率が小さく、高温耐力が高い材料によって構成されている。さらに、第4実施形態のメンブレン部135Cでは、第1と第2の膜状部材11,12の中間延伸部11m,12m同士が面接触しており、空隙14が省略されている。なお、第4実施形態のグロープラグ100Cの他の構成は、第3実施形態のグロープラグ100Bと同じである。
【0050】
第4実施形態のメンブレン部135Cでは、第2の膜状部材12の先端側延伸部12fによって第1の膜状部材11の先端側の端面を含む端部全体がほぼ完全に被覆されている。そのため、第4実施形態のメンブレン部135Cによれば、第2の膜状部材12による第1の膜状部材11の保護性がさらに向上されている。また、第4実施形態のメンブレン部135Cでは、第1の膜状部材11の先端側の接合部15が、応力集中が発生しやすい中間延伸部11m,12mのシース管111側の湾曲部から離間した位置に形成されている。従って、第4実施形態のメンブレン部135Cによれば、当該接合部15が当該応力集中の影響によって劣化してしまうことが抑制される。
【0051】
さらに、第4実施形態のメンブレン部135Cでは、第1と第2の膜状部材11,12のそれぞれがシース管111に直接的に接合されている。そのため、第4実施形態のメンブレン部135Cであれば、メンブレン部135Cによるヒータ部101の保持性がさらに向上される。また、第4実施形態のメンブレン部135Cでは、接合部15によって、シース管111との間に軸線方向ADにシールラインが2重に形成される。そのため、第4実施形態のメンブレン部135Cであれば、燃焼ガスに対するシール性が向上される。加えて、第4実施形態のメンブレン部135Cでは、燃焼ガスに曝される第2の膜状部材12の熱膨張率が小さく、高温耐力が高い。そのため、第4実施形態のメンブレン部135Cであれば、高温環境下における圧力の検出精度が確保されるとともに高温環境に対する耐久性がさらに向上される。
【0052】
E.第5実施形態:
図6は、本発明の第5実施形態としてのグロープラグ100Dが備えるメンブレン部135Dの構成を示す概略断面図である。第5実施形態のメンブレン部135Dの構成は、以下の点以外は、第4実施形態のメンブレン部135C(
図5)とほぼ同じである。第5実施形態のメンブレン部135Dでは、第2の膜状部材12の後端側延伸部12rの端部が、第1の膜状部材11の後端側延伸部11rの端部よりも後端側に延出しており、その延出している端部において固定部材133に接合されている。なお、第5実施形態のグロープラグ100Dの他の構成は、第4実施形態のグロープラグ100Cと同じである。
【0053】
第5実施形態のメンブレン部135Dによれば、上述した第4実施形態のメンブレン部135Cによって得られる効果に加えて、さらに、以下のような効果が得られる。第5実施形態のメンブレン部135Dによれば、第1の膜状部材11の両端部が第2の膜状部材12によって被覆されるため、第1の膜状部材11の保護性がさらに向上される。また、第5実施形態のメンブレン部135Dによれば、第1と第2の膜状部材11,12のそれぞれが固定部材133に直接的に接合されているため、固定部材133に対するメンブレン部135Dの固定性が向上される。
【0054】
F.第6実施形態:
図7は、本発明の第6実施形態としてのグロープラグ100Eが備えるメンブレン部135Eの構成を示す概略断面図である。第6実施形態のメンブレン部135Eの構成は、第2の膜状部材12の上に、さらに、第3の膜状部材13が積層配置されている点以外は、第5実施形態のメンブレン部135D(
図6)とほぼ同じである。なお、第6実施形態のグロープラグ100Eの他の構成は、第5実施形態のグロープラグ100Dと同じである。
【0055】
第3の膜状部材13は、第1と第2の膜状部材11,12と同様に、先端側延伸部13fと、中間延伸部13mと、後端側延伸部13rと、を有する。第3の膜状部材13の先端側延伸部13fは、第1と第2の膜状部材11,12の先端側延伸部11f,12fの上に積層配置されている。第3の膜状部材13の先端側延伸部13fの端部は、第1と第2の膜状部材11,12の先端側延伸部11f,12fの端部より後端側に位置している。
【0056】
第3の膜状部材13の後端側延伸部13rは、 第1と第2の膜状部材11,12の後端側延伸部11r,12rの上に積層配置されている。第3の膜状部材13の先端側延伸部13fの端部は、第1の膜状部材11の先端側延伸部11fの端部より後端側に位置している。また、第3の膜状部材13の後端側延伸部13rの端部は、第1の膜状部材11の後端側延伸部11rの端部より先端側に位置している。
【0057】
第3の膜状部材13は、先端側延伸部13fおよび後端側延伸部13rに形成された第3の膜状部材13を厚み方向に貫通する接合部15によって、下層の第2の膜状部材12に接合されている。なお、第3の膜状部材13を貫通する接合部15は、第2の膜状部材12を貫通しておらず、第1の膜状部材11まで到達していない。
【0058】
第6実施形態のメンブレン部135Eでは、第3の膜状部材13によって第1と第2の膜状部材11,12の大部分が直接的に燃焼ガスに曝されることから保護される。また、第2と第3の膜状部材12,13を貫通する接合部15はそれぞれ、下層の第1または第2の膜状部材11,12を貫通しておらず、その接合が容易化されている。従って、第6実施形態のメンブレン部135Eによれば、燃焼室における燃焼ガスに起因する圧力の測定精度の低下が抑制されるとともに、メンブレン部135Eの耐熱性・耐久性が向上される。
【0059】
G.変形例:
G1.変形例1:
上記の各実施形態のグロープラグ100,100A〜100Eは、二層構造または三層構造のメンブレン部135,135A〜135Eを備えていたが、メンブレン部における膜状部材の積層数は、二層または三層に限定されるものではない。メンブレン部は複数の膜状部材が積層された多層構造を有していれば良い。ただし、メンブレン部では、ヒータ部101から見てn(nは自然数)+1層目に配置されている膜状部材が、n+1層目に配置されている膜状部材を厚み方向に貫通する接合部によって、n層目に配置されている膜状部材に接合されており、その接合部は、n+1層目に配置されている膜状部材を厚み方向に貫通するとともに、n層目に配置されている膜状部材の厚み方向の途中まで形成されていることが望ましい。即ち、メンブレン部では、膜状部材を貫通する接合部が、当該膜状部材の下層に隣接して配置されている膜状部材を貫通していないことが望ましい。これによって、メンブレン部における接合の容易性が向上し、メンブレン部の固定性やシール性が向上されるとともに、メンブレン部の製造コストが低減される。なお、各層の接合部は、膜状部材の積層方向に沿ってみたときに互いの位置がオフセットされて分散して形成されていることが好ましい。これによって、メンブレン部における接合部の形成位置が集中することによって、メンブレン部の耐久性が低下してしまうことを抑制できる。
【0060】
G2.変形例2:
上記の各実施形態のグロープラグ100,100A〜100Eでは、メンブレン部135,135A〜135Eは、略S字状の断面形状を有する膜状部材によって構成されていたが、メンブレン部を構成する膜状部材は略S字状の断面形状を有していなくても良い。メンブレン部を構成する膜状部材は、例えば、一方の端部が固定部材133に固定され、他方の端部がシース管111に固定された、略U字状の断面形状を有する膜状部材によって構成されていても良い。
【0061】
G3.変形例3:
上記第1実施形態および第2実施形態のグロープラグ100,100Aでは、メンブレン部135,135Aの第1の膜状部材11の先端側端部および後端側端部の両方が第2の膜状部材12の端部から延出していた。しかし、メンブレン部135,135Aの第1の膜状部材11の先端側端部および後端側端部のいずれか一方のみが第2の膜状部材12の端部から延出していても良い。
【0062】
G4.変形例4:
上記第1〜第3実施形態のグロープラグ100,100A,100Bでは、メンブレン部135,135A,135Bの第1と第2の膜状部材11,12の間に空隙14が形成されていたが、空隙14は省略されても良い。一方、上記第4〜第6実施形態のグロープラグ100C〜100Eでは、メンブレン部135C〜135Eの各膜状部材11,12,13の間には空隙14が形成されていなかったが、メンブレン部135C〜135Eの各膜状部材11,12,13の間には空隙14が形成されていても良い。
【0063】
G5.変形例5:
上記の各実施形態のグロープラグ100,100A〜100Eでは、第1と第2の膜状部材11,12のバネ定数K1,K2がK1>K2の関係を有していたが、第1と第2の膜状部材11,12のバネ定数K1,K2は、K1>K2の関係を有していなくても良い。第1と第2の膜状部材11,12のバネ定数K1,K2はK1=K2の関係を有していても良いし、K1<K2の関係を有していても良い。
【0064】
G6.変形例6:
上記の第4〜第6実施形態のグロープラグ100C〜100Eでは、第2の膜状部材12の方が第1の膜状部材11よりも熱膨張率が小さく、高温耐力が高く構成されていた。第2の膜状部材12の熱膨張率は、第1の膜状部材11と等しくても良いし、大きくても良く、第2の膜状部材12の高温耐力は、第1の膜状部材11と等しくても良いし、低くても良い。
【0065】
G7.変形例7:
上記の各実施形態のグロープラグ100,100A〜100Eでは、各接合部15はメンブレン部135,135A〜135Eの外周全体にわたって周状に形成されていたが、全ての各接合部15がメンブレン部135,135A〜135Eの外周全体にわたって周状に形成されていなくても良い。メンブレン部では、少なくとも、膜状部材とシース管111または固定部材133とを接合する接合部が、メンブレン部の外周全体にわたって周状に形成されていれば良い。
【0066】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。例えば、上記実施形態では、ヒータ部101はシース管111と発熱コイル112と絶縁粉末113とを備えるヒータによって構成されているが、ヒータ部101としてはそのような構成のヒータに限定されることはない。ヒータ部101は、例えば、セラミックヒータによって構成されても良い。より具体的には、ヒータ部101は、軸状のセラミックヒータとセラミックヒータの外周面に固定された筒状の金属製外筒との組立体によって構成されても良い。この場合には、メンブレン部は金属製外筒に取り付けられる。また、上記実施形態では、圧力検出部140はピエゾ抵抗素子によって燃焼圧を検出しているが、圧力検出部は他のセンサによって燃焼圧を検出しても良い。圧力検出部140は、例えば、圧電素子によって燃焼圧を検出しても良い。この場合には、圧電素子は伝達スリーブ132と固定部材133との間に軸方向に狭持されるように配置されても良い。