特許第6130360号(P6130360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6130360希土類ハロゲン化物を含むシンチレーション結晶、およびシンチレーション結晶を含む放射線検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130360
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】希土類ハロゲン化物を含むシンチレーション結晶、およびシンチレーション結晶を含む放射線検出システム
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/85 20060101AFI20170508BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20170508BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20170508BHJP
   G01T 1/202 20060101ALI20170508BHJP
   G01T 1/36 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C09K11/85CPF
   C09K11/00 E
   G01T1/20 B
   G01T1/202
   G01T1/36 B
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-514543(P2014-514543)
(86)(22)【出願日】2012年6月5日
(65)【公表番号】特表2014-522440(P2014-522440A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】US2012040855
(87)【国際公開番号】WO2012170390
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2014年1月21日
(31)【優先権主張番号】61/493,805
(32)【優先日】2011年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(74)【代理人】
【識別番号】100199277
【弁理士】
【氏名又は名称】西守 有人
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・アール・メンゲ
(72)【発明者】
【氏名】ウラジーミル・ウスペンスキー
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−101180(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/100645(WO,A1)
【文献】 特開平05−247462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/85
C09K 11/00
G01T 1/20
G01T 1/202
G01T 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1−y)REBr:Me2+(式中
2+はSr、Baまたはその任意の混合物を表わし、少なくとも0.0002重量%の濃度を有し;
REはLaとは異なる希土類元素を表わし;
yは0〜0.5の範囲中の値を有する)
を含む、シンチレーション結晶。
【請求項2】
(1−y)REBr:Me+2(式中
+2はSr、Baまたはその任意の混合物を表わし、少なくとも0.0002重量%の濃度を有し;
REはLaとは異なる希土類元素を表わし;
yは0〜0.5の範囲中の値を有する)
を含むシンチレーション結晶;および
シンチレーション結晶に光学的にカップルされた光検出器
を含む、放射線検出システム。
【請求項3】
(1−y)REBr(式中
EはLaとは異なる希土類元素を表わし;
yは0〜0.5の範囲中の値を有する)
を含む、シンチレーション結晶であって;
60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、−0.35%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;
2000keV〜2600keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、0.07%以下の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;
60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、0.7%以下の完全な直線性からの最も離れた逸脱についての絶対値を有すること;または
その任意の組み合わせ
を含む特性を有する、シンチレーション結晶。
【請求項4】
前記シンチレーション結晶が、
60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、−0.35%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;
2000keV〜2600keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、0.07%以下の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;
60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、0.7%以下の完全な直線性からの最も離れた逸脱についての絶対値を有すること;または
その任意の組み合わせ
を含む特性を有する、請求項1または2に記載のシンチレーション結晶または放射線検出システム。
【請求項5】
エネルギー分解能比が、異なる組成物の異なるシンチレーション結晶の異なるエネルギー分解能によって割ったシンチレーション結晶のエネルギー分解能である場合に、該エネルギー分解能比が:
60keV〜729keVの範囲中のエネルギーについて0.970以下;
122keV〜2615keVの範囲中のエネルギーについて0.950以下;
583keV〜2615keVの範囲中のエネルギーについて0.920以下;
662keV〜2615keVの範囲中のエネルギーについて0.900以下;
60keVのエネルギーについて0.985以下;
122keVのエネルギーについて0.980以下;
239keVのエネルギーについて0.980以下;
511keVのエネルギーについて0.970以下;
583keVのエネルギーについて0.970以下;
662keVのエネルギーについて0.970以下;
729keVのエネルギーについて0.970以下;
2615keVのエネルギーについて0.950以下;または
その任意の組み合わせである、
請求項1、2または3のいずれか一項に記載のシンチレーション結晶または放射線検出システム。
【請求項6】
前記シンチレーション結晶についてのエネルギー分解能が、シンチレーション結晶、光電子増倍管、シンチレーション結晶と光電子増倍管との間に配置されたウィンドウ、および光電子増倍管にカップルされたマルチチャネル分析器を使用して得られたエネルギースペクトルから決定され、
該シンチレーション結晶が64mmの直径および75mmの長さを備えた直円柱の形状を有し、該シンチレーション結晶が側面および1つの端部上で反射体により包まれ;
該ウィンドウがサファイアまたは石英を含み;
該光電子増倍管が直線集束非飽和光電子増倍管を含み;
該マルチチャネル分析器が0.25マイクロ秒の波形整形時間で双極性の波形整形を実行するように構成され;
該エネルギー分解能が、122keVで6.40%以下、662keVで2.90%以下、2615keVで1.90%以下、またはその任意の組み合わせである、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のシンチレーション結晶または放射線検出システム。
【請求項7】
前記シンチレーション結晶がSrによりドープされる、請求項1または2のいずれか一項に記載のシンチレーション結晶または放射線検出システム。
【請求項8】
前記シンチレーション結晶中のSr含有量が、少なくとも0.0002重量%、少なくとも0.0005重量%、または少なくとも0.001重量%、および0.05重量%以下、0.02重量%以下、0.03重量%以下、または0.009重量%以下である、請求項1または2のいずれか一項に記載のシンチレーション結晶または放射線検出器。
【請求項9】
60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、前記シンチレーション結晶が、−0.35%以上、−0.30%以上、−0.25%以上、−0.20%以上、または−0.16%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有する、請求項3〜8のいずれか一項に記載のシンチレーション結晶または放射線検出器。
【請求項10】
2000keV〜2600keVの放射エネルギー範囲について、前記シンチレーション結晶が、絶対値に基づいて、0.07%以下、0.05%以下、または0.03%以下の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシンチレーション結晶または放射線検出器。
【請求項11】
前記完全な直線性からの逸脱についての平均化された値(DFPLaverage)が、
【数1】
(式中、DFPL(Ei)はエネルギーEiでのDFPLであり;
Eupperはエネルギー範囲の上限であり;
Elowerはエネルギー範囲の下限である)
によって決定される、請求項9または10のいずれか一項に記載のシンチレーション結晶または放射線検出器。
【請求項12】
Eが、Ce、Eu、Pr、Tb、Ndまたはその任意の混合物を含み、yが、0.2以下、または0.09以下であり、少なくとも0.005、少なくとも0.01、または少なくとも0.02である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシンチレーション結晶または放射線検出器。
【請求項13】
EがCeであり、yは0.005から0.2の範囲内にあり、Me+2は0.0002重量%から0.02重量%の範囲内の濃度を有する、請求項1または2に記載のシンチレーション結晶または放射線検出器。
【請求項14】
前記シンチレーション結晶が、対応する非ドープシンチレーション結晶のバンドギャップエネルギーより、少なくとも0.05eV、少なくとも0.10eV、少なくとも0.15eV、または少なくとも0.20eV少ないエネルギーバンドギャップを有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシンチレーション結晶または放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、希土類ハロゲン化物を含むシンチレーション結晶、およびかかるシンチレーション結晶を含む放射線検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出システムは多様な適用において使用される。例えば、シンチレーターは、医療用画像および石油ガス産業における検層、同様に環境モニタリング、安全適用、ならびに核物理学の分析および適用のために使用することができる。放射線検出システムのために使用されるシンチレーション結晶は希土類ハロゲン化物を含むことができる。シンチレーション結晶のさらなる改善が所望される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
実施形態は一例として図示され、添付の図に限定されていない。
図1】実施形態に従う放射線検出システムのイラストを含む図である。
図2】およそ200keV〜およそ2600keVの範囲中のγ線エネルギーでのシンチレーション結晶の異なる組成物についての完全な直線性からの逸脱のイラストを含む図である。
図3】およそ60keV〜およそ356keVの範囲中のγ線エネルギーでのシンチレーション結晶の異なる組成物についての完全な直線性からの逸脱のイラストを含む図である。
図4】Srドープしたシンチレーション結晶、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶についてのエネルギーの関数としてのエネルギー分解能のプロットを含む図である。
図5】Srドープしたシンチレーション結晶、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶についてのエネルギーの関数としてのエネルギー分解能比のプロットを含む図である。
図6】Srドープしたシンチレーション結晶、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶についての放射領域を含む図である。 当業者は、図中の要素が単純性および明瞭性のために図示され、必ずしも一定の比例で描かれていないことを認識する。例えば、図中の要素のいくつかの寸法を他の要素に対して誇張して、本発明の実施形態の理解の改善を支援することができる。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の記述は図と組み合わせて提供されて、本明細書において開示される教示の理解を支援する。以下の考察は、教示の具体的な実施および実施形態に注目するだろう。この注目は教示の記載を支援するように提供され、教示の範囲または適用可能性への限界として解釈されるべきでない。
【0005】
「平均化した」という用語は、値を指す場合、平均、幾何平均または中央値を意味することが意図される。
【0006】
「対応する非ドープシンチレーション結晶」という用語は、かかる特定のシンチレーション結晶が比較されているドープしたシンチレーション結晶と、実質的に同じ割合で同じハロゲン(複数可)および希土類元素(複数可)を含む特定のシンチレーション結晶を意味することが意図される。例えば、SrドープしたLa1.9Ce0.1Brを含むドープしたシンチレーション結晶は、La1.9Ce0.1Brの対応する非ドープシンチレーション結晶を有する。ドープしたシンチレーション結晶および対応する非ドープシンチレーション結晶の各々は、検出可能な不純物の微量レベルを有することに注目されたい。しかしながら、対応する非ドープシンチレーション結晶は、シンチレーション結晶を形成する場合、個別に添加されるドーパントを含まない。
【0007】
本明細書において使用される時、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、「有する(has)」、「有すること(having)」という用語、または任意の他のこれらの変化形は、非排他的包含を網羅するように意図される。例えば、特色のリストを含むプロセス、方法、物品または機器は、必ずしもそれらの特色にのみ限定されないが、かかるプロセス、方法、物品または機器の明示的にリストされない他の特色または固有の他の特色を含み得る。さらに、相反する明示的な記載がない限り、「または」は、「包含的なまたは」を指し、「排他的なまたは」を指さない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれか1つを満たす。Aは真であり(または存在する)かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)かつBは真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方は真である(または存在する)。
【0008】
「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用を用いて、本明細書において記載される要素および成分を記載する。これは単に便宜上および本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行なわれる。この記述は1つまたは少なくとも1つを含むように解釈されるべきであり、単数であることを明らかに意味しない限り、単数は複数も含み、その逆も成立する。
【0009】
特別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。材料、方法、および例は、単に説明的なものであり、限定を意図したものではない。本明細書に記載されていない程度の、特異的な材料および加工行為をに関する多くの詳細は慣習的なものであり、シンチレーションおよび放射線検出の技術分野内のテキストブックおよび他のソースにおいて見出すことができる。
【0010】
図1は放射線検出器システム100の実施形態を図示する。放射線検出器システムは、医療用画像機器、検層機器、安全点検機器、核物理学適用または同種のものであり得る。特定の実施形態において、放射線検出システムは、γ線分析(単一陽電子放射コンピューター断層撮影法(SPECT)または陽電子放射断層撮影法(PET)分析等)のために使用することができる。
【0011】
図示された実施形態において、放射線検出システム100は、光検出器101、光学的インターフェース103およびシンチレーション装置105を含む。光検出器101、光学的インターフェース103およびシンチレーション装置105は互いと分離して図示されるが、当業者は、光検出器101およびシンチレーション装置105が、光検出器101とシンチレーション装置105との間に配置された光学的インターフェース103と共に、光学的インターフェース103へカップルされ得ることを認識するだろう。シンチレーション装置105および光検出器101は、他の公知のカップリング方法(光学ゲルもしくは結合剤の使用、または光学的にカップルする要素の分子的接着を直接介して等)により光学的インターフェース103に光学的にカップルすることができる。
【0012】
光検出器101は、光電子増倍管(PMT)、半導体ベースの光電子増倍管またはハイブリッド光検出器であり得る。光検出器101はシンチレーション装置105によって放射された光子を入力ウィンドウ116を介して受け取り、受け取った光子の数に基づいて電気的なパルスを産生することができる。光検出器101は電子モジュール130に電気的にカップルされる。電気的なパルスには、電子モジュール130によって、成形、デジタル化、解析、またはその任意の組み合わせが行われて、光検出器101または他の情報で受け取った光子の計数を提供する。電子モジュール130は、増幅器、前置増幅器、弁別器、アナログ−デジタルシグナル変換器、光子計数器、別の電子部品またはその任意の組み合わせを含むことができる。光検出器101は、光検出器101、電子モジュール130またはその組み合わせを保護することができる材料(金属、金属合金、他の材料またはその任意の組み合わせ等)から作製する管または筺体内に格納することができる。
【0013】
シンチレーション装置105はシンチレーション結晶107を含む。シンチレーション結晶107の組成物は後にこの明細書中でより詳細に記載されるだろう。シンチレーション結晶107は反射体109によって実質的に囲まれる。一実施形態において、反射体109は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シンチレーション結晶107によって放射された光の反射に適合する別の材料、またはその組み合わせを含むことができる。説明的な一実施形態において、反射体109は緩衝部材111によって実質的に囲むことができる。シンチレーション結晶107、反射体109および緩衝部材111は、ケーシング113内に格納することができる。
【0014】
シンチレーション装置105は、シンチレーション結晶107と放射線検出システム100の他の要素(光学的インターフェース103、ケーシング113、緩衝部材111、反射体109またはその任意の組み合わせ等)との間の相対的移動を減少させるように適合させた少なくとも1つの安定化機構を含む。安定化機構は、バネ119、エラストマー、別の好適な安定化機構またはその組み合わせを含むことができる。安定化機構は、シンチレーション結晶107へ横力、水平力またはその組み合わせを適用して、放射線検出システム100の1つまたは複数の他の要素と比較してその位置を安定化するように適合させることができる。
【0015】
図示されるように、光学的インターフェース103は、光検出器101とシンチレーション装置105との間にカップルされるように適合される。光学的インターフェース103は、光検出器101とシンチレーション装置105との間の光学カップリングを促進するようにも適合される。光学的インターフェース103は極性化されたポリマー(シリコーンゴム等)を含んで、シンチレーション結晶107および入力ウィンドウ116の反射指数をアライメントさせることができる。他の実施形態において、光学的インターフェース103はポリマーおよび追加の元素を含むゲルまたはコロイドを含むことができる。
【0016】
シンチレーション結晶107は希土類ハロゲン化物を含むことができる。本明細書において使用される時、希土類元素はY、Scおよびランタン系列元素を含む。一実施形態において、シンチレーション結晶107は1つまたは複数の他の希土類元素を含むことができる。したがって、シンチレーション結晶107は以下に記載されるような化学式を有することができる。
Ln(1−y)RE、式中、
Lnは希土類元素を表わし;
REは異なる希土類元素を表わし;
yは0〜1式単位(「f.u.」)中の範囲の値を有し;
Xはハロゲンを表わす。
【0017】
特定の実施形態において、Lnは、La、Gd、Luまたはそのいずれかの混合物を含むことができ;REは、Ce、Eu、Pr、Tb、Ndまたはそのいずれかの混合物を含むことができる。特定の実施形態において、シンチレーション結晶107はLa(1−y)CeBrであり得る。特定の実施形態において、LaBrおよびCeBrは記載された組成物の範囲内である。
【0018】
別のさらなる実施形態において、yは、0f.u.、少なくともおよそ0.0001f.u.、少なくとも0.001f.u.または少なくともおよそ0.05f.u.であり得る。さらなる実施形態において、yは、1f.u.、およそ0.2f.u.以下、およそ0.1f.u.以下、およそ0.05f.u以下、またはおよそ0.01f.u.以下であり得る。特定の実施形態において、yはおよそ0.01f.u.〜およそ0.1f.u.の範囲中である。Xは単一のハロゲンまたはハロゲンの任意の混合物を含むことができる。例えば、Xは、Br、Iまたはその任意の混合物を含むことができる。
【0019】
希土類ハロゲン化物は、Sr、Baまたはその任意の混合物をさらに含むことができる。一実施形態において、シンチレーション結晶中のSr、Baまたはその任意の混合物の含有量は、少なくともおよそ0.0002重量%、少なくともおよそ0.0005重量%または少なくともおよそ0.001重量%であり得る。別の実施形態において、シンチレーション結晶中のSr、Baまたはその任意の混合物の含有量は、およそ0.05重量%以下、およそ0.03重量%以下、0.02重量%以下、またはおよそ0.009重量%以下であり得る。特定の実施形態において、Sr、Baまたはその任意の混合物の含有量は、およそ0.005重量%〜およそ0.02重量%の範囲中である。
【0020】
出発材料は、同じハロゲンまたは異なるハロゲンの金属ハロゲン化物を含むことができる。例えば、希土類臭化物およびSrBrを使用することができる。別の実施形態において、臭化物含有化合物のいくつかはヨウ化物含有化合物と置き換えることができる。シンチレーション結晶のための主要な希土類ハロゲン化物および別の金属ハロゲン化物が互いがおよそ90℃で融点を有するように、出発材料を選択することができる。特定の実施形態において、互いがおよそ50℃の融点である。例えば、LaBrはおよそ785℃の融点を有し、SrBrはおよそ640℃の融点を有する。融点が互いに接近している場合、必要または所望されるならば、より多くのドーパントをシンチレーション結晶の中へ取り込むことができる。別の実施形態において、BaBr、またはSrBrおよびBaBrの任意の混合物を使用することができる。
【0021】
シンチレーション結晶は融解物から慣習的な技法を使用して形成することができる。方法はBridgman法またはCzochralski結晶成長法を含むことができる。
【0022】
Srドープした希土類ハロゲン化物を含むシンチレーション結晶、Baドープした希土類ハロゲン化物を含むシンチレーション結晶、またはSrおよびBaを共ドープした希土類ハロゲン化物を含むシンチレーション結晶は、他の希土類ハロゲン化物シンチレーション結晶と比較して、予想外の結果を提供する。より詳細には、Srドープしたシンチレーション結晶、Baドープしたシンチレーション結晶、またはSrおよびBaを共ドープしたシンチレーション結晶は、並外れて良い直線性、並外れて良いエネルギー分解能およびより低いバンドギャップエネルギーを有する。
【0023】
直線性とは、シンチレーション結晶がγ線エネルギーと光出力との間の完全な直線的比例性にどのくらい良好に近似するかを指す。直線性は完全な直線性からの逸脱として測定することができる。完全な直線性を有するシンチレーション結晶は、γ線のエネルギーにかかわらず、吸収された単位エネルギーあたり同じ数の光子を常に生成するだろう。したがって、完全な直線性からの逸脱は0である。異なる希土類ハロゲン化物の間の完全な直線性からの逸脱は、より高いエネルギーについてよりも、より低いエネルギーでより有意である。より高いエネルギーのγ線(例えば2000keVを超える)はシンチレーション結晶にヒットし、今度はそれはより低いエネルギーのγ線(例えば300keV未満)を生成し得る。シンチレーション結晶がより低いエネルギーγ線でより少ないシンチレーション光を生成するならば、シンチレーション結晶の直線性は劣る。したがって、より低いエネルギー(300keV未満等)でのγ線へシンチレーション結晶の反応は、より高いγ線エネルギーでの反応よりも直線性に対してより有意であり得る。
【0024】
完全な直線性からの逸脱は以下のように決定することができる。異なるγ線エネルギーへの反応についてのデーターはγ線エネルギーの範囲にわたって収集される。例えば、γ線エネルギーの範囲は60keV〜6130keVであり得る。範囲はより狭く(例えば60keV〜2600keV)てもよい。範囲に対する下限は60keVとは異なり得る。範囲についての下限は、60keV未満(例えば20keVまたは40keV)、または60keVを超える(例えば100または200keV)ことができる。本明細書を読了した後には、当業者は特定の適用のためのエネルギー範囲を選択することができるだろう。
【0025】
データーを収集した後、最小二乗フィッティングを使用して線形方程式を生成し、それは以下の方程式である。
【数1】
式中、
calcは計算されたエネルギーであり;
PHはパルス高(光出力)であり;
mは線の勾配(フィッティング係数)である。
【0026】
エネルギーが0である場合、線は0のパルス高さ(光出力がない)に対応するポイント(0、0)を介して通過することに注目されたい。したがって、線が完全な直線性に対応する場合、Y軸オフセットはない。特定のγ線エネルギーについて、完全な直線性(「DFPL」)からの偏差は以下の方程式によって決定される。
【数2】
式中、Eactualは光出力に対応する実際のγ線エネルギーであり、Ecalcは光出力を使用して計算されたものである。
【0027】
DFPLデーターポイントのセットについては、平均化された値、最大の正の偏差、最大の負の偏差、最大偏差、前述のもののいずれかの絶対値、またはその任意の組み合わせを得ることができる。平均化された値は平均、中央値または幾何平均値であり得る。特定の実施形態において、平均DFPLは以下の方程式3に従って積分を使用して決定することができる。
【数3】
式中、DFPL(Ei)はエネルギーEでのDFPLであり;
upperはエネルギー範囲の上限であり;
lowerはエネルギー範囲の下限である。
【0028】
60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、希土類ハロゲン化物シンチレーター結晶は、およそ−0.35%以上、およそ−0.30%以上、またはおよそ−0.25%以上、およそ−0.20%以上、またはおよそ−0.16%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有することができる。2000keV〜2600keVの放射エネルギー範囲について、完全な直線性からの逸脱が放射エネルギー範囲内で0.00%を通過し得るので、完全な直線性からの逸脱についての平均化された値は絶対値に基づき得る。したがって、2000keV〜2600keVの放射エネルギー範囲について、希土類シンチレーション結晶は、絶対値に基づいて、およそ0.07%以下、およそ0.05%以下、またはおよそ0.03%以下の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有する。
【0029】
特定の実施形態において、平均化された値は上記のDFPLaverage(方程式3)であり得る。60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、希土類ハロゲン化物シンチレーション結晶は、およそ0.70%以下、およそ0.65%以下、およそ0.65%以下、およそ0.60%以下、およそ0.55%以下、またはおよそ0.50%以下の完全な直線性からの最も離れた逸脱についての絶対値を有する。
【0030】
シンチレーション結晶は、予想外に良好なエネルギー分解能特性(エネルギー分解能、エネルギー分解能比および可能性のある他の関連する特性等)も有することができる。以下のパラグラフ中で、エネルギー分解能およびエネルギー分解能比はより詳細に検討される。
【0031】
エネルギー分解能は、パーセントとして表現された、ピークに対応するエネルギーによって割った半値全幅(「FWHM」)でのエネルギー範囲である。エネルギー分解能についてのより低い数値は、ピークをより容易に分解できることを意味する。エネルギー分解能についての値は、サンプル、計測装置および測定法に応じるだろう。一実施形態において、エネルギー分解能についての測定は、およそ64mm(2.5インチ)の直径およびおよそ75mm(3インチ)の長さを備えた直円柱であるシンチレーション結晶に対して実行することができる。特定の実施形態において、側面および1つの円形表面は0.85ミクロンの二乗平均平方根粗さまで粗くすることができ、別の特定の実施形態において、各結晶の他の円形表面は平滑にされ、シンチレーション光のための光出口として供することができる。別の実施形態において、結晶は側面および1つの端部上で反射体により包むことができる。特定の実施形態において、反射体は鏡面反射体または拡散反射体であり得る。例えば、反射体は、アルミホイル、アルミニウム処理されたポリエステル(例えばアルミニウム処理されたMylar(商標)−ブランドポリエステル)またはポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)シート反射体を含むことができる。別の実施形態において、シンチレーション結晶は、シンチレーション光がサファイアウィンドウまたは石英ウィンドウを介して通過するハウジング中に設置することができる。
【0032】
ハウジングに格納されたシンチレーション結晶は光電子増倍管へ接続することができる。一実施形態において、光電子増倍管は直線集束非飽和光電子増倍管であり得る。非飽和によって、光電子増倍管は、有意に高い率で光電子増倍管の光電陰極にぶつかる光子により有意に多くの電子が生成され得るモードにおいて作動する。例示的な光電子増倍管は、Uxbridge、英国のET Enterprises Ltd.から得ることができ、モデル9305を900Vで運転する。1つまたは複数の所望される同位体は、各結晶パッケージの中央面からひとつずつおよそ150mm(6インチ)だけ離れて設置することができる。各同位体および各結晶のエネルギースペクトルは、0.25マイクロ秒の波形整形時間で双極性の波形整形を実行するマルチチャネル分析器から得ることができる。例示的なマルチチャネル分析器は、Meriden CTのCanberra Industries Inc.から得ることができる、双極性の波形整形、0.25マイクロ秒の波形整形時間および11ビットのデジタル変換を有するモデルAptec S5008である。
【0033】
本明細書を読了した後には、当業者は、サンプル調製、計測装置および測定技法が変化されるならば、得られるエネルギー分解能値が変化し得ることを認識するだろう。以下に記載されたエネルギー分解能値は、異なるサンプルの間のエネルギー分解能値のより正確な比較を提供するように、従来記載されたサンプル調製、計測装置および測定条件を使用して得ることができる。
【0034】
122keVで、エネルギー分解能はおよそ6.40%以下、およそ6.35%以下、およそ6.30%以下、およそ6.20%以下、およそ6.10%以下である。特定の実施形態において、122keVで、エネルギー分解能はおよそ6.00%以下である。662keVで、エネルギー分解能は、およそ2.90%以下、およそ2.85%以下、およそ2.80%以下、およそ2.75%以下、またはおよそ2.70%以下である。特定の実施形態において、662keVで、エネルギー分解能はおよそ2.65%以下である。2615keVで、エネルギー分解能は、およそ1.90%以下、およそ1.85%以下、およそ1.80%以下、およそ1.75%以下、またはおよそ1.70%以下である。特定の実施形態において、2615keVで、エネルギー分解能はおよそ1.65%以下である。
【0035】
エネルギー分解能比(「ER比」)を使用して、特定のエネルギーについての材料の異なる組成物またはエネルギーの範囲のエネルギー分解能を比較することができる。ER比は、実質的に同じ結晶サイズならびに計測装置および技法を使用してER比を得ることができるので、エネルギー分解能とは対照的に、良好な比較を可能にすることができる。したがって、サンプルサイズならびに計測装置および技法に基づいた変動は実質的に取り除くことができる。
【0036】
一実施形態において、ER比は、実質的に同じエネルギーまたはエネルギーの範囲での別の結晶のエネルギー分解能によって割った、特定のエネルギーまたはエネルギーの範囲での特定の結晶のエネルギー分解能であり、そこで結晶はおよそ同じサイズを有し、結晶についてのエネルギースペクトルは同じかまたは実質的に同一の計測装置および技法を使用して得られる。本明細書において記載される組成物を有する特定のシンチレーション結晶を異なる組成物を有する異なるシンチレーション結晶に対して比較する場合、ER比は予想外に低く、それはエネルギーピークのより正確な検出を可能にする。特定のエネルギー範囲についてのシンチレーション結晶を比較する場合、ER比は、60keV〜729keVの範囲中のエネルギーについておよそ0.970以下、122keV〜2615keVの範囲中のエネルギーについておよそ0.950以下、583keV〜2615keVの範囲中のエネルギーについておよそ0.920以下、662keV〜2615keVの範囲中のエネルギーについておよそ0.900以下、またはその任意の組み合わせであり得る。特定のエネルギーについてのシンチレーション結晶を比較する場合、ER比は、60keVのエネルギーについておよそ0.985以下、122keVのエネルギーについておよそ0.980以下、239keVのエネルギーについておよそ0.980以下、511keVのエネルギーについておよそ0.970以下、583keVのエネルギーについておよそ0.970以下、662keVのエネルギーについておよそ0.970以下、729keVのエネルギーについておよそ0.970以下、もしくは2615keVのエネルギーについておよそ0.950以下、またはその任意の組み合わせであり得る。
【0037】
ER比は、Srドープしたシンチレーション結晶、Baドープしたシンチレーション結晶、Mgドープしたシンチレーション結晶、Znドープしたシンチレーション結晶、および非ドープLn(1−y)REシンチレーション結晶について得ることができる。Srドープしたシンチレーション結晶およびZnドープしたシンチレーション結晶(Sr/Zn)ならびにSrドープしたシンチレーション結晶および非ドープシンチレーション結晶(Sr/非ドープ)についてのER比は、従来記載された特定のエネルギーおよびエネルギー範囲についてのER比値のいずれかまたはすべてを満たすことができる。Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶(Zn/非ドープ)についてのER比は、特定のエネルギーおよびエネルギー範囲について従来記載されたER比値のいずれかを満たさない。非ドープシンチレーション結晶に比較した時に、Mgドープしたシンチレーション結晶およびZnドープしたシンチレーション結晶の各々は1未満のER比を有するが、そのER比はちょうどわずかに1未満である。したがって、Mgドープしたシンチレーション結晶およびZnドープしたシンチレーション結晶は、非ドープシンチレーション結晶と比較して、エネルギー分解能の改善に関して有意でない改善のみを有する。
【0038】
シンチレーション結晶は、対応する非ドープシンチレーション結晶の蛍光ピークに対応する波長より少なくともおよそ20nm大きい波長で蛍光ピークを有することができる。一実施形態において、Srドープしたシンチレーション結晶、Baドープしたシンチレーション結晶、またはSrおよびBaを共ドープしたシンチレーション結晶は、対応する非ドープシンチレーション結晶の蛍光ピークに対応する波長よりおよそ25nm〜およそ50nmの範囲で大きい波長で蛍光ピークを有する。特定の実施形態において、Srドープしたシンチレーション結晶、Baドープしたシンチレーション結晶、またはSrおよびBaを共ドープしたシンチレーション結晶は、およそ355nm〜およそ360nmの範囲中の波長で蛍光ピークを有する対応する非ドープシンチレーション結晶(すなわちSrドープしたシンチレーション結晶、Baドープしたシンチレーション結晶、またはSrおよびBaを共ドープしたシンチレーション結晶と本質的に同じハロゲン(複数可)および希土類元素(複数可)からなるシンチレーション結晶)と比較して、およそ375nm〜およそ380nmの範囲中の波長で蛍光ピークを有することができる。光検出器は青色光または緑色光に対してより感受性であり得、したがってかかる光検出器は、非ドープシンチレーション結晶と比較して、Srドープしたシンチレーション結晶、Baドープしたシンチレーション結晶、またはSrおよびBaを共ドープしたシンチレーション結晶についてより高い量子効率を有することができる。
【0039】
シンチレーション結晶は、対応する非ドープシンチレーション結晶のバンドギャップエネルギーより少なくともおよそ0.05eV少ないエネルギーバンドギャップを有することができる。一実施形態において、シンチレーション結晶は、対応する非ドープシンチレーション結晶のバンドギャップエネルギーより、少なくともおよそ0.10eV、少なくともおよそ0.15eV、または少なくとも0.20eV少ないエネルギーバンドギャップを有することができる。特定の実施形態において、Srドープしたシンチレーション結晶はおよそ3.26eV〜およそ3.31eVの範囲中のバンドギャップエネルギーを有し、対応する非ドープシンチレーション結晶はおよそ3.44eV〜およそ3.49eVの範囲中のバンドギャップエネルギーを有する。より低いバンドギャップエネルギーを備えたシンチレーション結晶は、より高いバンドギャップエネルギーを備えたシンチレーション結晶と比較して、同じエネルギーのγ線についてより多くのシンチレーション光が産生されることを可能にする。
【0040】
様々な態様および実施形態が可能である。それらの態様および実施形態のうちのいくつかが本明細書において記載される。本明細書を読了した後には、当業者は、それらの態様および実施形態が説明のみであり、本発明の範囲を限定しないことを認識するだろう。加えて、当業者は、デジタル回路を使用してアナログ回路を含むいくつかの実施形態を同様に実施することができ、その逆も成立するということを理解するだろう。
【0041】
第1の態様において、シンチレーション結晶はLn(1−y)RE:Me2+を含むことができ、式中、Lnは希土類元素を表わし、Me2+はSr、Baまたはその任意の混合物を表わし、少なくともおよそ0.0002重量%の濃度を有し、REは異なる希土類元素を表わし、yは0〜1の範囲中の値を有し、Xはハロゲンを表わす。
【0042】
第2の態様において、放射線検出システムは、Ln(1−y)RE:Me+2を含むシンチレーション結晶を含むことができ、式中、Lnは希土類元素を表わし、Me+2はSr、Baまたはその任意の混合物を表わし、少なくともおよそ0.0002重量%の濃度を有し、REは異なる希土類元素を表わし、yは0〜1の範囲中の値を有し、Xはハロゲンを表わす。放射線検出システムは、シンチレーション結晶に光学的にカップルされた光検出器をさらに含むことができる。
【0043】
シンチレーション結晶はLn(1−y)RE:Me2+を含むことができ、式中、Lnは希土類元素を表わし、REは異なる希土類元素を表わし、yは0〜1の範囲中の値を有し、Xはハロゲンを表わし、Srは少なくともおよそ0.0002重量%の濃度を有する。
【0044】
第2の態様において、放射線検出システムは、シンチレーション結晶、およびシンチレーション結晶に光学的にカップルされた光検出器を含むことができる。シンチレーション結晶はLn(1−y)RE:Srを含むことができ、式中、Lnは希土類元素を表わし;REは異なる希土類元素を表わし;yは0〜1の範囲中の値を有し;Xはハロゲンを表わし;Srは少なくともおよそ0.0002重量%の濃度を有する。
【0045】
第3の態様において、シンチレーション結晶はLn(1−y)REを含むことができ、式中、Lnは希土類元素を表わし、REは異なる希土類元素を表わし、yは0〜1の範囲中の値を有し、Xはハロゲンを表わす。シンチレーション結晶は、60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、およそ−0.35%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;2000keV〜2600keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、およそ0.07%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、およそ0.7%以下の完全な直線性からの最も離れた逸脱についての絶対値を有すること;122keVでおよそ6.35%以下のエネルギー分解能;662keVでおよそ2.90%以下のエネルギー分解能;2615keVでおよそ1.90%以下のエネルギー分解能;またはその任意の組み合わせを含む特性を有することができる。
【0046】
第4の態様において、シンチレーション結晶はLn(1−y)REを含むことができ、式中、Lnは希土類元素を表わし、REは異なる希土類元素を表わし、yは0〜1の範囲中の値を有し、Xはハロゲンを表わす。エネルギー分解能比は、異なる組成物を有する異なるシンチレーション結晶の異なるエネルギー分解能によって割ったシンチレーション結晶のエネルギー分解能である。エネルギー分解能比は、範囲の60〜729keVの範囲中のエネルギーについておよそ0.970以下、122keV〜2615keVの範囲中のエネルギーについておよそ0.950以下、583keV〜2615keVの範囲中のエネルギーについておよそ0.920以下、662keV〜2615keVの範囲中のエネルギーについておよそ0.900以下、60keVのエネルギーについておよそ0.985以下、122keVのエネルギーについておよそ0.980以下、239keVのエネルギーについておよそ0.980以下、511keVのエネルギーについておよそ0.970以下、583keVのエネルギーについておよそ0.970以下、662keVのエネルギーについておよそ0.970以下、もしくは729keVのエネルギーについておよそ0.970以下、2615keVのエネルギーについておよそ0.950以下、またはその任意の組み合わせであり得る。
【0047】
前述の態様および実施形態のうちのいずれかの特定の実施形態において、シンチレーション結晶は、60keVのエネルギーについておよそ0.985以下、およそ0.975以下またはおよそ0.965以下;122keVのエネルギーについておよそ0.980以下、およそ0.950以下またはおよそ0.920以下;239keVのエネルギーについておよそ0.990以下、およそ0.960以下またはおよそ0.940以下;511keVのエネルギーについておよそ0.970以下、およそ0.930以下またはおよそ0.900以下;583keVのエネルギーについておよそ0.980以下、およそ0.940以下またはおよそ0.920以下;662keVのエネルギーについておよそ0.970以下、およそ0.910以下またはおよそ0.880以下;729keVのエネルギーについておよそ0.970以下、およそ0.910以下またはおよそ0.880以下;2615keVのエネルギーについておよそ0.950以下、およそ0.850以下またはおよそ0.810以下;またはその任意の組み合わせのエネルギー分解能比を有する。
【0048】
前述の態様および実施形態のうちのいずれかの別の特定の実施形態において、シンチレーション結晶についてのエネルギー分解能は、シンチレーション結晶、光電子増倍管、シンチレーション結晶と光電子増倍管との間に配置されたウィンドウ、および光電子増倍管にカップルされたマルチチャネル分析器を使用して得られたエネルギースペクトルから決定することができる。さらに、シンチレーション結晶はおよそ64mmの直径およびおよそ75mmの長さを備えた直円柱の形状を有し、シンチレーション結晶は側面および1つの端部上で反射体により包まれ、ウィンドウはサファイアまたは石英を含み、光電子増倍管は直線集束非飽和光電子増倍管を含み、マルチチャネル分析器は0.25マイクロ秒の波形整形時間で双極性の波形整形を実行するように構成される。多くの特定の実施形態において、エネルギー分解能は、122keVでおよそ6.40%以下、662keVでおよそ2.90%以下、2615keVでおよそ1.90%以下、またはその任意の組み合わせである。
【0049】
多くの特定の実施形態において、エネルギー分解能は、122keVでおよそ6.40%以下、およそ6.30%以下、またはおよそ6.20%以下、およそ6.10%以下、またはおよそ6.00%以下である。別のさらに特定の実施形態において、エネルギー分解能は、662keVでおよそ2.90%以下、およそ2.85%以下、およそ2.80%以下、およそ2.75%以下、およそ2.70%以下であるか、または662keVでおよそ2.65%以下である。さらにより特定の実施形態において、エネルギー分解能は、2615keVでおよそ1.90%以下、およそ1.85%以下、およそ1.80%以下、およそ1.75%以下、およそ1.70%以下であるか、または2615keVでおよそ1.65%以下である。
【0050】
第1の態様の一実施形態において、シンチレーション結晶は、60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、およそ−0.35%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;2000keV〜2600keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、絶対値に基づいて、およそ0.07%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;または60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、およそ0.7%以下の完全な直線性からの最も離れた逸脱についての絶対値を有すること;122keVでおよそ6.35%以下のエネルギー分解能;662keVでおよそ2.90%以下のエネルギー分解能;2615keVでおよそ1.90%以下のエネルギー分解能;またはその任意の組み合わせを含む特性を有する。
【0051】
第2の態様の一実施形態において、シンチレーション結晶は、60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、およそ−0.35%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;2000keV〜2600keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、絶対値に基づいて、およそ0.07%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有すること;60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶が、およそ0.7%以下の完全な直線性からの最も離れた逸脱についての絶対値を有すること;122keVでおよそ6.35%以下のエネルギー分解能;662keVでおよそ2.90%以下のエネルギー分解能;2615keVでおよそ1.90%以下のエネルギー分解能;またはその任意の組み合わせを含む特性を有する。
【0052】
前述の態様および実施形態のうちのいずれかのさらなる特定の実施形態において、放射線検出システムは医療用画像システムである。別のさらなる特定の実施形態において、シンチレーション結晶はSrによりドープされる。より特定の実施形態において、シンチレーション結晶中のSr含有量は、少なくともおよそ0.0002重量%、少なくともおよそ0.0005重量%、または少なくともおよそ0.001重量%であり、別のより特定の実施形態において、シンチレーション結晶中のSr含有量は、およそ0.05重量%以下、およそ0.03重量%以下、0.02重量%以下、またはおよそ0.009重量%以下である。
【0053】
前述の態様および実施形態のうちのいずれかの別の特定の実施形態において、60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶は、およそ−0.35%以上、およそ−0.30%以上、またはおよそ−0.25%以上、およそ−0.20%以上、またはおよそ−0.16%以上の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有する。別の特定の実施形態において、2000keV〜2600keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶は、絶対値に基づいて、およそ0.07%以下、およそ0.05%以下、またはおよそ0.03%以下の完全な直線性からの逸脱についての平均化された値を有する。
【0054】
より特定の実施形態において、完全な直線性からの逸脱についての平均化された値は以下のものによって決定される。
【数4】
式中、
DFPL(Ei)はエネルギーEでのDFPLであり;
upperはエネルギー範囲の上限であり;
lowerはエネルギー範囲の下限である。
【0055】
さらに別の特定の実施形態において、60keV〜356keVの放射エネルギー範囲について、シンチレーション結晶は、およそ0.70%以下、およそ0.65%以下、またはおよそ0.60%以下、またはおよそ0.55%以下、またはおよそ0.50%以下の完全な直線性からの最も離れた逸脱についての絶対値を有する。
【0056】
前述の態様および実施形態のうちのいずれかの別の特定の実施形態において、Lnは、La、Gd、Luまたはその任意の組み合わせを含む。さらに別の特定の実施形態において、REは、Ce、Eu、Pr、Tb、Ndまたはその任意の組み合わせを含む。さらに別の特定の実施形態において、yは、およそ0.5以下、およそ0.2以下、またはおよそ0.09以下である。さらに特定の実施形態において、yは、少なくともおよそ0.005、少なくともおよそ0.01、または少なくともおよそ0.02である。なおさらなる実施形態において、LnはLaであり、REはCeであり、XはBrである。特定の実施形態において、yは0.2f.u.である。
【0057】
前述の態様および実施形態のうちのいずれかの別の特定の実施形態において、シンチレーション結晶は、第1の波長で第1の蛍光ピークおよび第2の波長で第2の蛍光ピークを放射することができ、そこで第2の波長は第1の波長より少なくともおよそ15nm大きい。より特定の実施形態において、第2の波長は、第1の波長よりおよそ20nm〜およそ40nmの範囲で大きい。さらに特定の実施形態において、シンチレーション結晶は、対応する非ドープシンチレーション結晶のバンドギャップエネルギーより、少なくともおよそ0.05eV、少なくともおよそ0.10eV、少なくともおよそ0.15eV、または少なくとも0.20eV少ないエネルギーバンドギャップを有する。
【実施例】
【0058】
本明細書において記載される概念は、実施例中でさらに記載され、それは、請求項中で記載される本発明の範囲を限定しない。実施例は異なる組成物のシンチレーション結晶の性能を実証する。この実施例セクションにおいて開示されるような数値は便宜上近似または四捨五入することができる。
【0059】
シンチレーター結晶は、LaBr、CeBr、およびもしドープされればSrBr、BaBr、MgBrまたはZnBrを使用して、開口るつぼから形成された。ZnBrがおよそ700℃でおよそ大気圧で昇華するので、多すぎる格子欠陥がないシンチレーション結晶を形成するために、シンチレーション結晶についての溶融組成物がREBr結晶の緩慢な成長段階の間にZnBrの昇華点を超えた温度で維持されるように、結晶の中へZnを取り込むことは難しかった。シンチレーション結晶は表1中に記載されるような以下の組成物を有していた。
【0060】
【表1】
【0061】
シンチレーション結晶は、直線性、エネルギー分解能およびバンドギャップエネルギーについて解析された。直線性およびエネルギー分解能は部分的にエネルギースペクトルデーターから得られた。シンチレーション結晶はパラメータまたは元素およそ64mm(2.5インチ)の直径およびおよそ75mm(3インチ)の長さを備えた直円柱であった。側面および1つの円形表面を粗くし、シンチレーション光の収集を促進する。表面は0.85ミクロンの二乗平均平方根粗さと特徴づけられた。各結晶の他の円形表面は平滑にされ、シンチレーション光のための光出口として働いた。次いで、結晶は側面および1つの端部上でおよそ0.5mm(0.02インチ)のテフロン(登録商標)シート反射体により包まれた。光出口はおよそ1.5mm(0.06インチ)の厚みの透明なシリコーンゴムへインターフェースされた。包まれインターフェースされた結晶はサファイアウィンドウを備えたチタンハウジングの中へ挿入された。ハウジングを溶接により閉鎖し、気密にした。この結晶パッケージは、光電子増倍管(Uxbridge、英国のET Enterprises Ltd.、モデル9305を900Vで運転する)へインターフェースされた。同位体を放射する複数のγ線への結晶反応が測定された。これらの同位体は214Am、133Ba、57Co、137Csおよび228Thを含み、60、81、122、239、356、662、583、727、861、2104および2615keVでγ線光電ピークを産生する。同位体は各結晶パッケージの中央面からひとつずつおよそ150mm(6インチ)だけ離れて設置された。各同位体および各結晶のエネルギースペクトルは、マルチチャネル分析器(Meriden CTのCanberra Industries Inc.、モデルAptec S5008、双極性波形整形、0.25マイクロ秒の波形整形時間、11ビットのデジタル変換)を使用して得られた。
【0062】
図2および3は、表1中で記載される組成物を有するシンチレーション結晶についてのγ線エネルギーの関数として完全な直線性からの逸脱のプロットを含む。DPFL値は従来記載された方法論を用いて決定される。Srドープしたシンチレーション結晶は、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶と比較して、有意により少ない完全な直線性からの逸脱を有する。
【0063】
図2は、およそ200keV〜およそ2600keVの範囲中のγ線エネルギーについての完全な直線性からの逸脱を図示する。2000keVを超えるエネルギーで、Srドープしたシンチレーション結晶は、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶の各々と比較して、より低いDFPLaverageを有する。およそ2000keV〜およそ2600keVのエネルギー範囲について、基準のシンチレーション結晶は+0.091%のDFPLaverageを有し、Znドープしたシンチレーション結晶は+0.073%のDFPLaverageを有する。同じエネルギー範囲について、Srドープしたシンチレーション結晶は+0.030%の最低DFPLaverageを有し、したがってSrドープしたシンチレーション結晶は、2000keV〜2600keVのγ線エネルギーについて、基準のシンチレーション結晶およびZnドープしたシンチレーション結晶よりも有意に良好である。
【0064】
1500keVより下で、基準のシンチレーション結晶は、γ線エネルギーがより小さくなるにつれて有意により大きくなる完全な直線性からの逸脱を有する。Znドープしたシンチレーション結晶は同様に有意な逸脱を有するが、有意な逸脱はおよそ300keVで起こる。およそ356keV以下の特定のγ線エネルギーについて、Srドープしたシンチレーション結晶は、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶と比較して、0に有意に接近する、完全な直線性からの逸脱を有する。
【0065】
以前に論じられたように、より高いエネルギーのγ線がシンチレーター結晶と衝突し、より低いエネルギーのγ線をもたらすことができるので、完全な直線性からの逸脱はより低いγ線エネルギーでより有意である。図3は、およそ60keV〜およそ356keVの範囲中のγ線エネルギーに曝露された場合のシンチレーション結晶について回収されたデーターを含む。DFPLaverageは方程式3を使用して決定される。
【0066】
【表2】
【0067】
およそ60keV〜およそ356keVのγエネルギー範囲について、基準のシンチレーション結晶は−0.64%のDFPLaverageを有し、最も離れたDFPLは60keVで起こる−1.11%(1.11%の絶対値)である。同じγエネルギー範囲について、Znドープしたシンチレーション結晶は−0.39%のDFPLaverageを有し、最も離れたDFPLは60keVで起こる−0.73%(0.73%の絶対値)である。Srドープしたシンチレーション結晶は−0.16%のDFPLaverageを有し、最も離れたDFPLは60keVで起こる−0.47%(0.47%の絶対値)である。したがって、Srドープしたシンチレーション結晶は、基準シンチレーション結晶およびZnドープしたシンチレーション結晶の各々と比較して、有意により良好であり、完全な直線性からのより少ない逸脱を有する。
【0068】
エネルギー分解能(「ER」)は、従来記載されたようなサンプルおよび装置を使用して回収されたデーターから得られる。エネルギー分解能比(「ER」比)は、特定のエネルギーまたはエネルギーの範囲について、別のサンプルのエネルギー分解能によって割った特定のサンプルのエネルギー分解能の比である。表3は非ドープ結晶、Srドープした結晶およびZnドープした結晶についてのエネルギー分解能データーを含み、表4は非ドープ結晶、Baドープした結晶およびMgドープした結晶についてのエネルギー分解能データーを含む。
【0069】
【表3】
【0070】
追加のシンチレーション結晶が形成され、662keVでエネルギー分解能について評価された。2つの追加のSrドープしたシンチレーション結晶について、エネルギー分解能は両方について2.70%であり、52の追加の基準のシンチレーション結晶については、シンチレーション結晶についてのエネルギー分解能は0.13%の標準偏差で3.02%であった。
【0071】
【表4】
【0072】
データーは、Srドープしたシンチレーション結晶およびBaドープしたシンチレーション結晶が、非ドープシンチレーション結晶、Mgドープしたシンチレーション結晶およびZnドープしたシンチレーション結晶に比較して、エネルギー分解能を有意に改善したことを実証する。したがって、Sr、BaならびにSrおよびBaの任意の混合物はドーパントとして良好に適合して、希土類ハロゲン化物のエネルギー分解能を改善する。
【0073】
図4は、Srドープしたシンチレーション結晶、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶についての60〜729keVの範囲中のエネルギーの関数としてのエネルギー分解能のプロットを含む。Srドープしたシンチレーション結晶は、Znドープしたシンチレーション結晶および非ドープシンチレーション結晶と比較して、優れたエネルギー分解能を明らかに有する。基準のシンチレーション結晶に対するSrドープしたシンチレーション結晶についてのエネルギー分解能における改善は、Znドープしたシンチレーション結晶と基準のシンチレーション結晶との間の差異より少なくとも4倍大きい。特に、122keVで、Srドープしたシンチレーション結晶のエネルギー分解能は、基準のシンチレーション結晶のエネルギー分解能よりも0.63%少ないが、Znドープしたシンチレーション結晶のエネルギー分解能は、基準のシンチレーション結晶のエネルギー分解能よりも0.10%小さいだけである。662keVで、Srドープしたシンチレーション結晶のエネルギー分解能は、基準のシンチレーション結晶のエネルギー分解能よりも0.36%少ないが、Znドープしたシンチレーション結晶のエネルギー分解能は、基準のシンチレーション結晶のエネルギー分解能よりも0.06%小さいだけである。2615keVで、Srドープしたシンチレーション結晶のエネルギー分解能は、基準のシンチレーション結晶のエネルギー分解能よりも0.40%少ないが、Znドープしたシンチレーション結晶のエネルギー分解能は、基準のシンチレーション結晶のエネルギー分解能よりも0.09%小さいだけである。他のエネルギーで、Srドープしたシンチレーション結晶は、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶と比較して、より小さいエネルギー分解能を有する。エネルギー分解能の改善は、ピークをより迅速かつ正確に分解することができ、バックグラウンドノイズに起因するピークの検出とピーク非検出との間の差を得ることができることを意味する。
【0074】
表3および図5は、Srドープしたシンチレーション結晶、Znドープしたシンチレーション結晶、および基準のシンチレーション結晶を比較した場合のER比に関連する情報を含む。特定の比較は、Srドープしたシンチレーション結晶とZnドープしたシンチレーション結晶、Srドープしたシンチレーション結晶と基準のシンチレーション結晶、およびZnドープしたシンチレーション結晶と基準のシンチレーション結晶との間で行われる。ER比を使用する場合、他のシンチレーション結晶と比較して、特定のタイプのシンチレーション結晶はより良好なエネルギー分解能を有するだろう。ER比の使用によって、2つの異なるシンチレーション結晶の間の比較は、エネルギー分解能のみの使用とは対照的に、より少ないエネルギーへの依存性を有するに違いない。
【0075】
図5中で理解できるように、Srドープしたシンチレーション結晶のER比は、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶よりも有意に良好である。Sr/基準についてER比は60keVで0.961であり、729keVで0.878に減少し、2615keVでわずか0.801である。Srドープしたシンチレーション結晶とは異なり、Znドープしたシンチレーション結晶は、基準のドープしたシンチレーション結晶と比較してわずかにだけ改善される。Zn/基準についてのER比は239keVで約1であり、60〜729keVの範囲中のエネルギーについては、511keVでやっと0.972に到達する。高いエネルギーでさえ(2615keVで等)、Zn/基準についてのER比は、0.960の低さに到達する。
【0076】
シンチレーション結晶の発光スペクトルについてのデーターを得て、図6中に図示する。Srドープしたシンチレーション結晶は375〜380nmの範囲中で波長でピーク放射強度を有し、より短い波長では有意なピークを有していない。Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶は350〜360nmでピーク放射強度を有する。多くの光検出器は、紫外線放射と比較して、青色光および緑色光についてのより高い量子効率を有する。したがって、Srドープしたシンチレーション結晶は、Znドープしたシンチレーション結晶および基準のシンチレーション結晶と比較して、多くの放射線検出器により良好に適している。
【0077】
概要または実施例における上記の作用のすべてが要求されるとは限らないこと、特定の作用の一部は要求されなくてもよいこと、および1つまたは複数のさらなる作用が記載されたものに加えて実行されてもよいことに注目されたい。なおさらに、作用がリストされる順序は必ずしもそれらが実行される順序ではない。
【0078】
明確にするために分離した実施形態のコンテキストで本明細書において記載される特定の特色が、単一の実施形態における組み合わせでも提供され得る。反対に、簡潔さのために単一の実施形態のコンテキストで記載される様々な特色は、分離してまたは任意の小組み合わせでも提供され得る。さらに、範囲中に明示される値への参照は、その範囲内の各々の値およびすべての値を含む。
【0079】
利益、他の利点および問題に対する解決は、特定の実施形態に関して上記された。しかしながら、利益、利点、問題に対する解決、および任意の利益、利点もしくは解決を生じさせ得るか、またはより明らかにさせ得る任意の特色(複数可)は、請求項のいずれかまたはすべての決定的な、必要な、または必須の特色として解釈されるべきでない。
【0080】
本明細書において記載される実施形態の明細書およびイラストは、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供するように意図される。明細書およびイラストは、本明細書において記載される構造または方法を使用する機器およびシステムの要素および特色のすべての網羅的かつ包括的な記述として供されるとは意図されない。分離した実施形態は単一の実施形態中の組み合わせにおいて提供することもでき、反対に、簡潔さのために単一の実施形態のコンテキストで記載される様々な特色は、分離してまたは任意の小組み合わせでも提供され得る。さらに、範囲中に明示される値への参照は、その範囲内の各々の値およびすべての値を含む。他の多くの実施形態がこの明細書を読了した後のみに当業者へ明らかであろう。構造的置換、論理的置換または他の変化が本開示の範囲から逸脱せずに行なうことができるように、他の実施形態を使用し、本開示に由来することができる。したがって、本開示は制限的というよりむしろ例示的なものとして見なされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6