特許第6130369号(P6130369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130369
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】剥離剤および柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/24 20060101AFI20170508BHJP
   D21H 21/10 20060101ALI20170508BHJP
   D21H 17/44 20060101ALI20170508BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   D21H21/24
   D21H21/10
   D21H17/44
   A47K7/00 B
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-521655(P2014-521655)
(86)(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公表番号】特表2014-520976(P2014-520976A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012046069
(87)【国際公開番号】WO2013012613
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】13/185,011
(32)【優先日】2011年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507248837
【氏名又は名称】ナルコ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー エス.ファーマン
(72)【発明者】
【氏名】ギリアン フレッテ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ケーニヒ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス マウラー
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−502557(JP,A)
【文献】 特表平10−513232(JP,A)
【文献】 特開2004−044058(JP,A)
【文献】 特表2008−527072(JP,A)
【文献】 特開2008−223161(JP,A)
【文献】 特表2005−530054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K7/00
10/16
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製品を柔軟化する方法であって、
有効な量の組成物をセルロース繊維を含有する密集体に添加することを含み、
前記組成物が、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤と、少なくとも1つのカチオン性高分子電解質ポリマー凝固剤と、を含み、前記カチオン性高分子電解質ポリマー凝固剤が、全体としてカチオン性の特性を有し、かつ前記非イオン性界面活性剤とともに安定したエマルジョンを形成する、方法。
【請求項2】
少なくとも1つのカチオン性高分子電解質ポリマー凝固剤が、epi−DMAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのカチオン性高分子電解質ポリマー凝固剤が、ポリ(DADMAC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、前記セルロース繊維間の結合相互作用を阻止する複合体を作成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、表面柔軟性を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記紙製品が、ティッシュペーパーである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記密集体が、紙スラリーである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
組成物が、紙スラリーに添加される水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
組成物が、前記密集体の表面に噴霧される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
組成物が、非毒性である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記カチオン性高分子電解質ポリマー凝固剤が、少なくとも1000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
該当なし
連邦支援の研究または開発に関する記述
【0002】
該当なし
【背景技術】
【0003】
本発明は、ペーパータオル、ナプキン、ティッシュペーパー、およびトイレットペーパーに一般に使用される紙ウェブまたはシート、より具体的には、ティッシュまたはペーパーティッシュウェブを対象とする。そのような紙(以下、単に「ティッシュペーパー」と称される)の重要な特徴は、バルク柔軟性、吸収性、伸縮性、および強度である。その他の特徴に著しく影響を与えることなくこれらの特徴のそれぞれを改善する研究が続けられている。従来の湿式加圧(CWP)および空気通過乾燥(TAD)ティッシュペーパーを作製する方法は、当技術分野において周知である。これら両方の種類のティッシュペーパーは、成形織物を通してセルロース系繊維懸濁液を枯渇させて紙ウェブを作成することによって形成される。セルロース系繊維懸濁液は、懸濁液を均一に沈着させるヘッドボックスを用いて成形織物上に沈着される。機械の種類に応じて、ウェブのある初期真空または遠心脱水が存在し得る。CWPティッシュペーパーの場合、ウェブは、加圧ロールでさらに脱水され、そこで、シートは、40〜45%の典型的な稠度になるまで加圧ロールとヤンキードライヤとの間で押圧される。最終乾燥は、熱気衝突フードと組み合わせて蒸気加熱されたヤンキードライヤを用いて達成される。TADティッシュペーパーの場合、ウェブは、熱気をウェブに通らせて60〜85%の典型的な稠度を得る空気通過乾燥機(複数を含む)を用いてさらに乾燥される。この場合もやはり、最終乾燥は、熱気衝突フードと組み合わせて蒸気加熱されたヤンキードライヤを用いて達成される。
【0004】
従来の綿毛状のパルプおよびそのようなパルプを作製するための方法は、当技術分野において周知である。重要な特性には、吸収性、破裂強度、および比破砕エネルギーが含まれる。そのようなパルプは、典型的には、長網抄紙ワイヤ上に厚いウェブまたはシートを形成し、その後、紙シートを押圧し、乾燥させて、8〜10%の稠度を有するベールまたはロールにすることによって作製される。乾燥ベールまたはロールは、その後、ハンマーミルまたはピン繊維離解機を用いて繊維離解されて、綿毛を形成する。綿毛から作製される典型的な製品は、おむつ、女性用生理用品、および失禁用製品である。綿毛を用いて、様々な空気を重ねた吸収性パッドおよび紙製品を製造することもできる。
【0005】
柔軟性は、消費者が特定の製品を握るか、それを皮膚の全域で擦るか、またはそれを手の中でくしゃくしゃにすることによって知覚される触感である。柔軟性は、2つの成分、バルク柔軟性および表面柔軟性を含む。バルク柔軟性は、紙製品がどれだけ容易に屈曲するか、くしゃくしゃになるか、またはさもなければさらにわずかの対向力に屈するかに関連する。表面柔軟性は、紙製品がどれだけ滑らかであるか、またはどれだけの潤滑性で紙製品が別の表面に対して摺動され得るかに関連する。これらの柔軟性形態はともに、機械的手段によって達成され得る。例えば、シートをカレンダ加工して、シートをクレーピングするときに形成される隆線を平らにし、表面柔軟性を改善することができる。シートの空気通過乾燥は、バルク柔軟性を改善する。しかしながら、それら単独での機械的アプローチは、多くの場合、消費者の柔軟性に対する要求を満たすには不十分である。
【0006】
紙をより柔軟にする1つの方法は、柔軟化化合物をセルロース系懸濁液に添加することである。柔軟化化合物は、製紙プロセス時のシート形成中に生じる自然な繊維間結合を妨害する。この結合を低減させることで、より柔らかいか、または粗さの程度の低い紙シートをもたらす。国際公開第98/07927号は、柔軟剤を用いた柔らかい吸収性紙製品の製造を説明している。この柔軟剤は、第4級アンモニウム界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ならびに強度添加剤を含む。柔軟剤は、紙ウェブが形成される前にセルロース系懸濁液に添加される。
【0007】
柔軟化化合物は、例えば、噴霧によって、乾燥した紙ウェブまたは湿った紙ウェブにも適用され得る。紙ウェブが乾燥している場合、柔軟化化合物をその紙上に印刷することもできる。米国第5,389,204号は、官能性ポリシロキサン柔軟剤を用いて柔らかいティッシュペーパーを作製するためのプロセスを説明している。この柔軟剤は、官能性ポリシロキサン、乳化剤界面活性剤、および非カチオン性界面活性剤を含む。この柔軟剤は、加熱された移行表面を通って乾燥した紙ウェブに移される。その後、柔軟剤は、乾燥した紙ウェブ上に押圧される。国際公開第97/30217号は、吸収紙の柔軟性を高めるためにローションとして使用される組成物を説明している。この組成物は、好ましくは脂肪アルコールまたはワックス状エステルである皮膚軟化剤を含む。この組成物は、第4級アンモニウム界面活性剤、ならびに1つ以上の非イオン性または両性乳化剤も含む。
【0008】
セルロース系懸濁液に添加されるか、または紙ウェブに直接適用されたほとんどの柔軟化化合物は、第4級アンモニウム界面活性剤を含有する。製造者および消費者が高まる環境問題に直面するため、第4級アンモニウム界面活性剤は、必ずしも受け入れられるとは限らない。第4級アンモニウム界面活性剤は、概して、水生生物に有害であり、概して、環境にとって危険であると考えられる。第4級アンモニウム界面活性剤は、目および皮膚に対して刺激性であり得、ある場合には、目への刺激が重度であり得る。したがって、環境への悪影響がより少なく、かつ改善された健康プロフィールを有する紙製品を剥離および柔軟化する組成物の明らかな有用性が存在する。
【0009】
本項で説明される技術は、別途具体的にそのように指名されない限り、本明細書で参照される任意の特許、出版物、または他の情報が、本発明に対して「先行技術」であるということを承認するようには意図されていない。加えて、本項は、調査が行われたか、または米国特許施行規則37第1.56(a)条に定義されるいかなる他の関連情報も存在しないことを意味すると解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、紙製品を柔軟化する方法を対象とする。本方法は、有効な量の組成物をセルロース繊維を含有する密集体に添加することを含む。この組成物は、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤および少なくとも1つのカチオン性高分子電解質ポリマー凝固剤を含む。高分子電解質ポリマー凝固剤は、全体としてカチオン性の特性を有することを特徴とし、非イオン性界面活性剤を用いて安定したエマルジョンを形成することができる。組成物は、セルロース繊維を効果的に剥離する。
【0011】
高分子電解質ポリマー凝固剤は、全体としてカチオン性ポリマー内にアニオン領域を有し得る。少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、ポリ(DADMAC)であり得る。少なくとも1つのポリマーは、epi−DMAポリマーであり得る。カチオン性ポリマーは、低分子量または高分子量を有し得る。組成物は、セルロース繊維間の結合相互作用を阻止する複合体を作成し得る。組成物は、表面柔軟性を向上させ得る。紙製品は、ティッシュペーパーであり得る。密集体は、紙スラリーであり得る。組成物は、紙スラリーに添加される水溶液であり得る。組成物は、密集体の表面上に噴霧され得る。組成物は、非毒性であり得る。
【0012】
さらなる特徴および利点が本明細書に記載されており、以下の発明を実施するための形態から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の定義は、本出願において使用される用語がどのように解釈されるべきか、具体的には、特許請求の範囲がどのように解釈されるべきかを決定するために提供される。定義の組織化は便宜のためのみであり、それらの定義のいずれも任意の特定のカテゴリーに限定するようには意図されていない。
【0014】
「凝固剤」とは、カチオン荷電され、かつ1つ以上の有機系凝固剤もしくは1つ以上の無機系凝固剤、ならびに/またはそれらの任意の組み合わせおよび/もしくは混合物を含む物質組成物を意味し、液体中に懸濁したコロイド物質および/または微粉化された物質を不安定化し、かつ最初に凝集する。
【0015】
「エピクロルヒドリン−ジメチルアミンポリマー」とは、epi−DMAポリマーとも称されるエピクロルヒドリンおよびジメチルアミンのコポリマーを意味する。epi−DMAポリマーは、例えば、アンモニアで架橋され得る。epi−DMAは、1000〜1,000,000、好ましくは10,000〜800,000、および最も好ましくは100,000〜600,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0016】
「高分子量ポリマー」とは、1,000,000ダルトンを超える平均分子量を有するポリマーを意味する。
【0017】
「無機系凝固剤」とは、主に無機の凝固剤を意味し、ミョウバン、ポリ塩化アルミニウム等の部分的に中和されたアルミニウム塩、塩化物および硫酸塩等の第二鉄塩、ならびにそれらのポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0018】
「低分子量ポリマー」とは、250,000ダルトン未満の平均分子量を有するポリマーを意味する。
【0019】
「中間分子量ポリマー」とは、250,000〜1,000,000ダルトンの範囲の平均分子量を有するポリマーを意味する。
【0020】
「非イオン性界面活性剤」とは、非荷電界面活性剤を意味し、アルカノールアミド、アルコキシル化アルコール、アミンオキシド、エトキシル化アミン、アルコキシル化アミド、EO−PO−ブロックコポリマー、アルコキシル化脂肪アルコール、アルコキシル化脂肪酸エステル、アルキルアリールアルコキシレート、ソルビタン誘導体、ポリグリセリル脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グルコシド、フッ化炭素系界面活性剤、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤は、典型的には、3〜18の範囲のHLBを有するが、4〜14の範囲が好ましい。
【0021】
「有機系凝固剤」とは、主に有機である凝固剤を意味し、架橋バージョンを含むエピクロルヒドリン/ジメチルアミンポリマー(epi−DMA)、二塩化エチレン/アンモニアポリマー、エチレンイミンポリマー(PEI)、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドポリマー(p−DADMAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドポリマー、ポリアミドアミン、アミドアミン−エピクロルヒドリンポリマー、DADMACおよびアクリルアミドのコポリマー、DADMACおよびアクリル酸(両性高分子電解質−正味荷電がカチオン性である限り)のコポリマー、ポリビニルアミン、加水分解N−ビニルホルムアミドポリマー、ポリアミン、変性PEI(PEIでグラフトされたポリアミドアミン)、ならびにホルムアルデヒド、尿素、およびメラミンとの組み合わせを含む2−シアノグアニジン系ポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0022】
「ポリ(DADMAC)」とは、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)のホモポリマーを意味する。単量体DADMACは、2つの等価物であるアリルクロライドとジメチルアミンとの反応によって形成される。pDADMACは、1000〜3,000,000、好ましくは25,000〜2,000,000、および最も好ましくは100,000〜1,500,000ダルトンの重量平均分子量を有する。低分子量のp−DADMACは、250,000ダルトン未満の重量平均分子量を有する。中間分子量のp−DADMACは、250,000〜1,000,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。高分子量のp−DADMACは、1,000,000ダルトンを超える重量平均分子量を有する。
【0023】
「高分子電解質」とは、その繰り返し単位が電解質基を担持するポリマーを意味する。
【0024】
「界面活性剤」とは、親水性頭部基および疎水性尾部基を含み、かつ液体の表面張力、2つの液体間の界面張力、または液体と固体との間の界面張力を低下させる両親媒性構造を有する表面活性剤であることを特徴とする物質組成物を意味する。
【0025】
上の定義または本出願の他の箇所に提示される説明が、一般に使用される意味、辞書内の意味、または参照により本出願に組み込まれる情報源に提示される意味(明示的または黙示的)と一致しない場合、本出願および特許請求の範囲内の用語は特に、共通の定義、辞書の定義、または参照により組み込まれた定義に従うのではなく、本出願における定義または説明に従うものと解釈されることが理解される。上述を踏まえて、用語が辞書によって解釈される場合にのみ理解され得る場合、その用語がKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第5版(2005)(Wiley,John & Sons,Inc.出版)によって定義される場合、この定義は、この用語が特許請求の範囲においてどのように定義されるかを支配するものとする。
【0026】
本発明は、紙製品、具体的には、ティッシュペーパー製品を柔軟化する方法および組成物に関する。少なくとも1つの実施形態において、使い勝手の良い安定した液体製品を提供するように製剤化される非イオン性界面活性剤およびカチオン性ポリマーの組み合わせを含む組成物が提供される。この組成物は、紙製品の柔軟化に効果的であるとともに、先行技術のカチオン性界面活性剤と比較して優れた環境プロファイルを有する。
【0027】
少なくとも1つの実施形態において、組成物は、非イオン性界面活性剤およびカチオン性ポリマーの混合物を含み、これは、欧州連合(EU)のMSDSシステムに従って、猛毒性、毒性、有害としてRフレーズ(リスクフレーズ)でラベル付けをする必要がないか、または水域環境において長期にわたって有害影響を引き起こさないものである。これは、R50、R51、R52、およびR53等の単数のリスクフレーズ、ならびにR50/53、R51/53、およびR52/53等の複数のリスクフレーズの両方を含む。少なくとも1つの実施形態において、組成物は、「N」コードでラベル付けされる必要はなく、したがって、環境危機、死木、または死魚のロゴを用いることなくEU内でパッケージングおよび販売され得る。
【0028】
少なくとも1つの実施形態において、非イオン性界面活性剤は、非イオン性の任意の界面活性剤であり、ティッシュペーパーまたは他の紙製品の作製時に使用されるセルロース繊維を効果的に剥離するように十分に疎水性である。少なくとも1つの実施形態において、カチオン性ポリマーは、高分子電解質であり、アニオン領域を有し得るが、全体としてカチオン性の特性を有し、かつ非イオン性界面活性剤を用いて安定したエマルジョンを形成することができる。
【0029】
少なくとも1つの実施形態において、カチオン性ポリマーは、高分子量(8108+等、Nalco Company,Naperville IL)、中間分子量(74316等、Nalco Company)、低分子量(74696等、Nalco Company)、およびそれらの任意の組み合わせのポリ(DADMAC)ポリマーである。
【実施例】
【0030】
前述は、以下の実施例を参照することによってより良好に理解することができ、それらの実施例は、説明のために提示されており、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【0031】
実施例1−この実施例において、いくつかのカチオン性凝固剤および非イオン性界面活性剤を用いた柔軟剤製剤の調製が示される。柔軟剤製剤1の場合、8部のオレイン酸ポリグリコールエステル(Rewopol(登録商標)EO70)(Evonik Industriesから入手可能)を、撹拌しながら82部の蒸留水に添加した。次に、10部のp−DADMAC(Nalco 8108 PLUS)を、さらに撹拌しながらこの希釈混合物に添加した。製剤1は、乳白色からわずかに黄色の外観を有し、かつ25℃で100mPa・sの粘度を有する安定したマクロエマルジョンであった。製剤2も同様に、8部のRewopol(登録商標)EO70を、撹拌しながら82部の蒸留水に添加した。10部のp−DADMAC(Nalco 74316)を、さらに撹拌しながら希釈混合物に添加した。製剤2は、安定しており、かつ乳白色からわずかに黄色がかったマクロエマルジョンの外観を有し、粘度は、25℃で100mPa・sであった。最後に製剤3において、8部のRewopol(登録商標)EO70を、撹拌しながら89.5部の蒸留水に添加した。次に、2.5部のp−DADMAC(Nalco 74696)を、さらに撹拌しながら希釈混合物に添加した。製剤3は、安定しており、かつ乳白色からわずかに黄色がかったマクロエマルジョンの外観を有し、粘度は、25℃で100mPa・sであった。
【0032】
実施例2−この実施例において、第2の例示の製剤の調製物が示される。epi−DMA凝固剤(Nalco 7607 Plus)を、撹拌しながら等量の蒸留水に添加した。次に、33.8部のこの混合物を66.2部のオレイン酸ポリグリコールエステル(Rewopol(登録商標)EO90)(Evonik Industriesから入手可能)に添加した。これは、安定した製品分散剤をもたらし、柔軟剤製剤4と呼ぶこととし、黄色がかった濁った外観を有し、粘度は、25℃で約1500mPa・sであった。
【0033】
実施例3−実施例1で調製された柔軟剤製剤1、2、および3をハンドシート研究において評価し、業界基準のArosurf(登録商標)PA 777VおよびArosurf(登録商標)PA 842V(Evonik Industriesから入手可能)と比較して、それらがもたらした引張強度損失の量を決定した。ハンドシートをISO手順5269−2に従って急速コタン形成剤を用いて製造した。完成紙料は、50/50の硬材および軟材の乾燥したラップパルプの混合物であった。柔軟剤製剤を、乾燥した繊維の1、3、および5kg/MTの線量で完成紙料に添加した。シートの直径は21cmであり、対応するシート重量は約1.25グラムであり、約36.1g/m2の坪量をもたらした。このシートを温度および湿度についての標準の推奨条件下で条件付けし(TAPPI法T402)、TAPPI法T220に従って引張強度を評価した。
【0034】
結果が表Iに提供される。業界基準の製品Arosurf(登録商標)PA 777Vおよび842Vは、測定された引張指数の損失によって決定されるように、ハンドシートの良好な剥離を提供する。引張指数の損失は、シートのバルク柔軟性の増加と相関する。同様に、実施例1の製品製剤1、2、および3はすべて、対照として使用されたブランクシートと比較して、引張指数の損失を示した。業界基準の製品Arosurf(登録商標)PA 777Vおよび842Vは、R50/53のRフレーズラベル付けならびに死木および死魚を示す危険シンボルを有する。製品製剤1、2、および3は、R50/53フレーズまたは危険シンボルを有しない。
【表1】
【0035】
実施例4−実施例1の柔軟剤製剤1、2、および3を、業界基準のArosurf(登録商標)PA 777および842との第2のハンドシート比較において再度試験した。さらなる対照実験も行い、製剤の個々の成分の影響を評価した。Rewopol EO 70は、Evonik Industriesから入手可能なオレイン酸ポリグリコールエステルである。Nalco 8108 Plusは、Nalco Companyから入手可能な高分子量のp−DADMAC製品である。ハンドシートを、TAPPI法T205に従ってMessmer Model M 153形成剤を用いて製造した。完成紙料は、70/30の硬材および軟材の乾燥したラップパルプの混合物であった。柔軟剤製剤を、乾燥した繊維の1、3、および5kg/MTの線量で完成紙料に添加した。シートの直径は15.9cmであり、対応するシート重量は約1.0グラムであり、約60g/m2の坪量をもたらした。このシートを温度および湿度についての標準の推奨条件下で条件付けし(TAPPI法T402)、TAPPI法T220に従って引張強度を評価した。
【0036】
引張結果が表IIに示されており、この場合もやはり、業界基準の製品であるArosurf(登録商標)PA 777Vおよび842Vが良好なシート剥離を提供したことを示す。対照的に、非イオン性界面活性剤のRewopol E0 70、およびカチオン性凝固剤の8108 Plusは、それら単独で添加されたとき、ほとんどまたはまったくシート剥離を提供しなかった。しかしながら、柔軟剤製剤1、2、および3において見られるように、個々の非イオン性界面活性剤およびカチオン性凝固剤成分をともに合わせたときに、著しい引張指数減少が生じ、したがって、本発明の有用性を示した。
【表2】
【0037】
実施例5−この実施例では、柔軟剤製剤4を、ハンドシート剥離実験において、業界基準の製品、Arosurf(登録商標)PA 777およびRewoquat(登録商標)WE 15 DPG(Evonik Industriesから入手可能)と比較した。ハンドシートを、TAPPI法T205に従ってMessmer Model M 153形成剤を用いて製造した。完成紙料は、50/50の硬材および軟材の乾燥したラップパルプの混合物であった。柔軟剤製剤を、乾燥した繊維の1、3および5kg/MTの線量で完成紙料に添加した。シートの直径は15.9cmであり、対応するシート重量は約1.9グラムであり、約100g/m2の坪量をもたらした。このシートを温度および湿度についての標準の推奨条件下で条件付けし(TAPPI法T402)、TAPPI法T220に従って引張強度を評価した。
【0038】
引張結果が表IIIに示されており、この場合もやはり、業界基準の製品であるArosurf(登録商標)PA 777VおよびRewoquat(登録商標)WE 15 DPGが良好なシート剥離を提供したことを示す。製剤4は、同等に良好な剥離を提供し、これは、業界基準の製品と比較したシート引張強度の同様の損失によって証明される。
【表3】
【0039】
データは、非イオン性界面活性剤およびカチオン性ポリマーが単独で使用されるときに引張強度にほとんど影響を与えないことを示す。しかしながら、それらの組み合わせは、著しく全く予想外の相乗効果を示し、ティッシュペーパー製造業界において現在一般に使用されているより毒性の強い組成物と同程度のレベルまで紙製品の引張強度を減少させる。
【0040】
特許請求の範囲を解釈する際に得られる理論および範囲内に制限されることなく、相乗作用組成物が先行技術よりも良好に剥離物質を付着させると考えられる。セルロース繊維はアニオン性であるため、自然にアニオン性組成物に反発し、さもなければそれらを効果的に剥離するであろう。本発明において、カチオン性ポリマーおよび界面活性剤は複合体を作成し、この複合体は繊維表面に引き付けられ、それによって、繊維間の結合相互作用を阻止する。
【0041】
本発明は、単純な2つの成分製剤を用いることによって予想外に良好な結果を提供し、4つの成分を有し、かつ少なくとも1つのアニオン性成分を含有する他の先行技術の剥離組成物と比較して、アニオン性成分を含有しない。例えば、国際公開第2006/071175号および国際公開第2007/058609号はともに、少なくとも4つの成分を含有し、かつアニオン性界面活性剤およびアニオン性微小粒子から選択される少なくとも1つのアニオン性成分を含有する組成物を開示する。少なくとも1つの実施形態において、組成物は、任意の1つのアニオン性成分を有するものを除外する。少なくとも1つの実施形態において、組成物は、組成物の4つ(またはそれ以上)の成分製剤を除外する。
【0042】
本発明は、多くの異なる形態で具現化され得るが、本発明の特定の好ましい実施形態が本明細書において詳細に説明される。本開示は、本発明の原理を例示するものであり、本発明を説明される特定の実施形態に限定するようには意図されていない。本明細書で言及されるすべての特許、特許出願、科学論文、および任意の他の参照資料は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。さらに、本発明は、本明細書に記載され、かつ組み込まれる様々な実施形態の一部またはすべての任意の可能な組み合わせも包含する。さらに、本発明は、本明細書に記載され、かつ/または組み込まれる様々な実施形態の1つ、一部、または1つだけ除いてすべてが除外される組み合わせも包含する。
【0043】
上述の開示は、例示的であって、包括的であるようには意図されていない。この説明は、当業者に多くの変形および代替案を示唆するであろう。すべてのこれらの代替案および変形は、特許請求の範囲内に含まれるよう意図されており、「〜を含む」という用語は、「〜を含むが、それらに限定されない」ことを意味する。当業者であれば、本明細書に記載の特定の実施形態に対する他の等価物を認識することができ、それらの等価物も特許請求の範囲によって包含されるよう意図されている。
【0044】
本明細書に開示のすべての範囲およびパラメータは、その中に包含される任意のおよびすべての部分範囲、ならびに終点間のあらゆる数を包含するよう理解される。例えば、「1〜10」と述べられる範囲は、最小値1と最大値10との間の(かつそれらを含む)任意のおよびすべての部分範囲、すなわち、最小値1以上(例えば、1〜6.1)で始まり、最大値10以下(例えば、2.3〜9.4、3〜8、4〜7)で終わるすべての部分範囲、ならびに最後にその範囲内に包含される1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10のそれぞれの数まで含むと見なされるべきである。
【0045】
これで、本発明の好ましい実施形態および代替の実施形態の説明を終了する。当業者であれば、本明細書に記載の特定の実施形態に対する他の等価物を認識することができ、それらの等価物は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって包含されるよう意図されている。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1−12に列記する。
[1]
紙製品を柔軟化する方法であって、
有効な量の組成物をセルロース繊維を含有する密集体に添加することを含み、
前記組成物が、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤と、少なくとも1つのカチオン性高分子電解質ポリマー凝固剤と、を含み、前記高分子電解質ポリマー凝固剤が、全体としてカチオン性の特性を有し、かつ前記非イオン性界面活性剤とともに安定したエマルジョンを形成することができ、
前記組成物が、前記セルロース繊維を効果的に剥離する、方法。
[2]
少なくとも1つのカチオン性ポリマーが、epi−DMAである、項目1に記載の方法。
[3]
少なくとも1つのカチオン性ポリマーが、ポリ(DADMAC)である、項目1に記載の方法。
[4]
前記組成物が、前記セルロース繊維間の結合相互作用を阻止する複合体を作成する、項目1に記載の方法。
[5]
前記組成物が、表面柔軟性を改善する、項目1に記載の方法。
[6]
前記紙製品が、ティッシュペーパーである、項目1に記載の方法。
[7]
前記密集体が、紙スラリーである、項目1に記載の方法。
[8]
組成物が、紙スラリーに添加される水溶液である、項目1に記載の方法。
[9]
組成物が、前記密集体の表面に噴霧される、項目1に記載の方法。
[10]
組成物が、非毒性である、項目1に記載の方法。
[11]
前記高分子電解質ポリマー凝固剤が、アニオン領域を有することを特徴とするが、全体としてカチオン性の特性を有する、項目1に記載の方法。
[12]
前記カチオン性ポリマーが、低分子量または高分子量である、項目1に記載の方法。