特許第6130417号(P6130417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6130417電子部品の接合方法、並びに、その方法に用いるはんだ組成物および前処理剤
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  • 特許6130417-電子部品の接合方法、並びに、その方法に用いるはんだ組成物および前処理剤 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130417
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】電子部品の接合方法、並びに、その方法に用いるはんだ組成物および前処理剤
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20170508BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20170508BHJP
   B23K 1/20 20060101ALI20170508BHJP
   B23K 35/363 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   H05K3/34 503A
   H05K3/34 505B
   B23K1/00 330E
   B23K1/20 K
   B23K35/363 D
   B23K35/363 E
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-37327(P2015-37327)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-162778(P2016-162778A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 義信
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−240490(JP,A)
【文献】 特開平07−323390(JP,A)
【文献】 特開2010−212655(JP,A)
【文献】 特開2003−158154(JP,A)
【文献】 特開平09−094691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 − 3/46
B23K 1/00
B23K 1/20
B23K 35/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品に、(X)活性剤を含有する前処理剤を塗布する工程と、
基板に、(A)はんだ粉末並びに、(B)樹脂を含有するフラックス組成物を含有するはんだ組成物を塗布する工程と、
前記電子部品を前記基板上に搭載して、リフロー処理を行う工程と、を備え
前記フラックス組成物が、(C)活性剤を含有する場合に、前記(C)活性剤の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、6質量%以下である
ことを特徴とする電子部品の接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品の接合方法において、
前記前処理剤が、(Y)溶剤をさらに含有し、
前記(Y)溶剤が、(Y1)沸点が100℃以下の溶剤を含有する
ことを特徴とする電子部品の接合方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子部品の接合方法において、
前記前処理剤が、(Z)硬化成分をさらに含有し、
前記(Z)硬化成分が、(Z1)樹脂硬化剤および(Z2)ラジカル重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする電子部品の接合方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子部品の接合方法において、
前記(A)はんだ粉末の平均粒子径が、20μm以下である
ことを特徴とする電子部品の接合方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の電子部品の接合方法において、
前記はんだ組成物が、(C)活性剤をさらに含有する
ことを特徴とする電子部品の接合方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の電子部品の接合方法に用いるはんだ組成物であって、
(A)はんだ粉末、並びに、(B)樹脂を含有するフラックス組成物を含有し、
前記フラックス組成物が、(C)活性剤を含有する場合に、前記(C)活性剤の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、6質量%以下である
ことを特徴とするはんだ組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の電子部品の接合方法に用いる前処理剤であって、
(X)活性剤を含有する
ことを特徴とする前処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の接合方法、並びに、その方法に用いるはんだ組成物および前処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は軽薄短小化に伴い、プリント配線基板の微細化が進み、プリント基板に実装される実装部品の微細化が進んでいる。このような微細部品の微小ピッチでの接合を行うために、導電性粒子(はんだ粉末など)を微粉化(例えば、平均粒子径が20μm以下)することが要求されている。
しかしながら、平均粒子径が小さいはんだ粉末にすると、その比表面積は増大し、その分だけはんだ粉末の表面に生成される酸化物量も多くなる。はんだ粉末の表面に生成された酸化物を溶融させて除去するには、高い還元力のあるフラックス成分を有するはんだ組成物を求められ、例えば、フラックス成分中の活性剤などの検討がされている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−110580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機酸などの活性剤を増やすと、絶縁信頼性やシェルフライフが低下し、ハロゲン系の活性剤を増やすと、組成物中のハロゲン量の問題が生じる。このように、導電性組成物中の成分によって導電性粒子の微粉化へ対応することは、非常に困難となっている。
【0005】
そこで、本発明は、はんだ組成物の絶縁信頼性やシェルフライフを維持しつつ、接合性の向上を図ることができる電子部品の接合方法、並びに、その方法に用いるはんだ組成物および前処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような電子部品の接合方法を提供するものである。
すなわち、本発明の電子部品の接合方法は、電子部品に、(X)活性剤を含有する前処理剤を塗布する工程と、基板に、(A)はんだ粉末並びに、(B)樹脂を含有するフラックス組成物を含有するはんだ組成物を塗布する工程と、前記電子部品を前記基板上に搭載して、リフロー処理を行う工程と、を備え、前記フラックス組成物が、(C)活性剤を含有する場合に、前記(C)活性剤の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、6質量%以下であることを特徴とする方法である。
【0007】
本発明の電子部品の接合方法においては、前記前処理剤が、(Y)溶剤をさらに含有し、前記(Y)溶剤が、(Y1)沸点が100℃以下の溶剤を含有することが好ましい。
本発明の電子部品の接合方法においては、前記前処理剤が、(Z)硬化成分をさらに含有し、前記(Z)硬化成分が、(Z1)樹脂硬化剤および(Z2)ラジカル重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい
発明の電子部品の接合方法においては、前記(A)はんだ粉末の平均粒子径が、20μm以下であることが好ましい。
本発明の電子部品の接合方法においては、前記はんだ組成物が、(C)活性剤をさらに含有してもよい。
【0008】
本発明のはんだ組成物は、前記電子部品の接合方法に用いるはんだ組成物であって、(A)はんだ粉末、並びに、(B)樹脂を含有するフラックス組成物を含有し、前記フラックス組成物が、(C)活性剤を含有する場合に、前記(C)活性剤の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、6質量%以下であることを特徴とするものである。
本発明の前処理剤は、前記電子部品の接合方法に用いる前処理剤であって、(X)活性剤を含有するものである。
【0009】
本発明の電子部品の接合方法においては、以下説明するように、導電性組成物の絶縁信頼性やシェルフライフを維持しつつ、接合性の向上を図ることができる。
従来から、はんだ組成物などの導電性組成物を用いて、基板に電子部品の接合している。このような場合には、基板の電極上に印刷したはんだ組成物中のフラックス成分により、電子部品の電極の金属を活性化できるため、基板上に電子部品を搭載して、リフロー処理を行うことで、基板上に電子部品を接合できる。このように、はんだ組成物を用いて、基板上に電子部品を接合する場合、電子部品には特に処理をせずに、基板上に搭載することが技術常識であった。本発明者らは、かかる技術常識を覆し、搭載前の電子部品に対し、特定の前処理剤を塗布する工程を行えば、かかる工程に要する手間というデメリット以上の大きなメリットが得られることを見出した。
すなわち、本発明の電子部品の接合方法においては、電子部品に、活性剤を含有する前処理剤を塗布している。そして、電子部品の電極に付着した活性剤は、はんだ組成物中の活性剤よりも直接的に、電子部品の電極の金属を活性化できるため、はんだ組成物中の活性剤量を増やすよりも効率的に、接合性の向上を図ることができる。また、電子部品の電極に付着した活性剤は、驚くべきことに、はんだ組成物のフラックス成分として、はんだ組成物中に混合した活性剤とほぼ同等に機能する。この理由については必ずしも定かではないが、リフロー処理の際の溶融はんだの流動により、電子部品の電極に付着した活性剤がはんだ組成物中に十分に混合され、フラックス成分として十分に機能するものと発明者らは推察する。
以上のようにして、はんだ組成物中の活性剤量および前処理剤により電極に付着する活性剤量の合計量を増やさなくても、接合性の向上を図ることができる。また、接合性を維持しつつ、はんだ組成物中の活性剤量を減らすこともできる。そのため、本発明の電子部品の接合方法によれば、導電性組成物の絶縁信頼性やシェルフライフを維持しつつ、接合性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、はんだ組成物の絶縁信頼性やシェルフライフを維持しつつ、接合性の向上を図ることができる電子部品の接合方法、並びに、その方法に用いるはんだ組成物および前処理剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電子部品の接合方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<電子部品の接合方法>
以下、本発明の電子部品の接合方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の電子部品の接合方法の一例を示す説明図である。
本発明の電子部品の接合方法は、図1に示すように、電子部品1を基板2に接合する電子部品の接合方法であって、以下説明する前処理工程(S1)、組成物塗布工程(S2)および接合工程(S3)を備える方法である。なお、本実施形態では、前処理工程、組成物塗布工程、接合工程の順で説明するが、この順に限定されない。接合工程の前に、前処理工程および組成物塗布工程を行えばよく、前処理工程および組成物塗布工程の順序は限定されない。例えば、前処理工程の前に組成物塗布工程を行ってもよく、前処理工程および組成物塗布工程を同時に行ってもよい。
【0013】
前処理工程(S1)においては、図1に示すように、電子部品1を準備し(S1−1)、電子部品1に前処理剤3を塗布する(S1−2)。
電子部品1としては、BGA(ボールグリッドアレイ)、QFN(Quad Flat No lead package)、チップ部品などが挙げられる。
電子部品1は、部品本体11と、電極12と、電極12上に設けられたはんだバンプ13と、を備えている。
前処理剤3は、詳細は後述するが、(X)活性剤を含有するものである。
前処理剤3の塗布量は、特に限定されないが、(X)活性剤の単位面積あたりの付着量が、0.01mg/cm以上1mg/cm以下であることが好ましく、0.01mg/cm以上0.1mg/cm以下であることがより好ましい。付着量が前記下限未満では、電子部品1の電極の金属の活性化が不足する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、絶縁信頼性が低下する傾向にある。
【0014】
ここで用いる塗布装置としては、ディップコーター、スプレーコーター、スタンプ、スクリーン印刷機、ディスペンサーなどが挙げられる。これらの中でも、チップマウント装置への適用のしやすさという観点から、ディップコーター、スタンプがより好ましく、スタンプが特に好ましい。
【0015】
前処理工程(S1)においては、必要に応じて、塗布後の前処理剤3を乾燥する(S1−3)。これにより、(X)活性剤を含む乾燥後の前処理剤31が、電子部品1のはんだバンプ13などに付着する。
乾燥条件は、特に限定されないが、通常は、乾燥温度が15℃以上100℃以下で、乾燥時間が1秒間以上60秒間以下であればよい。
【0016】
組成物塗布工程(S2)においては、図1に示すように、基材21および電極22を備える基板2を準備し(S2−1)、基板2の電極22上に導電性組成物4を塗布する(S2−2)。
基板2としては、プリント配線基板などが挙げられる。
導電性組成物4は、詳細は後述するが、(A)導電性粒子および(B)樹脂を含有するものである。
ここで用いる塗布装置としては、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサー、ジェットディスペンサーなどが挙げられる。
【0017】
接合工程(S3)においては、図1に示すように、電子部品1の電極12と基板2の電極22とが平面視にて重なるようにして、電子部品1を基板2上に搭載し(S3−1)、その後、リフロー処理を行い、基板2上に電子部品1をはんだ接合5により接合する(S3−2)。
リフロー条件は、はんだバンプ13を構成するはんだや導電性組成物4中の導電性粒子の融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Ag−Cu系のはんだ合金を用いる場合には、プリヒートを温度150〜200℃で60〜120秒間行い、ピーク温度を230〜270℃に設定すればよい。
【0018】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記接合工程では、リフロー処理により、基板2上に電子部品1を接合しているが、これに限定されない。例えば、リフロー処理に代えて、レーザー光を用いて導電性組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、基板2上に電子部品1を接合してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、InGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、気体レーザー(He−Ne、Ar、CO、エキシマーなど)が挙げられる。
【0019】
<前処理剤>
次に、本発明の前処理剤について説明する。すなわち、本発明の前処理剤は、前記電子部品の接合方法に用いる前処理剤であり、(X)活性剤を含有するものである。また、この前処理剤は、必要に応じて、(Y)溶剤および(Z)硬化成分を含有してもよい。
【0020】
[(X)成分]
本発明に用いる(X)活性剤としては、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、アミン系活性剤などが挙げられる。これらの活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、これらの中でも、環境対策の観点や、はんだ付け部分での腐食を抑制するという観点からは、有機酸、アミン系活性剤(ハロゲンを含有しないもの)を用いることが好ましい。
前記有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸などが挙げられる。
【0021】
前記非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。このハロゲン化化合物としては、塩素化物、臭素化物、フッ化物のように塩素、臭素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよいが、塩素、臭素およびフッ素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は、水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールやハロゲン化カルボキシルのように水酸基やカルボキシル基などの極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、トリブロモネオペンチルアルコールなどの臭素化アルコール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−ジクロロ−2−ブタノールなどの塩素化アルコール、3−フルオロカテコールなどのフッ素化アルコール、その他これらに類する化合物が挙げられる。ハロゲン化カルボキシルとしては、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、2−ヨードプロピオン酸、5−ヨードサリチル酸、5−ヨードアントラニル酸などのヨウ化カルボキシル、2−クロロ安息香酸、3−クロロプロピオン酸などの塩化カルボキシル、2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモコハク酸、2−ブロモ安息香酸などの臭素化カルボキシル、その他これらに類する化合物が挙げられる。
【0022】
前記アミン系活性剤としては、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(トリメチロールアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミンなどのアミンやアミノアルコールなどの有機酸塩や無機酸塩(塩酸、硫酸、臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩(塩酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩など)、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、これらのアミンの臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0023】
本発明の前処理剤は、(X)成分単独でもよいが、塗布性の観点から、(X)成分を溶剤などに溶解させたものであることが好ましい。このような場合、前記(X)成分の配合量としては、前処理剤100質量%に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
[(Y)成分]
本発明に用いる(Y)溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。このような(Y)溶剤により前処理剤の塗布性を向上できる。(Y)溶剤としては、乾燥のしやすさの観点から、(Y1)沸点が100℃以下の溶剤が好ましい。また、(Y)溶剤として、(Y1)成分以外の溶剤を併用してもよい。
(Y1)成分としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコールが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。塗布性および乾燥性の観点からは、2種以上を混合して用いることが好ましく、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールを混合して用いることが特に好ましい。
【0025】
前記(Y)成分の配合量は、塗布性および乾燥性の観点から、前処理剤100質量%に対して、50質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、80質量%以上99質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
[(Z)成分]
本発明に用いる(Z)硬化成分としては、(Z1)樹脂硬化剤、(Z2)ラジカル重合開始剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。(Z)成分は、後述する導電性組成物が熱硬化性である場合には、熱硬化性を付与するための成分である。(Z)成分は、導電性組成物に配合した場合には、シェルフライフの低下などの原因となる。そこで、これらの(Z)成分を前処理剤に含有させ、リフロー処理時に導電性組成物と混合するようにすれば、導電性組成物中の(Z)成分を減少させることができ、導電性組成物のシェルフライフを向上できる。
【0027】
(Z1)樹脂硬化剤としては、適宜公知の硬化剤を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を用いる場合には、以下のようなものを用いることができる。これらの硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
潜在性硬化剤としては、例えば、ノバキュアHX−3722、HX−3721、HX−3748、HX−3088、HX−3613、HX−3921HP、HX−3941HP(旭化成エポキシ社製、商品名)、ジシアンジアミド(DICY)などが挙げられる。
脂肪族ポリアミン系硬化剤としては、例えば、フジキュアFXR−1020、FXR−1030、FXR−1050、FXR−1080(富士化成工業社製、商品名)が挙げられる。
エポキシ樹脂アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、アミキュアPN−23、PN−F、MY−24、VDH、UDH、PN−31、PN−40(味の素ファインテクノ社製、商品名)、EH−3615S、EH−3293S、EH−3366S、EH−3842、EH−3670S、EH−3636AS、EH−4346S、EH−5016S(ADEKA社製、商品名)が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2P4MHZ、1B2PZ、2MZA、2PZ、C11Z、C17Z、2E4MZ、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNZ(四国化成工業社製など、商品名)が挙げられる。
【0028】
(Z2)ラジカル重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。
前記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類などの有機過酸化物が挙げられる。これらの熱ラジカル重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの熱ラジカル重合開始剤の中でも、反応性と安定性とのバランスの観点から、ハイドロパーオキサイド類が好ましく、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートがより好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシム系開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルが挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
前記(Z)成分の配合量は、硬化性および塗布性の観点から、前処理剤100質量%に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
[他の成分]
本発明の前処理剤には、前記(X)成分、前記(Y)成分および前記(Z)成分の他に、必要に応じて、その他の添加剤を加えることができる。その他の添加剤としては、チクソ剤、消泡剤などが挙げられる。
【0031】
<導電性組成物>
次に、本発明の導電性組成物について説明する。すなわち、本発明の導電性組成物は、前記電子部品の接合方法に用いる導電性組成物であり、(A)導電性粒子および(B)樹脂を含有するものである。また、この導電性組成物は、具体的には、(B)樹脂を含有するフラックス組成物をバインダーとして、(A)導電性粒子を分散させたものである。なお、このフラックス組成物には、必要に応じて、(C)活性剤、(D)樹脂硬化剤、(E)ラジカル重合開始剤および(F)重合性化合物を含有してもよい。
【0032】
[(A)成分]
本発明に用いる(A)導電性粒子としては、導電性を有する粒子(粉末)であれば、適宜公知のものを用いることができる。この(A)成分としては、電極同士の間での導通性の観点から、はんだ粉末を用いることが好ましい。このはんだ粉末は、240℃以下の融点を有することが好ましく、低温プロセス化の観点からは、180℃以下の融点を有するものであることがより好ましい。このはんだ粉末の融点が180℃を超えるものを用いる場合には、リフロー処理時の温度が低温(例えば、180℃以下)の場合に、はんだ粉末を溶融させることができない傾向にある。一方で、はんだ接合の強度の観点からは、はんだ粉末の融点は、160℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。
また、このはんだ粉末は、環境への影響の観点から、鉛フリーはんだ粉末であることが好ましい。ここで、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、100質量ppm以下であることが好ましい。
【0033】
前記(A)成分は、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、銀(Ag)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、およびチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1種の金属からなる金属または合金であることが好ましい。例えば、スズ基のはんだとしては、Sn−0.7Cuなどのスズ−銅系;Sn−3.5Agなどのスズ−銀系;Sn−3.0Ag−0.5Cu、Sn−3.5Ag−0.7Cu、Sn−1.0Ag−0.7Cu、Sn−0.3Ag−0.7Cuなどのスズ−銀−銅系;Sn−2.5Ag−1.0Bi−0.5Cu、Sn−1.0Ag−2.0Bi−0.5Cuなどのスズ−銀−ビスマス−銅系;Sn−3.5Ag−0.5Bi−8.0Inなどのスズ−銀−ビスマス−インジウム系;Sn−1.0Ag−0.7Cu−2.0Bi−0.2Inなどのスズ−銀−銅−ビスマス−インジウム系;Sn−58Biなどのスズービスマス系;Sn−1.0Ag−58Biなどのスズ−銀−ビスマス系;Sn−5.0Sbなどのスズーアンチモン系;Sn−9Znなどのスズ−亜鉛系;Sn−8.0Zn−3.0Biなどのスズ−亜鉛−ビスマス系;Sn−30In−12Sb−3Znなどのスズ−インジウム−アンチモン−亜鉛系;Sn−56Bi−4Tiなどのスズ−ビスマス−チタン系;Sn−3.5Ag−4Tiなどのスズ−銀−チタン系;Sn−52Inなどのスズ−インジウム系などが挙げられる。インジウム基のはんだとしては、金属インジウムのインジウム系;In−3.0Agなどのインジウム−銀系が挙げられる。また、上記金属、合金には更に微量成分として、上記の金属以外にも、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、リン(P)、セリウム(Ce)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、鉛(Pb)などを含有していてもよい。これらの中でも、低融点特性の点からは、スズ−ビスマス系、スズ−銀−ビスマス系、スズ−インジウム系、インジウム系、インジウム−銀系などがより好ましい。また、はんだ接合の強度の観点からは、スズ−銀−銅系、スズ−銀系などが好ましい。
【0034】
前記(A)成分の平均粒子径は、通常1μm以上40μm以下であるが、はんだ付けパッドのピッチが狭い電子基板にも対応するという観点から、1μm以上20μm以下であることがより好ましく、2μm以上15m以下であることがさらにより好ましく、3μm以上12μm以下であることが特に好ましい。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0035】
[フラックス組成物]
本発明の導電性組成物は、以下説明するフラックス組成物と、前記(A)成分とを含有するものである。
前記フラックス組成物の配合量は、導電性組成物(はんだ組成物)100質量%に対して、5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。フラックス組成物の配合量が5質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が95質量%を超える場合)には、バインダーとしてのフラックス組成物が足りないため、フラックス組成物とはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にあり、他方、フラックス組成物の配合量が35質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が65質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
【0036】
[(B)成分]
本発明に用いる(B)樹脂としては、(B1)ロジン系樹脂、(B2)熱硬化性樹脂、および(B3)熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、(B1)ロジン系樹脂を用いたフラックス組成物(いわゆるロジン系フラックス)は、熱硬化性を有さないが、(B2)熱硬化性樹脂を用いたフラックス組成物は、熱硬化性を有している。
前記(B1)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、ディールス・アルダー反応の反応成分となり得る前記ロジン類の不飽和有機酸変性樹脂((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸等の変性樹脂)およびこれらの変性物などのアビエチン酸、並びに、これらの変性物を主成分とするものなどが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
前記(B1)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、35質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。(B1)成分の配合量が前記下限未満では、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付性が低下し、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス残さ量が多くなる傾向にある。
【0038】
前記(B2)熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂を適宜用いることができるが、フラックス作用を有するという観点から、特にエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
なお、本発明において、フラックス作用を有するとは、通常のロジン系フラックスのように、その塗布膜は被はんだ付け体の金属面を覆って大気を遮断し、はんだ付け時にはその金属面の金属酸化物を還元し、この塗布膜が溶融はんだに押し退けられてその溶融はんだと金属面との接触が可能となり、その残渣は回路間を絶縁する機能を有するものである。
【0039】
このようなエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を適宜用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、およびジシクロペンタジエン型などのエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらのエポキシ樹脂は、常温(25℃)で液状のものを含有することが好ましく、常温で固形のものを用いる場合には、常温で液状のものと併用することが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂の型の中でも、金属粒子の分散性およびペースト粘度を調整でき、さらに硬化物の落下衝撃に対する耐性が向上できるという観点や、はんだの濡れ広がり性が良好となるという観点から、液状ビスフェノールA型、液状ビスフェノールF型、液状水添タイプのビスフェノールA型、ナフタレン型、ジシクロペンタジエン型、ビフェニル型が好ましく、液状ビスフェノールA型、液状ビスフェノールF型、ビフェニル型がより好ましい。
【0040】
前記(B2)熱硬化性樹脂の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、80質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。熱硬化性樹脂の配合量が前記下限未満では、電子部品を固着させるために十分な強度が得られないため、落下衝撃に対する耐性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス組成物中の硬化成分の含有量が減少し、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にある。
【0041】
前記(B3)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリル酸共重合体が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、飽和物であってもよく、不飽和物であってもよい。また、これらの熱可塑性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの熱可塑性樹脂の中でも、得られる導電性組成物の接着強度の観点から、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂が好ましい。
【0042】
前記(B3)成分の重量平均分子量は、熱可塑性樹脂の流動性の観点から、0.2万〜50万であることが好ましく、0.3万〜25万であることがより好ましく、0.4万〜10万であることが更に好ましく、0.5万〜8万であることが特に好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
【0043】
前記(B3)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、8質量%以上35質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、12質量%以上25質量%以下であることが特に好ましい。前記(B3)成分の配合量が前記下限未満では、導電性組成物の接着強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる導電性組成物の粘度が高くなり、塗布性が低下する傾向にある。
【0044】
[(C)成分]
本発明に用いる(C)活性剤としては、前記前処理剤に用いる(X)活性剤と同様のものを用いることができる。なお、本発明の導電性組成物においては、リフロー処理の際に前記前処理剤の(X)活性剤を利用できるので、(C)成分の配合量を減らすことができる。また、本発明の導電性組成物においては、(C)成分を含有しなくてもよい。
【0045】
(C)成分を配合する場合、(C)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。(C)成分の配合量が前記下限未満では、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、導電性組成物の絶縁性が低下する傾向にある。
【0046】
[(D)成分]
(D)樹脂硬化剤は、前記(B)成分として(B2)熱硬化性樹脂を用いる場合に用いる。この(D)成分としては、前記前処理剤に用いる(Z1)樹脂硬化剤と同様のものを用いることができる。なお、本発明の導電性組成物においては、リフロー処理の際に前記前処理剤の(Z1)樹脂硬化剤を利用できるので、(D)成分の配合量を減らすことができる。また、本発明の導電性組成物においては、(D)成分を含有しなくてもよい。
【0047】
(D)成分を配合する場合、(D)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。(D)成分の配合量が前記下限未満では、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応性が速くなり、ポットライフが短くなる傾向にある。
【0048】
[(E)成分]
(E)重合性化合物は、前記(B)成分として(B3)熱可塑性樹脂を用いる場合に用いる。この(E)成分は、重合させること硬化させることができるので、フラックス組成物に熱硬化性を付与できる。
(E)重合性化合物は、1分子内に1つ以上の不飽和二重結合を有するものであり、具体的には、(E1)1分子中に2つ以上の不飽和二重結合を有するラジカル重合性樹脂や、(E2)1分子内に1つの不飽和二重結合を有する反応性希釈剤である。この(E)成分としては、得られる導電性組成物の接着強度および塗布性のバランスの観点から、前記(E1)成分および前記(E2)成分の両方を含有することが好ましい。
【0049】
前記(E1)ラジカル重合性樹脂は、1分子内に2つ以上の不飽和二重結合を有する樹脂である。この(E1)成分としては、例えば、重量平均分子量が800以上で、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性樹脂である。前記(E1)成分を適量添加することにより、得られる導電性組成物の接着強度を向上できる傾向にある。前記(E1)成分としては、例えば、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコンアクリレート樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記(E1)成分の重量平均分子量は、1000以上10000以下であることが好ましく、1200以上5000以下であることがより好ましい。
【0050】
前記(E1)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上35質量%以下であることが特に好ましい。前記(E1)成分の配合量が前記下限未満では、得られる導電性組成物の接着強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる導電性組成物の粘度が高くなり、塗布性が低下する傾向にある。
【0051】
前記(E2)反応性希釈剤は、1分子内に1つの不飽和二重結合を有する反応性希釈剤である。この(E2)成分は、常温(25℃)において液体であり、かつ熱可塑性樹脂などを溶解させることができるものである。前記(E2)成分としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。これらの反応性希釈剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの反応性希釈剤の中でも、熱可塑性樹脂などの溶解性や接着強度の観点からは、テトラヒドロフルフリルアクリレートが好ましい。
【0052】
前記(E2)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、15質量%以上55質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。前記(E2)成分の配合量が前記下限未満では、得られる導電性組成物の粘度が高くなり、塗布性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる導電性組成物の接着強度が低下する傾向にある。
【0053】
前記(E)成分の配合量((E1)成分および(E2)成分の合計の配合量)は、得られる導電性組成物の接着強度および塗布性のバランスの観点から、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。
【0054】
[(F)成分]
(F)ラジカル重合開始剤は、前記(B)成分として(B3)熱可塑性樹脂を用いる場合に用いる。この(F)成分としては、前記前処理剤に用いる(Z2)ラジカル重合開始剤と同様のものを用いることができる。なお、本発明の導電性組成物においては、リフロー処理の際に前記前処理剤の(Z2)ラジカル重合開始剤を利用できるので、(F)成分の配合量を減らすことができる。また、本発明の導電性組成物においては、(F)成分を含有しなくてもよい。
【0055】
(F)成分を配合する場合、(F)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることが特に好ましい。前記(F)成分の配合量が前記下限未満では、ラジカル重合における反応性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる導電性組成物のシェルフライフが低下する傾向にある。
【0056】
[他の成分]
本発明に用いるフラックス組成物には、前記(B)成分、前記(C)成分、前記(D)成分、前記(E)成分および前記(F)成分の他に、必要に応じて、その他の添加剤を加えることができる。その他の添加剤としては、溶剤、チクソ剤、消泡剤、酸化防止剤、改質剤、つや消し剤、発泡剤などが挙げられる。
【0057】
[導電性組成物の製造方法]
本発明の導電性組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(A)導電性粒子とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
<前処理剤>
((X)成分)
活性剤A:アジピン酸
((Y)成分)
溶剤A:イソプロピルアルコール
溶剤B:メタノール
溶剤C:エタノール
((Z)成分)
樹脂硬化剤:ジシアンジアミド
<導電性組成物>
((A)成分)
はんだ粉末:平均粒子径20μm、はんだ融点216〜220℃、はんだ組成Sn/Ag/Cu
((B)成分)
ロジン系樹脂:水添酸変性ロジン、荒川化学工業社製、商品名「パインクリスタルKE−604」
熱硬化性樹脂:エポキシ樹脂、DIC社製、商品名「EXA−830LVP」
((C)成分)
活性剤A:アジピン酸
活性剤B:トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール(TDBD)
((D)成分)
樹脂硬化剤:ジシアンジアミド
(他の成分)
溶剤D:2−エチルヘキシルジグリコール
【0059】
[実施例1]
活性剤A0.3質量%、溶剤A9質量%、溶剤B14質量%および溶剤C76.7質量%を容器に投入し、混合して前処理剤を得た。
ロジン系樹脂50質量%、活性剤A5質量%、活性剤B1質量%、および溶剤D44質量%を容器に投入し、らいかい機を用いて混合してフラックス組成物を得た。その後、得られたフラックス組成物12質量%およびはんだ粉末88質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、混練機にて混合することで導電性組成物を調製した。
そして、電子部品(チップ部品、大きさ:12mm×12mm)に得られた前処理剤をディップコーターにより塗布し、温度20℃にて5秒間乾燥した。一方で、基板(電極ピッチ:0.25mm、電極間隔:0.25mm)に、対応するパターンを有するマスク(厚み:80μm)を用い、得られた導電性組成物を印刷した。その後、電子部品を搭載し、プリヒート温度を150〜200℃で90〜120秒間、220℃以上の保持時間を30〜60秒間、ピーク温度を240℃とする条件でリフロー処理を行い、電子部品を基板に接合した。
【0060】
[実施例2〜6]
下記表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、前処理剤および導電性組成物を得た。
そして、得られた前処理剤および導電性組成物を用い、下記表1に示す前処理剤の塗布方法に従い前処理剤を塗布した以外は実施例1と同様にして、電子部品を基板に接合した。
[比較例1〜5]
下記表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、導電性組成物を得た。
そして、基板(電極ピッチ:0.25mm、電極間隔:0.25mm)に、対応するパターンを有するマスク(厚み:80μm)を用い、得られた導電性組成物を印刷した。その後、電子部品(チップ部品、大きさ:12mm×12mm)を搭載し、プリヒート温度を150〜200℃で90〜120秒間、220℃以上の保持時間を30〜60秒間、ピーク温度を240℃とする条件でリフロー処理を行い、電子部品を基板に接合した。
【0061】
<電子部品の接合方法の評価>
電子部品の接合方法の評価(絶縁信頼性、シェルフライフ、部品の下面ボイド、部品の接合)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)絶縁信頼性
回路パターン(ライン/スペース=5mm/320μm、導体厚:35μm)を有する配線基板を準備した。そして、この配線基板のランド上に、導電性組成物を塗布した。次に、これに対応する幅5mmの合金片(組成:Sn/Ag/Cu、大きさ:5mm×20mm、厚み:1mm)を準備し、これに条件に応じて、前処理剤を塗布した後、導電性組成物上に配置し、リフロー処理により、溶融させ、試験片を得た。なお、リフロー処理の条件は、実施例1と同様の条件とした。
得られた試験片のマイグレーション試験を行い、絶縁抵抗値を測定した。なお、マイグレーション試験は、JIS Z 3284付随書6に記載の方法に準拠して行う(温度85℃、相対湿度85%、1000時間)。
そして、絶縁抵抗値に基づいて下記の基準に従って、絶縁信頼性を評価した。
○:絶縁抵抗値が1×10Ω以上である。
×:絶縁抵抗値が1×10Ω未満である。
(2)シェルフライフ
まず、導電性組成物を試料として、粘度を測定する。その後、試料を密封容器に入れ、所定温度の恒温槽に投入し、15日間保管し、保管した試料の粘度を測定する。なお、所定温度は、導電性組成物が、ロジン系はんだ組成物の場合には10℃であり、エポキシ系はんだ組成物の場合には−10℃である。そして、保管前の粘度値(η1)に対する、15日間保管後の粘度値(η2)の粘度変化率[{(η2−η1)/η1}×100%]を求める。なお、粘度測定は、JIS Z 3284付随書6に記載の方法に準拠して行う。
そして、粘度変化率に基づいて下記の基準に従って、シェルフライフを評価した。
◎:粘度変化率が、−5%以上5%以下である。
○:粘度変化率が、−20%以上−5%未満、或いは5%超20%以下である。
×:粘度変化率が、−20%未満、或いは、20%超である。
(3)部品の下面ボイド
0.5mmピッチのBGA(228ピン、Amkor社製)と、これに対応する回路パターンを有する配線基板を準備した。そして、この配線基板のランド上に、導電性組成物を塗布した。次に、BGAに条件に応じて、前処理剤を塗布した後、導電性組成物上に配置し、リフロー処理により、溶融させ、試験片を得た。なお、リフロー処理の条件は、実施例1と同様の条件とした。
得られた試験片を、X線検査装置(「NLX−5000」、NAGOYA ERECTRIC WORKS社製)を用いて、228ピンの全てを検査し、以下のような計算式よりボイド面積比率を割り出す。
ボイド面積比率(%)={(バンプ面積−バンプ中のボイドのある面積)/バンプ面積}×100
そして、ボイド面積比率に基づいて下記の基準に従って、部品の下面ボイドを評価した。
○:ボイド面積比率が、20%以上である。
×:ボイド面積比率が、20%未満である。
(4)部品の接合
0.5mmピッチのBGA(228ピン、Amkor社製)と、これに対応する回路パターンを有する配線基板を準備した。そして、この配線基板のランド上に、導電性組成物を塗布した。次に、BGAに条件に応じて、前処理剤を塗布した後、導電性組成物上に配置し、リフロー処理により、溶融させ、試験片を得た。なお、リフロー処理の条件は、実施例1と同様の条件とした。
得られた試験片について、導通抵抗値(四端子測定法)を測定した。
そして、導通抵抗値に基づいて下記の基準に従って、部品の接合を評価した。
○:導通抵抗値が、1Ω未満である。
×:導通抵抗値が、1Ω以上である。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明の電子部品の接合方法を用いた場合(実施例1〜6)には、絶縁信頼性、シェルフライフ、部品の下面ボイド、および、部品の接合の全てが良好であった。従って、本発明によれば、導電性組成物の絶縁信頼性やシェルフライフを維持しつつ、接合性の向上を図ることができることが確認された。
これに対し、電子部品に前処理剤を塗布する工程を行わない場合(比較例1〜5)には、絶縁信頼性、シェルフライフ、部品の下面ボイド、および、部品の接合のいずれか1つ以上の評価が不十分となることが分かった。
また、活性剤Bを多量に含有する導電性組成物(比較例2および4)については、ハロゲンフリーの観点からも問題がある。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の電子部品の接合方法は、電子機器のプリント配線基板に電子部品を実装するための技術として特に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1…電子部品
2…基板
3…前処理剤
4…導電性組成物
図1