(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130488
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】アトマイザ噴射装置、及びディーゼルエンジンの動作方法
(51)【国際特許分類】
F02M 69/00 20060101AFI20170508BHJP
F02M 69/08 20060101ALI20170508BHJP
F02M 67/02 20060101ALI20170508BHJP
F02M 43/04 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
F02M69/00 310E
F02M69/00 320P
F02M69/08
F02M67/02
F02M43/04
【請求項の数】31
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-502021(P2015-502021)
(86)(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公表番号】特表2015-511680(P2015-511680A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】AU2013000337
(87)【国際公開番号】WO2013142921
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月30日
(31)【優先権主張番号】2012901256
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】ウィバリー,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ダイアー,レミー・ポール
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第00/028097(WO,A1)
【文献】
特表平05−500392(JP,A)
【文献】
特開平05−026126(JP,A)
【文献】
米国特許第04558664(US,A)
【文献】
米国特許第05044552(US,A)
【文献】
特開昭56−061509(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第00111249(GB,A)
【文献】
米国特許第05117782(US,A)
【文献】
米国特許第05934206(US,A)
【文献】
米国特許第04782794(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 69/00
F02M 69/08
F02M 67/02
F02M 43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アトマイザ噴射装置であって、
中心軸に沿って粒子状スラリー燃料の噴出流を放出する第1の出口で終端する中央管と、
前記中央管に近接する構造体であって、管とともに、前記第1の出口まわりにある噴流ガスの1つまたは複数の第2の出口と連通する管状のダクト手段を画定する構造体であり、前記ダクト手段が、超音速速度の噴流ストリームとして前記第2の出口から噴出するように前記噴流ガスを加速させるように構成された、構造体と
を備え、
前記第2の出口に近接するとともに前記中央管の面に対向する前記構造体の1つまたは複数のアンダーカット内面が、噴出した超音速噴流ストリームを、前記第1の出口の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流内へと向けそれによって燃料が霧化されるように、軸方向に収束する、
アトマイザ噴射装置。
【請求項2】
前記構造体が、前記中央管を囲み、そこにおいて、前記1つまたは複数の第2の出口が前記第1の出口まわりに環状出口を備え、前記第2の出口に近接する前記構造体の前記1つまたは複数のアンダーカット内面が、前記第2の出口に近接する連続的に縁をなす面部分を備えた、請求項1に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項3】
前記対向する前記中央管の面は、前記中央管の円錐形またはピラミッド形の端面であって、前記第1の出口の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流内への前記噴出した超音速噴流ストリームの前記方向付けをさらに容易にするように、前記連続的に縁をなす面部分と向かい合うように配置された、端面を備えた、請求項2に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項4】
前記対向する前記中央管の面は、前記中央管の1つまたは複数の斜めの端面であって、前記第1の出口の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流内への前記噴出した超音速噴流ストリームの前記方向付けをさらに容易にするように、前記1つまたは複数の内面と向かい合うように配置された、端面を備えた、請求項1に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項5】
前記1つまたは複数の内面および1つまたは複数の端面が、動作中、前記中心軸に対する前記噴流ストリームの収束の角度が、5〜90°の範囲である、請求項3または4に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項6】
前記第2の出口に近接する前記1つまたは複数の内面が、前記噴流ガスの流れ方向において、少なくとも部分的に曲線からなる凹形をなす、請求項1から5のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項7】
前記第2の出口に近接する前記1つまたは複数の内面が、前記噴流ガスの流れ方向において全体的に直線状である、請求項1から5のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項8】
前記ダクト手段が、前記噴流ガスの流れ方向においてなだらかに収束−発散する制限構造の手段によって、噴流ガスを加速するように構成された、請求項1から7のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項9】
前記第1の出口が、全体的に円形であり、前記超音速噴流ストリームの断面が環状である、請求項1から8のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項10】
前記第1の出口の断面が長円形または細長く、したがって前記粒子状スラリー燃料の噴出流が扇形噴出流である、請求項1から8のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項11】
前記第1の出口が、細長いスロットであり、前記1つまたは複数の第2の出口が、前記第1の出口の両側に全体的に前記第1の出口にそれに平行な一対のスロットを備えた、請求項1から8および10のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項12】
燃焼装置であって、
燃焼室を画定する構造体と、
請求項1から11のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置であり、粒子状スラリー燃料を前記燃焼室内に噴射し、随伴する噴流ストリームによって前記燃料を霧化するように配置され構成された、アトマイザ噴射装置と
を備える、燃焼装置。
【請求項13】
圧縮点火エンジンまたはディーゼルエンジンとして動作するように構成された、請求項12に記載の燃焼装置。
【請求項14】
アトマイザ噴射装置であって、
中心軸に沿って粒子状スラリー燃料の噴出流を放出する第1の出口で終端する中央管と、
前記中央管を囲む構造体であって、管とともに、前記第1の出口まわりにある噴流ガスの第2の出口と連通するダクトを画定する構造体であり、前記ダクトが、超音速速度の噴流ストリームとして前記第2の出口から噴出するように前記噴流ガスを加速させるように構成された、構造体と
を備え、
前記第2の出口が、前記噴出した噴流ストリームが前記第1の出口の下流の前記噴流ストリームの仮想オリフィス内に前記噴出流をとどめるように、前記粒子状スラリー燃料の噴出流に対して軸方向に収束するように、前記中央管の面に対向する前記構造体の1つまたは複数のアンダーカット内面を有して構成され、それによって前記粒子状スラリー燃料の下流の霧化が促進され、前記粒子状スラリー燃料による前記第1の出口の摩損が減少される、
アトマイザ噴射装置。
【請求項15】
前記噴出した噴流ストリームが、前記第1の出口の前記燃料の放出の横方向に、前記粒子状スラリー燃料の噴出流から間隔があけられ、それによって軸方向に収束する噴流ストリームが、前記仮想オリフィスのすぐ上流で激しい乱流になり、前記スラリー燃料の霧化がさらに促進される、請求項14に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項16】
前記粒子状スラリー燃料の噴出流に制限を加える前記仮想オリフィスが、前記噴出流の下流発散を引き起こし、それによって前記粒子状スラリー燃料の霧化が促進される、請求項14または15に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項17】
前記構造体の前記1つまたは複数のアンダーカット内面は、前記第2の出口に近接する前記構造体の連続的に縁をなす面部分を備えた、請求項14、15または16に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項18】
前記第2の出口が、前記第1の出口まわりに環状出口を備えた、請求項14から17のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項19】
前記対向する前記中央管の面は、前記中央管の円錐形またはピラミッド形の端面であって、前記粒子状スラリー燃料の噴出流への前記噴出した超音速噴流ストリームの前記軸方向収束をさらに促進するように、前記連続的に縁をなす面部分と向かい合うように配置される、端面を備えた、請求項17または18に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項20】
前記1つまたは複数の内面および前記1つまたは複数の端面が、動作中、前記中心軸に対する前記噴流ストリームの収束の角度が、5〜90°の範囲である、請求項19に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項21】
前記第2の出口に近接する前記内部に連続的に縁をなす面部分が、前記噴流ガスの流れ方向に、少なくとも部分的に曲線からなる凹形をなす、請求項17から20のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項22】
前記第2の出口に近接する前記連続的に縁をなす面部分が、前記噴流ガスの流れ方向に全体的に直線状である、請求項17から20のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項23】
前記第2の出口が、前記第1の出口まわりの環状出口を備えた、請求項14に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項24】
前記ダクトが、前記噴流ガスの流れ方向においてなだらかに収束−発散する制限手段によって、噴流ガスを加速するように構成された、請求項14から23のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項25】
前記第1の出口が、全体的に円形であり、前記超音速噴流ストリームの断面が環状である、請求項14から24のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項26】
前記第1の出口の断面が長円形または細長く、したがって前記粒子状スラリー燃料の噴出流が扇形噴出流になる、請求項14から25のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
【請求項27】
燃焼装置であって、
燃焼室を画定する構造体と、
請求項14から26のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置であり、粒子状スラリー燃料を前記燃焼室内に噴射し、随伴する噴流ストリームによって前記燃料を霧化するように配置され構成された、アトマイザ噴射装置と
を備えた、燃焼装置。
【請求項28】
圧縮点火エンジンまたはディーゼルエンジンとして動作するように構成される、請求項27に記載の燃焼装置。
【請求項29】
燃料を、中央管が終端する第1の出口から、前記第1の出口のまわりの1つまたは複数の第2の出口から噴出して前記燃料を霧化する随伴する噴流ガスと共に、エンジンの燃焼室内に噴射するように構成された燃料噴射装置が装着されたディーゼルエンジンの動作方法であって、前記燃料を粒子状スラリー燃料として噴射し、前記第2の出口に隣接するとともに前記中央管の面に対向する1つまたは複数のアンダーカット内面で前記噴流を収束させて前記燃焼室内において前記燃料に衝突させ圧縮点火のためにその内部で前記燃料を霧化するステップを含み、前記ガスの噴流が、制限部を通って供給され、前記制限部の上流のガス圧力が、前記燃焼室内の圧力の少なくとも2:1であり、それによって前記ガスの噴流が超音速速度になる、方法。
【請求項30】
前記制限部の上流の前記ガス圧力が、少なくとも約30MPAである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記スラリー燃料は、石炭水スラリー燃料である、前記請求項29または30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭水燃料などの粒子状スラリー燃料、霧化するのが困難な他の燃料および/または研磨性を有する燃料をディーゼルエンジンおよび他の高圧反応器または燃焼器内に噴射することに関する。
【0002】
本発明は、さらに、CO
2回収を目的として、石炭水燃料、霧化するのが困難な他の燃料および/または研磨性を有する燃料を、酸素富化噴流ガスを用いて、ディーゼルエンジンまたは直接燃焼タービン内に霧化することに関する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼルエンジンにおける従来のディーゼル油および重質燃料油に関する現在の噴射技術は、燃料の圧力霧化を利用する。これは、燃料を高圧(50〜200MPa)で小さなオリフィス(0.2〜1mm)を通してエンジン内にポンプ輸送することを含む。これによって、速い速度が生じ(典型的には、200〜400m/s)、急速に噴出流の分解および霧化が起こる。分解および霧化は、噴射装置のノズルオリフィスを通って出ていく液体ストリームにおける乱流、および高速の液体とシリンダの上側部分の比較的密に圧縮された給気との相互作用を含む、いくつかの作用により起こる。
【0004】
ここしばらく、ディーゼルエンジンに石炭水スラリー燃料を使用することに関心が集まっている。石炭水スラリー燃料の特性は、粒子の濃度が高く(50〜60重量%石炭、1〜2重量%石炭鉱物)、それがより高い粘着性および表面張力をもたらすので、ディーゼル油および燃料油とは著しく異なる。さらに、石炭の粒子および鉱物の粒子には、高い研磨性がある。これらの燃料のディーゼルエンジン内への噴射は、以下にあるいくつかの技術的な課題を引き起こす。
1.各点火サイクルの間、正しい時間および速度で、噴射装置のノズルに向かう燃料を加圧し計量して供給すること。
2.混合を生じさせて所望の燃焼速度を実現し、燃焼を完了させ研磨性を有する燃焼残留物質および未燃焼燃料の形成を減少させるように、微粉化状態の燃料を燃焼室内へと推進すること。
3.摺動するクリアランスをすぐに詰まらせて摩損を引き起こす恐れがある粒子の混入から燃料システム(例えば、逆止め/ベント弁、締切弁スライド、ノズルのスライド弁)におけるスライド面およびシール面を保護すること。
4.研磨およびキャビテーションの両方による摩損およびダメージを最低限に抑えるように、表面特に弁座部およびノズルを横切る燃料の速度を最低限に抑えること。
5.シャットダウンの間のスラッジおよび妨害物の形成を防止するように、噴射装置から燃料を流すことができるようにすること。
6.噴射装置を動作させるためのエンジンにおける所内動力を最低限に抑えること。
【0005】
これらの問題および通常の燃料油に比べて石炭水スラリー燃料の特性が非常に異なるにもかかわらず、石炭水スラリー燃料の噴射は、具体的には1978〜1993年にわたって米国エネルギ省(USDOE)による援助のもと、いくつかの実証プログラムにおいて成功が実証された。これらの中で最も成功したものによって、従来からのディーゼルエンジン燃料油用に使用されているシステムに比較的少ない変形を加えることより噴射システムの性能が合理的になることが実証された。実証された変形形態は、増大された噴射圧力の使用、シール面のシールオイル保護、カーバイドまたはセラミックの弁座部、およびセラミックまたはだダイヤモンドの小型ノズルを含んでいた。
【0006】
しかし、変形が加えられた従来の圧力霧化装置の手法は成功裏に実証されたが、弁座部の摩損およびノズルオリフィスの浸食には依然として問題があり、したがって噴射装置の寿命が約2,000時間に制限される恐れがある。これは、噴射装置ノズルの取り替えと噴射装置の整備の間の時間が16,000時間を越える、燃料油を使用した現在の大型エンジンの場合よりも著しく短い。
【0007】
全般的に、変形が加えられた従来の圧力アトマイザについてのおそらく2,000時間という噴射装置寿命は、不十分であると考えられ、それによって、研究開発段階を越えたディーゼルエンジンにおける石炭の使用の開発がずっと妨げられてきた。
【0008】
これらの技術的な問題、および噴射装置の加速する摩損は、霧化の質を低減させ、結果的に、霧化された燃料の乾燥(dryiqg)段階中に石炭の粒子がより大きな塊になってしまう。石炭の有効粒径が増大すると粒子加熱速度が減少し、燃焼が遅くなり、排気内の未燃チャーの量が増える。さらに、石炭の塊状集積は、石炭塊内に含まれる個々のアッシュ粒子の融解により、燃焼から形成されるフライアッシュの粒径を増大させる傾向がある。最終的に霧化の質が低下した結果、チャーの量が増加し、燃焼ガス中のフライアッシュの粒径が増大し、その両方により、シリンダおよびピストンリングの摩損が増大し、リングの焼き付きによる他の問題、排気弁の摩損、およびターボチャージャのタービンのすり減りが増加する。
【0009】
米国特許第4,569,484号には、霧化された石炭スラリーをディーゼルエンジン内に噴射する噴射装置が開示されている。穴の開いたディスクまたは円錐形のアスピレータを用いて、圧縮ガスが噴射装置内で燃料を霧化する。この装置は、アトマイザ内でスラリーと高速の空気を混合するので、アトマイザノズルは、非常に高速のスラリーに曝され、それによって激しい浸食および摩損が引き起こされることになる。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題の1つまたは複数に対処しそれを少なくとも一部軽減し、それによってディーゼルエンジンにおける石炭水スラリー燃料の使用を促進することである。
【0011】
本発明は、以前のディーゼルエンジンに用いられ長きにわたって放棄されてきた技術、すなわち噴流噴射を採用しそれに変形を加えるという概念を含意する。噴流噴射は、もともとはディーゼルエンジンに用いられていたが、1930年代前半から、主として噴流空気を形成するのに圧縮機を駆動させるときの力の損失(典型的には、ディーゼル油および燃料油の場合、エンジン出力の7〜8%)により、濃密な(solid)噴出流(すなわち、コヒーレント(coherent)液体噴出流)噴射によって完全に取って代わられた。これは、噴流霧化(例えば良好な霧化および混合)の利点より勝っており、それによってスプレイ時間を中断または延長するような噴射の間の液圧の圧力波が減少した。
【0012】
以前の噴流噴射システムには以下のことが含まれていた。
・多段圧縮機を介して5〜8MPaまで、エンジン圧縮圧力よりも高い数MPaの圧力で空気の適切な供給を可能にする空気圧縮機。減速したエンジン速度では、噴霧弁はより長い時間開き、それによって噴射空気圧が、通常、アイドルのときの4MPaまで低下した。これによって、燃料の速すぎる噴射から結果的に生じる燃焼ノックが防止された。また、過剰な噴射空気の広がりによる燃焼に対する冷却効果が減少した。
・噴射ならびにエンジン始動の際の高圧空気の定常流をもたらす十分な能力がある高圧空気ビン。
・適切に霧化され分配される状態で高圧空気を燃焼室内に吹き付けることによって計量済み燃料を噴射する、各エンジンシリンダにあるアトマイザ。液体だけでなく粉末石炭燃料用でもあるアトマイザは、様々な内部混合装置を使用しており、そこで、噴流空気と燃料がノズルを通って押し出される前に混ぜ合わされる。これらのノズルは、同時期の開発にもかかわらず、チョークされた圧縮性の流れの知識を使用せずに設計されていた。これらは、等エントロピー流れが完全に理解される前は利用が放棄されていた。
・燃料の流れと空気の霧化の両方を制御することによって噴射プロセスを制御するために、アトマイザの弁のタイミングおよびリフティングを行うカム機構。
・速度および負荷のエンジン要件に従って、適切な量の燃料を各アトマイザに計量して送達する燃料ポンプ。噴流霧化の場合、燃料圧力は、主に、開口圧力が(燃料システム内へと逆流させようとする)シリンダ内の燃焼圧力のピークよりもはるかに大きく設定される、ばね荷重締切弁によって決定されていた。
【0013】
明細書中の一切の先行技術への言及は、この先行技術がオーストラリアまたはいずれかの他の管轄の共通の一般的な知識の一部を形成すること、またはこの先行技術が当業者によって関連していると確認され、理解され、みなされることが合理的に予想され得るということを、承認するまたはいかなる形態でも示唆するとみなされず、かつみなされるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、粒子状スラリー燃料でのエンジンの動作を促進させるかたちで、(噴射装置アセンブリ内ではなく)燃焼室内において、その場で、ガスの噴流が燃料に衝突し燃料を霧化するように、アトマイザ噴射装置(atomiser injector)を構成することに関する。
【0015】
本発明は、第1の態様において、アトマイザ噴射装置であって、
中心軸に沿って粒子状スラリー燃料の噴出流を放出する第1の出口で終端する中央管と、
中央管に近接する構造体であって、管とともに、前記第1の出口まわりにある噴流ガスの1つまたは複数の第2の出口と連通する管状のダクト手段を画定する構造体であり、ダクト手段が、超音速速度の噴流ストリームとして第2の出口から噴出するように噴流ガスを加速するように構成される、構造体と
を備え、
第2の出口に近接する前記構造体の1つまたは複数の内面が、噴出した超音速噴流ストリームを、第1の出口の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流内へと向けそれによって燃料が霧化されるように、軸方向に収束する、
アトマイザ噴射装置を提供する。
【0016】
一実施形態において、前記構造体は、中央管を囲み、そこにおいて、前記1つまたは複数の第2の出口は、第1の出口まわりに環状出口を備え、第2の出口に近接する前記構造体の1つまたは複数の内面は、第2の出口に近接する連続的に縁をなす面部分を備える。好ましくは、中央管の円錐形またはピラミッド形の端面は、第1の出口の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流内への噴出した超音速噴流ストリームの前記方向付けをさらに容易にするように、連続的に縁をなす面部分と向かい合うように配置される。
【0017】
他の実施形態において、中央管の1つまたは複数の斜めの端面は、第1の出口の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流内への噴出した超音速噴流ストリームの前記方向付けをさらに容易にするように、1つまたは複数の内面と向かい合うように配置される。
【0018】
有利には、1つまたは複数の内面および1つまたは複数の端面は、動作中、前記中心軸に対する噴流ストリームの収束の角度が、5〜90°、好ましくは30〜85°、より好ましくは40〜80°になるようにされる。
【0019】
第2の出口に近接する1つまたは複数の内面は、噴流ガスの流れ方向において、少なくとも部分的に曲線からなる凹形であってよい。
第2の出口に近接する1つまたは複数の内面は、別法としてまたはそれに加えて、噴流ガスの流れ方向において全体的に直線状であってよい。
【0020】
ダクト手段は、噴流ガスの流れ方向において好ましくはなだらかに収束−発散する制限構造の手段によって、噴流ガスを加速するように構成され得る。
一実施形態において、第1の出口は、全体的に円形であり、超音速噴流ストリームの断面が環状である。
【0021】
別法として、第1の出口の断面は、長円形または細長くてよく、したがって粒子状スラリー燃料の噴出流は扇形噴出流になる。
第1の出口は、細長いスロットであり、1つまたは複数の第2の出口は、第1の出口の両側に全体的にそれに平行な一対のスロットを備える。
【0022】
第2の態様において、本発明は、アトマイザ噴射装置であって、
中心軸に沿って粒子状スラリー燃料の噴出流を放出する第1の出口で終端する中央管と、
中央管を囲む構造体であって、管とともに、前記第1の出口まわりにある噴流ガスの第2の出口と連通するダクトを画定する構造体であり、ダクトが、超音速速度の噴流ストリームとして第2の出口から噴出するように噴流ガスを加速するように構成される、構造体と
を備え、
前記第2の出口が、噴出した噴流ストリームが第1の出口の下流の噴流ストリームの仮想オリフィス内に噴出流をとどめるように粒子状スラリー燃料の噴出流に対して軸方向に収束するように構成され、それによって粒子状スラリー燃料の下流の霧化が促進され、粒子状スラリー燃料による第1の出口の摩損が減少される、
アトマイザ噴射装置を提供する。
【0023】
噴出した噴流ストリームは、第1の出口の燃料の放出の横方向に、粒子状スラリー燃料の噴出流から間隔があけられてよく、それによって軸方向に収束する噴流ストリームが、前記仮想オリフィスのすぐ上流で激しい乱流になり、スラリー燃料の霧化がさらに促進され得る。
【0024】
好ましくは、粒子状スラリー燃料の噴出流に制限を加える仮想オリフィスは、噴出流の下流発散を引き起こし、それによって粒子状スラリー燃料の霧化が促進される。
有利には、第2の出口は、噴出した噴流ストリームが、第2の出口に近接する前記構造体の内部の連続的に縁をなす面部分によって、部分的に粒子状スラリー燃料の噴出流に対して軸方向に収束するように構成される。
【0025】
第2の態様の一実施形態において、第2の出口は、第1の出口まわりに環状出口を備える。
中央管の円錐形またはピラミッド形の端面は、粒子状スラリー燃料の噴出流への噴出した超音速噴流ストリームの前記軸方向収束をさらに促進するように、連続的に縁をなす面部分と向かい合うように配置され得る。
【0026】
本発明の第2の態様において、ダクトは、噴流ガスの流れ方向において好ましくはなだらかに収束−発散する制限手段によって、噴流ガスを加速するように構成され得る。
本発明は、さらに、燃焼装置であって、
燃焼室を画定する構造体と、
本発明の第1の態様または第2の態様によるアトマイザ噴射装置であり、粒子状スラリー燃料を燃焼室内に噴射し、随伴する噴流ストリームによって燃料を霧化するように配置され構成される、アトマイザ噴射装置と
を備える、燃焼装置を提供する。
【0027】
一実施形態において、燃焼装置は、圧縮点火エンジンまたはディーゼルエンジンとして動作するように構成される。
第3の態様において、本発明は、燃焼装置であって、
燃焼室を画定する構造体と、
粒子状スラリー燃料の噴出流を、燃料を霧化する随伴するガスの噴流ストリームと共に燃焼室内に噴射するように構成される、アトマイザ噴射装置と
を備え、
アトマイザ燃料噴射装置が、さらに、噴流ストリームが燃焼室内において燃料に衝突してそれを霧化するように構成され、それによって粒子状スラリー燃料を用いた装置の動作が促進される、
燃焼装置を提供する。
【0028】
第3の態様の一実施形態において、燃焼装置は、圧縮点火エンジンまたはディーゼルエンジンとして動作するように構成される。
第3の態様において、アトマイザ噴射装置は、噴流ストリームが粒子状スラリー燃料の噴出流まわりに向けられ第1の出口の下流の噴流ストリームの仮想オリフィス内に噴出流をとどめるように、噴出流に対して収束するように構成され得る。好ましくは、噴流ストリームは、燃料の放出の横方向に、粒子状スラリー燃料の噴出流から間隔があけられ、それによって軸方向に収束する噴流ストリームが、前記仮想オリフィスのすぐ上流で激しい乱流になり、スラリー燃料の霧化がさらに促進される。粒子状スラリー燃料の噴出流に制限を加える仮想オリフィスは、好ましくは、噴出流の下流発散を引き起こし、それによって粒子状スラリー燃料の霧化が促進される。
【0029】
ガスの噴流が、燃料出口の下流したがって燃焼室内のその場で燃料に衝突してそれを霧化する本発明の構造は、本明細書において「外部混合」と称される。というのも、ノズル内で混合が起こる上述した以前の噴流噴射装置の「内部混合」とは対照的に、高速の噴流ガスとスラリー噴出流の混合は、必ずしも排他的ではないが、本質的に、ノズルアセンブリの外部で起きるからである。外部混合を使用することによって、ノズルの摩損が大幅に減り、実質的にそれをなくすことさえ可能になり、霧化がいっそう良く実施され得るようになる。
【0030】
少なくとも、1つまたは複数の好ましい実施形態では、本発明によって、実質的に、圧縮噴流ガス(空気または他のガス)を供給する際に損失するエネルギが減少し、それによって、最新のエンジンについての噴流霧化の利点が現実のものとなり、さらに、粒子状スラリー燃料の使用を容易にする他の恩恵を受けることが可能になる。
【0031】
スラリー燃料および液体燃料で動くボイラは、すでに様々な超音速霧化デバイスを使用しているが、ボイラ用途は、ほぼ大気圧で、連続的な、比較的低い燃料流量での炉内における点火を含むことに留意されよう。最大流量で高圧に向かって断続的に動作することによって、実質的に、必要とされる構造的設計が変わるので、既存の超音速デバイスはエンジンでの動作に適さなくなる。
【0032】
本発明の装置は、石炭水スラリー、木炭水スラリー、藻類スラリー燃料、エマルジョン、木粉スラリーおよび褐炭スラリーなどの重質燃料および/または研磨性を有する霧化が困難な燃料に非常に適している。
【0033】
装置は、やはりまた、CO
2の回収が必要な場合、石炭で動くディーゼルエンジンまたは石炭タービンの酸素による燃焼(oxy−firing)に必要とされるような、石炭水燃料を酸素富化噴流ガスで霧化するのにも非常に適している。この用途の場合、ノズル内での事前の燃焼を防止するために、燃焼室に入るまでは、燃料は酸素ストリームと接触しないことが望ましい。
【0034】
装置は、通常1MPaを越える圧力で運転されるガス化装置または高圧燃焼室などの他の高圧室内への霧化にも非常に適していると予想される。
一実施形態では、アトマイザ噴射装置は、ノズルを含む。ノズルは、
a.同軸管であって、噴射装置からノズルを通ってノズル出口で中央管から出る実質的に液体の流体を運ぶ中央管を含む、同軸管、および
b.前記中央管まわりに配置され中央管と共通の軸を有し環状通路を画定する環状スリーブであって、この環状通路が、超音速よりも遅い速度で流体を運び環状通路を通って噴流流体を流すための手段として噴流流体を流すためのものであり、環状スリーブは、収束セクションに続いてスロート、そして環状通路の出口近くの発散セクションと続いて画定し、それによって前記噴流流体が超音速速度で噴射の最後にエンジンの本質的に最高燃焼室圧力に減少された圧力で噴出する、環状スリーブ、を有する。
収束セクションおよび発散セクションの外形によって、ガス速度の一定の変動がもたらされる。
【0035】
さらなる一態様において、本発明は、燃料を、それを霧化する随伴する噴流ガスと共にエンジンンの燃焼室内に噴射するように構成される燃料噴射装置が装着されたディーゼルエンジンの動作方法であって、噴流を収束させて燃焼室内において燃料に衝突させ圧縮点火のためにその内部で燃料を霧化することによって、例えば石炭水スラリー燃料である粒子状スラリー燃料を噴射するステップを含み、ガスの噴流が、制限部を通って供給され、制限部の上流のガス圧力が、燃焼室内の圧力の少なくとも2:1であり、それによってガスの噴流が超音速で移動することになる、方法を提供する。制限部の上流のガス圧力は、少なくとも約30MPaである。
【0036】
文脈でその他の方法で必要とされる場合を除いて、本明細書で使用されるような、用語「備える」、および「備えている」、「備える」、「備えた」などの用語の活用形は、他の添加物、構成要素、完全体またはステップを排除する意図はない。
【0037】
添付の図面を参照して、本発明を一例としてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1の実施形態による、アトマイザ噴射装置の概略的な軸方向断面図である。
【
図2】
図1に示されるアトマイザ噴射装置の端面図である。
【
図3】
図1の半径方向領域Aの1つの最善状態の幾何学的な図である。
【
図4】アトマイザ噴射装置の動作中の、スラリー燃料の流れ、噴流ガスの流れおよびそれらの下流相互作用を示す、
図3に対応する流れ図である。
【
図5】本発明の第2の態様および第3の態様の第2の実施形態の
図1と同様の図である。
【
図6】本発明の第2の態様および第3の態様の第2の実施形態の
図2と同様の図である。
【
図7】本発明の第2の態様および第3の態様の第3の実施形態の
図1と同様の図である。
【
図8】本発明の第2の態様および第3の態様の第3の実施形態の
図2と同様の図である。
【
図9】本発明の第2の態様および第3の態様の第4の実施形態の
図1と同様の図である。
【
図10】本発明の第2の態様および第3の態様の第4の実施形態の
図2と同様の図である。
【
図11】超音速噴流ストリームとの相互作用前にスラリー噴出流の不安定さを増大させるように設計されたアトマイザ噴射装置の変形形態を示す図である。
【
図12】超音速噴流ストリームとの相互作用前にスラリー噴出流の不安定さを増大させるように設計されたアトマイザ噴射装置の変形形態を示す図である。
【
図13】予め霧化して霧化を増大させてからメインの超音速噴流ストリームと一緒にする、アトマイザ噴射装置の変形構造を示す図である。
【
図14】予め霧化して霧化を増大させてからメインの超音速噴流ストリームと一緒にする、アトマイザ噴射装置の変形構造を示す図である。
【
図15】本発明の第3の態様のポペット弁タイプの実施形態を示す図である。
【
図16】本発明の第3の態様のポペット弁タイプの実施形態を示す図である。
【
図17】噴流ガスの消費を最低限に抑える一方で噴射イベント全体にわたる均一な霧化を確実にする、電子制御された噴流ガスと燃料の噴射を示す概略的なレイアウト図である。
【
図18】噴流ガスの消費を最低限に抑える一方で噴射イベント全体にわたる均一な霧化を確実にする、電子制御された噴流ガスと燃料の噴射を示す概略的なレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の好ましい態様は、エンジン燃焼室に入ってすぐのスラリー燃料への超音速噴流ガスの激しいせん断および変動する動的アクションによってディーゼルエンジンに石炭水スラリー燃料を噴射する超音速アトマイザである。
【0040】
図1、2に示されるアトマイザ噴射装置10のような一実施形態は、中央管12を含む。中央管12は、中心軸11に沿って粒子状石炭水スラリー燃料の噴出流100(
図4)を出す、ノズル15の第1の、すなわち燃料出口16で終端する中央通路14を画定する。
【0041】
スリーブ20の形の構造体は、管とともに、燃料ノズル15まわりの環状出口25と連通する、噴流ガスのための環状ダクト22を画定するように中央管12を囲んでいる。ダクト22は、例えば図示のような収束−発散セクションである制限部すなわちスロート26を含み、それによって噴流ガスが加速され、環状出口25から超音速速度の噴流ストリーム110(
図4)として出てくる。
【0042】
噴流ガス出口25に近接する、スリーブ20の内側に連続的に縁をなす面部分30は、アンダーカットを形成する。アンダーカットは、燃料の最適な噴霧のために、噴出した超音速噴流ストリーム110を燃料ノズル15の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流100内へと向けるように軸方向に収束している。噴流ガスストリーム110のこの方向付けは、アンダーカット面部分30に対向する、ノズル15の燃料出口16まわりの中央管12の端部にある円錐形またはピラミッド形の面40によってさらに促進される。これらの向かい合った面30、40は、軸11に向かって相対的に内方に発散するのが好ましい。
【0043】
環状ダクト22に噴流ガスを導入する手段は、圧縮機または蒸気ボイラであってよい。ポンプは、典型的には、中心管12に液体燃料を送達するのに設けられる。このポンプによって、液体燃料は、速度約10〜約100m/sで中央管を通って流され得る。噴流ガス出口における噴流流体ガスの速度は、約330〜約600m/sの範囲内であってよい。
【0044】
霧化するガスは、圧縮空気、圧縮されたエンジン排気ガス、天然ガスなどの圧縮燃料ガス、有利にはエンジン冷却システムおよびエンジン排気ガスから得られる熱を使用するボイラから生成される蒸気、またはCO
2回収目的の酸素による燃焼に関するような酸素−排気ガス混合物であってよい。
【0045】
ガスを噴流の霧化に必要とされるものまでに圧縮するのに必要な仕事は、概ね、達成されるべき圧力比に比例し、したがって、以前のエンジン噴流アトマイザ(約5〜6MPa)での使用を越える追加の圧縮は比較的小さい(つまり、ディーゼルエンジン用途の場合、30Mpa)ことに留意されよう。これは、単に、霧化の達成において超音速噴流ガスをより効果的に使用することで補われるだけでなく、それによってより小さな質量の噴流ガスが使用可能になる。一般に、全体的な超音速流を達成するには、制限部26の上流のガス圧力は、噴流ストリーム110が中に噴射される燃焼室内の圧力の少なくとも約2:1でなければならない。実際の比が2:1のとき、1.85〜2.15の範囲にわたる変動が許容可能であると考えられる。
【0046】
収束−発散セクション26は、噴流ガスが噴射装置を離れ燃料噴出流を捕える前までに超音速速度まで加速されるように構成される。流れは、その断面のあらゆる場所で超音速であるわけではなく、その局所速度は径方向にも局所的にも変わり、変動する。発散セクションおよびスロートは、例えば約1.8である、約1.3〜約3の範囲内の面積比を有することができる。高い度合いの霧化を達成するには、石炭水スラリー噴出流に比べて噴流ガスの運動量フラックスを高くすることが必要である。運動量フラックスは、噴流ガス密度とその速度の二乗の積として定義される。ディーゼルエンジンでは、噴射の際の圧力は少なくとも5MPaであり、噴流ガスの圧力は15MPaよりも大きいので、ガス密度はボイラ用途よりもはるかに高く、したがって以前のディーゼルエンジンに使用されていた亜音速の噴流アトマイザに必要なものを含めると、必要とされる噴流ガスの量は実質的に減少する。
【0047】
アトマイザの設計は、圧縮性流れに関する標準的な物理学および熱力学の方程式を使用することで実現され、予測される最高燃焼室圧力での噴流ガス発散セクションの設計条件の達成に十分な絶対圧力比を使用できる限り、特定の燃料についての噴射イベントの継続期間中におけるエンジンシリンダ内の圧力の変化は考慮しなくてよい。
【0048】
図3は、
図1の径方向領域Aの1つの最適状態を示す幾何学的な図であり、
図4は、アトマイザ噴射装置の動作中におけるスラリー燃料と噴流ガスの流れおよびそれらの下流の相互作用を示す、
図3に対応する流れ図である。
【0049】
噴流ガスの外部収束流れは、形状が高速で変動するかたちで絶え間なく新しくなる「仮想オリフィス」または「ガスオリフィス」120として働き、これが混合および霧化の助けとなる。外部収束とは、超音速流れの方に径方向内方に向かう成分が存在し、これによって、噴流ガス(または「二次流体」)の貫入すなわち燃料噴出流(「一次流体」)へのぶつかりが増大し、それによって、同様の効果を達成するのに、はるかに低い二次流体の質量流量しか使用されなくて済むことを意味する。これは、概して直接噴射噴流アトマイザが原因で低下するエネルギ効率を克服し、単一流体アトマイザのエネルギ効率に勝るほどまでになる。この文脈における「収束」は、対称軸およびそこにおけるスラリー流体噴出流の上で収束する流れの全体的な方向を示す。
【0050】
噴流ストリームの収束の角度、すなわち
図4における角度aである、ストリーム内の中央コアと軸11との間の角度は、好ましくは、5〜90°、より好ましくは30〜85°、最も好ましくは40〜80°の範囲内である。適当な角度は、約75°と考えられる。一般に、面部分30と面40の角度、したがって噴流ストリームの収束の角度は、質量流量と共に、燃料の特性および噴霧の目的に合わせて最適化されなければならない。しかし、霧化効率とスプレイ貫入の間には傾きに起因する相反関係がある。異なるエンジン燃焼室幾何形状には、異なる程度のスプレイ貫入が必要であり、したがって最適なアプローチ角度も変わることになる。さらに、ノズル15の表面全体にわたる燃料の過剰な逆流を回避することも望まれる。
【0051】
超音速流れ領域と軸の間にある三角形の領域は、いくらかの燃料を超音速流れに入れようとする渦を含む。この渦の効果とピンチ効果があいまって「仮想ノズル」が作られる。燃料の粘弾性特性によって、平らなオリフィスのノズルの場合のように、ステップの前後そうした渦の流れ面積は変化する。
【0052】
噴流ストリーム流れの全体的な性質は、流れが対称軸に収束するときに遷音速になるので、非常に高い乱流エネルギを有する。遷音速流れに性質が変わる前に送達される超音速流れの動圧力は、スラリー燃料に対する衝撃圧力ならびに音速の乱流エネルギの両方を最大にする。これは、外部で起こり、二次流れを一次流体と遭遇した後に超音速流れから遷音速流れに変化させる。
【0053】
これは、相互作用の下流に超音速流れを保持し、むしろ主にせん断除去(shear stripping)/加速によって霧化を引き起こすことを意図する、米国特許第5,044,552号に記載のようなアトマイザとは対照的である。後者の意図の不利点は、二次流体の消費が非常に多いことである(米国特許第5,044,552号に記載されるように、一次質量流量に対して二次質量流量が最低1.5倍〜3倍になる)。本アトマイザは、1:1の質量流量比未満で流体の完全な分解を達成することができ、したがって、二次流体を生成するのに必要なエネルギ、つまり米国特許第5,044,552号に記載されるような設計の場合において許容できない程度までエンジンの全体的な効率を下げることで知られる要件を最低限に抑える。そうした内部混合設計は、この理由から、随伴する噴流ガスシステムの余分な複雑性を回避するために、ディーゼルエンジン産業によって1920年代に放棄された。
【0054】
図示のアトマイザは、軸方向の収束/一次流体との衝突の前だけ、「超音速」流れを保つ。というのも、ガス、液体の小滴および粒子の混合物は、局所的な「音速」が純粋な材料における測定値に比べて非常に遅いからである。これは、乱流エネルギをスプレイの範囲内にとどめる傾向があり、したがって3つの材料を一緒に混合することによるエントロピー生成を最大にする傾向がある。これらの状態の下では、流れは、より遅い音速に対して非常に急速に遷音速/亜音速になる。そのエネルギは、明らかに非等エントロピーのやり方で混合および加熱に急速に消散される。
【0055】
さらに下流において混合物は限定的に広げられ、それによって、変わったワイングラス様プロファイルのスプレイパターンが作られ、(不足膨張−まわりのガスよりも依然として高い密度の)二次流体が新しい遅い音速に制限された速度で広がるのが終わると、さらにスプレイ内の粒子/小滴が分離される。
【0056】
この挙動から判断すると、スプレイの本体は、決して、〜50m/sよりも速く貫入しないので、スプレイ内の局所的な音速は70〜100m/s程度であり、スプレイの両側の最大広がり角度は、さらに大きくなり、より速い広がりが可能であったように見える。
【0057】
まとめると、
図1〜4の霧化噴射装置は、このエネルギを収束空気−ブレード/ガスオリフィス/外部混合アトマイザとして使用する前に動圧力を最大にする目的のためだけの超音速機である。このように、より効果的にスラリー燃料内、または二次流体内のエネルギを使用することによって、質量したがって生産エネルギの保存が可能になる。等エントロピー流れ理論が通用する領域は、混合によって純粋さを失うまでの、二次流体の流れに沿った領域だけである。この下流において、流れは、スプレイプルーム内の遅い音速に比べてのみ「超音速」であり、流れは、混合プロセスのため、等エントロピーではない。
【0058】
一次流体がないとき、流れは、ノズルの外部にある収束領域まで下がって超音速であり、次いで、遷音速流れの特徴になり、非常に大きな圧力および速度の変動を示し、流れまわりに渦列が生成される。米国特許第5,044,552号のノズルとは対照的に、軸方向に整列された高速流れを作る効率が低く、スプレイプルームを加速する効率も低い。目的が軸方向平行速度を最大にすることであり、下流の超音速の速度の損失に常に至ることが知られているので当業者なら収束超音速流れを通常は常に避けるであろう、典型的な一次元ロケットノズル設計とは対照的に、この相反関係によってアトマイザとしての動作がより良くなり得る。
【0059】
制限部26と、燃料噴出流と交差する直前の流れの断面との面積比は、等エントロピー流れ関係によって明示される。これらの方程式は、最悪(必要とされる噴射イベント中の最高燃焼室圧力)の場合についてだけ解かれ、その設計条件において、流れは超音速であり、噴流ガスの流量は、それ自体がエンジン燃料噴射速度要件によって規定される燃料の流量の比に対して固定される。
【0060】
この最悪な場合の設計条件において、垂直衝撃波は、燃料噴出流のところまたはその近くでの形成が見込まれ、それによってエントロピーおよび熱の急激な増大が引き起こされ、さらに、燃料流体面と相互作用するときの衝撃の不安定さによってさらなる霧化エネルギがもたらされる。燃料分散のメカニズムは、燃料噴出流面に衝突する噴流ガスの動圧力によるものであり、システムの不安定性によって、激しく変動し、流体を分解させるエネルギがさらにもたらされる。
【0061】
ノズル設計圧力よりも燃焼室圧力が低い状態では、収束−発散幾何形状は、さらに高いマッハ数状態をもたらし、また霧化に使用可能なエネルギのさらなる増大をもたらす。
大気圧で運転されるボイラ用途と比較すると、高い燃焼室圧力によって、広がった(超音速、衝撃前)噴流ガスの密度は、大気圧での空気の場合よりも2桁上回る。したがって、ボイラのアトマイザは、この運動エネルギ密度の恩恵を受けられない。
【0062】
燃料噴出流の断面積は、燃料流体速度が所望のピーク流量において比較的遅くなるように選択され、それによってこのオリフィスにおける摩損が実質的に減少する。
この構造によって、噴流ガスの質量流量が減少されるかたちで、ノズルオリフィスを通るスラリー速度を高速にする必要なくして、霧化が高められる。
【0063】
上述の等エントロピーノズル流れ設計方程式は、一般的に、最終圧力が大気圧であり飛行中に真空へと減少することが見込まれる、ロケットのノズル設計に対する観点から表されていることに留意されたい。本発明を考えるとき、最終圧力がエンジンンの圧縮圧力からはじまり全面燃焼の圧力へと進むので、十分な霧化の実施を維持するには比例してより大きな噴流ガス供給圧力が必要となることに注意しなければならない。さらに、ロケット設計では、「燃焼室」は、収束−発散ノズルの上流にあるが、本発明では下流にある。
【0064】
設計方程式は、噴流流れが燃料噴出流の境界を形成する表面と交差するのと全く同じように完全に広がったときの噴流流れの断面を考慮するように解かれる。環状ダクトの場合、完全に広がった流れの断面は、ノズルと同軸に整列された円錐体の環状部分であり、その頂点は燃料オリフィスの方に後ろに向いていることに留意されたい。燃料噴出流の表面は、円筒形である。したがって、完全に広がった超音速流れの断面は、まず燃料噴出流面を直線で横切り、質量流量が相互作用するので混合は下流に向かって続行する。
【0065】
やはりまた、ロケットノズル設計の標準的な手順のように、理想的には、超音速噴流ガスの流れ面積は、スロート(最小領域)から、燃料流れと最初に交わるところにおける完全に広がった領域まで、流れに沿って直線的に増大することに留意されよう。この状態には、超音速ダクトの壁部が、スロット付き噴出流構造の場合だけ、平坦なセクションであり、環状の実施形態では、ダクトプロファイルは、そうではなくて、放物線状のセクションであることが必要である。
【0066】
最も簡単な形態では、本発明は、霧化の全体的な効率を最大にするように噴射イベント全体にわたって超音速モードで動作するように構成されるが、多くの燃料とエンジンの組み合わせの場合、有効な噴流圧力は、最大所望シリンダ圧力を越えないように超音速と亜音速の流れ状態の間における自動的な移行が燃焼速度または熱発生速度の固有の制御をもたらすように設定され得る。例えば、燃料噴射の開始におけるシリンダ圧力が14MPaであり最大所望シリンダ圧力が15MPaの場合、ノズルにおける噴流ガスの圧力は約30MPaに設定される。これによって、噴射の開始から超音速流れ状態が形成されるようになり、その結果、霧化が細かくなり、点火遅れが減少し、圧力上昇が速くなる。シリンダ圧力が15MPaを越えるとすぐに、噴流ガスの霧化圧力比が、名目上の超音速状態の2:1よりも低く下がり、遷音速または亜音速になり、それによって霧化がより粗くなり、熱発生速度がより低くなり、シリンダ圧力が低下する、またはシリンダ圧力の上昇の速度が遅くなる。逆に、噴射イベント中にシリンダ圧力が15MPaよりも低く下がった場合、超音速流れ状態は自動的に再開し、それによって段階的に霧化の細かさが増し、それに応じて点火遅れが減少し、シリンダ圧力を元へ戻すように燃焼速度が増加する。したがって、本発明のこの自己調節機能は、燃焼イベント中により長い期間にわたって最大許容可能シリンダ圧力を維持するのに有利であり、不十分に霧化され混合された燃料による点火遅れに起因したシリンダ圧力の急増による機械的過負荷のリスクが低減される。この積極的なフィードバックによって、さらに、不十分に霧化された燃料による遅れた燃焼のリスクも低減される。これらの効果によって、エンジンの出力および効率が高められる。
【0067】
噴流霧化は、1977〜1994年の上述したUSDOEプログラムの間に調査され、DOE/MC/21100−2078のもとで実施された作業については、NelsonとZimperman(1986)によって報告されている。この作業は、1982年、South West Resarch Institute(SWRI)によって得られた空気噴流霧化についての有望な結果に基づいていた。この作業は、エンジン内での圧力霧化が実現できなかったSWRI申請に基づいていた。しかし、SWRIは、7.5MPa(75bar)の噴流空気圧力しか使用せず、これを後者の試験に使用されたエンジン(約5.5MPa(約55bar)のピーク圧縮圧力)への噴射に使用した場合、エンジン噴射の圧力比は1.3:1に過ぎず、超音速状態には不十分であった。SWRIの作業は、さらに、Energy and Environmental Research Corporationによって調査された。EERCによる多大な努力にもかかわらず、(空気ノズルスロートの上流において2:1よりも多少低い圧力比を生成する)1600psi(107bar)での空気供給の使用を含めて、彼らも噴流霧化に見切りをつけ、圧力霧化の作業に集中した。全ての場合において、超音速流れを達成する利点の認識はなかった。結局、先の石炭によるエンジンの作業における努力の90%以上は、効果的な霧化の達成に費やされており、それにもかかわらず、超音速状態の要件を実現せずに空気噴流霧化は退けられることになった。
【0068】
図5及び6には、
図1〜4の実施形態をより単純化した形態110が示されており、そこでは、外側スリーブのアンダーカットの収束の特徴が省かれ、スリーブ120は直線的なシリンダとなっている。噴流ガスストリームの軸方向収束は、ここでもやはり、中央管112の円錐形またはピラミッド形の端面140によって促進される。
【0069】
霧化の所望の程度、霧化された燃料噴出流の形状および速度を実現することでアトマイザの噴射性能を最適化するのに様々な変形実施形態を使用することができ、それによって石炭水スラリー燃料の所与の流れに対する噴流ガス消費が最低限に抑えられ、霧化の質が全体的に向上し、各噴射プロセスの開始および終了における霧化の質の低さが最低限に抑えられ、構成要素の摩損−特に、石炭水スラリー燃料と接触する構成要素の摩損−が最低限に抑えられ、噴射装置の長期間にわたる働きおよび信頼性が全体的に向上する。例示的に図示される実施形態は、以下を含む。
・液体のスラリー噴出流を平らな扇形に形作る、スラリー管12の出口16にある扇形−噴出流オリフィス15
1が、
図7及び8に示されている。これによって、液膜がより薄くなり、それは霧化プロセスの助けとなる。
・超音波とガスの間の相互作用を高めしたがって霧化を高めるように、スラリー流体出口と噴流ガス出口の両方についての実質的に平坦なスロット216、225を備えるスロット付きのアトマイザ噴射装置210(
図9及び10)。中央管212の断面は、この場合、スラリースロット216の両側に一対の噴流ガス出口225があるような、細長い断面である。
・噴流ガスと燃料噴出流との相互作用をさらに高め、噴出流の形状を制御し、ノズルの能力を高めるように、例えば複数の同軸オリフィスまたは積み重なったスロット付きオリフィスである多数のオリフィスを使用すること。
・空気圧または液圧ピストンを使用して(ばねの代わりに)締切弁の力を生成し、移動する弁座部の回転を高めて弁座部の摩損を均一にし、弁の寿命を長くすること。
【0070】
石炭スラリーノズルの様々な実施形態は、さらに、部分的な事前霧化を行うことによってか、石炭スラリーストリーム内の他の不安定さを生成することによってかのどちらによって、霧化を支援するのに使用され得る。諸例は、
図11に示されるように、小さな中央ガス噴出流80、乱流デバイス82(
図12)、ノズルの摩損を回避するためにメインスラリー出口ノズル16より前に環状ダクト84を通って事前霧化ステップのために初期の低いレベルの噴流ガスが導入される
図13に示される内部混合プレアトマイザ、および
図14に示される外部混合プレアトマイザを含む。
【0071】
本発明の少なくとも第3の態様のさらなる一実施形態では、スラリー管の出口および噴流ガス環状オリフィスは、ポペット形ノズルによって作り出される。この構造は、液体スラリー噴出流および超音速噴流ガスを
図15に示されるように弁の軸まわりに径方向に配置される扇形にするように構成される。ポペット弁の座部は、有利には、オリフィスギャップを画定し、噴出流の回転運動の制御をもたらすように、溝または隆起リブ付きで構築され得る。超音速噴流アトマイザのこの構造によって、扇形に360°に霧化されるようになる。この構造によって、さらに、薄い液体スラリー膜が形成され、それは霧化プロセスの助けとなる。この構造は、燃料噴射がシリンダの中心線の中心のより近くに位置決めされるエンジンにおいて特に有利である。
【0072】
上述したようなポペット弁タイプの構造であるが、共軸のポペット弁が、噴流ガスおよび/または石炭水スラリー燃料の放出を制御するように縦に並んだ弁として動作する構造が
図16に示されている。この構造は、噴流ガスおよび/またはスラリー燃料についてのアトマイザ機能と締切弁/ニードル弁を組み合わせることによるさらなる利点を有する。
【0073】
スラリー流体流量に対する噴流ガスの最適な質量流量を実現し噴流ガスの消費を最低限に抑えるように、噴流ガス速度および継続期間と共に、電子制御される噴射速度のタイミングおよびスラリー流体の継続期間についての設備があってよい。この構造は、さらに、給気を冷やさないように噴射の速い段階の間の燃料流量を最適にすることができる。この実施形態は、
図17に概略的に示されている。
【0074】
噴射装置の摩損をさらに減少させるように、外方に開く燃料締切弁を備える一実施形態が
図18に示されている。この実施形態の場合、ばねまたは液圧もしくは圧縮ガスのピストンによってもたらされる弁の着座力が、実質的に、内方に開く弁によって必要とされるものに比べて減少され、したがって弁座部にわたるスラリーの絞りが減少され得る。これによって、実質的に、座部の摩損が減少し、噴射装置の構成要素の寿命を超音速霧化ノズルの寿命に合うようにすることが可能になる。
(項目1)
アトマイザ噴射装置であって、
中心軸に沿って粒子状スラリー燃料の噴出流を放出する第1の出口で終端する中央管と、
前記中央管に近接する構造体であって、管とともに、前記第1の出口まわりにある噴流ガスの1つまたは複数の第2の出口と連通する管状のダクト手段を画定する構造体であり、前記ダクト手段が、超音速速度の噴流ストリームとして前記第2の出口から噴出するように前記噴流ガスを加速させるように構成された、構造体と
を備え、
前記第2の出口に近接する前記構造体の1つまたは複数の内面が、噴出した超音速噴流ストリームを、前記第1の出口の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流内へと向けそれによって燃料が霧化されるように、軸方向に収束する、
アトマイザ噴射装置。
(項目2)
前記構造体が、前記中央管を囲み、そこにおいて、前記1つまたは複数の第2の出口が前記第1の出口まわりに環状出口を備え、前記第2の出口に近接する前記構造体の前記1つまたは複数の内面が、前記第2の出口に近接する連続的に縁をなす面部分を備えた、項目1に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目3)
前記中央管の円錐形またはピラミッド形の端面が、前記第1の出口の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流内への前記噴出した超音速噴流ストリームの前記方向付けをさらに容易にするように、前記連続的に縁をなす面部分と向かい合うように配置された、項目2に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目4)
前記中央管の1つまたは複数の斜めの端面が、前記第1の出口の下流の粒子状スラリー燃料の噴出流内への前記噴出した超音速噴流ストリームの前記方向付けをさらに容易にするように、前記1つまたは複数の内面と向かい合うように配置された、項目1に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目5)
前記1つまたは複数の内面および1つまたは複数の端面が、動作中、前記中心軸に対する前記噴流ストリームの収束の角度が、5〜90°、好ましくは30〜85°、より好ましくは40〜80°になるようにされた、項目3または4に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目6)
前記第2の出口に近接する前記1つまたは複数の内面が、前記噴流ガスの流れ方向において、少なくとも部分的に曲線からなる凹形をなす、項目1から5のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目7)
前記第2の出口に近接する前記1つまたは複数の内面が、前記噴流ガスの流れ方向において全体的に直線状である、項目1から5のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目8)
前記ダクト手段が、前記噴流ガスの流れ方向において好ましくはなだらかに収束−発散する制限構造の手段によって、噴流ガスを加速するように構成された、項目1から7のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目9)
前記第1の出口が、全体的に円形であり、前記超音速噴流ストリームの断面が環状である、項目1から8のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目10)
前記第1の出口の断面が長円形または細長く、したがって前記粒子状スラリー燃料の噴出流が扇形噴出流である、項目1から8のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目11)
前記第1の出口が、細長いスロットであり、前記1つまたは複数の第2の出口が、前記第1の出口の両側に全体的に前記第1の出口にそれに平行な一対のスロットを備えた、項目1から8および10のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目12)
燃焼装置であって、
燃焼室を画定する構造体と、
項目1から11のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置であり、粒子状スラリー燃料を前記燃焼室内に噴射し、随伴する噴流ストリームによって前記燃料を霧化するように配置され構成された、アトマイザ噴射装置と
を備える、燃焼装置。
(項目13)
圧縮点火エンジンまたはディーゼルエンジンとして動作するように構成された、項目12に記載の燃焼装置。
(項目14)
アトマイザ噴射装置であって、
中心軸に沿って粒子状スラリー燃料の噴出流を放出する第1の出口で終端する中央管と、
前記中央管を囲む構造体であって、管とともに、前記第1の出口まわりにある噴流ガスの第2の出口と連通するダクトを画定する構造体であり、前記ダクトが、超音速速度の噴流ストリームとして前記第2の出口から噴出するように前記噴流ガスを加速させるように構成された、構造体と
を備え、
前記第2の出口が、前記噴出した噴流ストリームが前記第1の出口の下流の前記噴流ストリームの仮想オリフィス内に前記噴出流をとどめるように、前記粒子状スラリー燃料の噴出流に対して軸方向に収束するように構成され、それによって前記粒子状スラリー燃料の下流の霧化が促進され、前記粒子状スラリー燃料による前記第1の出口の摩損が減少される、
アトマイザ噴射装置。
(項目15)
前記噴出した噴流ストリームが、前記第1の出口の前記燃料の放出の横方向に、前記粒子状スラリー燃料の噴出流から間隔があけられ、それによって軸方向に収束する噴流ストリームが、前記仮想オリフィスのすぐ上流で激しい乱流になり、前記スラリー燃料の霧化がさらに促進される、項目14に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目16)
前記粒子状スラリー燃料の噴出流に制限を加える前記仮想オリフィスが、前記噴出流の下流発散を引き起こし、それによって前記粒子状スラリー燃料の霧化が促進される、項目15に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目17)
前記第2の出口が、前記第2の出口に近接する前記構造体の内部の連続的に縁をなす面部分によって前記噴出した噴流ストリームが部分的に前記粒子状スラリー燃料の噴出流に対して軸方向に収束するように構成された、項目14、15または16に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目18)
前記第2の出口が、前記第1の出口まわりに環状出口を備えた、項目14から17のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目19)
前記中央管の円錐形またはピラミッド形の端面が、前記粒子状スラリー燃料の噴出流への前記噴出した超音速噴流ストリームの前記軸方向収束をさらに促進するように、前記連続的に縁をなす面部分と向かい合うように配置される、項目17または18に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目20)
前記1つまたは複数の内面および前記1つまたは複数の端面が、動作中、前記中心軸に対する前記噴流ストリームの収束の角度が、5〜90°、好ましくは30〜85°、より好ましくは40〜80°になるようにされた、項目19に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目21)
前記第2の出口に近接する前記内部に連続的に縁をなす面部分が、前記噴流ガスの流れ方向に、少なくとも部分的に曲線からなる凹形をなす、項目17から20のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目22)
第2の出口に近接する前記連続的に縁をなす面部分が、前記噴流ガスの流れ方向に全体的に直線状である、項目17から20のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目23)
前記ダクトが、前記噴流ガスの流れ方向において好ましくはなだらかに収束−発散する制限手段によって、噴流ガスを加速するように構成された、項目14から22のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目24)
前記第1の出口が、全体的に円形であり、前記超音速噴流ストリームの断面が環状である、項目14から23のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目25)
前記第1の出口の断面が長円形または細長く、したがって前記粒子状スラリー燃料の噴出流が扇形噴出流になる、項目14から24のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置。
(項目26)
燃焼装置であって、
燃焼室を画定する構造体と、
項目14から25のいずれか一項に記載のアトマイザ噴射装置であり、粒子状スラリー燃料を前記燃焼室内に噴射し、随伴する噴流ストリームによって前記燃料を霧化するように配置され構成された、アトマイザ噴射装置と
を備えた、燃焼装置。
(項目27)
圧縮点火エンジンまたはディーゼルエンジンとして動作するように構成される、項目26に記載の燃焼装置。
(項目28)
燃焼装置であって、
燃焼室を画定する構造体と、
粒子状スラリー燃料の噴出流を、前記燃料を霧化する随伴するガスの噴流ストリームと共に前記燃焼室内に噴射するように構成された、アトマイザ噴射装置と
を備え、
前記アトマイザ燃料噴射装置が、さらに、前記噴流ストリームが前記燃焼室内で前記燃料に衝突してそれを霧化するように構成され、それによって前記粒子状スラリー燃料を用いた前記装置の動作が促進される、
燃焼装置。
(項目29)
圧縮点火エンジンまたはディーゼルエンジンとして動作するように構成された、項目28に記載の燃焼装置。
(項目30)
前記アトマイザ噴射装置が、前記噴流ストリームが前記粒子状スラリー燃料の噴出流まわりに向けられ前記第1の出口の下流の前記噴流ストリームの仮想オリフィス内に前記噴出流をとどめるように、前記噴出流に対して収束するように構成された、項目28または29に記載の燃焼装置。
(項目31)
前記噴流ストリームが、前記燃料の放出の横方向に、前記粒子状スラリー燃料の噴出流から間隔があけられ、それによって軸方向に収束する噴流ストリームが、前記仮想オリフィスのすぐ上流で激しい乱流になり、前記スラリー燃料の霧化がさらに促進される、項目30に記載の燃焼装置。
(項目32)
前記粒子状スラリー燃料の噴出流に制限を加える前記仮想オリフィスが、前記噴出流の下流発散を引き起こし、それによって前記粒子状スラリー燃料の霧化が促進される、項目30または31に記載の燃焼装置。
(項目33)
燃料を、前記燃料を霧化する随伴する噴流ガスと共にエンジンの燃焼室内に噴射するように構成された燃料噴射装置が装着されたディーゼルエンジンの動作方法であって、前記噴流を収束させて前記燃焼室内において前記燃料に衝突させ圧縮点火のためにその内部で前記燃料を霧化することによって、例えば石炭水スラリー燃料である粒子状スラリー燃料を噴射するステップを含み、前記ガスの噴流が、制限部を通って供給され、前記制限部の上流のガス圧力が、前記燃焼室内の圧力の少なくとも2:1であり、それによって前記ガスの噴流が超音速速度になる、方法。
(項目34)
前記制限部の上流の前記ガス圧力が、少なくとも約30MPAである、項目33に記載の方法。