(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、3D成形法に使用するのに適したイオン交換可能なガラス組成物の様々な実施の形態を詳しく参照する。ここに記載されたガラス組成物は、一般に、SiO
2、Al
2O
3、Li
2OおよびNa
2Oを含む。そのガラス組成物は、約810℃以下の軟化点を有することがある。そのガラス組成物は、約27×10
-6/℃以下の高温CTEも有することがある。そのガラス組成物は、このガラスが、約15時間以下に亘る約410℃でのKNO
3を含む塩浴中でのイオン交換後に、約650MPa以上の圧縮応力および約25μm以上の層の深さを有するようにイオン交換可能であることもある。ここで、添付図面を具体的に参照して、ガラス組成物の様々な実施の形態をさらに詳しく説明する。
【0014】
ここに用いた「軟化点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×10
7.6ポアズである温度を称する。
【0015】
ここに用いた「高温熱膨張係数」または「HT CTE」という句は、ガラス組成物のガラス転移温度より上でのガラス組成物の熱膨張係数を称する。このHT CTEは、温度の関数(x軸)として瞬間CTE(y軸)をプロットすることにより決定される。このHT CTEは、CTE対温度の曲線の勾配が、著しい上昇後にほぼゼロである(すなわち、CTE対温度曲線が「水平状態に達する」)HT CTEの値である。このHT CTEの値は、冷却中のガラスの体積変化の尺度であり、ガラスが、以下に限られないが、真空サギング成形法を含む高温3D成形法と併せて使用されるときの、ガラス組成物の寸法安定性の指標である。
【0016】
ここに用いた「液相線粘度」という用語は、ガラス組成物の液相線温度のときの剪断粘度を称する。
【0017】
ここに用いた「液相線温度」という用語は、ガラス組成物において失透が生じる最高温度を称する。
【0018】
「実質的に含まない」という用語は、ガラス組成物中に特定の酸化物成分がないことを記載するために使用される場合、その成分が、ガラス組成物中に、約0.05モル%未満の微量の汚染物質として存在することを意味する。
【0019】
ここに記載されたガラス組成物の実施の形態において、構成成分(例えば、SiO
2、Al
2O
3、B
2O
3など)の濃度は、別記しない限り、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で与えられている。
【0020】
家庭用電子機器においてカバーガラスとして使用される従来のイオン交換可能なガラス組成物は、一般に、840℃以上の軟化点を有する。軟化点がこの範囲にあるガラスは、フュージョン成形法を使用して平面シートに容易に成形されるであろう。しかしながら、そのようなガラス組成物は、高温成形法を常に適用できる訳ではない。具体的に言うと、ガラス組成物の比較的高い軟化点により、型に保護被覆が施されている場合でさえ、ガラス組成物が型にくっついて、ガラスを損傷する、および/または型を劣化させるほど、ガラス組成物が型の材料と反応してしまう。
【0021】
さらに、ガラス組成物の軟化点を低下させることによって、イオン交換可能なガラス組成物の成形性を改善する試みはうまくいっていない。具体的に言うと、軟化点がより低いガラス組成物は、真空サギングなどの高温プロセスを使用した3D成形に関して必須の寸法安定性を有していない。そのようなガラス組成物は、その組成物がガラス転移領域を通じて加熱および/または冷却されるときの成形の際に反ってしまう。
【0022】
例えば、
図1は、2つの比較用ガラス組成物に関する温度の関数(x軸)としての瞬間CTE(y軸)をグラフで示している。比較ガラスAは、752℃の軟化点および約39×10
-6/℃のHT CTEを有するホウケイ酸ガラスであった。理論により拘束することを意図するものではないが、この比較的高いHT CTEにより、真空サギングの最中のガラスの寸法安定性が低下し、ガラスが反り、歪むと考えられている。反対に、比較ガラスBは、837℃の軟化点および約23.2×10
-6/℃のHT CTEを有するアルミノケイ酸塩ガラスであった。このガラスは比較的低いHT CTEを示したが、このガラス組成物は、真空サギング中に型と反応し、および/または型にくっつき、成形を阻害することが分かった。理論により拘束することを意図するものではないが、比較ガラスBを一貫して成形できないことは、少なくとも一部には、ガラスの比較的高い軟化点のためであったと考えられる。
【0023】
ここに記載されたガラス組成物は、比較的低い軟化点、比較的低いHT CTEを有し、既存の3D成形可能なガラス組成物と比べて優れたイオン交換性能を有するガラス組成物を提供することによって、以前のガラス組成物の欠陥に対処する。
【0024】
ここに記載された実施の形態において、ガラス組成物は、約810℃以下の比較的低い軟化点を有する。いくつかの実施の形態において、このガラス組成物の軟化点は、約800℃以下またさらには約790℃以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、軟化点は約750℃であることがある。これらのガラス組成物の比較的低い軟化点のために、真空サギング法を使用して、複雑な曲率などを有するガラス物品などの3D形状にガラス組成物を容易に形成することが促進される。
【0025】
そのガラス組成物はまた、約27×10
-6/℃以下のHT CTEも有する。いくつかの実施の形態において、このガラス組成物のHT CTEは、約25×10
-6/℃以下またさらには約23×10
-6/℃以下であることがある。上述したように、HT CTEは、ガラスを、制限するものではなく、真空サギング法を含む高温3D成形法と併せて使用したときの、ガラスの寸法安定性の指標である。27×10
-6/℃超のHT CTEを有するガラスは、高温成形法の最中および/または後に反り、寸法許容差に適合しないかもしれないガラス物品を生じることが判明した。しかしながら、約27×10
-6/℃以下のHT CTEなどの中程度に低いHT CTEを有するガラスは、高温成形法の最中と後に寸法安定性であることも判明した。
【0026】
ここに記載したガラス組成物は、イオン交換プロセスによる強化も受けやすい。ここに記載した実施の形態において、そのガラス組成物は、約25μm以上の層の深さ(DOL)を達成することができる。いくつかの実施の形態において、DOLは、約35μm以上またさらには約45μm以上であることがある。そのガラス組成物の圧縮応力(CS)は、約600MPa以上またさらには約650MPa以上であることがある。圧縮応力およびDOLの両方とも、約390℃から約450℃の温度で約15時間以下に亘り100%のKNO
3からなる塩浴またはKNO
3およびNaNO
3を含む塩浴中のイオン交換強化後に決定される。
【0027】
上述した性質を達成するために、ここに記載したガラス組成物は、一般に、SiO
2、Al
2O
3、およびLi
2Oおよび/またはNa
2Oなどのアルカリ酸化物の組合せを含む。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物は、MgO、ZnO、CaOなどの二価酸化物も1種類以上含むことがある。そのガラス組成物はB
2O
3も含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、Li
2Oおよび/またはNa
2Oに加えて、K
2Oも含むことがある。そのガラス組成物は、加えて、P
2O
5を含むことがある。そのガラス組成物は、1種類以上の清澄剤も含むことがある。上述した性質を有するガラス組成物を得るために使用される様々な構成成分の濃度が、ここにさらに詳しく記載される。
【0028】
上述したように、ここに記載したガラス組成物は、B
2O
3を含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物中のB
2O
3の濃度は、約0モル%(すなわち、B
2O
3を実質的に含まないガラス組成物)を含む、約1.0モル%以下またさらには約0.5モル%以下であってよい。これらのガラス組成物は、ここでは「低ホウ素ガラス組成物」と称されることがある。他の実施の形態において、B
2O
3の濃度は約4.5モル%以上であることがある。これらのガラス組成物は、ここでは「高ホウ素ガラス組成物」と称されることがある。しかしながら、低ホウ素ガラス組成物および高ホウ素ガラス組成物の両方とも、比較的低い軟化点、比較的低いHT CTEおよび上述したイオン交換性を示すことを理解すべきである。
【0029】
ここに記載したガラス組成物(すなわち、低ホウ素ガラス組成物および高ホウ素ガラス組成物の両方)の実施の形態において、SiO
2は組成物の最多成分であり、それゆえ、SiO
2はガラス網目構造の主成分である。ガラス組成物中のSiO
2の濃度が低い(すなわち、約55モル%未満)場合、結果として得られるガラスの化学的耐久性は低い。その上、得られるガラスの液相線粘度も低く、そのガラスが、フュージョン・ダウンドロー法および/またはフュージョン積層法などのフュージョン成形に不向きになるであろう。しかしながら、ガラス組成物中のSiO
2の濃度が高すぎる(すなわち、約75モル%超)場合、SiO
2の高い濃度のためにガラス溶融の難しさが増し、それは転じて、ガラスの成形性に悪影響を及ぼすので、そのガラス組成物の成形性が低下してしまうことがある。ここに記載した実施の形態において、ガラス組成物は、容易に成形できるガラス組成物を促進するために、一般に、約55モル%以上かつ約75モル%以下の濃度でSiO
2を含む。
【0030】
低ホウ素ガラス組成物において、SiO
2の濃度は、約65モル%以上かつ約71モル%以下であることがある。いくつかの実施の形態において、SiO
2の濃度は、約65.8モル%以上またさらには約66モル%以上かつ約71モル%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、ガラス組成物中のSiO
2の濃度は約67モル%以上かつ約71モル%以下であることがある。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のSiO
2の濃度は約68モル%以上かつ約71モル%以下であることがある。
【0031】
高ホウ素ガラス組成物において、SiO
2の濃度は、約55モル%以上かつ約68モル%以下であることがある。これらの実施の形態のいくつかにおいて、ガラス組成物中のSiO
2の濃度は、約60モル%以上かつ約65モル%以下であることがある。
【0032】
ここに記載したガラス組成物(すなわち、低ホウ素ガラス組成物および高ホウ素ガラス組成物の両方)はAl
2O
3も含む。Al
2O
3は、SiO
2と似たガラス網目構造形成剤として働く。SiO
2のように、Al
2O
3は、ガラス組成物から形成されたガラス溶融物における主に四面体配位のために、ガラス組成物の粘度を上昇させる。Al
2O
3は、ガラスの歪み点を上昇させ、ガラス網目構造中のアルカリイオンの拡散性を増加させることによって、ガラス組成物のイオン交換性能を改善する。したがって、Al
2O
3の存在は、イオン交換プロセスの反応速度論を改善し、達成できる圧縮応力およびDOLを増加させる。イオン交換プロセスの反応速度論を改善するために、ガラス組成物中のAl
2O
3の濃度は、一般に、約7モル%以上である。
【0033】
ここに記載した低ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、ガラス組成物中のAl
2O
3の濃度は、比較的低い軟化点を有するガラス組成物を得るために、一般に、約12モル%以下である。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のAl
2O
3の濃度は、約7モル%以上かつ約12モル%以下である。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のAl
2O
3の濃度は、約8モル%以上かつ約12モル%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、ガラス組成物中のAl
2O
3の濃度は、約8モル%以上かつ約11モル%以下であることがある。
【0034】
ここに記載した高ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、ガラス組成物中のAl
2O
3の濃度は、比較的低い軟化点を有するガラス組成物を得るために、一般に、約15モル%以下である。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のAl
2O
3の濃度は、約9モル%以上かつ約15モル%以下である。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のAl
2O
3の濃度は、約11モル%以上かつ約14モル%以下であることがある。
【0035】
ここに記載したガラス組成物(すなわち、低ホウ素ガラス組成物および高ホウ素ガラス組成物の両方)は、アルカリ酸化物R
2Oも含み、ここで、Rは、Li、Na、Kまたはそれらの組合せの少なくとも1つである。これらのアルカリ酸化物により、ガラスの溶融温度および液相線温度が低下し、それによって、ガラス組成物の成形性が改善される。Li
2Oを添加すると、一般に、ガラスの軟化点が低下する。ガラス組成物中のLi
2Oの量は、イオン交換プロセスの反応速度論を改善するために調節することができる。詳しくは、より速いイオン交換プロセスが望ましい場合、イオン交換速度を上昇させつつ、ガラスの軟化点を低下させるために、ガラス組成物中のLi
2Oの濃度は、必要に応じて、1モル%以上から約5モル%以下、または約2モル%以上から約5モル%以下などのように約5モル%未満に減少させてよい。
【0036】
ここに記載した低ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、Li
2Oは、一般に、ガラスの軟化点を低下させるためにガラス組成物に加えられる。ガラス組成物中のLi
2Oの濃度は、比較的低い軟化点を有するガラス組成物を得るために、一般に、約1モル%以上である。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のLi
2Oの濃度は、1モル%以上かつ約9モル%以下である。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のLi
2Oの濃度は、1モル%以上かつ約7モル%以下であることがある。所定の温度に関してより速いイオン交換時間が望ましい実施の形態において、Li
2Oの濃度は、約1モル%以上かつ約5モル%以下、またさらには約2モル%以上かつ約5モル%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、Li
2Oの濃度は、約2モル%以上かつ約3.5モル%以下であることがある。
【0037】
ここに記載した高ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、ガラス組成物中のLi
2Oの濃度は、比較的低い軟化点を有するガラス組成物を得るために、一般に、約1モル%以上である。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のLi
2Oの濃度は、1モル%以上かつ約7モル%以下である。所定の温度に関してより速いイオン交換時間が望ましい実施の形態において、Li
2Oの濃度は、約1モル%以上かつ約5モル%以下、またさらには約2モル%以上かつ約5モル%以下であることがある。
【0038】
ガラス組成物にNa
2Oを添加すると、ガラス組成物を強化するイオン交換が促進される。詳しくは、結果として得られるガラス網目構造中のより小さいNa
+イオンが、イオン交換塩浴中のより大きいK
+イオンと交換されることができる。ガラス組成物中のNa
2Oの濃度が低すぎると、イオン交換後に得られる層の深さが小さすぎてしまう。しかしながら、ガラス組成物中のNa
2Oの濃度が高すぎると、ガラス組成物のHT CTEが上昇してしまう。ここに記載した実施の形態において、Na
2Oは、約3モル%から約16モル%の量でガラス組成物中に存在する。
【0039】
ここに記載した低ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、ガラス組成物中のNa
2Oの濃度は、比較的低いHT CTEを維持するために、一般に、約16モル%以下である。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のNa
2Oの濃度は、約6モル%以上かつ約16モル%以下である。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のNa
2Oの濃度は、約8モル%以上かつ約16モル%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、ガラス組成物中のNa
2Oの濃度は、約10モル%以上かつ約16モル%以下であることがある。さらに他の実施の形態において、ガラス組成物中のNa
2Oの濃度は、約12モル%以上かつ約15モル%以下であることがある。
【0040】
ここに記載した高ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、ガラス組成物中のNa
2Oの濃度は、低いアルカリ対アルミナ比および結果として比較的低いHT CTEを維持するために、一般に、約12モル%以下である。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のNa
2Oの濃度は、約3モル%以上かつ約12モル%以下である。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のNa
2Oの濃度は、約8モル%以上かつ約12モル%以下であることがある。
【0041】
いくつかの実施の形態において、ここに記載したガラス組成物は、必要に応じて、アルカリ酸化物のK
2Oを含むことがある。K
2Oは、一般に、イオン交換性能を改善するために、ガラス組成物に加えられる。詳しくは、K
2Oは、所望の圧縮応力およびDOLを達成するために、ガラス組成物に加えられることがある。ここに記載した実施の形態において、K
2Oは、含まれる場合、約3.0モル%以下の量でガラス組成物中に存在する。
【0042】
ここに記載した低ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、ガラス組成物中のK
2Oの濃度は、一般に、約0モル%以上である。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のK
2Oの濃度は、約0モル%以上かつ約5モル%以下である。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のK
2Oの濃度は、約0モル%以上かつ約3モル%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、ガラス組成物中のK
2Oの濃度は、約0モル%以上かつ約2モル%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、ガラス組成物中のK
2Oの濃度は、約1モル%以下またさらには約0.5モル%以下であることがある。いくつかの実施の形態において、低ホウ素ガラス組成物はK
2Oを実質的に含まない。
【0043】
ここに記載した高ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、ガラス組成物中のK
2Oの濃度は、一般に、約0モル%以上である。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のK
2Oの濃度は、約0モル%以上かつ約3モル%以下である。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のK
2Oの濃度は、約0モル%以上かつ約2モル%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、ガラス組成物中のK
2Oの濃度は、約1モル%以下またさらには約0.5モル%以下であることがある。いくつかの実施の形態において、高ホウ素ガラス組成物はK
2Oを実質的に含まない。
【0044】
さらに、ここに記載した高ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比は、一般に、約1.15またさらには1.1以下であり、ここで、R
2Oは、Na
2O、Li
2OおよびK
2Oの濃度の合計である。これらの実施の形態のいくつかにおいて、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比は、一般に、約0.9以上である。いくつかの実施の形態において、比R
2O:Al
2O
3は、約1.1以下かつ約0.9以上である。いくつかの実施の形態において、比R
2O:Al
2O
3は、約1.1以下かつ約1.0以上である。いくつかの他の実施の形態において、HT CTEは、約1.0以下かつ0.9以上である。高ホウ素ガラス組成物において比R
2O:Al
2O
3を約1.15またさらには1.1未満に維持すると、一般に、HT CTEが約27×10
-6/℃以下に低下する。特に、ここに記載したガラス組成物の実施の形態において、アルカリ酸化物成分の濃度の合計は、Al
2O
3の濃度に対して釣り合わされる。この釣合いにより、結果として得られるガラスにおいていくつかの望ましい特徴が生じる。詳しくは、Al
2O
3は、電荷安定化のために、カリウム、リチウム、およびナトリウムなどのアルカリ金属を利用する。ガラス組成物中に過剰のアルカリが存在する(すなわち、R
2O:Al
2O
3が1.15またさらには1.1以上である)と、ガラス組成物中の過剰のアルカリがガラス組成物中のホウ素と相互作用し、ホウ素を標準的な三角(三重配位)構造から四面体(四重配位)構造に転化させる。ホウ素の三角から四面体への配位の変化により、ガラスのHT CTEが上昇する。したがって、Al
2O
3に対するR
2Oの比を約1.15以下またさらには1.1以下に維持することによって、ガラス中のホウ素が、ガラス中で四面体配位をとるのを防ぎ、それによって、比較的低いHT CTEが促進される。
【0045】
ここに記載したいくつかの実施の形態において、ガラス組成物はB
2O
3を含むことがある。SiO
2およびAl
2O
3のように、B
2O
3は、ガラス網目構造の形成に寄与する。従来、ガラス組成物の粘度を低下させるために、B
2O
3がガラス組成物に加えられる。一般に、B
2O
3は、軟化点が低いガラス組成物を形成するために利用されることがある融剤して働く。しかしながら、B
2O
3の存在は、Al
2O
3と関連しない過剰のアルカリ酸化物が存在する場合、HT CTEを著しく上昇させる。しかしながら、アルカリ酸化物の濃度がAl
2O
3の濃度に対して釣り合わされる場合、より高い酸化ホウ素の濃度は、ガラス組成物のHT CTEに著しく影響しない。したがって、ここに記載したガラス組成物は、所望の性質を有するガラス組成物を得るために、低濃度のB
2O
3(すなわち、「低ホウ素ガラス組成物」)または高濃度のB
2O
3(すなわち、高ホウ素ガラス組成物)を含有することがある。
【0046】
低ホウ素ガラス組成物において、B
2O
3は、B
2O
3と過剰のアルカリ酸化物との間の相互作用を制限することによって、HT CTEの上昇を最小にするために、一般に、約1モル%以下の量でガラス組成物中に存在する。例えば、いくつかの実施の形態において、B
2O
3は、約0モル%以上かつ約1モル%以下の濃度でガラス組成物中に存在する。ここに記載した他の実施の形態において、B
2O
3は、約0.5モル%未満の濃度でガラス組成物中に存在する。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のB
2O
3の濃度は、約0モル%以上かつ約0.5モル%以下またさらには約0.4モル%以下である。
【0047】
高ホウ素ガラス組成物において、B
2O
3は、一般に、約4.5モル%以上の量でガラス組成物中に存在する。これらの実施の形態において、HT CTEへのB
2O
3の影響は、上述したように、比R
2O:Al
2O
3を制御することによって緩和される。例えば、いくつかの実施の形態において、B
2O
3は、約4.5モル%またさらには5モル%以上かつ約12モル%以下の濃度でガラス組成物中に存在する。ここに記載した他の実施の形態において、ガラス組成物中のB
2O
3の濃度は、約7モル%以上かつ約12モル%以下、またさらには約9モル%以上かつ約12モル%以下である。
【0048】
ここに記載したガラス組成物は、1種類以上の二価酸化物MOをさらに含むことがあり、ここで、Mはアルカリ土類金属(MgまたはCaなど)および/またはZnである。二価酸化物は、ガラス組成物の溶融挙動を改善する。MgOおよびZnOの添加は、ガラス組成物のイオン交換性能も改善する。特に、MgOおよびZnOの添加は、一般に、ガラス組成物の軟化点を上昇させずに、所定のイオン交換条件(時間および温度)について、圧縮応力およびDOLを上昇させることが分かった。CaOのガラス組成物への添加は、一般に、イオン交換強化後に圧縮応力の十分なDOLを維持するのに役立つ。
【0049】
ここに記載した低ホウ素ガラス組成物において、このガラス組成物は、MgOおよびZnOの少なくとも一方を含み、二価酸化物の総濃度は、約0.8モル%またさらには1モル%以上かつ約10モル%以下である。さらに、ここに記載した低ホウ素ガラス組成物において、Al
2O
3の濃度(モル%)および二価酸化物の濃度(モル%)の合計は、一般に、約10モル%以上であり、これにより、ガラスのイオン交換性能が一般に改善される。
【0050】
ここに記載した低ホウ素ガラス組成物において、MgOは、約0モル%から約7モル%の濃度で存在することがある。例えば、いくつかの実施の形態において、MgOの濃度は、約3モル%以上かつ約5モル%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、MgOの濃度は、約2モル%以上かつ約4モル%以下であることがある。
【0051】
さらに、ここに記載した低ホウ素ガラスにおいて、CaOは、約0モル%以上かつ約1モル%以下の濃度で存在することがある。例えば、いくつかの実施の形態において、CaOの濃度は、約0モル%以上かつ約0.5モル%以下であることがある。
【0052】
ここに記載した低ホウ素ガラス組成物において、ZnOは、約0モル%から約6モル%の濃度で存在することがある。例えば、いくつかの実施の形態において、ZnOの濃度は、約2モル%以上かつ約4モル%以下であることがある。
【0053】
ここに記載した高ホウ素ガラス組成物は、1種類以上の二価酸化物MOも含むことがある。例えば、MgOを含む高ホウ素ガラス組成物のいくつかの実施の形態において、MgOは、約0モル%以上かつ約5モル%以下の濃度で存在することがある。ZnOを含む高ホウ素ガラス組成物のいくつかの実施の形態において、ZnOは、約0モル%以上かつ約5モル%以下の濃度で存在することがある。CaOを含む高ホウ素ガラス組成物のいくつかの実施の形態において、CaOは、約0モル%以上かつ約2モル%以下の濃度で存在することがある。
【0054】
ここに記載したガラス組成物(すなわち、低ホウ素ガラス組成物および高ホウ素ガラス組成物の両方)は、P
2O
5も含むことがある。P
2O
5の添加により、より 短い期間で同等の層の深さに到達できるほど、所定の温度でのイオン交換の速度が上昇する。ここに記載したガラス組成物のいくつかの実施の形態において、P
2O
5は、約0モル%以上かつ約3モル%以下の濃度でそのガラス組成物中に存在することがある。いくつかの実施の形態において、P
2O
5の濃度は、約0モル%以上かつ約2モル%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、P
2O
5の濃度は、約0.5モル%以上かつ約1.0モル%以下であることがある。
【0055】
ここに記載したガラス組成物は、必要に応じて、1種類以上の清澄剤を含むことがある。清澄剤の例としては、SnO
2、Sb
2O
3、As
2O
3、NaCl、(Al)OH
3、およびCeO
2、並びにそれらの組合せが挙げられる。清澄剤は、約0モル%以上かつ約1.0モル%以下の量でガラス組成物中に存在してよい。例示の実施の形態において、清澄剤はSnO
2である。SnO
2は、約0モル%以上かつ約1.0モル%以下の濃度でガラス組成物中に存在してよい。これらの実施の形態のいくつかにおいて、SnO
2は、約0モル%以上かつ約0.5モル%以下またさらには約0.3モル%以下の濃度でそのガラス組成物中に存在することがある。
【0056】
ここに記載した低ホウ素ガラス組成物のいくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、必要に応じて、ジルコニア(ZrO
2)を含むことがある。ジルコニアの添加により、達成できる層の深さを増加させることによって、ガラス組成物のイオン交換性能が改善される。しかしながら、ジルコニアの量が約3モル%を超えると、ガラス組成物の液相線粘度が上昇し、ガラス組成物を形成するのが難しくなってしまう。したがって、ジルコニアを含有するガラス組成物の実施の形態において、そのガラス組成物は、約0.5モル%以上かつ約2モル%以下のZrO
2を含んでよい。これらの実施の形態のいくつかにおいて、低ホウ素ガラス組成物は、約1.0モル%以上かつ約1.5モル%以下のZrO
2を含むことがある。これらの実施の形態のいくつかにおいて、低ホウ素ガラス組成物中のZrO
2の濃度は約1モル%である。しかしながら、ここに記載した低ホウ素ガラス組成物のいくつかの実施の形態において、ガラス組成物はジルコニア(ZrO
2)を実質的に含まない。
【0057】
ここに記載したガラス組成物の特定の用途では、ガラスが不透明であり、黒などの特定の色を有することが要求されることがある。したがって、ここに記載した高ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、ガラス組成物は、着色剤として働く成分を1種類以上含むことがある。例えば、高ホウ素ガラス組成物のいくつかは、そのガラス組成物から形成されるガラスに黒色および不透明性を与えるために組合せで使用されることがある、Fe
2O
3およびTiO
2を含んでもよい。これらの実施の形態において、Fe
2O
3およびTiO
2は、TiO
2(モル%)に対するFe
2O
3(モル%)の比が、約0.52以上から約1.22以下の範囲にあるようにガラス組成物中に存在することがある。いくつかの実施の形態において、TiO
2(モル%)に対するFe
2O
3(モル%)の比が、約0.60以上から約1.00以下の範囲にあることがある。TiO
2に対するFe
2O
3の比が減少するにつれて、結果として得られるガラス物品は、CIE F2光源およびL、a
*、b
*スケールから決定して、黒が抑えられてくる。1つの特定の実施の形態において、Fe
2O
3およびTiO
2の総濃度(すなわち、Fe
2O
3(モル%)+TiO
2(モル%))は約1.75モル%である。しかしながら、1.75モル%超の総濃度および1.75モル%未満の総濃度を含む、Fe
2O
3およびTiO
2の他の総濃度を使用してもよいことが理解されよう。
【0058】
ここに記載したいくつかの実施の形態において、黒色は、ガラス物品を熱処理することによって、色修正成分を含有するガラス組成物から形成されたガラスに達成される。例えば、1つの実施の形態において、そのガラスは、約1時間以下の期間に亘り約560℃から約575℃の範囲の温度で最初に焼き鈍され、その後、冷却されることがある。その後、ガラスは、約10時間以下に亘り約600℃から約650℃の温度で熱処理されることがあり、その後、ガラスは不透明であり、黒色である。理論により拘束することを意図するものではないが、黒色は、熱処理中にガラス中に析出する、Fe
2O
3およびTiO
2の組合せから形成される析出物(擬板チタン石などの)の結果であると考えられている。
【0059】
いくつかの実施の形態において、高ホウ素ガラス組成物が、上述したものなどの色修正成分を含有する場合、アルカリ対アルミナ比(R
2O:Al
2O
3)が約1.15以下またさらには約1.12以下であるときに、熱処理後の黒色が生じる。いくつかの実施の形態において、アルカリ対アルミナ比(R
2O:Al
2O
3)が約0.98またさらには約1.02以上であるときに、黒色が生じる。例えば、いくつかの実施の形態において、黒色は、アルカリ対アルミナ比が約1.15以下かつ約0.98以上であるときに得られることがある。いくつかの実施の形態において、黒色は、アルカリ対アルミナ比が約1.12以下かつ約1.02以上であるときに得られる。いくつかの他の実施の形態において、黒色は、アルカリ対アルミナ比が約1.1以下かつ約1.04以上であるときに得られる。
【0060】
色修正成分を含む高ホウ素ガラス組成物の実施の形態において、結果として得られるガラスは不透明であることがある。不透明の度合いは、分光測光により測定されるガラスの光吸収により決定してもよい。ここに記載した実施の形態において、不透明の度合いは、X−Rite CI7 Spectro−Photometerにより測定した。ここに記載した色修正剤を有する高ホウ素ガラスの例示の実施の形態において、結果として得られる不透明ガラスは、ガラス物品に入射する約350nmから約750nmの波長範囲に亘り約80%以上の不透明度を有することがある。これは、ガラス物品に入射する光の約20%未満が実際にそのガラス物品を透過することを意味する。いくつかの実施の形態において、不透明度は、約350nmから約750nmの波長範囲に亘り約80%以上かつ100%以下であることがある。いくつかの他の実施の形態において、不透明度は、約350nmから約750nmの波長範囲に亘り約100%であることがある。
【0061】
ここに注記したように、高ホウ素ガラス組成物に添加される色修正剤により、黒色のガラスが得られることがある。その色の度合いは、CIE F2光源およびL、a
*、b
*スケールを使用して定量化してもよい。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス物品は、Lが約0から約5.0であり、a
*が約−2.0から約2.0であり、b
*が約0から約−5.0である、L、a
*、b
*色座標を有する。これらの範囲内の色座標を有するガラスは、一般に、濃い黒色を有する。
【0062】
その上、ここに記載した色修正成分を含有する高ホウ素ガラス組成物は、イオン交換による強化を容易に受けやすいことが分かった。これらのガラス組成物の層の深さは、約25μm以上であることがある。いくつかの実施の形態において、DOLは、約35μm以上またさらには約45μm以上であることがある。イオン交換によってこれらのガラス組成物に与えられる圧縮応力は、色修正剤を含まない同じガラス組成物の両方と少なくとも等しいか、またはそれより大きいであろうと考えられる。しかしながら、従来の技法(応力複屈折など)を使用した圧縮応力の測定は、ガラスの光学的性質(不透明および黒色)のために困難である。したがって、ガラス物品の特徴強度は、ガラスに与えられる圧縮応力の推定値として使用されるであろう。詳しくは、前記ガラス組成物から形成された複数の未研磨のガラス板サンプルのリング・オン・リング試験を、「Standard Test Method for Monotonic Equibiaxial Flexural Strength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature」と題するASTM基準C1499に記載された方法論を使用して行ってもよい。このデータから、破損強度のワイブル分布を構成し、特徴強度およびワイブル係数を決定してもよい。ここに記載した例示の実施の形態において、約0.8mmの厚さを有する、色修正剤を含有する高ホウ素ガラス組成物から形成されたガラス板は、一般に、約2時間に亘る約570℃での焼き鈍し処理、約4時間に亘る約640℃での熱処理、および100%のKNO
3の塩浴中での約15時間に亘る約440℃でのイオン交換処理後に、約1500MPまたさらには約1600MPa以上の特徴強度を有する。いくつかの実施の形態において、その特徴強度は、同じ処理後に、約1700MPaまたさらには約1800MPa以上であることがある。いくつかの他の実施の形態において、その特徴強度は、同じ処理後に、約1900MPa以上であることがある。ここに記載した実施の形態において、約0.8mmの厚さを有する、色修正剤を含有する高ホウ素ガラス組成物から形成されたガラス板は、一般に、約2時間に亘る約570℃での焼き鈍し処理、約4時間に亘る約640℃での熱処理、および100%のKNO
3の塩浴中での約15時間に亘る約440℃でのイオン交換処理後に、約8またさらには約9以上のワイブル係数を有する。実施の形態において、そのワイブル係数は、同じ処理後に、約10またさらには約11以上であることがある。このワイブル係数は、ワイブルプロットの勾配であり、一般に、傷により破損する材料の感度を示す。実施の形態において、特徴強度は、同じ処理後に、約13以上であることがある。特徴強度は、ワイブル分布により決定される63.2%の破損確率での強度を示す。
【0063】
上述した、比較的低い軟化点、HT CTE、およびイオン交換特性に加え、ここに記載したガラス組成物は、フュージョン・ダウンドロー法などの、フュージョン成形法に使用するのにそのガラス組成物を適したものにする性質も示す。詳しくは、ここに記載したガラス組成物は、約1000℃未満の液相線温度および約150キロポアズ超の液相線粘度を有する。さらに、ガラス組成物は、このガラス組成物がジルコニア製アイソパイプを使用したフュージョン成形に適合するように、約35キロポアズ未満のジルコン・ブレイクダウン粘度(zircon breakdown viscosity)も有する。さらに、ここに記載したガラス組成物は、約1500℃から約1650℃の範囲の溶融温度で、約200ポアズ未満の粘度および約1050℃から約1150℃の成形温度で約35キロポアズの粘度も示す。
【0064】
先の記載に基づいて、比較的低い軟化点および比較的低い高温熱膨張係数を有するガラス組成物の様々な実施の形態がここに開示されていると理解されよう。第1の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、SiO
2、Al
2O
3、Li
2OおよびNa
2Oを含む。そのガラス組成物は、概して、約810℃以下の軟化点、および約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。そのガラス組成物は、約15時間以下に亘る約410℃でのKNO
3を含む塩浴中でのイオン交換後に、約650MPa以上の圧縮応力および約25μm以上の層の深さを有することがある。
【0065】
第2の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、約65モル%から約71モル%のSiO
2、約7モル%から約12モル%のAl
2O
3、約1モル%から約9モル%のLi
2O、約6モル%から約16モル%のNa
2O、約0モル%から約5モル%のK
2O、約0.8から約10モル%の二価酸化物、および約0.5モル%未満のB
2O
3を含み、その二価酸化物は、MgOおよびZnOの少なくとも一方を含み、Al
2O
3の濃度(モル%)および二価酸化物の濃度(モル%)の合計は、10モル%超である。この第2の例示の実施の形態において、このガラス組成物は、必要に応じて、約0.5モル%から約2モル%のZrO
2を含むことがある。あるいは、この第2の例示の組成物は、ZrO
2を実質的に含まないこともある。この第2の例示の組成物がZrO
2を実質的に含まない場合、そのガラス組成物は、約65.8モル%から約71モル%のSiO
2を含むことがある。そのガラス組成物は、概して、約810℃以下の軟化点、および約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。このガラス組成物は、約15時間以下に亘る約410℃でのKNO
3を含む塩浴中でのイオン交換後に、約650MPa以上の圧縮応力および約25μm以上の層の深さを有することがある。
【0066】
第3の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、約55モル%から約68モル%のSiO
2、約9モル%から約15モル%のAl
2O
3、約4.5モル%から約12モル%のB
2O
3、約1モル%から約7モル%のLi
2O、約3モル%から約12モル%のNa
2O、および約0モル%から約3モル%のK
2Oを含む。この実施の形態において、R
2Oは、Li
2Oの濃度、Na
2Oの濃度、およびK
2Oの濃度の合計であり、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比は、約1.1以下である。そのガラス組成物は、概して、約810℃以下の軟化点、および約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。このガラス組成物は、約15時間以下に亘る約410℃でのKNO
3を含む塩浴中でのイオン交換後に、約650MPa以上の圧縮応力および約25μm以上の層の深さを有することがある。
【0067】
第4の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、約65.8モル%から約71モル%のSiO
2、約7モル%から約12モル%のAl
2O
3、約1モル%から約9モル%のLi
2O、約6モル%から約16モル%のNa
2O、約1モル%から約10モル%の二価酸化物、および約0.5モル%未満のB
2O
3を含み、その二価酸化物は、MgOおよびZnOの少なくとも一方である。Al
2O
3の濃度(モル%)および二価酸化物の濃度(モル%)の合計は、10モル%超である。そのガラス組成物は、概して、約810℃以下の軟化点、および約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。この実施の形態において、このガラス組成物は、ZrO
2を実質的に含まないことがある。
【0068】
第5の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、約65.8モル%から約71モル%のSiO
2、約7モル%から約12モル%のAl
2O
3、約1モル%から約9モル%のLi
2O、約6モル%から約16モル%のNa
2O、および約1モル%から約10モル%の二価酸化物を含み、その二価酸化物は、MgOおよびZnOの少なくとも一方である。このガラス組成物は、ZrO
2およびB
2O
3を実質的に含まない。Al
2O
3の濃度(モル%)および二価酸化物の濃度(モル%)の合計は、10モル%超である。そのガラス組成物は、概して、約810℃以下の軟化点、および約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。
【0069】
第6の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、約67モル%から約71モル%のSiO
2、約7モル%から約12モル%のAl
2O
3、約1モル%から約9モル%のLi
2O、約6モル%から約16モル%のNa
2O、および約1モル%から約10モル%の二価酸化物を含み、その二価酸化物は、MgOおよびZnOの少なくとも一方である。このガラス組成物は、約0モル%から約7モル%のMgO、約0モル%から約1モル%のCaO、および約0モル%から約6モル%のZnOも含むことがある。このガラス組成物は、B
2O
3を実質的に含まない。Al
2O
3の濃度(モル%)および二価酸化物の濃度(モル%)の合計は、10モル%超である。そのガラス組成物は、概して、約810℃以下の軟化点、および約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。
【0070】
第7の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、約55モル%から約68モル%のSiO
2、約9モル%から約15モル%のAl
2O
3、約4.5モル%から約12モル%のB
2O
3、約1モル%から約7モル%のLi
2O、約3モル%から約12モル%のNa
2O、および約0モル%から約3モル%のK
2Oを含む。この実施の形態において、R
2Oは、Li
2Oの濃度、Na
2Oの濃度、およびK
2Oの濃度の合計であり、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比は、約1.1以下である。そのガラス組成物は、概して、約810℃以下の軟化点、および約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。
【0071】
第8の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、約55モル%から約68モル%のSiO
2、約9モル%から約15モル%のAl
2O
3、約4.5モル%から約12モル%のB
2O
3、約1モル%から約7モル%のLi
2O、約3モル%から約12モル%のNa
2O、および約0モル%から約3モル%のK
2Oを含む。この実施の形態において、R
2Oは、Li
2Oの濃度、Na
2Oの濃度、およびK
2Oの濃度の合計であり、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比は、約1.1以下である。そのガラス組成物は、概して、約810℃以下の軟化点、および約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。
【0072】
第9の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、約55モル%から約68モル%のSiO
2、約9モル%から約15モル%のAl
2O
3、約4.5モル%から約12モル%のB
2O
3、約1モル%から約7モル%のLi
2O、約3モル%から約12モル%のNa
2O、および約0モル%から約3モル%のK
2Oを含む。このガラス組成物は、約0モル%から約5モル%のMgO、約0モル%から約5モル%のZnO、および約0モル%から約2モル%のCaOをさらに含むことがある。この実施の形態において、R
2Oは、Li
2Oの濃度、Na
2Oの濃度、およびK
2Oの濃度の合計であり、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比は、約1.1以下である。そのガラス組成物は、概して、約810℃以下の軟化点、および約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。
【0073】
第10の例示の実施の形態において、ガラス組成物は、約65モル%から約71モル%のSiO
2、約7モル%から約12モル%のAl
2O
3、約1モル%から約9モル%のLi
2O、約6モル%から約16モル%のNa
2O、約0モル%から約5モル%のK
2O、約0.8から約10モル%の二価酸化物、約0.5モル%から約2モル%のZrO
2、および約0.5モル%未満のB
2O
3を含み、その二価酸化物は、MgOおよびZnOの少なくとも一方を含む。この例示の実施の形態において、Al
2O
3の濃度(モル%)および二価酸化物の濃度(モル%)の合計は、10モル%超である。そのガラス組成物は、約810℃以下の軟化点を有する。そのガラス組成物は、約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有する。
【実施例】
【0074】
ここに記載したガラス組成物の実施の形態を、以下の実施例によりさらに明らかにする。
【0075】
下記の表1〜6に列挙されたバッチ組成物にしたがって、複数の例示のガラス組成物を調製した。酸化物構成成分のバッチを混合し、溶融し、ガラスに形成した。ガラス組成物の性質(すなわち、軟化点、HT CTEなど)を測定し、その結果が表1〜6に報告されている。比較例(すなわち、本発明ではない実施例)には、実施例の特定において「C」が前についている。
【0076】
ここで、表1を参照すると、軟化点およびHT CTEに対する、Na
2OのLi
2Oによる置換の影響を調査するために、7つの例示の低ホウ素ガラス組成物を調製した。
図2は、Na
2OをLi
2Oで置換したときのLi
2Oの濃度の関数(x軸)としての軟化点(y軸)をグラフで示している。
図3は、Na
2OをLi
2Oで置換したときのLi
2Oの濃度の関数(x軸)としてのHT CTE(y軸)をグラフで示している。
【0077】
表1のデータ並びに
図2および3により示されるように、Na
2OをLi
2Oで部分的に置換すると、ガラス組成物の軟化点が漸進的に低下した。具体的には、Na
2Oを9モル%のLi
2Oで置換すると、軟化点が最大で70℃減少した。また、Na
2OをLi
2Oで置換すると、HT CTEがわずかに上昇した(1〜3モル%の置換について、24×10
-6/℃から25.5×10
-6/℃)。しかしながら、置換後でさえ、これらの組成物のHT CTE値は、27×10
-6/℃未満であった。さらに、
図3にグラフで示されるように、表1からのデータにより、HT CTEの上昇は、上昇する濃度のLi
2Oについて、横ばい状態になることが示されている。
【0078】
【表1】
【0079】
ここで、表2を参照すると、軟化点およびHT CTEに対する、Na
2OおよびNa
2O+K
2OのLi
2Oによる置換の影響を調査するために、8つの例示の低ホウ素ガラス組成物を調製した。
図4は、Na
2O+K
2OをLi
2Oで置換したときのLi
2Oの濃度の関数(x軸)としての軟化点(y軸)をグラフで示している。
図5は、Na
2O+K
2OをLi
2Oで置換したときのLi
2Oの濃度の関数(x軸)としてのHT CTE(y軸)をグラフで示している。
【0080】
表2のデータ並びに
図4および5により示されるように、Na
2OまたはNa
2O+K
2OをLi
2Oで部分的に置換すると、ガラス組成物の軟化点が漸進的に低下した。具体的には、Na
2O+K
2Oを5モル%のLi
2Oで置換すると、軟化点が最大で90℃減少した。また、Na
2O+K
2OをLi
2Oで置換すると、HT CTEがわずかに上昇した。しかしながら、置換後でさえ、これらの組成物のHT CTE値は、27×10
-6/℃未満であった。表2のガラス組成物に関するように、HT CTEの横ばい状態は観察されなかった。
【0081】
【表2】
【0082】
表3は、様々な異なるイオン交換処理条件に関する、表2に列挙された例示のガラス組成物のいくつかについてのイオン交換後の性質(圧縮応力およびDOL)を含んでいる。イオン交換条件は、様々な温度および浸漬時間での100%のKNO
3中の1回のイオン交換処理、並びに混合浴(例えば、90%のKNO
3−10%のNaNO
3)と、その後の100%のKNO
3の第二浴中での浸漬を含む二段階処理を含んだ。表3に示されている圧縮応力およびDOLは、FSM装置により得られた測定値であり、圧縮応力値は、測定した応力光学係数(SOC)に基づいている。
図6は、様々なLi
2O濃度(すなわち、1.0モル%、3.5モル%、および4.9と5.0モル%(集合的に))に関する圧縮応力(y軸)およびDOL(x軸)をグラフで示している。
図6に示されるように、40μmのDOLが、1%と3.5%のLi
2O濃度で達成できるが、それより多い濃度では達成できず、それにより、少なくともNaのLiによる置換について、所望のDOLを達成しつつ、ガラスに導入できるLi
2Oの量には有効上限があるであろうことが示される。
【0083】
【表3】
【0084】
ここで表4を参照すると、表4は、低ホウ素ガラス組成物のいくつかの本発明の実施例と比較例の、組成データ、並びに対応する軟化点、HT CTE、およびイオン交換特徴を含んでいる。
【0085】
【表4-1】
【0086】
【表4-2】
【0087】
ここで表5を参照すると、ジルコニアを含有する一連の低ホウ素ガラス組成物も形成された。これらのガラス組成物の軟化点は800℃未満であり、HT CTEは27×10
-6/℃未満であった。15時間に亘る440℃での100%のKNO
3の塩浴中のイオン交換後、ガラス組成物は700MPa超の圧縮応力および40μmの層の深さを有した。
【0088】
【表5】
【0089】
表6を参照すると、2つの本発明の組成物(29および30)に、ガラス組成物がフュージョン成形法に使用するのに適しているかの判定および追加の特徴付けを行った。表6は、本発明の組成物の組成と性質、並びにフュージョン成形法に使用するのに適したイオン交換可能なガラス組成物の2つの比較例を含んでいる。本発明の低ホウ素ガラス組成物は、比較のガラス組成物の軟化点より約40℃低い軟化点を有した。さらに、低ホウ素ガラス組成物のHT CTE値は、比較のガラス組成物のHT CTE値に匹敵するか、またはそれ未満である。本発明の低ホウ素ガラス組成物は、比較のガラス組成物と同様のイオン交換特性、並びに高温粘度、液相線温度、液相線粘度およびジルコン・ブレイクダウン温度を有し、本発明の低ホウ素ガラス組成物がフュージョン成形法に使用するのに適しているであろうことを示している。
【0090】
【表6】
【0091】
ここで表7を参照すると、表7は、本発明と比較の高ホウ素ガラス組成物に関する、組成データおよび対応する軟化点とHT CTEを含んでいる。表7に示されるように、本発明のガラス組成物は、一般に、約5モル%超の、示された実施例においては、約10モル%までのB
2O
3を有する。しかしながら、表7に示された本発明の高ホウ素ガラス組成物について、比R
2O:Al
2O
3は、一般に、約0.9以上つ約1.15以下である。
【0092】
比較例C8は、Li
2Oを含んでおらず、その結果、このガラスの軟化点は、本発明の高ホウ素ガラス組成物よりも高く、ガラス組成物中にLi
2Oを有する必要性を示している。
【0093】
【表7】
【0094】
ここで表8を参照すると、不透明の黒色ガラスを生成するために、色修正成分TiO
2およびFe
2O
3を含有する5つのガラス組成物を配合した。本発明の組成物38〜41は、表7からの組成物31に基づき、本発明の組成物42は、表7の組成物34に基づいている。各ガラス組成物のアルカリ対アルミナ比は、1.15未満かつ1.0超であった。0.8mmの厚さを有する板サンプルを製造し、測定した。組成物39〜42の各々は、約810℃未満の軟化点を示し、組成物38は、装置の測定誤差(±5℃)を考えると約810℃である、約814℃の軟化点を有する。組成物38および41〜42は、約27×10
-6/℃以下のHT CTEも示した(組成物39および40のHT CTEは測定しなかった)。各サンプルを2時間に亘り570℃で焼き鈍し、室温まで冷却し、4時間に亘り640℃で熱処理して、黒色を生じた。サンプルの不透明度は、板の表面に光源を照らし、その光が板の外面を透過したかを定性的に判定することによって定性的に評価した。表8に示されるように、全てのサンプルは、この定性評価に基づいて不透明に見えた。その上、X−Rite CI7 Spectro−Photometerを使用して、組成物38、41および42について、L、a
*、b
*座標を決定した。組成物41および42のサンプルも、15時間に亘り430℃で100%のKNO
3の塩浴中でイオン交換した。各サンプルにおけるカリウム拡散の結果として得られた層の深さは30μm超であると判定された。
【0095】
【表8】
【0096】
ここで表9を参照すると、黒色ガラスの形成へのアルカリ(R
2O)対アルミナ(Al
2O
3)の影響を評価するために、一連のガラス組成物を配合した。表9に示されるように、R
2O:Al
2O
3比を増加させて、6つのガラス組成物を配合した。それらのガラス組成物を0.8mmのガラス板に成形し、2時間に亘り570℃で焼き鈍し、室温に冷却し、4時間に亘り640℃で熱処理した。比較組成物C9およびC10では、上述した定性評価を使用して、不透明ガラスにはならなかった。さらに、これらのサンプルの軟化点は810℃よりずっと高かった。比較組成物C12では、上述した定性評価を使用して、不透明ガラスにはならず、そのサンプルのHT CTEは27×10
-6/℃より大きかった。本発明の組成物43および44は両方とも、上述した定性評価を使用して、不透明ガラスを生成し、両方とも、27×10
-6/℃未満のHT CTEを有した。本発明の組成物43の軟化点は812℃であった。これは、装置の測定誤差(±5℃)を考えると、約810℃である。
【0097】
【表9】
【0098】
ここで表10を参照すると、表8の組成物41から形成したガラス板を調製し、異なる条件下で熱処理した。これらのサンプルのいくつかをイオン交換して、色修正成分を含有するガラス組成物から形成したガラスを強化する恩恵を評価した。詳しくは、本発明の組成物41から形成し、0.83mmの厚さを有する第一組の17枚の板を2時間に亘り570℃で焼き鈍した。本発明の組成物41から形成し、0.83mmの厚さを有する第二組の17枚の板を、2時間に亘り570℃で焼き鈍し、室温まで冷却し、次いで、15時間に亘り440℃で100%のKNO
3の塩浴中においてイオン交換した。本発明の組成物41から形成し、0.80mmの厚さを有する第三組の12枚の板を、2時間に亘り570℃で焼き鈍し、室温まで冷却し、次いで、4時間に亘り640℃で熱処理した。本発明の組成物41から形成し、0.80mmの厚さを有する第四組の15枚の板を、2時間に亘り570℃で焼き鈍し、室温まで冷却し、4時間に亘り640℃で熱処理し、次いで、15時間に亘り440℃で100%のKNO
3の塩浴中においてイオン交換した。板への深さの関数としての1枚の板についてのナトリウムとカリウムのイオン濃度が、
図7にグラフで示されており、イオン交換により生じた層の深さが約30μmであったことを示している。板の各々は、イオン交換により達成された強化の程度を評価するために、ASTM基準C1499にしたがうリング・オン・リング試験プロトコルを使用して、未研磨状態で試験した。比較目的のために、同じ試験プロトコルにしたがって、コーニングガラスコード2318(商標名Gorilla Glass(商標)でコーニング社(Corning Inc.)により販売されているイオン交換により強化されたホウケイ酸ガラス)から形成された15枚のガラス板を試験した。各組のガラス板についてのワイブル分布を構成し、特徴強度およびワイブル係数を決定した。
【0099】
表10に示されるように、本発明のガラス組成物41は、焼き鈍し条件と、焼き鈍し、熱処理した条件の両方でのイオン交換後に、著しい強度の増加を示した。これにより、コーニングガラスコード2318のものと類似の強化の程度がもたらされた。
【0100】
【表10】
【0101】
今では、ここに記載したガラス組成物は、ガラス組成物を3D成形ガラス物品に成形するための高温成形法と併せて使用するのに適していることが理解されるはずである。詳しくは、ここに記載したガラス組成物の比較的低い軟化点(すなわち、約810℃以下の軟化点)は、高温成形中の型とガラス組成物との間の相互作用を減少させ、それによって、ガラス組成物の成形性を改善し、また対応する型の有効寿命を増加させる。
【0102】
さらに、ここに記載したガラス組成物は、ガラス転移温度より高い温度で比較的低い高温熱膨張係数(すなわち、約27×10
-6/℃以下のHT CTE)も示す。この比較的低いHT CTEにより、ガラス組成物に、高温成形法後のガラス組成物の良好な寸法制御が与えられる。
【0103】
ここに記載したガラスは比較的低い軟化点および比較的低いHT CTEを有する一方で、そのガラス組成物はイオン交換可能でもある。例えば、ここに記載したガラス組成物をイオン交換して、約15時間以下に亘る約410℃でのKNO
3を含む塩浴中での浸漬後に約25μm以上の層の深さおよび約650MPaの圧縮応力を達成することがある。
【0104】
さらに、ここに記載したガラス組成物は、そのガラス組成物がフュージョンドロー法に適合し、容易に溶融されるように、約1620℃で約200ポアズ未満の粘度および液相線粘度を有する。
【0105】
今では、ガラス物品およびガラス組成物のいくつかの態様がここに開示されているのが理解されよう。第1の態様において、SiO
2、Al
2O
3、Li
2OおよびNa
2Oを含むガラス物品は、約810℃以下の軟化点;約27×10
-6/℃以下の高温CTE;並びに約15時間以下に亘る約390℃から約450℃の温度範囲でのKNO
3を含む塩浴中におけるイオン交換後の、約600MPa以上の圧縮応力および約25μm以上の層の深さを有する。
【0106】
第2の態様において、第1の態様のガラス物品は、Lが約0から約5.0であり、a
*が約−2.0から約2.0であり、b
*が約0から約−5.0である、L、a
*、b
*色座標を有する。
【0107】
第3の態様において、第1または第2の態様のガラス物品は、約350nmから約750nmの波長範囲に亘り約80%以上の不透明度を有する。
【0108】
第4の態様において、第1から第3の態様のいずれかのガラス物品は、約65モル%から約71モル%のSiO
2、約7モル%から約12モル%のAl
2O
3、約1モル%から約9モル%のLi
2O、約6モル%から約16モル%のNa
2O、約0モル%から約5モル%のK
2O、約0.8から約10モル%の二価酸化物、および約0.5モル%未満のB
2O
3を含み、その二価酸化物は、MgOおよびZnOの少なくとも一方を含み、Al
2O
3の濃度(モル%)および二価酸化物の濃度(モル%)の合計は、10モル%超である。
【0109】
第5の態様において、第4の態様のガラス物品は、約0.5モル%から約2モル%のZrO
2をさらに含む。
【0110】
第6の態様において、第4または第5の態様のガラス物品は、約0モル%から約3モル%のP
2O
5を含む。
【0111】
第7の態様において、第4から第6の態様のいずれかのガラス物品は、ZrO
2を実質的に含まない。
【0112】
第8の態様において、第7の態様のガラス物品は、約65.8モル%から約71モル%のSiO
2を含む。
【0113】
第9の態様において、第1から第3の態様のいずれかのガラス物品は、約55モル%から約68モル%のSiO
2、約9モル%から約15モル%のAl
2O
3、約4.5モル%から約12モル%のB
2O
3、約1モル%から約7モル%のLi
2O、約3モル%から約12モル%のNa
2O、および約0モル%から約3モル%のK
2Oを含む。この第9の態様において、R
2Oは、Li
2Oの濃度、Na
2Oの濃度、およびK
2Oの濃度の合計であり、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比は、約1.15以下である。
【0114】
第10の態様は、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比が約1.02以上である、第9の態様のガラス物品を含む。
【0115】
第11の態様において、第9または第10の態様のいずれかのガラス物品は、TiO
2およびFe
2O
3をさらに含む。
【0116】
第12の態様は、TiO
2(モル%)に対するFe
2O
3(モル%)の比が、約0.52以上かつ約1.22以下である、第11の態様のガラス物品を含む。
【0117】
第13の態様において、ガラス組成物は、約65.8モル%から約71モル%のSiO
2、約7モル%から約12モル%のAl
2O
3、約1モル%から約9モル%のLi
2O、約6モル%から約16モル%のNa
2O、約0.8から10モル%の二価酸化物、および約0.5モル%未満のB
2O
3を含み、その二価酸化物は、MgOおよびZnOの少なくとも一方である。Al
2O
3の濃度(モル%)および二価酸化物の濃度(モル%)の合計は、約10モル%超である。そのガラス組成物は、約810℃以下の軟化点を有する。そのガラス組成物は、約27×10
-6/℃以下の高温CTEも有する。このガラス組成物は、ZrO
2を実質的に含まないことがある。
【0118】
第14の態様は、前記ガラス組成物がB
2O
3を実質的に含まない、第13の態様のガラス組成物を含む。
【0119】
第15の態様において、第13から第14の態様のいずれかのガラス組成物は、約2510
-6/℃以下の高温CTEを有する。
【0120】
第16の態様において、第13から第14の態様のいずれかのガラス組成物は、約0モル%から約7モル%のMgO、約0モル%から約1モル%のCaO、および約0モル%から約6モル%のZnOをさらに含む。
【0121】
第17の態様において、第16の態様のガラス組成物は、約3モル%以上かつ約5モル%以下のMgO濃度を有する。
【0122】
第18の態様において、第13から第17の態様のいずれかのガラス組成物は、約68モル%から約71モル%のSiO
2濃度を含む。
【0123】
第19の態様において、ガラス組成物は、約55モル%から約68モル%のSiO
2、約9モル%から約15モル%のAl
2O
3、約4.5モル%から約12モル%のB
2O
3、約1モル%から約7モル%のLi
2O、約3モル%から約12モル%のNa
2O、および約0モル%から約3モル%のK
2Oを含む。この態様において、R
2Oは、Li
2Oの濃度、Na
2Oの濃度、およびK
2Oの濃度の合計であり、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比は、約1.15以下である。そのガラス組成物は、約810℃以下の軟化点を有することがある。そのガラス組成物は、約27×10
-6/℃以下の高温CTEも有することがある。
【0124】
第20の態様は、軟化点が約800℃以下である、第19の態様のガラス組成物を含む。
【0125】
第21の態様は、高温CTEが約25×10
-6/℃以下である、第19から第20の態様のいずれかのガラス組成物を含む。
【0126】
第22の態様は、Al
2O
3の濃度に対するR
2Oの比が約1.02以上であり、そのガラス組成物がTiO
2およびFe
2O
3をさらに含む、第19から第20の態様のいずれかのガラス組成物を含む。
【0127】
第23の態様は、TiO
2(モル%)に対するFe
2O
3(モル%)の比が、約0.52以上かつ約1.22以下である、第19から第22の態様のいずれかのガラス組成物を含む。
【0128】
第24の態様は、そのガラス組成物が、約0モル%から約5モル%のMgO、約0モル%から約5モル%のZnO、および約0モル%から約2モル%のCaOをさらに含む、第19から第23の態様のいずれかのガラス組成物を含む。
【0129】
第25の態様は、B
2O
3の濃度が7モル%以上かつ12モル%以下である、第19から第24の態様のいずれかのガラス組成物を含む。
【0130】
第26の態様は、そのガラス組成物が約0モル%から約3モル%のP
2O
5を含む、第19から第25の態様のいずれかのガラス組成物を含む。
【0131】
第27の態様は、約65モル%から約71モル%のSiO
2、約7モル%から約12モル%のAl
2O
3、約1モル%から約9モル%のLi
2O、約6モル%から約16モル%のNa
2O、約0モル%から約5モル%のK
2O、約0.8から約10モル%の二価酸化物、約0モル%から約3モル%のP
2O
5、約0.5モル%から約2モル%のZrO
2、および約0.5モル%未満のB
2O
3を含み、その二価酸化物がMgOおよびZnOの少なくとも一方を含む、ガラス組成物を含む。この態様において、Al
2O
3の濃度(モル%)および二価酸化物の濃度(モル%)の合計は、約10モル%超である。そのガラス組成物は、約810℃以下の軟化点を有することがある。そのガラス組成物は、約27×10
-6/℃以下の高温CTEを有することがある。
【0132】
請求項に記載された主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に様々な改変および変更を行えることが当業者には明白であろう。それゆえ、この明細書は、そのような改変および変更が、付随の特許請求の範囲およびその同等物の範囲に入るという条件で、ここに記載した様々な実施の形態の改変および変更を対象とすることが意図されている。