特許第6130525号(P6130525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6130525複数の制御チャンバを備えるベーンポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130525
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】複数の制御チャンバを備えるベーンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/22 20060101AFI20170508BHJP
   F04C 2/344 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   F04C14/22 D
   F04C2/344 331C
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-562455(P2015-562455)
(86)(22)【出願日】2014年3月6日
(65)【公表番号】特表2016-510102(P2016-510102A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】IB2014059506
(87)【国際公開番号】WO2014141013
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】13/800,227
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515253441
【氏名又は名称】マグナ パワートレイン インク.
【氏名又は名称原語表記】MAGNA POWERTRAIN INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】シュルヴァー,デイヴィッド アール.
(72)【発明者】
【氏名】タナスーカ,セザール
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−184776(JP,A)
【文献】 特表2008−524500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 14/22
F04C 2/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量ベーンポンプであって、
ポンプチャンバを含むポンプケーシングと、
ポンプチャンバ内を移動可能であり、ポンプの容量を変化させるポンプ制御リングと、
ポンプ制御リングのキャビティ内に位置し、ポンプ制御リングのキャビティの中心からずれた軸線まわりに回転可能であるベーンポンプロータと、
ロータによって駆動され、ポンプ制御リングの内表面に係合するベーンと、
ポンプケーシングとポンプ制御リングの第1部分との間の第1制御チャンバであって、該ポンプ制御リングの第1部分が枢動ピンの両側に周方向に延び、該第1制御チャンバが、加圧された流体を受容し、ポンプ制御リングを移動させる力を生じさせて、ポンプの容量を減少させるように動作可能である第1制御チャンバと、
ポンプケーシングとポンプ制御リングの第2部分との間の第2制御チャンバであって、加圧された流体を受容し、ポンプ制御リングを移動させる力を生じさせて、ポンプの容量を減少させるように動作可能である第2制御チャンバと、
最大容量の位置に向けてポンプリングを付勢する伸縮ばねであって、第1および第2制御チャンバ内の加圧された流体によって生じる力に抗して作用する伸縮ばねと、
を含むことを特徴とする可変容量ベーンポンプ。
【請求項2】
第1制御チャンバを少なくとも部分的に規定する移動可能な第1および第2シールと、回転のために制御リングを支持する枢動ピンとをさらに含み、第1シールが第2シールよりも枢動ピンの近くに位置することを特徴とする、請求項1に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項3】
ポンプ制御リングは、横方向に延び、周方向に互いに離れた、第1および第2溝を含み、第1溝は第1シールを受容し、第2の移動可能な弾性シールは、ポンプケーシングに封止係合して第2溝内に位置することを特徴とする、請求項2に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項4】
ポンプケーシングは、シールによって係合されるケーシング壁から離れた支柱を含み、枢動ピンは支柱に固定されることを特徴とする、請求項3に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項5】
第1チャンバは、ポンプ出口圧力で流体を連続的に受容することを特徴とする、請求項1に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項6】
第1シールは、第2シールから周方向に100度を超える角度で離れ、角度の頂点は、ポンプ制御リングのキャビティの中心であることを特徴とする、請求項に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項7】
可変容量ベーンポンプであって、
入口と出口とを有するポンプチャンバを含むポンプケーシングと、
ポンプチャンバ内を枢動可能に移動可能であり、ポンプの容量を変化させるポンプ制御リングと、
ポンプ制御リング内に回転可能に装着され、摺動可能に装着されたベーンを受容する放射状に延びる複数のスロットを有するベーンポンプロータであって、各ベーンの半径方向外端部がポンプ制御リングの内表面に係合し、ポンプ制御リングの中心から偏心して回転軸線まわりに回転可能であり、流体が入口から出口まで移動するとき、流体を加圧するように回転可能であるベーンポンプロータと、
ポンプケーシングとポンプ制御リングの外表面との間の第1制御チャンバであって、加圧された流体を受容し、ポンプ制御リングを移動する力を生じさせ、ポンプの容量を減少させるように動作可能である第1制御チャンバと、
ポンプケーシングとポンプ制御リングの外表面との間の第2制御チャンバであって、加圧された流体を受容し、ポンプ制御リングを移動させる力を生じさせ、ポンプの容量を減少させるように選択的に動作可能である第2制御チャンバと、
ポンプケーシングとポンプ制御リングの外表面との間の第3制御チャンバであって、ポンプの出口から加圧された流体を常に受容する第3制御チャンバと、
ケーシング内に位置し、ポンプリングとケーシングとの間に作用して、ポンプリングを最大容量の位置に向けて付勢する伸縮ばねであって、第1および第2制御チャンバ内に加圧された流体によって生じる力に抗して作用する伸縮ばねと、
を含むことを特徴とする可変容量ベーンポンプ。
【請求項8】
ケーシングとポンプ制御リングとの間に位置して、少なくとも部分的に第1、第2および第3制御チャンバを規定し、摺動可能にケーシングを横切って移動可能である、第1、第2、第3、および第4シールをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項9】
ポンプ制御リングは、半径方向外方に突出する単一片の第1および第2突起を含み、各突起は溝部を含み、第1突起の溝部は第1および第2制御チャンバを分離するシールを受容し、第2突起の溝部は、第1および第3制御チャンバを分離するシールを受容することを特徴とする、請求項8に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項10】
流体を第2制御チャンバに選択的に供給するように動作可能な制御機構をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項11】
制御機構は、電磁弁を含むことを特徴とする、請求項10に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項12】
第1および第4シールは、少なくとも部分的に第3制御チャンバを規定し、第1シールは、第4シールとは異なる、制御リング枢動軸に関するモーメントアーム長に位置することを特徴とする、請求項7に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項13】
第1シールの位置は、第3チャンバ内の加圧された流体から制御リングに作用する合力が、制御リングを最小容量に向けて付勢するように、第4シールの位置によって規定されるモーメントアームよりも長いモーメントアームを規定することを特徴とする、請求項12に記載の可変容量ベーンポンプ。
【請求項14】
第1シールは、第4シールから周方向に80度を超える角度で離れており、角度の頂点はポンプ制御リングの中心であることを特徴とする、請求項12に記載の可変容量ベーンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月13日に出願された米国実用出願第13/800,227号の優先権を主張するものであり、該実用出願は2012年11月27日に出願された米国特許出願第13/686,680号の一部継続出願であり、該一部継続出願は2010年9月10日に出願された米国特許出願第12/879,406号であって、2012年11月27日に発行された特許第8,317,486号の継続出願であり、該継続出願は2007年6月4日に出願された米国特許出願第11/720,787号であり、2010年9月14日に発行された特許第7,794,217号の継続出願であり、該継続出願は2005年12月21日に出願された国際出願PCT/CA2005/001946号の国内段階であり、2004年12月22日に出願された米国仮特許出願第60/639,185号の利益を主張するものである。上述の各出願の全ての開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、可変容量ベーンポンプに関する。より具体的には、本発明は、複数の制御チャンバを含む可変容量ベーンポンプに関する。加圧された流体の様々な供給源は、制御チャンバに備えられ、ポンプの変位を制御し得る。
【背景技術】
【0003】
可変容量ベーンポンプは周知であり、ポンプのロータ偏心を変化させるために動かすことができ、そのためポンプ容積を変化させることができるポンプ制御リングの形態で容量調節要素を備えることが可能である。ポンプが自動車エンジン潤滑システムなどの実質的に一定のオリフィス寸法を有するシステムを提供している場合、ポンプの出力流を変化させることはポンプによって生じる圧力を変化させることと等価である。
【0004】
平衡圧を維持するためにポンプ容積を変化させるための能力を有することは、自動車潤滑ポンプのような環境において重要であり、ポンプが動作速度の範囲にわたって動作することになる。そのような環境において、平衡圧を維持するために、作動流体(たとえば、潤滑油)のポンプの出力からポンプ制御リングに隣接する制御チャンバへの帰還供給を用いて、制御チャンバにおける圧力を、典型的には伸縮ばねからの付勢力に抗して制御リングを移動させるために作用させ、ポンプ容量を変化させることが知られている。
【0005】
ポンプの出力における圧力が増加するとき、たとえばポンプの動作速度が増加するとき、増加した圧力は制御リングに印加され、伸縮ばねの付勢を克服して、制御リングを動かしてポンプ容量を減少させるので、出力流、したがってポンプの出力における圧力を減少させる。
【0006】
反対に、ポンプの出力における圧力が低下するとき、たとえばポンプの動作速度が減少するとき、減少した圧力は、制御リングに隣接する制御チャンバに印加され、伸縮ばねの付勢が制御リングを移動させて、ポンプ容量を増加させ、出力流、したがってポンプの圧力を上昇させることを可能にする。
このようにして、平衡圧がポンプの出力で得られる。
【0007】
平衡圧は、制御チャンバにおける作動流体が作用する制御リングの面積と、チャンバに供給される作動流体の圧力と、伸縮ばねによって生じる付勢力とによって決定される。
【0008】
従来、平衡圧はエンジンの予期される動作範囲に対して許容可能な圧力であるように選択され、したがって、たとえば、エンジンは、高いエンジン動作速度で必要とされるよりも低い作動流体圧力を用いて低い動作速度で許容可能に動作することが可能であってもよいので、多少妥協がある。エンジンへの過度な摩耗または他の損傷を防ぐために、エンジンの設計者は、最悪(高い動作速度)条件を満たす、ポンプの平衡圧を選択する。したがって、低速において、ポンプは、それらの速度に必要であるよりも高い容量で動作し、余剰の不必要な作動流体を押し出すエネルギーを浪費する。
【0009】
合理的な程度に小型のポンプハウジングにおいて、少なくとも2つの選択可能な平衡圧を提供することができる可変容量ベーンポンプを備えることが望まれる。また、ポンプ制御リングのための枢動ピンにおける反力を減少させる可変容量ベーンポンプを備えることが望まれる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の少なくとも1つの欠点を取り除くか、または軽減する新規の可変容量ベーンポンプを提供することである。
【0011】
可変容量ベーンポンプは、ポンプケーシングとポンプ制御リングの第1部分との間に第1制御チャンバを含む。制御リングの第1部分は、枢動ピンの両側に周方向に延びる。第2制御チャンバは、ポンプケーシングとポンプ制御リングの第2部分との間に設けられる。第1および第2制御チャンバは、加圧された流体を受容し、ポンプ制御リングを移動させるための力を生じ、ポンプ容積を減少させるように動作可能である。伸縮ばねは、最大容積の位置に向けてポンプリングを付勢する。
【0012】
可変容量ベーンポンプは、入口と出口とを有するポンプチャンバを含むポンプケーシングを含む。ポンプ制御リングは、ポンプチャンバ内で旋回し、ポンプの容積を変化させる。ロータは、ポンプ制御リング内で回転可能に装着され、摺動可能なベーンを受容するスロットを含む。第1、第2、および第3制御チャンバは、ポンプケーシングとポンプ制御リングの外表面との間に形成される。第1および第2制御チャンバは、加圧された流体を受容し、ポンプ制御リングを移動させる力を生じさせ、ポンプ容積を減少させるように選択的に動作可能である。第3チャンバは、ポンプの出口から加圧された流体を絶えず受容する。伸縮ばねは、ケーシング内に位置し、ポンプリングとケーシングとの間に作用して、最大容量の位置に向けてポンプリングを付勢し、第1および第2制御チャンバ内で加圧された流体によって生じる力に抗して作用する。
【0013】
本発明の好適な実施形態を、単に例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】最大ロータ偏心に位置した制御リングを備える本発明に係るベーンポンプの正面図である。
図2】最大ロータ偏心に位置した制御リングを備える図1のポンプの正面斜視図である。
図3】最小偏心の制御リング位置における図1のポンプの正面図であり、ポンプ制御チャンバの面積は斜線で示される。
図4】従来技術の可変容量ベーンポンプの概略図を示す。
図5】ロータとベーンとがポンプ内の力を示すために除かれた、図1のポンプの正面図を示す。
図6】代替の可変容量ポンプの分解斜視図を示す。
図7図6に示されるポンプの別の分解斜視図を示す。
図8図6および図7に示されるポンプの断面図である。
図9】別の代替可変容量ベーンポンプの断面図を含む概略図である。
図10図9に示されたベーンポンプの分解斜視図である。
図11】最小ポンプ容量位置にあるポンプ制御リングを有する図9および図10に示されるポンプの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る可変容量ベーンポンプは、図1図2および図3において一般的に符号20で示される。
【0016】
図1図2および図3を参照して、ポンプ20は、ポンプ20が加圧された作動流体を供給するエンジン(図示せず)などに、ポンプカバー(図示せず)および適切なガスケットによって封止された正面24を有するハウジングまたはケーシング22を含む。
【0017】
ポンプ20は、ポンプが作動流体を供給するエンジンまたは他の機構のなどの任意の適切な手段によって駆動されてポンプ20を動作させる入力部材または駆動軸28を含む。駆動軸28が回転すると、ポンプチャンバ36内に位置するポンプロータ32は駆動軸28によって回転する。一連の摺動可能なポンプベーン40はロータ32とともに回転し、各ベーン40の外端はポンプ制御リング44の内表面と係合し、ポンプチャンバ36の外壁を形成する。ポンプチャンバ36は、ポンプ制御リング44の内表面、ポンプロータ32、およびベーン40によって規定される、一連の作動流体チャンバ48に分割される。ポンプロータ32は、ポンプ制御リング44の中心から偏心した回転軸を有する。
【0018】
ポンプ制御リング44は、ポンプ制御リング44の中心をロータ32の中心に対して移動することを可能にする枢動ピン52を介してケーシング22内に装着される。ポンプ制御リング44の中心がポンプロータ32の中心に対して偏心して位置し、ポンプ制御リング44の内部とポンプロータ32とのそれぞれが円形であるので、作動流体チャンバ48の容積は、チャンバ48がポンプチャンバ36まわりを回転するにつれて変化し、その容積はポンプ20の低圧側(図1におけるポンプチャンバ36の左側)において大きくなり、ポンプ20の高圧側(図1におけるポンプチャンバ36の右側)において小さくなる。作動流体チャンバ48の容積のこの変化はポンプ20のポンプ作用を生じさせ、入口50から作動流体を取り出し、それを加圧して出口54に送達する。
【0019】
枢動ピン52まわりにポンプ制御リング44を移動させることによって、ポンプロータ32に対する偏心量は、その量を変化させるように変わり、それによって作動流体チャンバ48の容積がポンプ20の低圧側からポンプ20の高圧側まで変化し、したがってポンプの容量を変えることができる。伸縮ばね56はポンプ制御リング44を図1および図2に示される位置に付勢し、ここでポンプは最大偏心を有する。
【0020】
上述のように、ポンプ制御リングに隣接する制御チャンバと伸縮ばねとを提供して、可変容量ベーンポンプのポンプリングを移動させ、平衡出力流と、その関連する平衡圧とを確立することが知られている。
【0021】
しかしながら、本発明によれば、ポンプ20は、2つの制御チャンバ60および64を含み、これは図3に最もよく示されているが、ポンプリング44を制御する。図3における最も右側の斜線領域である、制御チャンバ60は、ポンプケーシング22、ポンプ制御リング44、枢動ピン52、およびポンプ制御リング44と、隣接するケーシング22とに装着される弾性シール68の間に形成される。図示された実施形態において、制御チャンバ60は、ポンプ出口54に供給されるポンプ20からの加圧された作動流体が制御チャンバ60も満たすように、ポンプ出口54に直接に流体連通される。
【0022】
当業者にとって明らかであるように、制御チャンバ60は、ポンプ出口54に直接に流体連通される必要なく、代わりにポンプ20によって供給される自動車エンジンにおけるオイルギャラリーからなど、作動流体の任意の適切な供給源から供給されてもよい。
【0023】
制御チャンバ60における加圧された作動流体は、ポンプ制御リング44に対して作用し、加圧された作動流体の圧力から生じるポンプ制御リング44における力が伸縮ばね56の付勢力を克服するのに十分であるとき、ポンプ制御リング44は、図3における矢印72で示されるように、枢動ピン52まわりに旋回し、ポンプ20の偏心度を減少させる。加圧された作動流体の圧力が伸縮ばね56の付勢力を克服するのに十分でないとき、ポンプ制御リング44は、矢印72で示される方向とは反対の方向に枢動ピン52まわりに旋回し、ポンプ20の偏心度を増加させる。
【0024】
ポンプ20は、図3における最も左側の斜線領域である、第2制御チャンバ64をさらに含み、該第2制御チャンバ64は、ポンプケーシング22、ポンプ制御リング44、弾性シール68、および第2弾性シール76の間に形成される。弾性シール76は、ポンプケーシング22の壁に当接し、ポンプ入口50から制御チャンバ64を分離し、弾性シール68はチャンバ60からチャンバ64を分離する。
【0025】
制御チャンバ64には、制御ポート80を通って加圧された作動流体が供給される。制御ポート80には、ポンプ出口54、あるいはポンプ20から供給されたエンジンまたは他の装置の作動流体ギャラリーを含む任意の適切な供給源から、加圧された作動流体が供給されてもよい。以下に述べられるように、電磁弁またはダイバータ機構などの制御機構(図示せず)は、制御ポート80を通って作動流体をチャンバ64に選択的に供給するように用いられる。制御チャンバ60の場合と同様に、制御ポート80から制御チャンバ64に供給された、加圧された作動流体は、ポンプ制御リング44に対して作用する。
【0026】
明らかであるように、ポンプ20は、ポンプ出口54に供給される、加圧された作動流体が制御チャンバ60も満たすとき、平衡圧を達成するように、従来の様式で動作することが可能である。作動流体の圧力が平衡圧よりも大きいとき、チャンバ60内のポンプ制御リング44の部分にわたって供給された作動流体の圧力によって生じる力は、伸縮ばね56の力を克服し、ポンプ20の容量を減少させるようにポンプリング44を移動させる。反対に、作動流体の圧力が平衡圧よりも小さいとき、伸縮ばね56の力は、チャンバ60内のポンプ制御リング44の部分にわたって供給された作動流体の圧力によって生じる力を超え、伸縮ばね56は、ポンプ20の容量を増加させるようにポンプリング44を移動させる。
【0027】
しかしながら、従来のポンプとは異なり、ポンプ20は第2平衡圧で動作することが可能である。具体的には、制御ポート80を介して、制御チャンバ64に加圧された作動流体を選択的に供給することによって、第2平衡圧を選択することができる。たとえば、エンジン制御システムによって制御される電磁弁は、制御ポート80を介して制御チャンバ64に加圧された作動流体を供給することができ、チャンバ64内におけるポンプ制御リング44の関連領域における加圧された作動流体によって生じた力が、制御チャンバ60における加圧された作動流体によって生じた力に加えられ、これによってポンプ制御リング44をそうでない場合よりもさらに移動させて、ポンプ20に対する新たなより低い平衡圧を確立する。
【0028】
例として、ポンプ20の低い動作速度において、加圧された作動流体はチャンバ60および64の両方に提供可能であり、ポンプリング44は、ポンプの容量が、低い動作速度で許容可能な第1の低い平衡圧を生じる位置に移動するであろう。
【0029】
ポンプ20が高速で駆動されるとき、制御機構は、加圧された作動流体の制御チャンバ64への供給を除くように動作可能であり、これによってポンプリング44を伸縮ばね56によって移動させて、ポンプ20に対して第1平衡圧よりも高い第2平衡圧を確立する。
【0030】
図示された実施形態において、チャンバ60は、ポンプ出口54に流体連通しているが、必要に応じて、ポンプ出口54からではなく、制御ポート80と同様に制御ポートから加圧された作動流体が供給されるように制御チャンバ60の設計を変更することは簡単であることは当業者にとって明らかであろう。そのような場合、電磁弁またはダイバータ機構などの制御機構(図示せず)は、制御ポートを通ってチャンバ60に作動流体を選択的に供給するために用いることができる。制御チャンバ60および64のそれぞれの内部における制御リング44の面積は異なるので、制御チャンバ60、制御チャンバ64、または制御チャンバ60および64の両方に、加圧された作動流体を選択的に適用することによって、所望のとおりに3つの異なる平衡圧を確立することが可能である。
【0031】
当業者にとって明らかであるように、追加の平衡圧が所望される場合、ポンプケーシング22とポンプ制御リング44とは、必要に応じて1つ以上の追加の制御チャンバを形成するように製造されてもよい。
【0032】
ポンプ20は、図4に示されるポンプ200などの従来のベーンポンプを超えるさらなる利点を提供する。ポンプ200などの従来のベーンポンプにおいて、ポンプチャンバにおける低圧流体204は、ポンプチャンバにおける高圧流体208と同様にポンプリング216上に力を働かせる。これらの力は、ポンプ制御リング216上に有意な合力212をもたらし、この力は、力212が作用する点に位置する枢動ピン220によって主に支持される。
【0033】
さらに、枢動ピン220と弾性シール222との間のポンプリング216の面積にわたって作用する出口224内の高圧流体(破線で示される)は、ポンプ制御リング216上に有意な力228をもたらす。力228は、伸縮ばね236の力232によっていくらかずれているが、力232よりも小さな合力228は依然として有意であり、この合力も枢動ピン220によって主に支持される。
【0034】
したがって、枢動ピン220は、大きな反力240および244を支持し、それぞれ合力212および228を無効にし、これらの力は、徐々に枢動ピン220の望ましくない摩耗、および/またはポンプ制御リング216の「張り付き」をもたらし、ポンプ制御リング216は、枢動ピン220まわりに滑らかに回転せず、ポンプ200の精密な制御を達成することをより困難にする。
【0035】
図5に示されるように、ポンプ20の低圧側300と高圧側304とは、枢動ピン52にほぼ直接ポンプ制御リング44に加えられる合力308をもたらし、水平な(図示される配向に関して)力312として示される、対応する反力が、枢動ピン52上に生じる。ポンプ200などの従来のベーンポンプとは異なり、ポンプ20において、弾性シール68は、枢動ピン52に比較的近接して位置し、制御チャンバ60内の加圧された作動流体が作用するポンプ制御リング44の面積を減少させ、したがってポンプ制御リング44に生じる力316の大きさを有意に減少させる。
【0036】
さらに、制御チャンバ60は、力316が力308に抗するように作用する水平成分を含むように位置し、したがって枢動ピン52上の反力312を減少させる。力316の垂直(図示される配向に関して)成分は、枢動ピン52上に垂直な反力320をもたらすが、上述のように、力316は、従来のポンプの場合よりも大きさが小さく、垂直反力320も伸縮ばね56によって生じる付勢力324の垂直成分によっても減少する。
【0037】
したがって、枢動ピン52に対する、制御チャンバ60と伸縮ばね56との独特な位置付けは、枢動ピン52上に減少した反力をもたらし、ポンプ20の動作耐用年数を向上し、ポンプ制御リング44の「張り付き」を減少させ、ポンプ20のより滑らかな制御を可能にする。当業者にとって明らかであるように、この独特な位置付けは、2以上の平衡圧を有する可変容量ベーンポンプにおける使用に限定されず、単一の平衡圧を有する可変容量ベーンポンプで用いることが可能である。
【0038】
図6図8は、本開示の教示に従って構成され、参照符号400で特定される別の可変容量ベーンポンプを示す。ポンプ400は、複数の締結具408によって第2カバー406に固定される第1カバー404を含むハウジング402を含む。ダウエルピン409は、第1および第2カバーを一直線に配列する。ポンプ400は、ハウジング402から突出する少なくとも1つの端部を有する、入力または駆動軸410を含む。駆動軸410は、内燃エンジンなどの任意の適切な手段によって駆動されてもよい。ロータ412は、駆動軸410とともに回転するために固定され、ポンプハウジング402によって規定されるポンプチャンバ414内に位置する。ベーン416は、ロータ412によって規定され放射状に延びるスロット418内に摺動可能に係合される。各ベーンの外表面420は、可動ポンプ制御リング424のシール面422に摺動可能に係合する。封止面422は、駆動軸410の中心からずれ得る中心を有する円筒シリンダとして形作られる。保持リング425は、表面420と表面422との係合を維持するようにベーンが摺動できる程度に内部を制限する。
【0039】
ポンプ制御リング424は、チャンバ414内に位置し、枢動ピン426を介してハウジング402に枢動可能に結合される。ポンプ制御リング424は、半径方向に外方に延びるアーム428を含む。付勢ばね430は、アーム428に係合して、ポンプ制御リング424を最大容量の位置に向けて付勢する。
【0040】
ポンプ制御リング424は、参照符号432,434,436で特定される第1〜第3突起を含む。第1〜第3突起のそれぞれは、関連した溝438,440,442を含む。第1シール集合体446は、第1溝438内に位置し、ハウジング402に封止して係合する。第2シール集合体448は、第2溝440内に位置し、ハウジング402の異なる位置に封止して係合する。第3シール集合体450は、第3溝442内に位置する。第3シール集合体450は、筐体402の別の位置に封止して係合する。各シール集合体は、円筒形状の第1エラストマー452であって、実質的に長方形の断面を有する第2エラストマー454に係合する第1エラストマー452を含む。各シール集合体は、集合したシール溝内に位置する。第1チャンバ460は、第1シール集合体446と第3シール集合体450との間、およびポンプ制御リング424の外表面とハウジング402との間に延びる。第2チャンバ462は、第1シール集合体446と第2シール集合体448との間、ならびにポンプ制御リング424とハウジング402との間に規定される。
【0041】
第1シール集合体446は、第1半径またはモーメントアームRを規定するように枢動ピン426に関連して位置する。第3シール集合体450の位置は、枢動ピン426の中心に関して半径またはモーメントアームRも規定する。第1シール集合体446によって規定されるモーメントアームRの長さは、第1チャンバ460が加圧されるときに回転モーメントが生じるように、第3シール集合体450の位置によって規定されるモーメントアームRの長さよりも長い。回転モーメントは、ポンプ制御リング424を付勢ばね430によって加えられる力に抗して付勢する。第1シール集合体446は、第3シール集合体450から周方向に離れ、角度は100度を超え、角頂点は表面422に結合されるポンプ制御リングキャビティの中心である。図8は、約117度としてこの角度を示す。枢動ピン426に対する第1シール集合体446と第2シール集合体448との位置はまた、第2チャンバに入る加圧された流体に付勢リング430によって加えられる力に抗するポンプ制御リング424のモーメントを付与させることが理解されるべきである。
【0042】
出口470は、ハウジング402を通って延び、ポンプ400から加圧された流体を排出することを可能にする。拡大された排出キャビティ472は、ハウジング402によって規定される。拡大した排出キャビティ472は、第3シール集合体450から出口470まで延びる。拡大された排出キャビティは、枢動ピン426の両側に延びることが理解されるべきである。この特徴は、ハウジング402の内壁478から離れたポンプ制御リング424の外表面476を有することによって提供される。特に、第1カバー404は、枢動ピン426を受容するための開口部484を含む支柱482を含む。支柱482は、内壁478から空間的に離れている。流体排出に対する比較的低い抵抗は、この構成を組み込むことによって引き起こされる。
【0043】
動作中、ポンプ400は、少なくとも2つの異なるモードで動作するように構成されてもよい。各動作モードにおいて、第1チャンバ460には、ポンプ出口圧力で加圧された流体が提供される。第1動作モードにおいて、第2チャンバ462には、オン/オフ電磁弁の使用によって任意の圧力源から加圧された流体が選択的に供給されてもよい。この第1動作モードにおいて、ポンプ400の上位平衡圧はポンプ出口圧力によって規定され、下位平衡圧は第2源によって規定されてもよい。
【0044】
第2動作モードにおいて、ポンプ400は、第2チャンバ462に対する圧力を連続的に変化させ、中間平衡圧を可能してもよい比例電磁弁に関連付けられてもよい。そのように、ポンプ400は無限の数の平衡圧で動作し、第1構造において提供されたような2つの固定圧力だけで動作するものではない。
【0045】
図9図11は、別の代替の可変容量ベーンポンプを参照符号500で示す。ポンプ500は、エンジン、トランスミッション、または他の車両用動力伝達機構に加圧された潤滑油を提供するために有用な潤滑システム502の一部を形成し得る。潤滑システム502は、ポンプ500の入口508に流体連通する流入管506に流体を提供する容器504を含む。ポンプ500の出口510は、加圧された流体を冷却機512、フィルタ514、およびメインギャラリー516に提供する。メインギャラリー516を通って移動する加圧された流体は、内燃エンジンなどの潤滑される部分に供給される。加圧された流体は、帰還ライン518にも提供される。帰還ライン518は、ポンプ500の第1制御チャンバ520に直接に連通される。電磁弁552は、帰還ライン518と第2制御チャンバ524との間の流体連通を制御するために作用する。
【0046】
ポンプ500は、枢動ポンプ制御リング526、第1〜第4シール集合体528,530,532,534、付勢ばね536、ベーン538、ロータ540、ロータ軸542、および保持リング544の使用に関してポンプ400と同様である。
【0047】
第1シール集合体528と第2シール集合体530とは、制御リング526の外表面546およびキャビティ壁548と協働して作用し、第1制御チャンバ520を少なくとも部分的に規定する。第2制御チャンバ524は、第2シール集合体530と第3シール集合体532との間、ならびに外表面546とキャビティ壁548との間に延びる。出口通路550は、第1シール集合体528と第4シール集合体534との間に延びる。支柱554は、枢動ピン558を受容する開口部556を含み、回転のために支柱554と制御リング526を結合する。ポンプ400に関して上述したように、拡大された出口通路550は、ポンプ500を出る加圧流体に対する制限を実質的に減少させる。図示されていないさらに別の代替構造において、枢動ピン558は、封止機能を提供してもよく、第4シール集合体534の除去を可能にする。
【0048】
第1シール集合体528は、枢動ピン558の中心から第1距離に位置し、第1モーメントアームRを規定する。同様に、モーメントアームRは、枢動ピン558に関して第4シール集合体534の位置によって規定される。モーメントアーム長RおよびRが等しく設定されている場合、出口通路550は圧力調整に寄与しない。一方、ポンプ出口圧力からの永続的な寄与が望まれる場合、モーメントアームRおよびRは等しくないように設計されてもよい。そのように、出口通路550は、第3制御チャンバとして機能してもよい。たとえば、車両低温始動条件において圧力調整を提供することに有益であり得る。低温始動において、図11において示されるように最小変位位置に向けて制御リング526を付勢することが望ましい。このことは、モーメントアームRをモーメントアームRよりも長くすることによって達成され得る。あるいは、ポンプ500内で作用する力と、ポンプ制御リング526に作用する力とを相殺することが望ましい。この点に対処するために、モーメントアームRよりも短い長さのモーメントアームRを構築し、ポンプ制御リング526を最大変位位置に向けてポンプ制御リング526を付勢することが望ましい。図9は、最大偏心位置において、それによって最大ポンプ変位を提供する制御リング526を表す。図9図11に示されたポンプについて、第1のシール集合体528は、第4シール集合体534から周方向に80度の角度を超えて離れて位置する。
【0049】
動作中、第1制御チャンバ520は、常に作動しており、ポンプ出力などの任意の供給源から加圧された流体を受容してもよい。第2制御チャンバ524は、ソレノイド522を介してオンオフ切り換えされる。加圧された流体の供給は、任意の供給源からでもよい。出口通路550、または第3制御チャンバ550は、モーメントアームRおよびRの相対的長さに関して記載されたように圧力制御機能に寄与してもよく、寄与しなくてもよい。
【0050】
ポンプ500は、3つの制御チャンバの提供によってオン/オフ型電磁弁522にだけ関連付けられる必要がある。第3制御チャンバ550は、非常に低い出口流路の制限を提供する。第1制御チャンバ520と第2制御チャンバ524とは、ポンプ出口圧力以外の供給源によって決定される2つの平衡圧を可能にする。
【0051】
本開示の上述の実施形態は、本開示の例示を意図するものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される本開示の範囲を逸脱することなく、当業者によって変更および修正が可能である。
図1
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図11