特許第6130625号(P6130625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130625
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】車両運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   B60R21/00 628D
   B60R21/00 626G
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-42029(P2012-42029)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-177067(P2013-177067A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年1月13日
【審判番号】不服2016-10018(P2016-10018/J1)
【審判請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功祐
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 一矢
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 一ノ瀬 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−10428(JP,A)
【文献】 特開2005−193845(JP,A)
【文献】 特開2004−142741(JP,A)
【文献】 特開2004−56219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の情景を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて前記車両が有する表示装置に表示する周囲画像を生成する周囲画像生成部と、
前記車両のステアリングの舵角に基づいて前記車両の外端部が通る予想経路を演算する予想経路演算部と、
前記予想経路に基づいて前記車両から予め設定された距離の位置に、前記車両が前記車両の周囲に存在する物体と接触するか否かを示す、前記周囲画像の上下方向に延設する指標を前記周囲画像上に重畳して描画する指標描画部と、
を備え、
前記指標は、前記予想経路に沿った前記車両から予め設定された距離の位置に描画された、前記車両を後方から視認した場合の自車イメージ画像であり、
前記自車イメージ画像が前記車両のステアリングの舵角に連動して前記車両のステアリングを切った方向へ移動する車両運転支援装置。
【請求項2】
前記周囲画像内に前記予想経路を描画する予想経路描画部を備える請求項1記載の車両運転支援装置。
【請求項3】
前記車両の周囲に存在する物体までの距離を測定する距離測定部を備え、
前記指標描画部が、前記車両から予め設定された探知距離内に前記物体が存在する場合に、前記指標を描画する請求項1又は2に記載の車両運転支援装置。
【請求項4】
前記周囲画像が、前記撮影画像取得部により取得された前記撮影画像をそのまま用いられている請求項1からのいずれか一項に記載の車両運転支援装置。
【請求項5】
前記撮影画像を取得するカメラが前記車両の上方視における角部に備えられ、
前記周囲画像は、前記ステアリングが操作された方向と反対側のカメラにより取得された撮影画像に基づいて生成される請求項に記載の車両運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する車両運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転を支援する車両運転支援装置が利用されてきた。このような技術には、車両の現在のステアリングの舵角を検出して当該車両が走行する予想経路線を演算し、この予想進路線を車両の周囲を撮影して取得された撮影画像に重畳して表示するものがある(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の駐車補助装置は、車両の後方をカメラにより検出し、当該カメラからの映像を車内に設けられた表示器に後方画像として表示する。ステアリングセンサにより検出されたステアリング角度により車両が走行する走行予想軌跡を求め、車両の車幅に対応した左右一対の走行予想軌跡を上述の後方画像上に表示する。この走行予想軌跡は、ステアリング角度に応じて変更可能に構成される。また、走行予想軌跡は、車両の進む方向に延びる長さが制限され、その左右先端が互いに結ばれて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−142741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の周囲に存在する物体には路面から浮いているもの(例えば他の車両のバンパ等)があり、特許文献1に記載の技術に係る走行予想軌跡が前記路面から浮いているものの下に潜り込んでしまうことがある。係る場合、画面上では走行予想軌跡が物体と交差していないので、車両の乗員が当該走行予想軌跡で走行しても車両が物体に接触しないものと誤認識し、実際に走行した場合には車両が物体と接触してしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、車両の周囲に存在する物体が路面から浮いている場合であっても適切に車両が物体に接触するか否かを明示することが可能な車両運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る車両運転支援装置の特徴構成は、
車両の周囲の情景を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて前記車両が有する表示装置に表示する周囲画像を生成する周囲画像生成部と、
前記車両のステアリングの舵角に基づいて前記車両の外端部が通る予想経路を演算する予想経路演算部と、
前記予想経路に基づいて前記車両から予め設定された距離の位置に、前記車両が前記車両の周囲に存在する物体と接触するか否かを示す、前記周囲画像の上下方向に延設する指標を前記周囲画像上に重畳して描画する指標描画部と、
を備え、
前記指標は、前記予想経路に沿った前記車両から予め設定された距離の位置に描画された、前記車両を後方から視認した場合の自車イメージ画像であり、
前記自車イメージ画像が前記車両のステアリングの舵角に連動して前記車両のステアリングを切った方向へ移動するにある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、周囲画像内の座標系において上下方向に描画された立体的な指標が、ステアリングの舵角に連動して移動するので、物体が路面に接している場合はもちろん、物体が路面から浮いている場合であっても車両が物体に接触するか否かを適切に明示することができる。したがって、周囲画像において指標が物体と接触していなければ、実際に現在の舵角で車両を走行させても、車両が物体に接触せずにすり抜けて走行できることを車両の乗員に直感的に判断し易くさせることができる
【0009】
また、周囲画像において指標が物体と接触していれば、実際に現在の舵角で車両を走行させた場合には、車両が物体に接触するということを車両の乗員に直感的に判断し易くさせることができる。
【0010】
このように、本発明によれば、車両の周囲に存在する物体が路面から浮いている場合であっても適切に車両が物体に接触するか否かを明示することが可能となる。
【0011】
また、このような構成とすれば、将来の位置において自車が物体の横をすり抜けて走行するイメージ画像が描画されるので、車両の乗員に直感的に将来の状況を把握し易くすることができる。
【0012】
また、このように、現在の車両の位置から一定の距離だけ走行した位置に指標を描画することで、走行距離に応じて物体の有無を明示することができるので、車両の乗員に物体の位置をより自然に認識させることが可能となる。このように、現在の位置から指標までの距離感も直感的に明示することが可能となる。
【0013】
また、前記周囲画像内に前記予想経路を描画する予想経路描画部を備えると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、指標と共に、ステアリングの舵角に応じた予想経路も描画されるので、車両の乗員に、現在の位置から指標が描画された位置までの移動経路をイメージし易くさせることができる。
【0015】
また、前記車両の周囲に存在する物体までの距離を測定する距離測定部を備え、前記指標描画部が、前記車両から予め設定された探知距離内に前記物体が存在する場合に、前記指標を描画すると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、車両から予め設定された探知距離内に物体が存在しない場合には指標を描画しないので、演算処理負荷を軽減することができる。このため、安価な演算処理装置で構成できるので、低コストで車両運転支援装置を実現できる。
【0017】
また、前記周囲画像が、前記撮影画像取得部により取得された前記撮影画像をそのまま用いられていると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、周囲画像を容易に生成することができる。このため、画像生成に係る演算処理負荷を軽減できるので、安価な演算処理装置で構成できる。したがって、低コストで車両運転支援装置を実現できる。
【0019】
また、前記撮影画像を取得するカメラが前記車両の上方視における角部に備えられ、前記周囲画像は、前記ステアリングが操作された方向と反対側のカメラにより取得された撮影画像に基づいて生成されると好適である。
【0020】
このような構成とすれば、ステアリングの操作に応じて、車両が走行する際に注視すべき側の周囲画像が自動的に生成されるので、周囲画像の生成するための車両の乗員によるスイッチ操作等を不要にできる。したがって、車両の乗員の手を煩わせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車両周辺監視装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】車両周辺監視装置の処理の一例を示す図である。
図3】指標が描画される位置を模式的に示す図である。
図4】ステアリングの舵角に応じて位置が変化する指標の一例を示す図である。
図5】車両周辺監視装置の処理を模式的に示す図である。
図6】その他の実施形態に係る指標の一例を示す図である。
図7】その他の実施形態に係る指標が描画される位置を示す図である。
図8】その他の実施形態に係る指標の描画形態を示す図である。
図9】その他の実施形態に係る指標の描画形態を示す図である。
図10】その他の実施形態に係る指標の描画形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る車両運転支援装置100は、車両の乗員が当該車両の周囲に存在する物体に接触するか否かの判断を行い易くする機能を備えている。以下、図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る車両運転支援装置100の構成を模式的に示したブロック図である。図1に示されるように、車両運転支援装置100は、撮影画像取得部11、周囲画像生成部12、予想経路演算部13、予想経路描画部14、距離測定部15、指標描画部16、指標格納部17、表示画像生成部18の各機能部を備えて構成される。各機能部はCPUを中核部材として、車両の乗員が当該車両の周囲に存在する物体に接触するか否かの判断を行い易くする種々の処理を行うための上述の機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0024】
撮影画像取得部11は、車両1の周囲の情景を撮影した撮影画像Gを取得する。ここで、車両1にはカメラ5が備えられる。本実施形態におけるカメラ5は、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)などの撮像素子を内蔵するとともに、撮影した情報を動画情報として出力するデジタルカメラにより構成される。このようなカメラ5は、車両1の左前部、右前部、左後部、及び右後部に配設される。これにより、夫々車両1の左前方の情景、右前方の情景、左後方の情景、及び右後方の情景を撮影することが可能となる。例えば、車両1の左前部に備えられたカメラ5の撮影範囲が特に図2(a)の破線で示される。このようなカメラ5は、車両1の周囲の情景を撮影し、リアルタイムで動画を撮影画像Gとして出力する性能を有する。このような撮影画像Gは、撮影画像取得部11に伝達される。
【0025】
図2(b)には、図2(a)に示された撮影範囲における撮影画像Gが示される。図2(b)に示されるように、撮影画像Gにはカメラ5の撮影範囲内に存在する物体4(他の車両(他車)2や人3)が含まれる。また、車両1の一部も含まれる。
【0026】
図1に戻り、周囲画像生成部12は、撮影画像Gに基づいて車両1が有する表示装置に表示する周囲画像Hを生成する。撮影画像Gは、撮影画像取得部11から伝達される。車両1が有する表示装置とはモニタ50が相当する。周囲画像Hとは撮影画像Gに基づき生成されたモニタ50に表示される車両1の周囲の状況を示す画像である。周囲画像Hとして、例えば撮影画像Gをそのまま、モニタ50に表示することも可能である。係る場合には、図2(c)に示されるように、撮影画像Gと周囲画像Hとは同じものとなる。
【0027】
また、周囲画像Hとして、撮影画像Gから所定の範囲を切り出してモニタ50に表示することも可能である。係る場合には、撮影画像Gと周囲画像Hとは異なるものとなる。更には、撮影画像Gに所定の画像処理を施して生成した画像(例えば、車両1の上方を視点とする「トップビュー画像」やお碗の内周面に撮影画像Gを貼り付けた「お碗画像」)を周囲画像Hとすることも可能である。本実施形態では、周囲画像Hは撮影画像取得部11により取得された撮影画像Gをそのまま用いているとして説明する。
【0028】
ここで、上述のように、撮影画像Gを取得するカメラ5は、車両1の上方視における角部に備えられる。すなわち、カメラ5は、車両1の左前端部、右前端部、左後端部、及び右後端部の合計4箇所に備えられる(図3参照)。この4つのカメラ5で取得された撮影画像Gのうち、どの画像をモニタ50に表示するかは車両1の進行方向及びステアリングの状態に応じて決定される。
【0029】
図1に示されるように、車両1にはシフトレバーの位置を検出するシフトポジションセンサ6が備えられる。これにより、シフトレバーが、前進用のシフト位置にあれば車両1の進行方向が前方であるとして特定される。一方、シフトレバーが、後退用のシフト位置にあれば車両1の進行方向が後方であるとして特定される。車両1が停止状態であっても、シフトレバーの位置に応じて車両1の進行方向を特定する構成とすることも可能である。このようなシフトポジションセンサ6の検出結果は周囲画像生成部12及び後述する予想経路演算部13に伝達される。
【0030】
また、車両1には舵角センサ7も備えられる。これにより、ステアリング(図示せず)の中立状態に対する舵角を検出することが可能である。例えば、ステアリングが中立状態にある場合を「0」とし、ステアリングが左に切られた場合に正の値を出力するように構成し、ステアリングが右に切られた場合に負の値を出力するように構成すると好適である。係る場合、舵角センサ7の出力に基づき、ステアリングが左に切られたのか右に切られたのかを容易に検出することが可能である。また、上記値によりステアリングの舵角を算出することも可能である。このような舵角センサ7の検出結果は周囲画像生成部12及び後述する予想経路演算部13に伝達される。周囲画像生成部12は、シフトポジションの位置及びステアリングが操作された方向と反対側のカメラ5により取得された撮影画像Gに基づいて生成される。周囲画像生成部12により生成された周囲画像Hは、後述する表示画像生成部18に伝達される。
【0031】
予想経路演算部13は、車両1のステアリングの舵角に基づいて車両1の外端部が通る予想経路Yを演算する。ステアリングの舵角は、上述の舵角センサ7から伝達される。また、予想経路演算部13には、シフトポジションセンサ6の検出結果を伝達される。予想経路Yとは、検出された舵角で車両1が走行した場合の車両1の最外端及び最内端の夫々の軌跡に相当する。例えば、ステアリングが左に切られている場合には、車両1のボディの右前端部の軌跡が相当する。一方、ステアリングが右に切られている場合には、車両1のボディの右前端部の軌跡が相当する。したがって、予想経路演算部13は、ステアリングの舵角とシフトレバーの位置とにより車両1の最外端及び最内端の夫々の軌跡を演算する。このように演算された予想経路Yは、後述する予想経路描画部14及び指標描画部16に伝達される。なお、予想経路Yは、車両1の右前端部及び左前端部に対して外側に所定のマージンを付与した軌跡としても良い。
【0032】
予想経路描画部14は、周囲画像H内に予想経路Yを描画する。ここで、周囲画像Hは、周囲画像生成部12により生成され、表示画像生成部18に伝達されている。また、予想経路Yは、予想経路演算部13により演算され伝達される。予想経路描画部14は、予想経路演算部13から伝達された予想経路Yを周囲画像Hに重畳して描画する。図2(c)には、このような予想経路Yが描画された周囲画像Hが示される。
【0033】
距離測定部15は、車両1の周囲に存在する物体4までの距離を測定する。本実施形態では、距離測定部15は、ソナー30により構成される。以下では、距離測定部15は、ソナー30であるとして説明する。ソナー30は、図3に示されるように車両1の前部の幅方向中央部及び後部の幅方向中央部に設けられる。もちろん、カメラ5と同様に、車両1の左前部、右前部、左後部、及び右後部に設けても良い。距離測定部15の検出結果は、後述する指標描画部16に伝達される。
【0034】
指標描画部16は、車両1から予め設定された探知距離U内に物体4が存在する場合に、予想経路Yに基づいて車両1から予め設定された距離Tの位置に、車両1が物体4と接触するか否かを示す、周囲画像Hの上下方向に延設する指標Sを周囲画像H上に重畳して描画する。上述のように指標描画部16にはソナー30の検出結果が伝達される。車両1から予め設定された探知距離Uとは、周囲画像H上に後述する指標Sを重畳して描画するトリガとなる距離である。本実施形態では、探知距離Uは車両1からの直線距離で規定される。したがって、車両1から半径が探知距離Uで規定される領域内に物体4が検出された場合に、周囲画像H上に指標Sが重畳される。この探知距離Uは、車両1の乗員が任意に設定可能であり、本実施形態では例えば50cmであるとして説明する。
【0035】
一方、車両1から予め設定された距離Tとは、周囲画像H上に指標Sを重畳して描画する位置を規定する距離である。本実施形態では、指標Sは、予想経路Yに沿った予め設定された距離Tの位置に描画される。ここで、ステアリングが所定の方向に切られている場合には、図3に示されるように予想経路Yは直線ではなく円弧状の曲線となる。一方、ソナー30から物体4までの距離は、直線距離で検出される。したがって、予想経路Yに沿った予め設定された距離Tとは、ステアリングが所定の方向に切られている場合には、円弧状の予想経路Yに沿った距離に相当し、図3に示されるように、車両1から見た場合、物体4が存在する位置よりも手前側になる。一方、ステアリングが中立状態にある場合には、直線距離で算出された距離に相当する。このように指標Sは、予想経路Yに基づいて距離Tの位置に描画される。本実施形態では、指標Sは予想経路Y上に描画される。このような探知距離U及び距離Tは、車両1の乗員が任意に設定可能であり、本実施形態では、探知距離U及び距離Tの双方が50cmであるとして説明する。
【0036】
周囲画像Hの上下方向とは、周囲画像H内の座標系における鉛直方向にあたる。上下方向に延設するとは、周囲画像Hの上端及び下端の双方に達していなくても良く、周囲画像H内において上下方向を示していれば良い。本実施形態では、指標SはポールPが相当する。以下では、指標SはポールPとして説明する。したがって、指標描画部16は、予想経路Yに沿った予め設定された距離Tの位置にポールPを周囲画像H上に描画する。このポールPは、図2(c)に示されるように、周囲画像H内に描画された予想経路Yから立設するように表示される。すなわち、本車両運転支援装置100においては、周囲画像H内の座標系において上下方向に立体的な指標Sが描画される。このような指標SとしてポールPのイメージ画像は指標格納部17に格納され、適宜、指標描画部16により読み出されて使用される(図2(d)参照)。
【0037】
表示画像生成部18は、予想経路Y及びポールPが描画された周囲画像Hを表示画像として生成し、モニタ50に出力する。このような表示画像が、図2(d)に示される。図2(d)に示されるように、本実施形態では、ステアリングが切られた場合に車両1が走行する最外端側の角部に備えられたカメラ5で取得された撮影画像Gを周囲画像Hとしてモニタ50に表示し、当該周囲画像Hに予想経路Y及びポールPが描画されるので、車両1の最外端と物体4とが接触するか否かを車両1の乗員が直感的に判断し易くなる。
【0038】
図4には、ステアリングの舵角に応じてモニタ50に表示される予想経路Y及びポールPが重畳された周囲画像Hの一例が示される。図4(a)には、ステアリングを時計回りに45度切った場合の予想経路Y及びポールPが示される。この場合、ポールPが他車2と重複されている状態となる。したがって、車両1の乗員は、このような状況をモニタ50で確認することにより、この舵角では車両1が他車2に接触する可能性があることを認識することができる。
【0039】
更にステアリングを大きく切った場合(例えば、時計回りに90度切った場合)の予想経路Y及びポールPが図4(b)に示される。この場合、ポールPが他車2と重複されていないので、車両1が他車2との接触を回避できると車両1の乗員が認識することができる。しかしながら、他車2の右側にいる人3と接触するか否かがこの状態では明確に判断することができない。
【0040】
そこで、車両1の乗員は、更にステアリングを大きく切る(例えば、時計回りに135度切る)と、図4(c)に示されるようにポールPが人3よりも手前に移動する。したがって、車両1の乗員が、当該車両1が人3との接触を回避できると認識することができる。このようにして、車両1の乗員が当該車両1が物体4(他車2や人3)に接触するか否かの判定を容易に行うことが可能となる。
【0041】
次に、車両運転支援装置100が、ポールPを重畳した周囲画像Hをモニタ50に表示する一連の処理について、図5の模式図を用いて説明する。まず、撮影画像取得部11が、車両1のカメラ5により撮影された撮影画像Gを取得する(ステップ#1)。
【0042】
一方、シフトポジションセンサ6によりシフトレバーの位置が検出される(ステップ#2)。また、舵角センサ7によりステアリングの舵角が検出される(ステップ#3)。これらのシフトレバーの位置及びステアリングの舵角に基づいて、撮影画像Gから周囲画像Hが生成される(ステップ#4)。生成された周囲画像Hは表示画像生成部18に伝達される。同様に、シフトレバーの位置及びステアリングの舵角に基づいて、予想経路Yが演算される(ステップ#5)。
【0043】
一方、車両1に備えられるソナー30により車両1の周囲の物体4が検知される(ステップ#6)。車両1から予め設定された距離内に物体4が検知されると、予想経路Y上にポールPが描画される(ステップ#7)。また、予想経路Yが周囲画像H上に描画される(ステップ#8)。このようにして表示画像が生成される(ステップ#9)。生成された表示画像は、モニタ50に表示される(ステップ#10)。
【0044】
このように本車両運転支援装置100は、周囲画像H内の座標系において上下方向に描画された立体的な指標Sが、ステアリングの舵角に連動して移動するので、物体4が路面に接している場合はもちろん、物体4が路面から浮いている場合であっても車両1が物体4に接触するか否かを適切に明示することができる。したがって、周囲画像Hにおいて指標Sが物体4と接触していなければ、実際に現在の舵角で車両1を走行させても、車両1が物体4に接触せずにすり抜けて走行できることを車両1の乗員に直感的に判断し易くさせることができる。また、周囲画像Hにおいて指標Sが物体4と接触していれば、実際に現在の舵角で車両1を走行させた場合には、車両1が物体4に接触するということを車両1の乗員に直感的に判断し易くさせることができる。このように、本発明によれば、車両1の周囲に存在する物体4が路面から浮いている場合であっても適切に車両1が物体4に接触するか否かを明示することが可能となる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、ポールPは、予想経路Yに沿った予め設定された距離Tの位置に描画されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば図6に示されるように、探知距離Uを半径とする円弧上に、ポールPを描画する構成とすることも当然に可能である。係る場合、距離Tは、車両1の最外端から探知距離Uを半径とする円弧と予想経路Yとの交点までの距離となる。
【0046】
上記実施形態では、指標SがポールPであるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。指標Sは、車両1を後方から視認した場合の自車イメージ画像Iとすることも可能である。このような自車イメージ画像Iを指標Sとして用いた場合の例が図7に示される。
【0047】
図7(a)には、ステアリングを時計回りに45度切った場合の予想経路Y及び自車イメージ画像Iが示される。この場合、自車イメージ画像Iが他車2と重複されている状態となる。したがって、車両1の乗員は、このような状況をモニタ50で確認することにより、この舵角では車両1が他車2に接触する可能性があることを認識することができる。また、指標Sとして自車イメージ画像Iを用いる場合には、自車イメージ画像Iにより予想経路Yが隠れるので、予想経路Yは車両1から自車イメージ画像Iまでの間のみに描画する構成とすることもできる。もちろん、予想経路Yを自車イメージ画像Iより先にも描画することも当然に可能である。
【0048】
更にステアリングを大きく切った場合(例えば、時計回りに90度切った場合)の予想経路Y及び自車イメージ画像Iが図7(b)に示される。この場合、自車イメージ画像Iが他車2と完全に離間しているか否かを特定することは難いので、車両1が他車2との接触を回避できるか否か車両1の乗員が判断することが難しい。
【0049】
そこで、更にステアリングを大きく切る(例えば、時計回りに135度切る)と、図7(c)に示されるように自車イメージ画像Iが他車2と完全に離間する。これにより、車両1の乗員が、当該車両1が他車2との接触を回避できると判断することができる。このようにして、車両1の乗員が当該車両1が当該車両1の周囲に存在する物体4(他車2や人3)に接触するか否かの判定を容易に行うことが可能となる。
【0050】
上記実施形態では、周囲画像H内に予想経路Yが描画されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。予想経路Yを描画せずに、指標Sのみを描画する構成とすることも当然に可能である。指標SとしてポールPのみを描画した例が図8に示される。係る場合も、ステアリングの舵角から演算された予想経路Yに基づいて車両1から距離Tの位置にポールPが描画することができる。したがって、車両1の乗員は、車両1を現在のステアリングの舵角で走行させた場合に、車両1が他車2に接触するか否かを適切に判断することができる。
【0051】
また、自車イメージ画像Iであっても、予想経路Yを描画せずに構成することも当然に可能である。係る場合の例が図9に示される。この場合でも、ステアリングの舵角から演算された予想経路Yに基づいて車両1から距離Tの位置に自車イメージ画像Iが描画される。このため、車両1の乗員は、車両1を現在のステアリングの舵角で走行させた場合に、車両1が他車2に接触するか否かを適切に判断することができる。
【0052】
上記実施形態では、周囲画像Hが撮影画像取得部11により取得された撮影画像Gをそのまま用いられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、撮影画像Gに所定の画像処理を施して生成した画像(例えば、車両1の上方を視点とする「トップビュー画像」やお碗の内周面に撮影画像Gを貼り付けた「お碗画像」)を周囲画像Hとすることも当然に可能である。
【0053】
上記実施形態では、撮影画像Gを取得するカメラ5が車両1の上方視における角部に備えられ、周囲画像Hは、ステアリングが操作された方向と反対側のカメラ5により取得された撮影画像Gに基づいて生成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。車両1の乗員が周囲画像Hの生成に使用する撮影画像Gを手動で選択する構成とすることも可能である。更には、運転席側の前側及び後側は、助手席側の前側及び後側に比べて運転者の席から見え易いことから、カメラ5を助手席側の前側及び後側にのみ設け、シフトレバーの位置によって周囲画像Hの生成に使用する撮影画像Gを自動で選択する構成とすることも可能である。
【0054】
上記実施形態では、距離測定部15がソナー30であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。ソナー30に代えて、画像処理により撮影画像Gに映る物体4までの距離を検出する構成とすることも可能であるし、レーザーレーダを用いて距離を検出する構成とすることも当然に可能である。
【0055】
上記実施形態では、指標SがポールP及び自車イメージ画像Iを用いて説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、これらに代えて、線状のイメージ画像や壁状のイメージ画像を用いて描画することも可能である。係る場合、車両1の乗員の目に留まり易いようにイメージ画像を彩色すると好適である。また、指標Sを、周囲画像Hの上端から下端まで達するように描画することも可能である。
【0056】
上記実施形態では、指標Sが予想経路Y上に描画されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、図10に示されるように、予想経路Yから所定の間隔Mだけ先に描画することも可能である。係る場合、距離Tは例えば上記実施形態と同様に予想経路Yに沿って設定し、その位置から車両1から遠ざかる方向に間隔Mだけ離間して指標S(図10にあってはポールP)を描画すると好適である。これにより、周囲画像H内に所定のマージンを含んで指標Sを描画することができるので、車両1と物体4との接触をより未然に防止できる。このような指標Sの描画であっても、距離Tを設定することで容易に描画することが可能である。
【0057】
上記実施形態では、シフトレバーが、前進用のシフト位置にある場合の例を挙げて説明した。シフトレバーが、後退用のシフト位置にある場合には、周囲画像Hは車両1の後方の画像を示すものとして生成され、このような周囲画像Hにおいても指標Sや予想経路Yを描画することは当然に可能である。係る場合、車両1の後退時に乗員の運転支援を好適に行うことが可能となる。
【0058】
上記実施形態では、車両1の周囲に存在する物体4までの距離を測定する距離測定部15を備え、指標描画部16が、車両1から予め設定された探知距離U内に物体4が存在する場合に、指標Sを描画するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。車両1から物体4までの距離に拘らず、指標Sを描画する構成とすることも当然に可能である。
【0059】
本発明は、車両の運転を支援する車両運転支援装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:車両
4:物体
5:カメラ
11:撮影画像取得部
12:周囲画像生成部
13:予想経路演算部
14:予想経路描画部
15:距離測定部
16:指標描画部
30:ソナー
50:モニタ(表示装置)
100:車両運転支援装置
G:撮影画像
H:周囲画像
I:自車イメージ画像
S:指標
T:距離
U:探知距離
Y:予想経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10