特許第6130629号(P6130629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130629
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20170508BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170508BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20170508BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   H05B33/26 Z
   H05B33/28
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-139962(P2012-139962)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-6976(P2014-6976A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年1月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512253626
【氏名又は名称】ユー・ディー・シー アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】飛世 学
(72)【発明者】
【氏名】園田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】李 静波
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−190931(JP,A)
【文献】 特開2007−188854(JP,A)
【文献】 特開2010−198957(JP,A)
【文献】 特開2008−106044(JP,A)
【文献】 特表2001−527688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/26
H05B 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、光を拡散、散乱する光学層と、透明電極である第1電極と、有機発光層を含む有機層と、第2電極と、がこの順に形成された有機電界発光素子であって、
前記光学層は、一次粒子径が0.5μm以上の透明な少なくとも1種の光散乱粒子とバインダ成分とを含み、前記バインダ成分は前記有機発光層の屈折率以上の屈折率を有し、
前記有機層は更にバンドギャップ化合物層を少なくとも一層含み、
前記バンドギャップ化合物層は前記第1電極に隣接する正孔注入層であり、
前記バンドギャップ化合物層はEg(バンドギャップ)が1.3〜2.5eV化合物からなり、膜厚が0.5nm以上2nm未満である、有機電界発光素子。
【請求項2】
前記第2電極が銀又はアルミニウムの反射電極である、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記バンドギャップ化合物層を形成する化合物がCuPC、PTCDA又はPTCDIである、請求項1〜2のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記光散乱粒子の一次粒子の体積基準で平均粒子径となるように算出された一次粒子径が1μm〜3μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記バインダ成分が一次粒子径が100nm以下の粒子を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記一次粒子径が100nm以下の粒子の屈折率が2.0以上3.0以下である、請求項5に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記一次粒子径が100nm以下の粒子が、結晶構造の主成分がルチル型の光触媒不活性化処理した酸化チタン粒子であって、前記光触媒不活性化処理した酸化チタン粒子が、酸化チタン粒子表面をアルミナ、シリカ、及びジルコニアの少なくとも1種で被覆した被覆酸化チタン粒子、又は、前記被覆酸化チタン粒子の被覆表面に更に樹脂を被覆した酸化チタン粒子である、請求項5〜6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記バインダ成分の屈折率が1.7以上2.2以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記光散乱粒子の屈折率が、前記バインダ成分の屈折率より低い、請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機層の少なくとも一層が、Eg(バンドギャップ)が1.3〜2.5eVの化合物からなり、膜厚が0.5nm以上10nm未満のバンドギャップ化合物層である、有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と称することもある。)は、基板上に陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極の間に、発光層を含む有機層を有する自発光型の発光装置であり、ディスプレイや照明など種々の用途への応用が期待されている。
有機電界発光素子に拡散層を付加して、内部に閉じ込められた光の一部を取り出すことにより、外部量子効率を高めることが出来ることは知られている。しかし、吸収の強い材料を使用した有機電界発光素子では、その光取出しの効果が低減し、外部量子効率が低下する。特に、有機層導波光(有機層内部に閉じ込められた光)を原資として光取出し量を高める配置の構成したもの(基板と透明電極の間に拡散層を配置したもの)では、外部量子効率の低下が著しい。
高い発光効率を実現することを目的として、光の反射・屈折角の乱れを生じさせる領域を基板と発光層との間に有する有機電界発光素子が提案されている(特許文献1)。そして、該特許文献においては、銅フタロシアニンからなる正孔注入層(15nm)を有する有機電界発光素子が記載されている。
また、外部への光の取り出し効率が高い素子を得ることを目的として、発光素子中の層の屈折率と層間距離とを所定の範囲とした有機電界発光素子が提案されている(特許文献2)。そして、該特許文献においては、銅フタロシアニンからなるバッファ層(5nm)を有する有機電界発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−296423号公報
【特許文献2】特開2003−036969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で使用される正孔注入層は膜厚が大きく、膜厚を調節して高い発光効率が得られることについては何ら記載も示唆もされていない。
また、特許文献2には、光を拡散、散乱する層に使用する光散乱粒子の一次粒子径について特に規定がなく、該一次粒子径を調節することにより高い発光効率が得られることについて何ら記載も示唆もされていない。更に、バッファ層の厚みと有機電界発光素子の性能との関係についても何ら記載されていない。
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、有機層の少なくとも一層の材料及び膜厚を最適化して導波光の吸収を下げ、光を拡散、散乱する層を用いて拡散層による光取出し量の効率低下を抑制することにより、外部量子効率が高く駆動電圧の低い有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討し、基板と、光を拡散、散乱する光学層と、透明電極である第1電極と、有機発光層を含む有機層と、第2電極と、がこの順に形成された有機電界発光素子であって、前記光学層は、一次粒子径が0.5μm以上の透明な少なくとも1種の光散乱粒子とバインダ成分とを含み、該バインダ成分は前記有機発光層の屈折率以上の屈折率を有し、前記有機層は更にバンドギャップ化合物層を少なくとも一層含み、該バンドギャップ化合物層はEg(バンドギャップ)が1.3〜2.5eVの化合物からなり、膜厚が0.5nm以上10nm未満である、有機電界発光素子を見出した。当該構成を有する有機電界発光素子を採用することにより、素子の高い外部量子効率と低い駆動電圧とを両立させることができることを見出した。
すなわち、前記課題を解決する手段は、以下のとおりである。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0007】
〔1〕
基板と、光を拡散、散乱する光学層と、透明電極である第1電極と、有機発光層を含む有機層と、第2電極と、がこの順に形成された有機電界発光素子であって、
光学層は、一次粒子径が0.5μm以上の透明な少なくとも1種の光散乱粒子とバインダ成分とを含み、バインダ成分は有機発光層の屈折率以上の屈折率を有し、
有機層は更にバンドギャップ化合物層を少なくとも一層含み、バンドギャップ化合物層はEg(バンドギャップ)が1.3〜2.5eVの化合物からなり、膜厚が0.5nm以上10nm未満である、有機電界発光素子。
〔2〕
バンドギャップ化合物層は膜厚が0.5nm以上5nm未満の層である、〔1〕に記載の有機電界発光素子。
〔3〕
バンドギャップ化合物層は膜厚が0.5nm以上2nm未満の層である、〔1〕又は〔2〕に記載の有機電界発光素子。
〔4〕
第2電極が銀の反射電極である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
〔5〕
バンドギャップ化合物層を形成する化合物がCuPC、PTCDA又はPTCDIである、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
〔6〕
バンドギャップ化合物層が第1電極に隣接する、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
〔7〕
バインダ成分が一次粒子径が100nm以下の粒子を含有する、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
〔8〕
一次粒子径が100nm以下の粒子の屈折率が2.0以上3.0以下である、〔7〕に記載の有機電界発光素子。
〔9〕
バインダ成分の屈折率が1.7以上2.2以下である、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
〔10〕
光散乱粒子の屈折率が、バインダ成分の屈折率より低い、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外部量子効率が高く駆動電圧が低い有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、吸収スペクトルの裾野(吸収端)の波長の求め方を示す図である。
図2図2は、PTCDAの吸収スペクトルの図である。
図3図3は、CuPCの吸収スペクトルの図である。
図4図4は、実施例1〜7及び比較例1〜4、6〜8の有機電界発光素子の構成を表す模式図である。
図5図5は、比較例5の有機電界発光素子の構成を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の有機電界発光素子は、基板と、光を拡散、散乱する光学層と、透明電極である第1電極と、有機発光層を含む有機層と、第2電極と、がこの順に形成された有機電界発光素子であって、前記光学層は、一次粒子径が0.5μm以上の透明な少なくとも1種の光散乱粒子とバインダ成分とを含み、該バインダ成分は前記有機発光層の屈折率以上の屈折率を有し、前記有機層は更にバンドギャップ化合物層を少なくとも一層含み、該バンドギャップ化合物層はEg(バンドギャップ)が1.3〜2.5eVの化合物からなり、膜厚が0.5nm以上10nm未満である。
【0011】
[光学層]
本発明の光学層は光を拡散、散乱する機能を有する層である。そして、該光学層は、一次粒子径が0.5μm以上の透明な少なくとも1種の光散乱粒子とバインダ成分とを含み、該バインダ成分は前記有機発光層の屈折率以上の屈折率を有する。
【0012】
(光散乱粒子)
光散乱粒子としては、一次粒子径が0.5μm以上であって、光を拡散、散乱可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機粒子であっても、無機粒子であってもよく、2種以上の粒子を含有していても構わない。
なお、本明細書における光散乱粒子の一次粒子径とは、光散乱粒子1gをメタノール200gに分散させ、べックマン・コールタ一株式会社製の「マルチサイザーII」精密粒度分布測定装置を使用して、光散乱粒子の粒子径の測定を行い、体積基準で平均粒子径となるように算出された一次粒子径である。
【0013】
前記有機粒子としては、例えばポリメチルメタクリレート粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、アクリル−スチレン共重合体粒子、メラミン粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子、などが挙げられる。
前記無機粒子としては、例えばZrO、TiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、などが挙げられる。これらの中でも、TiO、ZrO、ZnO、SnOが特に好ましい。
【0014】
これらの中でも、前記光散乱粒子としては、耐溶剤性と光学層中の分散性の点で架橋状態の樹脂粒子が好ましく、架橋ポリメチルメタクリレート粒子が特に好ましい。
前記光散乱粒子が、架橋状態の樹脂粒子であることは、溶剤、例えばトルエン中に分散させ、樹脂粒子の溶け難さを見ることで確認することができる。
【0015】
光散乱粒子の屈折率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0以上3.0以下が好ましく、1.2以上2.0以下がより好ましく、1.3以上1.7以下が更に好ましい。前記屈折率が、1.0以上3.0以下であると、光拡散(散乱)が強くなりすぎないため、光取り出し効率が向上しやすい。
また、光散乱粒子の屈折率は、後述するバインダ成分の屈折率より低いことが好ましい。
なお、本明細書における光散乱粒子の屈折率は、前記光散乱粒子の原料となる材料を、屈折率測定に使用するエリプソメーターの光源の波長程度の厚さでシリコン基板上に成膜したものを、前記エリプソメーターにより測定した屈折率である。
【0016】
前記光散乱粒子の一次粒子径は、0.5μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上6μm以下がより好ましく、1μm以上3μm以下が更に好ましい。前記光散乱粒子の一次粒子径が10μm以下であると、光が前方散乱になりにくく、光散乱粒子による光の角度を変換する能力が低下しにくい。
一方で、前記光散乱粒子の一次粒子径が0.5μm未満であると、可視光の波長より小さくなり、ミー散乱がレイリー散乱の領域に変化する。これにより、光散乱粒子の散乱効率の波長依存性が大きくなり、有機電界発光装置の色度が変化しやすくなるため好ましくない。また、後方散乱が強くなりすぎ、光取り出し効率が低下してしまう点で好ましくない。
【0017】
光学層における光散乱粒子の含有量は、30体積%以上66体積%以下が好ましく、30体積%以上60体積%以下がより好ましく、30体積%以上55体積%以下が更に好ましい。前記含有量が、30体積%以上であると、光学層に入射してきた光が光散乱粒子に散乱される確率が高く、光学層の光角度を変換する能力が大きいので、光学層の厚みを大きくしなくても光取り出し効率が向上する。また、前記光学層の厚みを大きくしなくてよいためコスト低減に繋がり、光学層の厚みのバラツキが小さくなり、発光面内の散乱効果にバラツキが生じにくい。一方、前記含有量が、66体積%以下であると、前記光学層の表面が大きく荒れすぎず、内部にも空洞が生じにくいため、前記光学層の物理的強度が低下しにくい。
【0018】
光学層は、光取り出し効率の観点から、前記樹脂粒子と、光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子とを含むことが好ましい。該光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子の処理の内容は、後述する一次粒子径が100nm以下の粒子に使用されている、光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子についてされたものと同様である。
【0019】
光学層の膜厚は、散乱性能と製造適性の観点から、100nm以上10μm以下であることが好ましく、100nm以上7μm以下であることがより好ましく、100nm以上5μm以下であることが更に好ましい。
なお、各層の膜厚は、例えば膜厚を測定する層の一部を切り取り、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で測定して、求めることができる。
【0020】
〔バインダ成分〕
バインダ成分とは、光学層に含有される成分から光散乱粒子を除いた成分であり、有機発光層の屈折率以上の屈折率を有することを特徴とする。
例えば、光学層が、光散乱粒子と、一次粒子径が100nm以下の粒子と、樹脂材料の硬化物とを含有する場合は、バインダ成分とは、前記一次粒子径が100nm以下の粒子と前記樹脂材料の硬化物とからなる成分を指す。
前記バインダ成分は、1成分のみにより構成されていてもよく、2成分以上により構成されていてもよい。
前記バインダ成分は、後述する一次粒子径が100nm以下の粒子及び樹脂材料の硬化物を含有していることが好ましい。
なお、本明細書におけるバインダ成分の屈折率は、Si基板、又は石英基板上に光の波長程度の厚さに前記バインダ成分を成膜し、その成膜した基板上の膜の屈折率をエリプソメーターにて測定した屈折率である。
【0021】
本発明において、バインダ成分の屈折率は、光取り出し効率向上の観点から、有機電界発光素子の有機発光層の屈折率以上であり、具体的には、1.7以上2.2以下であることが好ましく、1.7以上2.1以下であることがより好ましく、1.7以上2.0以下であることが更に好ましい。
【0022】
(一次粒子径が100nm以下の粒子)
本発明においては、バインダ成分は、一次粒子径が100nm以下の粒子(以下、「ナノサイズ粒子」、「屈折率制御粒子」と称することもある。)を含有することができる。
本明細書におけるナノサイズ粒子の一次粒子径とは、べックマン・コールタ一株式会社製の「DelsaTM Nano C」を使用して、ナノサイズ粒子の粒子径の測定を行い、体積基準で平均粒子径となるように算出された一次粒子径である。
【0023】
前記ナノサイズ粒子としては、無機微粒子が好ましく、金属酸化物微粒子であり、例えば、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンの酸化物の微粒子が好ましく、屈折率の観点から、酸化チタンの微粒子が特に好ましい。酸化チタン微粒子は、光触媒効果を不活性処理したものであることが好ましい。
【0024】
−−光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子−−
光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子は、光触媒活性を有していなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、(1)酸化チタン微粒子表面をアルミナ、シリカ、及びジルコニアの少なくとも1種で被覆した酸化チタン微粒子、(2)前記(1)の被覆した酸化チタン微粒子の被覆表面に樹脂を被覆してなる酸化チタン微粒子などが挙げられる。前記樹脂としては、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)などが挙げられる。
【0025】
前記光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子が、光触媒活性を有さないことの確認は、例えばメチレンブルー法により行うことができる。
【0026】
前記光触媒不活性処理した酸化チタン微粒子における酸化チタン微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。
前記酸化チタン微粒子は、酸化チタン以外の金属酸化物を添加して複合化させても構わない。
前記酸化チタン微粒子に複合化させることができる金属酸化物としては、Sn、Zr、Si、Zn、及びAlから選択される少なくとも1種の金属酸化物が好ましい。
前記金属酸化物のチタンに対する添加量は、1モル%〜40モル%が好ましく、2モル%〜35モル%がより好ましく、3モル%〜30モル%が更に好ましい。
【0027】
前記ナノサイズ粒子の一次粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましく、1nm以上30nm以下が更に好ましく、1nm以上25nm以下が特に好ましく、1nm以上20nm以下が最も好ましい。一次粒子径が、100nm以下であれば、分散液が白濁しにくく、沈降が起きにくいため好ましく、1nm以上であれば、結晶性が高いためアモルファスにならず、経時でゲル化などの変化が起こりにくいため好ましい。
【0028】
前記ナノサイズ粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、又は不定形状が好ましい。前記ナノサイズ粒子は、1種を単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0029】
前記ナノサイズ粒子は、光学層の屈折率を高くするために、屈折率が2.0以上3.0以下であることが好ましく、2.2以上3.0以下であることがより好ましく、2.2以上2.8以下が更に好ましく、2.2以上2.6以下が特に好ましい。前記屈折率が、2.0以上であれば、導電性層の屈折率を効果的に高めることができ、前記屈折率が、3.0以下であれば粒子が着色するなどの不都合がないので好ましい。
前記ナノサイズ粒子の屈折率は以下のようにして測定することができる。屈折率が既知の樹脂材料に導電性マトリックスよりも大きな屈折率を有する粒子をドープし、該粒子が分散された樹脂材料をSi基板、又は石英基板上に塗布膜を形成する。前記塗布膜の屈折率をエリプソメーターで測定し、前記塗布膜を構成する樹脂材料と前記粒子の体積分率から、前記粒子の屈折率を求める。
【0030】
前記ナノサイズ粒子は、光学層中に、光学層の全体積に対して10体積%以上50体積%以下含有されることが好ましく、15体積%以上50体積%以下含有されることがより好ましく、20体積%以上50体積%以下含有されることが更に好ましい。前記含有量が、10体積%以上であると、光学層の屈折率を効果的に上げることができ、光取り出し効果が向上するため好ましく、50体積%以下であると、レイリー散乱が強くならず、光取り出し効果が向上するため好ましい。
【0031】
(樹脂材料の硬化物)
本発明のバインダ成分は、樹脂材料の硬化物を含有することが好ましい。
前記樹脂材料の硬化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性不飽和基{(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等}及び/又はカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の官能基を有する樹脂で、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられる。
【0032】
上記樹脂材料の硬化物は、上記樹脂材料を硬化して得られるものである。樹脂材料を硬化する方法に特に制限はないが、短時間で硬化が可能であり、目的の形状に硬化させる制御が容易であることの理由から、光照射により硬化することが好ましい。
【0033】
また、上記光照射による樹脂材料の硬化には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤の種類には特に制限はないが、光照射により、ラジカルもしくは酸を発生する化合物であることが好ましい。前記光重合開始剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0034】
光照射の光源は、光重合開始剤の反応する波長(吸収波長)付近であればいずれでもよく、吸収波長が紫外領域の場合、光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350nm〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、吸収波長が赤外領域の場合、光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750nm〜1,400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
【0035】
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。前記酸素濃度範囲は0〜1,000ppmが好ましく、0〜800ppmがより好ましく、0〜600ppmが更に好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1mW/cm〜100mW/cmが好ましく、塗布膜表面上での光照射量は、100mJ/cm〜10,000mJ/cmが好ましく、100mJ/cm〜5,000mJ/cmがより好ましく、100mJ/cm〜1,000mJ/cmが特に好ましい。前記光照射量が、100mJ/cm未満であると、光学層が十分に硬化せず、光学層上に他の層を塗布する際に溶解、また、基板洗浄時に崩壊することがある。一方、前記光照射量が、10,000mJ/cmを超えると、光学層の重合が進み過ぎ表面が黄変し、透過率が低下し、光取り出し効率が低下することがある。また、光照射工程での温度は、15℃〜70℃が好ましく、20℃〜60℃がより好ましく、25℃〜50℃が特に好ましい。前記温度が、15℃未満であると、光重合による光学層の硬化に時間がかかることがあり、70℃を超えると、光重合開始剤自体に影響を及ぼし、光重合(硬化)できなくなることがある。
【0036】
[金属電極]
本発明の有機電界発光素子は、第2電極が反射電極であることが好ましい。そして、前記反射電極は、金属電極であることが好ましい。
前記金属電極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。また、発光効率の観点から反射率の高い銀を主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
銀を主体とする材料とは、銀単独、銀と0.01質量%〜10質量%のアルカリ土類金属やその他金属類(例えば、銀とマグネシウム、カルシウムの合金など)の混合物をいう。銀を主体とする材料としては、反射率が高く外部量子効率の向上が期待できることから、銀単独の材料を使用することが好ましい。
【0037】
[その他の層]
本発明の有機電界発光素子は、封止缶内に、少なくとも、前記第2電極、前記有機層が封入されていることが好ましく、封止缶内に、前記第1電極、前記第2電極、及び前記有機層が封入されていることがより好ましい。
【0038】
〔有機層〕
前記有機層としては、少なくとも有機発光層とバンドギャップ化合物層とを有する。前記有機発光層以外の機能層としては、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0039】
(バンドギャップ化合物層)
前記バンドギャップ化合物層(以下、「Eg化合物層」とも称する。)は、Eg(バンドギャップ)が1.3〜2.5eVの化合物(以下、「バンドギャップ化合物層を形成する化合物」とも称する。)からなり、膜厚が0.5nm以上10nm未満の層である。
バンドギャップ化合物層は電極から正孔を注入しやすくする機能を有し、有機電界発光素子の駆動電圧を低減させる効果を有する層である。
【0040】
ここで、本明細書におけるEgとは、下記のとおり求められる。厚さ50nmの有機材料の膜を真空蒸着法により石英基板上に成膜し、日立ハイテク製分光光度計「U−3310」により紫外線領域から可視光領域までの光の吸収を測定する。吸収スペクトルの山の長波長側の裾野(吸収端)の波長(nm)をEg(eV)として求める。
ここで、上記裾野(吸収端)の波長の求め方を、図1により説明する。裾野(吸収端)の波長は、長波側のスペクトルに沿った仮想直線(図1における破線)を引き、吸収0のグランドレベルと重なった位置から求めることができる。
【0041】
例えば、図2に示すPTCDA(3,4,9,10−Perylenetetracarboxylic 3,4:9,10−dianhydride)の吸収スペクトルにおいては、裾野(吸収端)の波長は570nmである。この波長を式E=hc/λによりエネルギーに換算することにより、Eg=2.2eVが求まる。
【0042】
また、図3に示すCuPc(Copper phthalocyanine)の吸収スペクトルにおいては、Egに対応する吸収スペクトルの山の長波長側の裾野(吸収端)の波長は775nmである。この波長を上記のとおりエネルギーに換算することにより、Eg=1.6eVが求まる。
【0043】
前記バンドギャップ化合物層を形成する化合物のEgが1.3〜2.5eVの範囲にあることにより、電極とのエネルギー順位のマッチングと電気伝導性の向上から電極からの正孔注入性が向上し、駆動電圧を抑えることができる。バンドギャップ化合物層を形成する化合物のEgが1.3eV未満であると、電極とのエネルギー順位のマッチングが悪化するため好ましくない。また、バンドギャップ化合物層を形成する化合物のEgが2.5eVを超えると、電極とのエネルギー順位のマッチングと電気伝導性が低下するため好ましくない。
【0044】
前記バンドギャップ化合物層を形成する化合物は、Egが1.3〜2.5eVの範囲にあれば特に制限はないが、例えば、CuPC、PTCDA又はPTCDI(N,N’−Bis(2,5−di−tert−butylphenyl)perylene−3,4:9,10−bis(dicarbimide))を好ましく使用することができる。
【0045】
前記バンドギャップ化合物層の膜厚は0.5nm以上10nm未満である。バンドギャップ化合物層の膜厚が0.5nm未満であると、膜として機能しなくなるため好ましくない。また、バンドギャップ化合物層の膜厚が10nm以上であると、光吸収が強くなるため好ましくない。
光吸収低減とバンドギャップ化合物の機能可能な最適な膜厚の観点から、前記バンドギャップ化合物層の膜厚は0.5nm以上5nm未満であることが好ましく、0.5nm以上2nm未満であることがより好ましい。
【0046】
前記有機層における前記バンドギャップ化合物層の位置には特に制限はないが、金属電極からの正孔注入性が良い性質である観点から、第1電極に隣接していることが好ましい。
また、前記バンドギャップ化合物層は、正孔注入層であることが好ましい。
【0047】
−有機発光層−
前記有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
前記有機発光層は、発光材料を含む。前記有機発光層は発光材料のみで構成されていてもよいし、ホスト材料と発光材料の混合層でもよい(後者の場合、発光材料を「発光性ドーパント」もしくは「ドーパント」と称する場合がある)。前記発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、2種以上が混合されていてもよい。ホスト材料は電荷輸送材料が好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよい。更に、有機発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
なお、本明細書における有機発光層の屈折率は、Si基板、又は石英基板上に光の波長程度の厚さに前記有機発光層を成膜し、その成膜した基板上の膜の屈折率をエリプソメーターにて測定した屈折率である。
【0048】
前記有機発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2nm〜500nmであるのが好ましく、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、前記有機発光層は1層であっても二層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0049】
−−発光材料−−
前記発光材料は、燐光発光材料、蛍光発光材料等のいずれも好適に用いることができる。
前記発光材料は、ホスト化合物との間で、イオン化ポテンシャルの差(ΔIp)と電子親和力の差(ΔEa)が、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが、駆動耐久性の観点で好ましい。
前記発光層中の発光材料は、前記発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜50質量%含有されることがより好ましい。
【0050】
−−−燐光発光材料−−−
前記燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
前記遷移金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
【0051】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0052】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0053】
これらの中でも、燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、WO2004/108857A1、WO2005/042444A2、WO2005/042550A1、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−93542、特開2006−261623、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の各公報に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。これらの中でも、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が好ましく、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体がより好ましく、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が更に好ましく、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0054】
前記燐光発光材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
【化1】
【0056】
【化2】
【0057】
【化3】
【0058】
−−−蛍光発光材料−−−
前記蛍光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、又はこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0059】
−−ホスト材料−−
前記ホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0060】
−−−正孔輸送性ホスト材料−−−
前記正孔輸送性ホスト材料としては、例えば、以下の材料を挙げることができる。即ち、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、又はそれらの誘導体などが挙げられる。
これらの中でも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体、分子内にカルバゾール基を有するものが好ましく、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物がより好ましい。
【0061】
−−−電子輸送性ホスト材料−−−
前記電子輸送性ホスト材料としては、例えば、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、又はそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。これらの中でも、耐久性の点から金属錯体化合物が好ましく、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子又は酸素原子又は硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。前記金属錯体電子輸送性ホストとしては、例えば特開2002−235076号公報、特開2004−214179号公報、特開2004−221062号公報、特開2004−221065号公報、特開2004−221068号公報、特開2004−327313号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0062】
前記正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
【化4】
【0064】
【化5】
【0065】
【化6】
【0066】
−正孔注入層、正孔輸送層−
前記正孔注入層、又は前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側の層から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いられる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層が好ましい。
【0067】
前記正孔注入層、又は前記正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。前記正孔注入層、又は正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、及び三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜40質量%が更に好ましく、0.1質量%〜30質量%が特に好ましい。
【0068】
前記正孔注入層、又は正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0069】
本発明の有機電界発光素子において、前記正孔注入層は、前記バンドギャップ化合物層であることが好ましい。
【0070】
−電子注入層、電子輸送層−
前記電子注入層、又は前記電子輸送層は、陰極又は陰極側の層から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層が好ましい。
【0071】
前記電子注入層、又は電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。前記電子注入層、又は電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、及びYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%が好ましく、1.0質量%〜80質量%が更に好ましく、2.0質量%〜70質量%が特に好ましい。
【0072】
前記電子注入層、又は前記電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0073】
−正孔ブロック層、電子ブロック層−
前記正孔ブロック層は、陽極側から有機発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
一方、前記電子ブロック層は、陰極側から有機発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、有機発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
前記正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚みは、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。また、前記正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0074】
−封止缶−
前記封止缶としては、第1電極、第2電極及び有機層を含む有機電界発光素子が封入できる大きさ、形状、構造などを有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記封止缶と第1電極、第2電極及び有機層を含む有機電界発光素子との間の空間には、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類;パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;塩素系溶剤、シリコーンオイル類などが挙げられる。
【0075】
前記有機電界発光素子は、フルカラーで表示し得る装置として構成することができる。
前記有機電界発光素子をフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する層構造を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の層構造による白色発光をカラーフィルタ層を通して3原色に分ける白色法、青色発光用の層構造による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
この場合は、青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の画素ごとにレーザーパワー、厚みを適宜調整することが好ましい。
また、上記方法により得られる、異なる発光色の層構造を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光装置を組み合わせた白色発光光源、青色(B)、緑色(G)、及び赤色(R)の有機電界発光素子を組み合わせた白色発光光源、等である。
【0076】
前記有機電界発光素子は、例えば、照明機器、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。ただし、実施例1及び7を参考例に読み替える。
【0078】
<有機電界発光素子の作製>
−平坦化層用塗布材料および光学層用バインダの作成−
酸化チタン分散液(一次粒子径15nmの酸化チタンのナノ粒子が分散、材料名:酸化チタン分散トルエン、表面修飾された酸化チタンの屈折率:2.4、商品名:高透明性酸化チタンスラリーHTD−760T(テイカ株式会社製))18gと、樹脂材料(材料名:フルオレン誘導体、商品名:オグソールEA−0200(大阪ガスケミカル(株)製))5gと、トルエン4gとを、ローラー、スターラーにより攪拌し、更に超音波により酸化チタンのナノ粒子を樹脂材料に十分に分散させた。
これにより、平坦化層用塗布材料及び光学層用バインダを得た。
【0079】
−光学層用塗布材料の作製−
先に作成した光学層用バインダ10gに対し、光散乱粒子(一次粒子径1.5μmの架橋アクリル系粒子、材料名:MX−150(綜研化学(株)製))2.6g及びトルエン溶媒7gを添加し、スターラーにて攪拌した。
更に超音波にて光散乱粒子を光学層用バインダに十分に分散させ、さらにスターラー等でよく攪拌することにより、光学層用塗布材料を得た。
光学層用バインダ(上記酸化チタンと上記樹脂材料との分散液)の硬化時の屈折率は1.78、光散乱粒子の屈折率は1.49で屈折率差が十分に大きく、薄膜でも光取り出しに十分な拡散を得ることができる。
またトルエンを溶媒としているため、樹脂の粒子は十分な耐溶剤性が必要であるが、その点でも上記材料の組み合わせは溶剤に強く、また経時変化による分散の劣化(凝集等)においても非常に優れている。
【0080】
−平坦化層3及び光学層2の作製−
上記平坦化層用塗布材料と光学層用塗布材料に重合開始剤(Ciba製IRGACURE819)を添加した。
洗浄し、下記の表面処理をしたガラス基板にワイヤーバーを用いて光学層用塗布材料を塗布し、その後、UV照射(365nm)を10分間行い硬化させ、光学層(4μm)を得た。
上記光学層の上にワイヤーバーを用いて平坦化層用塗布材料を塗布し、UV照射を行い硬化させ、光学層(4μm)/平坦化層(6μm)の積層を得た。
【0081】
−ガラス基板1の表面処理−
ガラス基板はシランカップリング処理を行い、光学層−ガラス間の密着性を高めた。
【0082】
−ITO電極(第1電極4)の作製−
光学層上に成膜した平坦化層上にスパッタ装置を用いITOを100nm形成した。
【0083】
−有機層5の作製−
前記手法で作成した第1電極上に、真空蒸着装置により、CuPC、PTCDA、PTCDI、TPD(N,N’−Bis(3−methylphenyl)−N,N’−diphenylbenzidine)又はα−NPD(Bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl]benzidine)をXnmを蒸着し、バンドギャップ化合物層(正孔注入層)を形成した。
その上にα−NPDを(50−X)nmを蒸着し、正孔輸送層を形成した。
その上にmCP(1,3−Bis(carbazol−9−yl)benzene:60体積%)と発光材料A(40体積%)を30nm共蒸着させ、有機発光層を形成した。
その上にBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium(III))を49nm蒸着し電子輸送層を形成した。
更にその上にBCP(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline)を1nm蒸着し電子注入層を形成することにより、有機層を得た。
なお、上記Xnmは、以下の実施例及び比較例におけるCuPC、PTCDA、PTCDI、TPD又はα−NPD層(バンドギャップ化合物層)の厚さを表す。
また、得られた有機層において、有機発光層の屈折率は1.70であった。
【0084】
【化7】
【0085】
【化8】
【0086】
【化9】
【0087】
【化10】
【0088】
【化11】
【0089】
【化12】
【0090】
−反射電極(第2電極6)の作製−
上記有機層の上にLiFを0.5nm蒸着し、その上に第2電極として、アルミニウムを100nm、又は、アルミニウムを1.5nm、Agを100nm蒸着した。
【0091】
−封止缶7の作製−
窒素ガス雰囲気中にて乾燥剤を貼り付け、基板との設置面に封止材を塗った封止ガラス缶を用いて、基板の有機層側を封止した。
【0092】
[実施例1]
上記の方法により表面処理を行ったガラス基板上に、上記の光学層(4μm)及び平坦化層(6μm)を形成した。更に平坦化層上に上記の方法により第1電極となるITO電極(100nm)を形成した。
そして、上記の方法により、第1電極上に有機層を以下のとおり形成した。高真空下でITO上にCuPCを5nm蒸着し、その上にα−NPDを45nm蒸着した。その上に、mCP(60体積%)と発光材料A(40体積%)を30nm共蒸着した。更にその上に、BAlqを49nm、BCPを1nmそれぞれ蒸着した。
更にその上にLiFを0.5nm、アルミニウムを100nm順に蒸着により成膜し、基板を真空から窒素環境下に移動し、上記の方法でガラス缶により封止を行い実施例1の有機電界発光素子を得た。
実施例1並びに下記実施例2〜7及び比較例1〜4、6〜8の有機電界発光素子の構成を表す模式図を図4に示す。
【0093】
[実施例2]
CuPCの層の厚さを2nm、α−NPDの層の厚さを48nmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2の有機電界発光素子を得た。
【0094】
[実施例3]
CuPCの層の厚さを1nm、α−NPDの層の厚さを49nmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例3の有機電界発光素子を得た。
【0095】
[実施例4]
CuPCの層に代えてPTCDAの層を2nm形成した以外は実施例2と同様の操作を行い、実施例4の有機電界発光素子を得た。
【0096】
[実施例5]
CuPCの層に代えてPTCDIの層を2nm形成した以外は実施例2と同様の操作を行い、実施例5の有機電界発光素子を得た。
【0097】
[実施例6]
CuPCの層の厚さを1nm、α−NPDの層の厚さを49nmとし、反射電極をアルミニウムからアルミニウム(1.5nm)/銀(100nm)の順に成膜することに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例6の有機電界発光素子を得た。
なお、実施例6において、アルミニウム層はきわめて薄いために光学的には殆ど作用せず、銀層が反射電極として作用する。
【0098】
[実施例7]
CuPCの層の厚さを9nm、α−NPDの層の厚さを41nmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例7の有機電界発光素子を得た。
【0099】
[比較例1]
CuPCの層の厚さを10nm、α−NPDの層の厚さを40nmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例1の有機電界発光素子を得た。
【0100】
[比較例2]
CuPCの層の厚さを20nm、α−NPDの層の厚さを30nmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例2の有機電界発光素子を得た。
【0101】
[比較例3]
PTCDAの層の厚さを10nm、α−NPDの層の厚さを40nmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例3の有機電界発光素子を得た。
【0102】
[比較例4]
PTCDIの厚さを10nm、α−NPDの厚さを40nmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例4の有機電界発光素子を得た。
【0103】
[比較例5]
実施例1の光学層及び平坦化層を、ガラス基板に対してITO電極とは反対側に光学層、平坦化層の順に成膜した以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例5の有機電界発光素子を得た。
比較例5の有機電界発光素子の構成を表す模式図を図5に示す。
【0104】
[比較例6]
CuPCの層をTPDの層に変更した以外は比較例1と同様の操作を行い、比較例6の有機電界発光素子を得た。
【0105】
[比較例7]
CuPCの層をα−NPDの層に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例7の有機電界発光素子を得た。
【0106】
[比較例8]
CuPCの層の厚さを0.2nm、α−NPDの層の厚さを49.8nmとした以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例8の有機電界発光素子を得た。
【0107】
作製した有機電界発光素子について、以下のようにして、光取り出し効率及び駆動電圧を評価した。
【0108】
<外部量子効率及び駆動電圧の測定>
外部量子効率は、浜松ホトニクス製「C9920−12」を用いて2.5mA/cmの電流を流したときの外部量子効率を読みとったものである。
駆動電圧は、電流2.5mA/cmを流したとき、素子に加わった電圧値を読み取ったものである。
【0109】
結果を下記表1〜4に記載した。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
表1〜4の結果から、実施例1〜7の有機電界発光素子は、いずれも外部量子効率が高く、駆動電圧が低いことが分かった。
また、実施例3と6とを対比すると、有機電界発光素子の第2電極(反射電極)をアルミニウムから銀に変更することにより、素子の外部量子効率が大幅に上昇することが認められる。これは、銀の反射率がアルミニウムより高いことに起因すると考えられる。
比較例1〜4の有機電界発光素子は、Eg化合物層の膜厚が10nm以上の素子である。このような素子は光吸収の影響のため、外部量子効率の低下が認められる。
比較例5の有機電界発光素子は、光学層の位置が本発明とは異なる素子である。このような素子は有機発光層からの光がITOよりガラス基板に入射する際、一部の光が屈折率差による全反射の影響を受け、光学層まで進入することが出来ないため、外部量子効率の低下が認められる。
比較例6の有機電界発光素子は、Eg化合物としてEgが本発明の化合物より大きい化合物を用い、更に、Eg化合物層の膜厚が10nm以上の素子である。このような素子は正孔注入性がEg化合物層に比べ劣るため、駆動電圧の上昇が認められる。
比較例7の有機電界発光素子は、Eg化合物としてEgが本発明の化合物より大きい化合物を用いた素子である。このような素子も正孔注入性がEg化合物層に比べ劣るため、駆動電圧の上昇が認められる。
比較例8の有機電界発光素子は、Eg化合物層の膜厚が0.5nm未満の素子である。このような素子はCuPCの厚さが薄く膜として機能せず、正孔注入性が著しく低下したため、駆動電圧の上昇が認められる。
【符号の説明】
【0115】
1 ガラス基板
2 光学層
3 平坦化層
4 第1電極(透明電極)
5 有機層
6 第2電極(反射電極)
7 封止缶
図1
図2
図3
図4
図5