特許第6130650号(P6130650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6130650診断用データ管理装置及び診断用データ管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130650
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】診断用データ管理装置及び診断用データ管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20170508BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   G01N21/17 A
   G06T1/00 295
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-253383(P2012-253383)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-102124(P2014-102124A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月11日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】515313745
【氏名又は名称】一般社団法人白亜会
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】島田 修
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−084008(JP,A)
【文献】 特開平06−265794(JP,A)
【文献】 特開2011−053362(JP,A)
【文献】 特開2012−122852(JP,A)
【文献】 特開2010−134195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G02B 9/00−21/00
G02B 21/06−21/36
A61B 5/00
G06T 1/00
G06Q 50/22−50/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術により切除された手術摘出材料を切り出すことにより得られ、それぞれにアドレスが付与された複数の病理標本を撮影した画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
前記画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された前記画像における病変部を識別可能にトレースするトレース手段と、
前記トレース手段によりトレースされた軌跡の軌跡データを前記アドレス内の座標として記憶する軌跡データ記憶手段と、
前記病理標本の画像データが観察された順序をログデータとして記録するログデータ記録手段と、
前記複数の病理標本を撮影した前記画像データの全てを観察したか否かを判別する判別手段と
を備え
前記判別手段により前記画像データの全てを観察したと判別された場合に、前記ログデータ記録手段による記録を終了することを特徴とする診断用データ管理装置。
【請求項2】
前記画像中の病変部を認識する画像認識手段と、
前記病変部が前記手術摘出材料の断端に存在する場合にその旨を報知する報知手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の診断用データ管理装置。
【請求項3】
複数の前記画像データに基づいて2次元画像を生成する2次元画像生成手段と、
前記2次元画像に前記軌跡データに基づく前記軌跡を重畳表示させた2次元合成データを生成する2次元データ合成手段と
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の診断用データ管理装置。
【請求項4】
複数の前記画像データに基づいて3次元画像を生成する3次元画像生成手段と、
前記3次元画像に前記軌跡データに基づく前記軌跡を重畳表示させた3次元合成データを生成する3次元データ合成手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の診断用データ管理装置。
【請求項5】
前記画像データ、前記軌跡データ及び前記ログデータに基づいて動画データを生成する動画データ生成手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の診断用データ管理装置。
【請求項6】
前記表示手段は複数のディスプレイにより構成されることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の診断用データ管理装置。
【請求項7】
診断用データ作成装置と、サーバと、外部端末とを含む診断用データ管理システムであって、
前記診断用データ作成装置は、
手術により切除された手術摘出材料を切り出すことにより得られ、それぞれにアドレスが付与された複数の病理標本を撮影した画像データを生成する撮影手段と、
前記画像データを前記サーバに対して送信する第1通信手段と
を備え、
前記外部端末は、
前記サーバから前記画像データを受信する第2通信手段と、
前記画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された前記画像における病変部を識別可能にトレースするトレース手段と、
前記病理標本の画像データが観察された順序をログデータとして生成するログデータ生成手段と、
前記複数の病理標本を撮影した前記画像データの全てを観察したか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記画像データの全てを観察したと判別された場合に、前記ログデータの記録終了指示を生成する記録終了指示生成手段と
を備え、
前記第2通信手段は、さらに前記サーバに対して前記トレース手段によりトレースされた軌跡の軌跡データ、前記ログデータ及び前記記録終了指示を送信し、
前記サーバは、
前記画像データ、前記軌跡データ、前記ログデータ及び前記記録終了指示を受信する第3通信手段と、
前記画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
前記軌跡データを前記アドレス内の座標として記憶する軌跡データ記憶手段と、
前記ログデータを記憶するログデータ記憶手段と
を備え、
前記記録終了指示を受信した場合に、前記ログデータ記録手段による記録を終了することを特徴とする診断用データ管理システム。
【請求項8】
前記サーバは、
前記画像中の病変部を認識する画像認識手段と、
前記病変部が前記手術摘出材料の断端に存在する場合にその旨を前記第2通信手段を介して前記外部端末に報知する報知手段と
を備えることを特徴とする請求項7記載の診断用データ管理システム
【請求項9】
診断結果を表示する表示装置をさらに備え、
前記表示装置は、
前記画像データ記憶手段に記憶された複数の前記画像データ及び前記軌跡データ記憶手段に記憶された軌跡データを受信する第4通信手段と、
複数の前記画像データに基づいて2次元画像を生成する2次元画像生成手段と、
前記2次元画像に前記軌跡データに基づく前記軌跡を重畳表示させた2次元合成データを生成する2次元データ合成手段と
を備えることを特徴とする請求項7または8記載の診断用データ管理システム。
【請求項10】
診断結果を表示する表示装置をさらに備え、
前記表示装置は、
前記画像データ記憶手段に記憶された複数の前記画像データ及び前記軌跡データ記憶手段に記憶された軌跡データを受信する第4通信手段と、
複数の前記画像データに基づいて3次元画像を生成する3次元画像生成手段と、
前記3次元画像に前記軌跡データに基づく前記軌跡を重畳表示させた3次元合成データを生成する3次元データ合成手段と
を備えることを特徴とする請求項7または8記載の診断用データ管理システム。
【請求項11】
診断結果を表示する表示装置をさらに備え、
前記表示装置は、
前記画像データ、前記軌跡データ及び前記ログデータに基づいて動画データを生成する動画データ生成手段を備えることを特徴とする請求項7〜10の何れか一項に記載の診断用データ管理システム。
【請求項12】
前記表示手段は複数のディスプレイにより構成されることを特徴とする請求項7〜11の何れか一項に記載の診断用データ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理標本の画像データ及び病理標本についての病理診断結果に関するデータを管理するための診断用データ管理装置及び診断用データ管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、病理学の分野等において、光学顕微鏡によって観察される画像をデジタルデータ化し、ディスプレイ上で観察する装置が用いられている。このような装置としては、デジタルカメラを介して病理標本をディスプレイで観察する光学顕微鏡であるデジタル顕微鏡、従来の光学顕微鏡にデジタルカメラと電動ステージを追加し、遠隔操作で顕微鏡観察を行う遠隔顕微鏡、及び病理標本全体を撮影し、デジタル画像データを生成するホールスライドイメージ作成装置が存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、病理標本を載置した可動フレームを順次移動させながら複数の画像を高倍率で撮影するホールスライドイメージ作成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−20329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、病理診断の際に病理医師は、デジタルデータ化された画像を観察して病変部の特定を行うが、病理医師が観察したことを記録したり、複数の病理医師による観察を行うなど、病理医師による診断結果に対する信頼性を高めることも求められる。
本発明の目的は、信頼性の高い病理診断結果のデータを記録することができる診断用データ管理装置及び診断用データ管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の診断用データ管理装置は、手術により切除された手術摘出材料を切り出すことにより得られ、それぞれにアドレスが付与された複数の病理標本を撮影した画像データを記憶する画像データ記憶手段と、前記画像データに基づく画像を表示する表示手段と、前記表示手段に表示された前記画像における病変部を識別可能にトレースするトレース手段と、前記トレース手段によりトレースされた軌跡の軌跡データを前記アドレス内の座標として記憶する軌跡データ記憶手段と、前記病理標本の画像データが観察された順序をログデータとして記録するログデータ記録手段と、前記複数の病理標本を撮影した前記画像データの全てを観察したか否かを判別する判別手段とを備え、前記判別手段により前記画像データの全てを観察したと判別された場合に、前記ログデータ記録手段による記録を終了することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の診断用データ管理装置は、前記画像中の病変部を認識する画像認識手段と、前記病変部が前記手術摘出材料の断端に存在する場合にその旨を報知する報知手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の診断用データ管理装置は、複数の前記画像データに基づいて2次元画像を生成する2次元画像生成手段と、前記2次元画像に前記軌跡データに基づく前記軌跡を重畳表示させた2次元合成データを生成する2次元データ合成手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の診断用データ管理装置は、複数の前記画像データに基づいて3次元画像を生成する3次元画像生成手段と、前記3次元画像に前記軌跡データに基づく前記軌跡を重畳表示させた3次元合成データを生成する3次元データ合成手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の診断用データ管理装置は、前記画像データ、前記軌跡データ及び前記ログデータに基づいて動画データを生成する動画データ生成手段を備えることを特徴とする。
また、本発明の診断用データ管理装置は、前記表示手段は複数のディスプレイにより構成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の診断用データ管理システムは、診断用データ作成装置と、サーバと、外部端末とを含む診断用データ管理システムであって、前記診断用データ作成装置は、手術により切除された手術摘出材料を切り出すことにより得られ、それぞれにアドレスが付与された複数の病理標本を撮影した画像データを生成する撮影手段と、前記画像データを前記サーバに対して送信する第1通信手段とを備え、前記外部端末は、前記サーバから前記画像データを受信する第2通信手段と、前記画像データに基づく画像を表示する表示手段と、前記表示手段に表示された前記画像における病変部を識別可能にトレースするトレース手段と、前記病理標本の画像データが観察された順序をログデータとして生成するログデータ生成手段と、前記複数の病理標本を撮影した前記画像データの全てを観察したか否かを判別する判別手段と、前記判別手段により前記画像データの全てを観察したと判別された場合に、前記ログデータの記録終了指示を生成する記録終了指示生成手段と、を備え、前記第2通信手段は、さらに前記サーバに対して前記トレース手段によりトレースされた軌跡の軌跡データ、前記ログデータ及び前記記録終了指示を送信し、前記サーバは、前記画像データ、前記軌跡データ、前記ログデータ及び前記記録終了指示を受信する第3通信手段と、前記画像データを記憶する画像データ記憶手段と、前記軌跡データを前記アドレス内の座標として記憶する軌跡データ記憶手段と、前記ログデータを記憶するログデータ記憶手段とを備え、前記記録終了指示を受信した場合に、前記ログデータ記録手段による記録を終了することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の診断用データ管理システムは、前記サーバが、前記画像中の病変部を認識する画像認識手段と、前記病変部が前記手術摘出材料の断端に存在する場合にその旨を前記第2通信手段を介して前記外部端末に報知する報知手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の診断用データ管理システムは、診断結果を表示する表示装置をさらに備え、前記表示装置は、前記画像データ記憶手段に記憶された複数の前記画像データ及び前記軌跡データ記憶手段に記憶された軌跡データを受信する第4通信手段と、複数の前記画像データに基づいて2次元画像を生成する2次元画像生成手段と、前記2次元画像に前記軌跡データに基づく前記軌跡を重畳表示させた2次元合成データを生成する2次元データ合成手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の診断用データ管理システムは、診断結果を表示する表示装置をさらに備え、前記表示装置は、前記画像データ記憶手段に記憶された複数の前記画像データ及び前記軌跡データ記憶手段に記憶された軌跡データを受信する第4通信手段と、複数の前記画像データに基づいて3次元画像を生成する3次元画像生成手段と、前記3次元画像に前記軌跡データに基づく前記軌跡を重畳表示させた3次元合成データを生成する3次元データ合成手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の診断用データ管理システムは、診断結果を表示する表示装置をさらに備え、前記表示装置は、前記画像データ、前記軌跡データ及び前記ログデータに基づいて動画データを生成する動画データ生成手段を備えることを特徴とする。
また、本発明の診断用データ管理システムは、前記表示手段は複数のディスプレイにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る診断用データ管理装置及び診断用データ管理システムによれば、信頼性の高い病理診断結果のデータを記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係るWSI作成装置により観察するプレパラートを作製するための手術摘出材料を示す図である。
図2】実施の形態に係るWSI作成装置により観察するプレパラートを作製するための手術摘出材料を示す図である。
図3】実施の形態に係るWSI作成装置により観察するプレパラートを作製するための手術摘出材料を示す図である。
図4】実施の形態に係るWSI作成装置により観察するプレパラートを示す図である。
図5】実施の形態に係る診断用データ管理システムの構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態に係る診断用データ管理システムにおけるプレパラートの画像データ作成処理を示すフローチャートである。
図7】実施の形態に係る診断用データ管理システムにおけるデジタルトレースデータ及びログデータの生成処理を示すフローチャートである。
図8】実施の形態に係る診断用データ管理システムにおけるデジタルトレーシングを示す図である。
図9】実施の形態に係る診断用データ管理システムにより生成された2次元トレースデータに基づく画像を示す図である。
図10】実施の形態に係る診断用データ管理システムにより生成された3次元トレースデータに基づく画像を示す図である。
図11】他の実施の形態に係る診断用データ管理装置を含む診断用データ管理システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る診断用データ管理システムについて説明する。本実施の形態に係る診断用データ管理システム14(図5参照)においては、ホールスライドイメージ(WSI)作成装置16を用いて撮影されたプレパラート4(図4参照)の画像データを用いて、病理診断が行われる。
【0019】
(プレパラートの作製)
まず手術により切除された手術摘出材料を固定後、手術摘出材料の切り出しを行う。固定はホルマリン等を用いて各臓器の癌取扱い規約等に従って行う。固定後の手術摘出材料を、例えば、2cm×3cmの大きさで、かつ、厚さが4mm前後など、通常用いられるカバーガラス(例えば、2.5cm×5.0cm)に収まる大きさ及び後述するパラフィン包埋におけるパラフィンの浸透を考慮した厚さに切り出し、カセットに入れる。ここで、例えば、カセットにインクを用いて記号を付すことにより、または、記号が印刷されたシールを付すことにより、切り出された材料片または臓器片の手術摘出材料における位置を認識するためのアドレスを付与する。
【0020】
ここで、乳癌や甲状腺癌等では、病変部全体、または手術摘出材料全体について切り出しを行う。例えば、切り出し工程としては、まず図1に示す手術摘出材料2を厚さ4mm前後に切り出すことにより、図2に示すスライスA〜Cを得る。次に、図3(a)〜(c)に示すようにスライスA〜Cのそれぞれについて2cm×3cmの大きさに切り出すことにより材料片または臓器片を得る。なお、図3(a)に示す「1,1」等の符号はアドレスを示す符号であり、本実施の形態においては、スライスAの「1,1」のアドレスをA(1,1)と表す。なお、図1図3に示す領域5,7はそれぞれ後述する病変部を示している。
【0021】
また、切り出し工程は自動化されていてもよい。即ち、図2に示すようにスライスA〜Cにまず切り出し、次に図3に示すように2cm×3cm等の大きさに切り出す切出用装置により切り出し、さらにこの装置を用いて切り出された材料片または臓器片をそれぞれのカセットに入れてもよい。なお、カセットにはインクを用いて記号を付すことにより、または、記号が印刷されたシールを付すことにより予めアドレスが付されていてもよいし、材料片をカセットに入れる際または入れた後に切出用装置に設けられた印刷部によりアドレスを付してもよい。また、アドレスとしては、A(2,2)のような行列での表記に代えて、または加えて、行列を示す1次元バーコードや2次元バーコードを付してもよい。
【0022】
次に、カセットに入れた材料片または臓器片のパラフィン包埋を行う。パラフィン包埋工程においては、水分をエタノール等のアルコールに置換する脱水工程、このアルコールをキシレンやクロロホルム等の有機溶媒に置換する中間剤処理工程、この有機溶媒をパラフィンに置換し、材料片または臓器片にパラフィンを浸透させるパラフィン浸透工程、浸透させたパラフィンを固める包埋処理工程を行う。ここで、脱水工程、中間剤処理工程、及び浸透工程は包埋装置を用いて行い、包埋処理工程は包埋センター(包埋ステージ)を用いて行う。
【0023】
次に、パラフィン包埋処理後、薄切工程を行う。薄切り工程においては、パラフィン包埋処理で得られたそれぞれのブロックを、ミクロトームを用いて数μmの厚さに薄切することにより切片を得る。次いで、図4に示すように薄切された切片3をスライドガラスに貼付し、その後脱パラフィン操作を行い、染色を行うことにより、プレパラート(組織標本)4を得る。
【0024】
図4に示すようにプレパラート4には検体ID6、病理診断の依頼番号8等の検体番号及びアドレス10が数字及び二次元バーコード12により付されている。ここで、検体番号は1の手術摘出材料に付された固有の番号であり、検体ID6と依頼番号8とは1対1で対応している。
【0025】
検体番号、アドレス10を付す方法としては検体番号及びアドレス10を示す記号及び二次元バーコード12が印刷されたシールを貼付してもよいし、これらをスライドガラスに直接印刷してもよい。さらに、アドレス10を示す情報にプレパラート作製工程において得られたプレパラート4の全枚数を示す情報を付加して、二次元バーコード12を生成してもよい。
【0026】
(診断用データ管理システム)
図5は、WSI作成装置16を含む診断用データ管理システムの構成を示すブロック図である。診断用データ管理システム14は、WSI作成装置16、サーバ18、第1外部端末20、第2外部端末21、表示端末23を備えている。
【0027】
WSI作成装置16は、病院または診療所等の診療機関に備えられ、WSI作成装置16の各部を統括的に制御する制御部22を備えている。制御部22には、プレパラート4を載置するためのステージ24を移動させるステージ制御部26、プレパラート4を観察するための対物レンズ28の駆動制御を行うレンズ駆動部30、CCD等により構成され、対物レンズ28により撮像面上に結像された被写体像を撮像する撮像素子32、プレパラート4の全領域を含む全体画像を撮影するデジタルカメラ34、撮像素子32及びデジタルカメラ34により撮像された画像データを一時的に記憶する画像記憶部36、撮像素子32により撮像された画像データに基づく画像を表示する表示部38、一連の撮影動作を開始するための開始ボタン(不図示)を含む操作部40、インターネット等のネットワークを介してサーバ18に対する画像データの送信等を行う通信部42、画像記憶部36に記憶された複数の画像データをつなぎあわせることにより一つの画像の画像データを生成する画像合成部44が接続されている。ここで、対物レンズ28は、少なくとも基本倍率(例えば対物10倍)で切片3(図4参照)を観察する対物レンズ28を備えている。
【0028】
サーバ18は制御部46を備え、制御部46にはインターネット等のネットワークを介してWSI作成装置16、第1外部端末20、第2外部端末21及び表示端末23との間で画像データやデジタルトレースデータ等の送受信を行う通信部48、画像データ及びデジタルトレースデータ等を記憶するデータベース50、病理医師が観察した順序をログデータとして記憶する情報記憶部52を備えている。
【0029】
第1外部端末20は、病理医師が病理診断を行う検査室に備えられている。第1外部端末20は制御部54を備え、制御部54には、インターネット等のネットワークを介してサーバ18から画像データを受信し、サーバ18との間でデジタルトレースデータ等の送受信を行う通信部56、画像データに基づく画像やトレースデータに基づく軌跡等を表示する表示部58、表示部58に表示される表示範囲を移動させたり、表示倍率の変更を行う表示範囲切替ボタン(不図示)、表示部58に表示された画像の病変部に対してデジタルトレーシングを行うためのマウス(不図示)、特定のアドレスを有するプレパラートの画像の観察を開始するための観察開始ボタン(不図示)及び観察を終了するための観察終了ボタン(不図示)等を含む等を含む操作部60が接続されている。ここで、表示部58は、全体で約5000万画素の解像度を有し、約20インチのディスプレイを縦に2〜3枚、横に3〜4枚並べて配置させて構成されている。なお、同様の表示サイズが得られる場合には、1枚のディスプレイにより構成してもよい。
【0030】
また、第2外部端末21は、第1外部端末20を用いる病理医師とは別の病理医師である他の病理医師が病理診断を行う検査室に備えられている。第2外部端末21は制御部63を備え、制御部63には、インターネット等のネットワークを介してサーバ18から画像データを受信し、サーバ18との間でデジタルトレースデータ等の送受信を行う通信部65、画像データに基づく画像やトレースデータに基づく軌跡等を表示する表示部67、表示部67に表示された画像の病変部に対してデジタルトレーシングを行うためのマウス(不図示)を含む操作部69が接続されている。なお、表示部67の表示サイズは特に限定されず、表示部58と同様に全体で約5000万画素を有するディスプレイであってもよいし、例えば20インチ程度のディスプレイ1枚により構成される約500万画素を有するディスプレイであってもよい。
【0031】
また、表示端末23は、病院または診療所等の診療機関に備えられ、病理医師に対して検査を依頼した医師が電子カルテに記憶されているデータに基づく情報等を表示させる端末である。表示端末23は制御部71を備え、制御部71には、サーバ18から画像データ、デジタルトレースデータ及びログデータを受信する通信部73、画像データ及びデジタルトレースデータに基づく2次元デジタルトレースデータ及び3次元デジタルトレースデータや画像データ、デジタルトレースデータ及びログデータに基づく動画像データを生成する画像処理部75、2次元デジタルトレースデータ、3次元デジタルトレースデータ及び動画像データに基づく画像を表示する表示部77、これらの画像の表示部77への表示指示等を行う操作部79が接続されている。
【0032】
次に、図6に示すフローチャートを参照して実施の形態に係る診断用データ管理システムのWSI作成装置16におけるプレパラートの画像データ作成処理について説明する。まず、上述のように作製されたプレパラート4のうちの、特定のアドレスを有する1枚のプレパラート4がステージ24上の所定の位置にセットされ(ステップS1)、開始ボタンが操作されると、制御部22は、撮影処理を開始する(ステップS2)。即ち、制御部22は、ステージ制御部26を制御し、プレパラート4がデジタルカメラ34の直下に位置するようにステージ24を移動させる。
【0033】
次に、制御部22は、デジタルカメラ34によりプレパラート4の全領域を含む準備用画像を撮影させ、準備用画像の準備用画像データを画像記憶部36に記憶させる。そして、制御部22は準備用画像データに基づいてプレパラート4に記載された検体番号及びアドレス10を示す数字または二次元バーコード12から検体番号及びアドレス10を認識する(ステップS3)。また、制御部22は、プレパラート作製工程において1の手術摘出材料から作製されたプレパラート4の全枚数を認識する。なお、制御部22はステージ制御部26を制御してステージ24を移動させることにより、プレパラート4のうち、検体番号及びアドレス10を示す数字または2次元バーコード12が付された領域のみをデジタルカメラ34に撮影させて、検体番号及びアドレス10を認識してもよい。
【0034】
次に、制御部22は、画像記憶部36から準備用画像データを読み出し、画像データに基づいて、プレパラート4(図4参照)において切片3が貼り付けられた領域(以下、標本領域という。)を特定する(ステップS4)。
【0035】
次に、制御部22は、対物レンズ28を用いて基本倍率で切片3の撮影を行う前に予め、標本領域を複数の正方形の格子状の領域(以下、区分領域という。)に区分し、標本領域における各区分領域の位置を認識する。例えば、標本領域の上側縁部の最左端に位置する区分領域の位置を位置「1,1」として認識し、標本領域の上側縁部の最左端の右隣に位置する区分領域の位置を位置「1,2」として認識する。そして、標本領域の下側縁部の最右端に位置する区分領域の位置を位置「M,N」として認識するまで同様の処理を繰り返す。
【0036】
次に、制御部22は、対物レンズ28を用いて基本倍率で切片3を撮影する。まず、制御部22はステージ制御部26を制御し、標本領域において最初に撮影する位置「1,1」の区分領域が対物レンズ28の直下に位置するようにステージ24を移動させ、更にステージ24を垂直方向に移動させて位置「1,1」の区分領域における所定の焦点位置(以下、基準面という。)に焦点を合わせる。次に、位置「1,1」の区分領域について対物10倍の基本倍率で撮影し(ステップS5)、画像データに位置情報を付加して画像記憶部36に記憶させる。同様にして、制御部22は、順次ステージ24を移動させて位置「1,2」から位置「M,N」までの区分領域を基本倍率で撮影し、区分領域の画像の画像データに位置情報を付加して画像記憶部36に記憶させる。
【0037】
次に、制御部22は、画像記憶部36から基本倍率で撮影した各区分領域の画像の画像データを読み出し、画像合成部44において、特定のアドレスのプレパラート4について全ての区分領域をつなぎ合わせた切片3の全体の画像データを生成する(ステップS6)。このとき、画像合成部44は、各区分領域の画像データに付加された位置情報に基づいて各区分領域をつなぎ合わせ、画像記憶部36に記憶させる。
【0038】
ここで、切片3の全体の画像データを記憶させる際に、制御部22は、ステップS3で認識した検体番号、アドレスを示す情報及びプレパラート作製工程において得られたプレパラート4の全枚数の情報を切片3の全体の画像データに付加して画像記憶部36に記憶させる。全体の画像データを生成させると、制御部22は、プレパラート作製工程で得られたプレパラート4のうち、特定のアドレスを有する1枚のプレパラート4の撮影を終了する。
【0039】
次に、ステップS3において認識した検体番号及びアドレスに付加されたプレパラートの全枚数の情報に基づいて、プレパラート作製工程において得られたプレパラート4が全て撮影されたか否かを判定する(ステップS7)。
【0040】
プレパラート作製工程において得られたプレパラートの全てが撮影されていない場合には、ステップS1に示す処理に戻り、他のアドレスを有するプレパラート4の撮影処理を行う。
【0041】
プレパラート作製工程において得られたプレパラート4の全てが撮影された場合には、制御部22は通信部48を介して撮影した全てのプレパラート4についての画像データをインターネット等のネットワークを介してサーバ18に送信し(ステップS8)、図7のフローチャートに示す画像データ作成処理を終了する。
【0042】
このとき、サーバ18は通信部48を介して全てのプレパラート4についての画像データを受信すると、制御部46はデータベース50に受信した画像データを記憶させる。
【0043】
なお、上述のステップS3に示す処理おいては、数字または二次元バーコードを読み取ることによりプレパラート作製工程において得られたプレパラート4の全枚数を認識する構成としたが、操作部40を用いてプレパラート4の全枚数を入力する構成としてもよい。
【0044】
次に、図7に示すフローチャートを参照して実施の形態に係る診断用データ管理システムのデジタルトレースデータ及びログデータの生成処理について説明する。
【0045】
次に、病理医師によるプレパラートの観察が行われる。病理医師は第1外部端末20の操作部60の観察開始ボタンを用いて特定のアドレスのプレパラート4の画像の表示指示を行うと、制御部54は、サーバ18に対して指定されたアドレスの画像データの送信要求を送信する(ステップS11)。
【0046】
サーバ18の制御部46は送信要求を受信すると、通信部48を介して指定されたアドレスの切片3の全体の画像データを第1外部端末20に対して送信させる(ステップS12)。
【0047】
第1外部端末20において指定されたアドレスについての切片3の全体の画像データを受信すると(ステップS13)、制御部54は表示部58に受信した画像データの画像を表示させる(ステップS14)。このとき、制御部54は通信部56を介してサーバ18に対して病理医師が観察した領域の情報であるログデータの記録開始指示を送信する(ステップS15)。
サーバ18においてはログデータの記録開始指示を受信すると、制御部46は受信したログデータの情報記憶部52への記録を開始させる(ステップS16)。
【0048】
ここで、病理医師は操作部60の表示範囲切替ボタンを用いて表示部58に表示させる画像の表示範囲及び表示倍率を変更させることができ、制御部54は、ログデータとして表示部58に表示された領域を示すデータを第1外部端末20からサーバ18に対して送信する。また、ログデータは、ステップS13において受信した特定のアドレスについての切片3の全体の画像データの画像(標本領域)中での座標(たとえば、(x、y)等)を用いて表される。
【0049】
即ち、制御部54はログデータとして、標本領域内での座標を用いて病理医師が観察を行った位置のデータを送信する。また、サーバ18においてはログデータを受信すると、制御部46は受信したログデータを情報記憶部52に記録させる。
【0050】
次に、病理医師は表示部58に表示された画像を観察し、病変部については操作部60のマウス等を用いてデジタルトレーシングを行う。ここで、デジタルトレーシングを行う際に病理医師は例えば良性変化を青色で囲み、悪性変化を紫色で囲むことにより病変部の良性及び悪性を認識可能に入力する。例えば、図8において軌跡64は青色でデジタルトレーシングされた軌跡、軌跡66は紫色でデジタルトレーシングされた軌跡である。
【0051】
なお、表示部58には図8に示す切片3の一部の領域を拡大した画像が表示され、病理医師によるデジタルトレーシングが行われる。また、病理医師が手術により切除した際の面である断端を含む切片3を観察する際に、制御部54は画像認識を行うことにより断端に病変部があると判断した場合には、手術によりすべての癌が取り除かれていない可能性があることを示す警告を表示部58に表示させてもよい。
制御部54は、デジタルトレーシングが行われる毎に通信部56を介してデジタルトレースデータをサーバ18に送信する(ステップS17)。
【0052】
サーバ18は通信部48を介してデジタルトレースデータを受信すると、制御部46はデジタルトレースデータに画像データの検体番号及びアドレスの情報を付加してデータベース50に記憶させる(ステップS18)。
【0053】
ここで、デジタルトレーシングが行われた軌跡を、ステップS13において受信した特定のアドレスについての切片3の全体の画像データの画像(標本領域)中での座標(たとえば、(x、y)等)を用いて表すことにより、デジタルトレースデータとする。また、上述のように病理医師は良性の病変部を青で囲み、悪性の病変部を紫で囲むなど良性の病変部と悪性の病変部とが識別可能となるようにデジタルトレーシングを行うため、制御部46は良性及び悪性の別を示す情報をデジタルトレースデータに付加する。
【0054】
また、第1外部端末20を用いて観察を行う病理医師の他に、第2外部端末21を用いて他の病理医師による観察を行ってもよい。即ち、第1外部端末20と第2外部端末21とを同期させることにより、同一の画像について複数の病理医師が同時に観察を行ってもよい。この場合には、第1外部端末20においては、上述の処理と同様にサーバ18に対してログデータ及びデジタルトレースデータを送信する。
【0055】
第2外部端末21においては、サーバ18から画像データ及びログデータを受信する。ここで、画像データとして第1外部端末20の表示部58に表示されている画像の画像データを受信し、ログデータとしてサーバ18が受信した最新のログデータを受信する。そして、第2外部端末21の制御部63は受信した画像データの画像を表示部67に表示させる。このとき制御部63は、受信したログデータに基づいて表示範囲および表示倍率を決定する。即ち、第2外部端末21の制御部63は、第1外部端末20の表示部58に表示されている画像と同一の画像を第2外部端末21の表示部67に表示させる。
【0056】
また、第1外部端末20においてデジタルトレーシングが行われた場合には、第2外部端末21はサーバ18からデジタルトレースデータを受信し、制御部63は表示部67に表示されている画像に受信したデジタルトレースデータに基づく軌跡を重畳表示させる。
【0057】
また、第2外部端末21においても病理医師は、操作部69のマウス等を用いてデジタルトレーシングを行ってもよい。この場合には、制御部63はデジタルトレーシングが行われる毎に通信部65を介してデジタルトレースデータをサーバ18に送信し、サーバ18においては、制御部46は受信したデジタルトレースデータをデータベース50に記憶させる。さらに、制御部46はデータベース50に記憶させたデジタルトレースデータを通信部48を介して第1外部端末に送信し、第1外部端末20においてはサーバ18に送信されたデジタルトレースデータを受信する。また、第1外部端末20の制御部54は、表示部58に表示されている画像に受信したデジタルトレースデータに基づく軌跡を重畳表示させる。
【0058】
本実施の形態においては、標本領域内での座標を用いてデジタルトレースデータを記憶させるため、観察倍率が変更された場合においても適切なサイズのトレースデータに基づく軌跡を切片3の画像に対して重畳表示させることができる。
【0059】
また、第1外部端末20及び第2外部端末21のそれぞれにマイク及びスピーカを設けることにより、第1外部端末20を用いて画像の観察を行う病理医師と第2外部端末21を用いて画像の観察を行う病理医師との間で表示部58及び67に表示されている同一の画像についての議論を行うことができる。また、第1外部端末20と第2外部端末21とがチャット機能等の文字による通信機能を備える場合には文字による通信機能を用いて議論を行ってもよい。
【0060】
また、第2外部端末21は複数設けられていてもよく、この場合には3人以上の病理医師により同一の画像を観察することができ、また、議論を行うこともできる。
【0061】
病理医師が操作部60の観察終了ボタンを操作すると、制御部54は表示部58に表示されている特定のアドレスのプレパラートの画像の表示を終了する(ステップS19)。次に、第1外部端末20の制御部54は、画像データに付加されたプレパラート作製工程において得られたプレパラートの全枚数の情報に基づいて、データベース50に記憶されている同一の検体番号を有する画像データの画像が全て観察されたか否かを判定する(ステップS20)。
【0062】
同一の検体番号を有する画像データの画像の全てが観察されていない場合には、制御部54は、サーバ18に対して未観察のアドレスの画像データの送信要求を送信する(ステップS21)。
【0063】
送信要求を受信すると、サーバ18の制御部46は、通信部48を介して指定されたアドレスの切片3の全体の画像データを第1外部端末20に対して送信させる(ステップS22)。
【0064】
第1外部端末20においては指定されたアドレスについての切片3の全体の画像データをサーバ18から受信すると(ステップS23)、制御部54は表示部58に受信した画像データの画像を表示させ(ステップS24)、ステップS17に示す処理に戻る。即ち、このとき病理医師は表示部58に表示された画像を観察し、病変部については操作部60のマウス等を用いてデジタルトレーシングを行う。
【0065】
同一の検体番号を有する画像データの画像が全て観察された場合には、制御部22はログデータの記録を終了させるための記録終了指示をサーバ18に送信する(ステップS25)。
【0066】
サーバ18においてはログデータの記録終了指示を受信すると、制御部46はログデータの情報記憶部52への記録を終了させ(ステップS26)、図7に示すデジタルトレースデータ及びログデータの生成処理を終了する。
【0067】
次に、デジタルトレースデータを用いた病理標本の合成処理について説明する。電子カルテに記憶されている病理標本の画像データに基づく画像を表示する際などに、表示端末23の操作部79を用いてサーバ18に対して特定の検体番号についての病理標本の送信要求が送信される。
【0068】
サーバ18は病理標本の送信要求を受信すると、特定の検体番号についての全てのプレパラートの画像データ及びデジタルトレースデータの送信要求を行った表示端末23に対して送信する。
【0069】
表示端末23は、画像データ及びデジタルトレースデータを受信すると、制御部71は画像処理部75に2次元のデジタルトレースデータを生成させる。まず、図9に示すようにスライスA、B、Cについてそれぞれの画像データを合成し、次に、それぞれのスライスに含まれる画像に行われたデジタルトレーシングの軌跡を重畳表示させた画像68,70,72を合成する。例えば、スライスAについての2次元デジタルトレースデータを生成する場合には、A(1,1)〜A(3,3)の画像データを合成することによりスライスAについての2次元画像データを生成し、さらにA(1,1)〜A(3,3)の画像データに対して行われたデジタルトレーシングの軌跡64,66をデジタルトレースデータに基づいて重畳表示させた画像を生成する。
2次元デジタルトレースデータを生成すると、制御部71は表示部77に2次元デジタルトレースデータに基づく画像を表示させる。
【0070】
なお、デジタルトレースデータに病変部の良性及び悪性の別を示す情報が付加されているため、制御部71は良性の病変部(軌跡64で囲まれる領域)を青で示し、悪性の病変部(軌跡66で囲まれる領域)を紫で示すなど、良性の病変部と悪性の病変部とが識別可能となるようにデジタルトレースデータに基づく軌跡を表示させる。
【0071】
さらに、図10に示すように制御部71は、スライスA、B、Cについての画像データ及びデジタルトレースデータまたは2次元デジタルトレースデータに基づいて、画像処理部75に3次元デジタルトレースデータを合成させてもよい。3次元デジタルトレースデータを生成すると、制御部71は表示部77に3次元デジタルトレースデータに基づく画像74を表示させる。
【0072】
本実施の形態においては、標本領域内での座標を用いてデジタルトレースデータを記憶させるため、2次元デジタルトレースデータや3次元デジタルトレースデータを生成する際にリサイズ処理等の再計算処理を行う必要なく、迅速に2次元デジタルトレースデータ及び3次元デジタルトレースデータを生成することができる。
【0073】
なお、サーバ18が画像データに基づいて2次元トレースデータ及び3次元トレースデータを合成する画像合成部を備える場合には、サーバ18において2次元デジタルトレースデータ及び3次元デジタルトレースデータを合成し、表示端末23で表示させてもよい。
【0074】
本実施の形態に係る診断用データ管理システムによれば、病理医師による診断結果を反映させたデータを生成することができる。また、切り出しがランダムに行われると元の手術摘出材料の立体構造を描くことが容易ではなくなるが、本実施の形態においては、体系的に切り出しを行うため、診断用データ管理システムにより生成された画像データ、デジタルトレースデータ及びログデータに基づいて容易に立体構造を描くことができる。さらに、立体構造を描いた画像を容易に電子カルテに添付することができる。
【0075】
従って、2次元デジタルトレースデータ及び3次元デジタルトレースデータに基づく画像を電子カルテに添付することにより患者への説明の際に、患者が病変部を容易に把握することができる。また、本実施の形態に係る診断用データ管理システムにより生成された画像データ、デジタルトレースデータ及びログデータに基づく画像を臨床判断や、放射線画像との対比に用いることができ、特に乳癌や甲状腺癌等の病変部全体、または手術摘出材料全体について切り出しが行われる場合等に立体的に把握することが容易となる。
【0076】
また、本実施の形態に係る診断用データ管理システムにより生成された画像データ、デジタルトレースデータ及びログデータに基づいて、病理医師が観察を行った順序の動画データを生成してもよく、この場合には、病理医師の専門医教育のための教材として使用することができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る診断用データ管理システムは、ログデータを記録するため、病理医師によりプレパラート4の切片3の観察された箇所を確認することができ、病理診断の信頼性を高めることができる。
【0078】
なお、上述の実施の形態においては、マウスを用いてデジタルトレーシングを行う構成としたが、表示部58,67に積層してタッチセンサが配置されている場合には、タッチセンサを用いて病理医師が指やタッチペンでデジタルトレーシングを行う構成としてもよい。また、表示部58,67が特定の波長の光を検出するセンサを備える場合には、特定の波長を有する光が照射された部分にデジタルトレーシングを行う構成としてもよい。
【0079】
また、上述の実施の形態においては、サーバ18において画像データ、デジタルトレースデータ及びログデータを記録し、第1外部端末20においてデジタルトレーシングを行う構成としたが、これらの機能を1台の診断用データ管理装置80が有する構成としてもよい。以下、上述の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付して診断用データ管理装置80について説明する。
【0080】
図11に示すように、診断用データ管理装置80は、制御部82を備え、制御部82には、通信部84、データベース50、情報記憶部52、表示部58、操作部60が接続されている。この診断用データ管理装置80の各構成の機能及び各構成により行われる処理は上述の実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。ここで、制御部82は上述の実施の形態における制御部46及び制御部54が行う処理と同様の処理を有し、通信部84はWSI作成装置16、第2外部端末21及び表示端末23との間で画像データ等のデータ等の送受信を行う。
【0081】
さらに、診断用データ管理装置80は、表示端末23が有する機能を備えていてもよい。即ち、診断用データ管理装置80は、画像データ及びデジタルトレースデータに基づく2次元デジタルトレースデータ及び3次元デジタルトレースデータや画像データ、デジタルトレースデータ及びログデータに基づく動画像データを生成する画像処理部を備え、生成された画像データまたは動画像データに基づく画像を表示部58に表示させてもよい。
【符号の説明】
【0082】
4…プレパラート、14…診断用データ管理システム、16…WSI作成装置、18…サーバ、20…第1外部端末、40…操作部、50…データベース、52…情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11