(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、この種の型枠を用いて覆工コンクリートを形成する工法において、左右のトンネル側壁部及びアーチ形状部へコンクリートを打設する際に、コンクリートがどの高さまで打ち上がっているかを監視する必要がある。つまり、コンクリート打ち上がり高さは施工管理上重要なパラメーターである。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、型枠の周方向に間隔をあけて、言い換えると、所定の高さに圧力センサを配置して、各ポイントの圧力を管理しているだけである。したがって、この技術では、予め決められた各ポイントに対応する高さまでコンクリートが打ち上げられているか否かを検知するだけであり、任意の時間にコンクリートがどの高さまで打ち上げられているかを計測することができない。また、圧力センサの設置個所を増やすことにより打ち上がり高さの検知精度を上げることも考えられるが、この場合、センサのコストや配線施工のコストが増加する。
【0008】
本発明は、このような実状に着目してなされたものであり、簡易な構成でコンクリートの打ち上がり高さを測定可能なコンクリート高さ測定装置及びこれを利用した覆工コンクリートの構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に対して、本発明に係るコンクリート高さ測定装置は、その一態様として、トンネル内周面とこれに相対させた型枠との間の覆工空間に打設されるコンクリートの打ち上がり高さを測定するコンクリート高さ測定装置であって、前記トンネル内周面に沿って前記トンネル内周面に支持されて、互いに電気的に絶縁された一対の電導線と、前記一対の電導線間の静電容量に基づいて前記コンクリートの打ち上がり高さを測定する本体部と、を備える。
【0010】
また、本発明に係るコンクリート高さ測定装置は、別の一態様として、トンネル内周面とこれに相対させた型枠との間の覆工空間に打設されるコンクリートの打ち上がり高さを測定するコンクリート高さ測定装置であって、前記覆工空間のトンネル軸方向の端部を閉塞する妻型枠の内面に沿って上下方向に延在し、前記妻型枠に支持されて、互いに電気的に絶縁された一対の電導線と、前記一対の電導線間の静電容量に基づいて前記コンクリートの打ち上がり高さを測定する本体部と、を備える。
【0011】
また、本発明に係る覆工コンクリートの構築方法は、その一態様として、上記別の一態様のコンクリート高さ測定装置の測定結果を利用して、前記覆工空間にコンクリートを打設して覆工コンクリートを構築する、覆工コンクリート構築方法であって、先行の前記覆工空間のトンネル軸方向の端部を閉塞した前記妻型枠と共に、当該妻型枠に支持されている前記一対の電導線を取り外す工程と、前記先行の覆工空間を形成した前記型枠をトンネル軸方向に移動させて、先行の前記覆工コンクリートのトンネル軸方向の一端面に隣接する後続の前記覆工空間を形成する工程と、前記後続の覆工空間における前記先行の覆工コンクリート側とは反対側の端部を、前記妻型枠により閉塞すると共に当該妻型枠の内面に前記一対の電導線を取付ける工程と、前記後続の覆工空間にコンクリートを打設して後続の覆工コンクリートを構築する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリート高さ測定装置によると、トンネル内周面や妻型枠の内面に沿って上下方向に延在し、トンネル内周面や妻型枠に支持されて、互いに電気的に絶縁された一対の電導線間の静電容量に基づいて、コンクリートの打ち上がり高さを測定する構成であるため、コンクリートの打ち上がり高さが増すにつれて静電容量が変化することを利用してコンクリートの打ち上がり高さを測定することができる。また、コンクリートの打ち上がり高さを測定するためのセンサをトンネル内周面や妻型枠の内面に連続して配置して測定することができる。このため、任意の時間にコンクリートがどの高さまで打ち上げられているかを測定することができる。つまり、連続的に打ち上がり高さを検知することができる。また、コンクリートの打ち上がり高さを測定するためのセンサは互いに電気的に絶縁された一対の電導線をトンネル内周面や妻型枠の内面に沿って延設するだけであるため、圧力センサを複数備えた従来技術と比較して、センサのコストや配線施工のコストの抑制することができる。このようにして、簡易な構成でコンクリートの打ち上がり高さを測定可能なコンクリート高さ測定装置を提供することができる。
【0013】
また、一対の電導線はトンネル内周面や妻型枠に設けられているため、圧力センサを型枠の覆工空間側に設けた従来技術と比較して、覆工コンクリートの内周面の表面仕上がりを向上させることができる。
【0014】
さらに、妻型枠の内面(打設されるコンクリート側の面)に一対の電導線を設ける場合は、覆工コンクリート構築後、妻型枠を脱型する際に一対の電導線を取り外すことができるため、一対の電導線を後続の覆工コンクリート等の構築用に再利用することができる。
【0015】
本発明に係る覆工コンクリートの構築方法の上記一態様によると、上記別の一態様のコンクリート高さ測定装置の測定結果を利用して、覆工コンクリートの構築を行うことができるため、任意の時間にコンクリートがどの高さまで打ち上げられているかを監視し、緻密な施工管理を行うことができ、ひいては、覆工コンクリートの高品質化を実現することができる。
また、先行の覆工コンクリートを構築後、その先行の覆工コンクリートから妻型枠を取り外すと共に、この妻型枠に支持されている一対の電導線を取り外す工程を含むため、先行(既設)の覆工コンクリートにコンクリートを打ち足して後続の覆工コンクリートを構築する場合、上記取り外した一対の電導線を後続の覆工空間の端部を閉塞する妻型枠の内面に取付けて再利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明に係るコンクリート高さ測定装置の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるコンクリート高さ測定装置100の概略構成を示す図であり、山岳トンネルの覆工コンクリートの構築に適用した場合を示している。尚、
図1は、切羽側(妻側)から見たトンネルの横断面図でもある。
図2は、
図1のA−A断面図である。この
図2において、後述するガントリー車7は図の簡略化のため省略している。
図3は、
図2に示すB矢視方向から見た型枠4の平面図である。尚、本実施形態において、トンネル覆工の進行方向とは、トンネル軸方向に沿って、坑口側(ラップ側)から切羽側(妻側)に向かう方向を意味する。
【0018】
本実施形態のトンネルは山岳トンネルであり、発破掘削等により形成されたトンネル内周面1には、吹き付けコンクリート2が吹き付けられ一次支保され、その上に防水シート3(後述の
図9参照)が内貼りされている。そして、このトンネル内周面1(防水シート3)に相対させてアーチ状の外周面を有する型枠4をセットし、トンネル内周面1(防水シート3)と型枠4との間に覆工コンクリート打設用の覆工空間Sを形成している。型枠4のセットには、トンネル底面5にトンネル軸方向に沿って敷設されたレール6上を移動可能なガントリー車7が用いられる。
【0019】
コンクリート高さ測定装置100は、トンネル内周面1とこれに相対させた型枠4との間の覆工空間Sに打設されるコンクリートの打ち上がり高さを測定するものであり、一対の電導線101a、101bと本体部102と備えて構成される。
【0020】
前記一対の電導線101a、101bは、コンクリートの打ち上げ高さを測定するためのセンサとなるものであり、互いに電気的に絶縁されて延設される。
本実施形態において、一対の電導線101a、101bは、トンネルの左右(トンネル幅方向)それぞれに設けられている。以下において、「左側の一対の電導線101a、101b」と「右側の一対の電導線101a、101b」とを区別する必要がない場合は、それぞれ単に「一対の電導線101a、101b」と言う。
【0021】
一対の電導線101a、101bは、
図1に示すように、それぞれの一端が本体部102に接続され、それぞれの他端が後述のトンネル冠部Scに位置している。この一対の電導線101a、101bの他端も互いに電気的に絶縁されている。一方の電導線101aは、例えば、外径2mmの導電性のワイヤーロープであり、その外周には後述の
図4に示すように電気的絶縁性材料としてビニール101c(外径4mm)が被覆されており、これにより他方の電導線101bと電気的に絶縁されている。また、他方の電導線101bは、例えば、外径4mmの導電性のワイヤーロープでありアース線となる。この他方の電導線101bの外周と一方の電導線101aのビニール101cの外周とが当接するようにして適宜ビニールテープ等により、一方の電導線101bと共に束ねられている。このようにして、コンクリートの打ち上げ高さを測定するためのセンサを一対の電導線101a、101b及び被覆用のビニール101cにより形成することにより、センサを敷設経路の形状に合わせて容易に形状変更できる。また、他方の電導線101bを電気的絶縁性材料(101c)で被覆された一方の電導線101aと共に束ねることにより、一対の電導線101a、101b間の電気的絶縁を容易に実現できる。そして、この束ねられた一対の電導線101a、101bを利用することにより、一方の電導線101aと他方の電導線101bとの間の距離を容易に一定にすることができる。なお、一対の電導線101a,101bの敷設箇所及び敷設方法については、後に詳述する。
【0022】
前記本体部102は、一対の電導線101a,101b間の静電容量に基づいて、覆工空間Sに打設されるコンクリートの打ち上がり高さを測定するものであり、例えば、トンネル底面5に設置されている。この本体部102には、トンネルの左側の一対の電導線101a,101bの一端がそれぞれ接続されると共に、トンネルの右側の一対の電導線101a,101bの一端がそれぞれ接続されている。これにより、トンネルの左右それぞれのコンクリートの打ち上がり高さを個別に測定できるように構成されている。
図1において、右側の一対の電導線101a,101bと本体部102間の配線は図の簡略化のため省略している。なお、本体部102は、トンネル底面5に限らず、適宜の場所に設置することができ、例えば、ガントリー車7の上に設置してもよい。また、打ち上がり高さの測定原理については、後に詳述する。
【0023】
前記型枠4は、「覆工セントル」とも呼ばれ、
図2、及び、
図2に示すB矢視方向から見た型枠4の平面図である
図3に示すように、トンネル軸方向に所定幅(例えば1.5m)を有する型枠部材をトンネル軸方向に複数(例えば7個)連結し、1スパン(例えば10.5m)として構成される。尚、各型枠部材は、
図1に示すように周方向に適宜分割されており、組み合わせて使用される。
図3では、図の簡略化のため、型枠4の周方向の分割境界については、図示省略している。
【0024】
図2及び3に示すように、トンネル軸方向に例えば7個の型枠部材4A〜4Gにより1スパンの型枠4が構成され、トンネル内周面1と1スパンの型枠4(4A〜4G)との間に覆工コンクリート打設用の覆工空間Sが形成される。そして、この覆工空間Sは、
図1に示すように、左右のトンネル側壁部(トンネル側壁部の覆工空間)Sa、Saと、これに続く左右のアーチ形状部(アーチ形状部の覆工空間)Sb、Sbと、中央のトンネル冠部(トンネル冠部の覆工空間)Scと、に大別することができる。覆工空間Sのうち、左右のトンネル側壁部Sa、Sa及びアーチ形状部Sb、Sbへのコンクリートの打設は、ガントリー車7に装備されているコンクリート打設管(図示せず)を、左右の型枠4のトンネル軸方向中央で適宜高さにそれぞれ設けられた検査窓(図示せず)から覆工空間S(Sa、Sb)に挿入して、コンクリートを圧送することにより行われる。その後、型枠4のトンネル軸方向中央のトンネル冠部Scに対応する位置に適宜形成された打設孔にコンクリート打設管(図示せず)を接続してコンクリートを圧送し、トンネル冠部Scへのコンクリート打設が行われる。打設するコンクリートとしては、流動性の高い例えば中流動コンクリートを用いてもよい。これにより、覆工空間S内へのコンクリートの充填性を向上させることができると共に、覆工コンクリートの表面の仕上がりを向上させることができる。なお、上記検査窓及び打設孔の位置及び個数は、適宜決めることができる。
【0025】
また、
図2に示すように、覆工空間Sのトンネル軸方向の坑口側端部(ラップ側)は、既設(先行)覆工コンクリート8により塞がれている。他方、覆工空間S(Sa,Sb,Sc)のトンネル軸方向の切羽側端部(妻側)は、閉塞用の妻型枠9により塞がれている。この妻型枠9は、「矢板」とも呼ばれ、周方向に適宜分割されて組み合わせて使用され、例えば、厚さ25〜30mm程度の木製のものである。なお、
図1及び
図3では、図の簡略化のため、妻型枠9の周方向の分割境界については、図示省略している。
【0026】
前記ガントリー車7は、トンネル軸方向に走行可能な門型の移動台車であり、トンネル軸方向に所定の長さを有し、
図1に示すように、その前後端(トンネル軸方向端)の脚部71の下端には、レール6上を移動する自走装置72が設けられている。また、ガントリー車7には、ジャッキ73〜76が取付けられている。周方向に分割された各型枠部材4は、これら各ジャッキ73〜76を介して、ガントリー車7に連結固定されている。
また、ガントリー車7のトンネル軸方向の中間に位置する脚部71には、それぞれ下端に補助ジャッキ77(後述の
図6参照)が設けられている。この補助ジャッキ77により、ガントリー車7の停止時にガントリー車7の移動を制限する。また、ガントリー車7の断面門型形状の内方には、トンネル軸方向に作業車両が容易に通過できるように、内部空間70が形成されている。また、ガントリー車7には、覆工用のコンクリートを圧送するための配管(図示せず)が設けられており、配管の先端部は型枠4に設けられた検査窓や打設孔(図示せず)に案内されている。
【0027】
次に、本実施形態のコンクリート高さ測定装置100における一対の電導線101a,101bの敷設箇所、固定(敷設)方法について、
図1〜
図4を参照して詳述する。
本実施形態において、一対の電導線101a,101bは、覆工空間Sのトンネル軸方向の端部、つまり、前述の切羽側端部を閉塞する妻型枠9の内面(覆工空間S側の面)に沿ってトンネルの上下方向に延在し、妻型枠9に支持されている。
【0028】
具体的には、
図2のC部拡大図である
図4に示すように、コ字状の針101dの背部と妻型枠9との間に、一体に束ねられた一対の電導線101a,101bを位置させた状態で、コ字状の針101dをタッカー等により妻型枠9に打ち付ける。これを、延設方向に適宜の間隔で複数個所行うことで、一対の電導線101a,101bは妻型枠9の内面に固定支持される。これにより、一対の電導線101a,101bは、一方の電導線101aと他方の電導線101bとの間の距離が全敷設経路にわたって略一定となるようにして敷設される。言い換えると、一対の電導線101a,101bは互いに並行に延設される。
【0029】
また、本体部102に接続される一対の電導線101a、101bそれぞれの一端側は、妻型枠9をトンネル軸方向に貫通する貫通孔を挿通して覆工空間Sの外方に引き出され、そして、
図1に示すように、トンネル中心側に引き廻されてトンネル底面5に設置された本体部102に接続される。妻型枠9の上記貫通孔は、覆工空間Sの足元、例えば、トンネル底面5から60cmの位置に形成される。この貫通孔の形成位置(言い換えると、一対の電導線101a、101bの覆工空間Sへの挿入位置)は、これに限らず適宜定めることができる。貫通孔の貫通方向は、トンネル軸方向に限らず、トンネル径方向であってもよい。この場合、貫通孔は型枠4に形成される。また、一対の電導線101a、101bの他端側は、前述したようにトンネル冠部Scに位置する。なお、一対の電導線101a、101bのうち妻型枠9と本体部102の引出し配線部101e(
図1参照)に水等が付くと測定精度が低下するため、例えば、ゴムホース等で防護するとよい。
【0030】
ここで、トンネルの上下方向に延在する一対の電導線101a、101bの敷設経路は、例えば、
図1に示すように、トンネル内周面1と並行になるように設定されている。この敷設経路に沿った一対の電導線101a、101bの各ポイントでの、前述した一対の電導線101a、101bの挿入位置からの経路長は、後述するように静電容量と比例関係にある。
【0031】
次に、上記ように敷設された一対の電導線101a,101bを用いた打ち上がり高さの測定方法の一例を簡単に説明する。
【0032】
覆工空間S内にコンクリートが打設されて、コンクリートが一対の電導線101a,101bの周囲に満たされると、一対の電導線101a,101b間にコンクリートを電解質とするコンデンサが形成される。そして、このコンデンサの静電容量は、トンネル底面5からのコンクリートの打ち上がり高さが増すにつれて大きくなる。ここで、一対の電導線101a,101b間に所定電圧を印加し、一定時間経過後の一対の電導線101a,101b間の電圧を測定し、この測定した電圧、印加電圧及び経過時間等により上記コンデンサの静電容量を算出することができることが知られている。そして、この静電容量は、一対の電導線101a,101bのうちコンクリートに浸っている部分の長さ(つまり、経路長)に比例して大きくなる。また、一対の電導線101a,101bの敷設経路は予め定められているため、この敷設経路の各ポイントにおける経路長と、その経路長に対応するトンネル底面5からの高さとの関係は予め分かっている。そのため、静電容量、経路長及びその経路長に対応するトンネル底面5からの高さの対応関係を関数やデータ等により、本体部102に設定しておくことができる。したがって、静電容量が算出できれば、その算出した静電容量と、上記静電容量、経路長及び高さの対応関係とに基づいて、コンクリートのトンネル底面5からの打ち上がり高さを測定することができる。
なお、上記測定方法は一例を示したものであり、一対の電導線間の静電容量を測定し、その測定結果に基づいてコンクリートの打ち上がり高さを測定するものであればよい。
【0033】
次に、本実施形態における覆工コンクリートの構築方法を、
図1〜
図3及び
図5を参照して簡単に説明する。以下では、既に先行の覆工コンクリートが構築されているものとして説明する。なお、下記に説明する覆工コンクリートの構築方法は、本発明に係る覆工コンクリートの構築方法の一実施形態の説明でもある。
【0034】
先行の覆工コンクリート構築後、先行の覆工空間Sのトンネル軸方向の端部を閉塞した妻型枠9を取り外すと共に、この妻型枠9に支持されている一対の電導線101a,101bを取り外す。この工程が、本発明に係る覆工コンクリートの構築方法の「一対の電導線を取り外す工程」に相当する。
【0035】
次に、先行の覆工空間Sを形成した型枠4をトンネル軸方向に移動させて、先行(既設)の覆工コンクリート8(
図2及び
図3参照)のトンネル軸方向の一端面に隣接する後続の覆工空間Sを形成する。この工程が、本発明に係る覆工コンクリートの構築方法の「後続の覆工空間を形成する工程」に相当する。
【0036】
次に、後続覆工空間Sにおける先行の覆工コンクリート側とは反対側の端部(切羽側端部)を妻型枠9により閉塞すると共に、この妻型枠9の内面に、例えば、先行の覆工コンクリートから取り外された上記一対の電導線101a,101bを取付ける。この工程が、本発明に係る覆工コンクリートの構築方法の「一対の電導線を取付ける工程」に相当する。
【0037】
そして、この覆工空間Sのうち、左右のトンネル側壁部Sa、Sa及びアーチ形状部Sb、Sbへのコンクリートの打設は、例えば、左右の型枠4にそれぞれ設けられた検査窓(図示省略)からコンクリートを左右交互に流し込んで、コンクリートの層を左右交互に積み重ねて打設する。具体的には、例えば、左側の覆工空間S(Sa、Sb)へコンクリートを打設し、コンクリート高さ測定装置100により測定した左側の覆工空間S(Sa、Sb)へのコンクリートの打ち上がり高さの計測結果(
図5の実線)をモニタリングして、所定の高さまで打ち上がったら左側へのコンクリート打設を停止する。そして、検査窓(図示省略)から作業員により棒状バイブレータを打設されたコンクリートに挿入して振動を与えてコンクリートの締固めをする。そして、左側の締め固め中に、右側へのコンクリート打設を開始して、計測結果(
図5の破線)をモニタリングして、所定の高さまで打ち上がったら右側へのコンクリート打設を停止してコンクリートの締固めをする。この左右交互の打設を繰り返して、左右のトンネル側壁部Sa、Sa及びアーチ形状部Sb、Sbへのコンクリートの打設が完了する。
その後、型枠4のトンネル冠部Scに対応する位置に適宜形成された打設孔(図示省略)にコンクリート打設管を接続してコンクリートを圧送し、トンネル冠部Scへのコンクリート打設が行われる。このように、後続覆工空間Sにコンクリートを打設して後続覆工コンクリートを構築する。これらの工程が、本発明に係る覆工コンクリートの構築方法の「後続の覆工コンクリートを構築する工程」に相当する。
そして、例えば、後続の覆工コンクリートを構築後、この後続覆工コンクリートを既設(先行)の覆工コンクリートとして、上記「一対の電導線を取り外す工程」、「後続の覆工空間を形成する工程」、「一対の電導線を取付ける工程」、「後続の覆工コンクリートを構築する工程」を繰り返して、トンネル覆工の進行方向に向かって、覆工コンクリートを順次構築する。
【0038】
かかる本実施形態によるコンクリート高さ測定装置100によれば、妻型枠9の内面に沿って上下方向に延在し、妻型枠に支持されて、互いに電気的に絶縁された一対の電導線101a,101b間の静電容量に基づいて、コンクリートの打ち上がり高さを測定する構成であるため、コンクリートの打ち上がり高さが増すにつれて静電容量が変化することを利用してコンクリートの打ち上がり高さを測定することができる。また、コンクリートの打ち上がり高さを測定するためのセンサを妻型枠の内面に連続して配置して測定することができる。このため、任意の時間にコンクリートがどの高さまで打ち上げられているかを測定することができる。つまり、連続的に打ち上がり高さを検知することができる。
【0039】
また、コンクリートの打ち上がり高さを測定するためのセンサは互いに電気的に絶縁された一対の電導線101a,101bを妻型枠9の内面に沿って延設するだけであるため、圧力センサを複数備えた従来技術と比較して、センサのコストや配線施工のコストの低減することができる。このようにして、簡易な構成でコンクリートの打ち上がり高さを測定可能なコンクリート高さ測定装置を提供することができる。
【0040】
また、覆工コンクリートの露出面(内周面)側に圧力センサを配置する従来技術においては、内周面の表面仕上がりの低下、ひいては覆工コンクリートの品質低下を招くおそれがあるところ、本実施形態におけるコンクリート高さ測定装置100においては、一対の電導線101a,101bは妻型枠9に設けられ、センサ(一対の電導線101a,101b)が覆工コンクリートの内周面(仕上がり面)に露出しないので、覆工コンクリートの内周面の表面仕上がりを向上させることができる。
【0041】
また、覆工コンクリート構築後、妻型枠9を脱型する際に一対の電導線101a,101bを取り外すことができ、一対の電導線101a,101bを後続の覆工コンクリート等の構築用に再利用することができるため、センサのコストをさらに低減することができる。
【0042】
また、一対の電導線101a,101bは互いに並行に延設される構成であるため、静電容量、経路長及び高さの対応関係の関数やデータを容易に構築することができる。
【0043】
そして、本実施形態による覆工コンクリートの構築方法によると、上記コンクリート高さ測定装置100の測定結果を利用して、覆工コンクリートの構築を行うことができるため、任意の時間にコンクリートがどの高さまで打ち上げられているかを連続的に検知して監視し、緻密な施工管理を行うことができ、ひいては、覆工コンクリートの高品質化を実現することができる。
また、先行の覆工コンクリートを構築後、その先行の覆工コンクリートから妻型枠9を取り外すと共に、この妻型枠に支持されている一対の電導線101a,101bを取り外す工程を含むため、この取り外した一対の電導線を後続の覆工空間の端部を閉塞する妻型枠の内面に取付けて再利用することができる。
【0044】
図6は、本発明の第2実施形態によるコンクリート高さ測定装置100の概略構成を示す。また、
図6は、覆工空間のトンネル軸方向中央におけるトンネルの横断面図でもある。
図7は、
図6のD−D断面図である。この
図7において、ガントリー車7は図の簡略化のため省略している。
図8は、
図7に示すE矢視方向から見た型枠4の平面図である。
なお、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。また、コンクリートの打ち上がり高さの測定方法については第1実施形態と同じであるため説明を省略する。そして、覆工コンクリートの構築方法については、前述した「一対の電導線を取り外す工程」がなく、後続の覆工コンクリート構築用に新たな一対の電導線を用意すること以外は第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0045】
本実施形態における一対の電導線101a,101bは、トンネル内周面1(具体的には、後述の防水シート3の覆工空間S側の面)に沿って、上下方向に延在し、トンネル内周面(防水シート3)に支持されている。
【0046】
ここで、
図7のF部拡大図である
図9に示すように、トンネル内周面1には、前述したように吹き付けコンクリート2が吹き付けられ一次支保され、その上に防水用のシート3が内貼りされている。この防水シート3は、防水シート部3aと不織布部3bとが一体に形成されたものであり、防水シート部3a側が覆工空間S側になるように内貼りされている。したがって、一対の電導線101a,101bは、この防水シート3の覆工空間S側の面に沿って延設されている。防水シート3への一対の電導線101a,101bの取付けは、例えば、
図9に示すように、防水シート3の防水性を損ねることがない様にビニールテープ101d’等により行われる。
【0047】
次に、本実施形態における一対の電導線101a,101bの敷設経路について、具体的に説明する。
【0048】
本実施形態の一対の電導線101a,101bは、例えば、覆工空間Sを形成するトンネル内周面1のトンネル軸方向中央において、トンネル冠部Scから覆工空間Sの足元(例えば、トンネル底面5から60cmの位置)まで防水シート3の覆工空間S側の面に沿って延設され、その後、
図8に示すように、トンネル軸方向に防水シート3の覆工空間S側の面に沿って、妻型枠9側に横引き敷設される。この横引きされた横引き配線部101fの一端側は、第1実施形態と同様に、妻型枠9をトンネル軸方向に貫通する貫通孔を挿通して覆工空間Sの外方に引き出され、そして、
図8に示すように、トンネル中心側に引き廻されて本体部102に接続される。
なお、コンクリート打設時に、横引き配線部101fの周囲にもコンクリートが満たされて、静電容量が変化する。この横引き配線部101fによる静電容量の増加分を考慮して、静電容量、経路長及びトンネル底面5からの高さの対応関係の関数やデータ等を作成して本体部102に設定することにより、コンクリートの打ち上がり高さを測定できるように構成されている。また、貫通孔の貫通方向は、トンネル軸方向に限らず、トンネル径方向であってもよい。この場合、貫通孔は型枠4に形成される。具体的には、例えばトンネル軸方向中央において、型枠4の前述した覆工空間Sの足元に対応する位置に、トンネル中心側に向かって貫通孔を設けて、一対の電導線101a,101bの一端をトンネル中心側に引き出すようにする。これにより、横引き配線部101fを設けることなく一対の電導線101a,101bを敷設することができる。
【0049】
本実施形態のコンクリート高さ測定装置100よれば、第1実施形態と同様に、任意の時間にコンクリートがどの高さまで打ち上げられているかを測定することができる。また、圧力センサを複数備えた従来技術と比較して、センサのコストや配線施工のコストの抑制することができる。そして、一対の電導線101a,101bが覆工コンクリートの内周面(仕上がり面)に露出しないので、覆工コンクリートの内周面の表面仕上がりを向上させることができる。
【0050】
ところで、例えば、前述したように、左右のトンネル側壁部Sa、Sa及びアーチ形状部Sb、Sbへ交互にコンクリートを打設する場合において、一方のトンネル側壁部Sa及びアーチ形状部Sbにおける打設停止から次の打設までの空き時間が長いと、前に打設されたコンクリート(下層コンクリート)と後に打設されたコンクリート(上層コンクリート)が一体化しなという「コールドジョイント」と呼ばれる状態となってしまう。したがって、コンクリートを打ち重ねるのに適切な時間間隔をすぎるとコールドジョイントの状態となるため、打設の空き時間(打ち重ねの時間間隔)の管理も施工管理上、重要なパラメーターである。
【0051】
上記第1及び第2実施形態において、本体部102は、単に、打ち上がり高さを計測するものとして説明したが、上記打設の空き時間もモニタリング可能に構成してもよい。
例えば、本体部102は、例えば、1min以内での打ち上がり高さの増加量が閾値以下となった時刻を打設停止時刻と判定して、この停止時刻からの打設の空き時間をモニタリングできるようにする。そして、本体部102は、空き時間の上限として予め適切に定めた時間(例えば、60min)内での、打ち上がり高さの増加量が閾値以下の場合に、警報信号を出力するように構成する。これにより、コールドジョイントを防止することができる。
【0052】
なお、上記第1及び第2実施形態において、コンクリートの締固めは、作業員が棒状のバイブレータを検査窓からコンクリートに直接挿入して行うものとして説明したが、これに限らず、型枠4の内側にバイブレータを、周方向及びトンネル軸方向に離間して複数個所取付け、これら複数のバイブレータにより締固めを行うように構成してもよい。この場合、コンクリート高さ測定装置100の測定結果に基づいて、バイブレータの作動位置を切り替えるように構成するとよい。これにより、コンクリートの打ち上がり高さに応じて作動させるバイブレータを切り替え運転することができ、コンクリートの締め固め工程を緻密に管理することができ、ひいては、覆工コンクリートの高品質化を図ることが可能な覆工コンクリートの構築方法を提供することができる。
【0053】
また、上記第1及び第2実施形態において、一対の電導線101a,101bはトンネルの左右それぞれに設ける場合で説明したが、これに限らず、一方側だけに設けるようにしてもよい。一方側の覆工空間Sa、Sbと他方側の覆工空間Sa、Sbの体積は略同じであるため、一方側の打ち上がり高さの測定結果より各層の打設に要する打設時間が分かれば、その打設時間と同じ時間だけ、他方側の各層へコンクリートを打設すればよい。
【0054】
また、本発明に係る覆工コンクリートの構築方法は、上記実施形態で説明した構成に限らず、単に、上記第1実施形態、第2実施形態及びそれらの変形例のコンクリート高さ測定装置100の測定結果を利用して、覆工空間にコンクリートを打設して覆工コンクリートを構築する構成であってもよい。これにより、任意の時間にコンクリートがどの高さまで打ち上げられているかを連続的に検知して監視し、緻密な施工管理を行うことができるという共通の作用効果を奏することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。