特許第6130737号(P6130737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130737
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】燃焼器および燃焼器の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/20 20060101AFI20170508BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20170508BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20170508BHJP
   F02C 7/266 20060101ALI20170508BHJP
   F02C 9/00 20060101ALI20170508BHJP
   F02C 9/32 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   F23R3/20
   F23R3/00 D
   F23R3/00 E
   F23R3/28 B
   F23R3/28 D
   F02C7/266
   F02C9/00 B
   F02C9/32
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-113594(P2013-113594)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-231966(P2014-231966A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松原 慶典
(72)【発明者】
【氏名】三浦 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】百々 聡
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5367869(US,A)
【文献】 特開2012−117535(JP,A)
【文献】 特開昭62−105016(JP,A)
【文献】 特開2009−36197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F02C 7/00, 9/00
F23R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に燃料と空気を供給するバーナを備えた燃焼器であって、
レーザ光を発射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から発射されるレーザ光を導く光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルにより導かれたレーザ光を前記燃焼室内に位置する焦点に集光させる光学系とを有するレーザ燃焼支援装置と、
前記焦点に向かって燃料を噴射する冷却用燃料流路とを備え、
前記光学系が前記冷却用燃料流路内に配置されていることを特徴とする燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼器であって、
前記バーナは、前記燃焼室に空気および燃料を供給する複数の空気孔が設けられた空気孔プレートを備え、
前記空気孔はバーナ中心軸に対して周方向に傾斜した傾斜角を有することを特徴とする燃焼器。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼器であって、
前記バーナは、燃料と空気を混合して前記燃焼室に供給する予混合路と、前記予混合路に燃料を供給する燃料流路と、前記燃料流路の周囲に位置し空気に旋回をかけて前記予混合路に供給する旋回器とを備えた燃焼器において、前記バーナの燃料流路内に組み込まれたレーザ燃焼支援装置の集光光学系が燃料流により冷却されることを特徴とする燃焼器。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の燃焼器であって、
前記冷却用燃料流路が前記バーナの中心軸上に沿って配置され、
前記光学系の焦点が前記バーナの中心軸上に位置することを特徴とする燃焼器。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の燃焼器であって、
前記光学系の温度を測定する温度センサと、
前記冷却用燃料流路を流下する冷却用燃料の流量を調整する冷却用燃料流量調整弁と、
前記温度センサからの測定信号を受信し、前記冷却用燃料流量調整弁の開度を制御する信号を送信できる燃料流量制御装置とを備え、
前記燃料流量制御装置が、前記光学系の温度を前記光学系の耐熱温度よりも小さい任意の目標温度となるように、前記冷却用燃料流量調整弁の開度を制御することを特徴とする燃焼器。
【請求項6】
請求項5に記載の燃焼器において、
該燃焼器の燃焼状態に応じて前記目標温度を設定する手段を備えたことを特徴とする燃焼器。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の燃焼器であって、
バーナを複数個組み合わせて構成されるマルチバーナを備え、
前記マルチバーナを構成するバーナのうち一部もしくは全てのバーナが、前記レーザ燃焼支援装置の前記光学系が配置された前記冷却用燃料流路を備えたことを特徴とする燃焼器。
【請求項8】
燃焼室に燃料と空気を供給するバーナと、
レーザ光を発射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から発射されるレーザ光を導く光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルにより導かれたレーザ光を前記燃焼室内に位置する焦点に集光させる光学系とを有するレーザ燃焼支援装置と、
前記焦点に向かって燃料を噴射する冷却用燃料流路とを備え、
前記光学系が前記冷却用燃料流路内に配置された燃焼器の運転方法であって、
前記光学系の温度が耐熱温度以上の温度とならないように、前記冷却用燃料流路に供給する冷却用燃料の流量を制御することを特徴とする燃焼器の運転方法。
【請求項9】
請求項8に記載の運転方法であって、
燃焼器の燃焼状態に応じて前記光学系の温度を変化させることを特徴とする燃焼器の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼支援装置を備えた燃焼器、およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護の観点からガスタービンにはNOx排出量のさらなる低減が求められている。ガスタービン燃焼器のNOx排出量低減のための一方策として、予混合燃焼器があげられるが、この場合、火炎が予混合器内部に入り込み燃焼器を焼損させる逆火現象が懸念される。
【0003】
特許文献1には、燃焼室に燃料を供給する燃料ノズルと、この燃料ノズルの下流側に位置し、空気を供給する空気孔とを多数備え、燃料ノズルの噴出孔と空気孔とを同軸上に配置した燃料燃焼用ノズルから構成される燃焼器が開示されている。
【0004】
特許文献2には、機関の燃焼室内にレーザを発振するレーザ発振器と、該レーザ発振器の発振制御を行う発振制御装置とを具備し、上記燃焼室内に複数回のレーザ発振を行って機関の点火を行うレーザ点火装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−148734号公報
【特許文献2】特開2009−127584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスタービンは、着火から定格負荷まで幅広い運転条件を安定に運転させるとともに、NOx排出量の低減が必要である。特許文献1ではバーナを複数配置したマルチバーナの構成や燃料ノズルによる混合促進構造が開示されているが、NOx排出量をさらに低減するためには燃料と空気をより一層均一化する必要がある。しかし、その場合、燃焼安定性が低下する可能性がある。
【0007】
燃焼安定性の改善のための一方策として、燃焼支援装置の導入が挙げられる。このような燃焼支援装置としては、特許文献2で開示されているようなレーザを用いたものが一手段として考えられる。しかし、この場合、レーザ燃焼支援装置の一部を構成する光学系は、高温となる燃焼器構造に接したり燃焼空気流に曝されたりする。光学系はレンズやミラー、光ファイバなどの光学部品で構成されるが、これらの光学部品は高温の燃焼器や燃焼空気には耐えることができない。したがって、光学系を燃焼器へ組み込むためには冷却する手段が必要となる。しかし、冷却のために別に補機を加えるとすると、それによりシステム全体が複雑になることや、その補機が消費するエネルギによりシステム全体の効率が低下する可能性がある。
【0008】
そこで本発明は、システムの効率低下を回避しつつ、レーザ燃焼支援装置を用いた燃焼安定性の向上が可能な燃焼器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レーザ光を発射するレーザ発振器と、前記レーザ発振器から発射されるレーザ光を導く光ファイバケーブルと、前記光ファイバケーブルにより導かれたレーザ光を燃焼室内に位置する焦点に集光させる光学系とを有するレーザ燃焼支援装置と、前記焦点に向かって燃料を噴射する冷却用燃料流路とを備え、前記光学系が前記冷却用燃料流路内に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、システムの効率低下を回避しつつ、レーザ燃焼支援装置を用いた燃焼安定性の向上が可能な燃焼器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1におけるガスタービン燃焼器を示した図である。
図2】本発明の実施例1におけるガスタービン燃焼器の、負荷と燃料流量の関係を表す概念図である。
図3】本発明の実施例2におけるガスタービン燃焼器を示した図である。
図4】本発明の実施例3におけるレーザ燃焼支援装置を組み込んだガスタービン燃焼器の拡大断面図である。
図5】集光光学系の温度と焦点位置の関係を表す概念図である。
図6】本発明の実施例5におけるガスタービン燃焼器を示した図である。
図7】実施例1のガスタービン燃焼器が適用されるガスタービンプラントの概略構成を示すプラントの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
図7は発電用ガスタービンプラントの全体構成を表すシステム図である。図7において、発電用ガスタービンは、吸い込み空気15を加圧して高圧空気16を生成する圧縮機1と、圧縮機1で生成した高圧空気16とガス燃料50とを燃焼させて高温燃焼ガス18を生成する燃焼器2と、燃焼器2で生成した高温燃焼ガス18によって駆動されるタービン3と、タービン3の駆動によって回転され電力を発生させる発電機8と、圧縮機1、タービン3及び発電機8を一体に連結するシャフト7を備える。
【0014】
そして、燃焼器2は、ケーシング4の内部に格納されている。また、燃焼器2は、その頭部にバーナ6を備え、このバーナ6の下流側となる燃焼器2の内部に、高圧空気と燃焼ガスとを隔てる概略円筒状の燃焼器ライナ10を備える。
【0015】
この燃焼器ライナ10の外周には、高圧空気を流下させる空気流路を形成する外周壁となるフロースリーブ11が配設されている。フロースリーブ11は燃焼器ライナ10よりも直径が大きく、燃焼器ライナ10とほぼ同心円の円筒状に配設されている。また、燃焼器ライナ10の下流側には、燃焼器2の燃焼室5で発生した高温燃焼ガス18をタービン3に導くための尾筒内筒12が配設されている。また、尾筒内筒12の外周側に、尾筒外筒13が配設されている。
【0016】
吸い込み空気15は、圧縮機1によって圧縮された後に高圧空気16となり、ガスタービン定格負荷では圧力比によっては400℃以上の高温となる。高圧空気16は、ケーシング4内に充満した後、尾筒内筒12と尾筒外筒13の間の空間に流入し、尾筒内筒12を外壁面から対流冷却する。さらに高圧空気16は、フロースリーブ11と燃焼器ライナ10との間に形成された環状の流路を通って燃焼器の頭部に向かって流れる。高圧空気16は流れる途中で、燃焼器ライナ10の対流冷却に使用される。
【0017】
また、高圧空気16の一部は、燃焼器ライナ10に設けられた多数の冷却孔から燃焼器ライナ10内へその内壁面に沿うように噴き出て、冷却空気膜を形成し、燃焼器ライナ10を高温の燃焼ガス18から保護し冷却する。高圧空気16のうち燃焼器ライナ10の冷却に使用されなかった残りの燃焼用空気17は、燃焼室5の上流側壁面に位置する空気孔プレート31に設けられた多数の空気孔32から燃焼室5に流入する。
【0018】
多数の空気孔32から燃焼器ライナ10に流入した燃焼用空気17は、燃料ノズル26から噴出される燃料とともに、燃焼室5で燃焼して高温燃焼ガス18を生成する。この高温燃焼ガス18は尾筒内筒12を通じてタービン3に供給される。高温燃焼ガス18は、タービン3を駆動した後に排出されて、排気ガス19となる。
【0019】
タービン3で得られた駆動力は、シャフト7を通じて圧縮機1及び発電機8に伝えられる。タービン3で得られた駆動力の一部は、圧縮機1を駆動して空気を加圧し高圧空気を生成する。また、タービン3で得られた駆動力の他の一部は、発電機8を回転させて電力を発生させる。
【0020】
バーナ6は燃料系統51、52の複数の燃料系統を備える。それぞれの燃料系統は燃料流量調整弁21、22を備えており、各燃料系統の流量は燃料流量調整弁で調節され、ガスタービンプラント9の発電量が制御される。また複数の燃料系統に分岐する上流側には、燃料を遮断するための燃料遮断弁20が備えられている。
【0021】
図1は、第一の実施例のガスタービン燃焼器を示す図である。
【0022】
本実施例のバーナ6は、多数の燃料ノズル26と、燃料を多数の燃料ノズル26に分配する燃料ノズルヘッダ24と、空気および燃料が通過する空気孔32が配置された空気孔プレート31から構成される。なお、本実施例では、空気孔32は燃料ノズルに1対1に対応して配置されている。また、バーナ6の空気孔32は、バーナ中心軸に対して周方向に傾斜した傾斜角を備えており、バーナの下流に旋回流40を形成し、旋回流40で生じた循環流41により空気孔プレートから浮き上がった火炎42を形成する。浮き上がり火炎42は、空気孔プレート31に火炎が付着しないため、空気孔プレート31の加熱を抑制できるという利点がある。
【0023】
本実施例では、安定した燃焼を可能にするために、バーナにレーザ燃焼支援装置を組み込んでいる。レーザ燃焼支援装置は、集光光学系を用いて燃焼室内にレーザ光を焦点に集光し、エネルギを集中させ高温な領域を作ることにより、その点を基部として浮き上がり火炎を安定に保持させ、燃焼を安定化する。
【0024】
本実施例におけるレーザ燃焼支援装置は、レーザ発振器61、光ファイバケーブル62、レーザ集光光学系63から構成される。レーザ発振器61は、ガスタービン燃焼器の外部に設置され、レーザ発振器から発射されたレーザ光65は燃料ノズルヘッダ24の内部を通る光ファイバケーブル62により、バーナ6の中心軸を貫く流路に設置されたレーザ集光光学系63に導かれる。図1においては、レーザ集光光学系63は集光レンズ64等で構成されるが、光ファイバケーブル62で導かれたレーザ光65を一点に集光させる機能を備えていれば集光レンズに限定されるものではなく、例えばミラーやプリズムなどの光学部品もしくはそれらの組み合わせで構成されてもよい。また、後述する他の実施例でも同様である。
【0025】
本実施例では、光ファイバケーブル62およびレーザ集光光学系63の周りには燃料の流路が形成されており、マルチバーナ6に供給する燃料流67が流れる構造となっている。この燃料流67により、光ファイバケーブル62およびレーザ集光光学系63を、高温となるマルチバーナ6の部材および高温の燃焼用空気17から隔離することができる。これにより、光ファイバケーブル62やレーザ集光光学系63といった光学系への入熱を抑制することができる。
【0026】
また、燃料流67の温度は、光学系の耐熱温度よりも十分に低く、ここではおよそ100℃以下の低温を想定している。したがって、本実施例のように、光学系の周りに光学系の耐熱温度よりも低温の燃料流67が流下する冷却用燃料流路を備えることにより、光ファイバケーブル62やレーザ集光光学系63といった光学系を冷却することができる。
【0027】
また、レーザ光65はレーザ集光光学系63により燃焼室5内のバーナ中心軸80上に焦点66を結び、その点を基部として浮き上がり火炎42が保持される。また同時に、レーザ集光光学系63冷却に供された燃料流はバーナ中心軸80に沿って、燃焼室5内に噴射される。これにより、焦点66に燃料が供給されるため、レーザの強いエネルギにより燃料分子が分解して生成する活性な化学種が火炎42に供給され、燃焼が促進され火炎42はより安定に保持される。
【0028】
図1に示すように、バーナ6の燃料系統は中心軸80に近い燃料ノズルに燃料を供給する燃料系統51とその外周の燃料ノズルに燃料を供給する燃料系統52に分かれている。ここで、図2に本実施例に係るガスタービン燃焼器の、負荷と燃料流量の関係を表す概念図を示す。図2に示すように、本実施例の燃焼器では、バーナ中心軸に近い燃料系統51にはガスタービン負荷によらず常に燃料が供給される。よって、バーナ中心軸を貫く流路の中にレーザ燃焼支援装置の集光光学系63を組みこむことで、集光光学系は燃料流により常に冷却されるという利点がある。
【0029】
以上のように、本実施例の構成によれば、集光光学系63が冷却用燃料流路内に配置されていることにより、集光光学系63の温度が耐熱温度以上となることを防止できるため、冷却用の補機を追加しなくても高温下においてレーザ燃焼支援装置を用いることができる。そのため、補機の追加によるシステムの複雑化や効率低下を回避しつつ、レーザ燃焼支援装置を用いた燃焼安定性の向上が可能な燃焼器を実現することができる。
【0030】
また、冷却用燃料流路から集光光学系63を冷却した冷却燃料流67が焦点66に向かって噴射されることにより、焦点近傍の燃空比を増加させることができる。これにより、レーザ燃焼支援装置による保炎を強化することができるため、単純にレーザ燃焼支援装置を組み込む場合よりも燃焼安定性を向上させることができる。
【0031】
また、冷却用燃料流路がバーナの中心軸80上に沿って配置され、集光光学系63の焦点66が燃焼室5内のバーナ中心軸80上に位置することにより、バーナ中心部を起点とした火炎を形成することができ、燃焼安定性を更に向上させることができる。特に、本実施例では、バーナ中心軸に対して周方向に傾斜した傾斜角を有する複数の空気孔によってバーナが形成されており、旋回流40で生じた循環流41が生じる。そのため、バーナの中心軸80上に沿って配置された冷却用燃料流路から冷却燃料流67が噴射されることにより、高温の燃焼ガスを伴う循環流の熱を保炎に利用することが可能となり、バーナの燃焼安定性を相乗的に向上させることができる。
【実施例2】
【0032】
図3に第2の実施例を示す。本実施例では、図1に示した第1の実施例のバーナ6を複数個組み合わせて1つのバーナ35を構成するようにしたものである。このような構成とすることで、燃料系統を51〜54のように複数化して、ガスタービンの負荷の変化に対して柔軟に対処することができるとともに、組み合わせる数により燃焼器1缶あたりの容量の異なるものを比較的に容易に提供できる。
【0033】
このような構成においても、バーナ35を構成するそれぞれのバーナ6にレーザ燃焼支援装置を組み込み、その周囲に燃料の流路を形成することにより、実施例1と同様の原理で光学系の加熱の抑制や冷却を行なうことができる。なお、レーザ燃焼促進装置は組み合わせた全てのバーナに組み込んでも、一部のバーナに組み込んでもよく、燃焼器全体として必要な燃焼安定性が達成されるように適宜設定しても良い。
【実施例3】
【0034】
図4は、実施例3におけるレーザ燃焼支援装置を組み込んだガスタービン燃焼器におけるレーザ燃焼支援装置部分の拡大断面図である。
【0035】
レーザ集光光学系63を構成するレンズやミラー、プリズムなどの光学部品は熱により歪みが生じ、焦点位置66が定まらなくなる恐れがある。また、熱による歪み具合は温度により異なるため、温度の変化によって焦点位置66が変化し、ひいては浮き上がり火炎42が保持される位置が変化してしまう恐れがある。そして、保炎位置が意図せず変化した場合、燃焼安定性の低下やNOx排出量の増加を招く恐れがある。
【0036】
そこで、本実施例ではこのような課題に鑑み、実施例1や実施例2の燃焼器に対し、レーザ集光光学系63の温度が一定になるように冷却用燃料流67の流量を制御する機能を付与したことを特徴としている。
【0037】
本実施例の燃焼器は、冷却用燃料流67の流量を制御する具体的な構成として、レーザ集光光学系63の温度を測定する温度センサ69と、冷却用燃料流量調整弁68と、温度センサ69からの測定信号に基づいて冷却用燃料流量調整弁68の開度を制御する燃料流量制御装置56を備えている。
【0038】
次に制御内容について説明する。本実施例では、まず、温度センサ69によりレーザ集光光学系63の温度を測定する。温度センサ69から送られた測定信号は燃料流量制御装置56に送られる。燃料流量制御装置56は、送られてきた測定信号に基づいてレーザ集光光学系63の温度が一定となるよう冷却用燃料流量調整弁68の開度を定め、冷却用燃料流量調整弁68に対し開度の制御信号を送り、冷却用燃料流量調整弁68の開度を制御する。かくして、燃料流量制御装置56により、冷却用燃料流量は、レーザ集光光学系63の温度が一定となるように制御される。
【0039】
以上のように、本実施例の構成によれば、レーザ集光光学系63の温度が耐熱温度よりも小さい任意の目標温度となるように冷却用燃料流67の流量を制御し、レーザ集光光学系63の焦点を目標温度に対応した任意の位置に保持することができる。これにより、例えば浮き上がり火炎42を同じ位置に定在させることが可能となるため、より高い燃焼安定性を実現することができる。また、保炎位置が意図せず変化することに起因する燃焼安定性の低下やNOx排出量の増加を回避することもできる。
【実施例4】
【0040】
実施例3においては、レーザ集光光学系63の温度が一定となるように冷却用燃料流量を制御し、浮き上がり火炎42を定在させるようにしたが、本実施例ではガスタービン燃焼器の負荷条件に応じて積極的に焦点位置を制御するものである。具体的には、本実施例では、燃料流量制御装置56において、燃料流量調節弁21、22の開度から燃焼器の負荷条件を推定し、推定した負荷条件に応じた好適な焦点位置となるよう冷却用燃料流量調整弁68の開度を制御する構成としている。
【0041】
ガスタービン燃焼器は、負荷が低いと燃焼温度が低くなりCOや燃料の未燃分が発生しやすくなる。そのため、火炎はバーナにより近づけるほうが好ましい。逆に負荷が定格に近づくと燃焼温度が高くなりNOx排出量が増えることとなる。そのため、燃料と空気の混合距離を十分に確保するために火炎をバーナから遠ざけるほうが好ましい。このように、ガスタービン燃焼器は負荷条件によって、燃焼室内における燃焼状態が変化し、それに応じて浮き上がり火炎を定在させる最適な位置は異なる。
【0042】
一方で、実施例3で説明したとおり、レーザ集光光学系の焦点位置はその温度によって変化する。レーザ集光光学系の温度と焦点位置との関係を表す概念図を図5に示す。
【0043】
このように、あらかじめ図5に示すようなレーザ集光光学系の温度と焦点位置との関係が明らかになっていれば、燃料流量により光学系の温度を制御することで、焦点位置を積極的に変化させ、負荷条件によって変化する燃焼状態に適した位置に浮き上がり火炎を定在させることができる。
【0044】
そこで、本実施例では、低負荷条件になるほど冷却用燃料流の流量を増加させて光学系の温度を低温に保ち、焦点位置をバーナに近づけることで火炎をバーナ近傍に形成し、高負荷条件になるほど冷却用燃料流の流量を減少させて光学系の温度を上昇させ、焦点位置をバーナから遠ざけることで火炎をバーナから遠ざける制御を行なう。これにより、低負荷条件におけるCOや燃料の未燃分の発生や、高負荷条件におけるNOx排出量の増加を抑制することができる。
【0045】
なお、本実施例では燃料流量制御装置56において燃料流量調節弁21、22の開度から燃焼器の負荷条件を推定しているが、ガスタービンの負荷条件等を用いても良い。また、燃料流量制御装置56ではなく、別途設けた演算装置によって負荷条件を推定し、これに基づいて冷却用燃料流量調整弁68の開度を制御する構成としても良い。
【0046】
以上のように、本実施例の構成によれば、ガスタービン燃焼器の負荷条件によって変化する燃焼状態に応じて、それに適した位置に浮き上がり火炎を定在させることができる。これにより、燃焼安定性を維持しつつ、低負荷条件におけるCOや燃料の未燃分の発生や、高負荷条件におけるNOx排出量の増加を抑制することが可能となる。
【実施例5】
【0047】
本実施例では、レーザ燃焼支援装置を予混合燃焼型のガスタービン燃焼器に組み込んだ場合の例を説明する。
【0048】
図6は、本実施例における予混合バーナを示した図である。
【0049】
予混合バーナ35は、燃料流路38から供給された燃料が、旋回器36により旋回をかけられた燃焼用空気17と予混合路37内で急速に混合することで、燃焼室5において予混合燃焼を行うものである。本実施例では、旋回器を用いた予混合バーナの燃焼の安定化を目的に実施例1と同様なレーザ燃焼支援装置を組み込むための冷却方法を提供する。
【0050】
実施例1と同様に、レーザ燃焼支援装置はレーザ発振器61、光ファイバケーブル62、レーザ集光光学系63から構成される。レーザ発振器61は、ガスタービン燃焼器の外部に設置される。レーザ発振器から発射されたレーザ光65は光ファイバケーブル62により、燃料流路38内に組み込まれたレーザ集光光学系63に導かれる。
【0051】
レーザ燃焼支援装置は、集光光学系を用いて燃焼室内にレーザ光を焦点に集光し、エネルギを集中させ高温な領域を作ることにより、その点で火炎を安定に保持させ、燃焼を安定化する。このとき、集光光学系63はその周囲の燃料流39により、燃焼用空気および燃焼器ライナ、外筒から隔離されて入熱が抑制されると共に、燃料流39自体により対流冷却される。
【0052】
したがって、本実施例の構成においても、実施例1と同様に、集光光学系63の温度が耐熱温度以上となることを防止でき、冷却用の補機を追加しなくても高温下においてレーザ燃焼支援装置を用いることができる。また、燃焼器に供給される燃料流を冷却に利用するため、冷却のために別途補機を導入することによるシステムの複雑化や補機がエネルギを消費することによるガスタービンの効率低下という問題がないという点も同様である。
【0053】
また、実施例2のように本実施例のバーナを複数配置してマルチバーナとしても良く、実施例3や実施例4のように冷却用燃料の流量を制御する構成としても良い。このような構成とすることにより、本実施例のようなバーナであっても、各実施例で説明したのと同様の効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 ケーシング
5 燃焼室
6 バーナ
7 シャフト
8 発電機
9 ガスタービンプラント
10 燃焼器ライナ
11 フロースリーブ
12 尾筒内筒
13 尾筒外筒
15 吸い込み空気
16 高圧空気
17 燃焼用空気
18 高温燃焼ガス
19 排気ガス
20 燃料遮断弁
21、22 燃料流量調節弁
24 燃料ノズルヘッダ
26 燃料ノズル
27 燃料噴流
31 空気孔プレート
32 空気孔
34 マルチバーナ
35 予混合バーナ
36 旋回器
37 予混合路
38 燃料流路
39 燃料流
40 旋回流
41 循環流
42 浮き上がり火炎
43 火炎
50〜55 燃料
56 燃料流量制御装置
61 レーザ発振器
62 光ファイバケーブル
63 レーザ集光光学系
64 集光レンズ
65 レーザ光
66 光学系焦点位置
67 冷却用燃料流
68 冷却用燃料流量調整弁
69 温度センサ
80 バーナ中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7