(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示されたデータロガーによる測定データ収集では、昇降温動作の繰り返しを一連の時系列データとして、継続してデータ収集するのであれば、一定の規則性のあるずれ方をしているものと見なしてデータ収集を継続できる。しかし、データを1回の昇降温動作毎に個別のデータセットに区分けして確認しようとする場合は、時刻同期が取り難いので実現は難しい。
また、特許文献1に開示された技術では、保存可能な情報が限られるので、データ収集表示機能としては不十分であり、オペレータが制御の上下動状態(昇降温状態)を確認するには情報不足である。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、制御量の上下動が繰り返される場合において、上下動の動作毎(例えば昇降温動作毎)にオペレータが短時間で上下動状態(昇降温状態)を確認することができる制御システムおよびデータ収集表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の制御システムは、設定値SPと制御量PVに基づき操作量MVを制御周期毎に算出して出力する操作量算出手段と、データ収集開始
時点からの継続時間を計測する継続時間測定手段と、設定値SPと制御量PVと操作量MVのうち少なくとも1つを収集すべきデータとして制御周期毎に記録するデータ記録手段と、このデータ記録手段によるデータ収集が停止しているときに、設定値SPの変更を検出し、この設定値SPの変更方向がデータ収集開始のトリガーとなる設定値SPの変更方向であった場合に、前記データ記録手段を起動してデータ収集を開始させるデータ収集起動手段と、前記データ記録手段によるデータ収集が行われているときに、前記データ収集開始
時点からの継続時間が予め設定されたデータ収集終了の制限時間に到達した場合に、前記データ記録手段を停止させてデータ収集を終了させるデータ収集停止手段と、データ収集が終了する度に前記データ記録手段によって記録された、最新のデータ収集開始からデータ収集終了までの最新の時系列データのグラフ表示に表示を切り替えるデータ表示手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の制御システムの1構成例において、前記データ記録手段は、
前記設定値SPと
前記制御量PVと
前記操作量MVのうちの少なくとも1つに加えて、
前記操作量MVに応じてヒータに通電される電流値CTを収集すべきデータとして制御周期毎に記録することを特徴とするものである。
また、本発明の制御システムの1構成例において、前記データ表示手段は、前記最新の時系列データを、比較対象の時系列データである参照データと重ね合わせてグラフ表示することを特徴とするものである。
また、本発明の制御システムの1構成例は、さらに、前記最新の時系列データと前記参照データとの間の差異を数値化して、前記グラフと共に表示する差異表示手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の制御システムの1構成例において、前記参照データは、前記最新の時系列データよりも1回前に収集され記録された時系列データである。
また、本発明の制御システムの1構成例において、前記参照データは、収集すべきデータの理想的な値を示す時系列データである。
また、本発明の制御システムの1構成例において、前記参照データは、前記最新の時系列データよりも過去の複数回にわたって収集され記録された複数の時系列データの平均データである。
また、本発明の制御システムの1構成例において、前記データ表示手段は、前記最新の時系列データの収集開始時から規定時間が経過したときに、前記最新の時系列データに表示を切り替えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のデータ収集表示方法は、設定値SPと制御量PVに基づき操作量MVを制御周期毎に算出して出力する操作量算出ステップと、データ記録手段によるデータ収集が停止しているときに、設定値SPの変更を検出し、この設定値SPの変更方向がデータ収集開始のトリガーとなる設定値SPの変更方向であった場合に、前記データ記録手段を起動してデータ収集を開始させるデータ収集起動ステップと、前記データ記録手段により設定値SPと制御量PVと操作量MVのうち少なくとも1つを収集すべきデータとして制御周期毎に記録するデータ記録ステップと、データ収集開始
時点からの継続時間を計測する継続時間測定ステップと、前記データ記録手段によるデータ収集が行われているときに、前記データ収集開始
時点からの継続時間が予め設定されたデータ収集終了の制限時間に到達した場合に、前記データ記録手段を停止させてデータ収集を終了させるデータ収集停止ステップと、データ収集が終了する度に前記データ記録手段によって記録された、最新のデータ収集開始からデータ収集終了までの最新の時系列データのグラフ表示に表示を切り替えるデータ表示ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御量PVの上下動が繰り返される場合において、収集すべきデータを制御量PVの1回の上下動毎に個別のデータセットに区分けする際の規則性を確保することが可能になる。そして、本発明では、データ収集が終了したときに、1回前に収集した時系列データのグラフから、最新の時系列データのグラフに表示を切り替えるようにしたので、上下動のタイミングが一致した時系列データ形状が、制御量PVの上下動のサイクル毎に表示されることになる。したがって、オペレータがこの表示を視認することで残像感覚が得られ、1回前に収集したデータセットからの差異(変化)を認識できるようになる。すなわち、オペレータが短時間で上下動状態を確認することが可能になる。
【0012】
また、本発明では、最新の時系列データを、比較対象の時系列データである参照データと重ね合わせてグラフ表示することにより、データの差異(変化)をオペレータが認識し易いようにすることができる。
【0013】
また、本発明では、最新の時系列データと参照データとの間の差異を数値化して、グラフと共に表示することにより、データの差異(変化)をオペレータがさらに認識し易いようにすることができる。
【0014】
また、本発明では、最新の時系列データの収集開始時から規定時間が経過したときに、最新の時系列データに表示を切り替えることにより、オペレータが確認のタイミングを誤る確率を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の原理1]
本発明では、収集するデータの例として、設定値SP、制御量PV、操作量MV、ヒータに流れる電流値CTを取り上げる。操作量MVは、調節計(例えば温調計)に設定される設定値SPと、調節計に接続された計測器(センサ)から入力される制御量PVに基づき、調節計内部で算出される。電流値CTは、ヒータ断線検出の目的で調節計に入力される。すなわち、設定値SP、制御量PV、操作量MV、電流値CTは全て調節計に集約されており、ハードウェアとしてはこれを活用する。
【0017】
制御量PV、操作量MVの変化は、設定値SPの変化がトリガーになる。したがって、昇温制御であれば、データ収集の停止中に設定値SPが上昇方向に設定変更されたときをトリガーにして、データ収集を開始すればよい。降温制御であれば、データ収集の停止中に設定値SPが下降方向に設定変更されたときをトリガーにして、データ収集を開始すればよい。そして、例えば予め把握できている工程時間に基づき、データ収集が規定時間だけ経過したときにデータ収集を停止すればよい。
【0018】
このようにすれば、個々のデータの切り出しができている状態になり、かつデータ収集開始時点から実際に制御量PV、操作量MVの変化が開始されるまでの所要時間が規則性として統一されるので、昇降温の繰り返しであれば、個々の昇降温毎にずれ方も含めて確認できるようになる。
そして、個々のデータの切り出しを行なう毎に、個々のデータをグラフ表示すれば、規則正しいタイミングで表示切替が行なわれるようになり、例えば1回前に切り出された個々のデータからの表示切替をもって、その差異(変化)をオペレータが確認のタイミングを誤らずに認識できるようになる。すなわち、オペレータが短時間で上下動状態(昇降温状態)をチェックできる。
【0019】
[発明の原理2]
表示切替のタイミングについても、データ収集終了後の処理に依存させるだけではなく、データ収集開始時点から予め規定された時間経過時というように管理することで、オペレータが確認のタイミングを誤る確率を低減できる。この場合、データ収集終了後の処理が確実に実行できるだけの余裕のある時間を規定するべきであり、仮に最速で表示切替できる状態になっても、規定された時間が経過するまでは表示切替を(若干)待機させることになる。したがって、非効率なようにも思えるが、高速な制御量PVの上下動(例えば高速な昇降温)が繰り返される場合においては、その制御動作自体を無理に遅らせる必要があるものではないので問題は生じない。
【0020】
[発明の原理3]
例えば1回前に切り出された個々のデータのような参照データと合わせて、最新の切り出されたデータを重ねて表示することで、その差異(変化)をオペレータがさらに認識し易くなる。ただし1回前に切り出された個々のデータを表示する場合、徐々に上下動状態(昇降温状態)が変化していくと、差異(変化)をオペレータが認識できるとは限らない。そこで、理想的な制御動作のデータなどを参照データとして、適宜採用するのが好ましい。また、重ねて表示するデータ間の差異を数値化して同時に表示すると、差異(変化)をオペレータがさらに認識し易くなる。
【0021】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は、上記発明の原理1、発明の原理2に対応するものである。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る調節計の構成を示すブロック図である。調節計は、従来から調節計に設けられている一般的構成である調節計制御機能部1と、本実施の形態の特徴的構成であるデータ収集機能部2とを備えている。
【0022】
調節計制御機能部1は、設定値SPを調節計外部から入力する設定値入力部10と、制御量PVを計測器から入力する制御量入力部11と、設定値SPと制御量PVに基づき操作量MVを算出する操作量算出部12と、操作量MVを調節計外部に出力する操作量出力部13とを備えている。
【0023】
データ収集機能部2は、データ収集開始を判断しデータ収集を起動するデータ収集起動部20と、データ収集終了を判断しデータ収集を停止するデータ収集停止部21と、設定値SPと制御量PVと操作量MVのうち少なくとも1つを収集すべきデータとして制御周期毎に記録するデータ記録部22と、データ収集開始後の継続時間を計測する継続時間測定部23と、データ収集が終了する度にデータ記録部22によって記録された、最新のデータ収集開始からデータ収集終了までの最新の時系列データのグラフ表示に表示を切り替えるデータ表示部24とを備えている。
【0024】
次に、本実施の形態の調節計の動作を
図2を参照して説明する。設定値SPは、オペレータなどによって設定され、設定値入力部10を介して操作量算出部12に入力される(
図2ステップS100)。
制御量PVは、図示しない計測器によって計測され、制御量入力部11を介して操作量算出部12に入力される(
図2ステップS101)。
【0025】
操作量算出部12は、周知の制御演算アルゴリズムに従って、設定値SPと制御量PVとが一致するように操作量MVを算出する(
図2ステップS102)。制御演算アルゴリズムとしては、例えばPIDがある。
操作量出力部13は、操作量算出部12によって算出された操作量MVを制御対象に出力する(
図2ステップS103)。制御対象が例えば加熱処理炉の場合、加熱処理炉のヒータに電力を供給する電力調整器が、操作量MVの実際の出力先となる。
【0026】
次に、データ収集起動部20は、データ記録部22によるデータ収集が停止しているときに(
図2ステップS104においてYES)、設定値入力部10から入力された設定値SPの変更を検出し(
図2ステップS105においてYES)、この設定値SPの変更方向がデータ収集開始のトリガーとなる設定値SPの変更方向であった場合(
図2ステップS106においてYES)、データ記録部22を起動してデータ収集を開始させる(
図2ステップS107)。データ収集起動部20は、設定値入力部10から入力された設定値SPが直前の制御周期の設定値SPと異なるときに、設定値SPが変更されたと判断する。
【0027】
例えば昇温制御中のデータを収集して記録したいのであれば、データ収集開始のトリガーとなる設定値SP変更方向として「上昇方向」をデータ収集起動部20に登録しておけばよい。これにより、設定値SPが上昇する方向に変更されたときに、データ収集が開始される。また、降温制御中のデータを収集して記録したいのであれば、データ収集開始のトリガーとなる設定値SP変更方向として「下降方向」をデータ収集起動部20に登録しておけばよい。
【0028】
次に、起動したデータ記録部22は、設定値入力部10から入力された設定値SPと制御量入力部11から入力された制御量PVと操作量算出部12によって算出された操作量MVとを記録する(
図2ステップS108)。
継続時間測定部23は、データ収集開始後の継続時間を計測する(
図2ステップS109)。
【0029】
データ収集停止部21は、データ記録部22によるデータ収集が行われているときに、データ収集開始後の継続時間が予め設定されたデータ収集終了の制限時間に到達した場合(
図2ステップS110においてYES)、データ記録部22を停止させてデータ収集を終了させる(
図2ステップS111)。
【0030】
データ表示部24は、データ記録部22が停止してデータ収集が終了すると、データ記録部22によって記録された、最新のデータ収集開始からデータ収集終了までの時系列データであるデータセット(切り出された最新の上下動データ)を、このデータセットの収集開始時から規定時間が経過したときに、予め規定された時系列のフレームに合わせてグラフ表示する(
図2ステップS112)。このとき、規定時間は、上記制限時間よりも長い時間に設定されている。
【0031】
以上のようなステップS100〜S112の処理が、例えばオペレータからの指令によって制御が終了するまで(
図2ステップS113においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0032】
なお、予め規定された時系列のフレームに合わせてグラフ表示するとは、例えばデータの先頭時刻(データ収集開始時刻)をグラフの時間軸(横軸)上の開始時刻としてデータセットを表示することを意味する。制御量PVの上下動が発生する度にデータセットが収集されるので、データの先頭時刻は変わっていくが、データの先頭時刻をグラフの時間軸上の開始時刻としてデータセットをグラフ表示すれば、制御量PVの1回の上下動毎に区分けした個々のデータセットを統一された基準で表示することができ、データセットの差異を認識し易くすることができる。
【0033】
図3は本実施の形態の調節計のデータ収集の動作を説明する図であり、
図3の横軸は時間、縦軸は制御量PVである。ここでは、設定値SPを温度設定値、制御量PVを温度計測値とし、例えば加熱処理炉の昇温制御中のデータを収集する場合について説明する。この
図3の例では、設定値SPが150℃から300℃に変更された時点でデータ収集を開始し、データ収集開始後の継続時間がデータ収集終了の制限時間に到達したときに、データ収集を終了している。そして、収集したデータを、データ収集開始時から規定時間が経過したときに例えば
図4のように表示する。
図4の例では設定値SPと制御量PVの時系列データをグラフ表示している。以後、同様の昇降温動作が行われる度に、データ収集とグラフ表示が行われる。
【0034】
以上のように、本実施の形態では、制御量PVの上下動が繰り返される場合において、収集すべきデータを制御量PVの1回の上下動毎に個別のデータセットに区分けする際の規則性を確保することが可能になる。規則性について具体的に言えば、データセットの先頭が設定値SPの変更時点となり、操作量MVや制御量PVの変化が制御動作として始まるタイミングが規則正しくなる。
【0035】
そして、本実施の形態では、データ収集が終了したときに、1回前に収集したデータセットのグラフから、今回収集した最新のデータセットのグラフに表示を切り替えるようにしたので、上下動のタイミングが一致した時系列データ形状が、制御量PVの上下動のサイクル毎に表示されることになる。したがって、オペレータがこの表示を視認することで残像感覚が得られ、1回前に収集したデータセットからの差異(変化)を認識できるようになる。すなわち、オペレータが短時間で制御量PVの上下動状態をチェックすることが可能になる。また、本実施の形態では、データ収集開始時からの規定時間経過時に表示を切り替えるようにしたので、オペレータが確認のタイミングを誤る確率をさらに低減することができる。
【0036】
本実施の形態では、高速な制御量PVの上下動状態の確認が目的なので、全ての構成要素が調節計に内蔵されるような形態として記述したが、データ表示部24に限れば、高速な通信機能を利用して調節計外部に接続されるような形態としてもよい。この場合は、調節計とその外部に設けられるデータ表示部24とによって、本発明の技術思想を実現する制御システムが形成される。
なお、本実施の形態では、設定値SPと制御量PVと操作量MVの3つを収集しているが、これに限るものではなく、これら3つのうち少なくとも1つを収集すればよい。
【0037】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理2、発明の原理3に対応するものである。
図5は本発明の第2の実施の形態に係る調節計の構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の調節計は、調節計制御機能部1aと、データ収集機能部2aとを備えている。
【0038】
調節計制御機能部1aは、設定値入力部10と、制御量入力部11と、操作量算出部12と、操作量出力部13と、ハロゲンランプ(高速昇温ヒータ)に流れる電流値CTを入力する電流値入力部14とを備えている。
【0039】
データ収集機能部2aは、データ収集起動部20と、データ収集停止部21と、設定値SPと制御量PVと操作量MVのうちの少なくとも1つに加えて、電流値CTを収集すべきデータとして制御周期毎に記録するデータ記録部22aと、継続時間測定部23と、データ収集が終了する度にデータ記録部22aによって記録された最新の時系列データと共に、比較対象の時系列データである参照データを重ね合わせてグラフ表示するデータ表示部24aと、最新の時系列データと参照データとの間の差異を数値化して、データ表示部24aによる表示切替と同時に表示する差異表示部25とを備えている。
【0040】
次に、本実施の形態の調節計の動作を
図6を参照して説明する。
図6のステップS200〜S203の処理は、それぞれ
図2のステップS100〜S103と同じなので、説明は省略する。本実施の形態では、ハロゲンランプ(高速昇温ヒータ)を備えた加熱処理炉を制御対象としており、ハロゲンランプに電力を供給する電力調整器が、操作量MVの実際の出力先となる。この場合、設定値SPは温度設定値、制御量PVは加熱処理炉の計測器(センサ)によって計測される温度計測値となる。
【0041】
電流値入力部14は、ハロゲンランプ(高速昇温ヒータ)に流れる電流値CTを計測する電流値計測手段(不図示)から電流値CTを取得する(
図6ステップS204)。
データ収集起動部20は、データ記録部22aによるデータ収集が停止しているときに(
図6ステップS205においてYES)、設定値入力部10から入力された設定値SPの変更を検出し(
図6ステップS206においてYES)、この設定値SPの変更方向がデータ収集開始のトリガーとなる設定値SPの変更方向であった場合(
図6ステップS207においてYES)、データ記録部22aを起動してデータ収集を開始させる(
図6ステップS208)。
【0042】
本実施の形態では、加熱処理炉の昇温制御中のデータを収集して記録するので、データ収集開始のトリガーとなる設定値SP変更方向として「上昇方向」(昇温方向)がデータ収集起動部20に予め登録されている。したがって、設定値SPが上昇する方向に変更されたときに、データ収集が開始される。
【0043】
次に、起動したデータ記録部22aは、設定値入力部10から入力された設定値SP(温度設定値)と制御量入力部11から入力された制御量PV(温度計測値)と操作量算出部12によって算出された操作量MV(ヒータ操作量)と電流値入力部14から入力された電流値CTとを記録する(
図6ステップS209)。
継続時間測定部23は、データ収集開始後の継続時間を計測する(
図6ステップS210)。
【0044】
データ収集停止部21は、データ記録部22aによるデータ収集が行われているときに、データ収集開始後の継続時間が予め設定されたデータ収集終了の制限時間に到達した場合(
図6ステップS211においてYES)、データ記録部22aを停止させてデータ収集を終了させる(
図6ステップS212)。
【0045】
データ表示部24aは、データ記録部22aが停止してデータ収集が終了すると、データ記録部22aによって記録された、最新のデータ収集開始から最新のデータ収集終了までの時系列データであるデータセットD1(i)(iは収集されたn個の時系列データのデータ番号でありi=1〜n)を、このデータセットの収集開始時から規定時間が経過したときに、予め規定された時系列のフレームに合わせてグラフ表示すると同時に、データ記録部22aによって記録された、1回前のデータ収集開始から1回前のデータ収集終了までの時系列データであるデータセットD2(i)を参照データとして、同じ時系列のフレームに合わせてデータセットD1(i)と重ね合わせるようにしてグラフ表示する(
図6ステップS213)。
【0046】
上記のとおり、予め規定された時系列のフレームに合わせてグラフ表示するとは、データの先頭時刻(データ収集開始時刻)をグラフの時間軸上の開始時刻としてデータセットを表示することを意味する。したがって、データセットD1(i)の先頭時刻およびデータセットD2(i)の先頭時刻を同一のグラフの時間軸上の共通の開始時刻としてデータセットD1(i),D2(i)を重ね合わせて表示することになる。
【0047】
差異表示部25は、最新のデータセットD1(i)と1回前のデータセットD2(i)とのデータ間の差異E2を次式により算出し数値化して、データ表示部24によるグラフ表示と同時に表示する(
図6ステップS214)。
【0049】
このとき、差異表示部25は、データの種類毎に差異E2を算出して表示する。本実施の形態では、設定値SPと制御量PVと操作量MVと電流値CTとを収集して記録するので、最新の設定値SP1のデータセットと1回前の設定値SP2のデータセットとの間で差異E2を算出して表示し、最新の制御量PV1のデータセットと1回前の制御量PV2のデータセットとの間で差異E2を算出して表示し、最新の操作量MV1のデータセットと1回前の操作量MV2のデータセットとの間で差異E2を算出して表示し、最新の電流値CT1のデータセットと1回前の電流値CT2のデータセットとの間で差異E2を算出して表示すればよい。
【0050】
以上のようなステップS200〜S214の処理が、例えばオペレータからの指令によって制御が終了するまで(
図6ステップS215においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0051】
図7は本実施の形態におけるデータ表示の例を示す図である。
図7の例では、設定値SP(=SP1=SP2)と、最新の制御量PV1のデータセットと、1回前の制御量PV2のデータセットと、最新の制御量PV1のデータセットと1回前の制御量PV2のデータセットとの間の差異E2=19.8℃とを表示している。
【0052】
本実施の形態では、残像感覚を利用する第1の実施の形態と比較して、比較対象である参照データ(1回前のデータセット)との差異をオペレータがさらに認識し易くなる。
本実施の形態では、参照データをデータ表示部24がストックし、差異の算出を差異表示部25が実行するものとして記述した。その意味では、単なる表示部とは異なる機能ブロックになる。
【0053】
電流値CTは特に時刻同期の取り難い高速な変化をする状態量であるが、データ品質としては、制御動作(温度計測値PV、ヒータ操作量MV)との時刻同期が最も重要であるため、調節計機能と一体化されたデータ収集になることが好ましい。なお、電流値CTについても制御量PVと同様に、規定された時系列のフレームに合わせて最新の電流値CT1のデータセットと1回前の電流値CT2のデータセットとを重ね合わせるようにしてグラフ表示すればよい。
【0054】
本実施の形態では、高速な制御量PVの上下動状態の確認が目的なので、全ての構成要素が調節計に内蔵されるような形態として記述したが、データ表示部24および差異表示部25に限れば、高速な通信機能を利用して調節計外部に接続されるような形態としてもよい。この場合は、調節計とその外部に設けられるデータ表示部24および差異表示部25とによって、本発明の技術思想を実現する制御システムが形成される。
【0055】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理2、発明の原理3に対応する別の実施の形態である。本実施の形態においても調節計の構成および処理の流れは第2の実施の形態と同様であるので、
図5、
図6を参照して説明する。
【0056】
図6のステップS200〜S212の処理は、第2の実施の形態で説明したとおりである。
本実施の形態のデータ表示部24aは、データ記録部22aが停止してデータ収集が終了すると、データ記録部22aによって記録された、最新のデータ収集開始から最新のデータ収集終了までの時系列データであるデータセットD1(i)を、このデータセットの収集開始時から規定時間が経過したときに、予め規定された時系列のフレームに合わせてグラフ表示すると同時に、予めデータ記録部22aに登録された、データセットD1(i)の理想的な値を示す時系列データであるデータセットD3(i)を参照データとして、同じ時系列のフレームに合わせてデータセットD1(i)と重ね合わせるようにしてグラフ表示する(
図6ステップS213)。この場合、データセットD1(i)の先頭時刻(データ収集開始時刻)およびデータセットD3(i)の先頭時刻を同一のグラフの時間軸上の共通の開始時刻としてデータセットD1(i),D3(i)を重ね合わせて表示すればよい。
【0057】
本実施の形態の差異表示部25は、最新のデータセットD1(i)とデータセットD3(i)とのデータ間の差異E3を次式により算出し数値化して、データ表示部24によるグラフ表示と同時に表示する(
図6ステップS214)。
【0059】
このとき、差異表示部25は、データの種類毎に差異E3を算出して表示する。本実施の形態では、設定値SPと制御量PVと操作量MVと電流値CTとを収集して記録するので、最新の制御量PV1のデータセットと理想的な制御量PV3のデータセットとの間で差異E3を算出して表示し、最新の操作量MV1のデータセットと理想的な操作量MV3のデータセットとの間で差異E3を算出して表示し、最新の電流値CT1のデータセットと理想的な電流値CT3のデータセットとの間で差異E3を算出して表示すればよい。
【0060】
なお、本実施の形態では、参照データとして、理想的な制御動作を示すデータを採用したが、これ以外にも最新のデータセットよりも過去の複数回にわたって収集され記録された複数のデータセットの平均データを参照データとして適宜採用してもよい。
【0061】
第1〜第3の実施の形態で説明した調節計を含む制御システムは、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。上記のとおり、制御システムを、調節計を実現するコンピュータと、データ表示部24および差異表示部25を実現するコンピュータの2台に分けてもよい。この場合、2台のコンピュータのCPUは、各々のコンピュータの記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。