特許第6130786号(P6130786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130786
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20170508BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20170508BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20170508BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C09D11/30
   C09D11/322
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-270503(P2013-270503)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124319(P2015-124319A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田林 勲
(72)【発明者】
【氏名】土方 康之
(72)【発明者】
【氏名】宮内 海南斗
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−214255(JP,A)
【文献】 特開2012−041429(JP,A)
【文献】 特開2009−120693(JP,A)
【文献】 特開2001−199060(JP,A)
【文献】 特開平09−194888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材及び溶剤を含み、
上記溶剤は、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、γ−ブチロラクトンを含むことを特徴とするインク組成物。
【請求項2】
ジプロピレングリコールジメチルエーテルの含有量が20重量%以上、40重量%以下、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの含有量が10重量%以上、25重量%以下、γ−ブチロラクトンの含有量が10重量%以上、40重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
上記溶剤が2−オクタノンをさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインク組成物。
【請求項4】
2−オクタノンの含有量が1重量%以上、20重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載のインク組成物。
【請求項5】
上記色材が顔料であり、
塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ソルベントインクとして以下のインクが報告されている。
【0003】
特許文献1にはジエチレングリコール化合物とジプロピレングリコール化合物との混合物(20:80〜80:20)を、合計で50〜99%含有するインクが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ポリ(n=2−4)オキシエチレングリコールジアルキルエーテル1重量部に対してラクトン系溶剤を0.02〜4重量部の割合で含む混合溶剤を少なくとも50重量%含有するインクが記載されている。
【0005】
特許文献3には、(グリコールアセテート)と環状エステル(γ−ブチロラクトン)とを含有し、該環状エステルの量が(グリコールエステル)100質量部当たり1〜60質量部含有するインクが記載されている。
【0006】
特許文献4には、引火点が55〜120℃、沸点が170〜250℃の範囲にあるジプロピレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルモノアルキルエステル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテルおよびプロピレングリコールジアルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種の(ポリ)プロピレングリコール誘導体を40〜90重量%含み、かつラクトン構造を有する化合物を1〜50重量%含むインクが記載されている。
【0007】
特許文献5には、着色剤と、塩化ビニル系樹脂と、有機溶媒とを含有、前記有機溶媒は、(i)エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種のグリコールエーテルである第1の溶媒、及び、(ii)ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種のグリコールエーテルである第2の溶媒、を含み、かつ25℃における表面張力が26mN/m以上、31mN/m以下であるインクが記載されている。
【0008】
特許文献6には、色材と特定の化学構造を有するケトン化合物とを含有するインクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報第2002/055619号パンフレット
【特許文献2】国際公開公報第2004/007626号パンフレット
【特許文献3】特開2004−5631号公報
【特許文献4】特開2005−330298号公報
【特許文献5】特開2009−74034号公報
【特許文献6】特開2011−122049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、インクジェット、特にソルベントインクを用いるインクジェット印刷は、一般のオフィス等で使用されるため、より安全性、有害性、臭気を配慮しなければならない。
【0011】
また、サイン用途では、市販の塩ビシートに印刷する場合に乾燥性が問題となる。しかし、被記録媒体(メディア)上での速乾性を高くするとヘッドのノズル詰まりを起こしやすく、ヘッド上での乾燥に伴うノズル目詰まりを抑制しようとするとメディア上で滲み(ビーディング、ブリーディング)を生じやすいというトレードオフの問題を有している。上述した従来技術ではこのトレードオフの問題を十分に解決しているとはいえない。また、このトレードオフの問題を解決し、且つ、より低臭気であるインクが求められている。
【0012】
本発明はこのような問題を解決するためなされた発明であり、低臭気で安全衛生性に優れ、乾燥性に優れ、ノズルの目詰まりを抑制することで印刷安定性に優れるソルベントインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係るインク組成物は、色材及び溶剤を含み、上記溶剤は、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、γ−ブチロラクトンを含むことを特徴としている。溶剤がこれらの成分を含むことにより、低臭気となり、乾燥性に優れ、ノズルの目詰まりを抑制できるインクとなる。
【0014】
本発明に係るインク組成物では、ジプロピレングリコールジメチルエーテルの含有量が20重量%以上、40重量%以下、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの含有量が10重量%以上、25重量%以下、γ−ブチロラクトンの含有量が10重量%以上、40重量%以下であることがより好ましい。より低臭気となり、乾燥性がより優れ、ノズルの目詰まりをより抑制できる。
【0015】
本発明に係るインク組成物では、上記溶剤が2−オクタノンをさらに含むことがより好ましい。ポリ塩化ビニルシート等の非吸収性基材への密着性が向上し、且つ、非吸収性基材に印刷したときに速く乾燥する。
【0016】
本発明に係るインク組成物では、2−オクタノンの含有量が1重量%以上、20重量%以下であることがより好ましい。非吸収性基材への密着性がより向上し、且つ、非吸収性基材に印刷したときにより速く乾燥する。
【0017】
本発明に係るインク組成物では、上記色材が顔料であり、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体をさらに含むことがより好ましい。上記溶剤は当該共重合体の溶解性に優れる。また、この構成により、被記録媒体上で優れた密着性及び耐溶剤性が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低臭気で安全衛生性に優れ、乾燥性に優れ、ノズルの目詰まりを抑制することで印刷安定性に優れるソルベントインク組成物を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るインク組成物は、色材及び溶剤を含み、上記溶剤は、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、γ−ブチロラクトンを含む。
【0020】
〔溶剤〕
本発明に係るインク組成物に含まれる溶剤はジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル及びγ−ブチロラクトンの3成分を含めばよい。この3成分はいずれも低臭気であるので安全衛生性に優れるインクとなる。また、ジプロピレングリコールジメチルエーテルの沸点は150℃であり、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの沸点は175℃であり、γ−ブチロラクトンの沸点は204℃である。このような沸点の3成分を組み合わせることにより、乾燥性に優れ、ノズルの目詰まりを抑制できるインクとなる。つまり、ノズルの目詰まり防止とメディア上での乾燥効率とのバランスを良好な状態にすることができる。
【0021】
上記3成分のインク組成物中の含有量は特に限定されず、インク組成物の用途等に応じて適宜調整できる。例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテルの含有量はインク組成物総量に対して20重量%以上、40重量%以下であることがより好ましい。また、例えば、プロピレングリコールモノプロピルエーテルの含有量はインク組成物総量に対して10重量%以上、25重量%以下であることがより好ましい。また、例えば、γ−ブチロラクトンの含有量はインク組成物総量に対して10重量%以上、40重量%以下であることがより好ましい。ここに例示した含有量にすることで、より低臭気となり、乾燥性がより優れ、ノズルの目詰まりをより抑制できる。
【0022】
本発明に係るインク組成物に含まれる溶剤は、上記3成分以外の溶剤を含んでいてもよい。粘度調整、乾燥性の調整等のために、種々の成分を添加することができる。
【0023】
中でも、2−オクタノンをさらに含むことがより好ましい。ポリ塩化ビニルシート等の非吸収性基材への密着性が向上し、且つ、非吸収性基材に印刷したときに速く乾燥する。2−オクタノンの含有量は特に限定されないが、インク組成物総量に対して1重量%以上、20重量%以下であることがより好ましい。非吸収性基材への密着性がより向上し、且つ、非吸収性基材に印刷したときにより速く乾燥する。
【0024】
また、上記3成分以外の溶剤の別の例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールモノアセテート類;エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールアセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートジブチレート等のグリコールジアセテート類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類等が好ましい。
【0025】
本発明に係るインク組成物に含まれる溶剤の量は、インク組成物総量に対して60重量%以上、95重量%以下であることが好ましく、70重量%以上、95重量%以下がより好ましく、80重量%以上、95重量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
また、本発明に係るインク組成物は水を含まないことが好ましい。水を含まないことで顔料の分散の安定性を向上させたり、溶剤の加水分解を抑制したり、ヘッドの腐食を抑制したりすることができる。インク組成物における水の含有量は、通常の吸湿量である0.5重量%以下であることがより好ましい。
【0027】
〔色材〕
本発明に係るインク組成物に含まれる色材としては、様々な色材が含まれ得る。例えば、顔料、染料が挙げられる。
【0028】
本発明に係るインク組成物に含まれる色材が顔料である場合、様々な顔料を選択し得るので、用途等に応じて、従来公知の顔料から適宜選択すればよい。
【0029】
ブラックインクとしてはカーボンブラックが好ましく、酸性、中性、塩基性いずれのカーボンブラックでも使用することができる。
【0030】
本発明に係るインク組成物をプロセスカラー印刷に用いる場合には、シアン、イエロー、マゼンタ顔料を適宜含めばよい。
【0031】
シアンインクとしては銅フタロシアニン顔料が好ましく、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4のカラーインデックスで示される顔料がより好ましい。
【0032】
イエローインクとしてはニッケルアゾ錯体顔料及びベンズイミダゾロン系顔料が好ましく、C.I.ピグメントイエロー150、151、154、180のカラーインデックスで示される顔料であることがより好ましい。
【0033】
マゼンタインクとしてはキナクリドン顔料が好ましく、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19のカラーインデックスで示される顔料が好ましい。これらは単独で用いてもよく、混合物又は固溶体顔料で用いてもよい。固溶体顔料は耐光性に優れており、より好適に用いることができる。
【0034】
その他に、公知の有機顔料及び無機顔料を目的に応じて使用することがでる。
【0035】
また、本発明に係るインク組成物に含まれる顔料の含有量は適宜選択でき、例えば、0.1重量%以上、10重量%以下がより好ましい。
【0036】
〔樹脂〕
本発明に係るインク組成物は、色材が顔料である形態では、非吸収性基材への密着性向上のために樹脂を添加することがより好ましい。
【0037】
樹脂の種類としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。これらは単一の種類のものを用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。市販されている商品としては、荒川化学社製のスーパーエステル75、エステルガムHP、マルキッド33、安原社製のYSポリスターT80、三井化学社製のHirettsHRT200X、ジョンソンポリマー社製のジョンクリル(登録商標)586、ダウケミカルズ社製のユーカーソリューションビニル樹脂VYHD、VYHH、VMCA、VROH、VYLF−X、日信科学工業製のソルバイン(登録商標)樹脂CL、CNL、C5R、TA5Rを例示することができる。中でもビニル樹脂である塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体(塩酢ビ樹脂)が最も好ましい。本発明に係るインク組成物に含まれる溶剤は当該共重合体の溶解性に優れる。また、色材が顔料の形態である本発明に係るインク組成物が当該共重合体を含むことにより、被記録媒体上で優れた密着性及び耐溶剤性が得られる。
【0038】
樹脂の含有量は、インク組成物総量に対して、例えば、0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0039】
〔分散剤〕
色材が顔料の形態である本発明に係るインク組成物では、顔料の分散性及びインクジェットインクとしての保存安定性を向上させるために分散剤が添加されていることがより好ましい。
【0040】
分散剤の種類としては、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0041】
市販されている分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra(登録商標)−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra(登録商標)−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk(登録商標)−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110、111(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen(登録商標)」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(登録商標)(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」、共栄社化学社製「フローレン TG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロン(登録商標) KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」、花王社製「デモール(登録商標)RN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノール(登録商標)L−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン(登録商標)920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン(登録商標)24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース(登録商標)5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、39000、36000、33000」、日光ケミカル社製「ニッコール(登録商標) T106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパー(登録商標)PB821、PB822(塩基性分散剤)」等が挙げられる。
【0042】
分散剤の含有量はインク組成物総量に対して0.1重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。
【0043】
〔その他の添加剤〕
本発明に係るインク組成物には可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、加水分解防止剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0044】
〔本発明に係るインク組成物の製造方法〕
本発明に係るインク組成物は上述した成分を混合することによって得られる。例えば、上述した成分のうち溶剤以外のものを、公知の分散機(ペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等)によって、上述した溶剤に分散すればよい。また、色材が顔料の形態では、顔料、樹脂及び分散剤を溶融混練して得られた顔料チップを上述した溶剤に分散して本発明に係るインク組成物を得てもよい。また、当該顔料チップを一旦溶剤に分散させて顔料分散体を得た後に、所望の含有量になるように上述した溶剤等で希釈して得てもよい。
【0045】
〔用途〕
本発明に係るインク組成物は、様々な用途に利用でき、例えば、インクジェット法による印刷に好適に用いることができる。特に、2−オクタノンを含む場合、非吸収性基材への密着性がより向上する。2−オクタノンを含む形態の本発明に係るインク組成物が好適に利用できる非吸収性基材としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂シート、ポリオレフィン系シート、ガラス、金属等が挙げられ、特にポリ塩化ビニル樹脂シートにより好ましく用いることができる。
【0046】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「%」は「重量%」を表す。
【0048】
まず、下記配合の顔料分散体A組成をロールで混練して得た顔料チップを溶剤、添加剤に混合して、ハイスピードミキサーで均一になるまで撹拌した。得られたミルベースを横型サンドミルで約12時間分散した。得られた分散液を1ミクロンのメンブレンフィルターを用いて各色インクとした。
顔料分散体A組成(K,M,C,Y)
顔料種 カーボンブラック、CI.PigmentRed122、C.I.Pigment Blue 15:3、CI.PigmentYellow 150
顔料:塩酢ビ樹脂:分散剤(ソルスパーズ39000)=50:40:10
実施例1〜6として製造したインクの組成を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
また、下記市販のソルベントインクを比較例として用いた。
比較例1 ミマキエンジニアリング製 SS21インク
比較例2 ミマキエンジニアリング製 HSインク
比較例3 セイコーエプソン製 SC2BK70インク。
【0051】
実施例1〜6及び比較例1〜3のインクジェットインクについて以下に示す方法で評価した。
【0052】
<臭気>
被験者10人により官能評価を行なった。
【0053】
<画質(ビーディング)>
ミマキエンジニアリング社製JV33で、720×720dpiの解像度、8m/hrの印字速度で印刷した時に、それぞれの色で印刷された二次色で発生したビーディングを調べた。
【0054】
<乾燥性(巻き取り性)>
ミマキエンジニアリング製JV33で、720×720dpiの解像度、8m/hrの印字速度で印刷した時に、裏写りしない巻き取り可能な印字密度を調べた。
【0055】
<印字安定性(目詰まり)>
ミマキエンジニアリング製JV33にインクを充填し2カ月放置後印字を行い、飛行曲がりを調べた。
【0056】
以上の方法で調べた項目については次の表2に示す通り、1〜5の点数で評価した。
【0057】
【表2】
【0058】
評価結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
以上のように本発明に係るインク組成物はいずれも低臭気であった。また、画質(ビーディング)の評価結果から本発明に係るインク組成物は滲みが抑制されていることが示された。また、巻き取り性の評価結果から本発明に係るインク組成物は乾燥性に優れていることが示された。また、目詰まりの評価結果から本発明に係るインク組成物はノズルの目詰まりを抑制できるので、印刷安定性に優れていることが示された。
【0061】
また、実施例1〜4は実施例5に比べて画質(ビーディング)の結果が良好であることから、2−オクタノンを含むことによる有利な効果が示された。つまり、2−オクタノンは塩化ビニル等の非吸収性基材の表面を溶解しやすいため、非吸収性基材への密着性が優れている。2−オクタノンを含まないと非吸収性基材を溶解しにくいため、非吸収性基材に浸透しにくく、着弾したインク滴(ドット)同士が互いに引き合って混色したり、位置がずれたりする。また、同色同士でも見かけ上ビーズ状のムラ(ビーディング)ができやすい。しかし、2−オクタノンを含むことでドット同士が引き合って重なることを防ぎ、その結果、画質が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、例えばインクジェット印刷の分野に利用することができる。