特許第6130791号(P6130791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6130791浄水用のナノファイバ精密ろ過膜の官能化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130791
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】浄水用のナノファイバ精密ろ過膜の官能化
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/42 20060101AFI20170508BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20170508BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20170508BHJP
   B01D 71/60 20060101ALI20170508BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20170508BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B01D71/42
   B01D71/68
   B01D71/48
   B01D71/60
   B01D71/26
   B01D69/00
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-548484(P2013-548484)
(86)(22)【出願日】2012年1月4日
(65)【公表番号】特表2014-506190(P2014-506190A)
(43)【公表日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】US2012020206
(87)【国際公開番号】WO2012094407
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年12月16日
(31)【優先権主張番号】61/429,603
(32)【優先日】2011年1月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599049451
【氏名又は名称】ザ リサーチ ファウンデーション オブ ザ ステイト ユニヴァーシティ オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ホンヤン マ
(72)【発明者】
【氏名】チュ ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ ベンジャミン エス
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−505227(JP,A)
【文献】 特開昭61−209003(JP,A)
【文献】 特表2008−515668(JP,A)
【文献】 特表2005−515879(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/027242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00−71/82
C02F1/44
B01D39/00−39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高流速で低圧力降下の精密ろ過膜を形成する方法であって、
ナノファイバ構造体を準備すること、及び
前記ナノファイバ構造体の表面を表面修飾剤で修飾することを含み、
前記表面修飾剤が、グルタルアルデヒド(GA)若しくはエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)とグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)とで架橋したポリエチレンイミン(PEI)、GA若しくはEGdGEとGTMAClとで架橋したポリビニルアミン又はポリ(1−(1−ビニルイミダゾリウム)エチル−3−ビニルイミダゾリウムジブロミド(ポリ(VEVIMIBr))を含み、前記表面修飾剤がインシチュ重合で生成される、前記方法。
【請求項2】
前記ナノファイバ構造体が、エレクトロスパンナノファイバスキャフォールド又はグラスマイクロファイバスキャフォールド又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エレクトロスパンナノファイバスキャフォールドが、ポリアクリロニトリル(PAN)、又はポリエーテルスルホン(PES)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、又はこれらの混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノファイバ構造体が、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン(PES)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、又はこれらの混合物を含むエレクトロスパンナノファイバスキャフォールドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノファイバ構造体が、50nm〜5ミクロンの直径を有するファイバを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノファイバ構造体が、50〜500nmの直径を有するファイバを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記表面修飾剤が、インシチュ重合で生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記表面修飾剤が前記ナノファイバ構造体の表面上でコーティングを形成し、前記コーティングが5〜30nmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記表面修飾剤が前記ナノファイバ構造体の表面上でコーティングを形成し、前記コーティングが10〜20nmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
高流速で低圧力降下の精密ろ過膜を形成する方法であって、
エレクトロスパンナノファイバスキャフォールド又はグラスファイバスキャフォールド又はこれらの混合物を含むナノファイバ構造体を準備すること、及び
前記ナノファイバ構造体の表面を表面修飾剤で修飾することを含み、
前記表面修飾剤が、グルタルアルデヒド(GA)若しくはエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)とグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)とで架橋したポリエチレンイミン(PEI)、GA若しくはEGdGEとGTMAClとで架橋したポリビニルアミン又はポリ(1−(1−ビニルイミダゾリウム)エチル−3−ビニルイミダゾリウムジブロミド(ポリ(VEVIMIBr))を含み、前記表面修飾剤がインシチュ重合で生成される、前記方法。
【請求項11】
前記エレクトロスパンナノファイバスキャフォールドが、ポリアクリロニトリル(PAN)、又はポリエーテルスルホン(PES)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、又はこれらの混合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノファイバ構造体が、50nm〜5ミクロンの直径を有するナノファイバを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記表面修飾剤が前記ナノファイバ構造体の表面上でコーティングを形成し、前記コーティングが50〜500nmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2011年1月4日出願の仮特許出願第61/429603号の優先権を主張するものであり、その開示は全て本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、アメリカ国立科学財団からの助成金DMR−1019370及びOffice of Naval Researchからの助成金第N000140310932号の下に政府の支援を得てなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、浄水に使用する高流束及び低圧力降下精密ろ過(microfiltration:MF)膜である。特に、本発明は、エレクトロスピニングで形成する精密ろ過膜に関する。
【背景技術】
【0004】
エレクトロスピニング技術は、この10年で急速に発展した。天然及び合成ポリマーから作製されるサブミクロンサイズの直径の繊維は広く様々な研究分野及び産業で応用されていて、例えば組織工学、薬剤送達、電子機器で使用するセンサ及び電極、ガス貯蔵並びに空気の浄化で応用されている。エレクトロスピニング工程の間、印加する電圧がスピナレットの先端で(帯電した)ポリマー溶液の表面張力を越えるほどに強いと、微細なジェット流が射出される。このジェット流がスピナレットからコレクタへと移動するにつれて、ジェット流中の溶媒が蒸発し、同時にポリマー溶液はごく薄いジェット流を形成し始め、コレクタで不織繊維状スキャフォールドが形成される。繊維の直径及び形状は、加工及び材料の両方のパラメータの影響を受ける。エレクトロスパンナノファイバスキャフォールドの比較的新しい活用例は、浄水におけるその応用である。
【0005】
エレクトロスパン膜は、高い空隙率(>80%)を微細な直径(約0.1〜約1μm)及び連続細孔構造と共に有していて、比表面積は比較的極めて広いものとなる。典型的な実例として、エレクトロスパンナノスキャフォールドは、薄膜ナノファイバ複合体(thin−film nanofibrous composite:TFNC)ウルトラ及びナノろ過膜における支持層として使用され、典型的な市販の膜と比較して約2〜約10倍高い透過流束を示した。浄水用途で実際に使用されているエレクトロスパンスキャフォールドの別の代表的な応用例(自立型又は不織性の基体、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)で支持)は、このようなマイクロフィルタの、飲料水中の水系細菌(例えば、大腸菌、B.ジミヌタ(B.diminuta)のモデルと見なすことができるナノ粒子の除去への利用である。エレクトロスパンポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PSU)、ポリビニルアルコール(PVA)及び再生セルローススキャフォールドの細孔径及び細孔径分布が研究されている。汚染された飲料水中の細菌の除去に関し、細菌をサイズ排除で除去するためにはエレクトロスパン膜の細孔径及び細孔径分布を改良してしなくてはならない。
【0006】
典型的には、水系細菌の直径は約0.2μmより大きい。例えば、B.ジミヌタの寸法は0.3μmx0.9μmであり、大腸菌の寸法は0.5μmx2.0μmである。このため、エレクトロスパン膜の平均細孔径が0.2μm未満であることが重要となる。更に、細菌に対する高い捕捉値を達成するためには、細孔径分布が比較的狭くなくてはならない(例えば、6log減少値(log reduction value:LRV))。エレクトロスパン膜の平均細孔径は、一定空隙率の平均フィルタ直径と関連付けることができる。0.3μmの平均細孔径に近づけるためには、エレクトロスパンマットの平均繊維直径が100nmレンジ未満でなくてはならない。PET支持体上のエレクトロスパンPVA及びPANのナノファイバ複合膜は、この目標に近づくことができた。
【0007】
別の懸念は、エレクトロスパンナノスキャフォールドの表面を官能化してサイズ排除では取り除けない小さなウイルス(又は金属イオン)を吸着(又は錯体形成)によって吸着しなくてはならない点である。典型的な修飾法には、帯電した基又はリガンドを化学的にグラフトすること(ただし多くの反応ステップを伴う)又は活性な基の物理的な吸収(基の付着は耐久性がないことが多い)が含まれる。あるいは、官能性添加物をエレクトロスピニングポリマー溶液に組み入れる。しかしながら、これだと全エレクトロスピニングパラメータに影響がでる可能性がある。このため、修飾は、異なるタイプの官能化のための特異的な経路を必要とする。
【0008】
代表的な特許は例えばOstreicherの米国特許第5085780号(Cuno社、1992年2月4日発行)、Weiの国際公開第00/37385号(Kimberly−Clark Worldwide社、2000年6月29日公開)、Yehらの米国特許出願公開第2002/0155225号(Cummings&Lockwood社、2002年10月24日公開)及びHouらの米国特許第6565749号(The Procter&Gamble社、2003年5月20日発行)であり、正に帯電したポリマー(例えば、ポリアミノ−ポリアミド、ポリエチレンイミン(PEI))で表面をコーティングし、続いてエピクロロヒドリン又は複数のエポキシ基で架橋することで繊維フィルタ(例えば、グラスファイバ)に電荷を付与する手軽な方法を提供している。この段落で引用した全ての特許及び特許公報は、全て本明細書に組み込まれる。
【0009】
Ostreicherの米国特許第5085780号では、セルロース繊維/シリカ系微粒子/繊維フィルタ要素を基体として使用し、繊維の表面を、一次層としてポリアミノ−アミン−エピクロロヒドリン/ポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂でコーティングした。フィルタの容量を向上させるために、第二級アミン(例えば、エチレンジアミン)も使用して更に修飾した。次に、フィルタを、メタニルイエロー(4ppm)、0.1μmラテックス粒子懸濁液及びパイロジェン水溶液(pH7〜12)を使用し、吸着工程について負荷試験に供した。
【0010】
Weiの国際公開第00/37385号では同様の修飾を行っているが、グラスファイバ/セルロース繊維を支持体として使用している。更に、アクリル樹脂バインダを、ポリアミノ−アミン−エピクロロヒドリン/ポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂系において使用した。
【0011】
Yehらの米国特許出願公開第2002/0155225号では、NaOHでの加水分解又はNH3(aq)でのアミノライズ(aminolyze)により基体としてポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))を修飾した。加水分解後、カルボキシレート基/アミド基が形成され、更にエポキシ−アンモニウム試薬と反応した。修飾後、アンモニウム基がポリエステルフィルタの表面に導入され、pH9でのメタニルイエロー(10ppm)吸着能がもたらされた。しかしながら、この特許では静的吸着実験しか行われなかった。
【0012】
Houらの米国特許第6565749号では主に、基体としてのAhlstrom社(ヘルシンキ、フィンランド)の様々なグレードのグラスファイバ、第四級アンモニウム単位を含有する修飾ポリマー、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテルで架橋したPEI及びジカルボン酸とのポリ(メチルビス(3−アミノプロピルアミン))の縮合により調製されたポリアミドを使用した。これらのフィルタの吸着容量を、細菌(クレブシエラ・テリゲナ(Klebsiella terrigena)、大腸菌、B.ジミヌタを含む)及びバクテリアファージMS2の両方での包括的な負荷試験に供した。フィルタは、機能しなくなるまでに最高5000mLの細菌又はウイルス(濃度は約106〜約108pfu/mL)懸濁液に耐え、またフィルタのLRVが低下し始めるまでに最高1000mLの懸濁液に耐えた。
【0013】
精密ろ過膜は、Chuらの米国特許第6790455号明細書(全て本明細書に組み込まれる)に開示されているように、細胞の貯蔵及び送達系を含めた様々な用途で使用されている。
【0014】
精密ろ過フィルタの使用寿命を延ばすことが、全ての市販の精密ろ過膜が抱えている主な課題である。ポリエチレンイミン(PEI)は、ウイルスに効果的な吸着剤であることが判明している。しかしながら、効果的に固定しない限り、すぐに洗い流されてしまう可能性がある。PEIで修飾したPAN/PETフィルタ(例えば、AWA−16−1。以下、「AWA」と称する。Sanko社(日本)から入手可能)は、バクテリアファージMS2に対して4log減少値(LRV)を有し得るが、これは短い間にすぎない。PEIは、架橋によりPAN/AWAで安定化させることができる。ジエポキシ基が、高架橋度及び制御された反応速度でもってPEIを架橋するための良い候補である。加えて、架橋反応にはグルタルアルデヒド(GA)という別の選択肢もあり、高流束、高捕捉率及び長寿命(高容量)ナノファイバ精密ろ過フィルタを、浄水用途に成し遂げることができる。
【発明の概要】
【0015】
本発明では、高流束で低圧力降下の精密ろ過(MF)膜及びこのMF膜の製造方法を提供する。この高流束で低圧力降下の精密ろ過膜は、ナノファイバ構造体を準備し、このナノファイバ構造体の表面を表面修飾剤で修飾することを含む方法で形成される。ナノファイバ構造体は、エレクトロスパンナノファイバスキャフォールド又はその混合物を含む。このエレクトロスパンナノファイバスキャフォールドは、ポリアクリロニトリル(PAN)又はポリエーテルスルホン(PES)/ポリエチレンテレフタレート(PET)又はこれらの混合物を含み得る。マイクロファイバスキャフォールドは、ミクロン又は数十ミクロンサイズレンジの直径を有するグラスファイバ又は他のファイバ又はこれらの混合物を含み得る。ナノファイバ構造体には、直径約50〜約500nm、好ましくは約100〜約400nmを有するナノファイバが含まれる。
【0016】
表面修飾剤には、グルタルアルデヒド(GA)又はエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)/グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)又はポリ(1−(1−ビニルイミダゾリウム)エチル−3−ビニルイミダゾリウムジブロミド(ポリ(VEVIMIBr))で架橋したポリエチレンイミン(PEI)及びポリビニルアミンが含まれる。好ましくは、表面修飾剤はインシチュ(in−situ)重合で生成され、またナノファイバ構造体上でコーティングを形成する。好ましくは、このコーティングは約5〜30nm、より好ましくは約10〜20nmの厚さを有する。
本発明の高流束で低圧力降下の精密ろ過膜の好ましい実施形態並びに本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付の図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1aは、コーティング前のPANエレクトロスパンナノファイバのSEM画像である。図1bは、ポリ(VEVIMIBr)でコーティングした後のナノファイバを示す。
図2】PANエレクトロスパン膜、ポリ(EOTMTA)/PAN及びポリ(VEVIMIBr)/PAN精密ろ過膜のTGA曲線を示すグラフである。
図3】PANエレクトロスパン膜、ポリ(EOTMTA)/PAN及びポリ(VEVIMIBr)/PAN精密ろ過膜のDSC曲線を示すグラフである。
図4】PANエレクトロスパン、ポリ(EOTMTA)/PAN及びポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜の機械的性質を示すグラフである。
図5】PANエレクトロスパン、ポリ(EOTMTA)/PAN及びポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜の細孔径分布を示すグラフである。
図6(a)】ポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜及び市販のGS0.22精密ろ過膜の場合のBSAの静的吸着を示すグラフである。
図6(b)】同じ2つの膜についてのラングミュア吸着等温式を示す。
図7】PEI/PAN/AWA及びCunoフィルタのpH=7での吸着容量を示すグラフである。
図8】PEI/PAN/AWAの吸着容量を示す試験管である。
図9】様々な予洗時間でのPEI/PAN/PET膜の吸着容量を示すグラフである。
図10】2つの異なるろ過ディスクサイズのPEI/PAN/AWAの吸着容量を示すグラフである。
図11】PEI/PAN/AWAの最大吸着容量を示すグラフである。
図12】PEI/PET膜の吸着容量を示すグラフである。
図13】PEI/PAN/PET膜及びCUNO(登録商標)フィルタのpH=9での吸着容量を示すグラフである。
図14】(EGdGE/GMACl/PEI)/PAN/PET膜のpH=9での吸着容量を示すグラフである。
図15】(EGdGE/GMACl/PEI)/PAN/PET膜の様々なpH値での吸着容量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、エレクトロスパンナノファイバスキャフォールド(例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)及びポリエーテルスルホン(PES))/ポリエチレンテレフタレート(PET))及びマイクロファイバスキャフォールド(例えば、グラスファイバ)及びこれらの混合物の、インシチュ重合で生成されるようなエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)で架橋したポリエチレンイミン(PEI)/グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)、グルタルアルデヒド(GA)で架橋したPEI/グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)又はEDdGEで架橋したポリビニルアミン又はGA若しくはポリ(1−(1−ビニルイミダゾリウム)エチル−3−ビニルイミダゾリウムジブロミド(VEVIMIBr)で架橋したポリビニルアミンでの表面修飾によって作製される高流束、高捕捉率で長寿命(高容量)のナノファイバ精密ろ過フィルタに関する。
【0019】
本発明のフィルタは、現在市販されている精密ろ過フィルタ(例えば、CUNO(登録商標)フィルタ、AHLSTROM(登録商標)フィルタ)と比較すると、ウイルス(例えば、バクテリオファージMS2)、アニオン染料(例えば、メタニルイエロー)及び金属イオン(例えば、クロメートイオン、鉛イオン、水銀イオン)に対する長期にわたる捕捉性を有する。同時に、初期濃度106プラーク形成単位(pfu)/mLのMS2に対する高い捕捉率(>5.2log減少値(LRV))をこのような複合フィルタを使用して最高40分間にわたって9mL/分(47mmディスク)で達成し得ることが判明している。市販のCUNO(登録商標)膜は最初に4.8LRVを達成したが、すぐに機能しなくなった。精密ろ過膜に関して本明細書で使用の用語「log減少値」又はLRVは、供給物中の生物又は微粒子の濃度のろ液中の生物又は微粒子の濃度に対する比の10を底とする対数であり、すなわちLRV=log(C供給物)−log(Cろ液)である。
【0020】
本発明のフィルタの高捕捉率及び長寿命は、メタニルイエロー(10ppm水溶液)の吸着でも観察された。アニオン染料の高捕捉率(>99%)は最高90分まで10mL/分(47mmディスク)で維持することができた。また、フィルタの高捕捉率及び長期使用性が、最も多く市販されている膜ならもっと早い段階で機能しなくなるpH9であっても観察された。フィルタの圧力降下も、同じ流量(0.2psi又は水頭高さ14cm)下では典型的な市販の精密ろ過フィルタのものより低い。ナノファイバ精密ろ過膜は、エレクトロスパン膜の実証済みの大量生産性及び架橋PEI/GTMACl、又はポリ(VEVIMIBr)を使用した単純な修飾工程により、手軽にスケールアップすることができる。更に、ナノファイバ精密ろ過膜の製造コストは比較的低い。これは水だけをこの工程での溶媒媒体として使用するからであり、これによって環境上の懸念の多くが最小限に抑えられる。
【0021】
本発明の高流束で長期使用性の精密ろ過フィルタは、エレクトロスパンナノファイバスキャフォールドを、架橋PEI/GTMACl又はポリカチオン(ポリ(VEVIMIBr))で表面修飾することによって形成される。この複合フィルタは、汚染された飲料水中の細菌及びウイルスを効果的且つ同時に除去する。精密ろ過フィルタの効率は重要な要件を満たし、細菌に関しては6LRV、ウイルスに関しては4LRVが最高1リットルの供給溶液(初期の細菌又はウイルス濃度:106pfu/mL、pH=9)の処理に関して達成され、圧力降下は、同じ流量での市販の精密ろ過フィルタのものより5倍低い。本発明の複合精密ろ過フィルタは、大量生産に向けて容易にスケールアップすることができる。
【0022】
ナノファイバの使用により、(1)実質的に膜の細孔径を変更することなく大きい表面対体積比が得られる、(2)表面の修飾がより容易で、特定ターゲット用にナノファイバ表面をカスタム設計する需要に対応でき、(3)ナノファイバを架橋することによって材料が一体化されて洗い流されることがないという利点が得られる。多くの点において、ナノファイバの使用は広い表面積を得るための「ナノ粒子」の使用に似ている。しかしながら、ナノ粒子をスキャフォールドに付着させるのはより困難である。
【0023】
本発明の高流束で低圧力降下の精密ろ過膜は以下の利点を有する。
【0024】
(1)高空隙率のエレクトロスパンナノスキャフォールド及び不織性基体を支持体として備えるフィルタは高流束及び低圧力降下を示す。更に、多くの他の多孔質支持体(例えば、フィルタペーパ、グラスファイバ不織布、メルトブローPET、PP不織布)を、ウイルスをろ過するための精密ろ過フィルタ製造用の不織性基体として使用することができる。
【0025】
(2)架橋PEI/GTMACl又はポリ(VEVIMIBr)は耐久性が極めて高く、またウイルス吸着容量が高いことから、精製用のそのような精密ろ過フィルタを可能にする。
【0026】
(3)膜を、ウイルスを除去するために、pH約3.0〜約9.0の広い範囲で使用することができる。
【0027】
(4)精密ろ過膜の製造は容易にスケールアップすることができる。これはエレクトロスピニングの場合のスケールアップ方法が当該分野で周知であり、また既に実際に行われているからである。
【0028】
(5)ナノファイバ精密ろ過膜の官能化/コーティング工程は環境に優しい。これは一次溶媒媒体として水しか使用していないからである。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明の階層的複合膜基体は、ファイバ直径が好ましくは約50nm〜300ミクロン、より好ましくは50nm〜50ミクロン、最も好ましくは100〜400nmの不織性のナノ及びマイクロファイバ基体(エレクトロスパンナノスキャフォールド(PAN及びPES)及び無修飾のマイクロファイバポリエステル(PET)不織ウェブを含む)を修飾することによって形成される。基体の表面を、インシチュ重合で生成されるようなエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)で架橋したポリエチレンイミン(PEI)/グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)又はグルタルアルデヒド(GA)で架橋したPEI/グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)又はEDdGEで架橋したポリビニルアミン又はGA若しくはポリ(1−(1−ビニルイミダゾリウム)エチル−3−ビニルイミダゾリウムジブロミド(VEVIMIBr)で架橋したポリビニルアミンでディップコーティングすることで修飾した。メタニルイエロー及びMS2の両方を、修飾した精密ろ過膜の負荷試験に使用した。本明細書で使用の用語「負荷試験(challenge test)」とは、細菌又は「負荷微粒子(challenge particulate)」を膜に通し、LRVを測定することによって精密ろ過膜の効率を試験する方法のことである。MS2及びメタニルについて高いlog減少値(LRV)がpH値3〜9の広い範囲にわたって得られた。
【0030】
本発明は、エレクトロスパンナノファイバ上に荷電分子モノマー、例えばアクリル酸ナトリウム(SA)、1−ビニル−3−ブチルイミダゾリウムブロミド(VBIMIBr)、1−(1−ビニルイミダゾリウム)エチル−3−ビニルイミダゾリウムジブロミド(VEVIMIBr)又はエトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート(SR502)の薄層を表面コーティングし、続いて熱開始剤で引き起こす(共)重合を通じて不織性の基体を修飾する手軽な経路も開発した。精密ろ過膜の細孔径及び細孔径分布を対応して低下させることによって、細菌に対する高い捕捉性に必要なサイズ排除要件の達成を支援することができる。一方、SA、VBIMIBr及び/又はVEVIMIBrの重合によって形成されるポリマーネットワークにおける正に帯電したセグメントは、ウイルス吸着部位としての役割を果たすことができる。
【0031】
ナノ及びマイクロファイバ基体の表面上の架橋されたポリマーネットワークは、単位体積あたりの固有の容量が大きいことから広いpH範囲にわたって耐久性があり、また長期にわたって利用することができる。架橋されたポリマーネットワークコーティングの厚さは約5〜50nm、好ましくは約5〜30nm、最も好ましくは約10〜20nmである。S/V=2/rであることから表面対体積比(S/V)はファイバ直径に関係し、「r」はファイバの半径である。このため、同じ量のファイバの場合、ファイバ直径が10μmから100nmに低下する場合、S/Vは50倍増加する。ファイバ直径の寸法における変化は表面コーティング工程に影響する。更に、単位体積あたりのファイバ材料の量が一定の場合、ファイバ直径が増大すると、空隙率及び有効細孔径が低下する。このため、これらのコーティングは、細孔径の制御において相加的効果を有し、これは既存の手法とは異なる。
【実施例】
【0032】
以下に記載の実施例は本発明を更によく理解するためのものであって、本発明の範囲をいかなる形でも限定しない。
【0033】
実施例1
材料
平均分子量25kDaの分岐ポリエチレンイミン(PEI)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)及びメタニルイエローをAldrich Chemical社(ミルウォーキー、ウィスコンシン州(Aldrich社))から購入した。PANエレクトロスパン膜を、ストーニーブルックで製造した。モノマーであるエトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート(EOTMTA)をPolysciences社(ワレントン、ペンシルバニア州)から購入し、阻害剤を使用前に除去した。熱開始剤である過硫酸カリウム(K228)をFluka社(スイス)から得た。エレクトロスパンポリアクリロニトリル(PAN)(Mw約150kDa、Aldrich社から購入)ナノファイバスキャフォールドを、エレクトロスピニングによりアルミホイル上に堆積させた。ポリビードミクロスフィア粒子懸濁液(約2.6wt%、0.20μm)を購入し、脱イオン(DI)水で100ppmにまで水系細菌のモデル供給溶液として希釈した。ウシ血清アルブミン(BSA)をSigma−Aldrich社から購入した。大腸菌は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から購入し、MS2を発展させた手順に従ってインキュベートした。
【0034】
実施例2
VEVIMIBrの調製
18.8g(0.20mol)の1−ビニルイミダゾール及び18.8g(0.20mol)の1,2−ジブロモエタンを150mLのアセトニトリルに溶解させた。混合物を60℃で48時間にわたって加熱し、続いて室温にまで冷却した。得られた固体試料を沈殿させ、エチルエーテルで3回洗浄した。真空オーブンで乾燥させると、VEVIMIBrが白色の粉末として得られた。この反応での収率は約95%であった。VEVIMIBrの1H NMR(溶媒としてDMSO−d6、δ、ppm)のスペクトルは9.638(N−CH−N、s、2H)、8.266(N−CH−CH、s、2H)、7.894(N−CH−CH、s、2H)、7.306〜7.387(N−CH=、tetra、2H)、5.949〜6.009及び5.413〜5.450(N−CH=CH2、d、4H)、4.822(N−CH2、s、4H)であった。
【0035】
実施例3
モノマー水溶液の調製
モノマー水溶液を、室温で1時間にわたって撹拌することで既定量のモノマー及び開始剤(K228)を脱イオン水に溶解させて調製した。表1に、使用した溶液の組成を挙げる。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例4
PANエレクトロスパン膜(実施例1)を、VEVIMIBr組成を有するモノマー水溶液II(実施例3)に浸した。過剰な溶液を高速ドローダウンツールで排出した。膜を110℃で30分間にわたって加熱し、水で徹底的に洗浄して未反応モノマーを除去してから使用した。
【0038】
実施例5
マルチビニルモノマーのフリーラジカル重合により形成する超薄コーティング層
モノマーEOTMTA及びVEVIMIBr(それぞれ(I)、(II)とする)の構造を以下に示す。
【化1】
コーティング工程において、PANエレクトロスパンナノファイバの表面を、水溶液のモノマー及び熱開始剤の薄層で被覆した。フリーラジカルを発生させる熱開始剤は、ナノファイバの表面上に存在するEOTMTA(又はVEVIMIBr)の重合を引き起こした。最終的に、超薄ポリマーネットワークが乾燥工程で形成された。3個のビニル基を有するEOTMTAモノマーは、表面、特にはエレクトロスパンナノファイバの交差点でポリマーネットワークを形成する「架橋剤」としての役割を果たした。エレクトロスパンナノスキャフォールドの機械的性質は重合後に大幅に改善され、これは引張実験によって確認された(実施例10)。このようにして、ポリ(EOTMTA)修飾PANエレクトロスパン膜は、精密ろ過用の自立型の膜としての使用に適していると判断された。
【0039】
実施例6
使用するコーティングポリマーの厚さは、式(1):
【数1】
(式中、L0はエレクトロスパンナノファイバの長さであり、m0(g)はPANエレクトロスパンナノファイバの質量であり、r0(cm)はエレクトロスパンナノファイバの半径であり、d0(g/cm3)はPANの密度であり、rは修飾したナノファイバの半径であり、S(cm2)は表面積である)を使用して計算できる修飾したナノファイバの表面積に左右される。ナノファイバ表面に沿ったコーティング層が均一であると仮定すると、コーティングしたポリマーの体積(V、cm3)と修飾したナノファイバの半径(r、cm)との関係は式(2):
【数2】
で表わすことができる。
【0040】
このため、コーティング層の厚さ(r−r0)は、
【数3】
を用いてポリマーの配合体積(V)によって制御することができる。コーティング層の厚さはファイバ直径(r0)及びモノマー溶液の濃度に比例する。約0.8〜約1.0wt%のモノマー水溶液を使用して比較的均一なコーティング層が得られることが判明している。ファイバ直径が150±30nmの1gのPANエレクトロスパンナノファイバの場合、コーティング層の厚さは約15nmである。
【0041】
モノマーで繋ぎとめた正に帯電したイミダゾリウムカチオンであるVEVIMIBrを合成し、正に帯電したMF膜の作製に使用した。このため、この膜は負に帯電した種(典型的には水系ウイルスのモデルと見なされるバクテリオファージMS2等)に対する高い吸着容量を有すると期待された。
【0042】
実施例7
図1は、PANエレクトロスパンナノファイバ及びポリ(VEVIMIBr)でコーティングしたナノファイバ(実施例4)のSEM画像である。PANエレクトロスパンナノファイバの直径は150±30nmであり、図1(a)から、ストーニーブルックで開発されたLeikaソフトウェアで推測された。図1(b)は、ナノファイバがポリ(VEVIMIBr)に、特にはナノファイバの交差点で包まれたことを示し、これは実施例10で論じる改善された機械的性質の良い証拠である。
【0043】
実施例8
試料の熱重量分析(TGA)走査を10℃/分で60℃から800℃まで空気流下、Perkin−Elmer社のTGA7装置を使用して行った。PANエレクトロスパンナノファイバの分解温度は、図2に示すように、317.2℃で開始し、5℃の降下中にその質量の41.8%を急速に失った。しかしながら、ポリ(EOTMTA)で架橋したPANは324.6℃で急速に分解を開始し、2.4℃以内に39.1%を失い、一方、ポリ(VEVIMIBr)は急速に334.8℃から分解し、2.4℃以内に36.4%を失った。この変化は、ナノファイバの微分質量%からはっきりと観察することができた。最大ナノファイバ質量低下率は、ポリ(EOTMTA)及びポリ(VEVIMIBr)での官能化後、319.0℃から325.6及び336.0℃にそれぞれ上昇した。PANエレクトロスパンナノファイバの分解温度は、ポリ(VEVIMIBr)の試料ではポリ(EOTMTA)の試料より高い温度で安定した。これは異なる配合量に起因し得た:前者は41.8±4.0mg/cm3であり、後者は9.5±1.9mg/cm3であり、約4.4倍低い(実施例3)。
【0044】
実施例9
実施例8の結論を更に、図3に示すDSCの結果で確認した。PAN系MF膜の酸化環化中の温度は、ポリ(EOTMTA)及びポリ(VEVIMIBr)のコーティング後、292.7℃からそれぞれ299.7℃及び317.3℃に大きく上昇した。これは恐らく環化を遅延させる表面コーティング層のせいであり、これが温度上昇につながった。ポリ(VEVIMIBr)/PANはポリ(EOTMTA)/PAN膜より高い安定性を保持し、これはTGAの結果とぴったり一致した。これらの発見は、表面修飾が成功であったろうことも示唆している。
【0045】
実施例10
実施例4の試料を室温で改良型INSTRON(登録商標)4442引張装置(Instron Industrial Products Group、グローブシティ、ペンシルバニア州)を使用して一軸延伸することによって対称変形を行った。INSTRON(登録商標)の顎部間の初期の距離は10mmであり、選択した延伸率は5mm/分であった。ポリ(EOTMTA)及びポリ(VEVIMIBr)修飾PANナノファイバ膜の機械的性質は、図4に示すように、PANエレクトロスパン膜の機械的性質より大幅に向上していると判明した。修飾PANナノファイバ膜での引張実験からは降伏点が観察されなかった。しかしながら、極限引張強度は約3〜4倍上昇した。これらの結果はPANナノファイバの表面上、特にはナノファイバ間の交差点でポリマーネットワーク層が形成されたことの証拠であり、すなわちEOTMTA及びVEVIMIBrの重合は成功裡にエレクトロスパンナノファイバを「架橋」し、また交差点同士を「結合(solder)」した。更に、破断点伸び及びヤング率がほぼ変化しなかったという実験から得られた証拠は、修飾したナノファイバ膜を自立型フィルタとして使用できることを実証している。
【0046】
実施例11
実施例4における試料のバブルポイント、平均細孔径及び細孔径分布を、キャピラリフローポロメータ(FPA−1500A)(Porous Materials社、イサカ、ニューヨーク州)を使用して測定した。表面張力15.9ダイン/cmの濡れ流体(wetting fluid)GALWICK(登録商標)を膜を濡らすのに使用した。図5は、PANエレクトロスパン膜、ポリ(EOTMTA)/PAN及びポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜の細孔径及び細孔径分布を示す。PANエレクトロスパンナノスキャフォールドの平均細孔径は0.41μmであり、広い細孔径分布が観察された。ポリ(EOTMTA)及びポリ(VEVIMIBr)での表面修飾後、膜の平均細孔径は約0.21μm及び約0.27μmにまでそれぞれ低下し、細孔径分布ははるかに狭くなり、このことは0.2μm粒子捕捉率の結果によっても示唆されている。
【0047】
実施例12
流束及び粒子捕捉性についてカスタム設計した装置で負荷試験を行い、細孔径分布をキャピラリフローポロメータ(FPA−1500A)でGALWICK(登録商標)を流体として使用して測定した。セルロースナノウィスカ精密ろ過膜の粒子ろ過を、流量1.0mL/分で全部で10mLの懸濁液について行い、透過物の粒子濃度及び供給溶液の粒子濃度を、全有機炭素分析計(TOC−5000、Shimadzu Scientific Instruments社、コロンビア、メリーランド州)で測定した。全てのデータを収集し、3重の試料を使用して測定を繰り返した。ナノファイバ膜及び入手可能な市販のMF膜GS0.22の最大細孔径、平均細孔径、透水性及び0.2μm粒子捕捉率を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
PANエレクトロスパン膜の最大細孔径及び平均細孔径の両方が、架橋されたポリマーネットワーク層での表面修飾後に低下した。平均細孔径は0.21μmにまで低下し、これはポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜が水系細菌の殆どを排除できたことを含意し、これは0.2μm粒子懸濁液の捕捉によって確認された。修飾後、粒子の捕捉率は13.7%から96.5%にまで上昇し、透水性は55%低下したが、依然として市販のGS0.22膜の値より2.5倍高い。更に、ポリ(EOTMTA)/PAN及びポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜の水接触角は、元々のPANエレクトロスパン膜の50.6°と比較すると、大幅にそれぞれ22.4°及び18.0°に低下した。ナノファイバ膜の超親水性表面はその防汚性を改善するはずである。
【0050】
実施例13
ポリ(VEVIMIBr)、ポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜に繋ぎとめられたイミダゾリウムカチオンにより、膜は、向上した機械的性質及び細孔径/細孔径分布に加えて、ウイルスに対する高い吸着容量を示すと予測された。ウシ血清アルブミン(BSA)は等電点(pI)4.7のモデルタンパク質であり、pH7.2で負に帯電するはずである。1.0mg/mLのリン酸緩衝液(PBS、pH7.2)中のBSAを、ポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜及びニトロセルロースから37℃で作製されるGS0.22市販膜の両方の負荷試験に使用した(本明細書において、「等電点」又は「pI」とは、特定の分子又は表面が正味の電荷を帯びないpHである)。ナノファイバMF膜におけるBSAの吸着容量をバッチで測定した。0.03gのナノファイバ膜を、振動ベッド上で、PBS(pH=7.2)中の10mLのBSA溶液(1.0mg/mL)に約0〜約9時間にわたって浸漬させた。膜上に吸着されたBSAの量を、279.9nmでの光吸収での測定による吸着前後でのBSA溶液の濃度変化から計算した。最大吸着容量を、1.0、0.5、0.25及び0.1mg/mLの様々な濃度のBSAを用いた場合のラングミュア吸着等温式を用いることで求めた。2.5時間後、BSAの濃度は平衡に達したと考えられ、ナノファイバ膜へのBSAの吸着は完了した。図6(a)は、時間の関数としての吸着容量を示す。
【0051】
膜は、2.5時間にわたる1mg/mLのBSA緩衝液における吸着後に飽和した。ポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜の吸着容量は22.9mg/gであり、市販のGS0.22精密ろ過膜の吸着容量より65%高かった。BSAのpIは4.7であり、pH7.2でほぼ負に帯電する。したがって、正に帯電したポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜は、静電的相互作用により高い吸着容量を有する。最大吸着容量は、式(4)においてラングミュア吸着等温式にフィットさせることで得られる。
〔数4〕
1/qe=1/qm+kd/qm×(1/ce) (4)
式中、qmは単層被覆での最大吸着(mg/g)であり、kdはラングミュア吸着平衡定数(mL/mg)であり、これは膜結合部位の親和性を反映する。図6(b)及び式(4)から、ポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜によるBSAの最大吸着は35.1mg/gであり、これは18.5mg/gのGS0.22膜のものより約2倍高く、ポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜を高効率MFフィルタとして応用できる可能性を示唆している。
【0052】
実施例14
細菌負荷試験を、デッドエンドろ過撹拌セル(Millipore 8050−5122、300rpmで撹拌)において室温で、10mLの大腸菌懸濁液(約106cfu/mL)を使用して行った。10mLの懸濁液を膜に一定流量(192L/m2h)で通してろ過し、その間、0.2psiの低圧力降下が観察された。透過流束及び圧力降下を試験中にモニタした。バクテリアファージMS2をモデルウイルス粒子として使用してセルロースナノウィスカMF膜の吸着容量を20℃で評価した。約106プラーク形成単位(pfu)/mLの初期濃度のMS2ファージをリン酸緩衝液(pH=7.2)に懸濁させた。10mLの懸濁液を膜に一定流量(192L/m2h)で通してろ過し、その間、0.2psiの低圧力降下が観察された。透過物をオートクレーブで処理したバイアルに回収し、ウイルス濃度をpfu法で求めた。pfu測定に関して、大腸菌(アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)15597−B1)をウイルス宿主細菌として使用し、トリプチケースソイ寒天培地プレート(Teknova社)を使用して10〜100pfu/プレートを様々な透過物希釈比で得た。全ての実験を最低3回繰り返した。
【0053】
【表3】
【0054】
表3の全てのMF膜が比較的低い圧力降下(<2psi)及び大腸菌に対する高い捕捉率を有する。しかしながら、帯電した表面を有さないPANエレクトロスパン及びポリ(EOTMTA)/PAN膜はMS2捕捉率がゼロであった。対照的に、正に帯電した膜であるポリ(VEVIMIBr)/PANは4LRVにもなる完全捕捉性を有した。市販のGS0.22は1LRV捕捉率と、ポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜のものと比較した場合に比較的高い圧力降下を有した。ポリ(VEVIMIBr)/PANナノファイバ膜の耐久性は、膜を純水で14日間にわたって洗浄し、また膜を106pfu/mLのMS2懸濁液での負荷試験に再度供することで判定されているが、MS2に対する3LRVより高い値は、膜ではいまだに達成されていない。
【0055】
実施例15
PEI/EGdGEでのPAN/AWA基体の修飾
連続エレクトロスピニング工程から得られたPAN/AWAフィルタを、PEI(1.0wt%)及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)(架橋剤、0.2wt%)の混合物でコーティングした。詳細には、有効面積100cm2のPAN/AWA膜片をPEI(1.0wt%)及びEGdGE(0.2wt%)の溶液に30秒間にわたって浸漬させた。膜をガラスプレート上に置き、両側をSealast Vibacテープでテープ止めした(このテープの厚さは0.04mmであり、両側を2層でテープ止めした)。余分な溶液をガラス棒を使用して排出させ、膜において17.5mg/cm2のPEI及びEGdGE溶液で維持した。膜を、110℃で20分間にわたって加熱することで乾燥させた。0.2mg/cm2のPEIをPAN/AWA膜上にこの方法でロードした。
【0056】
実施例16
PEI/EGdGEでのPET基体の修飾
ドイツ製のポリエチレンテレフタレート(PET)Novatexx 2413を、PEI(1.0wt%)及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)(架橋剤、0.2wt%)の混合物でコーティングした。詳細には、有効面積140.5cm2のPET片をPEI(1.0wt%)及びEGdGE(0.2wt%)の溶液に30秒間にわたって浸漬させた。余分な溶液をガラス棒を使用して排出させ、膜において18.5mg/cm2のPEI及びEGdGE溶液で維持した。膜を、110℃で20分間にわたって加熱することで乾燥させた。0.2mg/cm2のPEIをPET膜上にこの方法でロードした。
【0057】
実施例17
PEI/GTMACl/EGdGEでのPAN/PET基体の修飾
PAN/PETを、PEI、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)の混合物でコーティングした。詳細には、有効面積140.5cm2のPET片をPEI、GTMACl及びEGdGEの溶液に30秒間にわたって浸漬させた。余分な溶液をガラス棒で排出させ、膜において18.6mg/cm2のPEI及びEGdGE溶液を維持した。膜を、110℃で25分間にわたって加熱することで乾燥させた。0.15mg/cm2のGTMAClをPET膜上にこの方法でロードした。
【0058】
実施例18
メタニルイエローを吸着した試料(実施例15〜17)の試験手順
25mmの試料ディスクを蒸留水で10分間にわたって3.0mL/分又は60分間にわたって3.0mL/分でそれぞれ洗浄した。47mmの試料ディスクを純水で10分間にわたって10分/mLで洗浄した。直径25mmの市販のCUNO(登録商標)膜(Cuno社、メリデン、コネチカット州)を対照試料として使用し、同じ手順で処理した。メタニルイエロー(1.5ppm又は10ppm)を使用し、溶液流量を、25mm試料ディスクについては3.0mL/分、47mm試料ディスクについては10mL/分で維持した。透過物を0分から最高180分の異なるタイミングで回収した。測定を新しい膜を使用して少なくとも2回繰り返し、再現性があることが判明した。紫外・可視分光法を用いて透過物のメタニルイエロー濃度を434.2nmで測定した。
【0059】
実施例19
図7は、PEI/PAN/AWA及びCUNO(登録商標)試料の吸着容量を示す。3mLの透過物を各時間間隔後に回収し、メタニルイエローの量を上述したようにUVを使用して測定した。試験前に、PEI/PAN/AWA及びCUNO(登録商標)膜を純水で10分間にわたって3mL/分で洗浄した。20分間の吸着で、CUNO(登録商標)試料の捕捉率は0であり、一方、PEI/PAN/AWAは依然として93.8%±0.2%の捕捉率を有した。既に最初の5分で値は変動し始め、これはCUNO(登録商標)試料が染料をあまり迅速には吸着できず、またその容量を約10分後にはすぐに失ったことを示す。CUNO(登録商標)試料は約20分後に機能しなくなり、残りの染料は膜を通過した。PEI/PAN/AWA膜(2回繰り返された値)は90分後も吸着に効果的でありつづけ、これはCUNO(登録商標)試料のものより4〜5倍高い。
【0060】
実施例20
図8は実施例19の回収された透過物を示す。5分後、CUNO(登録商標)フィルタが機能しなくなりつつあることが観察された。しかしながら、PEI/PAN/AWA膜は、捕捉性を大きく失うことなく90分後も使用できた。
【0061】
実施例21
様々な洗浄時間でのPEI/PAN/AWA膜(実施例15で作製)の吸着容量を図9に示す。それぞれ10分及び60分の予洗後、試料の吸着結果に明らかな差異は観察されなかった。図9は、透過物の濃度についてスケールを拡大したPEI/PAN/AWA膜及びCUNO(登録商標)フィルタの吸着容量を示す。別の膜を使用しての10分の結果は図7のものと同様であり、試料についての結果の再現性を示している。この結果は、架橋したPEIがPANナノファイバを包み、また恒久的なポリマーネットワークを形成し得たことを示し、このポリマーネットワークは予洗後も長期にわたって膜に保持することができる。
【0062】
実施例22
2つの異なるろ過ディスク面積(実施例15で作製)を用いることによるPEI/PAN/AWA膜(実施例15から)の吸着容量を図10に示す。直径47mmの試料ディスクを負荷試験に供した。膜を10分間にわたって10mL/分で予洗し、吸着実験を60分間にわたって1.5ppmのメタニルイエロー10mL/分で行った。結果を、直径25mmのPEI/PAN/AWA試料で得られたものと比較した。
【0063】
実施例23
1.70x105pfu/mLのMS2(最大LRVは5.2であった)を使用してPEI/PAN/AWA試料ディスク(実施例15の直径47mmのディスク)を9mL/分の流量、pH=6.5及び室温で負荷試験に供した。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
PEI/PAN/AWAは両方の市販膜、特にはそれなりの高い圧力降下を示すCUNO(登録商標)試料のものより高い使用性を有した。市販のフィルタと比較した場合の、PEI/PAN/AWAの約2〜3倍長い使用性を表4に示す。PEI/PAN/AWAの圧力降下は、フィルタの細孔にウイルスが詰まることで、試験中に上昇した。PEI/PAN/AWAフィルタはウイルス吸着だけに使用されたわけではなく、細菌(大腸菌、B.ジミヌタを含む)に対しても高い捕捉性(>6LRV)を有し得る。しかしながら、CUNO(登録商標)及びAHLSTROM(登録商標)フィルタは、これらの膜の細孔径がより大きいことからウイルスにのみ使用された。
【0066】
実施例24
実施例15のPEI/PAN/AWA膜を更に、最高180分間にわたる1.5ppmのメタニルイエロー溶液でのそれぞれ90分、180分の異なる試験時間の負荷試験に供した。結果を図11に示す。供給溶液の流量は、直径25mmのフィルタを使用して3mL/分であった。膜の圧力降下を試験工程中にモニタした。
【0067】
メタニルイエローの捕捉率は、180分間の吸着後、90%を超えて維持されることが観察された。圧力降下は、90分間の試験後、3.5psiであった。しかしながら、180分間の試験後、圧力降下は1.2から14psiに増大し、これはPEI/PAN/AWA膜が長時間にわたる吸着後(1.5ppmの染料で最高3時間)に詰まったことを示した。この問題に対処するために、実施例25に示すように、PETを、架橋PEI修飾精密ろ過膜を作製するための支持体として利用した。
【0068】
実施例25
直径25mmの実施例16の架橋PEI/PET膜ディスクを純水で10分間にわたって3mL/分で洗浄し、図12に示すように、異なる濃度及び異なる流量でのメタニルイエロー溶液の吸着について負荷試験に供した。PEI/PET膜を、異なる濃度のメタニルイエロー水溶液での負荷試験に供した。PEI/PET膜は1.5ppm溶液でたちまち機能しなくなった。しかしながら、流量を1mL/分にまで低下させると又は染料溶液の濃度を0.5ppmにまで低下させると最高90分までかなり高い捕捉率が観察された。より重要なことに、圧力降下はろ過工程中、約0psiであった。この結果は、大きな細孔径を有する基体を、本発明の表面修飾剤での処理後に低圧フィルタとして使用できることを示す。
【0069】
実施例26
高pH溶液を、実施例15の架橋PEI/PAN/AWA膜及び市販のCUNO(登録商標)精密ろ過フィルタの負荷試験に使用した。直径25mmの膜ディスクを純水で10分間にわたって3mL/分で洗浄した。pH9の1.5ppmのメタニルイエロー溶液を試験に使用し、流量は3mL/分であった。CUNO(登録商標)フィルタの厚さは約300μmであり、PEI/PAN/AWA膜の厚さは約150μmであった。架橋PEI/PAN/AWA膜のPAN基体の厚さは約50μmであった。全ての膜が約5分後に吸着試験に失敗した。CUNO(登録商標)フィルタの圧力降下は、ろ過後、約0.3psiであった。pH9でのPEI/PAN/PET膜及びCUNO(登録商標)フィルタの吸着容量を図13に示す。これらの結果は、PEI/PAN/PET膜のpH耐性を上昇させるために第四級アミノ種を使用し得たことを示す。
【0070】
実施例27
直径25mmの、異なる量の3つの構成成分(それぞれEGdGE/GTMACl/PEI=0.2%/0.8%/1.0%、0.1%/1.6%/0.5%及び0.05%/2.0%/0.25%)で作製したEGGE/GTMACl/PEI膜ディスクを、Milli−Q水(25℃で18.2MΩcm-1を有する)で10分間にわたって3mL/分で洗浄した。pH=9.1の1.5ppmのメタニルイエロー溶液を使用して、膜を流量3mL/分の負荷試験に供した。GTMAClの濃度を1.6wt%より高く上昇させた場合、高メタニルイエロー染料(pH9)捕捉率が、最高40分間にわたって達成され、これは同じ条件下のCUNO(登録商標)MFフィルタのものより8倍高い。試験後の圧力降下はそれぞれ2.5、2.0及び2.3psiであった。(EGGE/GMACl/PEI)/PAN/PET及びCUNO(登録商標)MFフィルタのpH9での吸着容量を図14に示す。EGGE/GTMACl/PEI膜を、PAN/PETにPEI、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)及びエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)の混合物をEGGE/GTMACl/PEI比=0.1wt%/1.6wt%/0.5wt%でコーティングすることによって作製した。様々なpH値(それぞれ3.1、7.0及び9.2)のメタニルイエロー溶液(1.5ppm)を使用して膜を負荷試験に供した。異なるpH値での(EGGE/GMACl/PEI)/PAN/PET膜の吸着容量を図15に示す。少なくとも30分間にわたって試験した場合、膜は3つのpH値(3.1、7.0及び9.2)のそれぞれについて>60%の捕捉率を有した。これは、50%の捕捉率を閾値と定義した場合に、膜が確固たる吸着容量を有することを示した。
【0071】
したがって、本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、当業者ならば、本発明の趣旨から逸脱することなく他の実施形態を作りだし得ることを理解する。また、全てのそのような更なる改変及び変更を本明細書に記載の請求項の真の範囲内に含むものとする。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕高流速で低圧力降下の精密ろ過膜を形成する方法であって、
ナノファイバ構造体を準備すること、及び
前記ナノファイバ構造体の表面を表面修飾剤で修飾することを含み、
前記表面修飾剤が、グルタルアルデヒド(GA)又はエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)/グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)で架橋したポリエチレンイミン(PEI)及びポリビニルアミン(Lupamin)、又はポリ(1−(1−ビニルイミダゾリウム)エチル−3−ビニルイミダゾリウムジブロミド(ポリ(VEVIMIBr))を含む、前記方法。
〔2〕前記ナノファイバ構造体が、エレクトロスパンナノファイバスキャフォールド又はグラスマイクロファイバスキャフォールド又はこれらの混合物を含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記エレクトロスパンナノファイバスキャフォールドが、ポリアクリロニトリル(PAN)又はポリエーテルスルホン(PES)/ポリエチレンテレフタレート(PET)又はこれらの混合物を含む、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記ナノファイバ構造体が、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン(PES)/ポリエチレンテレフタレート(PET)又はこれらの混合物を含むエレクトロスパンナノファイバスキャフォールドを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔5〕前記ナノファイバ構造体が、約50nm〜約5ミクロンの直径を有するファイバを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔6〕前記ナノファイバ構造体が、約50〜約500nmの直径を有するファイバを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔7〕前記表面修飾剤が、インシチュ重合で生成される、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕前記表面修飾剤が前記ナノファイバ構造体の表面上でコーティングを形成し、前記コーティングが約5〜30nmの厚さを有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔9〕前記表面修飾剤が前記ナノファイバ構造体の表面上でコーティングを形成し、前記コーティングが約10〜20nmの厚さを有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔10〕高流速で低圧力降下の精密ろ過膜を形成する方法であって、
エレクトロスパンナノファイバスキャフォールド又はグラスファイバスキャフォールド又はこれらの混合物を含むナノファイバ構造体を準備すること、及び
前記ナノファイバ構造体の表面を表面修飾剤で修飾することを含み、
前記表面修飾剤が、グルタルアルデヒド(GA)又はエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)/グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)で架橋したポリエチレンイミン(PEI)及びポリビニルアミン(Lupamin)、又はポリ(1−(1−ビニルイミダゾリウム)エチル−3−ビニルイミダゾリウムジブロミド(VEVIMIBr)を含み、前記表面修飾剤がインシチュ重合で生成される、前記方法。
〔11〕前記エレクトロスパンナノファイバスキャフォールドが、ポリアクリロニトリル(PAN)又はポリエーテルスルホン(PES)/ポリエチレンテレフタレート(PET)又はこれらの混合物を含む、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕前記ナノファイバ構造体が、約50nm〜約5ミクロンの直径を有するナノファイバを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔13〕前記表面修飾剤が前記ナノファイバ構造体の表面上でコーティングを形成し、前記コーティングが約50〜500nmの厚さを有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔14〕浄水用の精密ろ過膜であって、
エレクトロスパンナノファイバスキャフォールド又はグラスファイバスキャフォールド又はこれらの混合物を含むナノファイバ構造体と、
表面修飾剤を含む、前記ナノファイバ構造体に適用されたコーティングとを備え、
前記表面修飾剤が、グルタルアルデヒド(GA)又はエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGdGE)/グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMACl)で架橋したポリエチレンイミン(PEI)及びポリビニルアミン(Lupamin)、又はポリ(1−(1−ビニルイミダゾリウム)エチル−3−ビニルイミダゾリウムジブロミド(VEVIMIBr)を含み、前記表面修飾剤がインシチュ重合で生成される、前記精密ろ過膜。
〔15〕前記エレクトロスパンナノファイバスキャフォールドが、ポリアクリロニトリル(PAN)又はポリエーテルスルホン(PES)/ポリエチレンテレフタレート(PET)又はこれらの混合物を含む、前記〔14〕に記載の精密ろ過膜。
〔16〕前記ナノファイバ構造体が、約50〜約5000nmの直径を有するナノファイバを含む、前記〔14〕に記載の精密ろ過膜。
〔17〕前記表面修飾剤が前記ナノファイバ構造体の表面上でコーティングを形成し、前記コーティングが約5〜30nmの厚さを有する、前記〔14〕に記載の精密ろ過膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15