(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130815
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】配管固定クリップ
(51)【国際特許分類】
F16B 7/04 20060101AFI20170508BHJP
F16L 3/24 20060101ALI20170508BHJP
F16B 2/24 20060101ALI20170508BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20170508BHJP
F16B 2/10 20060101ALN20170508BHJP
【FI】
F16B7/04 302D
F16L3/24 A
F16B2/24 B
F16L3/10 Z
!F16B2/10 E
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-146552(P2014-146552)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-23673(P2016-23673A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】株式会社ブレスト工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】柳森 浩
(72)【発明者】
【氏名】清原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】石川 秀
(72)【発明者】
【氏名】角田 美久
(72)【発明者】
【氏名】三浦 正史
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−65741(JP,A)
【文献】
特開2001−50427(JP,A)
【文献】
実開昭64−14984(JP,U)
【文献】
実開昭53−165219(JP,U)
【文献】
特開2012−189128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/00−7/22
F16B 2/00−2/22
F16L 3/00−3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リップ溝形鋼の開口部側に配管を挟着支持せしめる配管支持金具に装着して配管支持金具に配管を固定する配管固定クリップであって、
配管支持金具は、リップ溝形鋼の開口部に形成されたリップ部に係止する係止部が一端部に形成されると共に、他端部に固定ねじが貫通する貫通孔を有する連結端部が形成された一対の帯状挟着体が設けられ、リップ部に係止した一対の帯状挟着体にて配管を側面から挟着するように構成され、
配管固定クリップは、配管支持金具の一対の連結端部を挿入せしめる挿入口が形成され該連結端部挿入時に各連結端部の貫通孔に係止せしめる係止突起が挿入口内に設けられ、
リップ部に係止した一対の帯状挟着体にて配管を側面から挟着すると共に、一対の帯状挟着体の各連結端部を配管固定クリップの挿入口に挿入し、連結端部相互を連結して帯状挟着体に配管を固定するように構成したことを特徴とする配管固定クリップ。
【請求項2】
前記帯状挟着体は、前記配管の側面に沿った湾曲面を有し、前記リップ部に係止した一対の前記帯状挟着体にて前記配管を側面から挟着したときに、前記配管の頂部で前記連結端部が屈曲され、前記配管固定クリップの前記挿入口に挿入する位置で平行に突出するように構成された請求項1記載の配管固定クリップ。
【請求項3】
前記係止突起は、テーパー面部と係止部とを有する断面楔形状を成し、前記連結端部を配管固定クリップの挿入口に挿入したときに、前記貫通孔に係止部が係止するまでテーパー面部に沿ってスライド移動するように構成された請求項1又は2記載の配管固定クリップ。
【請求項4】
前記連結端部の前記貫通孔にバーリングタップが形成され、前記配管固定クリップの前記挿入口の内部に前記連結端部を各別に収納するように仕切り板が形成され、
該仕切り板にて仕切られた各挿入口に前記連結端部を挿入したときに前記係止突起がバーリングタップを強制的に乗り越えて前記貫通孔内に係合されるように構成した請求項1乃至3いずれか記載の配管固定クリップ。
【請求項5】
前記配管固定クリップは合成樹脂材又は金属材にて形成され、前記帯状挟着体の各連結端部全体を包み込むキャップ形状を成すように構成した請求項1乃至3いずれか記載の配管固定クリップ。
【請求項6】
前記配管固定クリップは金属材にて形成され、前記連結端部の各貫通孔を外側から挟持する断面略U字形状を成すように構成した請求項1乃至3いずれか記載の配管固定クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線管等をリップ溝形鋼に支持する配管支持金具の固定ねじに代えて配管支持金具に装着する配管固定クリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線管やガス管、水道管など各種の配管を設置する工事において、リップ溝形鋼と配管支持金具とを使用する工事が行われている。この工事では、リップ溝形鋼の開口部側に配管支持金具を連結し、この配管支持金具で配管を挟着支持するものである(特許文献1参照)。すなわち、配管支持金具は、リップ溝形鋼の開口部に形成されたリップ部に係止する一対の帯状挟着体を備え、これら帯状挟着体の間に配管を挟着した状態で、各帯状挟着体の解放端部を貫通する固定ねじを使用して配管を配管支持金具に固定するものである。
【0003】
特許文献1のように配管支持金具に配管を固定する際に固定ねじを使用すると、固定ねじのねじ止め作業が煩雑になる。そのため、このねじ止め作業を簡略化するために、固定ねじを使用しないタイプの配管支持金具が提案されている(特許文献2参照)。この配管支持金具では、帯状挟着体の解放端部に係合突起を設けたもので、固定ねじの代わりにこれらの係合突起を相互に係合するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭56-2067号公報
【特許文献2】特公昭57-55958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、固定ねじの代わりに係合突起を係合する配管支持金具では、帯状挟着体に弾発力を付与し、この弾発力を利用して係合突起を係合させる構成である。そのため、係合突起を係合するには、この弾発力を抑え込みながら解放端部相互の間隔を狭めて係合させるので、係合突起を係合するために強力な押圧力を要するといった課題があった。従来では、工具を用いて挟着体の解放端部相互の間隔を狭めていたが、挟着体の弾発力が強力なので、係合作業中に工具や係合部が外れる場合もあり、思わぬ怪我を負う虞もあった。
【0006】
また、係合突起を係合して配管を固定した後、この係合突起が外向きに突出していると、この係合突起の先端が作業員の衣服に引っ掛かる虞がある。しかも、特許文献1のように固定ねじを使用した配管支持金具でも配管を固定した後は、固定ねじの先端が露出しているので同様の不都合が生じていた。
【0007】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、固定ねじや係合突起を使用しなくても電線管等の配管をワンタッチで配管支持金具に固定することが可能になり、しかも配管固定時及び固定後のいずれの作業も極めて安全に行うことができる配管固定クリップの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、リップ溝形鋼Pの開口部側に配管Qを挟着支持せしめる配管支持金具10に装着して配管支持金具10に配管Qを固定する配管固定クリップ1であって、
配管支持金具10は、リップ溝形鋼Pの開口部に形成されたリップ部P1に係止する係止部12が一端部に形成されると共に、他端部に固定ねじが貫通する貫通孔14を有する連結端部13が形成された一対の帯状挟着体11が設けられ、リップ部P1に係止した一対の帯状挟着体11にて配管Qを側面から挟着するように構成され、
配管固定クリップ1は、配管支持金具10の一対の連結端部13を挿入せしめる挿入口2が形成され該連結端部13挿入時に各連結端部13の貫通孔14に係止せしめる係止突起3が挿入口2内に設けられ、
リップ部P1に係止した一対の帯状挟着体11にて配管Qを側面から挟着すると共に、一対の帯状挟着体11の各連結端部13を配管固定クリップ1の挿入口2に挿入し、連結端部13相互を連結して帯状挟着体11に配管Qを固定するように構成したことにある。
【0009】
第2の手段において、前記帯状挟着体11は、前記配管Qの側面に沿った湾曲面を有し、前記リップ部P1に係止した一対の前記帯状挟着体11にて前記配管Qを側面から挟着したときに、前記配管Qの頂部で前記連結端部13が屈曲され、前記配管固定クリップ1の前記挿入口2に挿入する位置で平行に突出するように構成されたものである。
【0010】
第3の手段において、前記係止突起3は、テーパー面部3Aと係止部3Bとを有する断面楔形状を成し、前記連結端部13を配管固定クリップ1の挿入口2に挿入したときに、前記貫通孔14に係止部3Bが係止するまでテーパー面部3Aに沿ってスライド移動するように構成されたものである。
【0011】
第4の手段は、前記連結端部13の前記貫通孔14にバーリングタップ14Aが形成され、前記配管固定クリップ1の前記挿入口2の内部に前記連結端部13を各別に収納するように仕切り板4が形成され、該仕切り板4にて仕切られた各挿入口2に前記連結端部13を挿入したときに前記係止突起3がバーリングタップ14Aを強制的に乗り越えて前記貫通孔14内に係合されるように構成したものである。
【0012】
第5の手段において、前記配管固定クリップ1は合成樹脂材又は金属材にて形成され、前記帯状挟着体11の各連結端部13全体を包み込むキャップ形状を成すように構成している。
【0013】
第6の手段において、前記配管固定クリップ1は金属材にて形成され、前記連結端部13の各貫通孔14を外側から挟持する断面略U字形状を成すように構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1によると、リップ部P1に係止した一対の帯状挟着体11にて配管Qを側面から挟着すると共に、一対の帯状挟着体11の各連結端部13を配管固定クリップ1の挿入口2に挿入し、連結端部13相互を連結して帯状挟着体11に配管Qを固定するように構成したことで、従来の固定ねじや係合突起を使用しなくても配管支持金具をワンタッチで固定することが可能になった。しかも、配管固定クリップ1の挿入口2に配管支持金具10の連結端部13を挿入する操作のみで配管Qを配管支持金具10に固定できるので、装着時の作業も極めて安全に行うことができる。また、従来の固定ねじを締め付けるときのトルク管理も不要になり、常に一定の固定力が得られるものである。
【0015】
請求項2のように、一対の前記帯状挟着体11にて前記配管Qを側面から挟着したときに、前記配管Qの頂部で前記連結端部13が屈曲され、前記配管固定クリップ1の前記挿入口2に挿入する位置で平行に突出するように構成したことで、帯状挟着体11にて配管Qを挟着した位置で既に配管Qを支持した状態になる。したがって、挿入口2に連結端部13を挿入する作業が極めて容易になる。
【0016】
請求項3のごとく、前記係止突起3は、テーパー面部3Aと係止部3Bとを有する断面楔形状を成し、前記連結端部13を配管固定クリップ1の挿入口2に挿入したときに、前記貫通孔14に係止部3Bが係止するまでテーパー面部3Aに沿って連結端部13がスライド移動するように構成されたことで、配管支持金具10の連結端部13を配管固定クリップ1の挿入口2に挿入するだけで自動的に係止突起3が貫通孔14に係止する。したがって、配管支持金具10への配管固定クリップ1の装着作業が極めて容易になり、係合突起を係合する作業のような装着作業時の危険性もない。
【0017】
請求項4のように、仕切り板4にて仕切られた各挿入口2に連結端部13を挿入したときに係止突起3がバーリングタップ14Aを強制的に乗り越えて貫通孔14内に係合されるように構成したことで、係止突起3の係合力を高めると共に、たとえ地震等の振動を受けても外れる虞はない。
【0018】
請求項5のごとく、配管固定クリップ1は合成樹脂材又は金属材にて形成され、前記帯状挟着体11の各連結端部13全体を包み込むキャップ形状を成すように構成したことで、配管固定クリップ1装着後は、帯状挟着体11の突起部を覆う保護キャップも兼ねる。この結果、装着後の作業も極めて安全に行うことができる
【0019】
請求項6のように、配管固定クリップ1は金属材にて形成され、前記連結端部13の各貫通孔14を外側から挟持する断面略U字形状を成すように構成したことから、簡単な構成で連結端部13相互を連結することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例を示す使用状態の分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施例を示す使用状態の断面図である。
【
図11】本発明の他の実施例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によると、固定ねじや係合突起を使用しなくても電線管をワンタッチで配管支持金具に固定することが可能になり、しかも配管固定時及び固定後のいずれの作業も極めて安全に行うことができるなどといった当初の目的を達成した。
【0022】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明固定クリップは、配管Q等をリップ溝形鋼Pに支持する配管支持金具10に装着するもので、特に、配管支持金具10で配管Qを固定する際の固定ねじ(図示せず)に代えて装着するものである。
【0023】
配管支持金具10は、一対の帯状挟着体11にて配管Qを挟着する部材である(
図1参照)。この帯状挟着体11の一端部に、リップ溝形鋼Pの開口部に形成されたリップ部P1に係止する係止部12が形成されている。また、帯状挟着体11の他端部には、固定ねじが貫通する貫通孔14を有する連結端部13が形成されている。従来の配管支持金具10は、この貫通孔14に固定ねじを連結することで、配管Qを固定するものである。
【0024】
図示の帯状挟着体11は、配管Qの側面に沿った湾曲面を有し、リップ溝形鋼Pのリップ部P1に係止した一対の帯状挟着体11にて配管Qを側面から挟着したときに、配管Qの頂部で前記連結端部13が屈曲されて平行に突出している(
図2参照)。そして、リップ溝形鋼P上の配管Qを一対の帯状挟着体11にて挟着することで、連結端部13が揃って配管固定クリップ1の挿入口2に挿入できるように構成されている。そのため、帯状挟着体11のサイズは、配管Qの直径に対応する各種のサイズが用意されるものである。
【0025】
配管固定クリップ1は、固定ねじに代えて連結端部13相互を連結するもので、挿入口2と係止突起3を備えている(
図2参照)。挿入口2は、配管支持金具10の各連結端部13を挿入せしめる部位であり、この挿入口2の内部に係止突起3を突設している。図示の挿入口2は、連結端部13を各別に収納するように、内部に仕切り板4が形成されている(
図4参照)。そして、仕切り板4にて仕切られた各挿入口2に連結端部13を各別に挿入するように設けている。また、挿入口2に仕切り板4を設けないように構成することも可能である(
図8、
図11参照)。
【0026】
係止突起3は、連結端部13の貫通孔14に係止せしめる突起である(
図2参照)。そして、連結端部13を挿入口2に挿入すると、自動的に係止突起3が貫通孔14に係止するように設けている。すなわち、係止突起3は、テーパー面部3Aと係止部3Bとを有する断面略楔形状を成している(
図5参照)。そして、連結端部13を挿入口2に挿入したときに、係止部3Bが貫通孔14に係止するまでテーパー面部3Aに沿って連結端部13がスライド移動するように設けている。
【0027】
図示例の貫通孔14には、バーリングタップ14Aが形成されている(
図1参照)。そして、挿入口2に仕切り板4を形成して各連結端部13を別々に挿入口2に挿入するように構成すると、このバーリングタップ14Aを形成した貫通孔14でも係止突起3を自動的に係止させることができる(
図2参照)。すなわち、仕切り板4にて仕切られた各挿入口2に各連結端部13を挿入すると、挿入口2内での各連結端部13の挿入位置がぶれずに一定に挿入できるので、各係止突起3がバーリングタップ14Aを強制的に乗り越えて貫通孔14内に係合することが可能になるものである。
【0028】
配管固定クリップ1を使用するには、まず、リップ部P1に係止した一対の帯状挟着体11にて配管Qを側面から挟着する。そして、配管固定クリップ1の挿入口2に一対の帯状挟着体11の各連結端部13を挿入するだけで、連結端部13相互が連結される(
図2参照)。この結果、配管支持金具10を介してリップ溝形鋼Pに配管Qが固定されるものである。
【0029】
図1乃至
図5は、配管固定クリップ1を合成樹脂材にて形成した例を示している。図示の配管固定クリップ1は、帯状挟着体11の各連結端部13全体を包み込むキャップ形状を成すように構成したものである(
図3参照)。このようなキャップ形状の配管固定クリップ1によると、連結端部13などの突起物がすべて覆われるので、配管固定後の作業も極めて安全に行うことができる。
【0030】
図6乃至
図11は、配管固定クリップ1を金属材にて形成した例を示している。同図中、係止突起3は、金属板に切欠を設けて貫通孔14側に折り曲げることで、断面楔形状の係止突起3を形成している(
図8、
図11参照)。このような配管固定クリップ1によると、強度に優れた配管固定クリップ1を形成することができる。
【0031】
また、
図6乃至
図8に示す配管固定クリップ1は、帯状挟着体11の各連結端部13全体を包み込むキャップ形状を成すように形成している。一方、
図9乃至
図11に示す配管固定クリップ1は、金属材にて形成した例を示し、連結端部13の各貫通孔14を外側から挟持する断面略U字形状を成すように形成したものである。
【0032】
尚、本発明の構成は図示例に限定されるものではなく、配管固定クリップ1の全体形状及び、挿入口2や係止突起3の形状や構造は、本発明の要旨を変更しない範囲で任意に設計変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
P リップ溝形鋼
P1 リップ部
Q 配管
1 配管固定クリップ
2 挿入口
3 係止突起
3A テーパー面部
3B 係止部
4 仕切り板
10 配管支持金具
11 帯状挟着体
12 係止部
13 連結端部
14 貫通孔
14A バーリングタップ