【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した問題は、請求項1、13、25、および38に記載されているような、溶解のための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化された溶解のための機器、ならびに、請求項56〜63に記載されているような、溶解のための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化された溶解のための方法によって解決される。
【0014】
次に、本発明の様々な態様を明確にすることによって、本発明について説明する。このようにして明確にされた各態様は、明らかに矛盾を示さない限り、任意の他の態様または複数の態様と組み合わされてもよい。とりわけ、好ましいものまたは好適なものとして示されている任意の特徴が、好ましいものまたは好適なものとして示されている任意の他の特徴または複数の特徴と組み合わされてもよい。
【0015】
第1の態様では、本発明は、試料の溶解のための、とりわけ、試料の自動化され、および/または制御された溶解のための機器であって、
少なくとも1つの回転ディスクと、
バイアルを受け入れるように、または受け入れるために構成され、ディスクに配置された少なくとも1つのバイアル保持器と、
ディスクおよびバイアル保持器を回転させるように、または回転させるために構成された少なくとも1つの駆動装置と、
少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するように、または加熱するために構成された少なくとも1つの加熱装置と、
タイミングおよび/またはステップの制御によって駆動装置および/または加熱装置を制御するように、または制御するために構成された少なくとも1つの制御装置と
を備える機器に関する。
【0016】
少なくとも1つの所定の温度に試料を冷却するための冷却装置を設けることが可能である。加熱および冷却の工程は、段階的に実行されてもよい。
【0017】
「試料の溶解(lysis)のための、とりわけ、試料の自動化され、および/または制御された溶解のための機器」という表現は、「試料の溶解(lysing)のための、とりわけ、試料の自動化され、および/または制御された溶解のための機器」という表現と交換可能である。このことは、本発明のすべての態様に当てはまる。
【0018】
つまり、制御装置は、タイミングおよび/またはステップ(工程もしくはシーケンス)の制御の装置または機能部を備える。また、ステップダイアグラムの制御は、適切な構成部品によって可能である。少なくとも1つの制御装置は、駆動装置および加熱装置を制御するように構成され、および/または、駆動装置および加熱装置と通信するものであり、これにより、駆動装置および加熱装置は、溶解(処置)を制御するために協調して動作するようになっている。したがって、ステップは、タイミングおよび/またはステップの制御によって所定の順序で実行される。
【0019】
第1の態様に係る本発明の要点は、自動化された溶解または溶解処置(ボルテックス(とりわけ、混合)、研磨、粉砕、加熱、および静止フェイズにおけるバイアル保持器(したがって、試料)の維持のようなすべての必要なステップを含む)が、必要なステップの処置のタイムフローおよび/または手順を決定し、および/または考慮することによって自動的に実行されるため、十分に訓練された作業者を必要とすることなく実行され得ることである。つまり、制御装置は、駆動装置および加熱装置が協調して機能するように本機器を動作させ、この場合、制御装置は、時間(タイミング)および/またはステップの制御(さらにはフィードバック制御)により、工程の様々なステップ(加熱または回転、静止フェイズにおけるバイアル保持器の維持)がいつ実行されるべきかを「決定する」。このようにして、制御装置は、対応するステップの開始および終了を行い、様々な回転速度および/または角速度のその後の使用もしくは適用ならびに培養温度を制御する。つまり、本機器は、自動化された方法で動作し、不必要な中断および/または処置のための様々な装置の使用がなくても、溶解処置全体を実行する。さらに、制御装置を用いることによって、高速回転研磨ステーション(バイアル保持器)内の正確な温度調節が実現される(制御装置は、フィードバック制御の実行を可能にする)。
【0020】
適切な緩衝剤および酵素と、高温でのビーズ粉砕(試料の自動化された溶解のための機器における)および各酵素の培養温度との近似との組み合わせは、同一手順(すなわち、様々な試料物質が同じ方法で処理され得る)を用いる、様々な試料物質の極めて効率的な溶解を可能にする。
【0021】
第2の態様、第3の態様、および第4の態様のすべての好ましい実施形態はまた、第1の態様に関して好ましい実施形態であってもよい(駆動装置、加熱装置、制御装置、および伝達装置に関して好ましい実施形態を参照)。
【0022】
駆動装置は、ディスクを駆動するための駆動手段と、ディスクが軸支された中心ピンと、中心ピンに固定された中心ピニオンと、ディスクを介して中心ピニオンによって駆動される少なくとも1つの第1の段のギヤまたはギヤホイールと、第1の段のギヤによって駆動される少なくとも1つの第2の段のギヤまたはギヤホイールとを備えることが好ましい。中心ピンおよび中心ピニオンは、したがって好ましくは非回転部品であり、固定されている。試料保持器は、第2の段のギヤと関連付けられており、第1の段のギヤおよび第2の段のギヤは、ディスク上または内に軸支されている。ディスクおよびギヤ(少なくともギヤの可動部)は、回転装置または回転装置の少なくとも一部を形成している。また、中心ピンおよび中心ピニオンは、回転装置の一部と見なすこともできるが、これらの構成部品は回転しない。
【0023】
ギヤ(すなわち、第1の段のギヤホイールおよび第2の段のギヤホイール)は、ディスクを介して、ディスクの中心に固定されたピニオンによって駆動されることが好ましい。この場合、ディスクは、ギヤホイールを支持する支持具であり、ディスクを駆動することにより、ギヤホイールはそれに応じて駆動される。
【0024】
加熱装置は、必要な培養温度を実現する少なくとも1つの加熱スリーブ(加熱部品)を備えることが好ましい。加熱スリーブは、バイアル保持器および/または第2の段のギヤを取り囲む(好ましくは、バイアル保持器のそれぞれが、加熱スリーブによって取り囲まれる)ことが好ましい。加熱装置を用いることで、高速回転するバイアル保持器内の正確な温度の調節/制御が可能である。
【0025】
加熱スリーブの熱質量は、バイアル保持器(したがって、バイアルを介した試料)への効率的で均一な温度伝達を可能にするのに十分大きく、対流冷却によるバイアル保持器内の試料の効率的な冷却を可能にするのに十分小さくなるようにバランスをとることが重要である。
【0026】
加熱装置は、少なくとも1つの温度センサを備えるか、または、少なくとも1つの温度センサと関連付けられることが好ましい。このセンサは、加熱スリーブ、バイアル保持器、および/または試料と関連付けられ、加熱スリーブ、バイアル保持器、および/または試料の温度を検出し、対応する信号を供給する(温度検出センサ)。
【0027】
既に上述したように、制御装置は、駆動装置および加熱装置が溶解処置または溶解ステップを制御するために協調して動作するように、駆動装置および/または加熱装置を制御するよう構成される。
【0028】
制御装置は、駆動装置および/または加熱装置を制御するために、時間および/もしくはステップの制御の装置または機能部、とりわけ、フィードバック制御装置を備えるか、または、時間および/もしくはステップの制御、とりわけ、フィードバック制御を実行するように構成されることが好ましい。つまり、溶解処置の個々のステップの進行または手順は、時間および/またはステップの制御の装置もしくは機能部によって、したがって、制御装置によって制御される。
【0029】
制御装置は、駆動装置および/または加熱装置を制御するために、駆動制御の装置もしくは機能部および/またはタイミング制御の装置もしくは機能部および/または温度制御の装置もしくは機能部を備えることが好ましい。これらの装置は、時間および/またはステップの制御を実行するように構成される(これらの装置は、時間および/またはステップの制御を実行するために駆動装置および加熱装置と通信する)。
【0030】
制御装置は、温度センサによって供給される信号に少なくとも応答して駆動装置および/または加熱装置を制御するように構成されることが好ましい。
【0031】
制御装置は、例えば、溶解処置実行するために必要な個々のステップを制御する時間および/またはステップの制御装置として構成される。制御装置(または複数の制御装置)は、所望の時点または所定の時点で個々のステップを始め(開始させ)、終了させ(個々のステップの持続時間を決定し、および/または調整し)、構成部品(例えば、ディスク)の回転方向および回転速度を決定し、および/または調整し、達成されるべき温度(培養温度)を決定し、および/または調整する。フィードバックにより(例えば、測定された温度および/または必要な期間もしくは所定の期間の終了により)、手順(以下のステップ)が、必要な方法で実行される。
【0032】
理想的な手順(例)では、例えば、以下のステップ、すなわち、
a)第1の所定の培養温度(例えば、56℃)に試料を加熱する間に試料を1分間粉砕するステップ(回転フェイズ)、
b)第1の所定の培養温度において試料を5分間静止させ続けるステップ(静止フェイズ)、
c)第1の所定の培養温度において試料を0.5分間混合するステップ(回転フェイズ)、
d)第1の所定の培養温度において試料を5分間静止させ続けるステップ(静止フェイズ)、
e)第2の所定の培養温度(例えば、96℃)に試料を加熱するステップ(静止フェイズ)、
f)第2の所定の培養温度において試料を5分間粉砕するステップ(回転フェイズ)、
g)第2の所定の培養温度において試料を10分間静止させ続けるステップ(静止フェイズ)、
h)試料を0.5分間冷却するステップ
が実行される。
【0033】
回転フェイズは、所定の期間にわたって実行可能であるか、または実行されてもよい。静止フェイズは、回転が実行されないフェイズであり、すなわち、不動フェイズまたはいかなる動作もしくは回転も行われないフェイズである。また、静止フェイズは、所定の期間にわたって実行可能であるか、または実行されてもよい。期間は、制御装置によって制御される。
【0034】
回転させるステップは、第1の方向にディスクを回転させることおよび第1の方向とは反対の第2の方向にバイアル保持器を回転させることを含み、ディスクが、一方向の1回転を実行している間、バイアル保持器が、反対方向の1回転を実行し、これにより、バイアル保持器の絶対的な向きが、回転の間常にまたは回転のほとんどの間、実質的に一定に維持されることが好ましい。
【0035】
溶解は、例えば以下のように(例えばステップa)およびb)の例のように)実行されてもよい。
【0036】
溶解処置が開始されると、駆動装置が動作し始め(ディスクの回転)、例えば、駆動制御装置は、ディスクの回転方向および速度に関して駆動装置を制御し、タイミング制御装置は、ステップa)の回転フェイズの持続時間に関して駆動装置を制御する。さらに、加熱装置が動作し始め、温度制御装置が、加熱装置を制御し、これにより、試料の温度を制御する(温度を監視する温度センサを用いて)。
【0037】
タイミング制御装置は、駆動装置を停止させるために、ステップa)の期間の終了時に出力信号を供給する(期間の持続時間を監視することによるフィードバック制御)。温度制御装置は、所定の培養温度に到達したことに対応する、温度センサからの信号の受信時に出力信号を供給する(温度センサによって供給される信号によるフィードバック制御)。
【0038】
このとき、次のステップ、すなわち、ステップb)がトリガーされてもよい。これにより、タイミング制御装置は、駆動装置を制御し(5分間の静止フェイズ)、この期間の終了時に出力信号を供給する。加熱装置は、培養温度(例えば、56℃)を維持するために制御される。ステップb)の期間の終了後に、次のステップ、すなわち、ステップc)がトリガー等されてもよい。加熱装置は、回転フェイズおよび/または静止フェイズ中に温度を制御するように構成される。
【0039】
駆動装置は遊星ギヤを備えることが好ましい。つまり、少なくとも第1の段のギヤおよび第2の段のギヤが、遊星ギヤの一部として配置される。遊星ギヤは、ディスクおよびバイアル保持器の駆動が効率的な方法で実行されることを可能にする。さらに、遊星ギヤのサイズは小さいため、本機器をコンパクトな装置として提供することができる。
【0040】
駆動装置は、
第1の方向にならびに/または第1の速度および/もしくは(角)速度でディスクを回転させるように、ならびに
第2の方向にならびに/または第2の速度および/もしくは(角)速度でバイアル保持器を回転させるように
構成されることが好ましい。
【0041】
駆動装置は、
第1の方向にならびに/または第1の速度および/もしくは(角)速度でディスクを回転させるように、ならびに
第1の方向とは反対の第2の方向にならびに/または第2の速度および/もしくは(角)速度でバイアル保持器を回転させるように
構成されることが好ましい。
【0042】
原理上は、ディスクおよびバイアル保持器を同じ方向に(つまり、第1の方向が第2の方向と等しい)回転させることが可能である(第1の速度が第2の速度と等しいことも可能である)。しかしながら、最良の結果は、バイアル保持器がディスクと反対に回転するときに達成される。
【0043】
駆動装置は、バイアル保持器の絶対的な向きが回転の間、一定に維持されるように、または維持されるような方法で、ディスクおよびバイアル保持器を回転させるよう構成されることが好ましい。つまり、バイアル保持器の絶対的な向きは、回転の間常に一定に維持される。
【0044】
駆動装置は、
第1の方向にならびに/または第1の速度および/もしくは(角)速度でディスクを回転させるように、ならびに
第1の方向とは反対の第2の方向にならびに/または第2の速度および/もしくは(角)速度でバイアル保持器を回転させるように
構成され、
ディスクが、一方向の1回転を実行している間、バイアル保持器が、反対方向の1回転を実行し、これにより、バイアル保持器の絶対的な向きが、回転の間(常に)実質的に一定に維持されることがより好ましい。
【0045】
実験研究は、より高い加速および減速(大きな減速)ならびにより大きな運動が、ビーズ粉砕効果の効率を大幅に向上させることを示した。本発明は、例えば混合、粉砕、および研磨のステップ(「振動(shaking)」ステップともいう)が実行され、加速が大きくなるにもかかわらず、システム(ボルテクサのような)の不平衡質量を回避することによって、上述したような主な問題を克服する。例えば2つ以上のバイアル保持器が、回転ディスクに円状に等間隔に配置される。
【0046】
特定のタイプの運動(例えば、所望の方向、例えば、相反する方向にディスクおよびバイアル保持器を動かすことを可能にする遊星ギヤによる)は、溶解処置に必要なすべてのステップ、すなわち、試料のボルテックス、研磨、および粉砕を実行することを可能にする。従来のボルテクサは、「振動」、すなわち、試料の混合のみを可能にするだけで、さらなるステップ(加熱のような)は実行することができない。さらに、ボルテクサは、偏心配置に起因して円滑に動作せず、したがって、回転速度(加速)に関して限界がある。本発明に係るディスクおよびバイアル保持器の個々の運動は、極めて効率的な方法(円滑な動作、高い回転速度、およびしたがって高効率)で必要なステップを実行することを可能にする。
【0047】
ディスクは、少なくとも2つのバイアル保持器を備えることが好ましい。これにより、システムの容易な平衡化および質量不平衡の回避が可能になる。バイアル保持器がただ1つの場合、システムは、ギヤと同じ重量および配置を有する付加的な質量体を追加することによって容易に平衡化されてもよい。好ましい構成では、例えば、4つの第1の段のギヤおよび4つの第2の段のギヤが、ディスク上または内に設けられ、中心ピニオンの周囲で回転する。
【0048】
好ましくは、および、既に上記したように(つまり、極めて効果的な方法で)、中心ピニオンと連結された2段のギヤ(または例えば、2段のギヤチェーン)が、回転ディスクが、一方向の1回転を実行している間、バイアル保持器が、反対方向の1回転を実行し、これにより、バイアル保持器の絶対的な向きが、回転の間常におよび/または回転のほとんどの間、実質的に一定に維持される(例えば従来のボルテクサと比較して平衡化された質量)ように、個々のバイアル保持器を駆動する。つまり、駆動装置は、好ましくは同じ角速度で、第1の方向にディスクを回転させ、第1の方向とは反対の第2の方向にバイアル保持器を回転させる。このことは、偏心運動を伴う従来のボルテクサと対照的であり、回転ディスクに連結された固定連結されたバイアル保持器を有する従来の遠心機(「振動」ステップを可能にしない)と対照的である。ギヤを有さないこのようなシステムは、試料および流体を常に外側へ押しやる一定の求心力のみを発生させる。
【0049】
第1の段のギヤは、例えば時計回りに回転し、第2の段のギヤは(したがって、さらにバイアル保持器も)、反時計回りに回転する。ギヤ比全体が、好ましくも1:1である場合、バイアル保持器は、ディスクが時計回りに回転するのと同じ角速度で反時計回りに回転する。結果として、バイアル保持器は、円形軌道上を移動している間、例えば固定足板または底面および中心ピンに対してそれ自体は回転運動しない。
【0050】
効果的な運動は、少なくとも2つの円形運動の重ね合わせである。バイアル保持器内のバイアルに含まれた試料は、効果的に左右および前後に動かされる。頻度は、ディスクの回転速度と等しい。
【0051】
さらに、ディスクおよびバイアル保持器または複数のバイアル保持器を特定の方法で回転させること(駆動装置、とりわけ、遊星ギヤまたは遊星機構によって実現される、ディスクおよびバイアル保持器の個々の回転)が可能であるため、機構は、低振動で円滑に動作する。なぜなら、構成部品(ディスク、バイアル保持器)の特定の運動(回転)が、混合、粉砕、および研磨のステップが実行されるにもかかわらず、質量不平衡の調整を可能にするからである。つまり、本機器の構成部品の配置および駆動装置によって構成部品(ディスク、バイアル保持器)を動かす特有の可能性により、平衡質量を有するシステムが達成される。言い換えれば、偏心動作または偏心運動(例えばボルテクサにおいて必要な)が、回転に切り替えられており、このため、強い加速力が、機械的な構成部品にもはや作用しなくなっている。
【0052】
ディスクおよびバイアル保持器または複数のバイアル保持器の個々の回転というのは、ディスクおよび保持器が、異なる方向(時計回りまたは反時計回り)におよび例えばギヤ比に応じて異なる速度で回転可能なことを意味している。しかしながら、構成部品の同じ方法(同じ方向および/または同じ速度)の回転も可能である。また、異なる駆動手段を有する駆動装置を用いて、互いに独立した、構成部品の回転も可能である。しかしながら、平衡化されたシステムが実現されるように構成部品を回転させることが目的である。
【0053】
例えば、第2の段のギヤが、中心固定ピニオンと比較してより多い歯またはより少ない歯を有する場合、さらにバイアル保持器が、ピニオンの歯の数の比率によって決定される回転速度で、元の運動に重ね合わされる回転運動を実行する。つまり、中心ピニオン(内側ピニオン)およびギヤの第2の段のギヤ(外側ピニオン)の歯の数が等しくない場合、さらにバイアル保持器が、バイアル内の流体の混合を改善することを助けることのできる回転運動を実行する。これらの回転(例えば、重ね合わされた遅い回転)は、内側ピニオンおよび外側ピニオンの適切な歯の比率を選択することによって容易に調整されてもよい。
【0054】
このようなシステムの平衡質量により、回転速度は、現行のシステムと比較して容易に増加させることができる。その他の質量の不平衡は、試料物質および試料の量自体にだけ由来する可能性がある。数ミリリットルの一般的な試料の量では、このような不平衡は最大で数グラムのオーダーにすぎない場合がある。このことは、本発明の装置によって数千rpm(rounds per minute(1分当たりの回転数))までは許容され得る。
【0055】
最大の加速/減速は、半径に比例し、また、ディスクの回転速度の2乗に比例するため、40のオーダーで公知のボルテックス装置と比較してディスクの直径および回転速度を改善することが容易に達成可能である(例えば、10倍の半径(例えば、5mm対5cm)および2倍の速度(3000rpm対6000rpm)。
【0056】
また、より多くのディスクが、試料の高い処理量の利用のために使用可能なバイアル保持器の数を増加させるために例えば互い違いに設けられてもよい。
【0057】
本機器は、エネルギーおよび/または信号の伝達のための誘導結合のための少なくとも1つの伝達装置(伝達装置、エネルギーおよび/または信号を伝達するための伝達装置)であって、
加熱のためのエネルギーを加熱装置に少なくとも伝達するように、および/または
温度センサによって供給される信号を制御装置に少なくとも伝達するように
構成された少なくとも1つの伝達装置を備えることが好ましい。
【0058】
加熱装置(すなわち、スリーブ)を加熱するためのエネルギーは、伝達装置(エネルギーおよび信号の伝達のための誘導結合のための手段(誘導トランスデューサ))によって伝達されることが好ましい。加熱装置は、例えば、抵抗加熱装置として形成される。ペルチェ素子または同様の装置を使用することも可能である。
【0059】
温度センサによって供給される信号は、伝達装置によっても供給される(例えば、センサのためのエネルギーも)ことが好ましい。つまり、センサによって測定された値は、例えば、制御装置に伝達され、これにより、時間および/またはステップの制御が、これに応じて実行される。このことは、ケーブルまたはワイヤなどを必要とすることなく、伝達の容易な方法を可能にする。加熱可能なバイアル保持器を含むビーズ粉砕装置の構成は、2つの回転軸線が存在するため、ミルの高い回転速度(とりわけ遊星ビーズミル内の)に起因して、極めて複雑である。しかしながら、誘導トランスデューサの使用は、他の装置の使用を必要とすることなく、必要な溶解ステップを実行することを可能にする。エネルギーおよび信号の伝達は、ディスクおよびバイアル保持器の回転を妨げない。
【0060】
制御装置、駆動装置、加熱装置、およびセンサの連携により、自動化された溶解処置を実行することができる。エネルギーおよび温度プローブの測定信号の伝達は、2つの回転軸線ではなく、1つの回転軸線においてだけ行う必要がある。
【0061】
第2の態様では、本発明は、試料の溶解のための、とりわけ、試料の自動化され、および/または制御された溶解のための機器であって、
少なくとも1つの回転ディスクと、
バイアルを受け入れるように、または受け入れるために構成され、ディスクに配置された少なくとも1つのバイアル保持器と、
ディスクおよびバイアル保持器を回転させるように、または回転させるために構成された少なくとも1つの駆動装置と、
少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するように、または加熱するために構成された少なくとも1つの加熱装置と
を備え、
駆動装置が、
第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させるように、ならびに
第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるように
構成される機器に関する。
【0062】
第2の態様に係る本発明の要点は、とりわけ、第1の態様に関して説明したように平衡質量を有するシステムを提供することである。つまり、本機器は、試料の混合(従来のボルテックス装置におけるような)を可能にし、さらに、システムは、円滑な方法(平衡質量、第1の態様参照)で動作する。本発明の機器は、ボルテクサ(ボルテックス装置)によって通常実行されるステップが実行されるが、円滑な方法で動作する(従来の遠心機のように)。
【0063】
第1の態様、第3の態様、および第4の態様のすべての好ましい実施形態はまた、第2の態様に関して好ましい実施形態であってもよい(駆動装置、加熱装置、制御装置、および伝達装置に関して好ましい実施形態を参照)。これらの実施形態(以下)に関するさらなる説明および情報に関して、本発明の第1の態様に関して上記した説明および情報を参照されたい。
【0064】
駆動装置は、
ディスクを駆動するための駆動手段と、
ディスクが軸支された中心ピンと、
中心ピンに固定された中心ピニオンと、
ディスクを介して中心ピニオンによって駆動される少なくとも1つの第1の段のギヤと、
第1の段のギヤによって駆動される少なくとも1つの第2の段のギヤであって、バイアル保持器が関連付けられている少なくとも1つの第2の段のギヤと
を備えることが好ましい。
【0065】
駆動装置は、遊星ギヤを備えることが好ましい。つまり、第1の段のギヤおよび第2の段のギヤは、遊星ギヤの一部として配置される。
【0066】
駆動装置は、バイアル保持器の絶対的な向きが回転の間、一定に維持されるように、または維持されるような方法でディスクおよびバイアル保持器を回転させるように構成されることが好ましい。
【0067】
駆動装置は、
第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させるように、ならびに
第1の方向とは反対の第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるように
構成され、
ディスクが、一方向の1回転を実行している間、バイアル保持器が、反対方向の1回転を実行し、これにより、バイアル保持器の絶対的な向きが、回転の間、実質的に一定に維持されることが好ましい。つまり、バイアル保持器の絶対的な向きは、回転の間常に一定に維持される。
【0068】
加熱装置は、バイアル保持器および/または第2の段のギヤを取り囲む少なくとも1つの加熱スリーブを備えることが好ましい。
【0069】
加熱装置が、少なくとも1つの温度センサを備えるか、または、少なくとも1つの温度センサと関連付けられ、該少なくとも1つの温度センサが、加熱スリーブ、バイアル保持器、および/または試料と関連付けられ、加熱スリーブ、バイアル保持器、および/または試料の温度を検出し、対応する信号を供給することが好ましい。
【0070】
本機器は、少なくとも1つの制御装置を備え、該少なくとも1つの制御装置は、タイミングおよび/またはステップの制御によって駆動装置および/または加熱装置を制御するように、または制御するために構成されることが好ましい。つまり、制御装置は、タイミングおよび/またはステップの制御の装置または機能部を備える。
【0071】
少なくとも1つの制御装置は、駆動装置および加熱装置が溶解(処置)を制御するために協調して動作するように駆動装置および/または加熱装置を制御するよう構成される。したがって、ステップは、タイミングおよび/またはステップの制御によって所定の順序で実行される。
【0072】
制御装置は、駆動装置および/または加熱装置を制御するために、駆動制御の装置もしくは機能部および/またはタイミング制御の装置もしくは機能部および/または温度制御の装置もしくは機能部を備えることが好ましい。
【0073】
制御装置は、温度センサによって供給される信号に少なくとも応答して駆動装置および/または加熱装置を制御するように構成されることが好ましい。
【0074】
本機器は、エネルギーおよび信号の伝達のための誘導結合のための少なくとも1つの伝達装置であって、
加熱のためのエネルギーを加熱装置に伝達するように、および/または
温度センサによって供給される信号を制御装置に伝達するように
構成された少なくとも1つの伝達装置を備えることが好ましい。
【0075】
第3の態様では、本発明は、試料の溶解のための、とりわけ、試料の自動化され、および/または制御された溶解のための機器であって、
少なくとも1つの回転ディスクと、
バイアルを受け入れるように構成され、ディスクに配置された少なくとも1つのバイアル保持器と、
ディスクおよびバイアル保持器を回転させるように構成された少なくとも1つの駆動装置と、
少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するように構成された少なくとも1つの加熱装置と、
エネルギーおよび/または信号の伝達のための誘導結合のための少なくとも1つの伝達装置であって、加熱のためのエネルギーを加熱装置に伝達するように構成された少なくとも1つの伝達装置と
を備える機器に関する。
【0076】
第3の態様に係る本発明の要点は、とりわけ、少なくともエネルギーおよび/または信号が、ワイヤなどを必要とせずに、容易な方法で伝達されることである。エネルギーおよび信号の伝達は、ディスクおよびバイアル保持器の回転を妨げない。
【0077】
第1の態様、第2の態様、および第4の態様のすべての好ましい実施形態はまた、第3の態様に関して好ましい実施形態であってもよい(駆動装置、加熱装置、制御装置、および伝達装置に関して好ましい実施形態を参照)。これらの実施形態(以下)に関するさらなる説明および情報に関して、本発明の第1の態様に関して上記した説明および情報を参照されたい。
【0078】
駆動装置は、
ディスクを駆動するための駆動手段と、
ディスクが軸支された中心ピンと、
中心ピンに固定された中心ピニオンと、
ディスクを介して中心ピニオンによって駆動される少なくとも1つの第1の段のギヤと、
第1の段のギヤによって駆動される少なくとも1つの第2の段のギヤであって、バイアル保持器が関連付けられている少なくとも1つの第2の段のギヤと
を備えることが好ましい。
【0079】
駆動装置は、遊星ギヤを備えることが好ましい。つまり、第1の段のギヤおよび第2の段のギヤは、遊星ギヤの一部として配置される。
【0080】
駆動装置は、
第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させるように、ならびに
第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるように
構成されることが好ましい。
【0081】
駆動装置は、バイアル保持器の絶対的な向きが回転の間、一定に維持されるように、または維持されるような方法でディスクおよびバイアル保持器を回転させるよう構成されることが好ましい。
【0082】
駆動装置は、
第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させるように、ならびに
第1の方向とは反対の第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるように
構成され、
ディスクが、一方向の1回転を実行している間、バイアル保持器が、反対方向の1回転を実行し、これにより、バイアル保持器の絶対的な向きが、回転の間常に実質的に一定に維持されることが好ましい。
【0083】
加熱装置は、バイアル保持器および/または第2の段のギヤを取り囲む少なくとも1つの加熱スリーブを備えることが好ましい。
【0084】
加熱装置は、少なくとも1つの温度センサを備えるか、または、少なくとも1つの温度センサと関連付けられ、該少なくとも1つの温度センサは、加熱スリーブ、バイアル保持器、および/または試料と関連付けられ、加熱スリーブ、バイアル保持器、および/または試料の温度を検出し、対応する信号を供給することが好ましい。
【0085】
本機器は、少なくとも1つの制御装置を備え、該少なくとも1つの制御装置は、タイミングおよび/またはステップの制御によって駆動装置および/または加熱装置を制御するように、または制御するために構成されることが好ましい。つまり、制御装置は、タイミングおよび/またはステップの制御の装置または機能部を備えることが好ましい。
【0086】
少なくとも1つの制御装置は、駆動装置および加熱装置が溶解(処置)を制御するために協調して動作するように駆動装置および/または加熱装置を制御するよう構成される。したがって、ステップは、タイミングおよび/またはステップの制御によって所定の順序で実行される。
【0087】
制御装置は、駆動装置および/または加熱装置を制御するために、駆動制御の装置もしくは機能部および/またはタイミング制御の装置もしくは機能部および/または温度制御の装置もしくは機能部を備えることが好ましい。
【0088】
制御装置は、温度センサによって供給される信号に少なくとも応答して駆動装置および/または加熱装置を制御するように構成されることが好ましい。
【0089】
エネルギーおよび/または信号の伝達のための誘導結合のための伝達装置は、温度センサによって供給される信号を制御装置に伝達するように構成されることが好ましい。
【0090】
第4の態様では、本発明は、試料の溶解のための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化され、および/または制御された溶解処置のための機器に関する。本機器は、
少なくとも1つの回転ディスク、
バイアルを受け入れるように構成され、ディスクに配置された少なくとも1つのバイアル保持器、
ディスクおよびバイアル保持器を回転させるように構成された少なくとも1つの駆動装置、
少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するように構成された少なくとも1つの加熱装置、
ならびに
タイミングおよび/またはステップの制御によって駆動装置および/または加熱装置を制御するように構成された少なくとも1つの制御装置、および/または
エネルギーおよび/または信号の伝達のための誘導結合のための、すなわち、エネルギーおよび/または信号の誘導結合のための少なくとも1つの伝達装置であって、加熱のためのエネルギーを加熱装置に伝達するように構成された少なくとも1つの伝達装置
を備え、ならびに/または
駆動装置は、第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させ、第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるように構成される。
【0091】
第1の態様、第2の態様、および第3の態様のすべての好ましい実施形態はまた、第4の態様に関して好ましい実施形態であってもよい(駆動装置、加熱装置、制御装置、および伝達装置に関して好ましい実施形態を参照)。これらの実施形態(以下)に関するさらなる説明および情報に関して、本発明の第1の態様に関して上記した説明および情報を参照されたい。
【0092】
本機器は、上述した態様のすべての要点または性質を含む。
【0093】
駆動装置は、
ディスクを駆動するための駆動手段と、
ディスクが軸支された中心ピンと、
中心ピンに固定された中心ピニオンと、
ディスクを介して中心ピニオンによって駆動される少なくとも1つの第1の段のギヤと、
第1の段のギヤによって駆動される少なくとも1つの第2の段のギヤであって、バイアル保持器が関連付けられている少なくとも1つの第2の段のギヤと
を備えることが好ましい。
【0094】
駆動装置は、遊星ギヤを備えることが好ましい。つまり、第1の段のギヤおよび第2の段のギヤは、遊星ギヤの一部として配置される。
【0095】
駆動装置は、
第1の方向にならびに/または第1の速度および/もしくは(角)速度でディスクを回転させるように、ならびに
第1の方向とは反対の第2の方向にならびに/または第2の速度および/もしくは(角)速度でバイアル保持器を回転させるように
構成されることが好ましい。
【0096】
駆動装置は、バイアル保持器の絶対的な向きが回転の間、一定に維持されるように、または維持されるような方法でディスクおよびバイアル保持器を回転させるよう構成されることが好ましい。
【0097】
駆動装置は、
第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させるように、ならびに
第1の方向とは反対の第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるように
構成され、
ディスクが、一方向の1回転を実行している間、バイアル保持器が、反対方向の1回転を実行し、これにより、バイアル保持器の絶対的な向きが、回転の間、一定に維持されることが好ましい。つまり、バイアル保持器の絶対的な向きは、回転の間常に一定に維持される。
【0098】
加熱装置は、バイアル保持器および/または第2の段のギヤを取り囲む少なくとも1つの加熱スリーブを備えることが好ましい。
【0099】
加熱装置は、少なくとも1つの温度センサを備えるか、または、少なくとも1つの温度センサと関連付けられ、該少なくとも1つの温度センサは、加熱スリーブ、バイアル保持器、および/または試料と関連付けられ、加熱スリーブ、バイアル保持器、および/または試料の温度を検出し、対応する信号を供給することが好ましい。
【0100】
制御装置は、駆動装置および/または加熱装置のための時間および/またはステップの制御の装置または機能部を備えることが好ましい。
【0101】
制御装置は、駆動装置および/または加熱装置を制御するために、駆動制御の装置もしくは機能部および/またはタイミング制御の装置もしくは機能部および/または温度制御の装置もしくは機能部を備えることが好ましい。
【0102】
制御装置は、温度センサによって供給される信号に少なくとも応答して駆動装置および/または加熱装置を制御するように構成されることが好ましい。
【0103】
エネルギーおよび/または信号の伝達のための誘導結合のための伝達装置は、温度センサによって供給される信号を制御装置に伝達するように構成されることが好ましい。
【0104】
以下の好ましい実施形態は、本発明のすべての態様、とりわけ、第1の態様、第2の態様、第3の態様、および第4の態様(ならびに本発明の以下の態様、すなわち、第5の態様、第6の態様、第7の態様、第8の態様、第9の態様、第10の態様、第11の態様、および第12の態様)の一部である。
【0105】
駆動手段またはディスクを駆動するための手段は、モータおよびモータとディスクとを連結する部材(例えば、歯形ベルト)を備えることが好ましい。つまり、ディスクは、モータによって駆動されるように構成される。別の実施態様は、モータのロータとして機能することができるように回転ディスクを構成すること(磁気構造を追加すること)によって実施され得る。この場合、ディスクの周囲に構成された固定子によって、モータの駆動構造が完成される。この実施形態は、伝動ベルトまたは駆動ギヤを必要としないという利点を有する。
【0106】
モータは、自動化された溶解のための機器の一部であってもよいし、または、本機器の外部に配置される付加的な構成部品として設けられてもよい。本機器にはギヤが設けられるため、ディスクおよびバイアル保持器を回転させるためには、1つのモータで十分である。しかしながら、ディスクおよびバイアル保持器が(例えば別々のモータによって)別々に駆動される機構を用いることも可能である。この場合、(第1の段または第2の段の)ギヤのいずれかが、統合モータによって直接駆動されてもよい。また、外部のモータも使用可能である。
【0107】
回転ディスクに組み込まれるギヤはまた、より多くのギヤ段(例えば、2段の代わりに4段)を用いて構成されてもよい。
【0108】
ギヤのそれぞれは、軸受によって、好ましくは、ボール軸受、ブシュ軸受、または磁気軸受によってディスク内に取り付けられることが好ましい。また、ディスクは、軸受によって中心ピンに軸支される。とりわけ、高い回転速度が予想されることから、軸受が摩擦を低減する。
【0109】
例えば特定の構造を有するバイアルの使用によって、さらなる改善が可能である。溶解の効率の改善は、円形の断面を有するバイアルを使用する場合だけではなく、非円形の断面(とりわけ、楕円形の断面または不均一な断面)を有するバイアルを使用する場合にも達成することができる。つまり、バイアル保持器は、例えば、このようなバイアルも受け入れ可能であるように形成されるべきである。バイアルの内部形状のみが、上述したような特定の方法で形成される場合は、バイアル保持器の修正は必要ない。
【0110】
円錐形の底部を有するバイアルは、上下方向の効率的な流体およびビーズの運動を生み出す。
【0111】
処理ロボットによるバイアルの取り付けおよび取り外しを可能にする自動化されたシステムでの使用のために、駆動装置、とりわけ、回転ディスクは、バイアル保持器の正確な開始位置/停止位置を検出することを可能にする少なくとも1つの位置センサを備えるか、または、該少なくとも1つの位置センサと関連付けられることが好ましい。位置センサは、ディスクおよび/またはバイアル保持器の開始位置および/または停止位置を検出するように構成される(開始位置/停止位置の検出センサ)。誘導結合のための手段、すなわち、伝達装置によって少なくとも1つの位置センサからの信号を伝達することも可能である。
【0112】
位置センサはまた、少なくとも1つのバイアル保持器と関連付けられてもよい。つまり、各バイアル保持器は、少なくとも1つの位置センサを備えてもよい。
【0113】
バイアル保持器は、ディスクに対して実質的に垂直に、または、ディスクに対して傾けて配置されることが好ましい。したがって、本機器は、ディスクに対して傾けてバイアルを配置することを可能にする偏向装置(deviation device)を備えることが好ましい(接線方向の偏向(tangential deviation)、非直角)。偏向装置は、バイアル保持器がディスクに対して実質的に垂直に、または、ディスクに対して傾けて配置されるようにバイアル保持器の位置を調整するよう構成される。このような機構は、回転中に流体、ビーズ、および試料物質の激しい上下運動を生み出すことができる。
【0114】
本機器は、ディスクに円状に等間隔に配置された少なくとも2つのバイアル保持器を備えることが好ましい。これにより、システムの容易な平衡化および質量不平衡の回避が可能となる。2つより多くのバイアル保持器を設けることも可能である。
【0115】
培養温度は、好ましくは、50℃〜100℃の範囲内であり、好ましくは約52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃および/または約93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、より好ましくは56℃および/または96℃である。例えば、56℃の培養温度は、プロテイナーゼ活性の最適化に使用され、さらに、96℃の培養温度は、(煮沸せずに)病原体を不活性化することの最適化に使用される。
【0116】
制御装置は、記憶装置および好ましくは入力・表示装置を備えることが好ましく、これにより、作業者は、本機器と情報をやりとりし、例えば所望の時間および/またはステップの制御に関する条件を入力することができるようになる。制御装置は、条件を記憶し、所望の方法で本機器を動作させる。記憶装置および入力・表示装置は、統合された装置(制御装置および/または本機器内の)として、または、付加的な装置として設けられてもよい。
【0117】
本機器は、バイアル保持器の付加的な上下運動を可能にする装置を備えることが好ましい。
【0118】
強い振動が起こらないことから、個々に回転可能なディスクおよびバイアル保持器を自動化された試料調製システムに組み込むことが可能となる。バイアル保持器の付加的な保持部品を用いて、装置を任意の位置(例えば、垂直な)に取り付けることも可能である。
【0119】
第5の態様では、本発明は、試料の溶解、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化され、および/または制御された溶解を実行するための/を実行する方法であって、
回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うためにディスクおよびバイアル保持器を回転させるステップと、
回転フェイズおよび/または静止フェイズにおいて少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するステップと、
静止フェイズおよび/または回転フェイズにおいて所定の培養温度を維持するステップと、
ステップがタイミングおよび/またはステップの制御によって実行されるように溶解を制御するステップと
を含む方法に関する。
【0120】
「試料の溶解(lysis)を実行するための、とりわけ、試料の自動化され、および/または制御された溶解を実行するための方法」という表現は、「試料の溶解(lysing)のための、とりわけ、試料の自動化され、および/または制御された溶解のための方法」という表現と交換可能である。このことは、本発明のすべての態様に当てはまる。
【0121】
追加的なステップ(または複数の追加的なステップ)において、少なくとも1つの所定の温度への試料の冷却が実行されてもよい。
【0122】
第6の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係る機器を使用して(または該機器を用いてもしくは該機器によって)、試料の溶解を実行するための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化され、および/または制御された溶解を実行するための方法であって、
回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うためにディスクおよびバイアル保持器を回転させるステップと、
回転フェイズおよび/または静止フェイズにおいて少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するステップと、
静止フェイズおよび/または回転フェイズにおいて所定の培養温度を維持するステップと、
ステップがタイミングおよび/またはステップの制御によって実行されるように溶解を制御するステップと
を含む方法に関する。
【0123】
追加的なステップ(または複数の追加的なステップ)において、少なくとも1つの所定の温度への試料の冷却が実行されてもよい。
【0124】
第7の態様では、本発明は、試料の溶解を実行するための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化され、および/または制御された溶解を実行するための方法であって、
回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うために、第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させ、第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるステップと、
回転フェイズおよび/または静止フェイズにおいて少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するステップと、
静止フェイズおよび/または回転フェイズにおいて所定の培養温度を維持するステップと
を含む方法に関する。
【0125】
追加的なステップ(または複数の追加的なステップ)において、少なくとも1つの所定の温度への試料の冷却が実行されてもよい。
【0126】
第8の態様では、本発明は、本発明の第2の態様に係る機器を使用して(または該機器を用いてもしくは該機器によって)、試料の溶解を実行するための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化され、および/または制御された溶解を実行するための方法であって、
回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うために、第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させ、第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるステップと、
回転フェイズおよび/または静止フェイズにおいて少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するステップと、
静止フェイズおよび/または回転フェイズにおいて所定の培養温度を維持するステップと
を含む方法に関する。
【0127】
追加的なステップ(または複数の追加的なステップ)において、少なくとも1つの所定の温度への試料の冷却が実行されてもよい。
【0128】
第9の態様では、本発明は、試料の溶解を実行するための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化され、および/または制御された溶解を実行するための方法であって、
回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うためにディスクおよびバイアル保持器を回転させるステップと、
回転フェイズおよび/または静止フェイズにおいて少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するステップと、
静止フェイズおよび/または回転フェイズにおいて所定の培養温度を維持するステップと、
加熱のためのエネルギーを加熱装置に伝達するステップと
を含む方法に関する。
【0129】
追加的なステップ(または複数の追加的なステップ)において、少なくとも1つの所定の温度への試料の冷却が実行されてもよい。
【0130】
第10の態様では、本発明は、本発明の第3の態様に係る機器を使用して(または該機器を用いてもしくは該機器によって)、試料の溶解を実行するための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化され、および/または制御された溶解を実行するための方法であって、
回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うためにディスクおよびバイアル保持器を回転させるステップと、
回転フェイズおよび/または静止フェイズにおいて少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するステップと、
静止フェイズおよび/または回転フェイズにおいて所定の培養温度を維持するステップと、
加熱のためのエネルギーを加熱装置に伝達するステップと
を含む方法に関する。
【0131】
追加的なステップ(または複数の追加的なステップ)において、少なくとも1つの所定の温度への試料の冷却が実行されてもよい。
【0132】
第11の態様では、本発明は、試料の溶解を実行するための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化され、および/または制御された溶解を実行するための方法であって、
回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うためにディスクおよびバイアル保持器を回転させるステップ、
回転フェイズおよび/または静止フェイズにおいて少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するステップ、
静止フェイズおよび/または回転フェイズにおいて所定の培養温度を維持するステップ、
ならびに
ステップがタイミングおよび/またはステップの制御によって実行されるように溶解を制御するステップ、および/または
加熱のためのエネルギーを加熱装置に伝達するステップ
を含み、ならびに/または
ディスクおよびバイアル保持器を回転させるステップが、
回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うために、第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させ、第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるステップ
を含む方法に関する。
【0133】
追加的なステップ(または複数の追加的なステップ)において、少なくとも1つの所定の温度への試料の冷却が実行されてもよい。
【0134】
第12の態様では、本発明は、本発明の第4の態様に係る機器を使用して(または該機器を用いてもしくは該機器によって)、試料の溶解を実行するための、とりわけ、試料、とりわけ生物学的試料の自動化され、および/または制御された溶解を実行するための方法であって、
回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うためにディスクおよびバイアル保持器を回転させるステップ、
回転フェイズおよび/または静止フェイズにおいて少なくとも1つの所定の培養温度に試料を加熱するステップ、
静止フェイズおよび/または回転フェイズにおいて所定の培養温度を維持するステップ、
ならびに
ステップがタイミングおよび/またはステップの制御によって実行されるように溶解を制御するステップ、および/または
加熱のためのエネルギーを加熱装置に伝達するステップ
を含み、ならびに/または
ディスクおよびバイアル保持器を回転させるステップが、回転フェイズ中に試料の粉砕、研磨、および混合を行うために、第1の方向におよび/または第1の速度でディスクを回転させ、第2の方向におよび/または第2の速度でバイアル保持器を回転させるステップ
を含む方法に関する。
【0135】
追加的なステップ(または複数の追加的なステップ)において、少なくとも1つの所定の温度への試料の冷却が実行されてもよい。
【0136】
「試料の溶解(lysis)を実行するための、とりわけ、試料の自動化されたか、または制御された溶解を実行するための方法」という表現は、「試料の溶解(lysing)のための、とりわけ、試料の自動化されたか、または制御された溶解のための方法」という表現と交換可能である。
【0137】
本発明の第1の態様のすべての好ましい実施形態はまた、他の態様の一部、すなわち、本発明の第2の態様、第3の態様、第4の態様、第5の態様、第6の態様、第7の態様、第8の態様、第9の態様、第10の態様、第11の態様、および第12の態様の一部である。
【0138】
駆動装置と制御装置との協調、とりわけ、ギヤ(例えば、遊星ギヤ)と時間および/またはステップの制御との協調により、本機器は、効率的で効果的で安全な方法で、自動化され、および/または制御された溶解または溶解処置を実行することができる。さらに、所定のシーケンス制御(時間および/またはステップの制御)および改善された条件(例えば、より高い加速)により、効率の高い溶解は、試料の組成に依存しない。あらゆる種類の試料が、効率的かつ効果的な方法で処理され得る。
【0139】
駆動ユニットまたは駆動装置は、例えば、ディスクおよび/またはバイアル保持器の駆動ユニットもしくは駆動装置とも呼ばれ、加熱装置は、例えば、試料の加熱装置とも呼ばれ、制御ユニットは、例えば、駆動装置および加熱装置の制御ユニットとも呼ばれる。
【0140】
本発明のさらなる好ましい実施形態、利点、および特徴は、従属請求項において規定されており、および/または、以下の詳細な説明および添付図面を参照することによって明らかとなる。