(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧延軸となる長手方向軸Xを有する長尺品(18)を圧延するためのロールホールダカートリッジ(24)であって、該カートリッジ(24)は、2つの側壁(26)、複数のロール-レバーユニット(30)、2つの調整リング(28)、および調整アクチュエータ(32)を備え、
該カートリッジ(24)の各側壁(26)は、複数の第1座(260)を備え、
各調整リング(28)は、複数の第2座(280)を備え、
該ロール-レバーユニット(30)の各々は、ピン(300)の周りを旋回できるように該カートリッジ(24)上に搭載され、各ピンの各端部は、1の該第1座(260)および1の該第2座(280)内に該軸方向にそれぞれ収容され、且つ
該第1座(260)は、純粋に接線方向tに該夫々のピン(300)の移動を可能にし、
該第2座(280)は、純粋に半径方向rに該夫々のピン(300)の移動を可能にし、且つ
該2つの調整リング(28)は、該調整アクチュエータ(32)によって該軸Xの周りに回転させられうる、
上記カートリッジ(24)。
該第1座(260)の各々は、窪み(261)、および該窪み(261)の内部で摺動する摺動ブロック(262)、該摺動ブロック(262)内に形成されかつ該ピン(300)の端部の第1部分(360)を受け取ることを意図された穴(263)を備えている、請求項1に記載のカートリッジ(24)。
該第1座(260)の形状は、該摺動ブロック(262)が該窪み(261)の内部で接線方向tにのみ摺動しうるようなものである、請求項2に記載のカートリッジ(24)。
該第2座(280)の各々は、窪み(281)、および該窪み(281)の内部で摺動する摺動ブロック(282)、該摺動ブロック(282)内に形成されかつ該ピン(300)の端部の第2部分を受け取ることを意図された穴(283)を備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカートリッジ(24)。
該第2座(280)の形状は、該摺動ブロック(282)が該窪み(281)の内部で半径方向rにのみ摺動しうるようなものである、請求項4に記載のカートリッジ(24)。
各調整リング(28)は半径方向突起(284)を備え、且つ該調整アクチュエータ(32)は該半径方向突起(284)に作用する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカートリッジ(24)。
可動部材(321)に半径方向rに沿う移動を与えるように、ジャッキ(320)及び該ジャッキ(320)に接続された可動部材(321)を該調整アクチュエータ(32)は備え、該ジャッキ(320)は該カートリッジ(24)に搭載され、該可動部材(321)は傾斜ガイド(322)を備え、該調整リング(28)に固定されたピン(325)を受け取るところの穴(324)を備える摺動子(323)が、傾斜ガイド(322)の内部に摺動可能に収容されて、該可動部材(321)の半径方向の移動が、該ピン(325)の円周方向の移動を引き起こし、ひいては該調整リング(28)の該軸Xの周りの回転を引き起こすように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のカートリッジ(24)。
【背景技術】
【0002】
ブランクの形態の鋼片(ビレット)または棒の一連の塑性変形によって継ぎ目の無い金属管を生産することは公知である。第1の工程の間、鋼片は、厚い壁と当初の鋼片の長さより1.5〜4倍の長さを有する穿孔された半完成ブランクを得るために、長手方向に穿孔される。次いで、この半完成品は、壁を次第に薄くし且つ完成製品の長さを増大させるように、適当な圧延機を通される。連続圧延機として公知であるこれらの圧延機は、それ自体知られた仕方で複数のステーションを備えている。各ステーションは、輪郭が付けられた溝を備えるロールがその上に搭載されたスタンドを備えている。通常、溝を付けられたロールは数の上で3つであり、その各々は、一対のアームを介して、スタンドに搭載された適当なロール支持レバーによって支持されている。三対のアームは、互いに同一平面上にあり、半径方向を有し、且つ圧延軸の周りに相互に120°の間隔で配置されている。3つのロールの溝の接続された輪郭の組は、圧延ステーションを出ていく管の外側の円周を規定する。
【0003】
各ステーションにおいて、ロール支持レバーは、圧延軸に平行な軸の周りを旋回することができるようにカートリッジに搭載されている。アクチュエータ(例えば油圧式の)は、ロールの各々に作用し、ロールを圧延軸に対して半径方向に押す。アクチュエータは、このように、管を塑性的に変形させるために必要とされる力を発生する。
【0004】
さらに、加工される管に対して送り込むような運動を摩擦によって与えるように、ロールは適切なモータによって回転させられる。
【0005】
次のステーションは、必要に応じて内部のマンドレルと共に、半完成品を外径、内径、壁厚、および長さについて所望の構造を有する管へと徐々に変換する。
【0006】
圧延ロールは摩耗を受け、したがって所定の使用サイクルの後、旋削によって再調整されなければならない。この仕方で、変形と摩耗傷とを取り除くことおよびロールの溝の輪郭を回復することが可能である。事実、個々のステーションが加工される管に最適な輪郭を提供しうるように、各ロールの溝の最適な輪郭を保証することが必要である。
【0007】
旋削は、それ自体知られた仕方で、それぞれの位置から各ロールを分解しそして適切な従来型の旋削ステーションへそれを運ぶことによって実行されうる。代わりに、同様にそれ自体よく知られた仕方で、各スタンドについて、3つのロールをカートリッジ内に搭載したままでカートリッジ全体を取り除くこと、および管の代わりにカートリッジの中心に配置された特別な道具で旋削操作を実行することが可能である。
【0008】
各旋削操作は、個々のロールの直径を必然的に減少させる。この理由のために、各旋削操作の前後にロールを互いに平行に保つための手段を、各スタンドに備えることが知られている。
【0009】
直径の減少の後で、レバーをその軸の周りに単純に旋回させることによって、ロールは管と接触するようにさせられうることは明らかである。しかし、ロールのこの構成は半径方向に対して非対称であり、そして接触は最適ではない。言い換えれば、旋削の後に、3つのロールの溝の輪郭の組は、もはや円周を画定しない。その代わりに、それらは互いに接続されていない円弧で構成された3つの丸い突出を持つ形状を画定する。
【0010】
この問題を克服するために、2つの異なる解決策が知られている。
【0011】
第1の解決策は、ロールの直径の減少を、個々のアームを同等の長さだけ伸ばすことによって補償することで構成されている。この仕方において、最初の位置と旋削後の位置との間のロールの移動は、溝平面を通過する半径方向への純粋な並進運動である。したがって、ロールはそれ自体に平行なままである。
【0012】
第2の解決策は、ロールの直径の減少を、ロール支持レバーがその周りを回転するところのピンの同等の移動によって補償することで構成されており、この移動は互いの内部に入れ子にされた一連の偏心器によって得られる。この仕方で、最初の位置と旋削の後の位置との間でのロール-レバーユニット全体の移動は、溝平面に平行な方向への純粋な並進運動である。したがって、この場合にも、ロールはそれ自体に平行なままである。
【0013】
上に記した2つの公知の解決策は、広く用いられているけれども、欠陥がないわけではない。
【0014】
第1の解決策については、関与する質量と寸法の故に、アームの長さを伸ばす操作は、時間がかかり複雑である。さらに、この長さの伸展は通常、アームに沿った特別の目盛り付きシム(くさび)を配置することによって達成される。したがって、このタイプの解決策では、シムの大量の在庫を用意し管理することが必要とされる。実際に、各圧延ステーションは、シムの3つの完全なシリーズを要求し、各シリーズは、ロールが新しいときから完全に磨耗されるときまでロールに対して実行されうる旋削操作の数に等しい多数のシムを含んでいなければならない。
【0015】
第2の解決策についても、関与する質量と寸法の故に、ピンの移動は、時間がかかり複雑な操作である。この移動操作は、実際に、ピンの各々に対して単独に完成されねばならない。6〜8のステーションを有する圧延機のかなり一般的なケースにおいて、このことは、18〜24のロールの各単独の再調整のために、18〜24のピンの各1つへ単独に操作することを意味する。ピンの各1つに対して、レバーのピンについての純粋に並進的な移動を得るために、個々の偏心器は同時に回転されなければならない。さらに、これらの操作は、各場合において、操作順に再調整されるべきであるカートリッジを取り除き且つそれらを他のカートリッジに置き替えるために必要な時間の間、非製造状態のままであるところの圧延機全体の停止を必要とする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の
図1に特に関連して、符号20は全体として連続圧延設備、すなわち圧延機を指している。圧延機(20)に関連して、圧延軸Xを具体的に規定することが可能であり、該圧延軸は、加工される長尺品(18)(簡単のために「管」という用語で以下呼ばれる)の長手方向軸である。それ自体公知の仕方で、連続圧延機(20)は、複数の圧延ステーションを軸Xに沿って備え、その各々がスタンド(22)を備えている。
【0022】
各スタンド(22)は、それ自体公知の仕方で、複数のアクチュエータ(21)、複数のモータ-減速機-スピンドルユニット(23)、およびロールホールダカートリッジ(24)を備えている。
【0023】
本発明に従うロールホールダカートリッジ(24)は、2つの側壁(26)、複数のロール-レバーユニット(30)、2つの調整リング(28)および調整アクチュエータ(32)を備えている。カートリッジの各側壁は、複数の第1座(260)を備え、各調整リング(28)は、複数の第2座(280)を備え、そしてロール-レバーユニット(30)の各々は、ピン(300)の回りを旋回できるようにカートリッジ(24)上に搭載されており、各ピンの各端部は夫々、軸方向の向きに第1座(260)および第2座(280)内に収容されている。さらに、第1座は、純粋に接線の方向(t)に夫々のピン(300)の移動を可能にし、第2座(280)は、純粋に半径方向rに夫々のピン(300)の移動を可能にし、そして2つの調整リング(28)は、調整アクチュエータ(32)によって軸Xの周りに回転させられうる。
【0024】
「軸方向の」という用語は、圧延軸Xに平行な任意の直線の方向を意味すると理解される。「半径方向の」という用語は、圧延軸X上にその原点を有し且つ該圧延軸Xに垂直な任意の半直線rの方向を意味すると理解される。「円周方向の」という用語は、圧延軸X上に中心をもち且つ該圧延軸Xに垂直な面内に存在する任意の円周cの方向を意味すると理解される。「接線方向の」という用語は、円周cに接する任意の直線tの方向を意味すると理解される。
【0025】
側壁(26)は、カートリッジ(24)に固定されており、一方、調整リング(28)は、カートリッジ(24)に対して可動であり、そして特にそれらは軸(X)の周りを回転しうる。さらに、カートリッジ(24)は、管(18)の圧延の間、および可能性として在りうる、以下で記載されるところのピン(300)のわずかな移動のいくつかの間、圧延スタンド(22)に固定される。しかし、圧延機(20)のいくつかの実施態様において、カートリッジ(24)は、例えば、ロール(304)の再調整およびその結果としてのピン(300)の移動の操作の間、圧延スタンド(22)から引き離されうるというのが真実である。
【0026】
上で既に述べたように、および
図7および9から分かるように、カートリッジ(24)は、2つの側壁(26)および2つの調整リング(28)を備えている。続く詳細な記載は、
図10から14までと同様に、2つの壁(26)の1つのみに、対応するリング(28)に、およびその中に形成された座(260および280)に言及する。明らかに、該図面および記載は、ここで考察した壁に対して実質的に対称的であるもう1つの壁(26)にも適用可能である。
【0027】
ロール-レバーユニット(30)の各々において、ロール(304)は、ロール支持レバー(302)(または単にレバー(302)と云う)によってカートリッジ(24)上に搭載されている。レバー(302)は、ピン(300)の周りに旋回できるようにカートリッジ(24)上に搭載されている。ピン(300)は、圧延軸Xに平行な軸を有している。レバー(302)は、2つのアーム(306)によってロール(304)を支持している。
【0028】
通常は、3つのロール-レバーユニット(30)が各ステーションにある。本解決策で、対立する要求間の満足な妥協案を得ることが可能である。一方では、実際には、個々のステーションの構造的複雑さを減らす必要がある。他方、管(18)の外側の輪郭をできるだけ多数のロール(304)上に分割する必要がある。しかし、特定の要件を満たすために、ステーション毎にロール(304)の数を変えることは可能である。
【0029】
各ロール(304)はさらに、軸Xに対して半径方向rに該ロール(304)へ力を加えるのに適したアクチュエータ(21)(
図1に見られる)を備えている。アクチュエータ(21)によって加えられた力(
図2〜4で太い矢印Fで指示されている)は、加工される管(18)へ塑性変形を生じさせるものである。特にスタンド(22)の3つのアクチュエータ(21)によって生み出された3つの力Fの合成は、管(18)の厚さの半径方向の減少および管(18)自体の軸方向の長さの伸展をもたらす。有利には、アクチュエータ(21)は、レバー(302)と一体化された押出し面(302)上に働く油圧ジャッキを備えている。
【0030】
ステーションはまた、各ロール(304)の回転をもたらすのに適したモータ-減速機-スピンドルユニット(23)を備えている。これらユニット(23)によって実行されたロール(304)の回転は、軸Xに沿って管(18)を、摩擦によって移動させる供給運動を備えるものである。
【0031】
各ロール(304)は回転軸lを規定する。ロール(304)は、該軸lに対して対称的に形成され、そして、その周辺部に形成された、管(18)の外側輪郭の円弧を再現しうるところの溝を有している。特に、各圧延スタンド(22)が3つのロール(304)を備えている場合、該ロールの各々は、120°の公称の円弧に対して作動しなければならない。各ロール(304)について、そのより小さな区間に沿ってロール(304)を、軸lに関して垂直に交差するところの溝平面を規定することも可能である。
【0032】
それらの使用寿命の進行の間、溝の最適な輪郭を保証するために、ロール(304)は定期的に再調整されなければならない。再調整は、ロール(304)の旋削によって実行され、その結果直径の徐々の減少を伴う。
【0033】
図2〜4は、それぞれ、ロール(304)の使用寿命の、最初、途中および終わりのロール(304)を示している。
図2から分かるように、ロール(304)は最大直径を持ってその使用寿命を始める。
【0034】
図3において、ロール(3)の直径は、該ロール(304)の使用寿命の最初の半分の間に、必要であったところの一連の旋削再調整操作によって、減少させられている。この公知の解決策に従うと、ロール(304)の直径の減少は、溝平面に平行な接線方向のピン(300)の移動によって補償される。ロール(304)の直径の減少は、
図3において矢印bによって概略的に示され、一方、ピン(300)の移動は矢印dによって概略的に示されている。
【0035】
図4において、ロール(304)の直径は、該ロール(304)の使用寿命中に必要とされた一連の旋削再調整操作によって、さらに減少させられた。ロール(304)の直径のこの一層の減少は、ピン(300)の一層の移動によって補償される。ロール(304)の直径の減少は、
図4において矢印bによって概略的に示され、一方、ピン(300)の移動は矢印dによって概略的に示されている。
【0036】
一般的な用語を用いて上で与えられた記載は、公知のタイプの圧延機および本発明に従う圧延機の両方に対して適用されうる。
【0037】
公知の解決策に従うと、上で既に示したように、レバー(302)のピン(300)の移動は、相互の内部で入れ子になった一連の偏心器の再構成によって得られる。この再構成の操作は特に面倒である。なぜなら、それは、ピン(300)の各々に対して単独に完了されなければならないからである。
【0038】
本発明に従う解決策が、代りに以下に詳細に記載されるであろう。添付の
図8〜14において、図面の明瞭性のために、カートリッジ(26)の側壁(26)および調整リング(28)は、互いに異なる慣用の形状で示されている。特に、調整リング(28)は、半径方向突起(284)を有する円周状リムとして(
図8、11及び12参照)または円周状リムセグメント(
図13〜15参照)として示される。同時に、カートリッジ(24)の側壁(26)は、多角形リムとして(
図8、10および12参照)、または多角形リムセグメントとして(
図13〜15参照)示されている。これらの形状は、調整リング(28)を側壁(26)と区別するという唯一の目的によって、また、それらが共に圧延スタンド(22)に関連付けされていないときに、慣用的な仕方で選択されたことが理解される。これらの形状は、当業者によく知られた該2つの構成要素に対する特有の技術的要件の下で、様々な仕方で、例えば逆の形状を有するように選択されえた。
【0039】
上述したように、側壁(26)内に形成され且つ従ってカートリッジ(24)と一体化された第1座(260)の各々は、純粋に接線方向tに、その中に収容されたピン(300)を移動可能にする。同様に、調整リング(28)内に形成され且つ従って軸Xの周りに回転可能な第2座(280)の各々は、純粋に半径方向rに、その中に収容されたピン(300)を移動可能にする。添付の
図7および10〜16に示された実施態様に従うと、第1座(260)の各々は、窪み(261)と、該窪み(261)の内部で摺動する摺動ブロック(262)とを備えている。該摺動ブロック(262)内に形成された穴(263)は、ピン(300)の端部の第1部分(360)を受け取ることを意図されている。第1座(260)の形状は、摺動ブロック(262)が窪み(261)の内部で接線方向tにのみ摺動しうるような形状である。同様に、第2座(280)の各々は、窪み(281)と、該窪み(281)の内部で摺動する摺動ブロック(282)とを備えている。該摺動ブロック(282)内に形成された穴(283)は、ピン(300)の端部の第2部分(380)を受け取ることを意図されている。第2座(280)の形状は、摺動ブロック(282)が窪み(281)の内部で半径方向rにのみ摺動しうるような形状である。各ピン(300)の各軸方向端部はしたがって、第1座(260)内部と第2座(280)内部とに同時に収容される。
【0040】
下記の添付図面および記載は、3つのロール(304)を備えたスタンド(22)を述べる。既に述べたように、この解決策は最も一般的なものであり、通常は一般的に妥当であると見なされうる。なぜなら、3つのロールへの参照でなされたコメントは、種々の数の、例えば2つまたは4つのロールを使用する他の解決策へ容易に適用されうるからである。
【0041】
3つのロール(304)の使用は、不変であって、該セクターに典型的である機械加工および組立の公差から離れた、いくつかの幾何学的特徴を必然的に有するカートリッジ(24)になる。各レバー(302)は、ピン(300)によって、軸aの周りを回転可能である。各カートリッジ(24)の3つの軸は、軸X上に中心のある円周上に置かれ、そして120°の角度で相互間が隔てられている。
【0042】
ピン(300)は可動であり、そして軸aはそれらと共に可動であるので、ピン(300)ひいては軸aの移動がより容易に記載されうるそれらについての公称の位置を定義するのが便利である。便宜のために、公称の位置は
図14に概略的に示されており、摺動ブロック(262)は、窪み(261)の内部の作業ストロークの中心に据えられ、且つ摺動ブロック(282)は窪み(281)の内部の作業ストロークの中心に据えられている。したがって、公称の半径方向r
0、すなわち、軸aがその公称の位置にあるときに軸aを通過するものを規定することは可能である。同様に、公称の接線方向t
0、すなわち、軸aがその公称の位置にあるときに軸aを通過するものを規定することも可能である。
【0043】
図14から分かるように、公称の半径方向r
0は、第1座(260)の摺動ブロック(262)と窪み(261)との接触面に垂直である。さらに、公称の半径方向r
0は、第2座(280)の摺動ブロック(282)と窪み(281)との接触面に平行である。同様に、
図14から分かるように、公称の接線方向t
0は、第2座(280)の摺動ブロック(282)と窪み(281)との接触面に垂直である。さらに、公称の接線方向t
0は、第1座(260)の摺動ブロック(262)と窪み(261)との接触面に平行である。
【0044】
既に記載したように、第1座(260)は、接線方向tに各ピン(300)の移動を可能にするので、且つ第1座(260)は、カートリッジ(24)に相対的に固定されるので、結果的に、ピン(300)がそれに沿って移動しうるところの接線方向tは、いつも(カートリッジ(24)に相対的に)同じであり、且つ公称の接線方向t
0と一致する。
【0045】
一方、第2座(280)は、半径方向rに各ピン(300)の移動を可能にし、且つ第2座(280)は、リング(28)と共に軸Xの周りを回転可能であるので、結果的に、ピン(300)がそれに沿って移動させられうるところの半径方向rは、公称の半径方向r
0の周りで連続的に変化する。
【0046】
本発明の動作原理は、添付の図面に示された圧延カートリッジ(24)の実施態様を特に参照して、以下に詳細に記載される。
【0047】
調整リング(28)は、例えば調整リング(28)と一体化された半径方向突起(284)に作動するところの、調整アクチュエータ(32)の動作によって軸Xの周りを回転しうる。
【0048】
当業者は容易に理解しうるように、調整リング(28)は、添付の図面に示されている形状を正確にとる必要性はない。例えば、それが全てのピン(300)の全ての第2座(280)を収容するという条件の下で、且つそれが全ての第2座(280)に対して同じ運動を保証するために十分な剛性を保証するという条件の下で、それは完全な円を形成しなくてよい。
【0049】
調整リング(28)の回転は、一般に、純粋に円周方向cに起きる第2座(280)の運動を引き起こす。この特徴は、
図8に概略的に示されており、角運動は明瞭性を増すために拡大されている。換言すれば、もしピン(300)が、第2座(280)の内部に、これ以上の拘束なしに収容されたならば、各軸a(
図14および15において記号×によって示される)は円周cの円弧を描くであろう。しかし、ピン(300)は、第1座(260)と第2座(280)との内部に同時に収容されるので、その運動は該2つの座(260および280)によって課せられた拘束の組合せによって決定される。
【0050】
したがって、特に、示された実施態様を参照すると、調整リング(28)の運動は、摺動ブロック(282)に対して円周方向cへの推力を与える。窪み(281)と摺動ブロック(282)との間の接触面は、事実、推力に垂直であり、それ故に第2座(280)の特定な形状によって許容された唯一の(半径方向の)自由度に決して影響しない。ピン(300)が穴(283)の内部に部分的に収容されているので、摺動ブロック(282)の運動は、ピン(300)の運動をも引き起こす。
【0051】
ピン(300)自体が、それは穴(263)の内部に部分的に収容されているので、第1座(260)の摺動ブロック(262)に対して円周方向cへの推力を伝達する。ここで、それは、カートリッジ(24)、およびそれ故に潜在的には全設備(20)に相対的に固定されていることが想起される。
【0052】
第1座(260)の特別の形状は、摺動ブロック(262)が単一の自由度、すなわち、窪み(261)の内部で公称の接線方向t
0に摺動しうること、を可能にする。当業者は十分に気付きそして
図15から容易に分かるように、円周状軌跡cと公称の接線方向軌跡t
0とは、公称の位置から一方を他方から徐々に離す。したがって
図15において、どのように軸a(×で指示される)の最終位置が、円周状軌跡cから離れていくかが分かる。
【0053】
当業者は容易に理解しうるように、旋削によって再調整された後のロール(304)の直径の減少bを補償するために、ピン(300)(およびそれと共に軸a)は、公称の接線t
0に沿って同一の長さdだけ移動されなければならない。この移動は、第1座(260)および第2座(280)によって許容された自由度の幾何学的合成により実行されうる。
図15から容易に分かるように、公称の接線t
0に沿った軸aの移動は、方向cに沿った回転(調整リング(28)の回転によって与えられる)と、回転の終わりで実行される半径方向rに沿った移動(幾何学的拘束によって課せられる)との合成によって理論的な表現では、得ることができる。
【0054】
或る可能な実施態様に従うと、公称の接線t
0に沿ったピン(300)の全作動ストロークdは、使用寿命の初めから終わりまでロール(304)に影響する直径の全体的な減少bを補償しうるようなものである。或る可能な実施態様に従うと、公称の接線t
0に沿ったピン(300)の全作動ストロークは、約20mmと約30mmとの間であり、好ましくは約25mmである。このストロークdは、各窪み(261)内部での摺動ブロック(262)の全作動ストロークに実質的に等しい。
【0055】
或る可能な実施態様に従うと、ピン(300)の全作動ストロークは、公称の位置の右側へ約12.5mmの半ストロークと、公称の位置の左側へ約12.5mmの半ストロークとで構成されている。これら実施態様に従うと、ロール(304)の使用寿命の始まりで、ピン(300)は、その作動ストロークに沿う第1端点に置かれる(
図2)。ロール(304)の使用寿命の第1半期の間、直径の継続的な減少を補償することは、作動ストロークの中間点の方へピン(300)の移動を引き起こす。ピンの作動ストロークの中間点(上記で公称の位置であるとみなされた)は、ロール(304)の使用寿命の半分の間に到着される(
図3)。したがって、ロール(304)の使用寿命の第2半期の間、直径の継続的な減少を補償することは、作動ストロークの中間点から第2端点の方へピン(300)の移動を引き起こす。作動ストロークの第2端点は、ロール(304)の使用寿命の最後で到着される。
【0056】
既に上で記載されたように、本発明に従うカートリッジ(24)は、調整リング(28)に軸Xの周りの回転を与えるのに適した調整アクチュエータ(32)を備えている。この調整アクチュエータ(32)は、機械的ねじジャッキ、機械的ウォームねじ、およびラックジャッキ、油圧式ジャッキ等の形状のような種々の形状を取りうる。
【0057】
添付の
図16および17は、調整アクチュエータ(32)の特別の利点を有する実施形態を示している。この実施形態に従うと、調整アクチュエータ(32)は、可動部材(321)に接続されたジャッキ(320)、例えば油圧式ジャッキを備えている。ジャッキ(320)は、軸Xに相対的に半径方向rに沿って可動部材(321)に移動を与えるように、カートリッジ(24)上に搭載されている。一方、可動部材(321)は、その内部に摺動子(323)が摺動可能に収めれた傾斜ガイド(322)を備えている。摺動子(323)は、調整リング(28)の両突起(284)と一体化されたピン(325)を受け取る穴(324)を備えている。この運動学的構成は、可動部材(321)の純粋に半径方向の移動の後、該ガイド(322)の傾斜は、半径方向成分e
rおよび円周方向成分e
cを有する、摺動子(323)の移動が引き起こすという効果を有している(
図17参照)。調整アクチュエータ(32)の記載の目的だけのために、円周方向cを接線方向tから区別することはもはや必要ではないことに注意すべきである。摺動子(323)がピン(325)を収容しているので、可動部材(321)の半径方向の移動は、ピン(325)の円周方向の移動、ひいては調整リング(28)の突起(284)の軸Xの周りの回転を引き起こす。或る実施態様に従うと、半径方向に対する摺動子(323)の傾斜は、10°〜20°、好ましくは12°〜18°の間にある。
【0058】
図16および17に示された実施態様において、半径方向に対する摺動子(323)の傾斜は約15°である。この幾何学的な構成は、摺動子(323)の移動の半径方向成分e
rと円周方向成分e
cとの間の約1:0.267の比をもたらす。
【0059】
調整アクチュエータ(32)の実施態様は、(例えば油圧式の)ジャッキが接線方向に直接に作動するように配位されている別の実施態様と比較して特に有利である。
【0060】
この運動学的連鎖における傾斜ガイド(322)の配置から生じる主たる利点は、一方で、アクチュエータ(32)から調整リング(28)を介して単一ピン(300)へ力を伝達することを可能にし、しかし同時に、逆方向への、すなわちピン(300)からアクチュエータ(32)への力の伝達を実質的に阻むことである。
【0061】
圧延の間、事実、該アクチュエータによって生み出された力Fと、その結果の、管(18)およびその内部に収容されたマンドレルによって生み出された反作用は、ピン(300)へのかなりの拘束反作用の発生をもたらす。従来技術に従う圧延スタンド(22)において、ピン(300)は該スタンド(22)に対して固定され、したがって拘束反作用はカートリッジ(24)に伝達される。他方、本発明に従う圧延スタンド(22)において、カートリッジ(24)は、ピン(300)が該スタンド(22)に相対的なある移動性を有することを可能にする。言い換えれば、ピン(300)の拘束反作用の半径方向成分がカートリッジ(24)へ依然として伝達される一方で、接線方向成分及び/又は円周方向成分は、調整リング(28)を介して調整アクチュエータ(32)へ伝達される。もし後者が接線方向に向けられるならば、システムの全体的な剛性は、ジャッキ自体の剛性に正確に依存する。油圧式ジャッキの場合、システムの剛性は、油柱の圧縮性の故に、満足できるものではない。反対に、ジャッキの半径方向の配位および傾斜ガイド(322)の存在は、ジャッキへ伝達されそしてそれによって対抗されねばならない力の劇的な減少をもたらす。
【0062】
圧延プラント(20)内で本発明に従うカートリッジ(24)の使用から生じる一つの重要な利点は、ロール(304)の旋削による再調整の後に、ピン(300)の位置の速く、簡単且つ精確な調節を可能にすることである。当業者なら、これまでに与えられた記載から容易に理解しうるように、ピン(300)の移動の操作は、調整アクチュエータ(32)の操作を単に含むのみである。その結果としての調整リング(28)の回転は、カートリッジ(24)の全ピン(300)の同時の(純粋に接線方向の)移動dを引き起こし、それ故に、ロール(304)の直径の減少bの精確かつ素早い補償を可能にする。ロール(304)の再調整後に必ず実行されねばならないこの操作は、好ましくは、圧延機(20)から取り外されたカートリッジ(24)で実行される。
【0063】
しかし、本発明に従う解決策は更なる利点をもたらす。ピン(300)の移動の容易さおよびそれが遠隔的に実行されうるという事実(すなわち、ピンそのものを直接に調節しなければならないことはなく)は、カートリッジ(24)を取り外すことなしに、圧延機(20)を停止させることなしに、または圧延が進行中である間すらも、ピン300の位置を調整することの可能性−全く新規である−を生じさせる。たとえ、ロール(304)の直径の如何なる減少をも補償することが要求されていなくとも、例えば圧延の間使用されるロール(304)の組の公称の直径とわずかに異なっている直径の管(18)を圧延することが必要なケースのように、事実、いくつかのケースでは、わずかの移動は望ましい。公知のように、各圧延ステーションにおいて、ロール(304)の溝の輪郭は、半完成品すなわち管(18)の外側の輪郭を画定する。明らかに、ロール(304)の溝がそれに沿って形成された円弧は、その与えられたステーションで得られるべき公称の直径を、直径として有する外周から取られる。
【0064】
時々、特異な直径、すなわち、圧延機(20)の設計構造によって得ることが出来ず、いずれにせよ想定された公称の直径と異なる直径を有する管(18)を得ることが要求されうる。特異な直径を有する管を得るために、したがって、得られる直径をわずかに増減するためにロール-レバーユニット(30)をわずかに旋回させることが可能である。明らかに、そのような構成は、各ロールにとって、半径方向に関して非対称であり、そしてロール自体の接触は最適ではない。言い換えれば、レバー(302)の旋回の後、3つのロール(304)のの溝の輪郭のセットは、外周をもはや画定しない。その代わりに、それらは、一緒に接続されていない円弧で構成された3つの丸い突出を持った形態を画定する。ピン(300)の位置を調節する可能性は、各ロール(304)についての接触の半径方向rに関する少なくとも対称性を再導入することで、この状況を改善する。ピン(300)の上記調節の後、管(18)の外側の輪郭は、一緒に接続されていない円弧で構成された3つの丸い突出をもった形状であり続けるが、公知のタイプのカートリッジによって得られうるそれらと比較してより規則的な形状およびより均一の厚みを持つであろう。
【0065】
発明はまた、長尺の半完成品、典型的には継ぎ目なし管(20)の圧延のためのスタンド(22)および圧延機(20)に関係する。本発明に従う圧延スタンド(22)は、上述の記載に従う、複数のアクチュエータ(21)、複数のモータ-減速機-スピンドルユニット(23)およびカートリッジ(24)を備えている。本発明に従う圧延機(20)は、上述の記載に従う、複数の圧延ステーションおよび関連するスタンド(22)を備えている。
【0066】
上記されたカートリッジ(24)、スタンド(22)および圧延機(20)の実施態様については、当業者は、特定の要求を満たすために、添付した特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された要素を修正及び/又は同等の要素で置き換えを行いうる。