(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの可能性がある再生可能エネルギー源は、波力−世界中の大洋および海の全てで可能な、豊かで一定のエネルギー資源である。波力からエネルギーを生成する種々の波装置が提案されてきたが、そのような装置は多くの制限を有し、長期間にわたり可能な波力資源を確実に利用する能力を証明した装置はない。
【0005】
我々は、WO2010007418号で、波運動を有用なエネルギーに変換する向上された発電機を開示した。開示された発電機は、潜水可能な反応体を使用して、既存の波エネルギー変換器に関連する多くの困難を解決する。
【0006】
しかし、WO2010007418号で開示された波エネルギー変換器は、さらに改良の可能性がある。具体的には、WO2010007418号で記載および図示された機器は、継続的にずっと海面にとどまるエネルギー捕捉フロートを有する。これは、嵐のような高エネルギーの状態では、フロートが高い負荷にさらされることを意味する。これらの高い負荷を構造および電力切断システムによって管理しなければならず、高価な機器の過剰性能をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
我々は、水域内の波運動を有用なエネルギーに変換する発電機を考案した。発電機は、メイン電力捕捉フロートが、定格電力を得るため発電機に必要とされるよりエネルギーが多い海況でより少ないエネルギーを捕捉することを可能にする、調節可能な幾何学構造を有する。
【0008】
さらに、我々のシミュレーション作業は、機器の幾何学構造を変える能力が、システムを調整して異なる海況に最適に反応することを可能にすることを示した。前記WO2010007418号に記載された既知の発電機は、波運動に反応して移動可能な少なくとも1つのエネルギー捕捉フロートと、エネルギー捕捉フロートの下方に位置決められた反応部材と、エネルギー捕捉フロートを反応部材に接合し、エネルギー捕捉フロートと反応部材の間の間隔を形成する1つまたは複数のコネクタと、水面下の反応部材とそれぞれのエネルギー捕捉フロートの間の相対的な移動を有用なエネルギーに変換するエネルギー変換手段とを備える水域の波運動を有用なエネルギーに変換する発電機を含む。
【0009】
本発明によると、発電機は、水域内で予め定められた範囲にわたり反応部材の深度を設定する適応可能な設定手段を有する。設定手段はさらに、水域の水底からの反応部材の高さを設定するよう構成される。
【0010】
「深度を設定する」ことにより、我々は変更可能なやり方で正確な深度を選択および固定が可能な方法での制御を意味する。言い換えれば、深度の変更が望まれる場合、さらに正確な深度を選択および固定が可能なように、設定手段を適合、変更および制御してもよい。
【0011】
第1の本発明の実施形態で、深度設定手段は、それぞれの浮力フロート(エネルギー捕捉フロートの補助でありエネルギー捕捉フロートとは異なる)にそれぞれ取り付けられた、調節可能な長さの
適応性のある(しなやかな)少なくとも1つの取付線を備える。この実施形態では、発電機は、水域の水面上の補助フロートにより補助された正味の負の浮力を有する。
【0012】
第2の本発明の実施形態で、深度設定手段は、反応部材を水域の水底Bに調節可能に固定する、調節可能な長さの適応性のある少なくとも1つの係留線を備える。この実施形態では、発電機は、適応性のある係留線の張力に対抗する正の浮力を有する。
【0013】
いずれの実施形態でも、深度設定手段が1つまたは複数のウィンチにより反応部材に連結されるのが望ましい。
【0014】
本発明による発電機のコネクタが、適応性のある線または適応性のある線のそれぞれのためのそれぞれのプーリにより反応部材に据え付けられた、少なくとも1つの線を有するのが望ましい。また、線または線のそれぞれが調節可能な長さであり、長さの調節は通常それぞれのドラムの周辺の線または線のそれぞれを巻くことにより得られることが望ましい。よって、反応部材とエネルギー捕捉フロートの間の距離を、それぞれのドラムにまたは離してコネクタ線を巻くことにより調節可能である。
【0015】
本発明の望ましい実施形態で、反応部材とエネルギー捕捉フロートの間の距離(または垂直方向の間隔)、および従って水域内のエネルギー捕捉フロートの深度の影響を受けない調節を可能にするために、コネクタは調節可能な長さであることが望ましい。(コネクタと水平線の間の鋭角のような)接合具の幾何学構造を選択的に変更可能であるように、コネクタを反応部材に調節可能に据え付けることが、さらに望ましい。接合ポイントの反応部材にわたる移動を可能にするそれぞれの軌道内の、反応部材への(プーリのような)少なくとも1つのメイン接合ポイントによる調節可能な据え付けが望ましい。プーリは、例えば、(プーリ上の駆動ピニオンおよび反応部材上の相補的な固定ラックのような)ラックおよびピニオンの配置により軌道内を移動可能であってもよい。
【0016】
よって、プーリを、反応部材の外周へ、または外周から離して移動してもよい。それぞれのプーリを外周へ移動するにつれ、コネクタと水平線(通常は反応部材の頂面の方向と同一)の間の内角(一般的に鋭角)は減少する。このプーリ位置の調節は、エネルギー捕捉フロートと反応部材の間の距離に影響する。そのような調節を、コネクタ線の長さの調節と関連して、またはコネクタ線の長さの調節により補正して行ってもよい。
【0017】
(通常は反応部材からエネルギー捕捉フロートへの空気供給、および本発明による発電機が配置される(海のような)水域の水面から反応部材への空気供給の準備によりエネルギー捕捉フロートが含む空気および水の比率を変えることにより、エネルギー捕捉フロートを、その質量を変えるよう構成することが望ましい。
【0018】
反応部材が、反応部材が浮力フロートからぶらさげられる少なくとも1つの水面下の作動モード、および反応部材が水域の水面上に浮かぶ最大浮力モードを含む、調節可能な浮力および複数の浮力モードを有することがさらに望ましい。これらの複数の浮力モードのいずれでも、反応部材が慣性および抗力を有し、波運動により引き起こされるエネルギー捕捉フロートの可能性がある移動に対抗するべきである。
【0019】
望ましい本発明の実施形態を、添付の図を参照して詳細をさらに記載する。図内では、同一の部分は同一の参照番号で全箇所で示す。図の明瞭性を損なうことを避けるため、全ての図で全ての部分を示すわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず
図1および
図2を参照すると、本発明による例示的な波力発電機が示され、波力発電機は、潜水可能な水底反応部材1、波に反応して移動するエネルギー捕捉フロート2、反応部材1上に据え付けられた一連のエネルギー変換器3a、3b,3c,3d、および、エネルギー捕捉フロート2をそれぞれのプーリ5a,5b,5c,5dを介してそれぞれのエネルギー変換器3a、3b,3c,3dへ接合する、調節可能な長さのそれぞれの接合線4a,4b,4c,4dを備える。それぞれのプーリはそれぞれの軌道6a,6b,6c,6d上に調節可能に据え付けられ、それによって、それぞれのプーリを反応部材1の外周へ、または反応部材1の外周から離れてのどちらかへ移動することが可能である。
【0022】
図1に示された配置で、エネルギー捕捉フロート2と反応部材1の間の間隔が最小であるように、それぞれの接合線4a,4b,4c,4dは、それぞれのエネルギー変換器3a,3b,3c,3d上の(ドラム11aのような−
図5参照)ドラムの周辺に最大限または最大範囲に巻かれている。このケースでは、反応部材1およびエネルギー捕捉フロートは、水域の水面Sにともに浮かんでいる。
【0023】
逆に、
図2に示された配置で、それぞれの接合線4a,4b,4c,4dは、エネルギー捕捉フロート2と反応部材1の間に間隔があるように繰り出される(それぞれのドラムの周辺で部分的にほどかれる)。このケースでは、エネルギー捕捉フロート2は、水域の水面Sの少し下に示されている。
【0024】
図1および
図2に示される実施形態で、発電機は(エネルギー捕捉をしないまたは補助の)2つの水面フロート7a,7bをさらに有し、それぞれが、それぞれの水面フロート7a,7bを反応部材1に接合する調節可能な長さの対応する深度設定線8a,8b(
図2参照)を有する。それぞれのウィンチ13a,13bにより深度設定線8a,8bを調節することが可能であり、後述するように、それによってそれらの長さを制御し、従って反応部材1の深度を制御することを可能にする。
図2はまた反応部材1とエネルギー捕捉フロートの間の導線を示し、その目的は続く図を参照して述べる。
【0025】
図3は係留線9a,9b,9c,9dを伴った
図2の(再度エネルギー捕捉フロート2が反応部材1から離間された)波エネルギー発電機を示し、係留線は発電機を海底Bにつなぎ、それによって発電機をステーション上に保持する。発電機により生成されたエネルギーを、それが使用可能な箇所へ供給するのを可能にするよう、電力導線10がさらに設けられる。
【0026】
反応部材1の水中深度が変化したとき、反応部材1がそれぞれの係留線の余分な緩みを取ることができるよう、係留線9a,9b,9c,9dを、長さ調節手段を介して反応部材1に接合してもよい。
【0027】
第1の本発明の実施形態で、発電機がフロート7a,7bに接合された深度設定線8aおよび8bにより調節されるので、発電機が水柱内を自由に上下できるように、係留線9a,9b,9c,9dはずっと緩んだままであることに注目すべきである。
【0028】
それぞれの係留線が通常緩みを保ちながら発電機のさらに自由な移動を可能にするように、「フロータ」(浮揚体)またはシンカ(加重体)を係留線9a,9b,9c,9dに追加することにより、係留線内にL型曲り(図示せず)を生成してもよい。
【0029】
係留線9a,9b,9c,9dおよび電力導線10は、機器の第1の実施形態の発明の特徴に直接関連しないので、明瞭にするため第1の実施形態を示す以後の図から省略する。
【0030】
反応部材1は通常中空の構造であり、その浮力を調節するため、選択的に空気または水を満たすようになされる。従って本発明による波力発電機は、反応部材1が水で完全またはほぼ完全に一杯である水中作動構成、および反応部材1が空気で完全またはほぼ完全に一杯である浮揚面構成を有する。
【0031】
浮揚面構成にあるとき(
図1)、反応部材1は、機器の全ての他の構成要素を支えるのに十分な浮力を有して(海のような)水域の水面S上に浮かぶ。この状況で、本発明による発電機は、水域の水面Sを容易に移動可能である。波力発電機は、係留線9a,9b,9c,9dおよび電力導線10が水から離れ容易に接近可能であるぐらいに、水上で充分高く位置することが可能である。波力発電機はまた、維持管理のため容易に接近を可能にする、全ての使用可能な構成要素が水から離れた、それ自身の安定したサービスプラットフォームを生成可能である。
【0032】
図2を参照すると、波発電機が水中作動構成にあるとき、反応部材1は、エネルギー捕捉フロート2および水面フロート7a,7bの組み合わせからぶらさげられる。従って、反応部材1の重量は、エネルギー捕捉フロート2の浮力B1プラス水面フロート7a,7bの浮力B2以下である。
【0033】
反応部材1内に含まれる大量の海水が、対応する大きな質量を部材にその重量Wを増加することなく与え、従って慣性を与える。また、反応部材1は波打つ力の方向に垂直な広い表面域を有し、それによって大きな抗力および質量の増加といった移動へのさらなる抵抗を提供する。
【0034】
通常、水面フロート7a,7bを組み合わせたサイズはエネルギー捕捉フロート2のそれ未満であり、従って、水面フロート7a,7bの浮力B2はエネルギー捕捉フロート2の浮力B1未満になる。
【0035】
水面フロート7がエネルギー捕捉フロート2より小さいので、それらは、非常に波が大きい状況でも反応部材1のメイン構造に重大な負荷を移さない。水面フロート7の形状はまた、波エネルギーの捕捉能力が小さいようにありうる。
【0036】
反応部材1を、エネルギー捕捉フロート2および水面フロート7a,7bから、反応部材が通常海面の波の影響域より下にあることを確実にするのに十分な深度D1(
図7〜
図11参照)でぶらさげてもよい。従って、波に引き起こされたエネルギー捕捉フロート2の移動は、エネルギー捕捉フロート2と反応部材1の間の相対的な運動をもたらす。この移動はエネルギー変換器3a,3b,3c,3dのそれぞれの作動行程によって取り込まれ、よって電力を生み出すのに利用される。
【0037】
示された実施形態で、1つのフロート2が示されているが、適切であれば2つ以上のそのようなフロートを備え、それぞれが反応部材1上に据え付けられたそれ自身の一連のエネルギー変換器を、それぞれの接合線、プーリおよび軌道とともに有することが可能であることが理解されるであろう。
【0038】
図4a〜
図4dを参照すると、波に反応したエネルギー捕捉フロート2の移動がさらに詳細に示されている。機器の幾何学構造は、作動原理を明瞭に示すため、この図では簡略化されている。通常フロート2は、
図4aから
図4bへ、それから
図4cへ、それから
図4dへ、そして
図4aへと最初のサイクルを完了する矢印で示された連続で、連続する波のピーク間のほぼ円形の経路の波のかけらの軌道運動をたどる。エネルギー捕捉フロート2が波とともに移動するにつれて、反応部材1の中心へのフロートの距離は、水平方向および垂直方向の両方で変化する。これは波の影響下で接合線4a,4b,4cおよび4dの長さの変化につながり、それが順に有用な電力を生成するためそれぞれのエネルギー変換器3a,3b,3c,3dにより利用される。接合線4a,4b,4c,4dの長さが変化する様子は、
図4a,
図4b,
図4cおよび
図4d内の矢印で示される。
図4a,
図4b,
図4cおよび
図4dに示されたフロート2の運動がほぼ円形の軌道であるが、フロート2が、海況によって、実質的に、よりうねって(水平方向に)または波打って(垂直方向に)移動するケースもありえることに注目すべきである。
【0039】
エネルギー変換器のうちの1つ3aが拡大した図である
図5を参照すると、エネルギー変換器3aは、対応する水圧モータ12aに装着されたドラム11aの周辺に巻かれたそれぞれの接合線4aを有することにより稼働する。水圧モータ12aは、エネルギー捕捉フロート2が波によって移動されるにつれてドラム11を回転する接合線4aによって回転される。水圧モータ12a(および他のエネルギー変換器3b,3c,3dなどに関連する他の同様のモータ)が外部の力を受けて回転されるとき、関連するモータは、高圧の水力を生む水圧発生器になり、高圧の水力を有用な作業の実行、例えば電気発電機の回転に使用可能である。
【0040】
前述の必要条件を達成可能な例示的な水圧回路が、
図6に示される。この回路は、水圧モータ12aの強制された回転からの水圧の流体流動の生成、生成された水圧の流体流動の電気への変換、および水圧モータ12a上の予圧の生成を可能にする。
【0041】
前述の必要条件を達成可能な例示的な水圧回路が、
図6に示される。この回路は、水圧モータ12aの強制された回転からの水圧の流体流動の生成、生成された水圧の流体流動の電気への変換、および水圧モータ12a上の予圧の生成を可能にする。
【0042】
そのような水圧回路の構成要素は公知であり、本発明の一部を形成しない。しかし、例示的な水圧回路で、水圧モータ12aは水圧モータとシステムの残りとの間の圧力を制御する圧力モジュレータを介して接合される。高圧および低圧蓄圧器が、波サイクルを通してもたらされる変動する電力供給を平坦化し、無効電力をウィンチへ提供する短期のエネルギー貯蔵部として使用される。液体は回路の高圧側から低圧側へ、発電機を回転するのに使用される変速式水圧モータを通して流される。この発電機は、電力を取り込み、電力を変速式水圧モータに提供するモータとしてはたらき、無効電力をシステムに提供する。水圧液は貯蔵部に格納され、システム内で使用される液体の質を維持するため、フィルタを通して流される。始動ポンプもまた、システムに最初の圧力をもたらすよう設けられる。
【0043】
ドラム11(および同様のドラム)もまた、それぞれの接合線4a(および他の図に示されたもののような対応する同様の接合線)の貯蔵に関する設備を提供し、よってその長さの調整を容易にする。接合線4aが短縮されるときは、エネルギー捕捉フロート2が反応部材1と接触するときに最小の長さになるポイントへ、ドラム上の接合線の複数回の回転が保持される。接合線4aが伸延されるときは、最大の長さになり線4aがドラム11a上に格納されないポイントへ、ドラム上で接合線の少ない回転が保持される。(全ての他の線4b,4c,4dの同様の短縮および延長が、同様のドラムにより全ての他の対応するエネルギー変換器で起こるが、図示しない。)
【0044】
示された本発明の実施形態に関して記載されたエネルギー変換器3a,3b,3c,3dの代わりに、多数の他のタイプの長さ調整および電力取得メカニズムを使用してもよいことを理解すべきである。ここに記載されたシステムは、エネルギー変換およびそれぞれの接合線4a,4b,4c,4dの長さの調節の両方についての実際に実現可能な方法の例示が目的である。
【0045】
例えば、水圧シリンダまたは直線状の発電機が、対応する接合線の長さを調節するのに使用される中間線貯蔵ドラムとともに水圧モータの使用場所にあってもよい。さらに、第1の例示的な本発明の実施形態で使用された水圧予圧を、分離した物理的スプリングで置き換えてもよい。
【0046】
接合線4a,4b,4c,4dおよび深度設定線8a,8bは全て長さが調節可能であるので、エネルギー捕捉フロート2および反応部材1の深度D1の両方の深度D2を、機器全体が浮かび続ける間、互いに独立して変更してもよい。これは、記載された実施形態の重要な特徴である。
【0047】
深度設定線8a,8bをそれぞれのウィンチ13a,13bにより調整し、それによってそれらの長さの制御を可能にし、従って反応部材1の深度D1を制御することが可能である。接合線4a,4b,4c,4dの長さ、および従ってエネルギー捕捉フロート2の深度D2を、それぞれのエネルギー変換器の部分であるドラム11aのようなドラム上のそれぞれの線の貯蔵部を介して、それぞれのエネルギー変換器3a,3b,3c,3dにより調節可能である。
【0048】
本発明による発電機が作動し、波の運動により接合線4a,4b,4c,4dのそれぞれの長さが絶えず変化するとき、それはエネルギー変換器3a,3b,3c,3dにより制御される中立または中間行程の位置であり、従って調節されたエネルギー捕捉フロート2の平均深度D2である。
【0049】
それぞれのドラム上の接合線4a,4b,4c,4dなどの正確な量を常に発電機の関連するコントロールシステムが識別するように、ドラム11(および同様のドラム)またはそれぞれのモータ12aなどを、回転的に符号化してもよい。従って長さの調節が望ましいとき、コントロールシステムは、モータ12aまたは同様のモータに、それぞれの接合線4aを巻き取りまたは繰り出すよう指示することが可能である。(本発明による発電機が波運動から電力を生成していないとき、前述の水圧エネルギー変換回路が水圧モータに電力を提供することを可能にする。)
【0050】
発電機が使用中で接合線の長さが絶えず変化するとき、(前述のように)コントロールシステムは、接合線4a,4b,4c,4dの平均の長さを監視する。このケースでは、平均の長さの調節が望ましい場合、接合線4a,4b,4c,4dが(接合線を伸延するため)巻き取られるよりも容易に繰り出されるように、または(接合線を短くするため)繰り出されるよりも強く巻き取られるように、コントロールシステムは水圧モータ内のバイアス力を調節可能である。平均の線の長さが望ましくなったとき、波により引き起こされる接合線4a,4b,4c,4dの巻き取りおよび繰り出しが等しくあるように、コントロールシステムはモータ12aおよび同様のモータ内のバイアス力を均衡に戻す。(この効果を得るよう、前述の水圧エネルギー変換回路が水圧のバイアス力を適切な方法で調整することを可能にする。)
【0051】
反応部材1の深度D1およびエネルギー捕捉フロート2の深度D2を変更可能な前述のメカニズムは、海況によって発電機のエネルギー捕捉特性を変更することを可能にする。(仮定の海況は海の波の高さおよび波の周期の組み合わせであり、波の高さおよび波の周期の両方が互いに独立して変わりうる。)海況に応じて機器がその幾何学構造を変更するこの能力がどのようにそのエネルギー捕捉特性に影響するかは、さらに後述する。
【0052】
第1に、本発明による発電機が波の高さに応じてそのエネルギー捕捉特性を調節可能な方法、および特に極度の海況で機器がエネルギー捕捉を制限可能な方法を記載する。第2に、波の周期に応じて本発明による発電機がその反応を調整する能力を記載する。
【0053】
図7〜
図9を参照すると、波の高さに応じてエネルギー捕捉を調節可能な方法がより詳細に示される。補助として、水柱内のエネルギーの分布が、本発明による発電機の表示に並んで実例として(正確な縮尺ではない)示されている。
【0054】
公知のように、波エネルギーは水の粒子の軌道移動であり、波の移動の方向に伝わる軌道移動である。波が高くなると粒子の軌道は大きくなり、粒子の速度も大きくなる。波エネルギー(すなわち粒子の軌道の大きさ)は水面で最大であり、深くなると急速に減少する。
【0055】
図7を参照すると、波の高さが低い状態で、捕捉されるエネルギーを最大化するため、接合線4a,4b,4c,4dの適切な伸延または繰り出しにより、エネルギー捕捉フロート2の深度D2は、非常に浅い(海の水面S上または近辺)状態でありうる。
【0056】
図8を参照すると、波の高さが中程度から高い状態で、エネルギー捕捉フロート2の深度D2が深くなり、水面での波エネルギーに対して波エネルギーが減少し、それによって機器の構造が過剰な負荷の影響を受けないよう、およびメカニズムの電力取得がその定格電力を超える過剰なエネルギーを処理しなくてはならないことがないように、接合線4a,4b,4c,4dを部分的に引きこんでもよい。
【0057】
図9を参照すると、嵐の状態(非常に高い波)で、エネルギー捕捉フロート2および反応部材1を最大深度に下降させることが可能となるように、接合線4a,4b,4c,4dを完全に引きこんでもよく、最大深度では、非常に高い波が機器の損傷を引き起こすリスクは軽減されうる。
【0058】
波の周期ならびに波のサイズは波のエネルギー量に影響し、従ってフロートの深度をまた同様に波の周期に対して調節可能であることに留意すべきである。
【0059】
本発明による機器が、特に海況の周期に応じてその幾何学構造を調節する方法を、さらに記載する。進行中の海況の周期への最適なエネルギー捕捉対応−これをしばしば同調と呼ぶ−を提供するのが、これらの調節の目的である。
【0060】
機器が海況の周期にその反応を同調することが可能な第1のメカニズムを、
図10および
図11を参照して記載する。
【0061】
図10を参照すると、波が短い周期の状態で、エネルギー捕捉フロート2と反応部材1の間の距離D3は減少される。これは、それぞれの接合線4a,4b,4c,4dの水平線に対する角度αが小さく、それがフロート2の制約を増加し、結果としてシステムの自己振動を減少させ、エネルギー捕捉フロート2の反応を短い周期の海況により同調させるように、システムの幾何学構造を変更する。
【0062】
図11を参照すると、波が長い周期の状態で、エネルギー捕捉フロート2および反応部材1は伸延される。これは、それぞれの接合線4a,4b,4c,4dの水平線に対する角度αが大きく、それがフロート2の制約を減少し、結果としてシステムの自己振動を増加させ、エネルギー捕捉フロート2の反応を長い周期の海況により同調させるように、システムの幾何学構造を変更する。
【0063】
エネルギー捕捉フロート2と反応部材1の間の距離D3の増加の影響の我々の計算モデルの結果が、
図12にグラフで示されている。エネルギー捕捉フロート2と反応部材1の間の距離D3の増加が、発電機によるエネルギー捕捉がピークに達する周期の増加につながることを見ることができる。
【0064】
本発明による発電機がその幾何学構造を調節することが可能な第2のメカニズムを、
図13および
図14を参照して記載する。
【0065】
具体的には、接合線4a,4cは、軌道6a,6c上に調整可能に据え付けられたプーリ5a,5cによってそれぞれのエネルギー変換器3a,3cに接合され、軌道6a,6cはプーリがそれぞれのエネルギー変換器3a,3cへ移動またはエネルギー変換器3a,3cから離れて移動されることを可能にする。
【0066】
図13はエネルギー変換器3a,3cに相対的に近く調整されたプーリ5a,5cを示し、
図14はエネルギー変換器3a,3cから相対的に遠く調整されたプーリ5a,5cを示す。
【0067】
従って、水平線とそれぞれの線4a,4bの間の角度である角度αは、前述のエネルギー捕捉フロート2から反応部材1への距離が調節されるときと同様に調整される。従ってシステムの反応への変化もまた同様であり、それぞれのエネルギー変換器3a,3cへのプーリ5a,5cの移動は角度αを増加させ、より長い波の周期の海況に対してシステムの反応を同調する。逆にエネルギー変換器3a3cからのプーリ5a5cの移動は角度αを減少させ、より短い波の周期の海況に対してシステムの反応を同調する。
【0068】
図13および
図14では2つの線4a,4bおよび対応する変換器3a,3cなどのみが示されているが、線、変換器などの3つ以上のそのような組み合わせが考えられることが明らかになるであろう。
【0069】
図15の詳細図で、それぞれのプーリ5aを、軌道6aに沿って、プーリ5a上のそれぞれのピニオン14および軌道6a上のラック15によって、前後に移動可能である。軌道6aは、駆動モータ(図示せず)により作動されるピニオン14、および反応部材1に固定されたラック15を有する。
【0070】
プーリ5aなどの位置を調整する、他の方法が可能であることが理解されるだろう。例えば、示された実施形態のラック15およびピニオン14への同様の効果を得る水圧ラムまたはらせん状の駆動機構を使用可能である。
【0071】
接合線をエネルギー捕捉フロート2から(
図5に示されたドラム11aのような)それぞれのドラム上に直接入れて、プーリ5aなどを省くことが可能であり、エネルギー変換器3aなどを軌道に沿って直接移動することが可能であることも理解される。
【0072】
前述の実施形態は、機器のエネルギー捕捉および残存性の両方を最適化するため、本発明による発電機が、その幾何学構造を変更して、異なる波の高さおよび海況に対しその反応を調節することが可能であるメカニズムを示す。
【0073】
しかし、エネルギー捕捉フロート2の深度、エネルギー捕捉フロート2と反応部材1の間の距離、およびそれぞれのプーリ5a,5b,5c,5dとエネルギー変換器3a,3b,3c,3dの間の距離のあらゆる組み合わせが可能であることに留意すべきである。
機器は、示された実施形態に限定されない。
【0074】
本発明による発電機を変化する海況に対し同調可能なさらなるメカニズムを、
図16および
図17を参照して記載する。
【0075】
エネルギー捕捉フロート2の質量を、フロート2内に含まれる空気と水の比率を調節することにより調節可能である。
図16は水の量が比較的ない低質量のメインエネルギー捕捉フロート2を示し、
図17は水の量が比較的満杯の高質量のメインエネルギー捕捉フロート2を示す。(一般的に知られるような)質量の同調は、メインエネルギー捕捉フロート2の反応を、異なる海況に対し最適化することを可能にし、機器の全体的なエネルギー捕捉の増加につながる。
【0076】
エネルギー捕捉フロート2の質量の増加は、通常長い波の周期に対するフロートの反応に同調する。従ってメインエネルギー捕捉フロート2の質量同調の効果、および(前述のような)機器の幾何学構造の調節による同調の効果は、より大きな同調の効果に対し付加的である。
【0077】
エネルギー捕捉フロート2の質量の調節はその浮力B1(
図2参照)を変化させるので、システム全体の総合的な浮力は、反応部材1の浮力の対応する調整、および従ってその水面下の重量Wの対応する調整(すなわち、水がエネルギー生成フロート2に追加され、それから空気が反応部材1に追加される場合)を行うことにより保持される。
【0078】
代わりに、エネルギー捕捉フロート2の浮力の減少を、水面フロート7a,7bの潜水の深度の増加により拮抗しうる(すなわちB1が減少するとB2が増加して補正し、システムの総合的な浮力は保持され、反応部材1の水面下の重量Wに等しいままである)。
【0079】
エネルギー捕捉フロート2および反応部材1へ空気を追加または除去するのを可能にするため、分離した気道線16が反応部材1からエネルギー捕捉フロート2へ設けられる。反応部材1上または中の圧縮機(図示せず)が、海面上から反応部材1内またはフロート2内へ空気を注入するのを可能にする。
【0080】
前述のように、反応器部材1およびフロート2への空気の供給の準備が、変化する作動の深度によって、反応器部材1およびフロート2内の空気の圧力を、作動の深度における周囲の圧力と平衡することを可能にする。
【0081】
エネルギー捕捉フロート2および反応部材1へ空気を追加または除去するのを可能にするため、深度設定線8a,8bもまた、水面から反応部材1へ空気を移動させる気道(すなわちチューブ状または一対の線からなり、1本は強靭性のため固く、1本は空気を送るためチューブ状である)を有することが可能である。空気吸込口17a,17bを、水面フロート7a,7b内に設けることが可能である。
【0082】
海面上から反応部材1内またはフロート2内へ空気を注入するのを可能にするため、圧縮機(図示せず)が反応部材1上または中に設けられる。
【0083】
前述のように、反応器部材1およびフロート2への空気の供給の準備が、変化する作動の深度によって、反応器部材1およびフロート2内の空気の圧力を作動の深度における周囲の圧力と平衡することを可能にする。
【0084】
図18および
図19に示された第2の実施形態について記述する。第1の実施形態と同様に、第2の実施形態は、潜水可能な反応部材1、波に反応して移動するエネルギー捕捉フロート2、反応部材1上に据え付けられた一連のエネルギー変換器3a,3b,3c,3d、それぞれの軌道6a,6b,6c,6d上に調節可能に据え付けられたそれぞれのプーリ5a,5b,5c,5dを介してエネルギー捕捉フロート2をそれぞれのエネルギー変換器3a,3b,3c,3dに接合する調節可能な長さのそれぞれの接合線4a,4b,4c,4dを備える。(前述のように、明瞭にするため、
図18および
図19では全てのこれらの特徴を詳細に説明または載せない。)
【0085】
第1の実施形態と異なり、第2の実施形態は、水面フロート7a,7bおよび反応部材1の深度D1を制御する深度設定線8a,8bを有さない。代わりに、第2の実施形態の係留線9a,9bが、長さが調節可能であることにより反応部材1の深度を制御する。これは、係留線9a,9bが、(第1の実施形態の反応部材1へ深度設定線を取り付けるウィンチ13a,13bと同様の)ウィンチ18a,18bを介して反応部材に取り付けられることにより得られる。
【0086】
係留線9a,9bが反応部材1の深度D1を制御することが可能であるためには、機器全体が常に水面に浮かぼうとし、そうすることを係留線9a,9bが妨げなければならない。従って第2の実施形態では、エネルギー生成フロートの浮力B1は反応部材1の重量Wより大きく、正味の浮力は係留線9a,9bの張力Tにより対抗される。
【0087】
図18は係留線9a,9bを伸延することにより浅い深度に調節された反応部材1を示し、一方で
図19は係留線9a,9bを短縮することにより深い深度に調節された反応部材1を示す。
【0088】
前の実施形態のように、それぞれの接合線4a,4cの長さを変更することにより、エネルギー生成フロート2と反応部材1の間の距離D3を、反応部材1の深度D1と無関係に調節可能である。また前の実施形態のように、接合線の水平線への角度を、軌道内のプーリの位置の変更により独立して調節可能である。さらに、エネルギー捕捉フロート2の質量を、第1の実施形態のように、その中に含まれる空気および水の比率を変更することにより調節可能である。