特許第6130851号(P6130851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6130851経皮的電気神経刺激を使用して痛みを軽減するための装置、および電極配列
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130851
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】経皮的電気神経刺激を使用して痛みを軽減するための装置、および電極配列
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/34 20060101AFI20170508BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   A61N1/34
   A61N1/04
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-541429(P2014-541429)
(86)(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公表番号】特表2014-533525(P2014-533525A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】US2012065311
(87)【国際公開番号】WO2013074809
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月13日
(31)【優先権主張番号】61/657,382
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/560,029
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506335938
【氏名又は名称】ニューロメトリックス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】ゴザニ,シャイ・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】コン,スアン
(72)【発明者】
【氏名】アギレ,アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ハーブ,グレン
(72)【発明者】
【氏名】クライアン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,マイケル
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−517293(JP,A)
【文献】 特開2005−081068(JP,A)
【文献】 特開平09−117453(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0042180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 − A61N 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人における経皮的電気神経刺激のための装置であって、
ハウジングと、
神経を電気的に刺激するために前記ハウジング内に装着される刺激手段と、
前記ハウジングに解放可能に装着されるとともに、前記刺激手段に接続可能な電極配列であって、前記電極配列が神経の電気刺激のための複数の電極を備える、電極配列と、
前記ハウジングに装着されるとともに、前記刺激手段の少なくとも1つの特性を制御するために前記刺激手段に電気的に接続される制御手段と
記ハウジングに装着されるとともに、前記刺激手段を制御するための前記制御手段に電気的に接続されるユーザインタフェース手段と
記ハウジングに取り付けられるストラップと、
を備え、
前記ストラップは、痛みを処置するために、前記ハウジング、前記刺激手段、および、前記電極配列を特定の解剖学的部位に保持するように構成され、
前記制御手段は、電気神経刺激のために治療刺激強度を決定するように構成され、前記治療刺激強度は、
前記刺激手段に、第1の刺激強度で経皮的電気神経刺激を患者に与えさせ、
前記刺激手段に、前記刺激強度を前記第1の刺激強度から電気触覚感覚閾値が前記ユーザインタフェース手段を用いている使用者によって特定されるまで自動的に増大させ、
所定の強度オフセットを前記電気触覚感覚閾値と関連する前記刺激強度に対して自動的に加えることにより前記電気触覚感覚閾値から前記治療刺激強度を計算する
ことによって決定される、装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、人の生体構造の湾曲部に対する前記ハウジングの適合配置を可能にするようにヒンジ手段によって機械的に接続され、電気的構成要素の物理的分配を可能にするように電気的に接続される複数の区画室を備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記刺激手段が連続的な電気パルスを発生させる請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記制御手段によって制御される前記刺激手段の少なくとも1つの特性が刺激強度を含む請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記制御手段によって制御される前記刺激手段の少なくとも1つの特性が刺激セッションの持続時間を含む請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記監視手段によって監視される前記刺激手段の少なくとも1つの特性は、電気パルス中に前記電極配列の電極を通過する刺激電流を含む請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ユーザインタフェース手段が少なくとも1つの加速度計を含む請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記加速度計の測定値は前記刺激手段の少なくとも1つの特性を変える請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ストラップは、ふくらはぎの外周を測定するための電子手段を含む請求項1に記載の装置。
【請求項10】
経皮的電気神経刺激を患者に与えるための装置であって、
ハウジングと、
電気パルスを発生させるために前記ハウジング内に装着される刺激手段と、
前記ハウジングに解放可能に装着されるとともに、前記刺激手段に接続可能な電極配列であって、前記電極配列が、前記刺激手段により発生される電気パルスを患者の皮膚に印加するための複数の電極を備える、電極配列と、
前記ハウジングに装着されるとともに、前記刺激手段を制御するために前記刺激手段に電気的に接続される制御手段と、
前記ハウジングに装着されるとともに、前記刺激手段を制御するための前記制御手段に電気的に接続されるユーザインタフェース手段と、
前記ハウジングに取り付けられるストラップと、
を備え、
前記ストラップは、前記刺激手段が電気パルスを発生させるときに痛みを処置するために患者の皮膚に前記電極配列を保持するように構成され
前記制御手段は、電気神経刺激のために治療刺激強度を決定するように構成され、前記治療刺激強度は、
前記刺激手段に、第1の刺激強度で経皮的電気神経刺激を患者に与えさせ、
前記刺激手段に、前記刺激強度を前記第1の刺激強度から電気触覚感覚閾値が前記ユーザインタフェース手段を用いている前記患者によって特定されるまで自動的に増大させ、
所定の強度オフセットを前記電気触覚感覚閾値と関連する前記刺激強度に対して自動的に加えることにより前記電気触覚感覚閾値から前記治療刺激強度を計算する
ことによって決定される、装置。
【請求項11】
前記電極配列
基板と、
前記基板に装着されるカソードに相当する少なくとも1つの電極と、
前記基板に装着されるアノードに相当する少なくとも1つの電極と、
前記カソードおよびアノードに相当する前記電極を、神経を電気的に刺激するための電気刺激手段に対して接続するための接続手段と、
を備え、
前記基板、並びに、前記カソードおよびアノードに相当する前記電極は、電気刺激を特定の解剖学的部位に与えるように設計され、前記カソードおよびアノードに相当する電極間の最小距離が維持される、請求項1に記載の装置
【請求項12】
前記電気触覚感覚閾値は、刺激が最初に知覚されるときの刺激強度を知らせる患者によって決定される請求項に記載の装置。
【請求項13】
前記所定の強度オフセットを加えるステップは、前記電気触覚感覚閾値と関連する前記刺激強度に倍数因子を乗じるステップを備える請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願人
NeuroMetrix,Inc.
発明者
Shai N.Gozani
Xuan Kong
Andres Aguirre
Glenn Herb
Marc Cryan
Micheal Williams
係属中の先行特許出願への言及
この特許出願は、以下の利益を主張する。
【0002】
(i)SENSUS OPERATING MODELに関してShai N.Gozaniによって2011年11月15日に出願された係属中の先行米国仮特許出願第61/560,029号(代理人整理番号NEURO−59 PROV)、および、
(ii)APPARATUS AND METHOD FOR RELIEVING PAIN USING TRANSCUTANEOUS ELECTRICAL NERVE STIMULATIONに関してShai N.Gozani等によって2012年6月8日に出願された係属中の先行米国仮特許出願第61/657,382号(代理人整理番号NEURO−60 PROV)。
【0003】
先に特定される2つ(2)の特許出願は、参照により本願に組み入れられる。
【0004】
この発明は、一般に、慢性の痛みの症状軽減をもたらすために患者の無傷の皮膚にわたって電極により電流を供給する経皮的電気神経刺激(TENS)デバイスに関し、より詳細には、痛みを伴う糖尿病性神経障害の症状軽減をもたらすためのTENSデバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0005】
糖尿病性末梢神経障害(DPN)は、米国内の約2500万の人および世界中の3億を超える人を襲う糖尿病の最も一般的な慢性合併症である。DPNは、主に脚や下肢の末梢神経を侵す。DPNは、切断を要する足部潰瘍を引き起こす場合がある感覚の損失をもたらし得る。また、DPNは、激しい衰弱性の神経障害性痛みをもたらす場合もある。
【0006】
DPNに起因する痛みは、痛みを伴う糖尿病性神経障害(PDN)と呼ばれる。PDNは、DPNを伴う人の約50%、および、糖尿病を患う全ての人の10〜20%を侵す。PDNは、一般に、典型的には抗うつ剤または抗てんかん剤である薬剤を使用して薬理学的に処置される。これらの薬剤は、投与することが難しい場合があり、また、多くの人にかなりの副作用をもたらす場合がある。結果として、糖尿病およびPDNを伴う人は、しばしば、完全に治療されておらず、また、PDNを伴う人の50%の人が任意の抗痛治療を受けていない場合がある。したがって、PDNの管理のための更なる鎮痛オプションの明確な必要性が存在する。
【0007】
経皮的電気神経刺激(TENS)デバイスは、急性疼痛および慢性疼痛を抑制するために人体の特定の領域に電流を印加する。PDNの管理で幅広く使用されないが、最近の兆候は、TENSがPDNを伴う患者のための補助的なまたは主要な治療と見なされるべきであることを示唆する。
【0008】
TENSの最も一般的な形態は、従来型TENSと呼ばれる。従来型TENSでは、痛みの領域内で、痛みの領域付近で、または、痛みの領域に近接して、皮膚上に電極が配置される。その後、電極を介して電気刺激が患者に与えられる。この場合、電気刺激は、一般に約10〜200Hzの周波数の低強度(一般的に50〜60mA未満)、短い持続時間(一般的に50〜200マイクロ秒)のパルスの形態を成す。
【0009】
TENSの根底にある生理的原理は、Aβ感覚神経線維、主に深組織求心神経の興奮が脳への痛み信号の伝達を妨げることである。作用の最も一般的に挙げられる機構は、当初は1965年にMelzackおよびWallにより提案された「痛みのゲート理論」(Melzack R,Wall PD.Pain mechanisms:a new theory.Science.1965;150:971−979)である。近年では、TENS無痛覚の根底にある分子機構が研究されてきている。脊髄後角における侵害受容ニューロンの抑制によって痛み信号が妨げられることが究明されてきた(DeSantana JM,Walsh DM,Vance C,Rakel BA,Sluka KA.痛覚過敏および痛みに関する経皮的電気神経刺激の有効性.Curr Rheumatol Rep.2008;10(6):492−499)。このプロセスは、中脳水道周囲灰白質(PAG)および延髄腹内正中部(RVM)から伝わる信号によって促進される。また、痛み信号が末梢神経系で遮断されるという証拠も存在する。感覚求心神経刺激は、δオピオイド受容体の活性化によって痛みを抑制する内因性オピオイドの解放を引き起こす。これらの受容体は、脊髄の後角を含む神経系の全体にわたって位置される。オピオイド受容体は、その活性化が例えばイオンチャネル調整によってニューロン活動を減少させるG−タンパク質共役受容体である。モルヒネ感受性のμ−オピオイド受容体と同様に、δオピオイド受容体は無痛覚を含むが、2つの受容体亜型は、異なる神経解剖学的分布を有するとともに、悪用の可能性がある。また、TENSは、抑制性神経伝達物質GABAの細胞外濃度を高めるとともに、脊髄後角における興奮性神経伝達物質グルタミン酸塩およびアスパラギン酸塩の濃度を低下させる。
【0010】
従来型TENSデバイスにおいて、電気回路は、特定の特性を有する刺激パルスを発生させる。パルス波形仕様は、強度(mA)、持続時間(マイクロ秒)、および、形状(一般的には、単相または二相)を含む。パルスパターン仕様は、周波数(Hz)および刺激セッションの長さ(分)を含む。患者の皮膚上に配置される電極の1つ以上の対は、電気パルスを変換し、それにより、下層の神経を刺激する。刺激パルスの強度を変えるとともに、刺激パルスの周波数を更に低い度合まで変えることにより、TENSの臨床的有益性を最適化することができる。
【0011】
TENS治療の有効な使用に対する大きな障壁が、達成される鎮痛量に対する、TENSを定期的に適用するために必要な労力の不釣り合いな大きさであることを暗示する証拠がある。特に、大部分のTENSデバイスは、汎用目的のため、すなわち、様々な痛み源に由来する様々な解剖学的部位での痛みを軽減するように形成される。これは、複数の別個の構成要素を有するTENSシステムを必要とする。例えば、TENS電極およびTENS刺激器は一般に長いリード配線を介して互いに接続され、これらの長いリード配線は、患者が管理することが難しい場合があり、また、外部から見える場合には患者を当惑させる場合がある。電極自体は一般に形状および機能が一般的であり、生理学的に且つ臨床的に最適な配置で電極を位置決めするには患者に負担がかかる。これらの問題に起因して、汎用TENSデバイスは、一般に、医療スタッフによる患者の長い訓練および監視を必要とし、また、この訓練を伴う場合であっても、患者は、TENSデバイスの適切な使用における重要なステップを忘れる虞がある。Bastyr等(米国特許第5,487,759号)は、整形外科の矯正器などのサポートデバイスと併せて使用される刺激器を開示することによって、これらの制限の一部を克服しようと試みた。この場合、サポートデバイスは、刺激器と電極との間の機械的および電気的な接続を行なう。それにもかかわらず、特定の臨床的適応のために独自に設計され、したがって、それらの用途におけるTENSデバイスの使用を容易にし、医療的なサポートがあるとしてもそれを最小限に抑える、TENSデバイスの必要性が依然として残る。
【0012】
最大の痛み軽減(すなわち、痛覚鈍麻)を達成するために、TENSは、適切な刺激強度で供給される必要がある(Moran F,Leonard T,Hawthorne S,et al.経皮的電気神経刺激(TENS)に応じた痛覚鈍麻が刺激強度に依存する.J Pain.12:929−935)。感覚の閾値を下回る強度は、臨床的に有効ではない。最適な治療強度は、しばしば、「強いが痛くない」強度であると見なされる。大部分のTENSデバイスは、通常はアナログ強度ノブまたはデジタル強度制御プッシュボタンから成る手動強度制御によって刺激強度を設定するために患者に依存する。いずれの場合にも、患者は、自分が治療レベルであると信じる強度まで刺激の強度を手動で増大させなければならない。したがって、現在のTENSデバイスの大きな限界は、適切な治療刺激強度を決定することが多くの患者にとって困難な場合があるという点である。結果として、患者は、医療スタッフからのかなりのサポートを必要とし、あるいは、不適切な刺激レベルに起因して痛みの軽減を行なうことができない。適切な治療刺激を与える可能性を高めようとする試みにおいて、一部のTENSデバイスは、ヘルスケア専門家が目標刺激レベルを予めプログラムできるようにする。例えば、Bartelt等(米国特許第5,063,929号)は、刺激強度をプログラムされた目標レベルまで徐々に自動的に増大させるTENSデバイスを開示した。しかしながら、ヘルスケア専門家が目標刺激レベルをプログラムするときであっても、患者の痛みおよび生理機能の変化に起因して、TENSデバイスの繰り返しの使用後に、そのレベルが十分でない場合がある。これらの問題の一部を克服して刺激強度制御を自動化しようとする試みにおいて、King等(米国特許第7,720,548号)は、電気的なインピーダンス信号に基づいて刺激強度などの刺激パラメータを調整する方法を提案した。しかしながら、この方法の臨床的有効性は、インピーダンスと治療刺激強度との間のつながりが証明されていないため、不明確である。先に概説した理由のため、現在のTENSデバイスは、刺激強度が治療範囲内にあるようにすることに関して、かなりの制限を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、従来技術のTENSデバイスと関連する問題を扱う新規な改良されたTENSデバイスの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は新規なTENSデバイスを含み、このTENSデバイスは、その好ましい実施形態において、患者の上側ふくらはぎに配置されるように設計される刺激器と、上側ふくらはぎの領域に外周刺激を与えるように設計される事前構成型の電極配列とを備える。本発明の重要な特徴は、脚および/または下肢の痛み軽減を求める患者が容易で迅速な臨床的に有効な電極配列の配置を行なえるようにTENSデバイスおよびその関連する電極配列が形成されるという点である。好ましい実施形態において、本発明は、PDNによって引き起こされる慢性的な痛みの対症療法のために使用される。また、本発明は、有効性および利便性を最大にするとともに、患者の通常の日々の活動に対する支障を最小限に抑えるようになっている。
【0015】
TENSデバイスに関して、最も重要な刺激パラメータは、痛みの軽減を最大にするために治療範囲内になければならない刺激の強度である。本発明は、刺激強度が治療範囲内にある可能性を最大にするべく刺激強度を決定するための新規な方法を提供する。本発明の好ましい実施形態では、患者が自分の感覚閾値を特定し、その後、特定された感覚閾値から治療強度が推定される。また、患者は、刺激強度の更なる精緻化を行なう選択肢を有する。
【0016】
慣れとは、刺激の長期付与後の刺激の知覚低下のことである。本発明の好ましい実施形態では、治療セッション中に患者が強度を手動で定期的に増大させる必要がある従来技術の方法とは異なり、慣れを克服するべく、治療セッションの全体にわたって刺激強度が徐々に増大するようになっている。また、本発明は、慣れに対抗するべく刺激を変えるパラメータ設定をカスタマイズするために所望の刺激強度の手動調整の態様および頻度も学習する。
【0017】
本発明の1つの好ましい形態では、人における経皮的電気神経刺激のための装置であって、
ハウジングと、
神経を電気的に刺激するために前記ハウジング内に装着される刺激手段と、
ハウジングに解放可能に装着されるとともに、刺激手段に接続可能な電極配列であって、電極配列が神経の電気刺激のための複数の電極を備える、電極配列と、
ハウジングに装着されるとともに、刺激手段の少なくとも1つの特性を制御するために刺激手段に電気的に接続される制御手段と、
ハウジングに装着されるとともに、刺激手段の少なくとも1つの特性を監視するために刺激手段に電気的に接続される監視手段と、
ハウジングに装着されるとともに、刺激手段を制御するための制御手段に電気的に接続されるユーザインタフェース手段と、
ハウジングに装着されるとともに、刺激手段の状態を表示するために制御手段および監視手段に電気的に接続される表示手段と、
ハウジングに取り付けられるストラップと、
を備え、
ストラップは、痛みを処置するために、ハウジング、刺激手段、および、電極配列を特定の解剖学的部位に保持するように構成される、装置が提供される。
【0018】
本発明の他の好ましい形態では、経皮的電気神経刺激を患者に与えるための装置であって、
ハウジングと、
電気パルスを発生させるために前記ハウジング内に装着される刺激手段と、
ハウジングに解放可能に装着されるとともに、刺激手段に接続可能な電極配列であって、電極配列が、刺激手段により発生される電気パルスを患者の皮膚に印加するための複数の電極を備える、電極配列と、
ハウジングに取り付けられるストラップと、
を備え、
ストラップは、刺激手段が電気パルスを発生させるときに痛みを処置するために電極配列を患者の皮膚に電極配列を保持するように構成される、装置が提供される。
【0019】
本発明の他の好ましい実施形態では、人における経皮的電気神経刺激のための電極配列であって、
基板と、
基板に装着されるカソードに相当する少なくとも1つの電極と、
基板に装着されるアノードに相当する少なくとも1つの電極と、
カソードおよびアノードに相当する電極を、神経を電気的に刺激するための電気刺激手段に対して接続するための接続手段と、
を備え、
基板、並びに、カソードおよびアノードに相当する電極は、電気刺激を特定の解剖学的部位に与えるように設計され、カソードおよびアノードに相当する電極間の最小距離が維持される、電極配列が提供される。
【0020】
本発明の他の好ましい実施形態では、人における経皮的電気神経刺激のための治療刺激強度を決定するための方法であって、
刺激強度を第1の刺激強度から自動的に増大させるステップと、
少なくとも1つの電気触覚知覚閾値を特定するステップと、
前記少なくとも1つの電気触覚知覚閾値から治療刺激強度を計算するステップと、
を備える方法が提供される。
【0021】
本発明の他の好ましい実施形態では、患者における経皮的電気神経刺激のための治療刺激強度を決定するための方法であって、
電気刺激を第1の刺激強度で患者に印加するステップと、
患者に印加される電気刺激の強度を、第1の刺激強度から、電気触覚感覚閾値が特定される第2の強度まで自動的に増大させるステップと、
前記第2の強度レベルから治療刺激強度を計算するステップと、
を備える方法が提供される。
【0022】
本発明の他の好ましい実施形態では、経皮的電気神経刺激を使用して患者の痛みを処置するための方法であって、
治療刺激強度を自動的に決定するステップと、
前記治療刺激強度で電気刺激を開始するステップと、
前記治療刺激強度を患者制御下で調整するステップと、
前記治療刺激強度を所定の割合で自動的に増大させるステップと、
電気刺激を所定期間にわたって継続させるステップと、
を備える方法が提供される。
【0023】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、添付図面と共に考慮されるべき本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明によって更に十分に開示されあるいは明らかにされる。図中、同様の数字は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明にしたがって形成される新規なTENS装置を示す概略図である。
図2図1に示されるTENS装置の刺激器に対して電気的に且つ機械的に接続される電極配列を示す概略図である。
図3】患者の上側ふくらはぎに装着される図1のTENS装置を示す概略図である。
図4図1のTENS装置の刺激器によって発生される調整電流を伴う二相対称方形パルスを示す概略図である。
図5図1のTENS装置の刺激器によって与えられるパルス列を示す概略図である。
図6図1のTENS装置の電極配列の下面の概略図である。
図7図1のTENS装置の電極配列の上面および下面を示す写真である。
図8】電気触覚知覚と電気刺激強度との間の関係を示す概略的なグラフである。
図9図1のTENS装置の全体の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
最初に図1を見ると、本発明の1つの好ましい形態を備える新規なTENS装置100が示される。TENS装置100は、一般に、3つの構成要素、すなわち、刺激器105、ストラップ110、および、電極配列120を備える。
【0026】
刺激器105は、機械的および電気的に相互接続される3つの区画室101,102,103を備える。区画室101,102,103はヒンジ機構104によって相互に接続され、それにより、TENSアセンブリ100はユーザの脚の湾曲した生体構造に適合できる。好ましい実施形態において、区画室102は、刺激ハードウェア(バッテリを除く)とユーザインタフェース要素106,108とを収容する。好ましい実施形態において、区画室101,103は、刺激ハードウェアおよび他の付属要素に給電するためのバッテリーを収容する更に小さい補助区画室である。
【0027】
図2に示されるように、電極配列120は、中央刺激器区画室102の下面に設けられる嵌め合いポート130,132にスナップ係合する電気接点210,212を備える。刺激器105および電極配列120は、互いにスナップ係合されると、機械的に且つ電気的に接続される。刺激器105と電極配列120との間のこの直接的な電気機械接続は、他のTENSデバイスで見出される不都合なリード配線の必要性を排除する。
【0028】
また、中央刺激器区画室102は、(i)外側区画室101,103のうちの一方に収容されるバッテリーを充電するため、(ii)利用データをダウンロードするため、(iii)刺激器105を設定するため、および、(iv)ソフトウェアアップグレードをアップロードするために、その下面にUSBポート133も有する。好ましい実施形態において、USBポート133は、構造を簡略化して製造コストを低減するために刺激器ハードウェアから電気的に絶縁されない。しかしながら、中央刺激器区画室102の下面上におけるUSBポート133の位置は、例えば図2から理解できるように、電極配列120が刺激器105に取り付けられるときにUSBポートの使用を妨げる。結果として、刺激器105がUSBポート133を介して他のデバイス、例えば電源に同時に接続される状態では刺激器105を使用して患者へ電極配列120を介して刺激を与えることができないため、電気的安全性が維持される。
【0029】
再び図1を見ると、刺激器105は、電気刺激の制御のためのプッシュボタン106と、刺激状態を表示するとともに他のフィードバックを患者に与えるためのLED108とを含む。図1に示される好ましい実施形態は単一のプッシュボタン106と2つのLED108とを備えるが、例えば2つ以上のプッシュボタンなど、他の構成が使用されてもよい。更なるユーザインタフェース要素(例えば、LCDディスプレイ、ポケベルまたは音声出力を介した音声フィードバック、振動モータなどの触覚デバイス等)が考えられ、それらの要素は、本発明の範囲内にあると見なされる。好ましい実施形態において、刺激器105の主区画室102は、中央区画室102を軽くたたく(または、平手打ちする)などのユーザの身振りを検出するために、好ましくは半導体チップの形態を成す加速度計(図示せず)を含む。加速度計のための更なる用途は、TENS装置100の特定の動作特性の検出、したがって、横たわっていること、立っていること、歩いていること、歩き方などの患者の姿勢および行動の特定を含み、これは、特定された患者状態に関して刺激を最適化するために刺激器105の刺激特性を変えることを可能にする。前述したユーザインタフェース要素に加えて、電気刺激自体がユーザインタフェース機能を果たすことができる。特に、患者は、一般に、刺激パターンの変化を認識する。したがって、例えば、刺激器105は、短時間(例えば3秒)にわたって所定のON/OFF周期(例えば0.5秒)でパルス状刺激をONおよびOFFすることによって、刺激強度が最大値に達したことを患者に知らせることができる。
【0030】
好ましい実施形態では、ここで更に図1を見ると、ユーザインタフェース要素(例えば、プッシュボタン106およびLED108)が刺激器105上に物理的に位置される。別の実施形態では、ユーザインタフェース構成要素のうちの1つ以上が遠隔的に位置されてもよい。これらの遠隔ユーザインタフェース要素は、配線などの物理的なリンク、ブルートゥース(登録商標)接続などの無線リンク、赤外線(IR)接続などの光リンク等を含む様々な手段によって刺激器105に接続されてもよい。これらの遠隔ユーザインタフェース要素は、カスタム遠隔制御器などの刺激器105を制御するように特別に設計された専用のデバイス上に位置されてもよく、あるいは、例えばスマートフォンやタブレットコンピュータなどの患者により使用される既存のデバイスに組み込まれてもよい。
【0031】
図3に見られるように、ストラップ110は、刺激器105を患者の脚の上側ふくらはぎ領域140に対して強固に且つ快適に取り付ける役目を果たす。好ましい実施形態において、ストラップ110は、デバイスを様々な異なるふくらはぎサイズに容易に固定できるようにするベルクロ(登録商標)を含む材料から構成される。また、ストラップを刺激器105から取り外せるようにし、それにより、特に小さいまたは大きいふくらはぎに更に容易に適合されるべく様々なサイズのストラップを提供することもできる。また、ストラップ110は、電極配列120の端部を所定位置に保持するためのクリップなどの機構(図示せず)を含んでもよい。また、ストラップ110は、ふくらはぎの外周および/または他の生体測定データ(例えば、皮膚温度)を決定してこのデータを刺激パラメータの最適化のために刺激器105へ伝える電子手段(図示せず)を含んでもよい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態は、図3に示されるように患者の上側ふくらはぎ140に着用されるように設計される。患者は、脚の痛みの性質およびレベルに応じて、また、患者の医師によって指示されるように、TENS装置100を一方または両方の脚に着用してもよい。2つのTENS装置100の場合には、デバイスが無線リンクを介して互いに通信してそれらの動作を同期させてもよい。刺激器105、電極配列120、および、ストラップ110を備えるTENS装置100は、装置を所定位置に配置した後、ストラップ110を締め付けて電極配列120を患者の皮膚に接触固定することによって、上側ふくらはぎ140に固定される。上側ふくらはぎ140に対するTENS装置100の特定の回転方向の配置は臨床的に重要ではない。これは、電極配列120の構成および動作がTENS装置100の正確な回転位置とは無関係となるように意図的に設計されるからである。特に、また、以下で更に詳しく説明されるように、電極配列120は、患者のふくらはぎ上におけるTENS装置100の特定の回転位置にかかわらず電極配列が適切な電気刺激を患者の適切な生体構造に対して加えるように意図的に寸法付けられて構成される。
【0033】
刺激器105は、図4に示されるように、調整電流を伴う二相対称方形パルスを発生させるマイクロプロセッサ制御される回路である。このパルス波形は荷電平衡化され、それにより、皮膚のかぶれや想定し得る皮膚損傷をもたらす可能性がある電極配列120の電極下のイオン導入増大が防止される。調整電流パルスは、調整電圧パルスよりも安定した刺激を与える。これは、刺激電流が、一般的に治療セッションの過程で変化する電極−皮膚インピーダンスとは無関係だからである。多種多様な皮膚タイプおよび電極品質(繰り返し使用および空気露出に起因する)を扱うために、最大出力電圧は100Vであり、最大出力電流は100mAである。最終的に、パルスパターンは、刺激の周波数が60Hz〜100Hzの均一な確率分布を有するようにパルス間の間隔が不規則に変化する連続的な刺激である。あるいは、刺激の周波数は、60Hz〜100Hzのガウス確率分布または何らかの他の確率分布を有してもよい。パルス間の間隔が不規則に変化する周波数刺激を与える(パルス間の間隔が一定の周波数刺激と対比した)利点は、前者の刺激タイプが刺激に対する神経応答性の生理的減少である刺激慣れをあまりもたらさないという点である。パルスパターンのプラス相とマイナス相との間の隔たりは比較的小さくて均一であることが好ましいが、この隔たりは、望ましい場合には省かれあるいは変更されてもよい。この点においては、言うまでもなく、パルスパターンのプラス相とマイナス相との間の隔たりの存在は、主に、簡略化された回路構造の結果である。刺激器105の好ましい実施形態は特定の技術的特徴を有するが、他の技術的仕様(例えば、パルス波形形状、最大出力電圧、最大出力電流、および、パルスパターンに関する仕様)が考えられ、また、そのような仕様は本発明の範囲内にあると見なされる。他の実施形態では、刺激器105の刺激属性がプログラム可能であり、その場合、刺激器は、(例えばUSBポートを介して)適切なセットアップソフトウェアを実行するコンピュータまたはモバイル機器(例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータなど)に接続可能である。この態様では、刺激器105の刺激属性をユーザの痛み特性、生理機能、および、好みに合わせてカスタマイズできる。
【0034】
図5は、治療セッション中に刺激器105により与えられる典型的なパルス列480の概略図であり、それぞれが図4に示される離間した二相波形を有する2つの個々のパルス490の波形を示す。周波数が固定されたまたは不規則に変化するパルスは、治療セッション持続時間482の全体にわたって持続する。後述するように、刺激の強度(すなわち、刺激器105によって供給される電流の振幅)は、患者入力に応じて、および、慣れ補償のために、調整される。
【0035】
電極配列120の好ましい実施形態の概略図が図6に示される。好ましくは、電極配列120が4つの別個の電極202,204,206,208を備え、それぞれの電極が等しい表面積を有することが好ましい。電極202,204,206,208は、電極204,206(カソードに相当する)が互いに対して(例えばコネクタ205を介して)電気的に接続されるように且つ電極202,208(アノードに相当する)が互いに対して(例えばコネクタ207を介して)電気的に接続されるように、対を成して接続される。電気パルスの極性が逆にされるときには、カソード電極およびアノード電極の役割も逆にされることが理解される。言うまでもなく、電極202,204,206,208は、患者の脚に対する電極配列120の回転位置にかかわらず適正な皮膚被覆率を確保するように適切に寸法付けられて対を成して接続される。また、言うまでもなく、電極202,204,206,208は、交互的態様で接続されず、むしろ、2つの内側電極204,206が互いに接続されるように且つ2つの外側電極202,208が互いに接続されるように接続され、それにより、例えば細いふくらはぎを有する患者において起こり得るように、2つの外側電極202,208が互いに不用意に接触する場合に、電極配列がショートしないように確保される。電流(すなわち、組織に対する電気刺激のための電流)は、刺激器105上の相補的なコネクタ130,132(図2も参照)と結合するコネクタ210,212(図2も参照)によって電極対に対して与えられる。コネクタ210は電極204,206と電気的に接続され、また、コネクタ212は電極202,208と電気的に接続される。刺激器105は、コネクタ210,212をそれぞれ介して電極204,206および電極202,208に通される電流を発生させる。個々の電極202,204,206,208は、導電ヒドロゲルで覆われるシルバーハッチングパターンから構成されることが好ましい。電極配列120のための裏打ち材214は、前述したシルバーパターンが印刷されるマイラーであることが好ましい。電極202,204,206,208とコネクタ210,212(すなわち、コネクタ205,207)との間の電気的な接続は、絶縁材料で覆われる印刷されたシルバートレースにより形成される。様々な数の電極、異なる電極サイズおよび異なる電極間の間隔、並びに、ソリッドなどの別の電極シルバーパターンの使用を含む電極配列120の更なる実施形態が考えられ、そのような実施形態は、本発明の範囲内にあると見なされる。
【0036】
電極配列120は、図3に示されるように患者の上側ふくらはぎの周囲に周方向で配置するように形成される。電極配列120の構造は、カソードを形成する電極204,206とアノードを形成する電極202,208との間で最小距離が常に維持されるようにする。好ましい実施形態では、最小距離が40mmである。この点において、適切なTENS動作のためには最小カソード−アノード距離が重要であることに留意すべきである。これは、カソードとアノードとが互いに近すぎる場合には、刺激電流が組織中へ十分深くまで入り込まず、神経を刺激できる能力が損なわれるからである。
【0037】
刺激器105および電極配列120が図2に示されるように互いに接続されて図3に示されるように(ストラップ110を使用して)患者に配置されると、個々の電極202,204,206,208は、足および下肢に対して感覚を与えるL4,L5,S1,S2皮膚知覚帯へ刺激を与えるように位置決めされる。結果として、本発明は、足および下肢に無痛覚を与えるのに特に適しており、これは、PDNに起因する慢性疼痛の対症療法のためのその好ましい使用をサポートする。
【0038】
本発明の好ましい実施形態の使用は簡単である。ユーザは、電極配列120を刺激器105にスナップ留めし(図2)、それにより、2つの構成要素間に強固な機械的および電気的な接触をもたらす。その後、このアセンブリは、ストラップ110を使用して、電極配列120の電極が患者の皮膚に強固に当て付いて配置されるように患者の上側ふくらはぎ上に配置される(図3)。刺激は、制御プッシュボタン106を押圧することによって開始される。治療セッションの完了時、TENS装置100が患者から除去されて、電極配列120が刺激器105から取り外される。電極配列120は、一人の患者に対して複数回使用されてもよい。
【0039】
本発明の主な目的は、ユーザインタフェースを簡略化することであり、したがって、1ボタンインタフェースが好ましい。従来型TENSデバイスは、一般に、ON/OFFスイッチ、刺激強度を増加/減少するためのボタン、刺激強度を変えるためのダイヤル、および、デバイス機能を調整するための他の制御器から成る複数のユーザインタフェース要素を有する。そのような従来技術のユーザインタフェースの的確な使用は、患者がデバイスへの自由な物理的および視覚的アクセスを有することを必要とし、これは、例えばベルトクリップ上など、特定の解剖学的部位に対するデバイスの配置を制限する。比較すると、本発明は、視覚的確認を必要とせず且つ図3に示されるような下肢を含む身体上の任意の場所にデバイスが配置された状態で容易に動作される簡単な1ボタンインタフェースを利用する。1ボタンインタフェースを利用する本発明の好ましい実施形態において、デバイスは、ボタン押圧によって(低電力待機状態からまたはOFF状態から)電源ONされる。刺激強度は、短いボタン押圧および長いボタン押圧によって制御される。特に、ボタンを下方に保持すると、ボタンが押し下げられている限り、例えば1ミリアンペア/秒の割合で刺激強度が増大する。ボタンを押圧して急速に解放する(すなわち、「軽くたたく」)と、所定の大きさだけ、例えばボタン押圧ごとに1ミリアンペアだけ、または、所定のパーセンテージだけ、例えばボタン押圧ごとに2%だけ、刺激強度が減少する。この態様では、単一のプッシュボタン(すなわち、プッシュボタン106)を用いて患者により刺激強度を容易に制御できる。本発明は、刺激器筐体102を平手打ちする(または軽くたたく)などのユーザの身振りを検出するために加速度計を設けることを更に開示する。好ましい実施形態では、平手打ちの検出が刺激を直ちに停止させる。
【0040】
全ての患者にとって有効であるが許容できる治療用量を与える普遍的なTENS刺激強度は存在しない。したがって、TENS治療の臨床的有益性を得るためには、刺激強度を患者固有のレベルに設定することが不可欠である。「強いが痛くない」感覚を引き出す刺激強度は、有効な鎮痛をもたらし、したがって、治療濃度域内にある強度を連想させる。TENSにおける伝統的な手法は、所望の「強いが痛くない」感覚を患者が知覚するまでTENS刺激の強度を手動で増大させる方法を医療スタッフが患者に教え込むことである。このとき、TENS治療が必要とされるときにこの処置をその後に必要に応じて例えば自宅で行なうことが患者の責任である。しかしながら、この従来技術の手法は、高価な医療資源(すなわち、医療スタッフ時間)の使用を必要とするとともに、既に教え込まれた患者が適切な治療強度を決定する方法を忘れる場合があることから、間違いを起こし易い。結果として、本発明の主要目的は、刺激強度を治療範囲内に自動的に且つ確実に設定することである。
【0041】
本発明は、刺激強度を治療レベルに自動的に設定する方法を開示し、この手続きは、時として、以下、「設定」と称される。この方法は、「強いが痛くない」感覚に相当する患者の電気触覚知覚スケールを、ミリアンペアで測定される電気刺激強度スケールへマッピングするという概念に基づく。この点において、用語「電気触覚」は、電気刺激の患者の感覚を示すように意図される。3つの重要な測定できる電気触覚知覚レベル、すなわち、電気触覚感覚閾値(すなわち、患者が感じることができる電気刺激の最低レベル)、電気触覚痛み閾値(すなわち、患者に対して痛みを引き起こす電気刺激のレベル)、および、電気触覚許容閾値(すなわち、患者によって許容され得る電気刺激の最大レベル)が存在する。最適なTENS刺激強度は、電気触覚感覚閾値と電気触覚痛み閾値との間に位置付けられる。
【0042】
図8は、電気刺激強度302と電気触覚知覚304との間の関係を例示する曲線300を示す。曲線300の傾きは電気触覚感覚閾値306付近で急であり、そのため、患者において最初に感覚を引き出し得る刺激強度I(s)の範囲308は一般に狭い。結果として、電気触覚感覚閾値306、および、対応する刺激強度308、すなわち、I(s)を確実に決定できる。
【0043】
電気刺激感覚が快適から痛みへと変化するレベルとして規定される電気触覚痛み閾値310は、明確ではなく、複数の生理的要因および心理的要因によって影響される。結果として、曲線300は、電気触覚痛み閾値領域310では、電気触覚感覚閾値領域306の場合ほど急勾配ではない。これは、痛みへの移行が生じる刺激強度I(p)の幅広い範囲312をもたらす可能性がある。このため、電気触覚痛み閾値310および対応する刺激強度312を確実に測定することが困難な場合がある。電気触覚痛み閾値310の測定に伴う他の欠点は、それが患者の快適な範囲の上限にあり且つ正確な痛み閾値310の変化に起因して時として痛いとして知覚される場合がある電流強度を伴う刺激を必要とするという点である。その結果、患者は、自分の痛み閾値を一貫して過少評価する場合があり、それにより、治療レベルが電気触覚痛み閾値310から推定される場合には、最適な治療範囲を下回る刺激レベルがもたらされる。
【0044】
電気触覚感覚閾値306と関連する刺激強度I(s)を確実に推定できるため、「強いが痛くない」感覚を与える目標治療刺激強度I(t)は、電気触覚感覚閾値と関連する刺激強度I(s)に対して強度オフセットI(o)を加えることによって計算されてもよい。言い換えると、I(s)が電気触覚感覚閾値と関連する刺激強度である場合には、「強いが痛くない」、すなわち、治療効果があるが患者にとって快適な刺激強度I(t)を決定するために、強度オフセットI(o)が刺激強度I(s)に加えられてもよい。これは、強いが患者には痛くない刺激強度を決定するための新しい革新的な方法である。
【0045】
刺激強度を治療レベルに自動的に設定するためのこの手続きの好ましい実施形態は、刺激が最初に感じられること、すなわち、電気触覚感覚閾値に達したことを患者が例えばプッシュボタン106を使用することにより知らせるまで、刺激強度を0mAから徐々に増大させることである。好ましい実施形態では、刺激強度が等比級数的に増大される。例えば、刺激強度が毎秒5%ずつ増大してもよい(すなわち、刺激強度が前の刺激強度の1.05倍である)。等比級数の利点は、それが強度の直線的増大(例えば、毎秒1mA)を成す場合よりも良好に刺激強度と電気触覚感覚との指数関数的関係に適合する(すなわち、いわゆる「精神物理学的指数法則」)という点である。電気触覚感覚閾値および関連する強度I(s)のより正確な推定を例えば複数の測定値の平均またはメジアンをとることによって可能にするために、手続きを複数回繰り返すことができる。好ましい実施形態では、電気触覚感覚閾値の最初の決定が捨て去られる。これは、患者が電気刺激の知覚に慣れ親しんでいない場合があり、したがって、患者が正しいレベルを過小評価するまたは過大評価する場合があるからである。
【0046】
その後、治療強度I(t)316を推定するために、刺激強度の増分、すなわち、強度オフセットI(o)が、電気触覚感覚閾値と関連する刺激強度I(s)に対して加えられる。
【0047】
好ましい実施形態では、刺激強度オフセットI(o)が全ての患者に関して一定である。知覚は一般に対数的態様で変化するため、治療強度I(t)と感覚閾値強度I(s)との間の関係は、比率(例えば2)としてまたはデシベル(例えば6dB)で表わされる。ここで、比率=10(dB/20)である。
【0048】
他の好ましい実施形態において、刺激強度オフセットI(o)は、患者によってなされる刺激強度の手動変化にしたがって変わる。一例として、治療強度の最初の決定(すなわち、初期設定オフセットI(o)を電気触覚感覚閾値306と関連する刺激強度I(s)に加えることによる決定)後に、患者がその後の治療セッション中に(前述した手続きによって決定される)刺激強度を手動で増大させる場合には、その患者にとって最適な強度オフセットが初期設定オフセットよりも大きいということが起こり得る。したがって、治療強度のその後の決定では、更に大きい刺激強度オフセットが使用される。同様に、治療強度の最初の決定(すなわち、初期設定オフセットI(o)を電気触覚感覚閾値306と関連する刺激強度I(s)に加えることによる決定)後に、患者がその後の治療セッション中に刺激強度を手動で減少させる場合には、その患者にとって最適な強度オフセットが初期設定オフセットよりも小さいということが起こり得る。したがって、治療強度のその後の決定では、更に小さい刺激強度オフセットが使用される。この態様では、感覚閾値から推定される治療強度が患者の入力に適応できて応答する。
【0049】
患者の性別、患者のふくらはぎの外周、ふくらはぎの温度、および、活動のレベルおよびタイプ(例えば、休息、睡眠、歩行)などの人口統計学的変数または生体測定変数に応じて刺激強度オフセットI(o)が決定される本発明の更なる実施形態が考えられてきた。一例として、男性が女性よりも高い電気触覚閾値を有し、したがって、刺激強度オフセットI(o)を性別固有の値に設定することができ、その場合、男性強度オフセットが女性強度オフセットよりも大きいことが知られている。他の例として、大きいふくらはぎを有する患者は、皮膚と刺激されるようになっている下層の神経との間の距離に起因して、小さいふくらはぎを有する患者よりも高い刺激強度レベルを必要とする可能性が高い。したがって、ふくらはぎサイズ(本発明の1つの好ましい形態では、ストラップ120によって電子的に測定されて刺激器105へ伝えられてもよい)は、その患者のために使用されるべき刺激強度オフセットを決定するために入力として使用されてもよい。更なる他の例として、電気触覚閾値が、患者の皮膚表面温度を測定することにより近似されてもよい患者の温度に反比例することが知られている。したがって、電気触覚知覚におけるこれらの温度依存変化を扱うために、皮膚表面温度に応じて刺激強度オフセットを増大させる(低い患者温度に関して)あるいは減少させる(高い患者温度に関して)ことができる。ストラップ110内または刺激器105の筐体内に埋め込まれ得る非接触赤外線サーモセンサ(例えば、MLX90615,Melexis Semiconductors,ベルギー)または接触デジタルサーモセンサ(例えば、DS1820,Maxim,Inc.カリフォルニア州、サニーベール)を用いて皮膚表面温度を測定することができる。感覚閾値からの治療強度の推定に関して皮膚表面温度の使用が記載されるが、温度変化を考慮するべく治療セッション中に刺激強度を連続的に調整するために皮膚表面温度が使用される本発明の更なる実施形態が考えられてきた。
【0050】
治療強度レベルI(t)が決定されると、TENS装置100は、治療目的でいつでも使用できる状態にある。患者は、時々、治療強度、すなわち、I(t)を再設定してもよい。なお、TENSデバイスは、最大安全治療強度などの普遍的な強度レベルを使用することによって、治療強度レベルの自動決定を伴うことなく使用できる。しかしながら、そのような固定的手法は、前述したように大幅に制限される。
【0051】
好ましい実施形態では、患者が処置セッションを開始すると、刺激強度が目標強度I(t)316まで着実に増大する。この場合、目標強度は、(感覚閾値と関連する刺激強度I(s)を特定した)その患者のための電気触覚知覚マッピングを予め行なった後に、所望の強度オフセットI(o)を加えて、その患者のために使用されるべき治療刺激強度I(t)を定めることによって決定された。刺激強度は、患者が刺激によって驚かないようにまたは患者が刺激で不快にならないように十分な長い期間にわたって目標強度(すなわち、治療刺激強度)I(t)まで徐々に増大しなければならない。好ましい実施形態では、刺激強度が1分の期間にわたって目標強度まで増大し、また、これが3段階で行なわれる。第1の段階では、刺激強度が感覚閾値の90%まで5秒で増大する。これらの強度レベルは、サブ感覚閾値であり、したがって、患者によって知覚されるべきではない。第2の段階では、刺激強度が感覚閾値の90%から112%(+1dB)まで10秒で増大する。これらの刺激強度は、感覚閾値付近にあり、患者によって最小限に知覚されるはずであり、不快ではない。第3の最終段階では、刺激強度が感覚閾値の112%から目標強度(すなわち、治療刺激強度)まで増大する。刺激強度のこの段階的な増大は、刺激で快適になる機会を患者に対して与え、患者を驚かせることを回避する。
【0052】
好ましい実施形態において、患者は、プッシュボタン106を使用して刺激強度を増大させるまたは減少させることにより刺激強度を更に精緻化してもよい。好ましい実施形態では、刺激強度が起こり得る治療範囲にとどまるようにする強度「フロア」を下回って刺激強度を減少させることができない。一例として、感覚閾値を12%(1dB)上回るように強度フロアを設定できる。
【0053】
前述した態様で電気触覚感覚閾値を決定する新規な利点は、特に前述したように決定される自動的なレベルから刺激強度が患者によって手動で変えられる場合に、患者により使用される刺激強度の想定し得る治療利点を評価できるという点である。好ましい実施形態において、刺激器105により記憶される利用データは、各治療セッションの刺激強度を含む。したがって、利用データがコンピュータに更新されるときに、その患者のための平均治療レベルを、セッション閾値を超える例えばデシベルレベルとして計算して報告することができる。その後、患者の医師は、この値を、患者によって得られる鎮痛に対して評価することができるとともに、適切な臨床的な提言を行なうことができる。例えば、患者が低い治療レベル(例えば、セッション閾値強度I(s)を2dB上回る)を有するとともに、患者が鎮痛を得ていない場合、医師は、前述した設定手続きを使用して患者が自分の治療強度を再設定することを提案してもよい。
【0054】
慣れとは、患者に対する刺激の長期の付与後の患者による刺激の知覚の減少のことである。TENS治療に当てはまるように、慣れは、同じ治療強度での長期の刺激の後に鎮痛の低下を引き起こす場合がある。伝統的なTENSデバイスにおいて、患者は、自分達の刺激の知覚が低下する場合には時々刺激強度を手動で増大させるように指示される。これは、TENSデバイスと繰り返し再係合することを強いられる患者に負担をかけ、または、患者は、TENSデバイスの強度を調整することを完全に忘れる場合がある。
【0055】
重要なことには、本発明は、刺激セッションの間にわたる刺激強度の自動的な段階的増大から成る自動慣れ補償を与える方法を含む。好ましい実施形態において、刺激強度は、時間に伴って比例級数的に増大される。言い換えると、刺激強度には、単位時間ごとに所定の因子が乗じられる。例えば、刺激強度は、治療セッションにわたって毎分1.004倍だけ増大されてもよい。これは、60分の治療セッションにわたる刺激強度の約27%(2dB)増大と同等である。他の実施形態において、刺激強度は、治療セッションにわたり毎分所定量だけ、例えば0.5ミリアンペアだけ増大される。他の実施形態において、増大の割合は、刺激強度の手動変化を考慮するように調整される。例えば、患者が治療セッションの途中で刺激強度を減少させる場合には、増大の自動割合がこの患者にとって高すぎる場合があり、そのため、その後の治療セッションにおいて、増大の自動割合が減少されなければならない。同様に、患者が治療セッションの途中で刺激強度を増大させる場合には、増大の自動割合がこの患者にとって低すぎる場合があり、そのため、その後の治療セッションにおいて、増大の自動割合が増大されなければならない。この態様では、自動慣れ補償が患者の生理機能に適応できて応答する。
【0056】
図9は、本発明の好ましい実施形態の動作の全体図を与える。最初に、450で示されるように、患者の電気触覚知覚閾値が刺激強度へマッピングされ、すなわち、電気触覚感覚閾値が刺激強度I(s)へマッピングされ、また、治療刺激強度I(t)が決定される。すなわち、強度オフセットI(o)を刺激強度I(s)に加えることによって決定される。したがって、最初の治療セッション465に入る際には、その患者に関して治療強度レベルが既に自動的に計算されてしまっている。最初の治療セッション465の最初の段階462中に、患者は、ユーザインタフェース制御器(例えば、プッシュボタン106)を使用して刺激強度を調整してもよい。一般に3分間にわたって持続するこの最初の段階462の終わりの刺激強度は、記憶されて、次の治療セッション467のための治療強度レベルになる。前述した慣れ補償は、治療セッションの残りの部分(すなわち、最初の治療セッション465の段階464中)およびその後の治療セッション467の全体にわたって行なわれる。患者は、電気触覚知覚マッピング段階450を繰り返すという選択肢を有し、これは、1つ以上の治療セッション467後に治療刺激強度I(s)の再計算を引き起こす。
【0057】
好ましい実施形態の改良
言うまでもなく、本発明の本質を説明するために本明細書中に記載して例示してきた細部、材料、ステップ、および、部品の配置の多くの更なる変更は、本発明の原理および範囲内に依然としてとどまりつつ当業者によりなされてもよい。
(項目1)
人における経皮的電気神経刺激のための装置であって、
ハウジングと、
神経を電気的に刺激するために前記ハウジング内に装着される刺激手段と、
前記ハウジングに解放可能に装着されるとともに、前記刺激手段に接続可能な電極配列であって、前記電極配列が神経の電気刺激のための複数の電極を備える、電極配列と、
前記ハウジングに装着されるとともに、前記刺激手段の少なくとも1つの特性を制御するために前記刺激手段に電気的に接続される制御手段と、
前記ハウジングに装着されるとともに、前記刺激手段の少なくとも1つの特性を監視するために前記刺激手段に電気的に接続される監視手段と、
前記ハウジングに装着されるとともに、前記刺激手段を制御するための前記制御手段に電気的に接続されるユーザインタフェース手段と、
前記ハウジングに装着されるとともに、前記刺激手段の状態を表示するために前記制御手段および前記監視手段に電気的に接続される表示手段と、
前記ハウジングに取り付けられるストラップと、
を備え、
前記ストラップは、痛みを処置するために、前記ハウジング、前記刺激手段、および、前記電極配列を特定の解剖学的部位に保持するように構成される、装置。
(項目2)
前記解剖学的部位が患者の上側ふくらはぎ領域である項目1に記載の装置。
(項目3)
前記痛みが慢性の痛みである項目1に記載の装置。
(項目4)
前記慢性の痛みは、痛みを伴う糖尿病性神経障害によって引き起こされる項目3に記載の装置。
(項目5)
前記ハウジングが少なくとも1つの区画室を備える項目1に記載の装置。
(項目6)
前記ハウジングは、人の生体構造の湾曲部に対する前記ハウジングの適合配置を可能にするようにヒンジ手段によって機械的に接続される複数の区画室を備える項目5に記載の装置。
(項目7)
前記ハウジングは、電気的構成要素の物理的分配を可能にするように電気的に接続される複数の区画室を備える項目5に記載の装置。
(項目8)
1つの区画室が前記刺激手段の刺激回路を含み、第2の区画室が前記刺激回路に電力を供給するバッテリーを含む項目7に記載の装置。
(項目9)
前記ハウジングは、外部デバイスに接続するためのインタフェースポートを含む項目1に記載の装置。
(項目10)
前記インタフェースポートは、刺激されるべき生体構造と対向する前記ハウジングの側に位置される項目9に記載の装置。
(項目11)
前記インタフェースポートは、前記ハウジングが患者に位置されるときにアクセスできない項目10に記載の装置。
(項目12)
前記インタフェースポートは、前記装置が神経を電気的に刺激しているときに前記電極配列によって覆われる項目10に記載の装置。
(項目13)
前記インタフェースポートがUSBポートである項目9に記載の装置。
(項目14)
前記刺激手段が連続的な電気パルスを発生させる項目1に記載の装置。
(項目15)
前記刺激手段が100ボルトの最大出力電圧を有する項目14に記載の装置。
(項目16)
前記刺激手段が100ミリアンペアの最大出力電流を有する項目14に記載の装置。
(項目17)
前記電気パルスが電流調整される項目14に記載の装置。
(項目18)
前記電気パルスが電圧調整される項目14に記載の装置。
(項目19)
前記電気パルスが対称な二相方形状を有する項目14に記載の装置。
(項目20)
前記電気パルスの2つの相が荷電平衡化される項目19に記載の装置。
(項目21)
前記電気パルスの各相が100マイクロ秒の持続時間を有する項目19に記載の装置。
(項目22)
前記電気パルスの第1の相と第2の相との間に30マイクロ秒の遅延が存在する項目19に記載の装置。
(項目23)
前記電気パルスが所定の発生周波数を有する項目14に記載の装置。
(項目24)
前記電気パルスは、不規則に変化する発生周波数を有する項目14に記載の装置。
(項目25)
前記周波数は、均一な分布をもって60〜100Hzの間で不規則に変化する項目24に記載の装置。
(項目26)
前記制御手段によって制御される前記刺激手段の少なくとも1つの特性が刺激強度を含む項目1に記載の装置。
(項目27)
前記制御手段によって制御される前記刺激手段の少なくとも1つの特性が刺激セッションの持続時間を含む項目1に記載の装置。
(項目28)
刺激セッションの前記持続時間が60分である項目27に記載の装置。
(項目29)
前記監視手段によって監視される前記刺激手段の少なくとも1つの特性は、電気パルス中に前記電極配列の電極を通過する刺激電流を含む項目1に記載の装置。
(項目30)
前記監視手段によって監視される前記刺激手段の少なくとも1つの特性は、電気パルス前、電気パルス中、および、電気パルス後に前記電極配列のカソードとしての機能を果たす電極の電圧を含む項目1に記載の装置。
(項目31)
前記監視手段によって監視される前記刺激手段の少なくとも1つの特性は、電気パルス前、電気パルス中、および、電気パルス後に前記電極配列のアノードとしての機能を果たす電極の電圧を含む項目1に記載の装置。
(項目32)
前記監視手段によって監視される前記刺激手段の少なくとも1つの特性は、電気パルス中に前記電極配列のカソードおよびアノードとしての機能を果たす電極の生体インピーダンスを含む項目1に記載の装置。
(項目33)
前記監視手段によって監視される前記刺激手段の少なくとも1つの特性は、電気パルス中に前記電極配列の電極に通される電荷を含む項目1に記載の装置。
(項目34)
前記ユーザインタフェース手段がプッシュボタンを含む項目1に記載の装置。
(項目35)
前記プッシュボタンを押圧して保持すると、前記プッシュボタンが押し下げられる限り、刺激強度が増大する項目34に記載の装置。
(項目36)
前記刺激強度が毎秒1ミリアンペアの割合で増大される項目35に記載の装置。
(項目37)
前記プッシュボタンを押圧して急速に解放すると、刺激強度が所定量だけ減少する項目34に記載の装置。
(項目38)
刺激は、前記プッシュボタンの押圧ごとに1ミリアンペアずつ減少される項目37に記載の装置。
(項目39)
前記ユーザインタフェース手段が少なくとも1つの加速度計を含む項目1に記載の装置。
(項目40)
前記少なくとも1つの加速度計が患者の身振りを検出する項目39に記載の装置。
(項目41)
検出された患者の身振りは、前記ハウジングを軽くたたくことである項目40に記載の装置。
(項目42)
前記ハウジングを軽くたたくと、刺激が直ちに停止する項目41に記載の装置。
(項目43)
前記少なくとも1つの加速度計が前記ハウジングの方向を検出する項目39に記載の装置。
(項目44)
前記ハウジングの検出される方向は、前記刺激手段の少なくとも1つの特性を変える項目43に記載の装置。
(項目45)
前記少なくとも1つの加速度計は、前記ハウジングを着用する患者の活動レベルを検出する項目39に記載の装置。
(項目46)
検出される活動レベルは、前記刺激手段の少なくとも1つの特性を変える項目45に記載の装置。
(項目47)
前記表示手段が少なくとも1つのLEDを備える項目1に記載の装置。
(項目48)
前記少なくとも1つのLEDは、刺激が継続していることを知らせる項目47に記載の装置。
(項目49)
前記少なくとも1つのLEDは、刺激が停止したことを知らせる項目47に記載の装置。
(項目50)
前記少なくとも1つのLEDがバッテリー充電状態を示す項目47に記載の装置。
(項目51)
前記ストラップは、前記ハウジングを異なるサイズのふくらはぎに取り付けることができるように構成される項目1に記載の装置。
(項目52)
前記ストラップは、所望の外周に前記ストラップを保持するためにベルクロ(登録商標)を使用する項目1に記載の装置。
(項目53)
前記ストラップが交換可能である項目1に記載の装置。
(項目54)
前記ストラップは、様々なサイズのふくらはぎを受け入れるように異なる一群のストラップサイズから選択される項目53に記載の装置。
(項目55)
前記ストラップは、前記電極配列を安定させるのに役立つ機構を含む項目1に記載の装置。
(項目56)
前記ストラップは、ふくらはぎの外周を測定するための電子手段を含む項目1に記載の装置。
(項目57)
前記ストラップにより測定されるふくらはぎの外周が前記制御手段へ伝えられる項目56に記載の装置。
(項目58)
前記刺激手段の少なくとも1つの特性がふくらはぎの外周にしたがって変えられる項目57に記載の装置。
(項目59)
ふくらはぎの外周にしたがって刺激強度が変えられる項目58に記載の装置。
(項目60)
経皮的電気神経刺激を患者に与えるための装置であって、
ハウジングと、
電気パルスを発生させるために前記ハウジング内に装着される刺激手段と、
前記ハウジングに解放可能に装着されるとともに、前記刺激手段に接続可能な電極配列であって、前記電極配列が、前記刺激手段により発生される電気パルスを患者の皮膚に印加するための複数の電極を備える、電極配列と、
前記ハウジングに取り付けられるストラップと、
を備え、
前記ストラップは、前記刺激手段が電気パルスを発生させるときに痛みを処置するために患者の皮膚に前記電極配列を保持するように構成される、装置。
(項目61)
人における経皮的電気神経刺激のための電極配列であって、
基板と、
前記基板に装着されるカソードに相当する少なくとも1つの電極と、
前記基板に装着されるアノードに相当する少なくとも1つの電極と、
前記カソードおよびアノードに相当する前記電極を、神経を電気的に刺激するための電気刺激手段に対して接続するための接続手段と、
を備え、
前記基板、並びに、前記カソードおよびアノードに相当する前記電極は、電気刺激を特定の解剖学的部位に与えるように設計され、前記カソードおよびアノードに相当する電極間の最小距離が維持される、電極配列。
(項目62)
前記解剖学的部位が患者の上側ふくらはぎ領域である項目61に記載の電極配列。
(項目63)
前記電極配列が上側ふくらはぎ領域に配置されるときに、電気刺激がL4,L5,S1,S2のうちの1つ以上の皮膚知覚帯に与えられる項目62に記載の電極配列。
(項目64)
前記電極配列が2対の電気的に接続される電極から成る項目61に記載の電極配列。
(項目65)
前記接続手段が雄スナップ型コネクタを備える項目61に記載の電極配列。
(項目66)
前記雄スナップ型コネクタが刺激手段に装着される雌スナップ型コネクタ内に挿入されるときに、前記カソードおよびアノードに相当する前記電極が前記刺激手段に対して電気的に接続される項目65に記載の電極配列。
(項目67)
前記雄スナップ型コネクタが刺激手段に装着される雌スナップ型コネクタ内に挿入されるときに、前記カソードおよびアノードに相当する前記電極と前記刺激手段との間に強固な機械的接続がもたらされる項目65に記載の電極配列。
(項目68)
前記最小距離が40mmである項目61に記載の電極配列。
(項目69)
前記電極配列が単一人による使用のためのものである項目61に記載の電極配列。
(項目70)
前記電極配列は、所定期間にわたる複数の用途のためのものである項目69に記載の電極配列。
(項目71)
人における経皮的電気神経刺激のための治療刺激強度を決定するための方法であって、
前記刺激強度を第1の刺激強度から自動的に増大させるステップと、
少なくとも1つの電気触覚知覚閾値を特定するステップと、
前記少なくとも1つの電気触覚知覚閾値から治療刺激強度を計算するステップと、
を備える方法。
(項目72)
前記電気触覚知覚閾値のうちの少なくとも1つが電気触覚感覚閾値を備える項目71に記載の方法。
(項目73)
前記電気触覚感覚閾値は、刺激が最初に知覚されるときの刺激強度を知らせる患者によって決定される項目72に記載の方法。
(項目74)
前記電気触覚知覚閾値のうちの少なくとも1つが電気触覚痛み閾値を備える項目71に記載の方法。
(項目75)
前記電気触覚痛み閾値は、刺激が最初に痛みを伴うときの刺激強度を知らせる患者によって決定される項目74に記載の方法。
(項目76)
前記第1の刺激強度が0ミリアンペアである項目71に記載の方法。
(項目77)
前記第1の刺激強度は、既に測定された感覚閾値の50%である項目71に記載の方法。
(項目78)
前記第1の刺激強度は、既に測定された感覚閾値よりも10ミリアンペア低い項目71に記載の方法。
(項目79)
刺激強度の自動増大が一定の割合である項目71に記載の方法。
(項目80)
一定の割合が毎秒1ミリアンペアである項目79に記載の方法。
(項目81)
刺激強度の自動増大が等比級数的割合である項目71に記載の方法。
(項目82)
等比級数的割合が1.05である項目81に記載の方法。
(項目83)
刺激強度の増大量が最小値と最大値とによって境界付けられる項目81に記載の方法。
(項目84)
前記最小値が0.5ミリアンペアである項目83に記載の方法。
(項目85)
前記最大値が2ミリアンペアである項目83に記載の方法。
(項目86)
刺激強度の自動増大は、プッシュボタンとの患者の相互作用によって開始される項目71に記載の方法。
(項目87)
前記電気触覚知覚閾値は、プッシュボタンとの患者の相互作用によって知らされる項目71に記載の方法。
(項目88)
前記電気触覚知覚閾値は、加速度計によって検出される患者の身振りによって知らされる項目71に記載の方法。
(項目89)
前記患者の身振りは、刺激器筐体を軽くたたくことである項目88に記載の方法。
(項目90)
前記治療刺激強度は、電気触覚感覚閾値と関連する刺激強度を特定した後にその刺激強度をオフセットにより調整することによって決定される項目71に記載の方法。
(項目91)
前記オフセットは、前記治療刺激強度を決定するために電気触覚感覚閾値と関連する刺激強度に対して加えられる項目90に記載の方法。
(項目92)
前記計算ステップは、感覚閾値に倍数因子を乗じるステップを備える項目71に記載の方法。
(項目93)
前記倍数因子が2である項目92に記載の方法。
(項目94)
前記倍数因子が人口統計的因子の関数である項目92に記載の方法。
(項目95)
前記人口統計的因子は、年齢、性別、体重、および、身長を含む項目94に記載の方法。
(項目96)
前記倍数因子が生体測定因子の関数である項目92に記載の方法。
(項目97)
前記生体測定因子が患者のふくらはぎの外周を含む項目96に記載の方法。
(項目98)
前記倍数因子が生理的因子の関数である項目92に記載の方法。
(項目99)
前記生理的因子は、皮膚表面温度、電気皮膚反応、筋電図活動、および、生体インピーダンスを含む項目98に記載の方法。
(項目100)
前記倍数因子は、少なくとも1つの既に決定された感覚閾値の関数である項目92に記載の方法。
(項目101)
前記倍数因子は、少なくとも1つの既に使用された刺激強度の関数である項目92に記載の方法。
(項目102)
前記治療刺激強度は、感覚閾値の複数の測定値から計算される項目71に記載の方法。
(項目103)
前記治療刺激強度は、複数の感覚閾値の平均から計算される項目102に記載の方法。
(項目104)
前記治療刺激強度は、複数の感覚閾値のメジアンから計算される項目102に記載の方法。
(項目105)
患者における経皮的電気神経刺激のための治療刺激強度を決定するための方法であって、
電気刺激を第1の刺激強度で患者に印加するステップと、
患者に印加される電気刺激の強度を、第1の刺激強度から、電気触覚感覚閾値が特定される第2の強度まで自動的に増大させるステップと、
前記第2の強度レベルから治療刺激強度を計算するステップと、
を備える方法。
(項目106)
経皮的電気神経刺激を使用して患者の痛みを処置するための方法であって、
治療刺激強度を自動的に決定するステップと、
前記治療刺激強度で電気刺激を開始するステップと、
前記治療刺激強度を患者制御下で調整するステップと、
前記治療刺激強度を所定の割合で自動的に増大させるステップと、
電気刺激を所定期間にわたって継続させるステップと、
を備える方法。
(項目107)
前記痛みが慢性の痛みである項目106に記載の方法。
(項目108)
前記慢性の痛みは、痛みを伴う糖尿病性神経障害によって引き起こされる項目106に記載の方法。
(項目109)
前記治療刺激強度は、神経慣れに打ち勝つように自動的に増大される項目106に記載の方法。
(項目110)
前記治療刺激強度は、所定の間隔で倍数因子によって自動的に増大される項目106に記載の方法。
(項目111)
治療セッションのための前記倍数因子は、初期設定倍数因子によって推定される目標刺激強度レベル、患者により制御される実際の刺激強度、および、前の治療セッションで観察された様々な時間間隔でのこれらの強度間の差にしたがって変えられる項目110に記載の方法。
(項目112)
前記初期設定倍数因子が1.004であり、前記所定の間隔が1分である項目110に記載の方法。
(項目113)
前記治療刺激強度が所定の間隔で所定量だけ自動的に増大される項目106に記載の方法。
(項目114)
前記所定期間は、60分未満であり、刺激出口事象に起因して更に低い値である項目106に記載の方法。
(項目115)
前記刺激出口事象が患者の行動によって引き起こされる項目114に記載の方法。
(項目116)
前記患者の行動は、電気刺激器のハウジングを軽くたたくことである項目115に記載の方法。
(項目117)
前記刺激出口事象が刺激エラー状態によって引き起こされる項目114に記載の方法。
(項目118)
前記刺激エラーは、目標電流強度よりも小さい電気パルス中の刺激電流の発生である項目117に記載の方法。
(項目119)
前記刺激エラーは、電気刺激を与える電極間の高い生体インピーダンスである項目117に記載の方法。
(項目120)
前記刺激エラーは、電気刺激を与える電極間の生体インピーダンスの大きな変化である項目117に記載の方法。
(項目121)
前記大きな変化が60分内の50%変化である項目120に記載の方法。
(項目122)
前記刺激エラーは、電気刺激を与える電極の患者の皮膚からの除去である項目117に記載の方法。
(項目123)
前記刺激エラーは、電気刺激中に与えられる電荷が目標電荷よりも小さいまたは大きい場合である項目117に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9